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「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝」の作者氏が連載継続の意向を表明

銀英伝二次創作「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝」の作者氏が、どうやら連載継続の意向を表明したようですね↓

http://megalodon.jp/2012-0706-2023-07/mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/101342/blogkey/491459/
> 残念な事ににじファンが消滅する事になりました。
>
自分としてはこの小説をなんとか完結まで持っていきたいと思います。
> 現在なろうの方に移転できるかもしれないので様子を見ているところです。
>
> ただ、なろうでも二、三年後には中止となる可能性も有ると思いますので全く別のサイトで連載を開始するかもしれません。今、その辺りも含めて様子見です。
>
> 色々と温かいメッセージ、感想、ありがとうございました。

正直、「アイデアも枯渇していたし、良い機会だから連載を中止してしまおう」と考える可能性も全くないわけではなかったので、ファン的には朗報と言えるところでしょうか。
ただ、いくら「らいとすたっふルール2004」を遵守しているとは言え、現時点でも「小説家になろう」への移転はかなり難しいのではないかとは思わずにいられないですね。
2012年7月6日時点では、「らいとすたっふ」公式サイドは今回の問題について何も知らないかのような態度を取り続けています。
「にじファン」の読者や二次小説作者、場合によっては運営からも、相当数の連絡が行っているはずなので、今回の問題の所在すら知らないというのはありえないのですが。
ただでさえ二次創作アレルギー的なところがある田中芳樹や「らいとすたっふ」が、「小説家になろう」における二次創作掲載の許可を出すとは考えにくいものがありますし。
それに実際問題、いくら原作側で二次創作に対して寛大なスタンスを表明しているところであっても、下手すれば数十人~百人単位の数で「二次創作の許可」を求められたりしたら、拒絶せざるをえない部分も多々あるのではないかと。
下手すれば、「公式から貰った許可」を錦の御旗のごとく振り回して好き勝手をやらかす二次小説作者が出ないとも限らないのですし。
運営側にしてみれば、訴訟対策の観点から事前に許可が得られたものだけを掲載するようにしたい、というのが正直なところではあるのでしょうが、そんな形で許可を求めるというのは、原作側にも二次創作側にも、何よりも読者にとっても不幸な結果しかもたらさないのではないかと思うのですけどね。

かと言って、「にじファン」以外の二次小説投稿サイトに小説データ諸共移転するというのも、かなり問題な部分はあるでしょうね。
「にじファン」の閉鎖発表以降、これまで「にじファン」で小説を投稿していた作者達の一部が他の二次小説投稿サイトへの移転を進めているのですが、移転先の原住民からは「こっち来るな」の大合唱が頻発しているありさま。
大量投稿に伴うサーバ負荷の増大や、新着情報・ランキングなどの混乱に加え、今年の3月に「にじファン」で一次作品の規制が行われた際にも同じことが起こったことから「にじファン」投稿者に対する心証そのものが悪化していたことが主な原因のようですが。
原住民側にしてみれば、「にじファン」からの【難民流入】は自身の小説掲載にも悪影響を及ぼしかねないわけで、そりゃ「にじファン」に対して拒絶的な反応も抱こうというものです。
またそれに加えて、当の「難民」達自身も「亡命編」におけるヴァレンシュタインのごとき倣岸不遜な態度を移転先で堂々と披露しまくっていることが、その悪感情にさらにガソリンを注ぎ込むような効果を生み出してしまっている状況もあるわけで。
……ひょっとして、「亡命編」のあの辺りの描写は、「にじファン」の今現在の状況を予見して書かれたものだったりするのでしょうかね(苦笑)。
もちろん、「その手の好き勝手を受け入れ側は無条件に受け入れてくれる」という図式は見事に外れてしまっているわけなのですが(爆)。

「にじファン」閉鎖問題はまだまだ混沌とした様相を呈していますが、7月20日の閉鎖までに頻発するであろう騒動の数々は、二次創作本体以上に面白い題材とテーマをウォッチャーに提示してくれそうではありますね。

二次小説投稿サイト「にじファン」が閉鎖を発表

二次小説投稿サイト「にじファン」が、2012年7月20日正午をもって閉鎖すると公式発表しました。
原作者および二次小説投稿者からの問い合わせが殺到し、運営側が対応できないと判断したのが主な理由とのことです↓

http://megalodon.jp/2012-0704-2053-57/nizisosaku.com/nizi/news1/
> いつも小説家になろう・にじファンをご利用いただきまして、ありがとうございます。
>
> この度、
運営上の理由により、二次創作専門投稿サイト「にじファン」のサービス提供を終了させていただくことといたしました。具体的な日程に関しましては以下の通りです。
>
>  ◆サービス終了日時
>  2012年7月20日(金) 12:00(正午)
>
> 2012年3月15日以降、にじファンではサイト内での適切な作品掲載を目指し、規制対応を行ってまいりました。しかしながら、
複数の権利者様より直接のご連絡をいただき、ユーザの方からも権利確認に関する多数のお問い合わせをいただいている現状がございます。
>
> 現在、にじファンには多くの権利者様の関連二次創作の投稿が行われております。
今回の規制理由となります権利問題を解決する為には、それら全ての作品の権利者様に対し、運営より掲載の確認を行わせていただくべきであると考えております。ですが、にじファンの現在の投稿規模では、そういった個別対応を行なうことが現実的ではない状況となっております。
>
> その為、
現在のにじファンのサービス継続を行いますことはユーザの皆様並びに権利者様に対し、さらなる不信とご迷惑を重ねる行為であると判断いたしました。よって、今回のサービス終了を決定いたしました次第です。
>
> にじファンのサービスを開始いたしました2010年8月より約2年の間、当サービスをご利用いただきまして、誠にありがとうございます。
>
> ヒナプロジェクトではご利用の皆様にご満足いただけるサービスの運営・提供に努めて参りますので、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
>
>
> ■投稿作品の取り扱いに関して
>
>
ご投稿いただいておりました二次創作小説に関しましては、全作品を公開停止とすることで対応を行なわせていただきます。
>
> 公開停止となりました小説は外部よりの閲覧が不可能となりますが、作者の方はユーザページ内「投稿済み小説一覧」にてデータをご確認いただくことが可能です。
>
>
公開停止となりました小説データに関しましては、2012年中はこれを維持し、2013年1月上旬より、順次削除を行なう予定です。ただし、権利者様からの申し立てがございました場合は、早期の削除を実施する場合がございます。あらかじめご了承ください。
>
>
小説家になろう内での二次創作小説の受け入れに関しましては、別途お知らせとガイドラインを掲載いたしました。二次創作小説の投稿をご検討中の作者の皆様は必ずご確認をいただきますようお願い申し上げます。
>
> サービスの終了にあたり、これまでご利用いただいておりましたユーザの皆様には、多大なるご迷惑をおかけいたしますこと、心よりお詫び申し上げます。

しかし、下手すれば万の単位にまで届くかもしれない二次小説が半月弱で全て消滅を余儀なくされるというのは、何とも理不尽な話ではありますねぇ。
それらの中には、現在進行形で続いている作品もあれば、既に完結したものや更新が完全に止まった作品もあるのでしょうけど、味噌も糞も一緒に削除というのはちょっと……。
いい機会だからと作品を消す投稿者や他所の投稿サイトへの移転を検討する投稿者、それに「消される前に!」と保存に走る読者と、「にじファン」界隈はこれから半月の間、閉鎖に向けての様々な人間ドラマが展開されることになりそうではありますね。

ところで「にじファン」といえば、我らの偉大なるキチガイ兼狂人にして被害妄想狂患者なエーリッヒ・ヴァレンシュタインさんは一体どうなるのでしょうか?
作者氏は「にじファン」以外に自作のサイトやブログを持ってはいないようですし。
あちらのサイトの感想欄では、「にじファン」と同じ企業が運営する「小説家になろう」への移転説も囁かれているようですが……。
これを機会に区切りをつけて作品執筆を放棄するのか、他所の投稿サイトなり自作のサイト&ブログを作って継続するのか、作者氏の決断が待たれるところです。
とりあえず、「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝」の「本編」および「亡命編」については、万が一のことも考えて全ログを保存しておきました。
せっかく複数の考察まで作ったのですから、消えてもらっては困る部分もありますし。
ちなみに、「にじファン」の投稿小説を保存するのには、以下のサイトのダウンロードサービスを使うのが便利です↓

小説家になろう~テキストダウンロード支援~
http://narou.dip.jp/download/

「にじファン」には「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝」以外にも銀英伝の二次小説が少なからず存在しますから、「らいとすたっふ」側も対応を迫られることになるかもしれませんね。
この手の二次創作に関する規約を定めた「らいとすたっふルール2004」に照らせば、「にじファン」に掲載されている大抵の二次小説はOKだろうとは思うのですが……。
ただ、「らいとすたっふ」や田中芳樹側にしてみれば、銀英伝を含めた二次創作の跳梁跋扈はあまり好ましいものではないでしょうし、いつぞやの銀英伝パチンコ化問題の前例もありますから、ひょっとすると無視黙殺するか、内容の検閲まがいのことをやらかしたりする懸念も全くないとは言えないところで(-_-;;)。
ある程度の著作権料は接収しているにせよ、客にカネを支払わせて公演している舞台版の完全オリジナルストーリーをすら容認する田中芳樹サイドが、無償の二次創作を拒否するというのは、まあ普通はありえないだろうと思いたいところですけど、果たしてどうなることやら。

それにしても、今回の「にじファン」閉鎖騒動は、巨大なSNSやレンタルサイトの脆い部分が一挙に噴出したような感すらありますね。
SNSやレンタルサーバの軒先を借りてのサイト&ブログの運営は、運営側の意向ひとつでいともたやすく危機的状況に直面することにもなりかねない、という事実が、今回誰の目にもはっきり分かる形で明示されてしまったわけです。
これが自分の意思や自己管理でそうなるというのであれば、まだ諦めもつくでしょうが、
そんなものと関係のないところでトラブルが発生するというのでは怒り狂っても不思議なことではありません。
かくいう私自身、ずっと使うつもりだった初代の場外乱闘掲示板やタナウツ本家の4代目掲示板を、自分の意思ではなく運用側のトラブルや閉鎖などで放棄を余儀なくされた過去がありましたし。
つい最近も、顧客から預かった大事なデータをバックアップ諸共消滅させてしまったファーストサーバの事件があったばかりですし、SNSやレンタルサーバ【だけ】に依存するのも正直考えものだろうとは思わずにいられないですね。
まあ、自分でサーバを管理運用してサイトやブログを営むのも、それはそれでカネも手間暇もかかり苦労させられるものではあるのですが。

「ナイトライダーネクスト」のDVD発売&レンタル開始

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アメリカの人気テレビドラマシリーズ「ナイトライダー」の続編となる「ナイトライダーネクスト」のDVD&ブルーレイボックスが発売されたそうですね。
2012年7月3日に前半部の、8月2日に後半部のテレビ放映分が収録されたものが、それぞれ発売されるのだそうで↓

http://www.cinematoday.jp/page/N0043640
>  [シネマトゥデイ映画ニュース] 1980年代に人気を博したテレビドラマ「ナイトライダー」の新シリーズ「ナイトライダー ネクスト」に登場する、人工知能搭載のスペシャルカー「ナイト3000」(キット)が初来日を果たし、3日、東京夢の島マリーナで行われたDVD&ブルーレイ発売記念記者発表会に登場した。
>
>  まだ日本に到着したばかりというキットは、おなじみの声で「皆さん、こんにちは。ナイト3000、通称キットです。ナイトといっても夜ではありません。騎士のナイトです」とまずはダジャレであいさつ。さらに「DVDとブルーレイが1枚でも多く売れるよう、ぜひ宣伝活動のご協力をよろしくお願いします」と来日の目的をよく認識して、作品のPRを欠かさなかった。
>
>  そんなキットが日本で行ってみたい場所はといえば、この日もマリーナからその雄姿が見られた東京スカイツリー。キットによれば「ブルーレイボックスのアウターケースの厚さが2.4センチですから、634メートルの東京スカイツリーまで積み重ねますと、2万6,417枚で高さを超えます。ですから、ブルーレイの売上目標としては2万6,417枚をオススメします」とのことで、瞬時の計算でスーパーマシンぶりを発揮していた。
>
>  またこの日は、ミスFLASH2012の3人(遠野千夏、葉加瀬マイ、小松美咲)が応援に駆け付けたが、キットは「わたしは人間には興味がありません」とすげない反応。しかしここでもすぐに「マイケルがいたら大変です。マイケルは美人が大好きですから」とつなげ、あいにく相棒不在のこの日だったが、パートナーの特徴をよくつかんだ名コンビぶりを見せていた。
>
>  本作は1980年代に人気を博した「ナイトライダー」の新シリーズ。登場するスペシャルカーはナイト2000からナイト3000へパワーアップし、旧シリーズでドライバーだったマイケル・ナイトの息子マイク・トレーサーがナイト3000を操る。(取材・文:長谷川亮)
>
>
海外ドラマ「ナイトライダー ネクスト」DVDとブルーレイボックスは7月3日発売 税込み価格 DVD :2万4,000円、ブルーレイ:2万6,000円) レンタルも同日開始

ちなみに公式サイトはこちら↓

http://knightridernext.com/

以前フジテレビ系列で深夜放映されていた際は「関東限定」などという、都会と地方の地域間格差を象徴するような弊害がくっついている始末でしたからねぇ(-_-;;)。
おかげで、九州在住の私は全く観賞できないという事態に直面する羽目に(T_T)。
一昔前ならともかく、ネットや携帯機器などの情報獲得ツールが著しく発達したこのご時勢にこんなありえない地域間格差があるのも、テレビが衰退する理由のひとつなのではないか、と少々八つ当たり気味ながらも思わずにいられないところなのですけどね(苦笑)。
まあ、この手の地域間格差が存在するのは何もテレビに限ったことではなく、映画やその他の媒体などでも似たような話があったりするのですが。

それはさておき、熊本でもレンタルで観賞することができるのであれば、ナイトライダーファンとしては是非とも観賞したいところですね。
しばらくは慢性的な「貸し出し中」状態が続くでしょうから、ある程度時間が経ってからということにはなりそうですが。

銀英伝2次創作「亡命編」におけるエーリッヒ・ヴァレンシュタイン考察15

この考察の中では、もはや「キチガイで狂人な被害妄想狂患者」の代名詞と化しているエーリッヒ・ヴァレンシュタイン。
そうなってしまったのは本人の自業自得以外の何物でもないのですが、「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン」という名前の元ネタにされてしまった人達にとっては何とも傍迷惑な話ではあるでしょうね。
エーリッヒ・ヴァレンシュタインの名前の起源と推察される元ネタは2人います。
ひとりは「エーリッヒ」というファーストネームの元ネタとなった人物で、第二次世界大戦でドイツの軍人として活躍した名将エーリッヒ・フォン・マンシュタイン
皮肉にもこれは、「反銀英伝 大逆転!リップシュタット戦役」の主人公エーリッヒ・フォン・タンネンベルクと全く同じだったりします。
しかも両者共に、身内の中に「ハインツ」という名を持つ身近な人間がいるという設定まで実は全く同じ(ヴァレンシュタインは父親の法律事務所の共同経営者が、タンネンベルクは父親が、それぞれ「ハインツ」というファーストネーム持ち)というオマケ付き。
この「ハインツ」もまた、マンシュタインと同時期に活躍したドイツ軍人ハインツ・グデーリアンが元ネタと考えられます(こちらも「大逆転!」では確定事項なので)。
……まさか、タンネンベルクこそがヴァレンシュタインの本当の元ネタである、などということはさすがにないだろうとは思うのですが……(苦笑)。

そしてもうひとり、こちらは「ヴァレンシュタイン」という姓の元ネタであろうと考えられる人物は、17世紀のドイツ三十年戦争で活躍した傭兵隊長アルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタイン
アルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタインは、1618年~1648年の長きにわたって繰り広げられたドイツ三十年戦争の第2期(デンマーク・ニーダーザクセン戦争)および第3期(スウェーデン戦争)にかけて、ハプスブルク朝神聖ローマ帝国に与して勝利に貢献し名将として歴史に名を残した人物です。
成り上がりの貴族としてのし上がったアルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタインは、その出自、および独自に考案した軍税徴収システム(占領地から軍税を徴収し資金源とすることで、それまでは難しかった大軍の編成および長期的な軍事活動を容易にした)で帝国内の諸侯達から反発を買う(ヴァレンシュタイン軍に自領土を占領されて問答無用に軍税を何度も徴収される諸侯が少なくなかったため)と共に、時の神聖ローマ帝国皇帝フェルディナント2世にも警戒され、最終的には皇帝が放った暗殺団に殺されてしまうという末路を辿っていたりします。
このアルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタインという人物は、エーリッヒ・ヴァレンシュタインの「ヴァレンシュタイン」姓のみならず、性格設定の元ネタでもあるように思えてなりませんね。
成り上がりで皇帝の信任を得て出世し、軍事力と名声を背景とした傲岸不遜な態度を諸侯のみならず皇帝に対してまで示していた、という点ではエーリッヒ・ヴァレンシュタインにも通じるところがあるのですから。
となると、エーリッヒ・ヴァレンシュタインの末路もまた、アルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタインと同じく「野心ないしは危険要素を上層部から警戒されて暗殺」ということになるのではないかなぁ、とついつい考えてしまいますね(苦笑)。
帝国の上層部から後継者扱いされているらしい「本編」はまだしも、「亡命編」で同盟上層部が能力面?以外でヴァレンシュタインを重用すべき理由なんてどこにもないのですから。
というか現状ですら、対人コミュニケーション能力および同盟に対する忠誠心の面で、今すぐ処刑されてもおかしくないレベルの多大かつ致命的な問題が常に付き纏っているのですし。
いくら同盟の上層部の面々といえども、まさかヴァレンシュタインの人徳(笑)や人格的魅力(爆)に感銘などを受け拝謁すらしてしまうところまで「人間として」堕ちてはいないでしょうから、用済みとなればすぐにでも排除されてしまう危険性を、エーリッヒ・ヴァレンシュタインは史実のアルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタイン以上に持ち合わせているはずなのですけどね。
まあ、ヴァレンシュタインのごときキチガイに「そのような自身の立場を理解しえるだけの自己客観視の視点を持て」というのも無理な注文ではあるのでしょうが……。

さて、今回は第7次イゼルローン要塞攻防戦の締めを飾ることになる、ヴァレンシュタインとラインハルトの通信会談をメインに論じてみたいと思います。
なお、「亡命編」のストーリーおよび過去の考察については以下のリンク先を参照↓

亡命編 銀河英雄伝説~新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
http://ncode.syosetu.com/n5722ba/
銀英伝2次創作「亡命編」におけるエーリッヒ・ヴァレンシュタイン考察
その1  その2  その3  その4  その5  その6  その7  その8  その9  その10  その11  その12  その13  その14

第7次イゼルローン要塞攻防戦でヴァレンシュタインは、イゼルローン回廊内で10万隻もの艦隊を総動員して帝国軍を殲滅させることに成功します。
……正直、原作のイゼルローン回廊の設定から見ても、回廊内におけるそこまでの自由自在な艦隊運用が果たして可能なのかという疑問は尽きないのですが、それはさておき。
敵の殲滅が完了したところで、ヴァレンシュタインは戦闘の経緯と今後の方針について考え始めます。

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/57/
> 目の前にイゼルローン要塞が有る、艦隊戦力を失った要塞だ。攻撃する最大のチャンスなのだが同盟軍は要塞から距離を置き、包囲するでもなく遠巻きにイゼルローン要塞を見ている。
>
> 普通なら各艦隊司令官から攻撃要請が出ても良いのだが誰も総司令部に要請をしてこない。七万隻近い敵の大軍を殲滅した、その事実が艦隊司令官達を大人しくさせている。良い傾向だ、
馬鹿で我儘で自分勝手な艦隊司令官等不要だ。総司令部の威権は確立された。
>
> 既にこの状態で二十四時間が過ぎた。要塞を攻撃するつもりは無い、要塞など攻略しても同盟にとっては一文の得にもならない。帝国は要塞を国防の最前線基地として使うつもりだろうが俺にとっては要塞はあくまで敵艦隊を誘引するための餌だ。敵を釣る餌を自分で食う馬鹿は居ない。
>
> もう間もなくラインハルトの艦隊が此処に現れるはずだ、味方は十万隻、ラインハルトは三万隻、叩き潰すチャンスだがラインハルトがまともに戦うはずはないな。いざとなれば帝国領に撤退、いや後退戦をしかけようとするかもしれない。まあいい、
無理に殲滅することは無い。ラインハルトの艦隊は生かして利用する。今回はそれが出来る。

同盟の艦隊司令官たちも、亡命者な上に自分達よりも階級の低い「馬鹿で我儘で自分勝手な」作戦参謀ごときに好き勝手言われたくなどないでしょうねぇ(苦笑)。
第6次イゼルローン要塞攻防戦で、いくらロボスが無能とはいえ、上官侮辱罪や214条発動などを乱発しまくって総司令部の権威を悪戯に損ねまくっていたのは一体どこの誰でしたっけ?
のみならず、これまでヴァレンシュタインの言動を見ても、まさに「馬鹿で我儘で自分勝手な」言動の実態がそこかしこに露呈しているのですし。
「伝説の17話」や38話の軍法会議でヴァレンシュタインが無罪放免になったのも、ヴァレンシュタインの実力や根回しの賜物などではなく、単なる「神(作者)の奇跡」の大盤振る舞いでしかなかったのですが。
ヴァレンシュタインの論理からすれば、他ならぬヴァレンシュタイン自身こそが「不要」な存在そのものでしかないのですが、相変わらずブーメランな構図について無頓着なその厚顔無恥な図太い神経は大変にスバラシイですね。

そして、それ以上に笑えるブーメランは、「無理に殲滅することは無い。ラインハルトの艦隊は生かして利用する」などと堂々とのたまったことですね。
前回の考察でも取り上げたように、55話でヴァレンシュタインは「イゼルローン駐留艦隊まで無理に殲滅する必要はないのでは?」と困惑しながら話しかけてきたヤンに対して、ここぞとばかりにヤンに対する罵倒を繰り広げまくって快楽にふけりまくった挙句、次の56話では「帝国と同盟じゃ動員兵力だって圧倒的に帝国の方が有利なんだ。そんな状況で敵兵を殺す機会を見逃す……。有り得んだろう、後で苦労するのは同盟だ、そのあたりをまるで考えていない」とまで断じています。
であれば、戦力的には10万隻対3万隻で圧倒的に優位に立ち、しかも友軍が殲滅されたことで士気が低く練度も不十分なラインハルト艦隊を、ここで完全に殲滅しない手はないでしょう。
しかも、ヴァレンシュタインの予測と違い、実はこの状況におけるラインハルトは撤退することができないのです。
ラインハルトはイゼルローン要塞の保持を帝国軍上層部から命じられているため、イゼルローンが陥落することなく同盟軍による攻撃の危機に晒されている限りは、その命令に従ってイゼルローン要塞の防衛を行わなければならないのです。
同盟軍は、ラインハルトが撤退戦に移行しようとしたら、すかさずイゼルローン要塞を攻撃する構えを見せるだけでその意図を頓挫させることが可能なのであり、それでも無理にラインハルトが撤退したとしても、彼の艦隊は軍上層部の命令に拘束されて否応なくイゼルローン要塞に再接近せざるをえなくなります。
何なら、常に1万~2万くらいの戦力をイゼルローン要塞に張り付け、攻撃するそぶりを見せつけ続けても良いでしょう。
もし、それでもラインハルトがイゼルローン要塞の死守命令を無視して帝都オーディンに帰還でもしようものならば、彼は命令違反&敵前逃亡の罪に敗戦責任まで押し付けられる形で軍法会議にかけられ、最悪は銃殺刑に処されてしまうことにもなりかねません。
イゼルローン要塞が陥落するか、軍上層部が死守命令を撤回しない限り、ラインハルトにどれだけの軍事的才能があっても、常に手足を縛られた状態での戦いを余儀なくされてしまうのです。
いや、仮に軍上層部が死守命令を撤回する命令を出したとしても、徹底した通信妨害を行うことでラインハルトの下に命令が行かないようにすることも可能なのですから、実質的には「同盟軍がイゼルローン要塞を陥落させる」までラインハルトは要塞を死守し抗戦を続けなければならないことになります。
ラインハルトにとってはまさに勝算皆無の絶望的な状況、としか評しようがないでしょう。
イゼルローン要塞が帝国にとって重要な要塞であることは同盟側も最初からお見通しなわけですし、そもそも今回の作戦自体が「要塞を利用して艦隊を殲滅する」という方針に則って行われているのですから、ラインハルトが艦隊救援と共にイゼルローン要塞死守の任を受けているであろうことは、別にヴァレンシュタインでなくても同盟軍の誰もが簡単に察知しえる程度の事情でしかないはずなのですけどね。
その上で、58話で展開されているような「毒」とやらを流し込みたいのであれば、ラインハルトの艦隊を殲滅し追い詰めた状態で降伏勧告と共に行い、かつイゼルローン要塞に常駐している数十万~百万単位の軍人達を証人に仕立て上げる、という形で行えば良いのです。
その状況であれば、たとえその後でラインハルトが帝国に帰還しえたとしても、ダゴン星域会戦で敗軍をまとめて帰還したゴッドリーブ・フォン・インゴルシュタットのごとく、帝国の手でラインハルトに敗戦の罪をかぶせて処刑させることも不可能ではなくなるのですから。
これだけの好条件が揃っていて、何故ヴァレンシュタインがむざむざとラインハルトを、しかも艦隊すら無傷の状態で逃がさなければならないのか、はなはだ疑問であると言わざるをえません。
しかも、ヴァンフリートでラインハルトを逃がした際には「伝説の17話」の自爆発言までやらかして他者を論難しまくっていたほどに深刻な、ヴァレンシュタインの「ラインハルト恐怖症」から考えればなおのことです。
自分が何よりも恐れてやまないというか「自分を殺せる唯一の可能性」と考えている感すら多々あるラインハルトを、しかも戦場で、それも必勝必殺の体制で殺すことが可能な千載一遇の好機を、みすみす自分から潰してしまうヴァレンシュタイン。
元々そうでなかったことはまずないと思うのですが、ヴァレンシュタインのその行動原理はますますもって支離滅裂かつ混迷な惨状を呈しつつある、としか言いようがありませんね。

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/57/
> 第四、第六艦隊は十分以上に働いてくれた。モートン、カールセンの二人は信頼できる。これで使えるのは第四、第五、第六、第十、第十二の五個艦隊か……。第一は引き締めが必要だ。クブルスリーの能力以前に艦隊の練度が低すぎる、話にならない。
>
> まあ原作でもそんな傾向は有った。ランテマリオ星域の会戦では同盟軍は帝国軍相手に暴走しまくった。あの時の同盟軍は第一、第十四、第十五艦隊だった。あれは同盟の命運を決める一戦に興奮したわけではなかった。練度不足、実戦不足がもろに出たわけだ。
>
> 第一艦隊の練度を上げれば使える艦隊は六個艦隊だが、それでも宇宙艦隊の全戦力の半分だ、
残り半分は当てにならないって一体この国はどうなってるんだ。早急に残り半分もどうにかしなくてはならんが誰を後任に持ってくるか……。一人はヤンとして他をどうする? どう考えても艦隊司令官が足りない。
>
> これから見つけていくしかないな、多少強引でも引き立てて艦隊司令官にする。候補者はコクラン、デュドネイ、ブレツェリ、ビューフォート、デッシュ、アッテンボロー、ラップ……。そんなところかな。能力を確認しつつ昇進させていく、
時間はかかるかもしれんがやらないとな。戦争は何年続くか分からん。人材の確保も戦争の行方を左右する大きな要因だ、手を抜くことはできん。

何と言うか、「狡兎死して走狗煮らる」の格言通りの路線を自ら積極的に爆走しているとしか思えないシロモノですね、ヴァレンシュタインの思考パターンは。
確かに同盟にとっては、艦隊司令官を刷新することで艦隊の指揮能力と練度、ひいては戦力がアップすることは、軍にとっても国家としても大きな利益になります。
しかし、同盟軍の戦力が強化されることが、ヴァレンシュタイン個人の利益と必ずしも合致するとは限らないのです。
前回の考察でも述べたように、対帝国戦で同盟軍および同盟にある程度の余裕ができてしまうと、その分ヴァレンシュタインに依存する必要性が減少してしまうわけですから、却ってヴァレンシュタインの身が危なくなる可能性が増えてしまいます。
「ヴァレンシュタインがいなくても同盟はやっていける」と同盟の政軍上層部が考え出した時、彼らがヴァレンシュタインの排除に動かないという保証は全くありません。
特に同盟が帝国と和平を結ぶ場合、帝国はもちろんのこと、同盟にとってもヴァレンシュタインが邪魔になってしまう可能性は濃厚に存在します。

単純に考えても、亡命者ごときに同盟の政治や軍事が壟断されることを面白く思わない人間は少なからず存在するでしょうし、ましてやヴァレンシュタインは性格破綻者な上にヤン以上に同盟に対する国家的な忠誠心が皆無どころかマイナスですらあるのですから。
「狡兎死して走狗煮らる」どころか、今すぐ殺されても何ら不思議なことではないくらいに好き勝手やり過ぎているのですけどね、ヴァレンシュタインは。

そして何よりも、この「狡兎死して走狗煮らる」の構図をさらに凄まじい勢いで完成に近づけてしまっているのが、58話におけるヴァレンシュタインの独演説です。
帝国内では機密事項になっているらしいカストロプ公に纏わる秘密を暴露することで「毒」とやらを流し込んだ「つもりになっている」ヴァレンシュタインは、よせば良いのに自ら求めてむやみやたらと無用な敵を作り始めるんですよね↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/58/
> 「それにしてもクレメンツ教官、余計な事をしてくれましたね」
> 俺の言葉にクレメンツが身構えるのが分かった。俺が怖いのかな、だとしたら良い傾向だ。
>
> 『余計な事とは?』
> 「オフレッサー元帥府に帝国でも一線級の指揮官を集めた、ロイエンタール、ビッテンフェルト、ワーレン、ミッターマイヤー、ミュラー……、皆貴方の教え子です、そうでしょう」
> 『……それがどうかしたか』
>
>
「何のためにイゼルローンで七百万人を捕殺したと思っているんです? 彼らを殺す為ですよ」
> 『馬鹿な、何を言っている……』
> クレメンツの声が震えている。ラインハルトとケスラーがギョッとした表情で俺を見ている。まだまだ、これからだ。
>
> 「彼らは有能です。馬鹿な指揮官では彼らは使えない、
いずれ彼らはミューゼル提督の所に行く。だからその前に殺してしまおうと思ったのです。ミューゼル提督と彼らが一緒になれば厄介ですからね。それなのに……、シュターデン教官も役に立たない、戦術が重要だと言いながら戦術能力に優れた人物を簡単に手放してしまうのですから……。所詮は理論だけの人だ」
>
>
『そのために七百万の帝国人を捕殺したと言うのか』
> 震えているのは声か、体か、それとも心か……。
> 「帝国軍に打撃を与えると言う目的も有りました。でも
主目的はそちらです。捕殺できたのはメルカッツ、ケンプ、ルッツ、ファーレンハイト……。皆教官と接点の無い人ばかりですよ。当初の予定の半分にも満たない。おまけに気が付けばあなたの他にケスラー、メックリンガー、アイゼナッハまで揃っている」
> 全くだ、バグダッシュからリストを見せられた時はうんざりした。クレメンツ教官、あんたは本当に余計な事をしてくれたよ。

相も変わらず自分のことしか眼中にない被害妄想狂ですね、ヴァレンシュタインは。
ここでヴァレンシュタインが自身の亡命の経緯とカストロプ公の関係について演説していたそもそもの目的は、演説を視聴している一般の軍人達に真実を教えることで、帝国政府や門閥貴族体制に対する平民達の不満と反感と憎悪を煽り、帝国を内部分裂の危機に追い込むことにありました。
そして、カストロプ公に自分の親を殺され、自身も謀殺されかけて同盟への亡命を余儀なくされ、さらにはその背後に帝国政府の要人が蠢いていた、という事実が提示されただけであれば、戦没者遺族の感情は別にしても、ヴァレンシュタインに対する同情と共感、およびその反動で発生する帝国政府への悪感情が惹起されるという形で、ある程度の目的を達成することも決して不可能ではなかったでしょう。
元々帝国の平民達は、帝国政府および門閥貴族体制に対して長きにわたって蓄積された不満を抱え込んでいるという問題もあるのですし。
ところが何を血迷ったのか、ヴァレンシュタインは自身の個人的事情とは全く何の関係もない人間に対する敵意と殺意まで一緒に表明してしまいました。
ここで名指しされている帝国軍の将帥達は、別にヴァレンシュタインに仇なしたわけではなく、下手すれば(「亡命編」では)面識すらもなかったかもしれないのに、一方的にマークされた上に殺戮のターゲットとして名指しを受ける羽目になってしまったわけです。
名指しされた方にしてみれば、帝国政府や門閥貴族体制に対する不信以上に、まずはヴァレンシュタインに対して恐怖を、次に敵意と殺意を抱かざるをえないでしょう。
ヴァレンシュタインと同じく「自分が生き残る」という観点から言ってさえ、そちらの方が優先度は高いのですから。
ヴァレンシュタインが本来復讐の対象として名指しすべきは、事実関係のみならず政略的な観点から見てさえも「門閥貴族体制や帝国政府」に限定されるべきであり、それを逸脱して無関係な人間に対してまで敵意と殺意を示すのは、政治的にも大きなマイナスとならざるをえないでしょう。
黙っていれば彼らも帝国政府や門閥貴族体制に対する不信のみに邁進してくれたものを、わざわざ余計なことをくっちゃべって無用な敵を作り出してしまうヴァレンシュタインには、外交的なセンスというものが欠片たりとも見出せないですね。
さらに頭に乗ったヴァレンシュタインは、とうとう自分の当初の目論見から言ってさえも完全に逆効果でしかない致命的な発言を繰り出してしまうに至ります↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/58/
> スクリーンには蒼白になっている三人が居る。
> 「ミューゼル中将、教えて欲しい事が有ります」
> 『……何を聞きたい』
> そう警戒するな、ラインハルト。警戒しても無駄だからな。
>
> 「私の両親の墓の事です。無事ですか?」
> 『……』
> ラインハルトの蒼白な顔が更に白くなった。正直な男だな、ラインハルト。知らないと言えば良かったのだ。この場合の沈黙は知っているが答え辛いと言っているようなものだ。この通信を見ている人間全てが墓は破壊されたと分かっただろう。
>
> 俺は答えを既に知っている。バグダッシュが教えてくれた。フェザーン経由で調べたらしい。覚悟はしていたがそれでもショックだった。
> 「答えが有りませんね、正直に答えてください、墓は壊されたのですね?」
> 『……そうだ』
> ラインハルトは目を閉じている。この男はそういう下劣さとは無縁だ。少し胸が痛んだがやらねばならない。
>
> 「遺体はどうなりました。無事ですか」
> 『……残念だが、掘り出されて遺棄されたと聞いている』
> 遺棄じゃない、罪人扱いされて死刑になった罪人の遺体同様に打ち捨てられた。ヴァンフリートの戦死者の遺族がそれを望み、政府がそれを率先して行ったらしい。政府にしてみればそれで遺族が納得してくれれば安いものだと思ったのだろう。カストロプの真実は話せないからな。
>
>
「帝国は私から全てを奪った、両親、家、そして友……。それだけでは足りず私の両親の安眠と名誉も奪ったという事ですか。……つまり私はルドルフの墓を暴く権利を得たわけだ、鞭打つ権利を」
> 笑い声が出た。計算して出した笑い声じゃない、自然と出た。
>
> 『ヴァレンシュタイン!』
> 「何です、クレメンツ教官。不敬罪ですか、名誉なことですよ、今の私は反逆者なんですから。
これからも何百万、何千万人の帝国人を殺してあげますよ。帝国の為政者達に自分達が何をしたのかを分からせるためにね……、悪夢の中でのたうつと良い
> 笑い声が止まらない、スクリーンの三人が顔を強張らせて俺を見ている。

何かもう、「ヴァレンシュタインの末路はこれで決まったな(笑)」とでも言いたくなるようなシロモノですよね、これって。
ヴァレンシュタインは、自身のその被害者的な立場を振り回せば、帝国政府や門閥貴族体制のみならず、自分やカストロプ公とは全く何の関係もない無辜の人間の命運までをも好き勝手に弄んで良い、というレベルにまで頭がイッてしまったようで(苦笑)。
まあ実際、考察10で言及した、親類を殺された怨恨からヴァレンシュタインを襲撃した一兵士に対して32話で開陳された評価などを見ても、それが外交上の演技などに留まるものではなく、ヴァレンシュタインの本心そのものであることは最初から疑いようもないのですし。
この発言で一番致命的なのは、ヴァレンシュタインの復讐対象が帝国政府や門閥貴族体制のみならず、帝国に住む人間全てに拡大されていることが明示されてしまったことにあります。
ヴァレンシュタインの復讐対象が帝国政府や門閥貴族体制にとどまっているのであれば、平民達は少なくとも徴兵以外でヴァレンシュタインと関わらなければ難を逃れることができましたし、帝国政府や門閥貴族達の慌てふためく様を嘲笑すらすることも可能だったでしょう。
しかし、ヴァレンシュタインの発言により、一般の平民達もこの問題について他人事ではなくなってしまいました。
ヴァレンシュタインの本心がどうであれ、ヴァレンシュタインが帝国を滅ぼせば自分達も復讐の対象として虐殺される、と平民達の誰もが考えたことでしょう。
実際、遺族達がヴァレンシュタインの両親の墓を荒らし、遺体を罪人同様に扱って辱めたという点で、平民達もまたヴァレンシュタインに憎まれる理由は充分にあるのですから。
もちろん、彼らとて帝国政府や門閥貴族体制に対する不満や反感は当然あるでしょうが、だからと言ってそれはヴァレンシュタインに対する恐怖や反感や憎悪をいささかも緩和するものなどではありえません。
それは皮肉なことに、「ヴァレンシュタイン」という万人にとっての脅威を滅ぼす、という共通の目的の下に、帝国全体が上から下まで一丸となって団結してしまう、などという全く逆効果な事態をもたらしかねない危険性をも孕んでいるのです。

原作の銀英伝でも、貴族も平民も問わず虐殺にふけっていた流血帝アウグスト2世に対し、貴族も平民も同じ恐怖と憎悪を抱くことで、相互の対立が一時的にせよ雲散霧消してしまったという歴史があります。
ヴァレンシュタインが帝国を分裂状態にしたかったのであれば、自身の復讐の対象を帝国政府と門閥貴族体制のみに限定した上で、平民達については「自分と同じ被害者である」とでもアピールして自分への同情や共感が集まるよう誘導すべきだったのです。
わざわざ自分から帝国が一丸となって団結するためのシンボルとして名乗り出るなど、ヴァレンシュタイン自身にとっても本末転倒な話でしかないと思うのですがね。

そしてそれ以上に本末転倒なのは、ヴァレンシュタインが帝国に対して悪戯に自身に対する恐怖と反感と憎悪を植えつけていくことで、ヴァレンシュタインの2つの最終目的がどちらも達成困難になってしまうことです。
「亡命編」におけるヴァレンシュタインの最終目的は「自分が生き残ること」であり、第7次イゼルローン要塞攻防戦からは、それに「帝国と同盟の和平を実現する」がさらに加わっています。
目の前にある必勝の体制を棒に振ってまで、「ラインハルトと戦って勝利できるわけがない」とヴァレンシュタインは頭から思い込んでいるわけです。
しかし、帝国の上から下まで一律にヴァレンシュタインを敵視するとなれば、ヴァレンシュタインの存在自体が和平の実現を妨げる巨大な懸念材料となってしまいます。
特に、これまでの戦いでヴァレンシュタインに親類縁者や大事な人を奪われた遺族達などは、「ヴァレンシュタインを殺すまで和平などするな!」と主張するであろうことは確実ですし、他の帝国人もヴァレンシュタインの復讐の餌食になどなりたくはないでしょうから、その主張に同調する可能性は極めて高いと言わざるをえません。
そして帝国政府や門閥貴族らも、ヴァレンシュタインを「公敵」として認定し彼に平民の憎悪を集中させれば、自分達に対する不満を逸らす道具として活用することもできるわけですから、むしろ平民達の怨嗟の声に便乗する形でヴァレンシュタインを敵視する政策を実行する公算は大です。
「ヴァレンシュタインの存在そのものが帝国との和平にとっての邪魔になる」という構図は、当のヴァレンシュタイン本人はもちろんのこと、同盟にとっても大きなジレンマとしてのしかかってくることでしょう。
そして一方、「自身が生き残る」ことに拘るヴァレンシュタインはともかく、同盟がヴァレンシュタインの存在と生命を何が何でも死守しなければならない理由もありません。
ただでさえ同盟にとってのヴァレンシュタインは、従順さや国家的忠誠心の点で難があるどころの話ではないわけなのですから。
そもそも、件の会談におけるヴァレンシュタインの言動自体が、同盟軍があたかも自分の所有物であると言わんばかりな口吻だったりするのですからねぇ。
38話の軍法会議では、確かシトレがこんな判決文を読み上げていたはずなのですが↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/38/
> 軍法会議が全ての審理を終え判決が出たのはそれから十日後の事でした。グリーンヒル参謀長とヴァレンシュタイン大佐は無罪、そしてロボス元帥には厳しい判決が待っていました。
>
> 「
指揮官はいかなる意味でも将兵を己個人の野心のために危険にさらす事は許されない。今回の件は指揮官の能力以前の問題である。そこには情状酌量の余地は無い」

自分の個人的な復讐心のために同盟軍を使って虐殺を繰り広げる、などと堂々と公言しているヴァレンシュタインの様相は、まさに 「指揮官はいかなる意味でも将兵を己個人の野心のために危険にさらす事は許されない」という行為そのものなのではないですかねぇ(笑)。
同盟の将兵達が、所詮は帝国からの亡命者でしかないヴァレンシュタインひとりの復讐心などに、何故ほんの僅かでも付き合ってやらなければならないというのでしょうか?
これだけでも、同盟がヴァレンシュタインを危険視して粛清するには充分な口実となりえるでしょう。
また、帝国が「ヴァレンシュタインの死」を欲するという事実は、同盟にとっても「ヴァレンシュタインの身柄」を外交の場における交渉の道具として利用可能であることを意味します。
「ヴァレンシュタインの死」と引き換えに帝国に対し大幅な譲歩や見返りを求め(たとえば「イゼルローン要塞の割譲」など)、和平を達成することができるとなれば、同盟にとっては一石数鳥の非常に魅力的な選択肢であると言えるでしょう。
かくして、ヴァレンシュタインは帝国と同盟の和平のために自身の死を強要されるという、本人にしてみれば本末転倒もはなはだしい未来と結末が用意されることになるわけです。
何とも滑稽な話ではありますが、まあ本来ならば「伝説の17話」や38話の軍法会議でとっくの昔に粛清されていて然るべき生命を奇跡的に生き永らえているのですから、むしろ感謝すらしても良いくらいでさえあるのですけどね、ヴァレンシュタインは。

さて、件の会談にはもうひとつ、ヴァレンシュタインがやらかしてしまった致命的な失態というものが存在します。
それは、原作知識とやらを開陳してラインハルトの野心と目的を暴露しなかったことです↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/58/
> 「私を止めたければ、私を殺すか、帝国を変える事です。言っている意味は分かるでしょう、ミューゼル中将。貴方もそれを望んでいるはずだ
> 『……』
> ラインハルトの顔が歪んだ。あとの二人が驚愕の表情でラインハルトを見ている。
>
> 「貴方がどちらを選ぶか、楽しみですね。私を殺す事を選んだ時は注意することです、弱者を踏み躙る事で帝国を守ろうとする為政者のために戦うという事なんですから。
私と戦う事に夢中になっていると後ろから刺されますよ。連中を守るためになど戦いたく無いと言われてね、気を付ける事です」

「私と戦う事に夢中になっていると後ろから刺されますよ」という発言はヴァレンシュタインにも悲惨なまでに当てはまる、という自覚が皆無というのもどうかとは思うのですが、それはさておき。
この会談におけるヴァレンシュタインは、アニメ版の原作知識におけるケスラーの過去を本人の前で暴き立てて顔面蒼白にさせるなどという荒業を駆使していたりするんですよね。
ならばケスラーに対した手法と同じやり方を使い、ラインハルトの野心と目的を公然と暴き立てて自分と同じ叛逆者に仕立て上げることで、帝国の上層部にラインハルトに対する猜疑心を植え付け、彼を処刑させるよう促すことも充分に可能だったでしょう。
そうすれば、物語的な位置付けのみならず政略的な観点から見ても「ラインハルトは生かして帰す」という意味はより大きなものとなりますし、何よりもヴァレンシュタイン的には自身の生命を脅かす最大の脅威を、しかも自分の手を汚すことなく始末することも可能となります。
ただでさえ、この後の帝国はヴァレンシュタインの激白によって内部分裂状態となってしまうわけですし、その状況下で帝国の上層部がラインハルトを「危険分子」と見做して処刑の決断を行う可能性はかなり高いと言えるでしょう。
その状況では、オフレッサーですらラインハルトを庇える保証はないのですし。
最小の効果でも、ラインハルトに対する疑惑や不信の芽を植え付ける程度のことはできるのですから、ヴァレンシュタイン的にはやって損することは何もないはずなのですが。
「伝説の17話」でラインハルトを殺せなかったことでアレほどまでにヤンを論難していながら、自身はこんな失態を平気で犯すというのですから、つくづくヴァレンシュタインの低能無能&ダブスタぶりには呆れ果てるしかないですね。
しかも、こんなザマを晒していながら、当人の自己評価では「原作知識を上手く使っている」ということになっているときているのですから、もう笑うしかないというか……。

次回からは、第7次イゼルローン要塞攻防戦終結後におけるヴァレンシュタインの言動について検証していきたいと思います。
この考察も、そろそろ最新話に追いつくことができそうですね。

大飯原発3号機の再稼動と反原発デモについて

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福井県大飯原発3号機の再稼動が実現し、約2ヶ月続いた「原発ゼロ」の状態が解消されることになりました。

http://jp.wsj.com/Japan/node_470324
>  【東京】日本では1日、2カ月の「原発ゼロ」期間を経て、最初の原発が再稼働に向けて起動された。電力不足への懸念が当面、福島での事故を受けた原発への不安に勝った形だ。
>
>  関西電力は1日午後9時、福井県おおい町の大飯原発3号機で、核分裂を抑える制御棒の引き抜きを開始した。同社によると、9時間後には臨界に達し、早ければ4日に電力供給が始まり、その4日後にはフル出力になる見通しだ。
>
>  3号機は定期検査のため昨年3月に運転を停止。原発の安全性をめぐる議論が高まり、原発に抵抗する世論が強まる中で再稼働が遅れ、日本の全ての原発が停止状態となった。
>
>  関電によると、大飯原発ではこれまでのところ技術的トラブルは発生しておらず、原発に反対するデモ隊も障害になっていない。同社はデモ隊の参加者の数を示していない が、日本のメディアによると、
先週末には約650人が原発周辺に集まり、約100人が原発の正面入り口を封鎖しようとした。
>
>  同社によれば、4号機も7月中に稼働の予定で、早ければ17日に起動し、24日にはフル出力になる見通しだ。
>
>  一方、6月29日には首相官邸周辺で大飯原発の再稼働に反対するデモが行われたが、警察によると、逮捕者は出ておらず、またその後は同程度の規模のデモも行われていない。

再稼動合意寸前まで到達していたにもかかわらず、菅直人ことカンガンスの低能バカが余計なパフォーマンスなどをやらかしたがために白紙になってしまった玄海原発の二の舞を演じることはなかったようで、まずは何よりですね。
電力不足の状態はまだ改善していないのですし、更なる原発の再稼動を行ってもらいたいところです。
何しろ九州は、電力不足が大々的に報じられている関西電力管内に次ぐ10%もの節電目標を掲げられている始末なのですから。
政府は7月2日から節電要請を始めましたが、将来はともかく、現時点では原発再稼動なしに安価な電力の安定供給などできるわけがないでしょう。
その事実を無視して電力不足をただひたすら節電だけで凌ごうとするなど、それこそ戦前の「欲しがりません勝つまでは」的な精神論と何も変わらないのですが。

そして、この期に及んでも反原発な方々は、往年の左翼運動を懐かしみつつ、お祭り騒ぎに精を出すのでしょうかねぇ。
男性器の御輿を担いでお祭り騒ぎを演じたり、機動隊の前に子供を盾のように前面に出したりする行為を展開したりするのが、反原発活動の実態みたいですし(苦笑)。
社会運動の継続それ自体が目的と化している社会運動の典型例でしかないのですが、そういう行為を続けてきたから一般人にそっぽを向かれたという過去の経験をすっかり忘れてしまっているようで。
過去の運動のやり方を少しは変えていかないと、そう遠くない未来にまた以前と同じ轍を踏むことになるのではないかと思うのですけどね。

映画「臨場 劇場版」感想

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映画「臨場 劇場版」観に行ってきました。
横山秀夫のミステリー小説を原作とし、テレビ朝日系列で放映された人気ドラマシリーズの劇場映画版。
今作はテレビドラマシリーズの続編という位置付けではありますが、ストーリー自体は映画単独で成り立っており、テレビドラマ版から引き続き出演している主人公含めた登場人物達の人間関係以外は、これまでのシリーズを知らなくても問題なく観賞可能です。
かく言う私も、テレビドラマ版はただの1話も観賞することなく今作に臨んでいましたし(^^;;)。

映画の冒頭は、大雨が降り注ぐ無人の街中で、今作の主人公にして「終身検視官」の異名を持つ倉石義男が倒れ込むシーンから始まります。
このシーンの意味するところが何なのかについては物語後半である程度明らかになりますが、序盤は思わせぶりに明示するだけで次のシーンへと移行します。
次に映し出されるシーンは2010年冬の吉祥寺の繁華街?における、如何にも平和的な広場を普通に行きかう人々の姿。
そんな一般的な光景は、しかし突如突っ込んできたバスの中から慌てて下車して悲鳴を上げて逃げ惑う人々と、血塗れになってナイフを握りながら狂笑を浮かべるひとりの男によって、唐突に終わりを告げることになります。
ナイフを持った男は、広場にいた通行人達に無差別に切りつけていき、さらにその場にいた2人の女性を刺殺までしてしまいます。
ナイフの男こと波多野進は、バスの中でも2人の人間を殺害、さらに15名もの重軽傷者を自らの手で作り上げており、彼は複数の警察官によってその場で現行犯逮捕されます。
ここで倉石義男は、事件の現場検証で部下達と共に遺体の検視を行うと共に、遺体と遺族の対面にも立ち会うことになります。
ところが波多野進はその後、警察の事情聴取の場で精神喪失状態の様相を呈したことで刑法39条の1「心神薄弱者ノ行為ハコレヲ罰セズ」の規定が適用され、一審・二審共に裁判で無罪判決が下されることになってしまうのでした。
当然のごとく、遺族は波多野進に対する理不尽な無罪判決に怒りを抱くことになるのですが……。

それから2年後。
東京都港区で弁護士事務所を営んでいる高村則夫が、事務所内で何者かに殺害されるという事件が発生します。
検視官である倉石義男も当然のごとく遺体の検視を命じられることとなり、彼は最初、部下である小坂留美に検視の実務を委ね、自身は遺体の着衣や遺品などを調べ始めます。
そこで倉石義男は、ズボンに濡れている痕跡があることを発見することになります。
それを不審に思った倉石義男は、ある程度進んでいた小坂留美の検視を制止し、自分で直接遺体をつぶさに調べていくのでした。
倉石義男が小坂留美に検視を任せる際は常に最後までやらせるのに、と同じく倉石義男の部下である永嶋武文は呟いています。
その後の司法解剖では、直腸温の測定に基づいた遺体の死亡推定時刻が割り出されるのですが、倉石義男は肝臓の温度測定による死亡推定時刻が直腸温測定のそれと比べて数時間のズレがあることを発見、遺体に何らかの細工が行われているのではないかという疑問を抱きます。
さらにその後、今度は神奈川県警の管轄で病院を営む精神科医・加古川有三が殺害されるという事件が発生します。
遺体の傷跡に高村則夫との共通点が浮かび上がったことから、警察はこの2つの事件が同一犯の犯行によるものと断定、警視庁と神奈川県警との間に合同捜査本部が立ち上がることになります。
高村則夫と加古川有三が、2年前の無差別通り魔事件の際に波多野進の弁護と精神鑑定をそれぞれ担っていたことから、神奈川県警の捜査一課の管理官・仲根達郎は、裁判での判決に不満を抱いた遺族の犯行によるものと断定し、遺族について調べるよう捜査官達に指示を出します。
しかし、遺族に医学的知識を持つ者がいないことを理由に「俺のとは違うなぁ」と仲根に異を唱える倉石義男。
2人が対立する中、さらに捜査線上には全く別の線から出てきた容疑者の存在も浮上し始め……。

映画「臨場 劇場版」では、理不尽な犯罪や冤罪で身内を失ってしまった遺族の悲哀と、さらにその立場から容疑者として疑われる理不尽な様子が描かれています。
元来娘がいるはずもない場所で突然娘を失ってしまった母親の関本直子や、神奈川県警の捜査ミスで冤罪を着せられた挙句に自殺してしまった息子の助けられなかったと自分を責め続ける父親&現職警察官の浦部謙作などは、本来ならば事件の被害者もいいところだったはずです。
しかし警察からは、まさにその立場故に犯行を行っても不思議ではないと逆に目をつけられ、それを前提とした事情聴取や監視を受けることにまでなってしまうんですよね。
特に浦部謙作などは、物語終盤で「アレだけ警察に奉仕してきたのに、息子を奪った次は自分なのか!」と怒りを露にし、当時の冤罪事件の捜査責任者だった仲根達郎を自身の手で殺害しようとした挙句、最終的には自身の拳銃で自殺してしまうのですからね。
実際に彼は連続殺人事件の犯人では全くなかったわけで、そんな気は全くなかったにせよ、結果として無実の人間にあらぬ疑いをかけ死に追いやることになってしまった警視庁管理官・立原真澄は、さぞかし甚大なショックを受けざるをえなかったことでしょうね。
結果的に彼は、浦部謙作の息子を自殺に追い込んだ仲根達郎と全く同じ過ちを犯してしまったことになるのですから。
物語中盤頃の立原真澄は、冤罪事件で仲根達郎を責めるかのごとき言動を繰り広げていたのですが、まさかそれが自分にも跳ね返ってくることになるとは夢にも思わなかったことでしょうね。
もちろん、仲根達郎にしても立原真澄にしても、別に明確な悪意を持ってあの親子を冤罪に陥れようとしたわけでも何でもなく、あくまでも事件解決を心から願い正義感を持って行動した末の悲劇ではあったのですが。
この辺りは、全知全能ならぬが故の、警察というよりも人間の限界ではあるのでしょうが、それだけに被害者はもちろんのこと、捜査官達の苦悩や後悔もやるせないものがありますね。

作中の展開で少し疑問に思ったのは、物語終盤における波多野進についてですね。
彼は事件の遺族の墓参りから措置入院している病院に戻ってきた際、浦部謙作から2発の銃弾を受け、さらに連続殺人事件の真犯人である安永泰三に注射までされてしまい、今まさに生命を奪われんとしていたのですが、それを止めに入った倉石義男と安永泰三が対峙している間に奇跡的な復活を遂げ、安永泰三を刺殺した上に倉石義男にまで襲い掛かっているんですよね。
2発の銃弾(しかもそのうち1発は左胸から左肩の間付近に命中している)+注射を受けてなお、そこまでの行動に打って出られること事態が凄まじく驚異的であると言わざるをえないところなのですが。
あの注射って、最初は筋弛緩剤のような類の致死性薬物で、注射された時点で波多野進はもう死んだものとすら考えていたくらいでしたし、アレだけ劇的な復活を遂げたとなると麻酔という線も確実にないでしょう。
状況的に見てあまりにもありえない劇的過ぎる復活だったために、安永泰三は興奮剤かエンジェルダスト(PCP)の類でも間違って注射してしまったのではないかとすら考えてしまったほどです(^_^;;)。
また波多野進は、措置入院における自分の更正が全くの偽りであることを倉石義男の前で自白したりしているのですが、倉石義男に凶器を取られてしまった途端に再び精神異常者の演技を繰り出しているんですよね。
その前の言動を見てそんなことをしても騙される奴はまずいないでしょうし、そもそもあの状況における波多野進であれば、倉石義男が投げ捨てた凶器を拾うなり、安永泰三が持っていたナイフを奪い取るなりして反撃する術も体力もまだ充分に余力を残していたのではないかと思うのですが。
それどころか、あの驚異的な復活ぶりから考えると、下手すれば素手でも倉石義男を殺すことが可能だったのではないかとすら思えるくらいですし(苦笑)。
ゲームのバイオハザードに出てくるゾンビクラスの生命力を、あの時の波多野進は持ち合わせているようにさえ見えたくらいですからねぇ(^^;;)。
どの道、波多野進にしてみれば、自身の精神異常者としての振る舞いが全くの演技であることの目撃者である倉石義男を殺さなければ、自身の弁明を周囲に信じ込ませることもできないわけですし、足掻ける限りの物理的な抵抗をしても不思議ではなかったくらいなのですが。
あの重傷からの復活も奇跡かつ驚異的ならば、あそこで抵抗を止めてしまうというのも多大な違和感を覚えざるをえないところでして。

あと、今作ではエンドロール後に重要な映像が出てきます。
もぬけの殻になった倉石義男の自室に置かれている携帯電話が鳴り響き、連絡主の小坂留美が倉石義男と連絡が取れないことに絶望的な表情を浮かべる、というものなのですが、これが実は土砂降りの雨の中で倒れこむ冒頭の倉石義男の描写と結びついていたりするのでしょうか?
いかにも続編が出そうな終わり方ではあるのですが、これって一体どうなるのでしょうかねぇ。
いずれにせよ、今作ではエンドロールが完全に終わるまで席を立たないことを是非ともオススメしておきます。

テレビドラマ版からのファンはもちろんのこと、ミステリー好きな人達にも単品で満足できる作品であると言えますね。

映画「ラム・ダイアリー」感想

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映画「ラム・ダイアリー」観に行ってきました。
故ハンター・S・トンプソンによる同名の自伝小説を原作とし、親友のジョニー・デップが故人のために企画・製作・主演の全てを担った伝記ドラマ。
作中ではセックス描写があることから、映画館ではR-15指定されています。

舞台は1960年。
アメリカ・ニューヨークの喧騒に疲れ果てた今作の主人公ポール・ケンプは、カリブ海に浮かぶ南アメリカ・プエルトリコの新聞社サンフアン・スターで記事を書くために移住してきたジャーナリスト。
神経過敏気味の社長兼編集長のロッターマンとの面談で履歴に偽りがあることを指摘されるものの、とりあえずは採用が決定します。
ポールは、ロッターマンからボブ・サーラという社員を紹介され、彼から仕事について色々教えてもらうよう指示されると共に、新聞の紙面を埋める占い記事執筆の仕事を任されることになります。
ボブ・サーラはサンフアン・スター社の将来に悲観的で、ポールと共に飲んでいる酒場?で、あの会社は間もなく潰れるだろうという不吉な予言を開陳したりするのでした。
そんなある日、ロッターマンから暫定的にあてがわれていたホテルのプールでポールが泳ごうとしたところ、ホテルの従業員に制止されてしまいます。
何事かとポールが問い質したところ、ホテルのプールでは、最近プエルトリコに進出してきたらしいユニオンカーバイドという会社が貸し切りでパーティをしているとのこと。
プールで泳ぐ当てが外れてしまったポールは、仕方なく足漕ぎボートを出してひとり寂しく夜の海辺に出て行きます。
そこでポールは、夜の海を素っ裸で泳ぐひとりの金髪の女性と運命の出会い?を果たすことになります。
その時は、名前を教えてくれというポールの要求を拒否して女性はその場を後にしています。
さらにその後、今度はマイアミに出張して市長?のインタビューを取って来いと指示され、プエルトリコの空港へと向かうことに。
しかし、空港で飛行機便を待っている間、ポールは非専属の不動産業者サンダーソンと出会い、飛行機便がキャンセルされてしまったことを告げられます。
その告知通りに搭乗予定の飛行機便がキャンセルになったことを確認すると、ポールはサンダーソンと一緒にサンダーソンが所有する海辺の別荘?へと向かうことに。
そこで彼は、ホテルの海辺で出会い、サンダーソンの婚約者となっている女性シュノーと再会することになるのでした。
サンダーソンはポールに対し、現在は演習地として使われているアメリカ軍の賃貸契約が間もなく切れる島の開発計画で新聞記事を使い協力するよう依頼してきます。
ポールはその後のゴタゴタもあって、なし崩し的にサンダーソンの協力者となりつつ、シュノーとの交流を重ねていくことになるのですが……。

映画「ラム・ダイアリー」は、どうにも全体的にあまりパッとしないイメージが拭えないですね。
主人公ポールがラム酒を手放せないアルコール中毒の新聞記者、というのはまだしも、物語中盤まではその場その場の雰囲気に何となく流されているだけの意志薄弱な様相を呈しています。
そして物語も終盤に差し掛かり始めたところでようやく自立行動し始めたかと思えば、今度はその努力が全て空回って何ら成功に結びつくことすらなく、最後はサンダーソンの船を盗んでアメリカに戻るだけという、あまりにも盛り上がりに欠ける展開が延々と続いていたりするんですよね。
ヒロインであるシュノーはシュノーで、サンダーソンとセックスを繰り広げたかと思えば、ポールを誘惑したり、地元のクラブで筋肉隆々の男達と一緒にストリップダンスを踊ったりと、あまりにも浮気性な実態を晒しまくっています。
挙句、当然のごとくサンダーソンに捨てられ、ポールの元に転がり込んできて一緒になったかと思えば、ポールを置いてひとりだけプエルトリコを出国してアメリカに向かってしまい、しかもその後作中では全く登場することなくモノローグだけで結末が語られるという始末。
主人公はやることなすこと全部グダグダかつ結果すらも出せず、ヒロインは主人公と一緒になって互いに支え合うでもなく自己中心的に活動していただけと、まるで良いところが見出せないのですが。
ストーリー的にも、延々と谷間が続いているだけで全く山場がない状態ですし。
ポールが作中で明確に出したといえる成果が、サンダーソンの船一隻奪っただけというのは正直どうなのかと。
今作で企画・製作・主演を担っているジョニー・デップは、ヒロイン役のアンバー・ハードと熱愛関係にあると報じられているようですが↓

http://megalodon.jp/2012-0630-2109-04/news.mynavi.jp/news/2012/06/30/007/
> アンバー・ハードが、長年のパートナーと破局したことが報じられている。
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アンバーは、ジョニー・デップと急接近していることが理由で、アーティストで写真家のガールフレンド、ターシャ ・ヴァン・ リーと数カ月前に別れたという。ある関係者はイン・タッチ・ウィークリー誌に「もう2人は付き合っていません」と明かしている。
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> バイセクシャルのアンバーは、2008年からターシャと交際しており、先日ロサンゼルスで開催されたゲイ・レズビアンの団体「GLAAD」の25周年記念パーティーに2人で出席していた。先の関係者によれば、2人は破局後も友人同士であり、ターシャはハリウッドのバー・マーモントで再度の独身生活をエンジョイしているという。先の関係者もこう続けている。「(ターシャは)何人かの綺麗な女性たちと笑っておしゃべりを楽しんでいましたね」
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> 一方のジョニーは、14年越しのパートナーであるヴァネッサ・パラディとの破局を先日公表したばかりだが、半年前から別れたのではないかという噂はあった。その間
ジョニーは、2013年公開予定の最新作『ザ・ローン・レンジャー』を撮影しており、アンバーに馬をプレゼントし、一緒に乗馬を楽しんだと報道されていた。
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> ジョニーとアンバーが共演した新作『ラム・ダイアリー』は6月30日(土)から日本公開予定だ。

こういう話を見ると、ジョニー・デップ個人が好き勝手にすることを目的にこの映画は作られたのではないか、という勘ぐりすらどうにも抱かざるをえないところですね。
いや、それならそれでまだ映画としての出来が良いのであれば文句のつけようもないのですが、如何せんあのストーリー仕立てでそれは無理というもので……(-_-;;)。

この映画は、根っからのジョニー・デップのファンな方々か、1960年代当時のアメリカやプエルトリコの雰囲気を堪能したいという人以外には、全くオススメのしようがありませんね。
すくなくとも、ハリウッドスタンダードなストーリーを期待して観に行ったら、痛い目に遭うこと間違いなしです。

東日本大震災の復興費の約4割が年度内に執行されず

東日本大震災の復興費として当てられた予算15兆円のうち、約4割近くに上る5兆8728億円が執行されていなかったことが判明しました。
政府が被災地との調整に手間取り復興事業が進まなかったのが原因とのことですが……↓

http://megalodon.jp/2012-0629-0038-31/sankei.jp.msn.com/economy/news/120628/fnc12062823280020-n1.htm
>   政府が平成23年度予算で計上した東日本大震災の復興費約15兆円のうち、約4割が23年度内に使われなかったことが28日、分かった。第1次~第3次補正予算の復興費の執行状況を復興庁が集計した。
>
>  
政府が被災地との調整に手間取り、復興事業が想定通りに進まなかったためで、これほどの規模の予算が執行されなかったのは極めて異例だ。29日にも発表する。
>
>  復興費14兆9243億円のうち、年度内に執行されたのは全体の60・6%の9兆514億円にとどまった。
40%近い、5兆8728億円が使われなかった計算だ。
>
>  震災直後は被害状況の把握が難しく、予算が多めに計上された面もあるが、政府は使い残した予算について、24年度に繰り越したり、予定していた事業に充てない「不用額」として処理する方針だ。
>
>  この結果、24年度に繰り越されるのは4兆7694億円に上る。集落の集団移転など幅広い事業に使えるお金として、国が被災地の自治体に配分する「震災復興交付金」は3次補正予算で1兆5612億円を計上していたが、1兆3101億円を繰り越す。
>
>  また、災害廃棄物や放射性物質の仮置き場がなかなか見つからないことなどから、災害廃棄物処理事業費の3941億円、除染事業費の1681億円についても、それぞれ同様に処理する。
>
>  一方、不用額は、道路や港湾の復旧に充てる災害復旧事業費など1兆1034億円に上る見通し。政府は全額を24年度に新しく設けた復興特別会計に繰り入れる方向で調整する。

消費税の増税についてアレだけ毎日毎日侃々諤々と喚きまくっていたのに、それよりもはるかに重要度の高い震災復興ではマトモな予算執行すらできないって……。
民主党政権は、震災復興のための最終的な予算案となる第3次補正予算を成立させるのにすら、3月11日の震災から実に8ヶ月以上もの時間をかける始末でしたし。
復興というのは時間が何よりも大事であるはずなのですけどねぇ。
予算不足をがなり立てる前に予算をきちんと執行する方が先でしょうに。
本当に政権担当能力のない政党ですね、民主党は。
こんな阿呆な政党が自壊して分裂の危機にあるなどと報じられても、欠片たりとも同情する気など起こりませんね。
むしろ、早く消滅して欲しいくらいですらあるのですが。

それにしても、こんな阿呆政党を間違いなく支持していたであろう田中芳樹の今現在の心境って、果たしてどんなものなのでしょうかねぇ(苦笑)。
この間刊行された薬師寺シリーズ9巻「魔境の女王陛下」で、震災や原発事故についていつものごとくタワゴトを並べまくっていた社会評論があったにもかかわらず、民主党については全く言及すらされないという摩訶不思議な珍現象を開陳していたところから考えても、下手に民主党を擁護するのはマズいという程度の判断はあったみたいですし。
こんな惨状で、

http://twitter.com/adachi_hiro/status/68805786008162305
<田中さんは、単におちょくる相手は弱いモノより、政府とか国家とか、強いモノにしたほうが面白いだろ、っていうだけだからなあ。>

などと述べたところで、一体誰がそんなものを信じるというのでしょうかね>田中芳樹&社長氏。
2009年8月の衆議院総選挙後の民主党は、疑問の余地なく政権与党や政府を担っている「強いモノ」であるはずなのですが(笑)。
これがせめて、自民党だろうが民主党だろうが同じように取り上げ批判する、というのであれば、まだしも一貫性くらいは認められたのですけどねぇ(-_-;;)。

大阪府泉佐野市で「飼い犬税」の導入検討?

財政難に喘ぐ大阪府泉佐野市が、飼い犬に税をかける「飼い犬税」の導入を検討しているのだそうです。
犬のフンの放置に対する罰金を定めた環境美化条例に実効性がない、というのが理由とのことですが……↓

http://megalodon.jp/2012-0628-1932-47/www.j-cast.com/2012/06/28137441.html?p=all
>  消費増税などで税金に関心が高まっているが、大阪府の泉佐野市が家庭で飼われている犬に税金を課す「飼い犬税」を検討していることが分かった。同市では、これまで犬のふんの放置しないよう啓発してきたが、効果が見られなかったといい、早くて2年後の導入を検討しているという。
>
>  2012年6月27日、千代松大耕市長が市議会で明らかにしたもの。NHKの取材に「関西国際空港の直近の街なので世界各国の人々が訪れる。きれいな美しい街作りをこれからも続けていく」と話した。
>
>  市では現在、約5400匹の飼い犬が登録されている。1月から環境美化条例で、犬のふんを放置した違反者から1000円を徴収することになっていたが、実際に徴収された事例はなかった。道路や公園に放置されるケースがあり、2011年度は市民から32件(犬28件、猫4件)のふん被害が市に寄せられたという。
>
>  そのため、今後も改善されなければ早ければ2年後に「飼い犬税」を導入するのだという。市の環境衛生課の担当者は
>
>
「犬のふん被害が、泉佐野市が特別ひどいとか、増えているということではないが、決め手がない。環境美化条例はお金を徴収するのが目的ではなく、まずは啓発になればと思ったが、半年経っても効果が見られなかった」
> と話す。
>
>  狂犬病ワクチン接種の際、同時に飼い主から徴収することを検討。集めた税金は清掃員や見回り人員の強化費用に充てる。税額については今後人件費などから算出すると見られる。「犬税」は法定外税に当たり、自治体が独自に条例を定め、総務相が認めれば導入できる。
>
>  市には「飼い犬税」検討が報じられてから、市民から多数の意見が寄せられた。「犬猫のふんや鳴き声に困っているのでもっと厳しくして欲しい」というもののほか、「自分はきちんと犬のふんを拾っているのに何で税金がかかるのか」と賛否両論あったという。
>
>  飼い犬への課税というと少し奇妙な感じだが、1955年には2686の自治体で「犬税」が設けられていた。その後、徴収コストなどが理由で相次いで廃止。1982年3月末に長野県旧四賀村(現松本市)が廃止したのが最後となった。
>
>  松本市によると当時の犬税の資料は残っておらず、事情が分かる職員もいないということだった。しかし過去の新聞記事によると、1978年度に導入。1匹当たり、年300円徴税していたが、野犬と飼い犬の区別がつかないため、正直に申告した人とそうでない人とで不公平が生じるという意見が出て、4年で廃止となったという。
>
>  今回の飼い犬税についてネットでは「東京もやってほしい」「大型犬は高課税にするのかな?」「室内犬を飼ってる人は関係無いし、ちゃんとふんの始末してる人まで白い目で見られるだろ」といった声が出ていた。
>
>  泉佐野市の担当者は「室内犬をどう区分けするのかというのも当然出てくるが、まだ議論していない。税額等も含め、今後細かいところを話し合っていく」と話していた。
>
>  泉佐野市は人口約10万人。関西国際空港に合わせて大型開発プロジェクト「りんくうタウン」などにも取り組んできたが、当初計画と通りには進まず、
財政状況は極めて苦しい。今年3月には、市の名を企業名や商品名にできる「命名権」売却を公表し、話題になった。今回の「飼い犬税」の検討も、苦しい財政事情を反映しているようだ。

記事にもあるように、大阪府泉佐野市は、かつて財政難を理由に市名の命名権売却を謳ってニュースになったことがある、曰くつきの市だったりします。
あの時の前科を鑑みても、今回の「飼い犬税」導入も市の財政難が主な原因であるとしか思えないところですね。
人口73万の熊本市でさえ、犬のフンの被害について深刻に取り上げられることなんてほとんどないのに、人口10万人程度の市町村でそこまで問題になるものなのかと。
かつて民主党も、なりふり構わぬ増税政策の中に「ペット税」の導入なるものを入れていたことがありましたが、今回の件はそれの縮小再生産版なのではないでしょうか?
ペット愛好家達を振り回すのもいいかげんにして欲しいところなのですけどね。

TOHOシネマズが導入した映画チケット自動発券機の課題

2012年の4月頃から、全国各地のTOHOシネマズ系列のシネコンにて導入された、チケットカウンターの自動発券機。
既存のインターネットチケット販売「vit」と並ぶ、TOHOシネマズが繰り出した販売戦略の一翼を担うシステムです。
導入からそれなりの時間が経過していますが、今回はこの自動発券機の問題点について少し。

TOHOシネマズで導入された自動発券機は、映画館の戦略的には、発券窓口の人件費を削減すると共に、ともすれば閉じられがちな窓口を常時オープンさせ続けることで、客のチケット購入需要に常時対応可能にすることを目的にしたものと思われます。
客が列を作って並んでいるのに受付可能な窓口が1つしか開いていない、という事態も結構ありましたし、理屈の上で言えば、企業的にも観客的にも利益が出るものとなるはずです。
しかし、実際にチケットカウンターに並んでみると、自動発券機の設置数が増えたことで以前よりも多くの客が捌けるようになっているにもかかわらず、以前よりも却って流れが悪くなっているような感がどうにも否めないんですよね。

自動発券機でチケットを購入する客の様子を見てみると、自動発券機の前で戸惑っていたり、考えこんでいたりする光景がしばしば目につきます。
TOHOシネマズの自動発券機は、操作方法自体がコンビニのATM以上に煩雑で、初心者の場合は操作方法が分からず立ち往生してしまうことも珍しくなかったりします。
TOHOシネマズ側も、一応はそういう事態を想定してスタッフを常駐させているのですが、教えられながらのたどたどしい操作では、当然のごとく自動発券機の滞留時間も通常より長くなります。
そうなると、たったひとりの客が止まることで後ろがつかえてしまい、結果的に渋滞を招いて回転率が悪化してしまうなどという、観客的にも企業的にも望ましくない事態が発生することになってしまうわけです。
かくいう私自身、あの自動発券機は何度か操作したことがあるのですが、この手の操作に慣れている人間から見ても、操作の手順がかなり多い感は否めなかったところですからねぇ。
しかも、これがさらに家族などで複数分のチケット発券をひとりでやっていたりすると、さらに厄介なことになりかねないわけで。
家族全員がそれぞれシネマイレージカードを所持していたりする場合、作業を一括で行うことができないのですから。
それやこれやで、ひとりないしは一組の集団が自動発券機の前でモタモタしながら作業に没頭することによる渋滞が、人間のスタッフがやっていればありえない落とし穴として立ちはだかることになるわけです。

この手の自動発券機の操作方法に纏わる問題については、まだ導入して間もないことから「客側が慣れていない」という事情も当然あるでしょう。
何度も繰り返し操作していけば、やがて慣れていって操作時間も短縮されるのは間違いないのですから。
しかし、ただでさえ映画館の観客には「数ヶ月~1年に1度程度」の一見さんが少なくなく、あまり自動発券機に触れることのない彼らがこの手の自動発券機の操作に慣れるのはかなり難しいものがあります。
特に人気映画ともなれば、彼らの割合は飛躍的に増えることになるわけですから、慣れない操作による人の流れの停滞と渋滞の発生は無視できない問題になりそうです。
また、レディースディやシニア割引を見ても分かるように、映画館は女性層やシニア層を観客のメインターゲットに据えているところがあるのですが、それらの層はこの手の操作を特に苦手としている人達が少なくない層でもあります。
常連客であればそれでも慣れるのは難しくはないでしょうが、これが一見さんだったりすると一体どうなるのか……。
映画館の主要客層が交通渋滞の原因になる、というのは映画館側にとっても皮肉もいいところなのではないでしょうかねぇ。

TOHOシネマズのみならず、映画館の自動発券機の導入自体は「時代の流れ」と言える部分もあるのですが、それが問題も違和感もなく自然に受け入れられるようになるには、まだまだ少なからぬ時間が必要になりそうですね。

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