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銀英伝2次創作「亡命編」におけるエーリッヒ・ヴァレンシュタイン考察19

「亡命編」を含めたエーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝シリーズでは、地球教の扱いに相当なまでに苦慮している様子が伺えます。
全てのシリーズで、地球教はその関係者が作中に一切登場せずにその所在だけがクローズアップされ、その状態のまま現在の状況だけが語られるという「顔のない存在」的な役割を強いられています。
2014年7月現在で唯一完結している「海賊編」でも、結局地球教はその存在のみが語られるだけの展開に終始していましたし。
ヴァレンシュタインの認識も含め、一連のシリーズ中における地球教は、何故か現代のキリスト教かイスラム教並みに広範な影響力と民衆からの支持を得ている組織であるかのごとく描かれ、さらに原作とは比較にもならないほど、帝国・同盟両首脳部および一般層に信仰を浸透させることができる辣腕ぶりを誇ってさえいるようです。
原作にもないはずのこんなおかしな設定を追加してしまったがために、地球教を「顔のない存在」としてしか描くことができなくなってしまったというのは皮肉もいいところですね。
原作の設定や描写を見る限り、原作における地球教は、最大限贔屓目に見ても「日本における旧オウム真理教」程度の力しか持っていないというのが実情に近いでしょう。
キリスト教やイスラム教レベルの教義が存在するのかさえも疑わざるをえないくらいなのですし、信者達をサイオキシン麻薬で薬漬けに「しなければならない」という時点で、既に宗教組織としては底も限界も見えてしまっています。
そんなやり方では、一時的に組織を拡大することはできるかもしれませんが、長期的には脱会信者等からその実態が明らかになるなどして布教はどこかで必ず行き詰ってしまいますし、ましてや全世界どころか一国レベルの国政を左右するほどの信徒を獲得するなど、夢物語もいいところでしかないでしょう。
宗教というのは、そういった一種の「強制」を伴うことなく、信徒が自らの意思で進んで帰依するからこそ強大たりえるのですし、それを実現しえる教義や理論というのを必要不可欠とするはずなのですけどね。
どうにもエーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝シリーズの作者氏は、地球教を過大評価しすぎなのではないかとつくづく思えてならないところなのですが。

さて今回は、「フェザーン謀略戦」と称するテロ行為後の動向について検証していきたいと思います。
なお、「亡命編」のストーリーおよび過去の考察については以下のリンク先を参照↓

亡命編 銀河英雄伝説~新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
http://www.akatsuki-novels.com/stories/index/novel_id~116
銀英伝2次創作「亡命編」におけるエーリッヒ・ヴァレンシュタイン考察
その1  その2  その3  その4  その5  その6  その7  その8  その9  その10  その11  その12  その13  その14  その15  その16  その17  その18

http://www.akatsuki-novels.com/stories/view/28496/novel_id~116
> 「討伐軍の指揮官は誰です? ミューゼル中将ですか?」
> 「いや、指揮官の名前までは聞いておらぬが……」
> ヴァレンシュタインの問いかけにトリューニヒト委員長、シトレ元帥が表情を変えた。ヴァレンシュタインは表情を消している。はて、ミューゼル中将に関心が有るのか?
>
> 「気を付ける事です」
> 「?」
>
「地球教の軍事力は無きに等しい。そんな彼らが取る手段はテロしかありません。殺人、爆破……、幸い彼らには死ぬ事を恐れない狂信者がいます。戦う事に熱中していると後ろから刺されますよ」
>
> テロの言葉にトリューニヒト委員長、シトレ元帥が顔を顰めた。当然ではある、政府、軍の中枢にある彼らにしてみればテロなどおぞましい代物以外の何物でもあるまい。私だとて彼の言葉に嫌悪感しか感じられない。もしテロが実際に行われれば地球教の連中に対して憎悪を抱くだろう。
>
> 「ミューゼル提督を殺す事で討伐軍を混乱、いや麻痺させようというのだな」
> 「その通りです。彼に警告する事ですね、一つ貸しだと言っておいてください、必ず返せとね」
> ヴァレンシュタインがクスッと笑った。その事に神経が苛立った、妙に反発したくなった。
>
> 「……卿の言う事が当たるかどうか、分かるまい」
> 子供じみた反発だ、馬鹿げている。しかし押さえられなかった……。ヴァレンシュタインも私の感情は分かっただろう、しかし何の反応も見せなかった、私の反発など彼にとってはどうでも良い事なのかもしれない。
>
>『君はミューゼル中将の死を望んでいるのだと思っていたが』
> 「!」
> 「そうですね、望んでいます。死んでくれればと思っていますよ」

> 困惑した様なシトレ元帥の問いかけと何の感情も見えないヴァレンシュタインの答え……。混乱した、訳も分からずスクリーンとヴァレンシュタインを見た。
>
> 『では何故警告するのかね』
> 「さあ、良く分かりません。何でかな……。多分、馬鹿なんでしょう……、感傷を切り捨てられない。……愚劣にも程が有るな、いつか自分を殺すかもしれない人間に忠告するなど……。自分がエーリッヒ・ヴァレンシュタインとして此処で生きているという事を未だに理解できずにいる……」

>
> トリューニヒト委員長、シトレ元帥、私……。皆が困惑する中ヴァレンシュタインだけが無表情にココアを飲んでいる。心此処に在らず、そんな風情だ。先程まで彼に感じた反発は消えていた。この男をどう捉えれば良いのか、まるで分からない……。

ヴァレンシュタインが前世の「佐伯隆二」のスタンスで悩んでいることなど、当のヴァレンシュタイン以外の「読者も含めた」人間にとっては、極めてどうでも良いことでしかありません。
ここで一番問題となるべきなのは、かつて「ヴァンフリートの1時間」とやらでラインハルトを殺せなかったことをヤンに責任転嫁した挙句に罵り倒しまくっていたヴァレンシュタインが、その過去をほっかむりしてラインハルトを助けようとすることに対する矛盾です。
ここでラインハルトが死ぬことがヴァレンシュタインにとっての最大の利益になるという構図は、あの「伝説の17話」当時と全く変わっていないと、他ならぬヴァレンシュタイン自身が明言しているのです。
しかも、ラインハルトに助言をすることが結果的にその利益に反することであると、さらにオマケで追加してしまっています。
ロクに事前情報を提示すらされなかったヤンが「ヴァンフリートの1時間」とやらをやらかしただけで鬼の首でも取ったかのごとく罵り倒すのに、そこまで他人に厳しいスタンスをとる自分自身は、最大の敵を利益に反してでも助けることに躊躇せず、しかもそのことについてただ「読者の頃の自分を捨てきれていない」と検討ハズレな思い悩みを披露するだけで済ませてしまうというわけです。
かつて自身の責任の及ばないところでアレだけ罵られたヤンにしてみれば、これほどまでに「とことん自分に甘く他人に厳しい」最低最悪のダブルスタンダードな態度もないでしょう。
ヤンはその場にいないにしても、その場に居合わせているシトレなどはミハマ・サアヤの報告書を介して「伝説の17話」の経緯を知っているわけなのですから、ヴァレンシュタインの態度のダブルスタンダードぶりに少しくらい疑問を呈して然るべきではありませんか。
しかも当の本人自身、「ラインハルトを助けることは全く利益にならない」と明言しているのですから、それでもなお忠告を行なおうとするヴァレンシュタインに対して「そんなことをする合理的な理由ないしメリットを明示せよ」くらいは命令してもバチは当たらないと思うのですが。
「伝説の17話」以降、責任転嫁の言い訳な後付けのごとく「ラインハルトは危険人物である」と提示し続けてきたのは、他ならぬヴァレンシュタイン自身なのですから。
確かにヴァレンシュタインは馬鹿であるだけでなくキチガイ・狂人と呼ばれるだけの低能な頭の持ち主ではありますが、それは「佐伯隆二」の立場を捨てきれないからでは全くなく、人の上に立つ者として示しのつかないことを、しかも公衆の面前で公然とやらかしていることにその要因の一端があるのです(もちろん、他にも色々とあるのですが(苦笑))。
ここまで矛盾だらけかつ何の利益にもならないことをやらかしておきながら、その言動を誰ひとりとして問題視しないというのはあまりにも異常な光景です。
原作のヤンのごとく「ヴァレンシュタインは矛盾の人である」と設定するのも結構なことですが、それならそれでもっと根源的な大矛盾について口をつぐむことなく「普通ならばとっくの昔に処刑台の露と消えている所業を何度もやらかしているヴァレンシュタインが、誰にも咎められるどころか問題視されることすらなく生き残っているのは原作崩壊レベルな大矛盾もいいところである」くらいはのたまって欲しいところなのですけどね。
まさか作者氏も、ヴァレンシュタインが作中でやっているようなことが「原作世界でも実行可能なことである」などと酔狂なことを考えているわけではあるまいに(苦笑)。

ところで「矛盾」と言えば、常日頃から「自分が生き残ること」をモットーに諸々の活動をしているはずのヴァレンシュタインが、またしても自身の身辺事情についての疎さを露呈しているシーンがありますね↓

http://www.akatsuki-novels.com/stories/view/28496/novel_id~116
> 『ヴァレンシュタイン中将……』
> トリューニヒト委員長が躊躇いがちに声をかけた。しかしそれを遮るようにヴァレンシュタインが話しだした。多分故意にだろう、何か言われるのを嫌ったのかもしれない。
>
>「ミューゼル中将だけじゃありません。テロを効率よく行うには組織の頂点を狙うのがベストです。帝国も同盟も政府、軍の上層部は非常に危険な状況にある。身辺警護が必要です」
>『なるほど、私達も要注意か。しかし一番危険なのはヴァレンシュタイン中将、君だろう』
>
> シトレ元帥の言葉にヴァレンシュタインが僅かに首を傾げた。
>
「私ですか? 非正規の艦隊司令官を殺しても余り意味は無いでしょう」
> 『報復という意味が有るだろう。それに君を一個艦隊の司令官にすぎないとは誰も思っていないよ』
> 『シトレ元帥の言う通りだ。君に死なれては困る』

……ヴァレンシュタインって、「亡命編」だけでも序盤にフロトー中佐に暗殺されかけて同盟に亡命した経緯があり、第6次イゼルローン要塞攻防戦でも直接怨みをぶつけられて殺されかけたことが複数回あるというのに、何故ここまで自身の身辺について何の警戒心も抱こうとしないのでしょうかね?
「自分が生き残る」という観点から言えば、原作知識が通じないことも相まって、原作のラインハルトなどよりも100万倍以上は危険が満ちている要素だというのに。
また原作知識から考えても、ヤンが地球教に暗殺された事例やキュンメル事件等のエピソードを十全に掌握している立場にもあるというのに。
ヴァレンシュタインに竜種の血が流れているとか超サイヤ人としての戦闘力があるとかいった設定でもあるのなら却って理解もできるのですが、実際のヴァレンシュタインにはむしろ逆に「虚弱体質」という要素が付加されてすらいる始末ですし。
本当にヴァレンシュタインが「自分が生き残ること」を最優先事項として考えるのであれば、まず真っ先に警戒しなければならないのは「自分が暗殺・粛清される可能性」であり、自身の身辺警護は全てに優先して行われて然るべきことですらあるはずでしょう。
ヒトラーやスターリンといった歴史上の独裁者達も、「自分が生き残る」ために過剰過ぎるほどの身辺警護で自分の周囲を固め、それでも不安を打ち消すことができずに「先制攻撃的な」大粛清に走るのが常だったりするのですけどね。
結局のところ、ヴァレンシュタインは「自分が生き残ること」を最優先目標として行動していると述べていながら、実際には「自分が殺される可能性」について本当に真剣に考えたことなどないのでしょう。
直接的な生命の危険に晒されていたはずの第6次イゼルローン要塞攻防戦の時ですら、「自分が殺される」とは全く考えてもいなかったようなのですから。
また、バグダッシュやミハマ・サアヤが監視役としてヴァレンシュタインに付いていた時も、「自分を暗殺するかもしれない危険人物」としてマークしていた様子も全くなかったのですし。
そりゃ「神(作者)の祝福」に護られているヴァレンシュタインが他者に殺される可能性なんて「神(作者)の意向」に逆らわない限りはあるはずもないのですし、最悪はそれこそ竜種の血に目覚めたり超サイヤ人に覚醒したりで難を乗り切ることも極めて容易な話ではあるのでしょうけど(爆)。
ただ、当のヴァレンシュタイン自身は自分に「神(作者)の祝福」の護りが施されているという事実を当然知らないわけで、その状態で「自分は決して他者に殺されることはない」と断言できる自信は一体どこから来るのか、という問題は確実にありますね。
「自分が生き残ること」を至上命題としているはずの人間が「自分が(暗殺・粛清をも含めて)殺される可能性」について少しも関心を払うことすらないなんて、矛盾を通り越して「ありえない」話ですらあるのですが。

http://www.akatsuki-novels.com/stories/view/71571/novel_id~116
>『実際には貴族達がフェザーンに攻め込む前に帝国領へ踏み込んでの迎撃戦という事かね?』
> 「いえ、フェザーンは一度貴族達に占領させます」
> シトレと俺の遣り取りに他の三人が、いやシトレを含めて四人が驚いた様な表情を見せた。
>
>
『正気かね、君は』
> レベロが俺を非難した。
> 「正気です、その方が勝ち易いですからね」

> 『しかし』
> 言い募ろうとするレベロを遮った。
>
> 「レベロ委員長、貴族連合なんて烏合の衆ですよ、軍規なんて欠片も有りません。フェザーンを占領したら連中遣りたい放題でしょうね。略奪、暴行、殺人、破壊、フェザーンは無法地帯になります。フェザーン人は大勢死ぬでしょうが心配はいりません。来年はそれを補う子供が沢山生まれます、父親は不明ですが」
>
> 四人の顔が引き攣っている。
> 「もしかするとフェザーンでは貴族達とフェザーン人の間で抗争が起きるかもしれません。結構ですね、大いに結構です。こちらは連中に気付かれる事無く近付く事が出来ますしフェザーンには我々は解放軍だと宣伝出来ます。歓迎されるでしょう、真実を知るまでは」
>
>『君は、正気かね』
> 声が震えていた。その言葉は二度目だぞ、レベロ。
>
「正気です、一度フェザーンを根本から叩き潰さなければなりません。何故なら今のフェザーンは地球教が創ったフェザーンだからです」
> 『……』
>
> 「帝国を見れば分かるでしょう、彼らはルドルフの負の遺産を切り捨てようとしている。一千万人以上殺す事で新しい帝国を創ろうとしているんです。それがどれほど苦しくて痛みを伴う事か……。しかしフェザーンは違う」
> 『……』
>
「フェザーンは変わろうとしていません、自分達が繁栄している所為で危機感が全く無いんです。危険ですよ、このままでは地球教はフェザーンで生き残りかねない」
> 四人が沈黙した、唸り声さえ上げない。
>
> 『……だから潰すというのかね』
>
「その通りです、シトレ元帥。彼らが自らの意思で変わろうとしない以上、我々が潰すしかない。一度叩き潰して彼らに自分達の手で新しい国家を創らせるんです。そうでなければフェザーンは普通の国家になりません」
>
> 地球教とは無関係の人間が何人、いや何万と死ぬだろう。怨め、憎め、罵れ、だが俺は退くつもりは無い。ここまで来た以上、中途半端に終わらせる事は出来ない。
貴族達がルドルフの負の遺産なら地球教と連中が作ったフェザーンは人類の負の遺産に等しい。切り捨て、叩き潰さなければならない……。

「謀略戦」と称するテロを仕掛けられ、自治領主という自国の元首を拉致られた挙句に、こんな上から目線かつ革命家きどりな断定までされてしまうとは、フェザーンも良いツラの皮としか言いようがありませんね。
そもそもヴァレンシュタインは、他ならぬ自分自身がフェザーン相手に「テロ」を仕掛けたという自覚があまりにも無さ過ぎるのではないですかね?
あのヴァレンシュタインのテロ行為は、本来ならば同盟とフェザーンの外交関係を国交断絶レベルにまで確実に破綻させ、両国に政治的・経済的な大打撃を与えた挙句に戦争状態に突入してもおかしくないほどの悪影響をもたらすものですらあります。
「テロ」を仕掛けられたフェザーン側にしてみれば、ヴァレンシュタインは立派な「テロリスト」「犯罪者」でしかないですし、そのヴァレンシュタインをバックアップする同盟は、某北朝鮮などよりもはるかに最悪水準な「テロ国家」以外の何物でもないのです。
その「テロリスト」たるヴァレンシュタインが、フェザーンに対して「彼らが自らの意思で変わろうとしない以上、我々が潰すしかない」だの「フェザーンは普通の国家になりません」だのと意味不明な御託宣をのたまっていることを知ったら、当のフェザーン人は怒りと侮蔑の念を込めてこう言わざるをえないでしょうね。
「お前にだけは言われたくない!」と。
フェザーン側にしてみれば、地球教などよりもヴァレンシュタインのテロ行為とそれをバックアップする同盟政府の方が、はるかに脅威かつ唾棄すべき存在として見られていても何らおかしくないどころか、むしろそれが普通の感覚とすら言えるものですらあるでしょう。
しかも、それが皮肉にも「フェザーンと地球教の関係」というヴァレンシュタインが暴露した情報のインパクト効果を結果的に薄くしてしまい、却って地球教を利することになっている可能性すら否定できないくらいなのですし。
相も変わらず、自分の所業がもたらす深刻な副作用についてとことん無責任かつ無頓着なキチガイ狂人ですね、ヴァレンシュタインは。

それに第一、ルビンスキーのような自治領主府のお偉方はともかく、大多数の一般的なフェザーン人に、地球教に纏わる如何なる責任問題が存在するというのでしょうか?
フェザーンと地球教の関係というのは、あくまでも雲上人たる自治領主府のごく一部の人間と地球教最高幹部クラスとの間のみで成立しているものでしかありません↓

銀英伝3巻 P75下段
<アドリアン・ルビンスキーの執務する自治領主府では職員たちが待合室のほうを見ては、ひそひそとささやきあっている。
 公私ともに多忙をきわめ、身体がふたつ、さもなくば一日が五〇時間ほしいと日常言っている自治領主が、この数日、何を好んで、えたいのしれない宗教家と密談しているのか、部下たちには理解できない。
フェザーン人のなかでも、自治領と地球との間に尋常ならぬ関係があることを知る者は、政治の中枢部に位置する、極少数の人々だけであった。

つまり、それ以外の圧倒的大多数のフェザーン人にとって、地球教はヴァレンシュタインによる暴露が行われるまではせいぜい「取引相手」「客」として接点を持つ程度の存在でしかなかったのですし、場合によってはその存在すら知らなかったという人も少なくなかったでしょう。
そんな大多数のフェザーン人に「フェザーンは地球教によって作られたものであり、これと決別する必要がある」などと言ったところで、彼らは「それはお偉方が勝手にやったことであって、自分らとは何ら関わりのない他人事」としてしか捉えることはないでしょう。
大多数のフェザーン人とは全く関わりのない場所と責任に基づいて行われた問題について、何故当事者意識の持ちようがないフェザーン人が「負の遺産」に対する贖罪意識を背負わなければならないのでしょうか?
しかも、フェザーンは国民ひとりひとりが参政権を持つ民主主義国家ですらないのですから、ますますもって責任意識の持ちようがないはずなのですが。
ヴァレンシュタインは地球教を過大評価するあまり、地球教とフェザーンの関係が「フェザーン人の総意」に基づいて作られたものである、とでも勘違いしているのではないでしょうかね?

また、そもそも「フェザーンは変わろうとしていない」などとほざくヴァレンシュタインは、フェザーンに対してどんな変革を期待していたというのでしょうか?
地球教と決別さえすれば良い、というのであれば、地球教がサイオキシン麻薬を大量に製造し信者達に供与し操っているという事実が暴露された時点で、何の問題もなく普通に達成されそうなものなのですが。
現代日本でも、不祥事を起こし警察捜査のメスが入れられる企業や個人に対し、社会的な村八分が行われる光景がしばしば展開されたりしますが、帝国や同盟はもちろん、フェザーンでも当然同じことが地球教に対して行われるのは確実なのですし、地球教が身近な存在ではないからこそ、大多数のフェザーン人も喜んで地球教を排除にかかることでしょう。
もちろん、地球教との関係を知る自治領主府関係者以外のフェザーン人であっても、たとえば地球教と何らかの取引があったりお得意先として懇意にしたりしている商人や企業の関係者の場合は、有力顧客のひとつが事実上消失することを意味するわけですから、ある程度の経済的な打撃を受けることは当然あるでしょうが、彼らにしても地球教と心中するよりは手を切って生き残る道を選択する者が圧倒的大多数を占めるでしょう。
地球教絡みでフェザーンに必要な変革があるとすれば、この程度のシロモノでしかありえないのです。
ただでさえサイオキシン麻薬に手を染める地球教は、帝国・同盟のみならず一般的なフェザーン人にとっても危険な存在であると認識されるには充分なものがあるでしょうし、別に放っておいても大多数のフェザーン人と地球教の関係は、経済的な要素も含めて自然消滅の方向へ向かうことにならざるをえないはずなのですが……。
「フェザーンと地球教の関係」を象徴する親玉のルビンスキーは、他ならぬヴァレンシュタイン自身が拉致ってしまっているのですし、これ以上フェザーンは地球教に関しては何もしようがないと思うのですけどねぇ。
そんな一連の事情を全て黙殺して「フェザーンは地球教が作ったものなのだから全て潰さなければならない」と地球教と全く無関係の人間の殺戮が行われることを全面肯定するヴァレンシュタインは、第二次世界大戦末期の東京大空襲について「我々は民間人を虐殺していたのではない、日本の軍需工業を破壊していたのだ。それに携わる者は女・子供・老人も含め全て戦闘員だった」などと強弁していたアメリカ空軍のカーチス・ルメイを髣髴とさせるものがあります。
地球教を過大評価し被害妄想にふけるあまり、ヴァレンシュタインはフェザーン人全てが地球教徒にでも見えていたりしたのでしょうかねぇ……。

http://www.akatsuki-novels.com/stories/view/73188/novel_id~116
> 「フェザーンを一度叩き潰すというのは分かるが他に手は無いのかね? このままでは全く無関係の人間まで巻き添えを喰う事になるが」
> 「有りませんね」
> 「……」
> レベロ委員長の問い掛けにヴァレンシュタインが冷淡に答えた。絶句する委員長を見ながら一口オレンジジュースを飲むとフッとヴァレンシュタインが嗤った。
>
> 「貴族連合軍をフェザーンに誘引するのは政治的な理由だけじゃ有りません、軍事的にもフェザーンに誘引せざるを得ないんです、そうしないと勝てません」
> 「……」
> 「貴族連合軍を殲滅するには彼らを一カ所に集めておく必要が有ります。最善の手は彼らを同盟領に引き摺り込み包囲して殲滅する事ですが彼らにそれが通用するかどうか……」
>
> 皆が顔を見合わせた。ややあってホアン委員長が口を開いた。
> 「通用しないのかね?」
> 「その可能性が有ります。彼らは軍を率いていますが軍人ではない、軍事常識が通用しないんです」
> 「……」
>
> 「彼らにはまともな戦略目標などないし作戦も無い。基本的に彼らは烏合の衆です、
纏まって行動するなどという発想は皆無に等しい。イゼルローン要塞経由で同盟領に誘引すればイゼルローン回廊を出た瞬間にバラバラに散りかねない
> 「それは……」
> シトレ元帥が顔を顰めた。
>
> 「そうなったら同盟軍はバラバラに散った貴族連合軍を追いかけなければなりません。同盟領内で追いかけっこが始まりますよ。但し、遊びじゃありません、命懸けの追いかけっこです。一つでも取り逃がせばどうなるか……、
有人惑星に辿り着けばあの馬鹿共は核攻撃をしかねません
> 「馬鹿な!」
> レベロ委員長が吐き捨てたがヴァレンシュタインは苦笑を浮かべてオレンジジュースを一口飲んだ。
>
> 「馬鹿なじゃありません、彼らにとって同盟市民は憎むべき叛徒であり抹殺すべき存在なんです。
核攻撃は有り得ない事じゃありません。そしてそうなったら和平など吹き飛んでしまいます。あとは泥沼の戦争が続くでしょう……」
> 皆が黙り込んだ。確かに和平は吹き飛ぶだろう、そして核攻撃は有り得ない事ではない……。
>
> 「確実に勝つためには彼らを一カ所に集める場所が必要です」
> ヴァレンシュタインが皆を見回した。
> 「それがフェザーンです、連中は甘い果実に集まる虫の様にフェザーンに群がるでしょう。そこを一網打尽にする……。詰まらない感傷は捨ててください、命取りになりますよ。同盟領には一隻たりとも侵入を許すことは出来ないんですから」
> そう言うとヴァレンシュタインはまたサンドイッチを口に運んだ……。

ヴァレンシュタインは、原作の記述や設定のどこをどう見てこんな門閥貴族評を叩き出したのでしょうかね?
確かに門閥貴族の多くに軍事知識がなく烏合の衆であることは、原作のリップシュタット戦役などにも明示されてはいます。
しかし、彼らの行動を見る限り「纏まって行動するなどという発想は皆無に等しい」どころか、むしろ逆に「集団で固まり、徒党を組んで行動するのが常態」と言わんばかりの行動原理すら見えてくるくらいなのですが。
原作のリップシュタット戦役でリッテンハイム侯がブラウンシュヴァイク公と袂を分かち分派行動に出た際も、リッテンハイム侯は貴族連合軍の3分の1相当の戦力で固まり行動していましたし、「ヴェスターラントの虐殺」直前の戦闘でも、貴族連合軍はほぼ全軍「纏まって」行動していました。
フェザーンによってでっち上げられた銀河帝国正統政府が発足した際も、喜んではせ参じる亡命貴族達が少なくなかったですしね。
これらの事例から考えると、原作における大多数の門閥貴族達の行動原理は、「相手が弱者と確信すると居丈高に振る舞うが、本質的には臆病」というのが実態に近いでしょう。
だからこそ集団で徒党を組まざるをえないのですし、単独行動を取るなど論外もいいところなのです。
ましてや、地の利もなければ周囲全てが敵という環境下で、自殺行為そのものでしかない単独行動が取れるほどの「蛮勇」の持ち主が、あの門閥貴族の中にゾロゾロと溢れ返っていたりするのでしょうか?
ヴァレンシュタインが主張するような分散行動を「あの」門閥貴族達が、それも自発的に展開できるくらいならば、原作のラインハルトももう少しは苦戦を余儀なくされたことでしょうね。
それに、あくまで同盟領に門閥貴族達を入れないようにすることを至上命題とするのであれば、回廊の出入口を固めて封鎖し、回廊内を戦場に設定して交戦するという手が普通に使えるはずでしょう。
そうすれば、敵は目の前の敵を粉砕しない限り同盟領へ雪崩れ込むことが出来なくなりますし、待ち伏せ攻撃もやりやすくなります。
特に今回は帝国内部からも協力を受けているのですから侵攻時期も事前に分かるわけですし、周到な準備を整えた上での待ち伏せ&迎撃戦が容易に行えるはずなのですが。
原作にある情報と全く真逆な知識と解釈を、ヴァレンシュタインは一体どうやって導き出したというのでしょうか?
ひょっとして、かつての「佐伯隆二」が所持していたであろう銀英伝の原作小説なりアニメDVDなりブルーレイディスクなりは、数十ページ単位もしくは数百分単位での落丁でもあったのか、そうでなければ一般的なそれとは異なる何か重大な異物が混入していたりでもしていたのでしょうかねぇ(苦笑)。

次回の考察からは、帝国と同盟のフェザーン侵攻を巡る駆け引きについての検証に入ります。

銀英伝2次創作「亡命編」におけるエーリッヒ・ヴァレンシュタイン考察18

一時期は更新ペースが著しく悪化した上、他のシリーズばかり執筆しまくっていたことから「遅筆な田中芳樹のごとく連載を放棄したのか?」という疑惑すら持ち上がっていた「亡命編」も、2014年に入ってからは更新速度が「にじファン」閉鎖前の勢いを取り戻していますね。
この「銀英伝2次創作『亡命編』におけるエーリッヒ・ヴァレンシュタイン考察」も、気がつけば最新話と60話近くも差をつけられているありさまだったりします(T_T)。
そんなわけで、こちらも再び最新話まで追いつくべく、考察を再開したいと思います。
今回は、ヴァレンシュタインがフェザーンで展開した「謀略戦」と称する子供の落書きレベルなテロ活動について取り上げます。
あんなシロモノを「謀略戦」と言えるその神経は相当なまでに太いと言わざるをえないものがあるのですが、この「謀略戦」と称するテロ行為は「伝説の17話」と並ぶ、ヴァレンシュタイン最強の切り札「神(作者)の祝福」の醜悪ぶりを象徴する事件のひとつであると言えます。
原作銀英伝における地球教のテロと同等、いやそれ以下の低レベルぶりを晒している以外の何物でもないのですし。
なお、「亡命編」のストーリーおよび過去の考察については以下のリンク先を参照↓

亡命編 銀河英雄伝説~新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
http://www.akatsuki-novels.com/stories/index/novel_id~116
銀英伝2次創作「亡命編」におけるエーリッヒ・ヴァレンシュタイン考察
その1  その2  その3  その4  その5  その6  その7  その8  その9  その10  その11  その12  その13  その14  その15  その16  その17

ヴァレンシュタインが仕掛けた「フェザーン謀略戦」というのは、フェザーンと地球教の関係、そして地球教の実態を全宇宙に公表することで、地球教の殲滅と帝国・同盟の共闘・和平の道を切り開くことを目的としています。
この「謀略戦」とやらの第一の問題点は、そもそも謀略を仕掛けられるターゲットの知的水準が原作と比較してさえもあまりにも低く設定されていることにあります。
たとえば、ヴァレンシュタインとローゼンリッターの面々がフェザーンの自治領主府に乗り込む際、彼らは原作の第7次イゼルローン要塞攻防戦の要領で内部に潜入しているのですが……↓

http://www.akatsuki-novels.com/stories/view/7122/novel_id~116
> ヴィオラ大佐が受付で話をしている。アポは取ってあるのだ、問題は無いだろう。有るとすれば人数が多い事だが何と言って説得するかはヴィオラ大佐に任せるしかない。全員武器はアタッシュケースに入れて持ち歩いている。ローゼンリッターはエンブレムを外しているから判別は出来ない。ここを切り抜けられるか否かが第一関門だ。大丈夫だ、上手くいく。
>
> ヴィオラ大佐が戻ってきた。顔には笑みが有る、小声で話しかけてきた。
> 「上手くいきました。まあ強盗や人攫いがここに来るはずが有りませんからな」
> 「そうですね」
>
イゼルローン要塞と同じか、IDカードを偽造しても調べられる事は無かった。ここに敵が来るはずが無い、その固定観念が警備を形骸化させている……。

確かにフェザーンには、帝国・同盟両国が戦争に明け暮れる中で漁夫の利を得るがごとくの平和を、建国以来の長年にわたって謳歌している歴史があります。
しかしだからと言って、フェザーンの自治領主府が外部からの脅威に無警戒でいるわけがないでしょう。
そもそもフェザーンでは、宇宙歴791年・帝国歴482年にルビンスキーの前任者だった先代の自治領主ワレンコフが、地球教によって暗殺されています。
フェザーンでは初代の自治領主レオポルド・ラープ以来、地球教と手を切るか独自の道を歩むかで葛藤を続けていた歴史的経緯があり、ワレンコフは地球教から独立しようとして地球教から排除されてしまったわけです。
そして、すくなくともルビンスキーはその経緯と真相について地球教から常に聞かされた上で、「もし地球教に逆らったらお前もそうなるぞ」と脅されている立場にあります。
フェザーンと地球教の関係は決して親密かつ親愛に満ちたものなどではなく、常に裏切りを警戒し監視の目が向けられる緊張状態を強いられるものだったのです。
しかも当代の自治領主であるルビンスキーもまた、地球教とは最終的に手を切る心積もりであったことが、原作銀英伝でもはっきりと示されています。
またそうでなくても、そもそも必要最小限の警察しか持たない軍事力皆無なフェザーンとしては、外部からの諜報活動に対する防諜(インテリジェンス)について、帝国・同盟のそれをはるかに凌駕するレベルの能力が常に求められるところでしょう。
これらの事情から考えれば、フェザーンの自治領主府が外部からのテロや諜報活動に対して無警戒でいるなどという前提自体が本来考えられないことなのです。
原作の第7次イゼルローン要塞攻防戦の場合、攻撃は常に外部から行われるものであり、内部からの攻撃はその時まで一度も発生しなかったという「これまでの実績」があったからこそ、その間隙を突くことも可能だったのですが、フェザーン自治領主府の場合は戦争に対する備えが必要ない代わりに、テロや諜報活動について常に目を光らせざるをえない状態にあったわけです。
またそういう環境であったからこそ、原作のルビンスキーもラインハルトのフェザーン侵攻の際に素早く行方を眩ますことができたのでしょうし、自身を暗殺しようとしたケッセルリンクを返り討ちにしたり、ラングを操りつつ逮捕を免れたりといった保身を図ることにも成功したわけでしょう。
原作から考えても、ルビンスキーはヴァレンシュタインなどよりもはるかに「自己保身」について熱心な人間であり、その方面で警戒を怠るというのはありえないことなのです。
この時点で既に、ヴァレンシュタインの「フェザーン謀略戦」というのは、ルビンスキーを原作よりもはるかに無能な存在にしないと到底成立しえない、まさに「子供の落書き」同然の下手な絵図でしかないのです。

さらに笑ってしまうのは、フェザーン自治領主府に帝国高等弁務官レムシャイト伯を誘き出す際の手法です。
何とヴァレンシュタインは、たった1本の通信だけで伯を誘き出したというんですね↓

http://www.akatsuki-novels.com/stories/view/7122/novel_id~116
> 「帝国の高等弁務官事務所に連絡を入れてもらえますか」
> 「承知しました。外にいる連中にやらせます」
> 俺の言葉にヴィオラ大佐が頷いた。時間は九時四十六分。
ヴィオラ大佐が“白狐を誘き出せ”と指示を出している。思わず笑みが漏れた。さて、出てくるかな、白狐。早ければここには十分程で来るはずだ。

http://www.akatsuki-novels.com/stories/view/7257/novel_id~116
> 「条件さえそろえばフェザーンは同盟に擦り寄るのは目に見えている。現時点で独立など持ちかける必要は無い。私の目的は帝国軍を振り回す為であってフェザーンの独立など本当はどうでも良い事なのだと……。そのためにレムシャイド伯に連絡を入れここに呼び寄せたのだと……。伯に猜疑心を植え付けるために……、如何です?」
>
> 「あの通信は卿の差し金だったのか……」
> 呻くようにレムシャイド伯が呟いた。恨みがましい目をしている。少し慰めてやるか。
>
> 「ええ、そうです。エーリッヒ・ヴァレンシュタインが同盟政府の命令で密かに自治領主と接触している。目立つことを避けるため少人数で来ている。今すぐ自治領主府に行けばヴァレンシュタインの身柄を抑え、ルビンスキーの背信を咎め帝国の威を示すことが出来るだろう。ヴァレンシュタインはヴィオラ大佐の名前で面会をしている、急がれたし……。発信者は亡命者の専横を憎む者、確かそんな通信だったはずです、そうでは有りませんか?」
> 「……」
>
>
「功を焦りましたね。こちらの不意を突けると思い、碌に準備もせずにここに来た」
> レムシャイド伯が顔を歪めている。慰めにならなかったな、かえって傷つけてしまったか……。でも今度は大丈夫だ。
>
「私と自治領主閣下、そしてレムシャイド伯の三人で話す必要が有りました。ですがお話ししましょうと誘っても断られると思ったので……」

いやはや、レムシャイト伯もとことん舐められたものですね。
何しろヴァレンシュタインは、レムシャイト伯がたった1本の、それもその場ででっち上げた感すらあるような通信が送られてきただけで、その内容について何ら疑問を抱く事すらなく頭から信じ込み、後先考えずにのこのこと「敵地」にバカ正直に乗り込んでくる低能であると評価していたわけなのですから(苦笑)。
普通、通信の出処が曖昧だったり不明だったりする時点で、通信内容をイキナリ頭から信じ込んだりするような人間はいないでしょう。
最悪、ただそれだけで「根拠のないヨタ話」として捨てられてしまってもおかしくありませんし、そうしないにしても、すくなくともまずは通信の内容が真実であるのか否か調査するのが先決ではありませんか。
そして、調査の結果、通信の内容が真実であると結論付けられたとしても、今度は「これは罠ではないか?」という考えもよぎらないというのはさらに変です。
古今東西、あまりにも美味すぎる話には罠や裏があると言いますが、レムシャイト伯はそんな常識に思いを致すことすらできないほどに低能無能だったというのでしょうか。
まあ、こと「亡命編」におけるレムシャイト伯に限定すれば、まさにヴァレンシュタインの意図通りの低能ぶりを披露しているわけですからそう評価するしかないのでしょうが、原作のレムシャイト伯と言えど、すくなくともここまでバカ正直かつ政治的な駆け引きもできない低能扱いはされていなかったのではないかと思えてならないのですけどね。

また、もし仮にレムシャイト伯が通信の内容を頭から信じ込んでヴァレンシュタイン一派を捕縛すべく動くにしても、わざわざルビンスキーがいる自治領主府の部屋まで乗り込む必要もなかったでしょう。
レムシャイト伯にしてみれば、重要なのはとにかくヴァレンシュタインを捕縛・殺害することであり、何も部屋まで乗り込んでいく必要はないのです。
ヴァレンシュタインがフェザーンの自治領主府にいるのは分かりきっているわけなのですから、建物の入口という入口を全て塞ぎ、空の飛行をも完全に禁止することで完全包囲し、少しずつ包囲網を狭めつつ、自分達に地の利がある有利な場所を戦場にして捕獲作戦を展開するなり、心理的に追い詰めて降伏に追い込むなりすれば良かったのです。
とにかく目的遂行が最優先で手段は問わない、フェザーンと仲違いしてでもヴァレンシュタインを抹殺する、という覚悟があるのであれば、最悪、自治領主府ごとヴァレンシュタインを高性能爆弾なり戦艦の艦砲射撃なりで消し飛ばしてしまう、という手法だって使えないこともなかったでしょうし。
ヴァレンシュタインを捕縛・殺害するならするで、もっと安全確実にことを進める方法はいくらでもあったのに、何故わざわざ自治領主府の部屋までのこのこと出張った挙句に捕縛されてしまうのか、そこも理解に苦しむところです。
ルビンスキーの件もそうですが、ヴァレンシュタインの「謀略戦」というのは、相手が原作よりもはるかに低能無能でないと成立しえないという点において、原作レイプと言っても過言ではないゴミなシロモノでしかないのです。

さて、ヴァレンシュタインの「謀略戦」とやらは、そのお粗末な内容や成功率もさることながら、実はその行為それ自体にも大きな問題を孕んでいます。
そもそも、同盟とフェザーンは別に戦争状態にあるわけではなく、今回の「謀略戦」とやらも戦争ではなく外交儀礼の延長から発生したものでした。
ヴァレンシュタイン一派は、対フェザーンの外交窓口である同盟高等弁務官事務所の一員たるヴィオラ大佐が正式な手続きを通じてルビンスキーに面談を求め、フェザーン側もこれを了承したことに便乗する形で、フェザーンの自治領主府に「完全武装で」潜入した挙句、本来外交儀礼を尽くすべき相手に武器を突きつけて脅しをかけているわけです。
これが「戦争」であれば、原作の第7次イゼルローン要塞攻防戦におけるヤンのごとく、「奇跡」「魔術師」の名で称えられることもあるかもしれません。
ところが今回の「謀略戦」とやらの舞台は「戦争」ではなく「外交」。
しかもヴァレンシュタインの凶行には同盟の高等弁務官事務所が直接関与している上、自治領主府からルビンスキーを拉致して逃亡する際には、ヴァレンシュタイン自ら「生命を脅かされている自分達の生命を守るためにフェザーンを脅せ」などと帝国・同盟の首脳陣に命じる始末です↓

http://www.akatsuki-novels.com/stories/view/8002/novel_id~116
> 「我々はフェザーンではお尋ね者です。今も追われている。場合によっては問答無用で撃沈される可能性も有ります」
> 『口封じかね、追手の中に地球の手の者がいると』
> 「可能性は有るでしょう。
帝国、同盟がこのベリョースカ号の安全に関心を持っている、フェザーンはベリョースカ号の安全と航行の自由を保障する義務が有ると声明を出してください
>
> 提督の言葉にスクリーンの四人が顔を見合わせました。
> 『良いだろう、……そちらはどうかな』
> 『異存ありませんな』
> ブラウンシュバイク公とトリューニヒト委員長が同意しました。それを見てヴァレンシュタイン提督が言葉を続けました。
>
>
「現在同盟の三個艦隊、五万隻がフェザーンに向かっています。もし我々の安全が脅かされた場合、同盟軍三個艦隊にフェザーン本星を攻撃させる、それも宣言してください」
>
> 『フェザーンを攻撃だと。しかも卿ら反乱軍に委ねるというのか』
> ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯が顔を顰めています。コーネフ船長も“馬鹿な、何を考えている!”と詰め寄ろうとしシェーンコップ准将に取り押さえられました。
>
> 「帝国、同盟がフェザーンに対しベリョースカ号の安全と航行の自由を保障するように命じたにもかかわらずフェザーンがそれを守らなかった。当然ですがそれに対しては報復が必要になるでしょう、それを同盟軍が行う」
> 『……』

……何というか、こんな自己一身の安全確保を目的に、武力にものを言わせて他者を脅迫する行為が、ヴァレンシュタイン曰く「謀略戦」の実態というわけですね。
はっきり言いますが、こんなシロモノは「戦争」でもなければ「外交」でもなく、もちろん「謀略戦」などという御大層な名で呼称できるものですらない、ただの「テロ」でしかありません。
しかもこの「テロ」は、その勃発から結末に至るまで、同盟の国家および軍が一丸となってサポートしたものでさえあるのです。
よって同盟的には、一連の「テロ」事件が「ヴァレンシュタインの単独行で行われたものであり、自分達は一切関与するところではない」という言い訳すら展開することができず、ヴァレンシュタインと一蓮托生的に事件の責任を背負わされることになります。
一連のヴァレンシュタインの凶行で特に同盟が大きなダメージを受ける箇所は、その経緯から考えても「外交の信用」です。
何しろ、自分達は必要となれば「外交」の場ですら武器を振り回し、外交相手を「物理的に」脅しつけるような存在である、と万人に向かって宣伝しているも同然なのですから。
当事者であるフェザーンと国交断絶・戦争状態突入になるのはもちろんですが、第三者たる帝国にとっても「同盟という国はとてもマトモな交渉ができるような存在ではない」という認識を抱くに充分過ぎる事象なのです。
「外交の信用」を失うということは、つまるところ「他国とのマトモな外交が一切できなくなる」ことを意味するわけです。
これは同盟およびヴァレンシュタインが目指している「帝国との和平」についても、当然のことながら重大どころか致命的な支障を来す深刻極まる事態を【本来ならば】到来させるものですらあります。
ただでさえヴァレンシュタインは、先の(亡命編における)第7次イゼルローン要塞攻防戦の際に「何百万、何千万人の帝国人を殺してあげますよ」などという「帝国250億無差別虐殺発言」を披露してさえいるのです。
それに今回の「テロ」事件およびそれに伴う「同盟の外交の信用の失墜」が重なればどうなるか?
同盟およびヴァレンシュタインは、帝国と話し合いをするつもりなど最初から全くなく、どちらかが完全に滅ぶまで永遠に戦いを続ける殲滅戦争を遂行するつもりである、などという自分でも意図せざるメッセージを結果として伝えてしまうことにもなりかねないでしょう。
ヴァレンシュタインは、地球教の秘密を公に晒すことと引き換えに、自由惑星同盟という国に「テロ国家」という汚名を被せた挙句、最大の目的である帝国との和平を全てご破算にする行為をやらかしていたわけです。
よくもまあ、こんな【本来ならば】同盟の国益にとっても害にしかならないキチガイな人間を、同盟という国は重用するものですね。
たかだか地球教の実態を暴いた程度のことで、同盟が背負わされる羽目になるこれらのマイナス要素とつり合いが取れるとでもいうのでしょうか?
もちろん、ヴァレンシュタインが繰り出すどんな矛盾も破綻も「神(作者)の祝福」の前には強引にねじ伏せられ、ヴァレンシュタインを礼賛する声に勝手に変わってしまうのですが(笑)。

ヴァレンシュタインが主導する「子供の落書き」レベルの幼稚で浅薄な「テロ行為」を成功と栄光の金箔で飾り立てるために、それ以外の周辺人物の知能水準を原作設定どころか一般常識レベルすらも無視して貶め礼賛させる。
そこではまたしても、「原作知識」とは全く無関係に存在する「神(作者)の祝福」が猛威を振るっているわけです。
挙句の果てに、ヴァレンシュタインは「神(作者)の祝福」を自分の実力と勘違いし、「神(作者)の祝福」を前提とした原作キャラクター批判などをおっぱじめたりするのですから、何とも救いようがないとしか評しようがないのですが。
本当にヴァレンシュタインが有能な人物だというのであれば、作中の登場人物ではなく読者をこそ唸らせるような手腕を披露して欲しいものなのですけどね。

銀英伝2次創作「亡命編」におけるエーリッヒ・ヴァレンシュタイン考察17

二次小説投稿サイト「にじファン」の閉鎖後、同主旨のサイト「暁」に移転した銀英伝二次小説「銀河英雄伝説~新たなる潮流」は、すっかり更新ペースが遅くなってしまいました。
更新自体も、以前は「本編」と「亡命編」の長編一本に絞っての頻繁な更新だったものが、「にじファン」閉鎖後は「異伝」や「美しい夢」など、長年放置されていたシリーズの執筆が多くなっています。
両シリーズの更新が遅々たるものになったのは、「本編」はもはや消化試合的な感が否めなくなっており、「亡命編」はストーリー自体があまりにもトンデモ&無理筋&主人公を勝たせ過ぎなために、それぞれ話の展開がやりづらくなったという事情が、少なからぬ影響を与えているのではないかと思われます。
しかし、「では今まで放置されていたシリーズがなぜ突然再開されたのか?」という疑問はどうにも拭えないところですね。
「本編」と「亡命編」以外のシリーズは途中放棄されていたも同然の惨状を呈していたのですから、そのまま継続して放置か、もしくは「本編」「亡命編」の完結で再開されるかのどちらかとばかり考えていましたし。
そもそも、あんな風に複数のシリーズの同時並行的な進行などやっていては、よほどの速筆でもない限り1シリーズ毎の更新速度が遅くなる上、田中芳樹のごとく収集がつかなくなった挙句の「燃え尽き症候群」にも陥りかねないのではないかと思えてならないのですけどね。
「本編」「亡命編」がなかなか先に進められないことに対する逃避行為、という要素もあるのかもしれませんが……。
作者氏の思惑はともかく、銀英伝の原作者たる田中芳樹の壮絶な遅筆&作品劣化ぶりに悩まされ続けてきた一読者的には、「1話完結等の短編ならまだしも、新しい長編シリーズを始めるのであれば、既存のシリーズを完結OR断筆宣言させてからにして欲しい」というのが正直なところです。
四方八方に色々なシリーズを立ち上げた挙句にことごとく放置してしまった田中芳樹の悪癖を、こんな形でなぞる必要はないでしょうにねぇ(T_T)。

というわけで、今回は久々にエーリッヒ・ヴァレンシュタイン考察を再開してみたいと思います。
以前に比べれば亀のごとく鈍重なペースながらも、ようやくある程度話数もたまってきたわけですし。
なお、「亡命編」のストーリーおよび過去の考察については以下のリンク先を参照↓

亡命編 銀河英雄伝説~新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
http://www.akatsuki-novels.com/stories/index/novel_id~116
銀英伝2次創作「亡命編」におけるエーリッヒ・ヴァレンシュタイン考察
その1  その2  その3  その4  その5  その6  その7  その8  その9  その10  その11  その12  その13  その14  その15  その16

さて今回はヴァレンシュタイン本人ではなく、その周辺および敵対陣営の人間による発言を追ってみたいと思います。
今回取り上げるそれらの発言には、明らかに作者氏がヴァレンシュタインの言動を擁護することを最優先目的に作り上げたとしか思えない内容が含まれており、しかもそのことによって作品の合理性までもが大きく損なわれてしまっています。
その最初のものは、73話でラインハルトと幕僚達がヴァレンシュタインの過去の動向について推察していた際に発生しています↓

http://www.akatsuki-novels.com/stories/view/1916/novel_id~116
> 「小官が思うに事態はもっと深刻かもしれません」
> 「?」
> 言葉通り、クレメンツは深刻な表情をしている。クレメンツは何に気付いた?ケスラーを見た、彼はクレメンツを見ている。
>
> 「第六次イゼルローン要塞攻略戦で反乱軍の総司令官、ロボス元帥を解任したのは参謀長のグリーンヒル大将と言われていますが、それを提案したのはヴァレンシュタインです」
> クレメンツの声が会議室に流れる。何かを確かめるような声だ、そして表情も厳しい。
>
> 「軍法会議ではロボス元帥は軍の勝利よりも己個人の野心を優先させようとした、従って解任は止むを得ないものと判断されました」
> 「それがどうかしたか」
> 俺の問いかけにクレメンツが俺を、ケスラーを交互に見た。
>
>
「ロボス元帥解任後、宇宙艦隊司令長官になったのはシトレ元帥……。これが最初から仕組まれたものだとしたら……」
>
「……仕組まれた……、どういう事だ、副参謀長……」
> ケスラーの声が震えている。クレメンツがまた俺を、そしてケスラーを見た。昏い眼だ、どこか怯えのような色が有る様に見えたのは気のせいだろうか。
>
> 「ロボス元帥が解任された遠因はヴァンフリート星域の会戦に有ると小官は考えています。あの戦いはヴァレンシュタインの作戦により反乱軍の勝利に終わりました。しかし、あの戦いでロボス元帥は決戦に間に合わず面目を潰した……」
>
> 「覚えている、ヴァンフリート4=2に来た反乱軍は第五艦隊、そして第十二艦隊の二個艦隊だった。総司令官であるロボス元帥はあそこには来なかった。何度も戦闘詳報を読んだから覚えている……」
>
> 味方を収容して逃げる俺には状況を確認する余裕などなかった。何が起きたのかを知るため何度も戦闘詳報を読んだ。読む度に体が震えた、負けるとはこういう事なのかと思った。苦い思い出だ。
>
>
面目を潰されたロボス元帥は第六次イゼルローン要塞攻略戦で焦りから不適切な命令を出し解任されました、解任の提案者はヴァレンシュタイン……」
> クレメンツの声が続く。ヴァンフリート星域会戦を勝利に導いたのはヴァレンシュタイン、そして第六次イゼルローン要塞攻略戦でロボス元帥の解任を提案したのもヴァレンシュタイン……。
>
>
「……ロボス元帥は嵌められたと卿は考えているのか?」
>
「そうとしか思えません」
> 俺の問いかけにクレメンツが頷いた。

ここで挙げられている仮説「ロボスが嵌められた」というのは、亡命編のストーリーを見れば過大評価の類に属するものでしかありません。
73話における会話シーンは、ヴァレンシュタインを過大評価して必要以上に恐れおののく元原作主人公率いる敵対陣営の構図という、典型的なメアリー・スー的描写を描くために準備されたものだったのでしょう。
しかし実際の真相を知ろうものならば、彼らは作者氏の意図に反して、「事実は小説よりも奇なり」「現実って一体何なのだろう?」と、その桁外れな非現実性にむしろさらに目を剥いて驚愕せざるをえなかったことでしょうね(苦笑)。
何しろ、ロボスとヴァレンシュタインとの間には、「他人を嵌める」だけのことが可能となるだけの人間関係など皆無なばかりか、むしろ「いつ殴り合いを演じてもおかしくないほどの敵対関係」にすらあったのですから。
そもそもヴァレンシュタインは、会戦当初は、ロボスに陸戦部隊を壊滅させた後、会戦終了後に「兵を無為に死なせた」という責任を問うことでロボスを処断する方法を画策していましたし、表面的な態度でさえも露骨なまでに敵意剥き出しな言動に終始してもいました。
第6次イゼルローン要塞攻防戦におけるヴァレンシュタインのロボスに対する態度に深慮遠謀とか一貫性とかいった高尚なシロモノなど一切なく、上官侮辱罪ものの罵倒を繰り出した後に誠実な提言を行なったりするという支離滅裂な言動を披露してすらいるわけでしょう
ロボスがヴァレンシュタインに嵌められるためには、ロボスとヴァレンシュタインとの間に一定の信頼関係が醸成されており、ヴァレンシュタインの言動をロボスがある程度受け入れる人間関係が存在することが前提条件とならざるをえないのですが、両者はそのような関係には全くなかったのです。
公衆の面前でロボスに対し面と向かって直截的に罵倒を並べ立てるなどという、上官侮辱罪を立派に構成する違反行為を堂々とやらかしてすらいるヴァレンシュタインがロボスを嵌めるなど、どうやっても不可能そのものでしょうね。
しかし、陰謀論の観点からヴァレンシュタインを検証するのであれば、むしろ「何故ヴァレンシュタインはロボスから全く処断されることがなかったのか?」という点から問題視すべきだったでしょう。
一連のヴァレンシュタインの言動は、ロボスの個人的感情はむろんのこと、政治的立場や軍司令官としての権限から見てさえも、処断される口実としては充分過ぎるものがあったのですから。
ロボス失脚後のヴァレンシュタイン自身、「軍のトップの意に従わないものはクビにすれば良い」と主張したり、各艦隊司令官達や部下から直接意見を述べることすら憚られるほど恐れられたりもしているのですから、軍のナンバー2の立場にあるロボスが、それも新参者のヴァレンシュタイン相手に断固たる処罰ができない理由など、宇宙の果てまで探してもあるはずがないでしょうに。
むしろ、理屈もへったくれもなく感情任せに処断してもおかしくないくらいなのですし。
第6次イゼルローン要塞攻防戦においては、総司令部内部で交わされた作戦内容の節々に至るまで帝国側に網羅されていることが明示されている(39話)のですから、ラインハルト一派もロボスに対するヴァレンシュタインの上官侮辱罪行為を当然熟知しているはずでしょうに、何故その驚愕の事実は完全無視を決め込んでメアリー・スーな推論を掲げたりするのでしょうかねぇ(-_-;;)。
「亡命編」だけでなく、「銀河英雄伝説~新たなる潮流」の各シリーズに登場するヴァレンシュタインを論じるに際しては、「アレだけ好き勝手なことをやりまくっていて何故罰せられないのか?」というテーマを避けて通ることはできないはずなのですが……。

また、ラインハルト一派の推論にはもうひとつ大きな問題があります。
それは、「不適切な命令だからと言って、新参者の大佐(当時)でしかなかったヴァレンシュタインが総司令官の解任を進言するような行為が果たして妥当と言えるのか?」という視点と疑問がないことです。
たとえ如何に不当なものであったとしても、軍において上官の命令が絶対であることは、古今東西、また帝国・同盟を問わず基本中の基本な鉄則です。
その例外兼緊急避難措置として下位の軍人による上官の排除を定めた自由惑星同盟軍規定第214条にしたところで、それが認められるのは「指揮官が精神的、肉体的な要因で指揮を執れない、或いは指揮を執るには不適格だと判断された場合(指揮官が指揮を執ることで味方に重大な損害を与えかねない場合)」という特殊な場合のみに過ぎないわけです。
考察11でも述べたことですが、「亡命編」におけるロボスの場合は214条で挙げられているケースのいずれにも該当することはなく、このようなことが認められようものならば、それが判例となって今後の軍の運用それ自体に重要な支障をきたすようなシロモノですらありえるでしょう。
法的な観点から見れば、ヴァレンシュタインの主張などは到底認められるものではなく、逆にヴァレンシュタインの方こそが「軍の秩序を悪戯に乱し軍規に違反した」として処罰を受けなければならないシロモノでしかないのです。
そして、身分制度があるが故に同盟以上に上意下達を絶対なものとしているであろう帝国の軍人であるラインハルト一派が、このヴァレンシュタインの行為の妥当性について何ら疑問を抱くことがないというのは実に不思議な話でしかありません。
さらに笑止なのは、メアリー・スー的な「原作主人公による二次創作主人公礼賛&恐怖から来る過大評価や陰謀論」を描く意図があったであろう作者氏の思惑に反して、実は彼らの主張こそが作中のストーリーにおいて最も正鵠を射た有力な説になってしまっていることです。
ラインハルト一派の面々は、38話における軍法会議に至るまでの顛末を以下のように推測しているのですが↓

http://www.akatsuki-novels.com/stories/view/1916/novel_id~116
> 「有り得ない、総司令官を嵌めるなど……」
> ケスラーが呻くような口調で呟いている。俺も同感だ、そんな事が有るとは思えない。
> 「卿の考えすぎではないか」
> しかしクレメンツはそうではないと言うように首を横に振った。
>
> 「彼一人でやったわけではないでしょう、ヴァンフリートにヴァレンシュタインを派遣したのはシトレ元帥です」
> 「つまり、シトレ元帥とヴァレンシュタインが手を組んでロボス元帥を陥れた……」
> 声が掠れた。そんな俺をクレメンツが見ている、そして頷いた。
>
> 「第五次イゼルローン要塞攻略戦、ヴァレンシュタインが亡命した戦いですが、この時の反乱軍の総司令官がシトレ元帥です。あの二人はそこで出会っているのですよ……」
> 顔が強張る、ケスラーも顔が強張っている。有り得ない、有り得ない事だ。しかし……その有り得ない事を行ってきたのがヴァレンシュタインではなかったか……。クレメンツの声が続いた。
>
> 「小官はこう考えています。ヴァレンシュタインは両親を殺害された後、士官学校に入校しました。理由は貴族達への復讐と帝国の改革のためだったと思います。そのためには力が必要だと思ったのでしょう」
> 「……」
>
> ごく自然に頷けた。俺も力が欲しかった。姉上を救い、皇帝になるために……。だから力を得るために軍に入った。俺もヴァレンシュタインも無力な存在だ、力を得ようと思えば考える事は同じだ。クレメンツの声が続く、ゆっくりと自分の考えを確かめながら話しているような口調だ。
>

(中略)
>
>
「シトレ元帥はそんなヴァレンシュタインの力を見抜いたのだと思います。そして積極的に彼を受け入れるべきだと考えた。しかしロボス元帥は違った。彼はシトレ元帥とは敵対していた。当然ヴァレンシュタインに対する扱いも違ったのでしょう」
>
> 「シトレ元帥はそんなロボス元帥に不満を持った、卿はそういうのだな」
> 俺の問いかけにクレメンツは無言で頷いた。確かに
シトレは不満に思っただろう。ヴァレンシュタインを用いれば帝国との戦いを有利に進められる、そう思ったはずだ。そしてヴァレンシュタインを活用できるのは自分だけだと思った……。
>
> 「シトレ元帥だけではないでしょう、ヴァレンシュタインも同様だったはずです。彼はカストロプ公によって全てを失った。それがリヒテンラーデ侯の、帝国の方針だと知っていた……」
> 「……」
>
> 「である以上、彼はカストロプ公が粛清されるまで自分が帝国に戻れる可能性は無いと思ったはずです。そして何よりもヴァレンシュタインのカストロプ公、リヒテンラーデ侯への恨みは強かったでしょう。彼に残されたのは帝国への報復しかなかった。そして彼が帝国に報復するには同盟の力を借りるしかない……」
>
> 「シトレ元帥とヴァレンシュタイン……、この二人が結びつくのは必然という事か」
> 「その通りです、ケスラー参謀長」
> クレメンツとケスラーが顔を見合わせて頷き合っている。二人とも顔色が良くない。

作者氏が意図しているであろう「過大評価な陰謀論」らしく、ところどころに事実の間違いが含有されている推論ではあるのですが、ことシトレに関してだけは事実関係的にも全面的に正しいことを述べていると評価しても良いのではないですかね?
でなければ、ヴァレンシュタインは「伝説の17話」や38話の軍法会議でとっくの昔に「亡命編」の世界から退場を余儀なくされていたでしょうし、他にも軍紀違反に問われる違法行為の数々がありながら、しかも亡命者の身で、あそこまで出世などできるはずもないのですから。
シトレの超がつくレベルの強力なバックアップがあり、ロボスに対しても「ヴァレンシュタインに何かしたら、ありとあらゆる手段を用いてお前を社会的に抹殺する」的な脅しないし圧力でもかけていたというのであれば、ロボスがヴァレンシュタインを処断できなかった理由もある程度は説明可能なのですし。
権力も出自も何もない同盟における亡命者としてのヴァレンシュタインが、あそこまで好き勝手やりまくりながら何の処罰も受けない理由が、皮肉にもシトレのバックアップ説でかなりの部分が説明できてしまうわけです。
とはいえこの説では、メアリー・スー的なヴァレンシュタインの「強さ」が実は門閥貴族もビックリな要素で構成されている、ということにもなりかねないのですけどね。
シトレが権力に物を言わせて押しまくっている豪奢な乳母車にふてぶてしく鎮座し、その威光を背景に好き勝手な言動を披露しまくり、しかもそれによって罪に問われることなく免罪されていることを自分の実力がもたらしたものであると勘違いしている。
そんな原作知識ともヴァレンシュタイン自身の才幹とも全く関係のない「虎の威を借るキツネ」的な構図の一体どこに、メアリー・スー的な最強主人公のチートぶりを楽しめる部分があるというのでしょうか?
自分の足で立って歩いている、とは到底言えたものではないでしょう、ヴァレンシュタインは。
ヴァレンシュタインがのし上がっていく過程のストーリーがトンデモ&無理筋だらけで、作中における肝心要な問題点をスルーしていったがために、本来根拠のない過大評価&陰謀論が却って説得力のある正論になってしまっている、という図式ですね(笑)。
それとも作品や作者氏的には、かくのごときヴァレンシュタインに纏わる醜悪な権力構図を露わにすることで、ヴァレンシュタインを卑小な人間として描く的な意図でもあったりしたのでしょうか?
作中のストーリーの流れを見る限り、とてもそのような「高尚な」意図があるようには思えないのですが……。

さて、ラインハルト一派によるヴァレンシュタイン論については、それでもまだ、彼らが同盟と敵対する側であり、かつヴァレンシュタインという人間そのものを間近で常に見ることがないが故の過大評価として見ることも不可能ではないかもしれません。
しかし、76話におけるヤンが「伝説の17話」をフレデリカに話しているシーンについては、そういう擁護論すら適用することができません。
相も変わらず、擦り切れたテープレコーダーのごとき十年一昔な破綻論理を繰り出すしかないときていますし↓

http://www.akatsuki-novels.com/stories/view/2687/novel_id~116
> 連絡艇の窓からハトホルが見える。第三艦隊旗艦ク・ホリンに比べるとアンテナが多い、通信機能を充実したようだ。ハトホルを見ているとヤン提督の呟きが聞こえた。
>
「ヴァンフリートの一時間か……」
>
> 驚いて提督に視線を向けると提督は私に気付いたのだろう、視線を避ける様に顔を背けた。“ヴァンフリートの一時間”、以前にも聞いた事が有る。あれは第七次イゼルローン要塞攻略戦でのことだった。あの時、ワイドボーン提督がヤン提督に言った言葉だった。“ヴァンフリートの一時間から目を逸らすつもりか?”……。一体どういう意味なのか、分かっているのはそれがヴァレンシュタイン提督に関係しているという事だけだ……。
>

(中略)
>
> 「私は当時第八艦隊司令部に居た。だがヴァレンシュタイン提督の要請で第五艦隊司令部に異動になった」
> 「第五艦隊?」
> ヤン提督が頷いた。提督の表情は暗い。
>
> 第五艦隊はヴァンフリート星域の会戦に参加している。ヤン提督はヴァレンシュタイン提督の要請で第五艦隊に異動になった……。つまりヤン提督の協力が必要だったという事だろう……。ヤン提督は憂欝そうな表情をしている。提督は協力できなかった、そういう事なのだろうか? しかし戦争は同盟の大勝利で終わっている。第五艦隊は決戦の場で活躍した殊勲艦隊のはずだ。ヴァンフリートの一時間、一体何を意味するのか……。
>

(中略)
>
> ヴァレンシュタイン提督は当時まだ少佐だったはずだ。しかも総司令部の参謀でもなかった……。
> 「可能だと思ったのだろうね。そして実際に会戦はヴァレンシュタイン提督のコントロール下に置かれた……。彼が私に望んだ事はロボス総司令官が軍を把握できなくなった場合、そして帝国軍がヴァンフリート4=2に襲来した場合、第五艦隊を速やかにヴァンフリート4=2へ導く事だった……」
>
> ヤン提督はそれきり黙り込んだ。憂鬱そうな横顔だ、視線は小さくなりつつあるハトホルに向けられている。
> 「……一時間と言うのは……」
> 私が問いかけるとヤン提督は微かに横顔に笑みを浮かべた。苦笑? 自嘲だろうか、そして口を開いた。
>
> 「そう、ヴァンフリート4=2への移動が一時間遅れた。第五艦隊が基地からの救援要請を受け取った時、私は基地の救援をビュコック提督に進言したんだが第五艦隊司令部の参謀達がそれに反対した……。最終的にはビュコック提督が基地の救援を命じたが一時間はロスしただろう」
>
> ヤン提督はまだ笑みを浮かべている。多分自嘲だろう、提督はヴァレンシュタイン提督の期待に応えられなかった……。ヤン提督が私を見た、そして直ぐに視線を逸らした。まるで逃げるかのように……。
>
> 「会戦後、ヴァレンシュタイン提督に自分の予測より一時間来援が遅いと指摘されたよ。そしてエル・ファシルで味方を見殺しにしたように自分達を見殺しにするつもりだったのかと非難された……」
>
> 「そんな! あれはリンチ少将が私達を見捨てたのです。提督は私達を救ってくれました。非難されるなど不当です! 何も知らないくせに!」
> 許せない! あの時の私達の不安、絶望を知らないくせに……。リンチ少将、あの恥知らずが逃げた時、ヤン提督が居なければ私達は皆帝国に連れ去られていた。それがどれほど怖かったか……。私の身体は小刻みに震えていた、怒り、恐怖、そしてヴァレンシュタイン提督への憎悪……。
>
>
「彼の言うとおりだ」
> 「提督!」
> 驚いて提督を見た。
ヤン提督は薄い笑みを浮かべている。
> 「提督……」
>
>
「彼の言うとおりなんだ。私はリンチ少将が私達を見捨てる事を知っていた。そしてそれを利用した。私のした事はリンチ少将のした事と何ら変わらない……。今、リンチ少将がここに居たら私は彼と目を合わせる事が出来ないだろう、やましさからね。……私は、……私は英雄なんかじゃない!」
> 「……」

ありとあらゆる意味で破綻だらけな「伝説の17話」こと「ヴァンフリートの一時間」を、この期に及んでもなお執拗に取り上げ続けるつもりなのですねぇ、「亡命編」は。
そりゃストーリー的にはこのエピソードが少なからず重要な位置を占めてはいるのでしょうが、普段は礼賛調な投稿が多くを占める感想欄でさえ非難轟々だった「伝説の17話」は、そこまでして軌道修正すらも拒否して絶対的に正当化しなければならないものなのでしょうか?
ヴァレンシュタインが言うところの「一時間遅れた」云々の発言は、その根拠が原作知識というヴァレンシュタインの脳内にしか存在せず、しかもそれをヤンに提示できていない時点で誇大妄想の域を出ることなんてないでしょう。
しかもその原作知識に基づく歴史の流れ自体、考察4でも述べていたようにヴァレンシュタイン自身の行動によって改変されていた可能性が少なくないわけですし。
リンチの件に至っては、「自分が同じ状況に置かれていたらどういう行動を取るのか?」という命題を故意に無視したダブスタ&ブーメラン発言でしかありえないでしょう。
リンチはヤンや民間人を、それも軍務を放棄してまで見捨てようとしていたのに、見捨てられた側のヤンや民間人がリンチを見殺しにしてはならない理由などどこにもありはしません。
自分が生き残るなどという自己一身の利己的な目的のために、歴史を改変し本来死ぬはずのない人間を戦場で殺してきたヴァレンシュタインごときが、上から目線で偉そうに他者に説教して良いものではないですね。
何度も同じことを言っていますが、全く同じことを自分がやるのはOKなのに、他人がすると途端にNGになるというヴァレンシュタインのダブスタ&ブーメランぶりにはつくづく呆れ果てるものがあります。
で、当事者ではない私でさえあまりの不当ぶりにウンザリせざるをえないヴァレンシュタインの暴走ぶりに対し、ヤンが何故ここまで全面屈服に近い態度を取らなければならないのか、原作におけるヤンの性格から考えてさえも理解に苦しむものがあります。
原作のヤンは、原作3巻の査問会や6巻の不当逮捕劇などを見ても、自分が不当に評価されたり冤罪を着せられたりすることを著しく嫌う性格であることが見て取れますし、その際には「そこで黙って従うのは奴隷であって市民ではない」として全身全霊を挙げて戦うことを全面的に肯定してすらいるくらいなのですが。
ヴァレンシュタインを礼賛したいがために、原作設定を改竄してまでヤンに不当な懺悔の発言をさせるというのは、原作ファンとして見ても気分が良いものとは到底言い難いですね。
さらにその上、原作設定云々以前にいっぱしの社会人ともあろう者が、以下のごときタワゴトな論理をネタではなく真顔で展開できるという事実には、ある意味驚きを隠せないのですが↓

http://www.akatsuki-novels.com/stories/view/2687/novel_id~116
> 吐き捨てるような口調だった。ヤン提督は苦しんでいる、でも私は何も言えなかった……。どれほど提督に非が無いと私が言っても提督は納得しないだろう。それでも無言で居る事は耐えられなかった。なんとか提督を救いたい、そんな気持ちで言葉を出した。
> 「ですが……、ヴァンフリート星域の会戦は同盟軍の勝利で終わりました。その一時間が問題になるとは思えないのですが……」
>
> ヤン提督が私を見て苦笑を漏らした。
> 「バグダッシュ准将が大尉と同じ事を言ったよ。戦争は勝った、何故その一時間に拘るのかと」
> 「……」
>
> 「第五艦隊はヴァンフリート4=2に停泊中のグリンメルスハウゼン艦隊を撃破した。一万二千隻程の敵艦隊の内、逃れる事が出来たのは五百隻程度だったはずだ。本来なら大勝利と言って良い、だがその五百隻の中にラインハルト・フォン・ミューゼルの艦隊が有ったんだ……」
> 「!」
>
> ラインハルト・フォン・ミューゼル、ヴァレンシュタイン中将が天才だと評し恐れている人物。その人物がヴァンフリート4=2に居た、そして逃げた……。彼は今帝国軍中将になり宇宙艦隊司令長官、オフレッサー元帥の信頼が厚いと聞く。驚愕する私の耳朶にヤン提督の自嘲交じりの声が聞こえる。
>
> 「ヴァレンシュタイン中将は私達にこう言った。彼を相手に中途半端な勝利など有り得ない、だが彼は未だ階級が低くその能力を十分に発揮できない。だから必ず勝てる、必ず彼を殺せるだけの手を打った。おそらく最初で最後のチャンスだったはずだと……。そしてこのチャンスを逃した以上、いずれ自分は彼に殺されるだろうと……」
> 「……」
>
> 必死に驚愕を押さえヤン提督を見た。提督は昏い眼をしている。
>
「第五艦隊の来援が一時間早ければグリンメルスハウゼン艦隊を殲滅し、逃げ場を失ったミューゼル中将を捕殺できたはずだった。だがそのチャンスを私が潰してしまった」
> 提督の声は苦みに満ちていた……。

それはヤンが反省すべきことではありません。
一番問題なのは、そういう重要な情報を事前に同盟軍、あるいはシトレとヤンにだけでも提示することなく、会戦終了後に自分の支離滅裂な主張が論破されそうだからと言って後付で出してきたヴァレンシュタイン自身なのですから。

社会人としての基本中の基本である「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」の心得を、ヴァレンシュタインは前世でも今世でも全く学ぶことがなかったとでもいうのでしょうか?
「ほうれんそう」が全く為されていない事案について後付でクレームをつけたところで、普通であれば「じゃあ何故そのような情報を隠していたんだ?」と逆に糾弾されるのがオチですし、ましてやこれが軍であれば重罪に問われても文句は言えない行為ですらあるでしょうに。
というか「亡命編」の作中にさえ、事前に行う「ほうれんそう」の重要性を描写している箇所があったりするのですが↓

http://www.akatsuki-novels.com/stories/view/1876/novel_id~116
> オフレッサーが唸るような口調で話し始めた。呆れているのかもしれない。
> 「カストロプ公は大貴族だ、そして財務尚書でもある。
彼を排除するとなれば事前に根回しが要るだろうが
> 「……」
>
> 「
いざ潰すという時になってリッテンハイム侯が反対したらどうなる? その時点で贄の秘密を話すのか? 侯はへそを曲げるぞ、何故前もって教えなかったとな。それに後任の財務尚書の事もある。おそらくは既にリヒテンラーデ侯、ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯の三者で話し合いがもたれたはずだ、その中で全ての秘密が共有され、そして後任の財務尚書も決まった……」

リッテンハイム侯には普通に通用する論理が、何故ヴァレンシュタインが発信者になると途端に適用されなくなってしまうのでしょうか?
ラインハルトの脅威を隠蔽されていたヤンやシトレだって、ヴァレンシュタインに対して「何故前もって教えなかった」と「へそを曲げる」権利くらいは当然のごとくあるはずなのですが(苦笑)。
前述のように、「ヴァンフリートの一時間」にしたところでヴァレンシュタインの電波な「迷推理」の可能性が濃厚な上に他者に根拠が明示されない以上、ヴァンフリート星域会戦におけるヤンは、その権限から考えても充分に最善を尽くしたと言えます。
それに満足できないのは、ヴァレンシュタインのごとき常軌を逸した被害妄想クレーマーだけです。
ヴァンフリート星域会戦でラインハルトを取り逃がした最大の元凶は、「ほうれんそう」を怠り脳内世界だけで戦争をコントロールしようとしたヴァレンシュタイン自身にこそあるのです。
その責任問題から目を背け、本来一番反省すべき人間が他者に責任を転嫁し、その不当な冤罪行為に一番怒るべき人間が委縮して懺悔をする。
釣りか炎上マーケティングでも意図していたのであれば間違いなく大成功だったと評価もできるのでしょうが、そうでなければこれほどまでに原作ファンを敵に回す描写もそうはないのではないかと。

76話におけるこれ以降の会話なんて、「俺が悪かった、ヴァレンシュタインは素晴らしい」と嘆きまくるヤンと、その場にいなかったにもかかわらず必要以上にヴァレンシュタインの心情を思いやるフレデリカという、実に気持ち悪いメアリー・スー描写のオンパレードですからねぇ(-_-;;)。
原作設定を尊重せず愚劣な理論でもって原作主人公を貶め、オリジナルな主人公を礼賛する行為というのは、メアリー・スーの中でも特に最悪の部類に入る所業なのではないかと、つくづく思えてならないですね。
物語の演出にしてもこれほどまでに自分の作品および原作を貶める愚かな描写というのはそうそうあるものではないですし、もし万が一にも作者氏自身がこんな言動を社会通念的に正しいものであると本気で考えているとしたら、その頭の中身と具合を疑わざるをえない惨状を呈しているとしか評しようがないのですが。
本当に読者に対してヴァレンシュタインを有能に見せたいのであれば、「神(作者)の奇跡」「神(作者)の祝福」などに依存することなく、もちろん朝日新聞の中国礼賛報道のごとき原作主人公達の盲目的なマンセー発言で文章を埋め尽くすでもない、本当の意味での才幹と「有能な敵キャラ」を見せつける必要があるのではないかと思うのですけどね。

次回の考察は、ヴァレンシュタインのフェザーン謀略戦?について述べてみたいと思います。

二次小説投稿サイト「にじファン」がサービス終了

二次小説投稿サイト「にじファン」が、2012年7月20日正午をもって正式に閉鎖されました。
二次小説の新規投稿および一般公開は一切できなくなり、投稿者のみ閲覧可能な投稿小説群も来年1月1日より順次削除されます。

にじファン/NOS サービス終了のお知らせ
http://nizisosaku.com/

二次小説投稿サイト「にじファン」の閉鎖に伴い、同じ会社が運営している「小説家になろう」では、二次利用を承諾する作品についてのみ二次小説を掲載する方針を打ち出しています
しかし「にじファン」が閉鎖された時点で、実際に二次利用の許可が下りたのはたったの2作品しかなく、これでは事実上「二次小説は一切禁止」と何ら変わるところがありません。
結局のところ、「小説家になろう」では「にじファン」に掲載されていた二次小説を受け入れるつもりなど最初からなかった、ということになるのでしょうね。
二次利用の許諾には運営側の直接確認が必要など、負担を考えただけでも無理難題な条件が付随していましたし。
そもそも、「自ら行う煩雑な確認作業が困難を極める」などと泣き言を並べていた運営が、この期に及んで許諾の確認を自ら積極的に行うなどということ自体が本来ありえないことだったわけで。
銀英伝や恋姫無双などは、公式が二次利用に関するガイドラインを公示して許可を与えていたこともあり、許可が下りる可能性は他に比べれば比較的高い部類にあったはずなのですが、そういったところに対する許諾確認すらも実際にやっていたのかどうか…。
二次小説の移転を認めるつもりが全くなかったのであれば、最初からその旨宣言しておけば余計な混乱もなかったというのに。
閉鎖までのあまりにも短すぎる猶予期間といい、立つ鳥跡を濁しまくっている「にじファン」の運営会社ヒナプロジェクトの、無責任かつ混乱を助長しまくっている運営方針は、サイトの利用者達から充分に非難されて然るべきではあるでしょうね。
いよいよ閉鎖ということで、他サイトも巻き込んだ更なる混乱の誘発は必至なのですし。

ところで、我らが狂人キチガイの被害妄想狂患者たるエーリッヒ・ヴァレンシュタインの二次小説も、どうやら移転先が決定したようですね。
移転先は「暁 ~小説投稿サイト~」。

http://megalodon.jp/2012-0720-1915-45/mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/101342/blogkey/505148/
> azuraiiruです。今日でにじファン消滅です。出来ればなろう本体への移行をと考えていたのですが運営側からは今日になっても答えがありません。
> そういったわけで
別の場所に投稿しようと考えています。投稿先は肥前のポチ様が運営されているサイトにしようと思います。これから手続きしますので多少時間がかかると思います。
> アドレスは以下の通りです。
> http://www.akatsuki-novels.com/

「本編」「亡命編」およびその他短編的な外伝を合わせれば総計300話以上にも達するあの小説群を移行するのはさすがに大変でしょうが、ネタとしては笑えるので、是非とも頑張ってもらいたいものです。
アレほどまでにキチガイかつ自爆的な言動を繰り広げまくって平然としていられる二次創作の主人公というのも、そうそういるものではありませんので(苦笑)。

銀英伝2次創作「亡命編」におけるエーリッヒ・ヴァレンシュタイン考察16

2012年7月7日に、死生観と転生をテーマとして扱った映画「スープ ~生まれ変わりの物語~」という作品を観賞する機会があったのですが、エーリッヒ・ヴァレンシュタインという転生者を考察の題材として取り上げてきた私としては、映画自体の感想とは別に、個人的に色々と考えさせられるものがありました。
この映画では、突然の落雷事故で死んでしまった主人公が、あの世で「前世の記憶を保ったまま転生する方法」を探すべく奮闘するのですが、主人公以外の作中の登場人物達は「転生」について否定的な見解ばかり示しているんですよね。
作中に登場する「記憶を保ったまま3回も転生した」という人物は、3回の転生の末に「自分の親しい人間がいなくなっていく中で転生を続けても虚しいだけ」という結論を出しており、次は記憶を消して転生するとの決意を表明していますし、主人公と行動を共にしていた女性上司も、DVな父親に虐待された不幸な人生の記憶を全て消した上で生まれ変わる意思を示しています。
また、念願叶って前世の記憶を保ったまま新たな人間へと転生した主人公は、前世の娘にとにかく再会したい一心であちこち尋ね回ることで、今世の両親に余計な心配をかけていますし、息子に不安を抱いた母親が「あなたは何をしているの?」と話しかけてきた際も、「親に対する息子の反応」とは思えないどこか他人行儀な態度に終始していました。
いくら「自分は新しい人間として転生したのだ」と自覚していても、前世の記憶がある限り、前世のしがらみや人間関係と完全に無縁でいることはできない。
そんな「前世の記憶を持って生まれ変わる」ことの問題ないしは後遺症的なものが上手く表現されていて、結構頷くところが多かったです。
地味な予告編や映画紹介に反して、映画単独として見てもなかなかに面白い作品なので、機会があれば是非観賞されることをオススメします。

さて今回、この映画をあえて引き合いに出したのは、この映画と同じく「前世の記憶を保ったまま生まれ変わった転生者」であるはずのヴァレンシュタインこと佐伯隆二が、前世のしがらみや人間関係と全く無縁であるかのごとく振る舞っていることに、改めて違和感を覚えざるをえなかったからです。
彼は転生直後においてさえ、前世の両親や恋人や親しい友人などといった人達に会いたいと考えていた形跡すらも全く示していません。
前世の恋人に至っては、会いたいと考えたり心配したりといった思いを抱くどころか、「俺を毒殺したのではあるまいな」などと猜疑すらする始末でしたし。
ヴァレンシュタインの場合、転生してからの3年間は「自分が銀英伝世界に転生したという事実」すら完全には把握できる状況になく、それどころか(赤子だったために)身体の自由さえ満足に効かない植物人間同然の状態にあり、さらにはその時点ではどこの馬の骨ともしれなかった赤の他人な人間に周囲を囲まれての生活を余儀なくされていたというのに、よくまあ前世および前世の人間関係について哀愁や郷愁の念を僅かたりとも抱くことすらなかったよなぁ、と。

また転生の事実を知った後は後で、今度はあまりにも割り切りが良すぎる感が否めないところです。
ヴァレンシュタインは今世の新しい両親をいともあっさりと受け入れているのですが、前世の記憶を持つヴァレンシュタインこと佐伯隆二にとって、今世の両親を「自分の親」として受け入れるのは、本来相応の違和感や困惑が伴うものなのではないのでしょうか?
佐伯隆二にとっての「本当の生みの親」はあくまでも「前世の親」であり、それ以外の人間にその立ち位置を代行することなどできないのですから。
転生という要素を抜きにして考えても、これって子供の視点から見て相当に違和感を伴わざるをえない事象なのではないかと思うのですけどね。
たとえば、今まで一緒にいた「育ての両親」と普通の関係を築いていたところに、突然「本当の両親」なる2人組の存在が出現し、DNA鑑定結果等の証拠でもってそれが本当であることが立証されたとします。
その場合、子供はその結果に基づいて素直に「育ての両親」の元を離れ、「本当の両親」と一緒になることを何ら躊躇することなく選択することができるものなのでしょうか?
実際には、「育ての両親」に対する感謝や愛情の念もあれば、「本当の両親」への不安や違和感があってもおかしくはないところですし、下手すれば不信感や嫌悪感、最悪は憎悪や殺意の類すら発生しても不思議なことではないのではないかと。
転生後の両親の場合は、すくなくとも当人達には何の落ち度もないわけですから、問題はあくまでも「転生者の心情」のみに限定されることにはなるのでしょうが、それでも「本当の生みの親」に対する何らかの感情や思いなどはどうやっても残らざるをえないわけで。
「本当の生みの親」と良好な関係を構築していれば、「新しい両親」を受け入れることに「この人達は自分の親ではない」という違和感や拒絶感、さらには「自分は前世の親を裏切っているのではないか?」的な後ろめたさを覚えてしまうものでしょう。
また逆に「本当の生みの親」がDVを駆使して威張り散らすしか能のないロクデナシの類だったとしても、今度は「あんな奴らに比べれば今の親は……」と比較する形で、やっぱり無視はできないだろうと思えてならないところですし。
前世の恋人や友人関係にしても、転生のせいでもう二度と会うことができないと分かっていても、ふとした拍子に昔を思い出し懐かしむ程度のことくらい、普通にあってもおかしくない光景なのではないのかと。

ヴァレンシュタインに纏わるこの「転生者でありながら前世に対する執着心が著しく欠如している」問題は、身も蓋もないことを言えば「転生が抱える構造的な問題について、作者の認識が著しく甘くかつ何も考えていなかったから発生した」という結論しか出しようはないでしょう。
ただ、「本編」で見られたヴァレンシュタインの原作考察のようなスタンスで考えれば、この問題は案外、ヴァレンシュタインのキチガイ狂人&被害妄想狂患者な性格設定のルーツを解明する糸口のひとつになりえるのではないかと、そう考える次第です。
ヴァレンシュタインこと佐伯隆二は、前世の人生について「ごく普通の一般人だったと思う」などとのたまっていますが、これまでのヴァレンシュタインのキチガイ言動の前歴を見る限り、彼が主張する「普通」とやらが、一般的にイメージされるそれと同一である保証などどこにもありはしません。
ひょっとすると、前世の佐伯隆二はヤクザか指定暴力団組長の息子か何かで、親の威光と暴力を背景に弱い者イジメばかりやらかしていた人生を「普通」などと思い込んでいるのかもしれないのですし(苦笑)。
ヴァレンシュタインは原作の記述の矛盾点や穴について、原作者である田中芳樹からして「そんなことは考えたこともないよ」と言い出しそうな考察の数々を繰り広げているのですから、作中で全く言及されていない佐伯隆二の前世人生について色々推察されても、文句が言える立場には全くないと思うのですけどね。

それでは、今回は第7次イゼルローン要塞攻防戦終結以降のヴァレンシュタインの言動についての考察を行っていきたいと思います。
なお、「亡命編」のストーリーおよび過去の考察については以下のリンク先を参照↓

亡命編 銀河英雄伝説~新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
http://ncode.syosetu.com/n5722ba/
銀英伝2次創作「亡命編」におけるエーリッヒ・ヴァレンシュタイン考察
その1  その2  その3  その4  その5  その6  その7  その8  その9  その10  その11  その12  その13  その14  その15

第7次イゼルローン要塞攻防戦のラストを飾ったヴァレンシュタインの「毒発言」とやらでショックでも受けたのか、帝国ではフリードリヒ四世が急逝してしまいました。
原作よりも早い死の上、ヴァレンシュタインの「毒発言」が行われた直後ということもあり、巷では「ヴァレンシュタインがフリードリヒ四世を呪い殺した」との噂が広まるに至りました。
で、それを受けて同盟軍首脳陣達の密談で出てきた会話の一部がこれ↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/61/
> 「さて、ヴァレンシュタイン准将、以前君が言っていた不確定要因、フリードリヒ四世が死んだ。世間では君が呪い殺したと言っているようだが、この後君は帝国はどうなると見ている?」
>
>
嬉しそうに聞こえたのは俺の耳がおかしい所為かな、トリューニヒト君? 君の笑顔を見るとおかしいのは君の根性のように思えるんだがね、このロクデナシが! 何が呪い殺しただ、俺は右手に水晶、左手に骸骨を持った未開部族の呪術師か? お前を呪い殺してやりたくなってきたぞ、トリューニヒト。俺は腹立ちまぎれにミートソースのピザを一口食べて、水を飲んだ。少し塩辛い感じがする。釣られたのか、他の四人も思い思いにピザを手に取った。

「前世の記憶と原作知識を保持したまま銀英伝世界に転生した」などという、呪いと同レベルかそれ以上の「非科学的な超常現象」をその身に具現させている人にそんなことを言われましても(苦笑)。
転生という現象が作中世界において実際に存在するのであれば、呪いだって存在しても何ら不思議なことではないだろう、とは寸毫たりとも考えることができないのですかねぇ。
科学的に説明不能なオカルト的要素に溢れた超自然現象という点では、どちらも全く同じカテゴリーに分類されるわけなのですし。
そもそも、あの世界には「神(作者)の祝福」「神(作者)の奇跡」などという、転生・原作知識・呪いが束になっても敵わない「全知全能の超常現象」さえも実在するのですからね。
ヴァレンシュタインが「伝説の17話」「軍法会議の38話」に象徴されるトンデモ言動の数々をいくら繰り返しても何のお咎めもなく済んでいるのも、また原作キャラクター能力が自由自在に改変されていく原作レイプな珍現象も、全てこの「神(作者)の祝福」「神(作者)の奇跡」の恩恵によるものなのですし。
呪殺が非科学的だというのであれば、転生や原作知識や「神(作者)の祝福」「神(作者)の奇跡」があの世界に実在している理由を、ヴァレンシュタインには是非とも「科学的に」説明してもらいたいものです。
もちろん、「作者の御都合主義」などという身も蓋もない理由以外の理論に基づいて、ですが(爆)。

それにしても、「オカルトに依存しながらオカルトを否定する」などという愚かしい構図にそれと気づかず固執するのは、創竜伝や薬師寺シリーズを書き殴っている田中芳樹くらいなものだろうと思っていたのですが、同じようなことを考える人って意外に多いのでしょうかねぇ(-_-;;)。
普通に考えれば、超常現象を論じる際に「転生物なのだから転生だけは【無条件に】特別」なんて論理が、マトモに通用なんてするはずもないというのに。

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/63/
> 七月五日、今回の戦いの論功行賞、そしてそれに伴う人事異動が発表された。ビュコック、ボロディン両大将が元帥に昇進した。当初、二人を昇進させるとシトレと同じ階級になる、後々シトレが遣り辛いのではないかという事で勲章だけで済まそうと言う話が国防委員会で有ったらしい。
>
> だがシトレはそれを一笑に付した。“ビュコック、ボロディンは階級を利用して総司令官の権威を危うくするような人間ではない、心配はいらない”その言葉でビュコック、ボロディン両大将の元帥昇進が決まった。
>
> 上手いもんだ、二人を昇進させて恩を売るとともにちゃんと枷を付けた。これであの二人がシトレに逆らうことは無いだろう。おまけに自分の評価も急上昇だ。同盟市民のシトレに対する評価は“将の将たる器”、だそうだ。狸めが良くやるよ!
>
> ウランフ、カールセン、モートン、クブルスリーの四人も大将に昇進した。もっともクブルスリーにとっては素直には喜べない昇進だろう。他の三人が功績を立てたのに対してクブルスリー率いる第一艦隊は明らかに動きが鈍かった。当然働きも良くない。周囲の昇進のおこぼれに預かったようなものだ。
>
>
俺、ヤン、ワイドボーンも昇進した、皆二階級昇進だ。そして宇宙艦隊司令部参謀から艦隊司令官へと異動になった。ヤンとワイドボーンは良い、でも俺も艦隊司令官に転出? 亡命者に艦隊を任せるなんて何考えてるんだか……、さっぱり分からん。原作ではメルカッツだって客将だ、ヤンの代理で艦隊は指揮したが司令官では無かった。

「亡命者に艦隊を任せる」という人事以前に「そもそも何故自分は今生きていられるのだろう?」ということからして疑問視すべきなのではないですかね、ヴァレンシュタインは(笑)。
何度も述べていますが、「伝説の17話」「軍法会議の38話」の件で処刑台への直行を免れただけでも、「神(作者)の奇跡」と呼ばれるに充分な超常現象と言えるものなのですから。
そもそもヴァレンシュタインの異常な昇進自体、原作における亡命者の一般的な扱いを完全に無視して行われたものでもあるのですし。
そして「原作の設定を無視」と言えば、二階級昇進をここまで大盤振る舞いするという行為自体も、完全無欠の原作無視でしかありませんね。
原作における同盟軍の二階級昇進は、あくまでも戦没者に対する特別措置という意味合いを持つものであり、だからこそエル・ファシル脱出後のヤンや、ヴァンフリート星域会戦におけるヴァレンシュタインは、時間差をおいて昇進するという措置が取られていたというのに。

第一、第7次イゼルローン要塞攻防戦におけるヤンとワイドボーンは、ほとんどこれといった目立つ活躍など何もしておらず、ヴァレンシュタインが戦闘詳報で功績をでっち上げただけでしかないのですが。
いくらシトレやトリューニヒトら政軍上層部と共謀しているとはいえ、よくまあそんな事実歪曲行為が許されるなぁ、とはつくづく思わざるをえないところです。
こんなことを許していたら、ロクな功績を上げていない人間が戦闘詳報を弄ることで絶賛され昇進するという前例と禍根を自ら作り出してしまうことにもなりかねないでしょうに。
第6次イゼルローン要塞攻防戦における214条発動の件でも垣間見られたことですが、どうにも「亡命編」は、順法精神や判例の影響などといった法の問題について軽く考えすぎているのではないかという感が拭えないところですね。

さらに、原作知識から「将来の有望性」についての情報が得られるヤンはまだしも、何故ヴァレンシュタインがワイドボーンにそこまで肩入れするのかも理解不能です。
原作におけるワイドボーンはロクでもない扱いでしたし、実のところ「亡命編」の作中でさえも、彼は「ヴァレンシュタインの茶坊主」的な役どころを担っているだけで、第7次イゼルローン要塞攻防戦終結時点では、これといった軍事的な実績を示しているとは到底言えたものではありません。
まさか「自分に忠実な茶坊主だから」などという理由だけでワイドボーンを持ち上げているわけではないでしょうが、それにしても「亡命編」におけるワイドボーンの扱いとヴァレンシュタインの高評価ぶりは、原作と比較してもあまりにも説明不足で必然性に乏しいと評さざるをえないところです。
ただでさえ原作設定を改竄して原作キャラクターの能力を好き勝手にコントロールしているのですから、その理由くらいきちんと明示しないと「原作破壊」としての効果しか持ちえないでしょうに。

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/63/
> サアヤの処遇はちょっと迷った。副官にするか、それとも後方参謀にするか……。情報参謀、作戦参謀でも良かった。彼女は元々情報部だし、戦術シミュレーションも下手じゃないからな。だが結局は副官にした。気心も知れているし、他の奴を新たに副官に任命しても下手に怖がられては仕事にならない。最近俺を怖がる人間が増えて困っている。敵はともかく味方まで怖がるってどういう事だ? 俺は化け物か? 母さんが泣いてるよ、私の可愛いエーリッヒがって。

「俺は化け物か?」って、今さら何を言っているのでしょうかね、ヴァレンシュタインは(爆)。
「原作知識を持つ転生者」というだけでも、周囲にとってはその得体の知れなさだけで充分に「化け物」そのものですし、これまでの暴言妄言の数々とそれを支える「神(作者)の祝福」もまた、他者から「化け物」として恐れられるに充分過ぎる要素です。
何しろ、どれだけ目上の人間を罵り軍の威信や信用を踏みにじっても、罰せられるどころか内々に咎められることすらないと来ているのですから。
ましてや、そんな人間を自分の上司として迎えさせられる羽目になる部下にしてみれば、ヴァレンシュタインはブラック企業のパワハラ上司並に恐怖そのものの存在です。
いつ自分がヴァレンシュタインの罵倒と攻撃の餌食になるのか気が気ではない、そう考える人が多いのは至極当然というものでしょう。
しかも、上層部にヴァレンシュタインの不当な支配ぶりを訴えても、ヴァレンシュタインと上層部の関係から考えれば、訴え自体を握り潰された挙句に報復を食らうのも最初から目に見えているのですし。
ヴァレンシュタインが他者から恐れられる理由は、もちろん周囲に対する容赦のなさというのも理由のひとつではあるでしょうが、それ以上に「いくら好き勝手に振る舞われても『神(作者)の祝福』の妨害で止めることができない」というのが何よりも大きいのです。
まあそれ以前に、ヴァレンシュタインを守護する「神(作者)の祝福」の存在は、ヴァレンシュタインの人物評価的には本来マイナスに作用しかねないのではないかと思えてならないのですけどね。
自分は上司に対してすら平気で食ってかかり、しかもそれで咎められることが全くないにもかかわらず、部下がヴァレンシュタインに同じことをしようとすれば徹底的に攻撃し貶める。
「神(作者)の祝福」を駆使してそんなダブルスタンダードを派手に披露しまくるヴァレンシュタインが、部下の目から見てどのように映るのかは【本来ならば】火を見るよりも明らかなはずでしょう。

もちろん、作中におけるヴァレンシュタインがそのように見られていない理由もまた、「神(作者)の祝福」の効果によるものなのですが。
原作知識など比較にならないヴァレンシュタインの「神(作者)の祝福」の恩恵ぶりは、ヴァレンシュタインの独善性とダブルスタンダードを際立たせ、ヴァレンシュタイン自身と作品の評価を下げる効果しかもたらしていないのではないかと思えてならないのですけどね。

また、いくら「気心も知れているし、他の奴を新たに副官に任命しても下手に怖がられては仕事にならない」からと言って、ヴァレンシュタインがこの期に及んでなおミハマ・サアヤを重用するというのも理解に苦しむものがありますね。
そもそもヴァレンシュタインは、48話でバグダッシュから「ミハマ・サアヤを疑わないでほしい」と懇願された際、「手駒は多い方が良い、本人は切れたと思っても実際には切れていなかった、なんてことはいくらでもある。彼女が協力したくないと思っても協力させる方法もいくらでもあるだろう」という懸念を抱いていたのではありませんでしたっけ?
本人の意思にかかわらず自分を裏切る懸念がある以上、「気心も知れている」というのはヴァレンシュタインにとって何の安全保障にもならないはずなのですが。
これも以前から何度も述べていることですが、ミハマ・サアヤの立ち位置は「ヴァレンシュタインをいつでも恫喝&暗殺することを容易にする」という点において、ヴァレンシュタインの生命と安全を脅かす最大の脅威のひとつに充分なりえるのです。
ミハマ・サアヤにその気がなくても、その立ち位置を利用しようとする人間なんていくらでも存在しえるでしょう。
帝国・同盟を問わず、ヴァレンシュタインは他者から憎悪と殺意を抱かれるに充分な「実績」を大量に積み重ねているのですから(苦笑)。
ヴァレンシュタインが本当に「自分が生き残る」ことに拘るのであれば、テロや暗殺に対する警戒なんて本来最優先事項で考えなければならないことですし、その手の害意に利用されそうな要素は真っ先に排除して然るべきではないのかと。
その脅威の筆頭的存在とすら言えるミハマ・サアヤを、ヤンやラインハルトなどといった原作キャラクターに対してすら「ヤクザのいいがかり」的な不信と殺意を平然と抱くほどのヴァレンシュタインが、何故ここまで無警戒に信用などできるのか、その思考パターンは謎もいいところなのではないでしょうかね。

通常の艦隊よりも艦艇数が多く配備されながらも本質的には寄せ集めの集団でしかない第一特設艦隊なる艦隊の司令官に就任したヴァレンシュタインは、その「化け物」の本質に怯えられながら、ヤンとワイドボーンと共に艦隊訓練に従事することになります。
「私は身体が弱いからいつ倒れるか分からない」と言いながら、作中の描写を見ても日常生活や軍の指揮に支障をきたしているようには全く見えないヴァレンシュタインの指揮の下、寄せ集め集団としての欠点を露呈しながらも少しずつまとまっていく第一特設艦隊の面々でしたが……↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/69/
> 宇宙艦隊司令部から連絡が入ってきた。艦橋に居る人間は殆どが迷惑そうな顔をしている。無理もないだろう、第一特設艦隊は第一、第三艦隊に見つからないように行動しているのだ。そんなときに長距離通信などどう見ても有難い事ではない。
>
> おそらく宇宙艦隊司令部の参謀が通常業務の連絡でも入れてきたと思っているのだろう。内心では俺達は忙しいんだ、暇人の相手などしていられるかと毒づいているに違いない。まあ、俺自身は三割ぐらいはシトレからの連絡かなと思っている。その場合は帝国で何か起きたか、イゼルローン方面でラインハルトが攻めてきたかだろう。
>
> 現実には作戦行動中に上級司令部からの通信が有る事は珍しい事じゃない、頻繁とは言わないがしばしばある事だ。
上級司令部が下級司令部の都合を考えることなど無いだろう。訓練の一環だと思えば良いのだが第一特設艦隊は既に二回も第一艦隊の奇襲を受けている。これがきっかけで三度目の奇襲になったらと皆考えているのだ。
>
> 訓練なんだからともう少し割り切れれば良いんだが、艦隊の錬度が余りに低いのでそこまで余裕が持てないでいる。それでも少しずつだが良くはなってきているし、成果が上がっているのも確かだ。余裕が出るのはもう少し時間がかかるだろう。
>
> 平然としているのは俺とサアヤ、嬉しそうにしているのはシェーンコップだ。こいつの性格の悪さは原作で良く分かっている。可愛げなんてものは欠片も持っていない男だ。何でこいつが俺みたいな真面目人間に近づくのかさっぱり分からん。
>
> スクリーンに人が映った、シトレだ。宇宙艦隊司令長官自らの連絡か、どうやら何か起きたらしい。席を立ち敬礼すると皆がそれに続いた。
> 『訓練中に済まない、さぞかし迷惑だったろう。少し長くなるかもしれん、座ってくれ』
>
> 低い声には幾分笑いの成分が含まれている。参謀長達の考えなど御見通し、そんなところだろう。皆バツが悪そうな表情をしているが遠慮しなくていいんだ、迷惑なのは事実なんだからな。皆の代わりに俺が言ってやろう。
>
>
「お気になさらないでください、訓練の一環だと思えば良い事です。下級司令部の都合を上級司令部が気にする事など滅多に有りませんから」
> 座りながら答えるとシトレがクスクス笑い出した。
>
> 『相変わらずだな、君は。私はもう慣れたから良いが、君の幕僚達は皆困っているようだ』
>
「皆の気持ちを代弁しただけです。感謝されると思いますよ」
> シトレが耐えきれないといったように大きな声で笑い出した。
チュン参謀長は天を仰いでいる。なんでそんな事をする、俺は皆の気持ちを上に伝えたんだぞ。握りつぶした方が良いのかね、その方が問題だと思うんだが。

この場合、ヴァレンシュタインは「自分の発言の責任を部下に擦りつけた」ということにもなりかねないのですが、それで良いのですかね?
「俺はそんなこと微塵も考えていないが、部下がそう考えているようだから代弁してやった。だから俺には責任などないし、部下からは感謝されて然るべき」
と言っているも同然なのですから。
それにしても、本当に上司相手には好き勝手な反抗や妄言暴言の類を繰り広げていながら、部下相手には問答無用の服従を要求する存在なのですね、ヴァレンシュタインは。
せめて上司部下の相手共にどちらか一方に統一してくれれば、まだ一貫性くらいは評価できたはずなのに、自分と他人でこんなダブルスタンダードを堂々と披露して部下に示しなんてつくのかと。
「ヴァレンシュタインに対してだけ何故そんな態度が許されるんだ? 俺達には絶対服従を強制していながら!」と誰もが不満を抱かざるをえないでしょうに。
それ以前に、特定の人間だけ特別扱いが許される、という状況は、軍の秩序の維持や活動などにも多大なまでの悪影響を与えかねないのですが。
他ならぬヴァレンシュタイン自身、原作でも「亡命編」でも、ロボスやフォークという「生きた実例」をその目でまざまざと直視させられていたはずなのに、どうしてそれと全く同じ行為を繰り返して恥じることすらないのでしょうかねぇ(-_-;;)。

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/69/
> 「皇帝になったのは軽蔑するフリードリヒ四世の血を引く唯一の男子、そしてその皇帝を支えるのが全ての元凶であるリヒテンラーデ侯……。クロプシュトック侯がテロに走ってもおかしくは無いでしょう」
> 『……』
>
> 「ブラウンシュバイク公もリッテンハイム侯も頭が痛いでしょう。彼らにとってエルウィン・ヨーゼフ二世、リヒテンラーデ侯の死は予想外の事だったはずです。これから帝国がどう動くか、要注意ですね」
>
> 『君はブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯が改革を進める可能性は有ると思うかね』
> “要注意ですね”の言葉にようやくシトレは反応を見せた。
頼むよ、しっかりしてくれ。俺は以前よりはあんたを高く評価しているんだからな。食えないところが良い、上に立つのはそのくらいじゃないと駄目だ。

ヴァレンシュタインの脳内評価的には、シトレってむしろ昔の方がはるかに「食えない人間」だったのではありませんでしたっけ?
何しろ、ヴァレンシュタインに様々な援助を与えていたことを棚に上げ、ヴァレンシュタインを見殺しにして邪魔者を排除しようとしているとか、ヴァレンシュタインの死を政治的に利用して自分の立場を固めようとしているとか、ロクでもない被害妄想を繰り広げてシトレを罵倒しまくっていたのですから(爆)。
当時のシトレは、ヴァレンシュタインの脳内的には間違いなく「悪賢い&狡賢い&油断がならない=食えない人間」ということになっていたはずなのですが、それにしてはえらく評価が低かったよなぁ、と(笑)。
かくのごとく、ヴァレンシュタインは他者の人物評価に「自分の利害」というものを大量に含有させるものだから、全く同じことをやっていてもその時その時で評価が全くの正反対になる、ということがザラにあったりするんですよね。
人物に限らず、何かを評価する際には、自分の主観とか利害とかいった要素は可能な限り排除し、可能な限り客観的な視点に基づいて観察するように努めないと、評価自体が本来あるべきところから著しくズレるという事態をも引き起こしかねないのですが。
その評価対象が自分の利害にどう関わるのか、敵になるのか味方になるのか、利益になるのか害悪になるのかといった判断は、正しい「評価」を下した後で【評価とは別に】行うべきものでしょう。
「評価」と「利害」をゴッチャにしていれば、そりゃ「こいつらはバカだから俺に害を与えるんだろう」とか「常に正しい俺に異を唱える奴はいつも間違っている」的な被害妄想&自己中心主義なタワゴトもバンバン出てこようというものです。
まあ、精神年齢が5歳児以下にしか見えない「心は永遠の保育園児」な狂人ヴァレンシュタインに、「評価」と「利害」の区別を求めるのも酷な要求ではあろうとは思うのですが(笑)。

さて2012年7月14日現在、一連のヴァレンシュタイン考察は、今回の記事でとりあえず「亡命編」の最新話までほぼ追いつくことになりました。
「銀英伝2次創作「亡命編」におけるエーリッヒ・ヴァレンシュタイン考察」と名付けている一連の記事は、「亡命編」の物語が完結か中断するまで続けていく予定なのですが、最新話まで追いついたとなると、話が進まないと考察も先に進めなかったりするんですよね(T_T)。
そんなわけで、今後のヴァレンシュタイン考察は、今後の「亡命編」のストーリー進行および話の内容を見て記事をアップする形式になります。
いずれ話数がたまってくれば再開の時を迎えることになるでしょうが、当面は「一区切りがついた」ということで、一旦筆を置きたいと思います。

銀英伝2次小説「銀河英雄伝説 異伝、フロル・リシャール」の移転騒動

現在閉鎖騒動が持ち上がっている「にじファン」で、銀英伝二次小説のひとつが「勇み足」をやらかしてしまったようですね。
「銀河英雄伝説 異伝、フロル・リシャール」という二次小説が、「小説家になろう」運営に「らいとすたっふルール2004」を掲げて移転許可申請のメールを送ったところ、メールの返答が来なかったために独断で「小説家になろう」への移転を強行してしまったようで↓

http://megalodon.jp/2012-0711-2232-23/mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/132925/blogkey/496787/
7月5日 最初の問い合わせメール送信
> 送信日時:7月5日(木)
> 件名:にじファン小説から小説家になろうへの移管
> にじファンにおいて、「銀河英雄伝説 異伝、フロル・リシャール」を書いている碧海かせなと申します。
> 銀河英雄伝説においては著者の田中芳樹が所属するらいとすたっふが、「らいとすたっふルール2004」(URL:http://www.wrightstaff.co.jp/free.php?fId=3)として、二次創作を認めています。
> よって
銀河英雄伝説の二次創作については、上記ルールに従っていることを明示している作品において、一律に移管を許可していただけると幸いです。
> 宜しくお願いします。
>
> 碧海かせな

7月10日
> 先日、フロル・リシャールを<小説家になろう>に移行しました。当然、にじファンの閉鎖に伴ったものです。すると、今日運営から「二次創作をなろうに上げんな!」とメールが来ました。5日に問い合わせたメールにはまだ返信もないのに。

7月11日 運営側からのメール
> 先日、小説家になろうにて通常検索を行った際に碧海 かせな様の二次創作作品が結果として表示されてしまうことを確認いたしました。
>
> ▼対象作品
> Nコード:N2211R
> タイトル:銀河英雄伝説 異伝、フロル・リシャール
>
> 運営対応と致しまして当該小説に対し、原作名設定を行わせていただきました。
> それにより小説の掲載は小説家になろうではなく、二次創作専用サイト「にじファン」へ移行となりますので、予めご了承下さい。
>
>
小説家になろうでは運営側が権利者様より掲載許可を得た作品を原作とした二次創作のみ投稿を受け付けております。
>
> 掲載受付開始を行いました作品以外を原作とした二次創作小説の原作名設定の解除はご遠慮いただきますようお願い申し上げます。
>
> 掲載受付を行っております作品は以下のページにて告知を行っておりますのでご確認を頂きますようお願い申し上げます。

正直、運営側の返答がないままに「小説家になろう」への移転を強行してしまった作者氏の行動も全く問題がないわけではないのですが、今の現状では、運営側が掲げているような掲載許可の確認方法は実行不能に近いものがあると言わざるをえないですね。
そもそも、「小説家になろう」の運営が本当にきちんと問い合わせを行っているのか否かすらも、外部からは分からないのですし。
問い合わせを行っているフリをして放置状態にしている、という可能性も、半月弱の猶予期間だけで突然閉鎖を宣言してしまった前科を鑑みれば、充分ありえそうな話に見えてしまいますしねぇ(-_-;;)。
運営側にしてみれば、著作権者から訴訟を起こされるリスクを勘案せざるをえないからこその「自らの確認」ではあるのでしょうけど、下手すれば何千何百もあるであろうエンターテイメント作品の二次創作許可について確認を「自分達だけで」取るというのは、あまりにも現実性がないと言わざるをえません。
しかも、「小説家になろう」自体は企業が運営しているのですから、正面切って問われれば著作権者側も拒否せざるをえない一面もあったりするのですし。
元々二次創作自体、著作権の観点から言えばグレーゾーンな部分も少なくないわけですから。
運営側の掲載許可確認の方針は、どうにも「寝た子を起こす」「パンドラの箱を開ける」的なものにしか見えないのが何とも言えないところで(-_-;;)。
一方では突然「にじファン」の閉鎖を宣言しておきながら、他方では「小説家になろう」で中途半端に二次小説受け入れの表明などを行っている辺り、運営側の方針自体が準備不足かつ一貫性を欠いているように思えてならないですね。
いっそ、「全ての二次小説は全面的に禁止します、著作権者の許可があってもダメ!」というスタンスを明確にしていた方が、変な希望を抱いて「小説家になろう」への移転を進める投稿者もいなくなり、結果的には余計な混乱を招かずに済んだのではないかと思うのですが。

「らいとすたっふルール2004」の存在があることもあり、銀英伝をはじめとする田中作品は「小説家になろう」で二次小説の掲載が許可される作品の有力候補のひとつと目されていたのですが、こんな惨状では、2012年7月20日の「にじファン」閉鎖までに掲載許可が下りる可能性は相当なまでに低いと言わざるをえないですね。
既存の二次創作の文章自体は年内一杯まで「作者のみ閲覧可能」という形で残ると言っても、二次小説の投稿者達にしてみれば、読者に見せることができない二次小説投稿サイトに「保管庫」として以外の意味などないわけで。
かといって、移転先の有力候補とされている他の二次小説投稿サイト、特に「Arcadia」や「シルフェニア」などでは、大量の「にじファン」難民の流入で大混乱を来たしているという話ですし。
やはり、あまりにも突然な閉鎖宣言と短すぎる猶予期間が大きく祟っている、としか評しようがないのではないかと。
「にじファン」が閉鎖されれば、現時点では様子見をしている人達も動かざるをえなくなりますから、ますます混乱が加速するのは必至でしょうし、この一連の騒動、収束するまでにはかなりの時間を要することになりそうですね。

「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝」の作者氏が連載継続の意向を表明

銀英伝二次創作「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝」の作者氏が、どうやら連載継続の意向を表明したようですね↓

http://megalodon.jp/2012-0706-2023-07/mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/101342/blogkey/491459/
> 残念な事ににじファンが消滅する事になりました。
>
自分としてはこの小説をなんとか完結まで持っていきたいと思います。
> 現在なろうの方に移転できるかもしれないので様子を見ているところです。
>
> ただ、なろうでも二、三年後には中止となる可能性も有ると思いますので全く別のサイトで連載を開始するかもしれません。今、その辺りも含めて様子見です。
>
> 色々と温かいメッセージ、感想、ありがとうございました。

正直、「アイデアも枯渇していたし、良い機会だから連載を中止してしまおう」と考える可能性も全くないわけではなかったので、ファン的には朗報と言えるところでしょうか。
ただ、いくら「らいとすたっふルール2004」を遵守しているとは言え、現時点でも「小説家になろう」への移転はかなり難しいのではないかとは思わずにいられないですね。
2012年7月6日時点では、「らいとすたっふ」公式サイドは今回の問題について何も知らないかのような態度を取り続けています。
「にじファン」の読者や二次小説作者、場合によっては運営からも、相当数の連絡が行っているはずなので、今回の問題の所在すら知らないというのはありえないのですが。
ただでさえ二次創作アレルギー的なところがある田中芳樹や「らいとすたっふ」が、「小説家になろう」における二次創作掲載の許可を出すとは考えにくいものがありますし。
それに実際問題、いくら原作側で二次創作に対して寛大なスタンスを表明しているところであっても、下手すれば数十人~百人単位の数で「二次創作の許可」を求められたりしたら、拒絶せざるをえない部分も多々あるのではないかと。
下手すれば、「公式から貰った許可」を錦の御旗のごとく振り回して好き勝手をやらかす二次小説作者が出ないとも限らないのですし。
運営側にしてみれば、訴訟対策の観点から事前に許可が得られたものだけを掲載するようにしたい、というのが正直なところではあるのでしょうが、そんな形で許可を求めるというのは、原作側にも二次創作側にも、何よりも読者にとっても不幸な結果しかもたらさないのではないかと思うのですけどね。

かと言って、「にじファン」以外の二次小説投稿サイトに小説データ諸共移転するというのも、かなり問題な部分はあるでしょうね。
「にじファン」の閉鎖発表以降、これまで「にじファン」で小説を投稿していた作者達の一部が他の二次小説投稿サイトへの移転を進めているのですが、移転先の原住民からは「こっち来るな」の大合唱が頻発しているありさま。
大量投稿に伴うサーバ負荷の増大や、新着情報・ランキングなどの混乱に加え、今年の3月に「にじファン」で一次作品の規制が行われた際にも同じことが起こったことから「にじファン」投稿者に対する心証そのものが悪化していたことが主な原因のようですが。
原住民側にしてみれば、「にじファン」からの【難民流入】は自身の小説掲載にも悪影響を及ぼしかねないわけで、そりゃ「にじファン」に対して拒絶的な反応も抱こうというものです。
またそれに加えて、当の「難民」達自身も「亡命編」におけるヴァレンシュタインのごとき倣岸不遜な態度を移転先で堂々と披露しまくっていることが、その悪感情にさらにガソリンを注ぎ込むような効果を生み出してしまっている状況もあるわけで。
……ひょっとして、「亡命編」のあの辺りの描写は、「にじファン」の今現在の状況を予見して書かれたものだったりするのでしょうかね(苦笑)。
もちろん、「その手の好き勝手を受け入れ側は無条件に受け入れてくれる」という図式は見事に外れてしまっているわけなのですが(爆)。

「にじファン」閉鎖問題はまだまだ混沌とした様相を呈していますが、7月20日の閉鎖までに頻発するであろう騒動の数々は、二次創作本体以上に面白い題材とテーマをウォッチャーに提示してくれそうではありますね。

二次小説投稿サイト「にじファン」が閉鎖を発表

二次小説投稿サイト「にじファン」が、2012年7月20日正午をもって閉鎖すると公式発表しました。
原作者および二次小説投稿者からの問い合わせが殺到し、運営側が対応できないと判断したのが主な理由とのことです↓

http://megalodon.jp/2012-0704-2053-57/nizisosaku.com/nizi/news1/
> いつも小説家になろう・にじファンをご利用いただきまして、ありがとうございます。
>
> この度、
運営上の理由により、二次創作専門投稿サイト「にじファン」のサービス提供を終了させていただくことといたしました。具体的な日程に関しましては以下の通りです。
>
>  ◆サービス終了日時
>  2012年7月20日(金) 12:00(正午)
>
> 2012年3月15日以降、にじファンではサイト内での適切な作品掲載を目指し、規制対応を行ってまいりました。しかしながら、
複数の権利者様より直接のご連絡をいただき、ユーザの方からも権利確認に関する多数のお問い合わせをいただいている現状がございます。
>
> 現在、にじファンには多くの権利者様の関連二次創作の投稿が行われております。
今回の規制理由となります権利問題を解決する為には、それら全ての作品の権利者様に対し、運営より掲載の確認を行わせていただくべきであると考えております。ですが、にじファンの現在の投稿規模では、そういった個別対応を行なうことが現実的ではない状況となっております。
>
> その為、
現在のにじファンのサービス継続を行いますことはユーザの皆様並びに権利者様に対し、さらなる不信とご迷惑を重ねる行為であると判断いたしました。よって、今回のサービス終了を決定いたしました次第です。
>
> にじファンのサービスを開始いたしました2010年8月より約2年の間、当サービスをご利用いただきまして、誠にありがとうございます。
>
> ヒナプロジェクトではご利用の皆様にご満足いただけるサービスの運営・提供に努めて参りますので、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
>
>
> ■投稿作品の取り扱いに関して
>
>
ご投稿いただいておりました二次創作小説に関しましては、全作品を公開停止とすることで対応を行なわせていただきます。
>
> 公開停止となりました小説は外部よりの閲覧が不可能となりますが、作者の方はユーザページ内「投稿済み小説一覧」にてデータをご確認いただくことが可能です。
>
>
公開停止となりました小説データに関しましては、2012年中はこれを維持し、2013年1月上旬より、順次削除を行なう予定です。ただし、権利者様からの申し立てがございました場合は、早期の削除を実施する場合がございます。あらかじめご了承ください。
>
>
小説家になろう内での二次創作小説の受け入れに関しましては、別途お知らせとガイドラインを掲載いたしました。二次創作小説の投稿をご検討中の作者の皆様は必ずご確認をいただきますようお願い申し上げます。
>
> サービスの終了にあたり、これまでご利用いただいておりましたユーザの皆様には、多大なるご迷惑をおかけいたしますこと、心よりお詫び申し上げます。

しかし、下手すれば万の単位にまで届くかもしれない二次小説が半月弱で全て消滅を余儀なくされるというのは、何とも理不尽な話ではありますねぇ。
それらの中には、現在進行形で続いている作品もあれば、既に完結したものや更新が完全に止まった作品もあるのでしょうけど、味噌も糞も一緒に削除というのはちょっと……。
いい機会だからと作品を消す投稿者や他所の投稿サイトへの移転を検討する投稿者、それに「消される前に!」と保存に走る読者と、「にじファン」界隈はこれから半月の間、閉鎖に向けての様々な人間ドラマが展開されることになりそうではありますね。

ところで「にじファン」といえば、我らの偉大なるキチガイ兼狂人にして被害妄想狂患者なエーリッヒ・ヴァレンシュタインさんは一体どうなるのでしょうか?
作者氏は「にじファン」以外に自作のサイトやブログを持ってはいないようですし。
あちらのサイトの感想欄では、「にじファン」と同じ企業が運営する「小説家になろう」への移転説も囁かれているようですが……。
これを機会に区切りをつけて作品執筆を放棄するのか、他所の投稿サイトなり自作のサイト&ブログを作って継続するのか、作者氏の決断が待たれるところです。
とりあえず、「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝」の「本編」および「亡命編」については、万が一のことも考えて全ログを保存しておきました。
せっかく複数の考察まで作ったのですから、消えてもらっては困る部分もありますし。
ちなみに、「にじファン」の投稿小説を保存するのには、以下のサイトのダウンロードサービスを使うのが便利です↓

小説家になろう~テキストダウンロード支援~
http://narou.dip.jp/download/

「にじファン」には「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝」以外にも銀英伝の二次小説が少なからず存在しますから、「らいとすたっふ」側も対応を迫られることになるかもしれませんね。
この手の二次創作に関する規約を定めた「らいとすたっふルール2004」に照らせば、「にじファン」に掲載されている大抵の二次小説はOKだろうとは思うのですが……。
ただ、「らいとすたっふ」や田中芳樹側にしてみれば、銀英伝を含めた二次創作の跳梁跋扈はあまり好ましいものではないでしょうし、いつぞやの銀英伝パチンコ化問題の前例もありますから、ひょっとすると無視黙殺するか、内容の検閲まがいのことをやらかしたりする懸念も全くないとは言えないところで(-_-;;)。
ある程度の著作権料は接収しているにせよ、客にカネを支払わせて公演している舞台版の完全オリジナルストーリーをすら容認する田中芳樹サイドが、無償の二次創作を拒否するというのは、まあ普通はありえないだろうと思いたいところですけど、果たしてどうなることやら。

それにしても、今回の「にじファン」閉鎖騒動は、巨大なSNSやレンタルサイトの脆い部分が一挙に噴出したような感すらありますね。
SNSやレンタルサーバの軒先を借りてのサイト&ブログの運営は、運営側の意向ひとつでいともたやすく危機的状況に直面することにもなりかねない、という事実が、今回誰の目にもはっきり分かる形で明示されてしまったわけです。
これが自分の意思や自己管理でそうなるというのであれば、まだ諦めもつくでしょうが、
そんなものと関係のないところでトラブルが発生するというのでは怒り狂っても不思議なことではありません。
かくいう私自身、ずっと使うつもりだった初代の場外乱闘掲示板やタナウツ本家の4代目掲示板を、自分の意思ではなく運用側のトラブルや閉鎖などで放棄を余儀なくされた過去がありましたし。
つい最近も、顧客から預かった大事なデータをバックアップ諸共消滅させてしまったファーストサーバの事件があったばかりですし、SNSやレンタルサーバ【だけ】に依存するのも正直考えものだろうとは思わずにいられないですね。
まあ、自分でサーバを管理運用してサイトやブログを営むのも、それはそれでカネも手間暇もかかり苦労させられるものではあるのですが。

銀英伝2次創作「亡命編」におけるエーリッヒ・ヴァレンシュタイン考察15

この考察の中では、もはや「キチガイで狂人な被害妄想狂患者」の代名詞と化しているエーリッヒ・ヴァレンシュタイン。
そうなってしまったのは本人の自業自得以外の何物でもないのですが、「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン」という名前の元ネタにされてしまった人達にとっては何とも傍迷惑な話ではあるでしょうね。
エーリッヒ・ヴァレンシュタインの名前の起源と推察される元ネタは2人います。
ひとりは「エーリッヒ」というファーストネームの元ネタとなった人物で、第二次世界大戦でドイツの軍人として活躍した名将エーリッヒ・フォン・マンシュタイン
皮肉にもこれは、「反銀英伝 大逆転!リップシュタット戦役」の主人公エーリッヒ・フォン・タンネンベルクと全く同じだったりします。
しかも両者共に、身内の中に「ハインツ」という名を持つ身近な人間がいるという設定まで実は全く同じ(ヴァレンシュタインは父親の法律事務所の共同経営者が、タンネンベルクは父親が、それぞれ「ハインツ」というファーストネーム持ち)というオマケ付き。
この「ハインツ」もまた、マンシュタインと同時期に活躍したドイツ軍人ハインツ・グデーリアンが元ネタと考えられます(こちらも「大逆転!」では確定事項なので)。
……まさか、タンネンベルクこそがヴァレンシュタインの本当の元ネタである、などということはさすがにないだろうとは思うのですが……(苦笑)。

そしてもうひとり、こちらは「ヴァレンシュタイン」という姓の元ネタであろうと考えられる人物は、17世紀のドイツ三十年戦争で活躍した傭兵隊長アルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタイン
アルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタインは、1618年~1648年の長きにわたって繰り広げられたドイツ三十年戦争の第2期(デンマーク・ニーダーザクセン戦争)および第3期(スウェーデン戦争)にかけて、ハプスブルク朝神聖ローマ帝国に与して勝利に貢献し名将として歴史に名を残した人物です。
成り上がりの貴族としてのし上がったアルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタインは、その出自、および独自に考案した軍税徴収システム(占領地から軍税を徴収し資金源とすることで、それまでは難しかった大軍の編成および長期的な軍事活動を容易にした)で帝国内の諸侯達から反発を買う(ヴァレンシュタイン軍に自領土を占領されて問答無用に軍税を何度も徴収される諸侯が少なくなかったため)と共に、時の神聖ローマ帝国皇帝フェルディナント2世にも警戒され、最終的には皇帝が放った暗殺団に殺されてしまうという末路を辿っていたりします。
このアルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタインという人物は、エーリッヒ・ヴァレンシュタインの「ヴァレンシュタイン」姓のみならず、性格設定の元ネタでもあるように思えてなりませんね。
成り上がりで皇帝の信任を得て出世し、軍事力と名声を背景とした傲岸不遜な態度を諸侯のみならず皇帝に対してまで示していた、という点ではエーリッヒ・ヴァレンシュタインにも通じるところがあるのですから。
となると、エーリッヒ・ヴァレンシュタインの末路もまた、アルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタインと同じく「野心ないしは危険要素を上層部から警戒されて暗殺」ということになるのではないかなぁ、とついつい考えてしまいますね(苦笑)。
帝国の上層部から後継者扱いされているらしい「本編」はまだしも、「亡命編」で同盟上層部が能力面?以外でヴァレンシュタインを重用すべき理由なんてどこにもないのですから。
というか現状ですら、対人コミュニケーション能力および同盟に対する忠誠心の面で、今すぐ処刑されてもおかしくないレベルの多大かつ致命的な問題が常に付き纏っているのですし。
いくら同盟の上層部の面々といえども、まさかヴァレンシュタインの人徳(笑)や人格的魅力(爆)に感銘などを受け拝謁すらしてしまうところまで「人間として」堕ちてはいないでしょうから、用済みとなればすぐにでも排除されてしまう危険性を、エーリッヒ・ヴァレンシュタインは史実のアルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタイン以上に持ち合わせているはずなのですけどね。
まあ、ヴァレンシュタインのごときキチガイに「そのような自身の立場を理解しえるだけの自己客観視の視点を持て」というのも無理な注文ではあるのでしょうが……。

さて、今回は第7次イゼルローン要塞攻防戦の締めを飾ることになる、ヴァレンシュタインとラインハルトの通信会談をメインに論じてみたいと思います。
なお、「亡命編」のストーリーおよび過去の考察については以下のリンク先を参照↓

亡命編 銀河英雄伝説~新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
http://ncode.syosetu.com/n5722ba/
銀英伝2次創作「亡命編」におけるエーリッヒ・ヴァレンシュタイン考察
その1  その2  その3  その4  その5  その6  その7  その8  その9  その10  その11  その12  その13  その14

第7次イゼルローン要塞攻防戦でヴァレンシュタインは、イゼルローン回廊内で10万隻もの艦隊を総動員して帝国軍を殲滅させることに成功します。
……正直、原作のイゼルローン回廊の設定から見ても、回廊内におけるそこまでの自由自在な艦隊運用が果たして可能なのかという疑問は尽きないのですが、それはさておき。
敵の殲滅が完了したところで、ヴァレンシュタインは戦闘の経緯と今後の方針について考え始めます。

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/57/
> 目の前にイゼルローン要塞が有る、艦隊戦力を失った要塞だ。攻撃する最大のチャンスなのだが同盟軍は要塞から距離を置き、包囲するでもなく遠巻きにイゼルローン要塞を見ている。
>
> 普通なら各艦隊司令官から攻撃要請が出ても良いのだが誰も総司令部に要請をしてこない。七万隻近い敵の大軍を殲滅した、その事実が艦隊司令官達を大人しくさせている。良い傾向だ、
馬鹿で我儘で自分勝手な艦隊司令官等不要だ。総司令部の威権は確立された。
>
> 既にこの状態で二十四時間が過ぎた。要塞を攻撃するつもりは無い、要塞など攻略しても同盟にとっては一文の得にもならない。帝国は要塞を国防の最前線基地として使うつもりだろうが俺にとっては要塞はあくまで敵艦隊を誘引するための餌だ。敵を釣る餌を自分で食う馬鹿は居ない。
>
> もう間もなくラインハルトの艦隊が此処に現れるはずだ、味方は十万隻、ラインハルトは三万隻、叩き潰すチャンスだがラインハルトがまともに戦うはずはないな。いざとなれば帝国領に撤退、いや後退戦をしかけようとするかもしれない。まあいい、
無理に殲滅することは無い。ラインハルトの艦隊は生かして利用する。今回はそれが出来る。

同盟の艦隊司令官たちも、亡命者な上に自分達よりも階級の低い「馬鹿で我儘で自分勝手な」作戦参謀ごときに好き勝手言われたくなどないでしょうねぇ(苦笑)。
第6次イゼルローン要塞攻防戦で、いくらロボスが無能とはいえ、上官侮辱罪や214条発動などを乱発しまくって総司令部の権威を悪戯に損ねまくっていたのは一体どこの誰でしたっけ?
のみならず、これまでヴァレンシュタインの言動を見ても、まさに「馬鹿で我儘で自分勝手な」言動の実態がそこかしこに露呈しているのですし。
「伝説の17話」や38話の軍法会議でヴァレンシュタインが無罪放免になったのも、ヴァレンシュタインの実力や根回しの賜物などではなく、単なる「神(作者)の奇跡」の大盤振る舞いでしかなかったのですが。
ヴァレンシュタインの論理からすれば、他ならぬヴァレンシュタイン自身こそが「不要」な存在そのものでしかないのですが、相変わらずブーメランな構図について無頓着なその厚顔無恥な図太い神経は大変にスバラシイですね。

そして、それ以上に笑えるブーメランは、「無理に殲滅することは無い。ラインハルトの艦隊は生かして利用する」などと堂々とのたまったことですね。
前回の考察でも取り上げたように、55話でヴァレンシュタインは「イゼルローン駐留艦隊まで無理に殲滅する必要はないのでは?」と困惑しながら話しかけてきたヤンに対して、ここぞとばかりにヤンに対する罵倒を繰り広げまくって快楽にふけりまくった挙句、次の56話では「帝国と同盟じゃ動員兵力だって圧倒的に帝国の方が有利なんだ。そんな状況で敵兵を殺す機会を見逃す……。有り得んだろう、後で苦労するのは同盟だ、そのあたりをまるで考えていない」とまで断じています。
であれば、戦力的には10万隻対3万隻で圧倒的に優位に立ち、しかも友軍が殲滅されたことで士気が低く練度も不十分なラインハルト艦隊を、ここで完全に殲滅しない手はないでしょう。
しかも、ヴァレンシュタインの予測と違い、実はこの状況におけるラインハルトは撤退することができないのです。
ラインハルトはイゼルローン要塞の保持を帝国軍上層部から命じられているため、イゼルローンが陥落することなく同盟軍による攻撃の危機に晒されている限りは、その命令に従ってイゼルローン要塞の防衛を行わなければならないのです。
同盟軍は、ラインハルトが撤退戦に移行しようとしたら、すかさずイゼルローン要塞を攻撃する構えを見せるだけでその意図を頓挫させることが可能なのであり、それでも無理にラインハルトが撤退したとしても、彼の艦隊は軍上層部の命令に拘束されて否応なくイゼルローン要塞に再接近せざるをえなくなります。
何なら、常に1万~2万くらいの戦力をイゼルローン要塞に張り付け、攻撃するそぶりを見せつけ続けても良いでしょう。
もし、それでもラインハルトがイゼルローン要塞の死守命令を無視して帝都オーディンに帰還でもしようものならば、彼は命令違反&敵前逃亡の罪に敗戦責任まで押し付けられる形で軍法会議にかけられ、最悪は銃殺刑に処されてしまうことにもなりかねません。
イゼルローン要塞が陥落するか、軍上層部が死守命令を撤回しない限り、ラインハルトにどれだけの軍事的才能があっても、常に手足を縛られた状態での戦いを余儀なくされてしまうのです。
いや、仮に軍上層部が死守命令を撤回する命令を出したとしても、徹底した通信妨害を行うことでラインハルトの下に命令が行かないようにすることも可能なのですから、実質的には「同盟軍がイゼルローン要塞を陥落させる」までラインハルトは要塞を死守し抗戦を続けなければならないことになります。
ラインハルトにとってはまさに勝算皆無の絶望的な状況、としか評しようがないでしょう。
イゼルローン要塞が帝国にとって重要な要塞であることは同盟側も最初からお見通しなわけですし、そもそも今回の作戦自体が「要塞を利用して艦隊を殲滅する」という方針に則って行われているのですから、ラインハルトが艦隊救援と共にイゼルローン要塞死守の任を受けているであろうことは、別にヴァレンシュタインでなくても同盟軍の誰もが簡単に察知しえる程度の事情でしかないはずなのですけどね。
その上で、58話で展開されているような「毒」とやらを流し込みたいのであれば、ラインハルトの艦隊を殲滅し追い詰めた状態で降伏勧告と共に行い、かつイゼルローン要塞に常駐している数十万~百万単位の軍人達を証人に仕立て上げる、という形で行えば良いのです。
その状況であれば、たとえその後でラインハルトが帝国に帰還しえたとしても、ダゴン星域会戦で敗軍をまとめて帰還したゴッドリーブ・フォン・インゴルシュタットのごとく、帝国の手でラインハルトに敗戦の罪をかぶせて処刑させることも不可能ではなくなるのですから。
これだけの好条件が揃っていて、何故ヴァレンシュタインがむざむざとラインハルトを、しかも艦隊すら無傷の状態で逃がさなければならないのか、はなはだ疑問であると言わざるをえません。
しかも、ヴァンフリートでラインハルトを逃がした際には「伝説の17話」の自爆発言までやらかして他者を論難しまくっていたほどに深刻な、ヴァレンシュタインの「ラインハルト恐怖症」から考えればなおのことです。
自分が何よりも恐れてやまないというか「自分を殺せる唯一の可能性」と考えている感すら多々あるラインハルトを、しかも戦場で、それも必勝必殺の体制で殺すことが可能な千載一遇の好機を、みすみす自分から潰してしまうヴァレンシュタイン。
元々そうでなかったことはまずないと思うのですが、ヴァレンシュタインのその行動原理はますますもって支離滅裂かつ混迷な惨状を呈しつつある、としか言いようがありませんね。

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> 第四、第六艦隊は十分以上に働いてくれた。モートン、カールセンの二人は信頼できる。これで使えるのは第四、第五、第六、第十、第十二の五個艦隊か……。第一は引き締めが必要だ。クブルスリーの能力以前に艦隊の練度が低すぎる、話にならない。
>
> まあ原作でもそんな傾向は有った。ランテマリオ星域の会戦では同盟軍は帝国軍相手に暴走しまくった。あの時の同盟軍は第一、第十四、第十五艦隊だった。あれは同盟の命運を決める一戦に興奮したわけではなかった。練度不足、実戦不足がもろに出たわけだ。
>
> 第一艦隊の練度を上げれば使える艦隊は六個艦隊だが、それでも宇宙艦隊の全戦力の半分だ、
残り半分は当てにならないって一体この国はどうなってるんだ。早急に残り半分もどうにかしなくてはならんが誰を後任に持ってくるか……。一人はヤンとして他をどうする? どう考えても艦隊司令官が足りない。
>
> これから見つけていくしかないな、多少強引でも引き立てて艦隊司令官にする。候補者はコクラン、デュドネイ、ブレツェリ、ビューフォート、デッシュ、アッテンボロー、ラップ……。そんなところかな。能力を確認しつつ昇進させていく、
時間はかかるかもしれんがやらないとな。戦争は何年続くか分からん。人材の確保も戦争の行方を左右する大きな要因だ、手を抜くことはできん。

何と言うか、「狡兎死して走狗煮らる」の格言通りの路線を自ら積極的に爆走しているとしか思えないシロモノですね、ヴァレンシュタインの思考パターンは。
確かに同盟にとっては、艦隊司令官を刷新することで艦隊の指揮能力と練度、ひいては戦力がアップすることは、軍にとっても国家としても大きな利益になります。
しかし、同盟軍の戦力が強化されることが、ヴァレンシュタイン個人の利益と必ずしも合致するとは限らないのです。
前回の考察でも述べたように、対帝国戦で同盟軍および同盟にある程度の余裕ができてしまうと、その分ヴァレンシュタインに依存する必要性が減少してしまうわけですから、却ってヴァレンシュタインの身が危なくなる可能性が増えてしまいます。
「ヴァレンシュタインがいなくても同盟はやっていける」と同盟の政軍上層部が考え出した時、彼らがヴァレンシュタインの排除に動かないという保証は全くありません。
特に同盟が帝国と和平を結ぶ場合、帝国はもちろんのこと、同盟にとってもヴァレンシュタインが邪魔になってしまう可能性は濃厚に存在します。

単純に考えても、亡命者ごときに同盟の政治や軍事が壟断されることを面白く思わない人間は少なからず存在するでしょうし、ましてやヴァレンシュタインは性格破綻者な上にヤン以上に同盟に対する国家的な忠誠心が皆無どころかマイナスですらあるのですから。
「狡兎死して走狗煮らる」どころか、今すぐ殺されても何ら不思議なことではないくらいに好き勝手やり過ぎているのですけどね、ヴァレンシュタインは。

そして何よりも、この「狡兎死して走狗煮らる」の構図をさらに凄まじい勢いで完成に近づけてしまっているのが、58話におけるヴァレンシュタインの独演説です。
帝国内では機密事項になっているらしいカストロプ公に纏わる秘密を暴露することで「毒」とやらを流し込んだ「つもりになっている」ヴァレンシュタインは、よせば良いのに自ら求めてむやみやたらと無用な敵を作り始めるんですよね↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/58/
> 「それにしてもクレメンツ教官、余計な事をしてくれましたね」
> 俺の言葉にクレメンツが身構えるのが分かった。俺が怖いのかな、だとしたら良い傾向だ。
>
> 『余計な事とは?』
> 「オフレッサー元帥府に帝国でも一線級の指揮官を集めた、ロイエンタール、ビッテンフェルト、ワーレン、ミッターマイヤー、ミュラー……、皆貴方の教え子です、そうでしょう」
> 『……それがどうかしたか』
>
>
「何のためにイゼルローンで七百万人を捕殺したと思っているんです? 彼らを殺す為ですよ」
> 『馬鹿な、何を言っている……』
> クレメンツの声が震えている。ラインハルトとケスラーがギョッとした表情で俺を見ている。まだまだ、これからだ。
>
> 「彼らは有能です。馬鹿な指揮官では彼らは使えない、
いずれ彼らはミューゼル提督の所に行く。だからその前に殺してしまおうと思ったのです。ミューゼル提督と彼らが一緒になれば厄介ですからね。それなのに……、シュターデン教官も役に立たない、戦術が重要だと言いながら戦術能力に優れた人物を簡単に手放してしまうのですから……。所詮は理論だけの人だ」
>
>
『そのために七百万の帝国人を捕殺したと言うのか』
> 震えているのは声か、体か、それとも心か……。
> 「帝国軍に打撃を与えると言う目的も有りました。でも
主目的はそちらです。捕殺できたのはメルカッツ、ケンプ、ルッツ、ファーレンハイト……。皆教官と接点の無い人ばかりですよ。当初の予定の半分にも満たない。おまけに気が付けばあなたの他にケスラー、メックリンガー、アイゼナッハまで揃っている」
> 全くだ、バグダッシュからリストを見せられた時はうんざりした。クレメンツ教官、あんたは本当に余計な事をしてくれたよ。

相も変わらず自分のことしか眼中にない被害妄想狂ですね、ヴァレンシュタインは。
ここでヴァレンシュタインが自身の亡命の経緯とカストロプ公の関係について演説していたそもそもの目的は、演説を視聴している一般の軍人達に真実を教えることで、帝国政府や門閥貴族体制に対する平民達の不満と反感と憎悪を煽り、帝国を内部分裂の危機に追い込むことにありました。
そして、カストロプ公に自分の親を殺され、自身も謀殺されかけて同盟への亡命を余儀なくされ、さらにはその背後に帝国政府の要人が蠢いていた、という事実が提示されただけであれば、戦没者遺族の感情は別にしても、ヴァレンシュタインに対する同情と共感、およびその反動で発生する帝国政府への悪感情が惹起されるという形で、ある程度の目的を達成することも決して不可能ではなかったでしょう。
元々帝国の平民達は、帝国政府および門閥貴族体制に対して長きにわたって蓄積された不満を抱え込んでいるという問題もあるのですし。
ところが何を血迷ったのか、ヴァレンシュタインは自身の個人的事情とは全く何の関係もない人間に対する敵意と殺意まで一緒に表明してしまいました。
ここで名指しされている帝国軍の将帥達は、別にヴァレンシュタインに仇なしたわけではなく、下手すれば(「亡命編」では)面識すらもなかったかもしれないのに、一方的にマークされた上に殺戮のターゲットとして名指しを受ける羽目になってしまったわけです。
名指しされた方にしてみれば、帝国政府や門閥貴族体制に対する不信以上に、まずはヴァレンシュタインに対して恐怖を、次に敵意と殺意を抱かざるをえないでしょう。
ヴァレンシュタインと同じく「自分が生き残る」という観点から言ってさえ、そちらの方が優先度は高いのですから。
ヴァレンシュタインが本来復讐の対象として名指しすべきは、事実関係のみならず政略的な観点から見てさえも「門閥貴族体制や帝国政府」に限定されるべきであり、それを逸脱して無関係な人間に対してまで敵意と殺意を示すのは、政治的にも大きなマイナスとならざるをえないでしょう。
黙っていれば彼らも帝国政府や門閥貴族体制に対する不信のみに邁進してくれたものを、わざわざ余計なことをくっちゃべって無用な敵を作り出してしまうヴァレンシュタインには、外交的なセンスというものが欠片たりとも見出せないですね。
さらに頭に乗ったヴァレンシュタインは、とうとう自分の当初の目論見から言ってさえも完全に逆効果でしかない致命的な発言を繰り出してしまうに至ります↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/58/
> スクリーンには蒼白になっている三人が居る。
> 「ミューゼル中将、教えて欲しい事が有ります」
> 『……何を聞きたい』
> そう警戒するな、ラインハルト。警戒しても無駄だからな。
>
> 「私の両親の墓の事です。無事ですか?」
> 『……』
> ラインハルトの蒼白な顔が更に白くなった。正直な男だな、ラインハルト。知らないと言えば良かったのだ。この場合の沈黙は知っているが答え辛いと言っているようなものだ。この通信を見ている人間全てが墓は破壊されたと分かっただろう。
>
> 俺は答えを既に知っている。バグダッシュが教えてくれた。フェザーン経由で調べたらしい。覚悟はしていたがそれでもショックだった。
> 「答えが有りませんね、正直に答えてください、墓は壊されたのですね?」
> 『……そうだ』
> ラインハルトは目を閉じている。この男はそういう下劣さとは無縁だ。少し胸が痛んだがやらねばならない。
>
> 「遺体はどうなりました。無事ですか」
> 『……残念だが、掘り出されて遺棄されたと聞いている』
> 遺棄じゃない、罪人扱いされて死刑になった罪人の遺体同様に打ち捨てられた。ヴァンフリートの戦死者の遺族がそれを望み、政府がそれを率先して行ったらしい。政府にしてみればそれで遺族が納得してくれれば安いものだと思ったのだろう。カストロプの真実は話せないからな。
>
>
「帝国は私から全てを奪った、両親、家、そして友……。それだけでは足りず私の両親の安眠と名誉も奪ったという事ですか。……つまり私はルドルフの墓を暴く権利を得たわけだ、鞭打つ権利を」
> 笑い声が出た。計算して出した笑い声じゃない、自然と出た。
>
> 『ヴァレンシュタイン!』
> 「何です、クレメンツ教官。不敬罪ですか、名誉なことですよ、今の私は反逆者なんですから。
これからも何百万、何千万人の帝国人を殺してあげますよ。帝国の為政者達に自分達が何をしたのかを分からせるためにね……、悪夢の中でのたうつと良い
> 笑い声が止まらない、スクリーンの三人が顔を強張らせて俺を見ている。

何かもう、「ヴァレンシュタインの末路はこれで決まったな(笑)」とでも言いたくなるようなシロモノですよね、これって。
ヴァレンシュタインは、自身のその被害者的な立場を振り回せば、帝国政府や門閥貴族体制のみならず、自分やカストロプ公とは全く何の関係もない無辜の人間の命運までをも好き勝手に弄んで良い、というレベルにまで頭がイッてしまったようで(苦笑)。
まあ実際、考察10で言及した、親類を殺された怨恨からヴァレンシュタインを襲撃した一兵士に対して32話で開陳された評価などを見ても、それが外交上の演技などに留まるものではなく、ヴァレンシュタインの本心そのものであることは最初から疑いようもないのですし。
この発言で一番致命的なのは、ヴァレンシュタインの復讐対象が帝国政府や門閥貴族体制のみならず、帝国に住む人間全てに拡大されていることが明示されてしまったことにあります。
ヴァレンシュタインの復讐対象が帝国政府や門閥貴族体制にとどまっているのであれば、平民達は少なくとも徴兵以外でヴァレンシュタインと関わらなければ難を逃れることができましたし、帝国政府や門閥貴族達の慌てふためく様を嘲笑すらすることも可能だったでしょう。
しかし、ヴァレンシュタインの発言により、一般の平民達もこの問題について他人事ではなくなってしまいました。
ヴァレンシュタインの本心がどうであれ、ヴァレンシュタインが帝国を滅ぼせば自分達も復讐の対象として虐殺される、と平民達の誰もが考えたことでしょう。
実際、遺族達がヴァレンシュタインの両親の墓を荒らし、遺体を罪人同様に扱って辱めたという点で、平民達もまたヴァレンシュタインに憎まれる理由は充分にあるのですから。
もちろん、彼らとて帝国政府や門閥貴族体制に対する不満や反感は当然あるでしょうが、だからと言ってそれはヴァレンシュタインに対する恐怖や反感や憎悪をいささかも緩和するものなどではありえません。
それは皮肉なことに、「ヴァレンシュタイン」という万人にとっての脅威を滅ぼす、という共通の目的の下に、帝国全体が上から下まで一丸となって団結してしまう、などという全く逆効果な事態をもたらしかねない危険性をも孕んでいるのです。

原作の銀英伝でも、貴族も平民も問わず虐殺にふけっていた流血帝アウグスト2世に対し、貴族も平民も同じ恐怖と憎悪を抱くことで、相互の対立が一時的にせよ雲散霧消してしまったという歴史があります。
ヴァレンシュタインが帝国を分裂状態にしたかったのであれば、自身の復讐の対象を帝国政府と門閥貴族体制のみに限定した上で、平民達については「自分と同じ被害者である」とでもアピールして自分への同情や共感が集まるよう誘導すべきだったのです。
わざわざ自分から帝国が一丸となって団結するためのシンボルとして名乗り出るなど、ヴァレンシュタイン自身にとっても本末転倒な話でしかないと思うのですがね。

そしてそれ以上に本末転倒なのは、ヴァレンシュタインが帝国に対して悪戯に自身に対する恐怖と反感と憎悪を植えつけていくことで、ヴァレンシュタインの2つの最終目的がどちらも達成困難になってしまうことです。
「亡命編」におけるヴァレンシュタインの最終目的は「自分が生き残ること」であり、第7次イゼルローン要塞攻防戦からは、それに「帝国と同盟の和平を実現する」がさらに加わっています。
目の前にある必勝の体制を棒に振ってまで、「ラインハルトと戦って勝利できるわけがない」とヴァレンシュタインは頭から思い込んでいるわけです。
しかし、帝国の上から下まで一律にヴァレンシュタインを敵視するとなれば、ヴァレンシュタインの存在自体が和平の実現を妨げる巨大な懸念材料となってしまいます。
特に、これまでの戦いでヴァレンシュタインに親類縁者や大事な人を奪われた遺族達などは、「ヴァレンシュタインを殺すまで和平などするな!」と主張するであろうことは確実ですし、他の帝国人もヴァレンシュタインの復讐の餌食になどなりたくはないでしょうから、その主張に同調する可能性は極めて高いと言わざるをえません。
そして帝国政府や門閥貴族らも、ヴァレンシュタインを「公敵」として認定し彼に平民の憎悪を集中させれば、自分達に対する不満を逸らす道具として活用することもできるわけですから、むしろ平民達の怨嗟の声に便乗する形でヴァレンシュタインを敵視する政策を実行する公算は大です。
「ヴァレンシュタインの存在そのものが帝国との和平にとっての邪魔になる」という構図は、当のヴァレンシュタイン本人はもちろんのこと、同盟にとっても大きなジレンマとしてのしかかってくることでしょう。
そして一方、「自身が生き残る」ことに拘るヴァレンシュタインはともかく、同盟がヴァレンシュタインの存在と生命を何が何でも死守しなければならない理由もありません。
ただでさえ同盟にとってのヴァレンシュタインは、従順さや国家的忠誠心の点で難があるどころの話ではないわけなのですから。
そもそも、件の会談におけるヴァレンシュタインの言動自体が、同盟軍があたかも自分の所有物であると言わんばかりな口吻だったりするのですからねぇ。
38話の軍法会議では、確かシトレがこんな判決文を読み上げていたはずなのですが↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/38/
> 軍法会議が全ての審理を終え判決が出たのはそれから十日後の事でした。グリーンヒル参謀長とヴァレンシュタイン大佐は無罪、そしてロボス元帥には厳しい判決が待っていました。
>
> 「
指揮官はいかなる意味でも将兵を己個人の野心のために危険にさらす事は許されない。今回の件は指揮官の能力以前の問題である。そこには情状酌量の余地は無い」

自分の個人的な復讐心のために同盟軍を使って虐殺を繰り広げる、などと堂々と公言しているヴァレンシュタインの様相は、まさに 「指揮官はいかなる意味でも将兵を己個人の野心のために危険にさらす事は許されない」という行為そのものなのではないですかねぇ(笑)。
同盟の将兵達が、所詮は帝国からの亡命者でしかないヴァレンシュタインひとりの復讐心などに、何故ほんの僅かでも付き合ってやらなければならないというのでしょうか?
これだけでも、同盟がヴァレンシュタインを危険視して粛清するには充分な口実となりえるでしょう。
また、帝国が「ヴァレンシュタインの死」を欲するという事実は、同盟にとっても「ヴァレンシュタインの身柄」を外交の場における交渉の道具として利用可能であることを意味します。
「ヴァレンシュタインの死」と引き換えに帝国に対し大幅な譲歩や見返りを求め(たとえば「イゼルローン要塞の割譲」など)、和平を達成することができるとなれば、同盟にとっては一石数鳥の非常に魅力的な選択肢であると言えるでしょう。
かくして、ヴァレンシュタインは帝国と同盟の和平のために自身の死を強要されるという、本人にしてみれば本末転倒もはなはだしい未来と結末が用意されることになるわけです。
何とも滑稽な話ではありますが、まあ本来ならば「伝説の17話」や38話の軍法会議でとっくの昔に粛清されていて然るべき生命を奇跡的に生き永らえているのですから、むしろ感謝すらしても良いくらいでさえあるのですけどね、ヴァレンシュタインは。

さて、件の会談にはもうひとつ、ヴァレンシュタインがやらかしてしまった致命的な失態というものが存在します。
それは、原作知識とやらを開陳してラインハルトの野心と目的を暴露しなかったことです↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/58/
> 「私を止めたければ、私を殺すか、帝国を変える事です。言っている意味は分かるでしょう、ミューゼル中将。貴方もそれを望んでいるはずだ
> 『……』
> ラインハルトの顔が歪んだ。あとの二人が驚愕の表情でラインハルトを見ている。
>
> 「貴方がどちらを選ぶか、楽しみですね。私を殺す事を選んだ時は注意することです、弱者を踏み躙る事で帝国を守ろうとする為政者のために戦うという事なんですから。
私と戦う事に夢中になっていると後ろから刺されますよ。連中を守るためになど戦いたく無いと言われてね、気を付ける事です」

「私と戦う事に夢中になっていると後ろから刺されますよ」という発言はヴァレンシュタインにも悲惨なまでに当てはまる、という自覚が皆無というのもどうかとは思うのですが、それはさておき。
この会談におけるヴァレンシュタインは、アニメ版の原作知識におけるケスラーの過去を本人の前で暴き立てて顔面蒼白にさせるなどという荒業を駆使していたりするんですよね。
ならばケスラーに対した手法と同じやり方を使い、ラインハルトの野心と目的を公然と暴き立てて自分と同じ叛逆者に仕立て上げることで、帝国の上層部にラインハルトに対する猜疑心を植え付け、彼を処刑させるよう促すことも充分に可能だったでしょう。
そうすれば、物語的な位置付けのみならず政略的な観点から見ても「ラインハルトは生かして帰す」という意味はより大きなものとなりますし、何よりもヴァレンシュタイン的には自身の生命を脅かす最大の脅威を、しかも自分の手を汚すことなく始末することも可能となります。
ただでさえ、この後の帝国はヴァレンシュタインの激白によって内部分裂状態となってしまうわけですし、その状況下で帝国の上層部がラインハルトを「危険分子」と見做して処刑の決断を行う可能性はかなり高いと言えるでしょう。
その状況では、オフレッサーですらラインハルトを庇える保証はないのですし。
最小の効果でも、ラインハルトに対する疑惑や不信の芽を植え付ける程度のことはできるのですから、ヴァレンシュタイン的にはやって損することは何もないはずなのですが。
「伝説の17話」でラインハルトを殺せなかったことでアレほどまでにヤンを論難していながら、自身はこんな失態を平気で犯すというのですから、つくづくヴァレンシュタインの低能無能&ダブスタぶりには呆れ果てるしかないですね。
しかも、こんなザマを晒していながら、当人の自己評価では「原作知識を上手く使っている」ということになっているときているのですから、もう笑うしかないというか……。

次回からは、第7次イゼルローン要塞攻防戦終結後におけるヴァレンシュタインの言動について検証していきたいと思います。
この考察も、そろそろ最新話に追いつくことができそうですね。

銀英伝2次創作「亡命編」におけるエーリッヒ・ヴァレンシュタイン考察14

エーリッヒ・ヴァレンシュタインの思考パターンを見てみると、どうも彼は「暗殺」という要素を全く無視しているか、非常に軽視しているようなところが多々見受けられます。
これは「本編」の頃から一貫して変わることなく、かつ「他人に対する攻撃策」「自分に対する防衛策」の双方について当てはまります。
たとえば「本編」では、ラインハルトに愛想を尽かして敵視するようになったり、ヤンの戦略戦術や謀略に翻弄される事態に直面したりしてさえ、ヴァレンシュタインは彼らを戦略や政略で圧倒することは画策しても「暗殺」で排除しようとは欠片たりとも考えていません。
また逆に、クロプシュトック侯事件やキュンメル事件などといった「原作知識で事前に把握できる暗殺事件」を除けば、ヴァレンシュタインは他者が自分に対して画策する暗殺絡みの謀略について、事前には全く予測も対策もできておらず、奇跡的に助かった後に反撃に転じるというパターンが常態化していました。
「亡命編」の場合はさらに深刻で、ヴァレンシュタインはそもそも自身がカストロプ公からの刺客であるフロトー中佐に暗殺されかかったことがきっかけで同盟に亡命する羽目になったにもかかわらず、そのことにトラウマを覚えたり脅威を感じたりしている様子もなければ、それを教訓とした事前対策に取り組む気配すらもありません。
そして何よりも、アレほどまでにラインハルトを恐れ、彼の脅威から逃れるために数百万単位もの虐殺に手を染めることすら辞さないほどのヴァレンシュタインが、「工作員を派遣してラインハルトひとりを暗殺する」という、ある意味最も犠牲が少なくて済むであろう策謀に思い至りすらもしないのは不自然もいいところです。
フェザーン勢力や地球教が昔から暗殺をも含めた様々な蠢動を行っているという作中事実を、原作知識を有するヴァレンシュタインは当然のごとく把握しているはずなのですから、それに対する防衛策という観点だけで考えてさえも「暗殺」という要素を除外できるものではないと思うのですけどね。
しかも原作知識と「暗殺」を組み合わせれば、要人になる前で警備の薄い人間を人知れず殺すことも充分に可能となるのですからなおのこと。
「自分が生き残ること」を至上命題とするヴァレンシュタインにとって、「暗殺」という手段が持つ脅威と有効活用については、むしろいくらでも検討して然るべきものではなかったのかと。
まさか、この期に及んで「暗殺で歴史は動かない」などという、原作「銀英伝」でも言われていた綺麗事な理想論の類に拘泥しているわけではあるまいに。

ところで、今回から第7次イゼルローン要塞攻防戦の検証に入ることとなるのですが、この戦いは帝国パートをメインにストーリーが進行していくこともあり、ヴァレンシュタインの出番がかなり少ないですね。
第7次イゼルローン要塞攻防戦でヴァレンシュタインが出てくるのは、会戦の帰趨が決し始める終盤に差し掛かってからのことになりますし。
もっとも、そのような少ない出番であっても、出てくる際にはいつもの「神(作者)の奇跡」やキチガイ発言を忘れない辺りが、狂人ヴァレンシュタインの面目躍如と言えるところではあるのですが(笑)。
その面目躍如ぶりが今回の戦いでどのような形で発露されているのかは、これから披露していく考察にて語っていくことと致しましょう。
なお、「亡命編」のストーリーおよび過去の考察については以下のリンク先を参照↓

亡命編 銀河英雄伝説~新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
http://ncode.syosetu.com/n5722ba/
銀英伝2次創作「亡命編」におけるエーリッヒ・ヴァレンシュタイン考察
その1  その2  その3  その4  その5  その6  その7  その8  その9  その10  その11  その12  その13

第7次イゼルローン要塞攻防戦は、動員兵力を実際よりも少なく発表し、既存の艦隊で基本的な応戦を行いつつ、隠蔽していた戦力で帝国軍の後方を襲撃し包囲網を構築することで殲滅を行う、という形で同盟軍が勝利を勝ち取っています↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/52/
> 今、同盟軍は五個艦隊で要塞を包囲している。第一、第五、第十、第十二、そしてシトレの直率部隊だ。しかし表向き動員したのは第五、第十、第十二艦隊と直率部隊となっている。第一艦隊はバーラト星系で海賊退治だ。そういう事にしてマスコミの目を誤魔化した。

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/55/
> 今回の戦いで一番苦労したのが動員兵力の秘匿だった。公表では五万五千隻、第五、第十、第十二の三個艦隊、そしてシトレ元帥の直率部隊、これが内訳だ。その他に密かに動員したのが第一、第四、第六の三個艦隊。第一艦隊は海賊組織の討伐という名目で艦隊を動かし、第四、第六の両艦隊は艦隊司令官が代わったことで訓練に出ている事になっている。

しかしこれって、「亡命編」における同盟で果たして実現可能なことなのでしょうか?
作者氏がどういう意図でそんな設定をでっち上げたのか不明なのですが、実は「亡命編」における自由惑星同盟って、情報管理があまりにもお粗末極まりない惨状を呈していたりするんですよね。
たとえば39話では、第6次イゼルローン要塞攻防戦における同盟軍総司令部で交わされた作戦会議やヴァレンシュタインの主張内容などが、帝国軍のオフレッサーにすら掌握されてしまっている様子が描かれています。
これは帝国軍の情報部がフェザーン経由で入手した情報とのことでしたが、同盟軍総司令部の作戦会議内容なんて軍事機密の最たるものであるはずなのに、それがこうも簡単に敵国に流出している時点で、同盟側のインテリジェンス(防諜・諜報)能力の低レベルぶりが知れようというものです。
また45話では、ヴァレンシュタインがシトレ・トリューニヒト・レベロの3者と秘密会議を行っていたことがマスコミに察知され、同盟のTVニュースで大々的に報じられていたりします。
こういう秘密会議というのは、内容はおろか「そういうことが行われていた」という事実自体が本来漏れてはならない機密事項でもあるはずなのですが……。
銀英伝3巻でヤンを査問会にかけた件が、外部はむろんのこと、同盟軍ナンバー2の座にあったビュコックですらフレデリカの話を聞くまで知ることができなかったことを考えると、「亡命編」における同盟のインテリジェンスの水準は原作と比較してさえも杜撰極まりないシロモノであると評さざるをえません。
ところが「亡命編」の第7次イゼルローン要塞攻防戦では、その杜撰なインテリジェンスぶりを露呈しているはずの同盟が、自国のマスコミはおろかフェザーンさえも欺いたというのですから驚きです↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/52/
> 遠征軍の動きを見る限り、こちらの動員兵力を知らなかったと見て良い。知っていればヴァンフリートにのこのこ出てはこなかっただろう。フェザーンも騙されたようだ。後々帝国とフェザーンの関係が難しくなりそうだがそれも今回の戦いの狙いの一つではある。

フェザーンの諜報活動は、原作における同盟のインテリジェンス体制をすらも突破するほどの精度と優秀さを誇っています。
原作1巻でヤンとローゼンリッターによる無血占領が行われた第7次イゼルローン要塞攻防戦においても、第13艦隊の動向は「亡命編」と同じく「新艦隊最初の大規模演習」として擬態されていたにもかかわらず、フェザーンは第13艦隊の軍事目的および最終到達地点を正確に喝破していました。
その情報を察知したフェザーンが帝国に対し報告を行わなかったのは、半個艦隊でイゼルローンが落とせるはずがないという思い込みと、ヤンの軍事的手腕がどのようなものかを見たいというルビンスキーの意向によるものでしかなく、しかもそのルビンスキー自身、全く予想外の結果に驚愕するという事態に直面しています。
そして、次の同盟軍による帝国領侵攻作戦では、同盟最高評議会で議決された後で「3000万人以上もの動員計画がある」という事実をすぐさま察知し、帝国高等弁務官レムシャイト伯に報告を入れ、帝国軍に対して事前準備を促しています。
これだけの「相対的な優秀さ」を誇るフェザーンの諜報活動を、原作にすら劣る「亡命編」における同盟のインテリジェンスが欺くことに成功するというのは、ヨタ話にしても無理があり過ぎなのではないかと。
そして何よりも、その同盟の悲惨なインテリジェンスの実態を、ヴァレンシュタインは充分に把握できていたはずなのです↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/24/
> 何をどう宜しくするのか、グリーンヒル参謀長が何を期待しているのか想像はつくが、うんざりだ。あの駄法螺作戦の所為だな……。あれはラグナロック作戦のパクリなのだが、あれを同盟が実施できる可能性はまずない。不可能ではないのだが成功する見込みは限りなく低いだろう。理由は二つある。
>
> 一つは誰でも分かる、
作戦目的を秘匿出来るかだ。少しでもフェザーン、帝国に知られれば作戦は失敗する……。帝国ならともかく同盟では難しいだろう。

しかし、第7次イゼルローン要塞攻防戦の戦力隠蔽も、ヴァレンシュタインが「駄法螺作戦」と主張するフェザーン侵攻作戦と同程度には秘匿性が求められるはずなのですが。
「少しでもフェザーン、帝国に知られれば作戦は失敗する」という点では、どちらも全く同じなのですから。

他ならぬ自分自身が「あれを同盟が実施できる可能性はまずない」とまで述べていたレベルの隠蔽工作を、ヴァレンシュタインは一体どうやって実現させたというのでしょうか?
シトレ・トリューニヒト・レベロを交えた秘密の会談でも、ヴァレンシュタインは今後の戦略や司令長官の人事については言及していても、同盟におけるインテリジェンスの問題については全く何も主張してなどいませんでしたし。
「亡命編」における同盟の機密情報の漏洩ぶりな惨状を鑑みても、今回の作戦で見られるような情報統制を行うためには、下手すれば軍どころか国家体制そのものをも一変させるレベルの大規模な組織改革が必要不可欠であり、それは一朝一夕に行えるものなどではありえないでしょう。
同盟軍の各艦隊指令官達が使い物にならないとヴァレンシュタインは作中で嘆きまくっていましたが、現状の同盟で本当に一番使えないどころか有害ですらあるのはインテリジェンスの分野なのです。
ヴァレンシュタインが直接指揮しているわけでもなく放置状態にすらある同盟のインテリジェンスのどこをどうやって使えば、フェザーンすらも欺けるほどの情報操作&統制が可能になるというのですかね?
他ならぬヴァレンシュタイン自身、フェザーンの諜報能力については原作知識からも充分に熟知しえる立場にあったはずでしょうに。
あんなド素人でもありえなさそうな低レベル過ぎるインテリジェンスに勝利の命運を委ねるなど、普通に考えたら自殺行為もいいところなのではないかと思えてならないのですが。
それとも、これもまた「神(作者)の奇跡」の産物だったりするのでしょうかねぇ(笑)。

にわかには信じ難い論理でもって第7次イゼルローン要塞攻防戦の勝利の帰趨が決したことに、しかし当然のごとくヴァレンシュタインが満足などするはずもありません。
いつ如何なる時にも常に被害者意識を持つことを忘れない狂人ヴァレンシュタインは、被害妄想狂患者としての禁断症状を既に発症しつつあり、それは「神(作者)の祝福」から発せられる超高濃度の放射線のようなものを浴び続けているがために、原作よりも頭の水準を著しく劣化させられたヤンの発言によって爆発するに至ったのです↓

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> ヴァレンシュタイン准将が席に戻るとヤン准将が困惑したような表情で話しかけ始めた。
> 「駐留艦隊を無理に殲滅する必要は無いんじゃないかな、イゼルローン要塞は攻略しないんだろう? 余りやりすぎると帝国軍の恨みを不必要に買いかねない。適当な所で切り上げた方が……」
>
> ヤン准将は最後まで話すことは出来なかった。ヴァレンシュタイン准将が冷たい目でヤン准将を見据えている。
>
「不必要に恨みを買う? 百五十年も戦争をしているんです、恨みなら十二分に買っていますよ。この上どんな不必要な恨みを買うと言うんです?」
> 「……」
>
>
「遊びじゃありません、これは同盟と帝国の戦争なんです。もう少し当事者意識を持って欲しいですね。何故亡命者の私が必死になって戦い、同盟人の貴方が他人事な物言いをするのか、不愉快ですよ」
> 「……」
>
> ヤン准将は反論しなかった。口を閉じ無言でヴァレンシュタイン准将を見ている。その事がヴァレンシュタイン准将を苛立たせたのかもしれない。准将は冷笑を浮かべるとさらに言い募った。
>
>
「亡命者に行き場は無い、利用できるだけ利用すれば良い、その間は高みの見物ですか、良い御身分だ」

いくらヤンでも、よりによってヴァレンシュタインなどに「高みの見物ですか、良い御身分だ」などとは言われたくなかったでしょうねぇ(苦笑)。
何しろ、当のヴァレンシュタイン自身、裁判の場においてさえ「仕事をせずに給料を貰うのは気が引けますが、人殺しをせずに給料を貰えると思えば悪い気持ちはしません。仕事が無い? 大歓迎です。小官には不満など有りません」などとほざいて平然としていられる厚顔無恥な精神と頭の構造の持ち主なのですから(爆)。
そもそもこの発想自体、元々はヤンこそが本家本元なわけなのですから、ヤンはヴァレンシュタインに全く同じことを言い返して自らの正当性を主張しても良かったのではないかと。
それに対してヴァレンシュタインが下手に反論を返したり勤労の美徳など説いたりしようものならば、下手すれば38話の軍法会議で嘘八百を並べていたということになって偽証罪にすら問われかねないのですから(笑)。
まさか今更、「アレは自分自身についてのみ適用されるものであって、他人に関しては情け容赦なく勤労の美徳を説いていきます」などというダブルスタンダード丸出しな弁明をするわけにもいかないでしょうし。
目先の口喧嘩に勝つことしか眼中になく、後先考えることなくその場凌ぎの罵倒にばかり精を出すような奴は、こういう形で常に自分で自分の足を引っ張ることになるわけです。
自分を特別扱いせず、自分と他人で常に同じ論理を適用しても矛盾も問題も生じることのない理論を作るよう心掛けていくだけで、ヴァレンシュタインも今よりはかなりマシなシロモノになるのではないかと思うのですが……。
まあ、ヴァレンシュタインがそんなことを期待できるような手合いなどでないことは、最初から分かりきっている話でしかないのですけどね(苦笑)。

さて、禁断症状を発症したヴァレンシュタインが他人に当り散らすのは、ヤクが切れた麻薬中毒患者が暴れ回ることくらいに当然の話ではあるのですが、ここで愚かにもヴァレンシュタインの肩を持つバカがひとりしゃしゃり出てきました。
「茶坊主」という言葉と概念の生きた見本とすら言えるのではないですかね、こういうのって↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/55/
> 「そこまでだ、ヴァレンシュタイン、言い過ぎだぞ」
> ワイドボーン准将がヴァレンシュタイン准将を窘めた。ヴァレンシュタイン准将が納得していないと思ったのだろう、低い声でもう一度窘めた。
> 「そこまでにしておけ」
>
> ヴァレンシュタイン准将はワイドボーン准将を睨んでいたが“少し席を外します”と言うと艦橋を出て行った。その後を気遣わしげな表情でミハマ少佐が追う。二人の姿が見えなくなるとヤン准将はほっとした表情でワイドボーン准将に話しかけた。
>
> 「有難う、助かったよ」
> 「勘違いするなよ、俺は“言い過ぎだ”と言ったんだ。間違いだと言ったわけじゃない」
> 「……」
>
> 「奴はお前を高く評価している。それなのにお前はその評価に応えていない」
> ワイドボーン准将の口調は決してヤン准将に対して好意的なものではなかった。そしてヤン准将を見る目も厳しい。ヤン准将もそれを感じたのだろう、戸惑うような表情をしている。
>
> 「そうは言ってもね、私はどうも軍人には向いていない」
> 「軍を辞めるつもりか? そんな事が出来るのか? 無責任だぞ、ヤン」
> 「……」
> 准将の視線が更に厳しくなったように感じた。
>
>
「ラインハルト・フォン・ミューゼルは着実に帝国で力を付けつつある。彼の元に人も集まっている、厄介な存在になりつつあるんだ。どうしてそうなった? ヴァンフリートの一時間から目を逸らすつもりか?」
> 「……」
>
> ワイドボーン准将の言葉が続く中シトレ元帥は目を閉じていた。戦闘中に眠るなど有りえない、参謀達の口論を許す事も有りえない。眼をつぶり眠ったふりをすることでワイドボーン准将の言葉を黙認するという事だろうか……。
つまり元帥もワイドボーン准将と同じ事を思っている?
>
>
ヤン准将が顔面を蒼白にしている。ヴァンフリートの一時間、一体何のことだろう……。
>
「お前がヴァレンシュタインより先に軍を辞める事など許されない。それでも辞めたければミューゼルを殺してこい。それがせめてもの奴への礼儀だろう。俺達が奴を苦しめている事を忘れるな」

どう考えてもヴァレンシュタインこそが100%責任を負うべき「伝説の17話」問題を、この期に及んで葵の印籠のごとく振りかざしてヤンを論難する低能バカが未だに存在するとは……。
そもそも、ヴァンフリート星域会戦の全体像って、この時点に至るも未だに全容が解明されてなどいないはずなんですよね。
原作にもこんな記述があるのですし↓

銀英伝外伝3巻 P26下段~P27上段
<三月二四日に入ると、戦場はますます混沌とした様相をしめしはじめた。帝国軍と同盟軍の各部隊が、それぞれに分断しあい、孤立させあって、無秩序に混在し、前線は錯綜して、相対的な位置関係を把握するのが、いちじるしく困難になったのである。完全な戦況解析がおこなわれるまで、二〇年を必要としたほどであった。

当然、ヴァンフリート星域会戦が終結してまだそこまで時間が経っていない55話時点で完全な戦況解析が達成されているわけもなく、「一時間の遅れ」なるものの【正確な実態】はヴァレンシュタインも含めて誰にも分からないものなのです。
「一時間の遅れ」などというシロモノは、原作知識というヴァレンシュタイン以外の何者も確認などできない、傍目から見れば「電波系」としか評しようのないことを根拠にしたヴァレンシュタインの勝手な思い込みに過ぎないのですが。
考察4でも述べたがごとく、ヴァレンシュタインがやらせた救援要請通信の乱発をミュッケンベルガーが早期に受信したことが、「一時間の遅れ」に繋がった主要な原因であるのかもしれないのですし。
それ以前に、そもそも当時のヤンとビュコックの関係を読み誤ってヤンをビュコック艦隊の作戦参謀に配置したのも、ヤンおよび同盟軍上層部にラインハルトの情報を教えなかったことも、全てヴァレンシュタインの責任に帰するべき失態ではありませんか。
そんな錯誤と責任転嫁に満ち溢れたタワゴトをほざくヴァレンシュタインも、そんなシロモノを無条件に受け入れてしまっている周囲の人間も、揃いも揃って頭がおかしいと言わざるをえないところでしょう。
そもそも、「伝説の17話」当時あの場にいなかったワイドボーンが、何故ヴァレンシュタインの自爆発言の内容を正確に知っているのでしょうか?
あの自爆発言は、それ単体でヴァレンシュタインを処刑台へ送り込めるだけの威力を誇っているのですから、シトレやトリューニヒトとの提携が実現した55話時点だと、最高機密扱いか記録破棄が行われていたとしても何ら不思議なものではないはずでしょう。
正式な報告書として挙げられた事案だからその情報は同盟軍の高級士官が全て共有しえるものとして扱われているのであれば、ロボス辺りが38話の軍法会議で普通に利用していても良さそうなものだったのですが。
いくら「神(作者)の奇跡」の産物であるとは言え、あの自爆発言の問題点を誰も理解することができないほどに同盟軍上層部が低能揃いというのは、何とも常識外れなトンデモ設定であると言わざるをえないところなのですけどねぇ(苦笑)。
まあ、ワイドボーンは原作からしてヤンにシミュレーションで無様に敗北した挙句、正攻法にこだわってラインハルトに戦死させられたコチコチの理論バカとして描かれていたわけですから、ワイドボーン個人のこの茶坊主っぷりについてだけ言えば、皮肉にも逆に原作の設定に忠実であるとすら言えるのでしょうけど(爆)。

自らの衝動の赴くままにヤンを罵倒し、お節介な茶坊主に制止させられたヴァレンシュタインは、さすがにヤバいとでも考えたらしい神(作者)が発した遠隔操作用の電波でも受信したのか、いつものヴァレンシュタインには全くもって似つかわしくない反省らしきことを考え始めます。
しかし、一見反省しているような体裁を整えていながら、実際には自己正当化の要素が随所にちりばめられているのが、ヴァレンシュタインらしいと言えばらしいところで↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/56/
> 別に好きで七百万人殺そうとしているわけじゃない。殺す必要が有るから殺すんだ。まあ最終的な目標が和平だというのはヤンは知らないからな、あんな事を言ったんだろう。人を殺すことで和平を求めるか……外道の極み、いやもっとも原始的な解決法と言うべきかな。ヤンじゃなくても顔を顰めるだろう。
>
> 分かってはいるんだ、ヤンがああいう奴だってのは……。ヤンは戦争が嫌いなんじゃない、戦争によって人が死ぬのが嫌いなんだ。だからあんな事を言い出した。でもな、
帝国と同盟じゃ動員兵力だって圧倒的に帝国の方が有利なんだ。そんな状況で敵兵を殺す機会を見逃す……。有り得んだろう、後で苦労するのは同盟だ、そのあたりをまるで考えていない。
>
> 結局他人事だ。つくづく参謀には向いていないよな。誰よりも能力が有るのにその能力を誰かのために積極的に使おうとしない。俺が居るのも良くないのかもしれない。ヤンにしてみれば自分がやらなくても俺がやってくれると思っているんだろう。
>
> 参謀はスタッフだ、スタッフは何人もいる。全てを自分がやる必要は無い。つまり非常勤参謀の誕生だ。ヤンは指揮官にしてトップに据えないと使い道が無い。お前の判断ミスで人が死んだ、そういう立場にならないと本気を出さない。良い悪いじゃない、そういう人間なんだ。どうにもならない。
>
>
あんな事は言いたくなかったんだけどな、俺の気持ちも知らないでと思ったらつい言ってしまった、落ち込むよ……。 “亡命者に行き場は無い、利用できるだけ利用すれば良い、その間は高みの見物ですか、良い御身分だ”
>
> そんな人間じゃない、ヤンはそんな卑しい心は持っていない、卑しいのはそんな事を言う俺の心だ。後で謝るか……、謝るべきだろうな、俺はヤンを汚い言葉で不当に貶めたんだ。ワイドボーンが止めてくれなかったら一体何を言っていたか……。

実のところ、56話の時点でこんなことを語っていること自体が、逆にヴァレンシュタインが全く反省などしていない証拠でもあったりします。
「伝説の17話」の後にもヴァレンシュタインは反省らしきことを語っているのですが、その時と全く同じ構図「ヤンの気質を充分に理解していながら、それでも衝動的に罵倒を投げつけずにいられない」がそっくりそのまま繰り返されているのですから。
ヤンに対する期待感からあえて厳しいことを厳しい口調で述べている、というわけでもないことは、モノローグどころか表面的な態度から見てさえも明らかなのですし。
そもそもヴァレンシュタインは、元々ラインハルトに対抗する必要性から言ってもヤンを必要としていると他ならぬ自分自身で明言しているのですから、そのヤンから好感を抱かれ味方になってもらえるような言動を常に心がけるべきではありませんか。
作中のような態度を披露していては、ヤンでなくても苦手意識を抱かざるをえませんし、それどころか憎悪・敵意すら抱かれても文句は言えないでしょう。
たとえ内心で軽蔑や侮蔑の念を抱いていたとしても、表面的にはおべんちゃらを並べたり相手に同調したりして相手の歓心や好意を獲得し、諫言するにしてもできるだけ相手の反感を買わないようなやり方に努める。
組織人として生き、組織内で味方を得るためには必要不可欠な処世術であるはずなのですけどね、これって。
それをロボスやフォークはむろんのこと、自分の頼もしい味方となりえるはずのヤンやシトレに対してすら全く行おうとせず、感情の赴くままに罵倒しまくる行為を延々と繰り返すヴァレンシュタインが、いくら口先だけで反省の念を述べようが、そんなものに到底信用などできるものではありません。
その後の言動や態度が改善されてこそ本当の反省の成果であると言えるのであって、口先や頭の中だけのその場凌ぎな反省であれば誰にだってできるのですから。
前者が全く伴わない後者のみの反省しかすることがないヴァレンシュタインは、そう遠くない未来にまた同じ轍を踏むことになるのが最初から目に見えているのですが。

「自分が卑しい人間だ」という反省も「自分はヤンやラインハルトに遠く及ばない人間だ」と同様に、口先だけで実体も信憑性も全く伴っていないシロモノであろうことは一目瞭然なのですし。

そして、この上っ面だけの反省の弁以上に笑止なのは、「別に好きで七百万人殺そうとしているわけじゃない。殺す必要が有るから殺すんだ」などと平然とほざくヴァレンシュタインのダブルスタンダードぶりにあります。
そんなことを言い出したら、「本編」でヴァレンシュタインが散々非難していたラインハルトの焦土作戦やヴェスターラントの虐殺黙認などについても、「勝利と巨大な犠牲を回避するための必要な最小限度の犠牲だった」の一言で終わってしまうではありませんか。
特にオーベルシュタインなどは、まさに原作の銀英伝の中でそう言っていたのですし。

全く同じことを自分がやるのはOKなのに他人がやるのはNGって、そういうダブルスタンダードな主張は「自分だけを特別扱いしている」という点で醜悪極まりないシロモノでしかないのですが。
それにヴァレンシュタインの思考基準では、戦争で親兄弟や親戚・知り合いなどが殺されても「有能な敵」を恨むべきではなく、そんなことをするような人間はシスコンやファザコン等のコンプレックス持ちかつ「思い込みが激しくて感情の制御が出来ないガキ」でしかないのでしょう?
そんな連中をいくら殺したところで、別に罪悪感に苛まれる必要なんてどこにもないではありませんか(笑)。
むしろ、そいつらのコンプレックスを断ち切ってやったことに感謝すらされて然るべき、というのがヴァレンシュタインの考えでもあるわけですし(爆)。
というか、ヴァレンシュタインが本当に虐殺と犠牲を回避したいのであれば、それこそ今回の考察の冒頭で私が述べたように「ラインハルトひとりを暗殺する」という手段を使っても良いはずなのですけどね。
すくなくとも、戦場で数百万単位の敵方の軍人を殺すよりは、数でも質でも犠牲ははるかに少なくて済むのですから。
それをせず、「不必要に」戦場での虐殺と犠牲を出すことにこだわるヴァレンシュタインは、すくなくとも自分の罪にある程度自覚的ではある原作のラインハルトやオーベルシュタインなど比べ物にならないレベルで、「大量虐殺者」としての心性と資質を救いようのないほどに兼ね備えている存在であるとすら言えるのではないですかねぇ。

ヴァレンシュタインに本当に反省する気などない事実や自己客観視の欠如ぶりは、以下の2つのやり取りの中でも充分過ぎるほどに窺い知ることができます↓

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/56/
> 「そうじゃありません、彼女が心配しているのはヤン准将の事です。准将がヤン准将を何時か排斥するのではないかと心配しているんです。怖がられていますよ、ヴァレンシュタイン准将。准将がそうやって自分を抑えてしまうから……」
>
> 馬鹿馬鹿しい話だ、何で俺がヤンを排斥する。ヤンの事が好きだからと言って俺を敵視するのは止めて欲しいよ。
対ラインハルトの切り札を自分で捨てる馬鹿が何処にいる。

鏡を見てみたらどうです?
「対ラインハルトの切り札を自分で捨てる馬鹿」が常に目の前に映し出されていますから(爆)。
それに、ここで問題なのは「自分がどう思っているか」ではなく「他人から自分がどのような目で見られているか」でしょうに。
「本編」でラインハルト&キルヒアイスを死に追いやり、「亡命編」でもヤンやシトレに対して被害妄想に満ちた憎悪を抱き、何よりもアレだけ好き勝手に振る舞って処罰されることすらもないヴァレンシュタインは、他人から「怖い」「この人から自分は憎まれている」と見られて当然なのですから。
自分の頭の中だけでどれだけ相手を絶賛していようが、それを態度や言葉に表わさなければ、相手が自分の考えを正しく理解したりするはずなどないでしょうに。
前世と今世を含めればそれなりの人生経験もあるでしょうに、そんな当たり前の常識すらも全く身についていないヴァレンシュタインは、まさに「思い込みが激しくて感情の制御が出来ないガキ」以外の何物でもないし、反省心も皆無であると言わざるをえないところなのですけどね。

http://ncode.syosetu.com/n5722ba/56/
> 「そんな事はしませんよ、ミューゼル中将と互角に戦える人物が同盟にいるとすればヤン准将だけです。私はミューゼル中将にもヤン准将にも及びません。私はヤン准将の力を必要としているんです」
> 俺の言葉にサアヤは可笑しそうに笑った。
> 「准将だけです、そんな事を言うのは。他の人は准将ならミューゼル中将に勝てると思っています」
>
> 阿呆が、
俺は天才じゃない、原作知識を上手く利用しているだけだ。どいつもこいつも何も分かっていない、俺は独創性なんぞ欠片もない凡才だという事は誰よりも自分が一番良く分かっている。

「俺は天才じゃない」以外は全部過大&自画自賛もいいところですね、ヴァレンシュタインの自己評価は(笑)。
ヴァレンシュタインが本当に「原作知識を上手く利用している」のであれば、ヴァンフリート星域会戦でラインハルトを殺すこともできたでしょうし、それ以前にそもそもラインハルトと対決する事態すら避けることが可能だったはずでしょう。
むしろ、あまりにも原作知識の活用が稚拙過ぎて、読者としてはイライラさせられることもしばしばだったりするのですが。
そして何よりもヴァレンシュタインは、「独創性なんぞ欠片もない凡才」ではなく「思い込みが激しくて感情の制御が出来ないガキ同然の心性とメンタリティしか持ちえない、厚顔無恥かつ被害妄想狂患者の狂人」というのが正しい評価でしょうに(爆)。
ヴァレンシュタインほどに「自分というものが全く分かっていない人間」というのも、そうそういるものではないのですけどねぇ(苦笑)。
ただ、極めて悪い意味で思考回路と感情抑制機能がイカれている頭をしているがために、周囲からは逆に物珍しい珍獣的な希少価値を伴って見えることはあるわけですが。
それが他者から、ある種の「独創性」として評価されることも当然あるでしょうね。
もっとも、そんなシロモノを持つことなど、私であれば絶対に願い下げですけど(苦笑)。

ところでヴァレンシュタインは、56話の冒頭で「帝国と同盟じゃ動員兵力だって圧倒的に帝国の方が有利なんだ。そんな状況で敵兵を殺す機会を見逃す……。有り得んだろう、後で苦労するのは同盟だ、そのあたりをまるで考えていない」などとヤンの態度を非難しております。
では、その舌の根も乾かぬうちに、第7次イゼルローン要塞攻防戦の締めとしてヴァレンシュタインが取った選択肢は一体何だったのか?
次回の考察は、その部分も含めたヴァレンシュタインとラインハルトの会談内容をメインに語ってみたいと思います。

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