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投稿ログ351 (No.6177 - No.6183)

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board4 - No.6177

大質量ワープの臨界点について

投稿者:Night
2005年01月08日(土) 17時13分

>  『その技術自体の限界はどこにあるのか』という問いに対しては、以上述べたように、作品設定を自然に解釈すれば、ワープ移動に関しては、そんな限界は設けられていない、という回答を提出します。ただ、質量増大に応じて、上の(2)(3)の理論の影響が、あまりにも大きく響く場合と言うのは、ありえるでしょうが。

 上に反論するため、一つの思考実験を組み上げましょう。そして、『シャフト方式の大質量ワープでは、ある臨界点より大きな質量をワープさせることはできない』ということを証明して見せます。
(ただし、No.6161の計算同様、ここから先は大質量ワープの詳細に少し踏み込んだ話になるので、私の推測が幾分混じっています。その意味で、厳密に言えば"証明"ではなく"推論"になりますが、かなり確度の高い推論であろうと私は考えています)

 本編に以下のような記述があります。これは、恒星アムリッツァ近辺で行われたアムリッツァ会戦の一場面です。
(以下、銀河英雄伝説1巻黎明編の第9章Iより。徳間ノベルスだと1巻P225下段)

<キルヒアイス艦隊の急行動を見て、その進行方向に居あわせた同盟軍の戦艦がパニックに襲われ、大質量のちかくであるにもかかわらず、跳躍したのである。
 必ずしも珍しいことではなかった。逃走不可能を知った宇宙船が、確実な死より未知の恐怖を選んで、進路の算定も不可能なまま亜空間へ逃げ込んでしまうのだ。逃走ができぬとあれば、降伏という方法もあり、その意思を示す信号も定められているのだが、逆上した者は、それに気づかない。亜空間に逃げ込んだ人々がどのような運命に迎えられたか、それは死後の世界について定説がないのと同様、誰も知らなかった。>

 上の記述から、『大きな質量の近くでは正しくワープを行うことができない』ということが分かります。SFでは時々見かけられる設定ですが、銀英伝のワープもこれを踏襲していると言うことです。
 すると、以下のような思考実験が成立します。

(1) ワープ対象となる大きな質量を用意する。
(2) シャフト方式の大質量ワープを行うため、質量の表面に複数のワープエンジンを取り付け、同時起動させる。
(3) しかし、これらのワープエンジンは必然的に『大きな質量の近く』で動作することになる。よって、最初に用意した質量がある程度以上大きい場合、ワープを正しく行うことはできず、大質量ワープは失敗する。

 以上、証明終わり。
 あるいはこう言い換えても良いでしょう。『大質量をワープさせるためには、正確なワープが必要である。しかし、大質量はそれ自身が正確なワープを阻害する要因である。よって、大質量ワープとは本質的に自己破壊的な要素を抱えており、質量がある臨界点を超えた時点で自己破綻してしまう』と。このような臨界点が存在することは、上の証明に従う限り、確実です。
 この臨界点が具体的にどの程度の値かを計算するためには、『質量の大きさによってどのようにワープの正確さが変動するか』と、『大質量ワープに必要なワープの正確さ』について具体的に知る必要があります。それは我々には手の届かぬ領域の知識なので、計算は不可能です。それがガイエスブルクの質量以上、恒星アムリッツァの質量以下に存在するという以上のことは分かりません。

 この話は、いくつかの興味深い示唆を与えてくれます。
 第一に、シャフトもラインハルトも、上記の臨界点の問題について特に発言で触れていないということです。特にシャフトはこの問題について当然知っているはずなのに、何も言っていない。彼は嘘をついたのでしょうか。
 そうではありません。今回のガイエスブルク計画とは直接の関係がないと思ったから、あえて口にする意味も必要も感じなかった。その解釈で充分でしょう。
 そもそも、個人の一言、二言の発言から、科学、技術の全容を読み取ろうとすることに無理があるのです。シャフトの発言が厳密には正しくなくても、この点で彼を責めるのはお門違いというものです。

 第二に、この問題は『解決すべき点は、質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである』という主張が間違っていることを示しています。この問題の原因は、質量とエンジン出力の関係ではないからです。その証拠に、どれだけたくさんのエンジンを使おうと、どれだけ高出力のエンジンを使おうと、この問題は解決できません。
 また、この問題はエンジン同調の問題でも、時空震の問題でもありません。よって、冒頭の『限界は設けられていない』というパンツァーさんの主張は誤り、となります。

 第三に、この問題は、素人考えでは理論的に正しそうに見えても、実際には見落としていることがあるということの実例です。私は、当初、このような問題がありうるということに全く気がついていませんでした。それは、パンツァーさんも同様でしょう。結局、専門家でない我々には良く分かっていないのです。ワープが実際どういうものかも、それが抱える問題も。
 言うなれば、それは、航空力学も実際の飛行機もほとんど知らぬ素人たちが、飛行機について議論しているようなものです。それまで模型飛行機しか知らなかった人々が、いきなり数百トンもの実用機を見せられ、「さあ、この3倍の大きさの実用機は、飛べるか飛べないか」と聞かれたとします。どう答えるか。
 実際に3倍の飛行機が飛べるか飛べないかを判定するには、航空力学と実験の助けを必要とします。少なくともそこで『いや、模型飛行機の数千万倍の重さの実用機が飛べるなら、その3倍程度の実用機が飛べない確率は0.0001%です』などと言ったところで、その見積もりが正確である可能性など、万に一つもないでしょう。
 我々に可能な唯一の答、それは、『いや、我々は飛行機について詳しいことは知らないので、飛べるかどうかは分かりません』というものではないでしょうか。

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board4 - No.6178

絶縁体が電気を通さないというのは誤りである。

投稿者:蜃気楼
2005年01月09日(日) 14時44分

 横から失礼します。

>『解決すべき点は、質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである』という主張が間違っていることを示しています。

 「要塞に関しては」間違っていることを示しているとは思えません。

 「要塞を移動させることに関しては、技術上、なんら問題は無い。解決すべき点は、質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである」

 この発言を見る限り、「臨界点」というのは要塞の質量をはるかに越えたところに有ると考えるのが自然では?
 理論上の臨界点がイゼルローン要塞以下の質量だというのなら、実際にやってみたら、ガイエスブルクの質量でもワープできない可能性はありますよ。
 それにもかかわらず一言も言及してないとは思えません。

 それに、「臨界点」があることの証明がまったくされていません。
 「臨界点」という以上ある質量を越えた物体が近くにあると、例えそれが1gでもワープできないということになりますが。
 ただ単に、大質量が近くにあるとワープが困難になり、恒星クラスだと不可能という話かもしれません。
 そして、後者なら、イゼルローンがワープできないということは、ガイエスブルクのワープが非常にに危険かつ困難ということになると思うのですが。

 ちなみに地球と太陽の質量を比べた場合地球の質量は「無視できるほど」小さいです。
 太陽は1.989×10の30乗Kg
地球は5.972×10の24乗Kg

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board4 - No.6179

Re:絶縁体が電気を通さないというのは誤りである。

投稿者:Night
2005年01月09日(日) 16時06分

>  >『解決すべき点は、質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである』という主張が間違っていることを示しています。
>
>  「要塞に関しては」間違っていることを示しているとは思えません。
>
>  「要塞を移動させることに関しては、技術上、なんら問題は無い。解決すべき点は、質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである」
>
>  この発言を見る限り、「臨界点」というのは要塞の質量をはるかに越えたところに有ると考えるのが自然では?
>  理論上の臨界点がイゼルローン要塞以下の質量だというのなら、実際にやってみたら、ガイエスブルクの質量でもワープできない可能性はありますよ。
>  それにもかかわらず一言も言及してないとは思えません。

 この話はパンツァーさんの主張への反論から始まっています。
 パンツァーさんの元々の主張とは、以下の通りです。

<『その技術自体の限界はどこにあるのか』という問いに対しては、以上述べたように、作品設定を自然に解釈すれば、ワープ移動に関しては、そんな限界は設けられていない、という回答を提出します。ただ、質量増大に応じて、上の(2)(3)の理論の影響が、あまりにも大きく響く場合と言うのは、ありえるでしょうが。>

 その前の文脈も踏まえて言い換えるなら、

『質量とエンジン出力の関係さえクリアすれば、あとはエンジンの同時作動と時空震の問題が大きく響かない限り、ワープできる質量に限界は設定されていない』

 ということになります。
 この臨界点の話は、上記の主張へのアンチテーゼです。上の条件を全てクリアしてもなお、大質量ワープが失敗する状況が存在するということを明確にしたかったのです。

>  それに、「臨界点」があることの証明がまったくされていません。
>  「臨界点」という以上ある質量を越えた物体が近くにあると、例えそれが1gでもワープできないということになりますが。
>  ただ単に、大質量が近くにあるとワープが困難になり、恒星クラスだと不可能という話かもしれません。
>  そして、後者なら、イゼルローンがワープできないということは、ガイエスブルクのワープが非常にに危険かつ困難ということになると思うのですが。

 確かに、「臨界点」というと、その点を超えた瞬間に全てが引っくり返るというイメージになりますが、徐々にワープの危険度が増加していき、最終的にワープ不可能になるという形になるかもしれません。そういう意味では、語が不適切だと思われます。

 なお、この臨界点(をどう呼び直すべきか。限界深度?)が具体的にどの辺りになるかは、先に書きましたように計算不能です。
 ですが、それがガイエスブルクの質量のかなり近くにあったなら、確かに、シャフトはそれについて発言していたはずと考える方が自然です。ですので、それは、少なくともシャフトが『特に危険はない』と思うくらいには遠くにあるのでしょう。(シャフトがどれだけ安全度を見込んだかは分かりませんが)

>  ちなみに地球と太陽の質量を比べた場合地球の質量は「無視できるほど」小さいです。
>  太陽は1.989×10の30乗Kg
> 地球は5.972×10の24乗Kg

 はい、こういう話は良く分かっています。恒星アムリッツァの質量が具体的にどれだけかは分かりませんが、それと比べるとガイエスブルクもイゼルローンもおそらく芥子粒よりもはるかに小さく、両者の違いなど微々たるものに見えるでしょう。

 ですが、恒星アムリッツァは、あくまで『大質量が近くにあったせいでワープが失敗した』と確認された具体例がこれだけであるというだけなので、実際の下限はもっと下にあってもおかしくありません。
 艦船が、惑星の地表上からいきなりワープしないのは、これが原因だと思えなくもないのですが、良く分からない事について語るのは止めておきます。

親記事No.6105スレッドの返信投稿
board4 - No.6180

静止状態の質量と、加速状態の質量との質的相違

投稿者:パンツァー
2005年01月09日(日) 16時23分

以下の根拠は、関係があるのでしょうか?

> (以下、銀河英雄伝説1巻黎明編の第9章Iより。徳間ノベルスだと1巻P225下段)
>
> <キルヒアイス艦隊の急行動を見て、その進行方向に居あわせた同盟軍の戦艦がパニックに襲われ、大質量のちかくであるにもかかわらず、跳躍したのである。
>  必ずしも珍しいことではなかった。逃走不可能を知った宇宙船が、確実な死より未知の恐怖を選んで、進路の算定も不可能なまま亜空間へ逃げ込んでしまうのだ。逃走ができぬとあれば、降伏という方法もあり、その意思を示す信号も定められているのだが、逆上した者は、それに気づかない。亜空間に逃げ込んだ人々がどのような運命に迎えられたか、それは死後の世界について定説がないのと同様、誰も知らなかった。>

ここで言われていることは、単に、
「ワープする質量体の近くに、他の大質量体が存在すると、進路の算定が不可能になる」
ということですよね。
「ワープする主体の質量の大きさが増加すれば、最終的にワープできなくなる」
という結論には、全然ならないと思いますが。

大体、相対的な大質量体の影響により、目的地に到達できない、という話であって、ワープそのものが行えないと言うわけではないですね。しかも、逃走中のように時間的余裕が無い場合に、大質量体の影響を加味した航路計算を行い得ないだけの話で、通常(非戦闘時)なら、ワープできるのかもしれません。

> (1) ワープ対象となる大きな質量を用意する。
> (2) シャフト方式の大質量ワープを行うため、質量の表面に複数のワープエンジンを取り付け、同時起動させる。
> (3) しかし、これらのワープエンジンは必然的に『大きな質量の近く』で動作することになる。よって、最初に用意した質量がある程度以上大きい場合、ワープを正しく行うことはできず、大質量ワープは失敗する。

(3)と、恒星アムリッツァとに関して、明らかに異なる状況と言えば、
ワープエンジン付き質量体(ガイエスブルグ要塞等)のワープに際して、
恒星アムリッツァは静止状態にあるのに対して、
各ワープエンジンに対応する部分の質量は、加速状態にある、ということです。

地球は(確か)時速1350km程度で自転していますが、地上の人間は止まっている限り、空気抵抗の影響を受けたりすることはありません。地上の人間が風防のない単車などで走行すれば顔面にもろに風圧を感じますが、これは静止している地球の空気に対して、相対的に、単車上の人間が移動したためです。

ワープエンジンにより加速されている部分の質量の影響と、その外部の静止している質量の影響とは、質的に明らかに異なるのではないでしょうか。

したがって、Nightさんの結論部
>  この話は、いくつかの興味深い示唆を与えてくれます。
より続く「第一には」「第二には」の結論は、前提が崩れているので、成り立たないでしょう。

次いで、結論部の「第三には」について

>  第三に、この問題は、素人考えでは理論的に正しそうに見えても、実際には見落としていることがあるということの実例です。私は、当初、このような問題がありうるということに全く気がついていませんでした。それは、パンツァーさんも同様でしょう。結局、専門家でない我々には良く分かっていないのです。ワープが実際どういうものかも、それが抱える問題も。
>  言うなれば、それは、航空力学も実際の飛行機もほとんど知らぬ素人たちが、飛行機について議論しているようなものです。それまで模型飛行機しか知らなかった人々が、いきなり数百トンもの実用機を見せられ、「さあ、この3倍の大きさの実用機は、飛べるか飛べないか」と聞かれたとします。どう答えるか。
>  実際に3倍の飛行機が飛べるか飛べないかを判定するには、航空力学と実験の助けを必要とします。少なくともそこで『いや、模型飛行機の数千万倍の重さの実用機が飛べるなら、その3倍程度の実用機が飛べない確率は0.0001%です』などと言ったところで、その見積もりが正確である可能性など、万に一つもないでしょう。
>  我々に可能な唯一の答、それは、『いや、我々は飛行機について詳しいことは知らないので、飛べるかどうかは分かりません』というものではないでしょうか。

同じだと思いますよ。
はっきり言って、ベースは質量とエンジン出力の関係ですよ。
飛行機の場合は、空気の存在が無視できないですよね。つまり、重力方向については、浮力による影響が、エンジン出力の不足分を補ってくれるわけであり、水平方向に対しては空気抵抗と言う形で、エンジン出力の抵抗となるわけです。この空気抵抗の影響度は、機体形状によっても、変化するものですね。
エンジン出力の増大も一般に可能ですね。これは、プロペラ式や、ジェットエンジン、さらにはロケットエンジンといった、エンジン自体の方式の変更や、同じ方式のエンジンであっても出力に大小を与えることによって、達成されています。
機体強度の問題に関しても、実用性やコストを無視すれば、(質量を増大させることで)いくらでも頑丈に作りうるわけで、それをエンジン出力で補えれば対応できるはずです。

現在の航空機は、重量限界に達しているわけではないでしょう。
コストとか実用性を度外視すれば、三倍どころか10倍でもそれ以上でも、まだまだ重い航空機をいくらでも飛ばせるのではありませんか。
(が、飛行機の底面にズラリと車輪を並べても過重を支えきれないとか言う限界は、容易に起こりうるかもしれませんが)

第二次大戦中、アメリカ軍は、B29(別名:スーパーフォートレス、超要塞)などという爆撃機を製造しましたが、この前身のB17爆撃機などと比べても、倍くらいは重いのじゃないのでしょうか(ちょっと調べきれておりませんが)。

>  実際に3倍の飛行機が飛べるか飛べないかを判定するには、航空力学と実験の助けを必要とします。

これで、十分なんですよ。
この「実験の助け」というのは、なんらかの理論に基づいて作ってみたものが、本当に理論通りに動くかどうかの検証に当たるわけです。
Nightさんが「航空力学」と呼んでいる部分、つまり理論部分で道筋が立てられたなら、あとは実験するしかないのです。
上で述べたとおり、Nightさんの言う「航空力学」上の問題では、別に、3倍どころか10倍でも問題が起こるとは思えないですね。必要なエンジン出力さえ確保できれば。

帝国軍も、ガイエスブルグ要塞に関して、
「小規模の実験がかさねられ、要塞のワープインおよび(以下略)」(3巻雌伏篇4章Ⅲ4段落目)
実験を積み重ねて、実施段階の不具合を潰していったわけですから。
同盟側においても、既知の理論で問題が無さそうに思えたら、後は実験を積み重ねて検証するしかないのは、当然のことです。

なにせ、宇宙の方が、空中の場合よりも話が単純ですので、上で述べた車輪の話のような問題も発生しないわけです。

親記事No.6105スレッドの返信投稿
board4 - No.6182

Re:作品の解釈について

投稿者:Night
2005年01月10日(月) 03時18分

 まず、最初に申し上げておくことがあります。
 この議論では、できうる限り現実世界の科学の手法を議論に取り込むべきであると私は考えています。
 何故なら、議論の中心は(作品世界の中のこととはいえ)科学技術に関する話題でしたし、問題の核心は『Aという技術を使って、Bという問題を解決することができる』という主張の科学的な真偽判定に関するものだからです。このような科学技術の問題に対して客観的で正しい答を出しうる手法として、現実の科学の手法より適切な方法を私は知りません。

 科学の手法の具体的な内容について、私はここでいちいち書きません。
 何故なら、それを書いていたら長くなりすぎるし、第一、私よりもっと文章力も科学力も優れた人々が書いた素晴らしい啓蒙書やWebページがたくさんあります。特に、科学者の書いた疑似科学批判の本には、ある主張が科学的に正しいか否かをどのように判定するかについて書かれていることが多いので、参考になると思います。少し例を挙げます。

『カール・セーガン 科学と悪霊を語る』(著:カール・セーガン、新潮社)
『なぜ人はニセ科学を信じるのか』(著:マイクル・シャーマー、ハヤカワ文庫)

> 例えば、以下のNightさんの記載
> 「例えば、『実は、艦船級と40兆トンの間には、どうしても理論的にワープできない質量帯があったのだ』ということが判明したとしても、私は驚きません。」
> これは、上の(1)(2)以外に、
> (3)一読者の考えた設定
> を、作品の解釈に取り入れろ、といっているに等しいのです。

 私は、『そういう質量帯があるのだ、皆はそれを認めろ』などという馬鹿馬鹿しいことを言いたいのではありません。これは科学の手法につながる話です。
 科学の世界では、いかなる仮説も、実験や観察によって裏付けられないことには、確かなものとして認められません。
 艦船級と40兆トンの間の質量がワープしたという事実は作中にはなく、それを可能と結論する実験済みの理論もありません。だから、『艦船級から40兆トンまでの個々の質量もワープ可能である』という仮説は、確かなものとして認めるわけにはいかないのです。
 しかし、軽い物も重い物もOKだから、中間の物もOKという仮説には、ある程度の妥当性があると思われます(反例も見つかっていませんし)、ですから、このような仮説を使った推論は、『未検証、確実とは言えない』というラベルをきちんと貼った上で、"やや重い"程度の判断材料として使おう、ということを言いたいのです。

 上で『未検証』と書きましたが、それは、いずれ検証されるかもしれない、ということを意味します。外伝や続編が書かれるかもしれないし(可能性はゼロではないでしょう)、そもそも、銀英伝の世界を、この世界とは異なる並行世界と考えるなら、その世界の中ではこの検証が行われる日が来るかもしれません。
 その時、『実は、艦船級と40兆トンの間には、どうしても理論的にワープできない質量帯があったのだ』という結果が仮に判明したとしても、仮説はどうせ『未検証、確実とは言えない』程度のものだったわけだから、特に驚く必要はなく、仮説を捨てればいいだけなのです。逆に、そのような事実はないと観察されたら、その時初めて、この推論のラベルは『検証済み、ほぼ確実』にできるのです。

> 繰り返しますが、作品で設定されている例外事項を除いては、すべて、現実の我々の世界の法則性を準用すべきなのです。
> (3)のような解釈の原則を認めるなら、実は、ヤンやラインハルトは、遺伝子工学で作り出された人造人間だった、とかいう解釈だってできることになりますよ。ヤンやラインハルトが人造人間ではない、と作品中に明言されてないのは、我々の世界の常識を準用して、当然(腎臓でない)自然の人間あることが分かりきっているからにすぎません。
> 上の解釈の方法論(1)(2)を、読者は作品を読む過程で、一々、実行しながら、読んでいるのですよ。こんなことに疑いを抱く人は、通常いないはずです。

 読者が(1)(2)を、作品を読む過程で実行していることに異論はありません。そうでなければ、小説を気楽に楽しむ事などできるはずがありません。
 しかし、それは気楽に読書をしている間の話です。一つの出来事に関してひとたび科学的な議論を始めるとなれば、真偽の判定対象となる主張に対しておよそ全てを疑ってかかるのが、科学の世界のルールです。
『こんなことに疑いを抱く人は、通常いないはずです』とパンツァーさんは書かれていますが、いるのです。それは科学者です。以下に、上で挙げた本の著者であるセーガンの言葉を引用します。

(以下、『カール・セーガン 科学と悪霊を語る』第2章P43より)
<そして、新しいアイディアが出れば、それがどんなに奇妙なものであっても心を開いて受け止める一方で、新しいアイディアであれ定評ある学説であれ、とことん疑ってみるよう強く迫るのである。こうした思考法は、めまぐるしく変化する時代の民主社会にとっても欠かせない道具になってくれるだろう。>

 ラインハルトやヤンは、遺伝子工学で作り出された人造人間かもしれない。
 そのように言われたとしても、日常生活では一笑に付して終わりにします。しかし、科学の世界はそうではありません。可能性はあるのではないか、とひとまずは疑ってみることこそ、科学の基本です。
 作中に、遺伝子工学で人造人間を作る技術があるとは、書かれていません。劣悪遺伝子排除法に関連する形で、社会の描写にも影響があるはずなのに、そのような傾向は見られません。また、もし、ラインハルトやヤンの才能の根源が遺伝子工学にあるとするなら、そのように重要なことが作中に一切書かれていないことは、かえって不自然です。そのように考えていけば、ラインハルトやヤンを人造人間とする判断材料は全くと言っていいほどなく、逆に通常の人間とする材料は山程あることが分かってきます。よって、ここまで検討して初めて、『ラインハルトやヤンが人造人間であるという命題は、ほぼ確実に偽』という結論を出す事になります。

 お分かりでしょうか。
 科学的に考える、とはこういうことです。パンツァーさんにとって、上のような疑問は、考える価値すらない笑い話でしかないかもしれませんが、科学者にとってはそうではない。提出された疑問がどんなに馬鹿らしく見えても、ひとまずは検討してみる。得られた判断結果にしても、絶対のものとは思い込まない。それが科学的な思考です。
 そういう意味で、そもそも、私とパンツァーさんでは今回の議論に対する考え方が違っているように思えます。

> (A)
>  同盟によるフェザーン侵攻の命題ですが、真の皿に乗せられる材料として、『帝国艦隊も民間船も、実際に同盟とフェザーンの間を行き来している』というはっきりとした作中事実があります。これは、完全に確かな"重い"知識です。逆に、偽の皿に乗せられる材料は全くと言っていい程ありません。よって、天秤は真の方に大きく傾き、この命題には、『ほぼ確実に真』という判定を下す事ができます。この判定は余程のことが無い限り覆ることのない、信頼できるものです。
>
> 上の記載を見る限り、Nightさんは暗黙の前提として、次の二つの前提を打ち立てています。
> 1:作品中で実際にフェザーンに向かわなかった帝国艦艇や民間船も、作品中で実際にフェザーンに到達した艦船と同じ構造をしている。
> 2:同盟の艦船も、作品中で実際にフェザーンに到達した艦船と同じ構造をしている。
> 作品中の一体どこに、同盟の艦船が、作品中で実際にフェザーンに到達した艦船と同じ構造をしている(例えば、当然ながら質量の大きさも同じ)、と記載されていますか?
>
> 同盟の艦隊がワープを行なっている記載は作品中にありますが、それが例えば作品中に記載のないフェザーンへのワープ移動に関しても、可能であると言い切れるのでしょうか?
> 「艦船級と40兆トンの間には、どうしても理論的にワープできない質量帯があったのだ」という可能性を認める人が、
> 「フェザーン行きの航路に関しては、同盟の艦艇では、どうしてもワープできなかったのだ」
> という可能性を、どうして否定できるのでしょうか?

 私は可能性を否定などしていません。もう一度、私の書いた文を良く読んで下さい。

<この命題には、『ほぼ確実に真』という判定を下す事ができます。この判定は余程のことが無い限り覆ることのない、信頼できるものです。>

 『ほぼ確実に真』『余程のことが無い限り覆ることのない』ときちんと書きました。つまり、『余程のことがあれば覆るし、偽になる』ということです。そして、上でパンツァーさんが色々と書いている事は全て、『余程のこと』です(御自分でもお分かりのはずです)。
 まず、戦略上、重要な地域であるフェザーンに行けないというような重大な欠陥を、同盟政府が放置している理由は何でしょう。次に、本当に同盟艦船がフェザーンに行けないとして、そんなに重要な事実が作中に一切出てこないというのはあまりに不自然です。同盟艦船がフェザーンに行けることを支持する判断材料が山程あるのに対して、フェザーンに行けないことを支持する材料は全くと言っていいほどありません。そういう既存の証拠を全てひっくり返してなお、同盟艦船だけがフェザーンに行けないという状況があるなら、それが『余程のこと』でなくていったい何でしょうか。

> ちなみに、私は、
> 上の解釈の方法論(1)(2)にしたがって、
> ワープ移動は「質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである」という原則を守る移動体(艦船)であれば、なんでも基本的にワープ移動可能であると見ているので、航路に限定されることも当然なく(フェザーン行きの航路であろうがなかろうが)、作品中に実行例がなくても、「同盟の艦船がフェザーンに到達できる」と考えます。
>
> 上の解釈の方法論(1)(2)を利用しないということが、
> どれだけ難しいか、お分かりになるでしょうか?

 どれだけ難しくても、それを科学的な議論の対象にするなら、全てを疑ってかからねばなりません。その意味で、「同盟の艦船がフェザーンに到達できる」というあまりに確実そうに見える命題でさえも、科学の立場からは一抹の疑問を付けざるを得ないのです。上で『余程のこと』についてつらつらと書いた私がなお、この命題を『確実に真』ではなく、『ほぼ確実に真』と判定するのには、そのような理由があります。
 再度、セーガンの言葉を引用します。私のスタンスは、できる限りこれに従うようにしているつもりです。

(以下、『カール・セーガン 科学と悪霊を語る』第2章P43より)

<さらに言えば、科学者という人たちは、自分のやっていることが正しいと断言することにはとても慎重なものである。推測や仮説は当然ながら暫定的なものでしかないし、くりかえし検証されてきた自然法則でさえも、絶対に正しいとはいいきれない。なぜなら、まだ調べられていない新しい状況があるかもしれないからだ。>

>  (B)で
> 「一般的に、技術的な問題の難易度は扱う対象の規模と相関関係にある」とか、『軽い物と重い物の両方をワープできるなら、その中間の重さの物もワープできるだろう』
> という推論が、「ある程度の確からしさで言えると思われ」ると、
> Nightさんはしていました。
> 要は、質量によらずワープできる、といっているのです。
> それならば、
> 「軽い物で成り立ち、重い物でも成り立つ場合、その重いものより若干重いものでも、ワープできるだろう」
> という推論も、
> 「ある程度の確からしさで言えると思われ」ると思いますね。
>
> が、まあ、このような推論自体が、
> すでに、上の解釈の方法論(1)(2)を適用している結果なんですよ。
> ワープに関しても、ワープという超絶的な移動結果については未知としても、ワープ移動を可能とする要件(質量とか、エンジン出力とか)については、現代の物理学を準用して考えているのです。
> Nightさんにおいても。

「軽い物で成り立ち、重い物でも成り立つ場合、その重いものより若干重いものでも、ワープできるだろう」という推論を、科学的なものとして認めるわけには行きません。何故なら、それを認めてしまえば、何度も話題に挙げているように、無限ループを構成していかなる限界も突破してしまいます。そもそも、推論としての妥当性を欠いています。

『お前も(1)(2)を適用しているではないか』という指摘に対しては、その通りですとお答えします。分かっている事実が少ない以上、そのような仮説を推論に組み込まなければ、何も言えなくなってしまいます。
 しかし、私は、そのような不確実な推論を使って得た結果には、『未検証、確実とは言えない』というラベルをきちんと貼らなければならないとしているのに対し、パンツァーさんは、そのような区別をする気すらなさそうです。それが、科学的かそうでないかの差です。

> したがって、はっきり言いえるのは、
> 質量増大の大きさに応じた困難度があるのではないか、ということです。
>
> 上の話も、36基対12基だとしたら、単純に考えたら、3倍の困難度ということになりますね。結局、困難度を、質量の増大による一次比例的に、捉えていることになるわけです。
>
> しかし、その前に、4000万倍の困難度を、やすやすと帝国軍はクリアしているわけですから、さらに3倍程度困難度が増したって、しれていると思いますよ。
> 私が艦船級の質量(100万トンクラス)と、要塞級の質量(40兆トンくらす)とを、技術的困難の比較基準としている理由も、このようなところです。

 『しれていると思いますよ』というだけでは、駄目なのです。
 少なくとも、科学ではそれは確かな証拠としては認められません。
 パンツァーさん自身がそのように思われるのは個人の自由です。しかし、それを科学的な結論として周囲に認めさせたいなら、『思いますよ』以外の具体的な証拠が必要です。

 同様に、パンツァーさんが『質量増大の大きさに応じた困難度があるのではないか』というモデルを作られるのも、個人の自由です。しかし、そのモデルを科学的に妥当なものとして認めさせるためには、そのモデルが確かにワープの現実を正しく説明できていることを示す責任があります。
(ここで、飛行機その他の"実例"を単に挙げても、何の説明にもなりません。その実例と、ワープが、確かに同じようなものと見なせることを証明しない限りは)

> (2)(3)の理論とは、
> 複数エンジンの同時作動の話と、時空震の話でしたが、
> どちらも質量の大きさに比例する話ですね。
> 私が言っている「大きく響く場合」とは、
> 例えば、艦船級から要塞級のように、4000万倍も質量が増大する場合を指すのです。
> もちろん、上の話を離れて一般的な話であれば、数倍程度で「大きく響く場合」も当然あるでしょう。数倍程度で「大きく響く場合」のであれば、4000万倍も質量が増大する場合は、まったくお話にならないというだけの話です。
> 逆に、4000万倍も質量が増大して問題がないのであれば、数倍程度で大きく響くわけがない、のです。
> このような推論は、皆、上の解釈の方法論(1)(2)にしたがってのものです。

 ですから、『質量の大きさに比例する』とか、『数倍程度で大きく響くわけがない』ということの具体的な根拠は一体何なのですか。私は、ずっとそれを聞いているつもりなのですが。
 上に書いてあることは、突き詰めれば、先の例と同じく『根拠は、自分がそう思ったから』という以上のことではありません。もう一度申し上げますが、『そう思う』というだけでは、科学的な証拠として認められないのです。
 パンツァーさんが上のような仮説を立てられるのは結構です。しかし、仮説は実験や観察で裏付けられない限り、確かなものとしては認められません。それは科学のルールです。

 最後に、パンツァーさんに確認したい事があります。
 パンツァーさんは、御自分の主張を、『そう思う』という程度の単なる主観的かつ個人的な見解の表明と考えられていますか。それとも、もっと確かな根拠を持つ客観的かつ科学的な説の表明と考えられていますか。
 前者であるのならば、もはや議論すべきことはないと思います。ただし、私はパンツァーさんの論を客観的、科学的に確かなものとは認めません。
 後者であるのならば、上記のような私の疑問に対して、具体的な根拠を示してください。科学的な主張は、そのような批判者からの疑問に耐えうることで、初めて認められるのですから。

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board4 - No.6183

Re:静止状態の質量と、加速状態の質量との質的相違

投稿者:Night
2005年01月10日(月) 07時33分

 色々と考えてみましたが、臨界点あらため限界深度の話については、詳細な検討は不可能と言う結論に達しました。

> 大体、相対的な大質量体の影響により、目的地に到達できない、という話であって、ワープそのものが行えないと言うわけではないですね。しかも、逃走中のように時間的余裕が無い場合に、大質量体の影響を加味した航路計算を行い得ないだけの話で、通常(非戦闘時)なら、ワープできるのかもしれません。

> ワープエンジンにより加速されている部分の質量の影響と、その外部の静止している質量の影響とは、質的に明らかに異なるのではないでしょうか。

 上記について議論を行うためには、ワープに関する知識が必要ですが、当初から申し上げているように、それを入手する事は不可能です。ですから、この件に関して、『確実に限界深度が存在する』ということを客観的検証に耐えうるように証明することは不可能です。よって、この件に関しては、私の勇み足であると認め、この説は『未検証の仮説』に落とす事にしたいと思います。また、パンツァーさんに対してお詫びいたします。申し訳ありませんでした。

 ただ、以下については、反論しておきたいと思います。

> 同じだと思いますよ。
> はっきり言って、ベースは質量とエンジン出力の関係ですよ。
> 飛行機の場合は、空気の存在が無視できないですよね。つまり、重力方向については、浮力による影響が、エンジン出力の不足分を補ってくれるわけであり、水平方向に対しては空気抵抗と言う形で、エンジン出力の抵抗となるわけです。この空気抵抗の影響度は、機体形状によっても、変化するものですね。
> エンジン出力の増大も一般に可能ですね。これは、プロペラ式や、ジェットエンジン、さらにはロケットエンジンといった、エンジン自体の方式の変更や、同じ方式のエンジンであっても出力に大小を与えることによって、達成されています。
> 機体強度の問題に関しても、実用性やコストを無視すれば、(質量を増大させることで)いくらでも頑丈に作りうるわけで、それをエンジン出力で補えれば対応できるはずです。

 上のように思えるのは、パンツァーさんが実際に航空力学の初歩と、実際の飛行機について知識を持っているからです。ほとんど何も知らないワープについても、同様のことが言えると思われますか?
 それから、『ベースは質量とエンジン出力の関係ですよ』とありますが、質量とエンジン出力の関係と一口に言っても、色々あるでしょう。ワープ力学(仮名)では、必ずしも質量に対して比例となるかは不明です。ワープにおける質量とエンジン出力の関係が、ニュートン力学や航空力学のそれと同一視できると言うことの根拠は何ですか。

> 現在の航空機は、重量限界に達しているわけではないでしょう。
> コストとか実用性を度外視すれば、三倍どころか10倍でもそれ以上でも、まだまだ重い航空機をいくらでも飛ばせるのではありませんか。
> (が、飛行機の底面にズラリと車輪を並べても過重を支えきれないとか言う限界は、容易に起こりうるかもしれませんが)
>
> 第二次大戦中、アメリカ軍は、B29(別名:スーパーフォートレス、超要塞)などという爆撃機を製造しましたが、この前身のB17爆撃機などと比べても、倍くらいは重いのじゃないのでしょうか(ちょっと調べきれておりませんが)。

『車輪を並べても過重を支えきれないとか言う限界は、容易に起こりうるかもしれませんが』とありますが、同様の障害がイゼルローン移動要塞化計画で起こらないと言えるでしょうか(これは何も、イゼルローンに車輪を付けろ、と言っているのではなく、航空機の車輪の問題に該当するものとして、例のエンジン同調の話や時空震の話があるのではないか、ということです)。

 先の例に戻りましょう。模型飛行機しか知らない人々が見せられた実用機と言うものが、現代技術で作ることができる最大級の飛行機だったとしたらどうですか(そうでないという保証は全くないでしょう?)。
 その時も、パンツァーさんは、『3倍程度の実用機が飛べない確率は0.0001%です』と主張されますか。

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