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2013年03月の記事は以下のとおりです。

銀英伝舞台版で二転三転するキャスト問題

銀英伝舞台版第三章「内乱」が、3月31日から4月13日まで東京の青山劇場で公演されています。
原作2巻の救国軍事会議クーデターをメインに扱っている今回の舞台、さて肝心の出来は如何ほどのものになるのでしょうか?

銀英伝舞台版は、外伝舞台における主要登場人物(特にラインハルト役の)キャストの二転三転ぶりが悪い意味で話題になっていますからねぇ。
そりゃ、本伝舞台に比べれば規模が小さな外伝舞台で大物俳優を使うわけにはいかないのでしょうけど、ここ1年程はそれが大きな仇となって、舞台全体の評価まで大きく下げる惨状を呈している始末です。
本伝舞台レベルの公演を頻繁に繰り広げるような経済的余裕はさすがにないのでしょうし、かといって1年に1度の公演では継続的な宣伝という観点から言ってもマズいのでしょうから、規模が小さい外伝舞台もそれなりの重要性はあるのでしょうけど。
当初から本伝とは別に外伝舞台もこなす予定だったのであれば、本伝・外伝を問わず、一貫して同じ配役で舞台公演ができるようなキャスト構成を最初から考えておくべきだったのではないかぁ、とは外野の視点から見る限りでは思わずにいられないところなのですが。
一定の話題性や集客が必要だから本伝舞台で大物俳優を使う、という戦略自体は充分に妥当なものではあるのでしょうけど、外伝舞台のみならず本伝舞台でさえもキャストが二転三転するのではねぇ。

銀英伝舞台版も、既に第三章まで展開しているのですから、本伝舞台ももう原作10巻のラストまで突き進むつもりではあるのでしょう。
しかし、そこまで舞台を続けるのであれば、キャストの二転三転問題はそろそろ解消させないと、今後の舞台にも暗い影を落とすことになりかねないのではないかと。
本伝と外伝でどうしても一貫性のあるキャスト構成が無理なのであれば、いっそどちらかを捨てる、という選択肢も真剣に検討すべきなのではないですかねぇ。

民主党の十八番・国会でのクイズ問題

自民党に政権を奪回されて以降、凋落の一途を辿っている民主党は、この期に及んでもなお国会でクイズ問題を披露することに忙しいようです。
かつての麻生政権時代に漢字テストを披露して悦に入った時代が忘れられないのでしょうかねぇ↓

http://megalodon.jp/2013-0330-2138-55/news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000002787.html
>  参議院の予算委員会で、憲法を巡る質疑に安倍総理大臣が思わず怒りをあらわにしました。
>
>  
民主党・小西洋之参院議員:「総理は日本国憲法において、包括的な人権保障を定めた条文、何条か知らないという理解でよろしいですか?」
>  安倍総理大臣:「これはすみませんけどね、大学の講義ではないんですよ」
>  
民主党・小西洋之参院議員:「包括的かつ総合的に定めた条文は何条ですか?日本国憲法何条ですか?」
>  安倍総理大臣:「まずですね、あまり人を指すのはやめたほうがいいですよ」
>  憲法クイズのような質問にいら立ちをあらわにした安倍総理に対して、さらに批判の矢が飛びました。
>  
生活の党・森ゆうこ参院議員:「総理のご答弁、慎重になさるべきであるとご注意申し上げたい。何かございましたら」
>  安倍総理大臣:「ありません」
>  
生活の党・森ゆうこ参院議員:「そういう態度が不遜だと言っているんです」

しかも、この小西なる民主党議員は、アイデアとしても二番煎じでしかない挙げ足取りな己の質疑を恥じ入るどころか、自身のブログで大々的に誇示すらしている始末。
オマケに「憲法を学ぶ学生なら誰でも知ってる」と称して、タカハシカズヒロなる架空の憲法学者の名前を得意満面に掲げるありさまですし↓

http://megalodon.jp/2013-0330-2342-56/blogs.yahoo.co.jp/konishi_hiroyuki_524/17548507.html

国会で憲法の条文暗記クイズなんてシロモノを披露していながら、自身は憲法学者の名前を間違うという失態を演じてなお、ここまでドヤ顔できる厚顔な神経は相当なものがあります。
この辺りは「さすが民主党!」とでも褒めるべきところなのでしょうか(苦笑)。
いっそ、国会議員なんか辞めて党ごと吉本新喜劇にでも転職し芸風を磨けば、少しは国民から「笑いのネタ」として認められもするでしょうにねぇ(爆)。
この調子では、次の参院選でも民主党は壊滅間違いなしですね。
もちろん、大多数の日本国民に民主党が貢献できることと言えば、自身の滅亡以外にはありえないわけなのですが。

タイタニア4巻の2013年3月24日時点の執筆状況

https://twitter.com/wrightstaff/status/316013727931592704
<『タイタニア4』の原稿受け渡し中です。今回は50枚。乗ってきました。>

前回の原稿受け渡しから半月弱で50枚の原稿執筆というのは、一般的な作家の執筆速度としてはどんなものなのでしょうかねぇ。
他の作家など及びもつかない遅筆を誇る田中芳樹的には、確かに「早い」と言えるのかもしれませんが(苦笑)。
分量的に見ると、現在執筆中らしい4章全てが終わったわけではなく、4章の途中経過といったところになるのでしょうか?
原稿50枚と言っても、ノベルズに直すと20ページ行くかどうかといったところになるでしょうし。

ところで、過去に田中芳樹は、創竜伝文庫本の座談会などで、タイタニアの続巻を書いていることをほのめかす文章を披露していた経歴があるのですが、その際に執筆していたであろう原稿なり文章なりは全く活用していないのでしょうか?
らいとすたっふ公式のツイートを見る限りでは、どうも田中芳樹は最初から執筆を始めているみたいですし、過去に執筆していた原稿があれば、執筆スタート時点である程度まとまった原稿の受け渡しも可能だったはずなのですが。
過去の原稿やアイデア自体が、すくなくとも田中芳樹的には気に入らなかったり採用に値しなかったりでボツになっているのかもしれませんが、ならば執筆をほのめかすような発言なんて自著でしなければ良いのに、とは思わずにいられないですね。
過去にそういうことを繰り返していたからこそ、4年近くも前のタイタニア4巻執筆宣言でも、実際に執筆を始めるまではまるで信用されなかったのですし。
まあ、3年以上も経過してようやく執筆開始、という時点で既に信用も何もあったものではないのですが(爆)。

ところで、銀英伝舞台版第3章「内乱」の舞台公演が、いよいよ2013年3月31日に初日を迎えることになりますね。
ストーリー的には、銀英伝2巻の救国軍事会議クーデターをメインに扱ったものとなるみたいですが。
外伝舞台以降、ラインハルト役のキャストが二転三転してまるで落ち着かなくなった銀英伝舞台版ですが、今後も続くであろう続編は果たして大丈夫なのでしょうかね?
これでヤン役まで入れ替わり立ち代わりキャストが変更されまくったりしたら、いよいよもって舞台公演それ自体の危機的状況に直面することにもなりかねないですし。
配役が変わるだけでキャラクターのイメージがガラリと変わってしまうのですし、メインの配役は完全に固定して欲しいものなのですが……。

次世代無線LAN規格「IEEE802.11ac」の解禁がもたらす影響

次世代の無線LAN規格「IEEE802.11ac」が電波法改正で解禁となり、無線LANの世界が新たな時代を迎えようとしています↓

http://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1303/27/news072.html
>  NECアクセステクニカは3月27日、最大1.3Gbpsでの通信に対応するIEEE802.11ac(Draft)準拠の無線LANルータ新モデル「AtermWG1800HP」など、全6モデルを発表、2013年4月初旬に発売する。電波法改正により国内での802.11acが解禁となった。
>
>  ラインアップは最大1.3Gbpsでの3×3 MIMO通信に対応する個人向けハイエンドモデル「AtermWG1800HP(PA-WG1800HP)」、WG1800HPを2台セットにした「AtermWG1800HPイーサネットコンバータセット(PA-WG1800HP/E)」、最大867Mbps通信(2×2 MIMO)に対応する11acスタンダードモデル「AtermWG1400HP(PA-WG1400HP)」、同機種の2台セット「AtermWG1400HPイーサネットコンバータセット(PA-WG1400HP/E)」、WG1400HPと11ac対応スティック型USB無線LAN子機をセットにした「AtermWG1400HP USBスティックセット(PA-WG1400HP/U)」、11ac対応スティック型USB無線LAN子機「AtermWL900U(PA-WL900U)」の前6モデル。
>
>  価格はオープン、発売時実売価格はAtermWG1800HPが1万9000円前後、WG1800HPイーサネットコンバータセットが3万5000円前後、AtermWG1400HPが1万6000円前後、WG1400HPイーサネットコンバータセットが2万9000円前後、WG1400HP USBスティックセットが2万3000円前後、AtermWL900Uが9000円前後と予想される。
>
>  最大ポイントは次世代無線LAN規格「IEEE802.11ac(Draft)」への対応だ。
802.11acは5GHz帯のみを用い、規格理論値最大約7Gbps。第一世代では実効スループットで1Gbpsクラスの到達を想定し、これまでの802.11nより「高速」「広エリア」で、4Kクラスの高解像度映像の伝送なども実用範囲で利用できるパフォーマンスを特長とする。チャンネルボンディングによる周波数帯域の拡大(最大160MHz幅)、通信の多重化(最大8×8 MIMO)、変調方式の多値化(256QAM)、フレームアグリゲーション(隣り合うチャンネル/送信データを束ね、フレーム単位で一度に送れるデータ数を増やす手法。データフレームサイズは11n比で16倍となる1048757バイト)などにより高速化を実現する。

現行主流の無線LANでは、実質的な速度が非常に低い上、しかも「10メートル以内レベルの近距離での使用限定」という大きな制約があり、これが有線に後れを取る大きな要因となっています。
それに対し、次世代無線LAN規格「IEEE802.11ac」では、かなりの遠距離でも高速かつ安定して使用可能という利点があります。
かく言う私自身、私も、試験的ながら「IEEE802.11ac」の技術が搭載された無線LANルータ「WZR-D1100H」を使用しているのですが、安定性という点ではPLCにすら勝る優れ物です。
私の場合は2Fから1Fという遠距離接続をやらざるをえないため、速度という点ではPLCとほぼ同じ程度でしかないのですが、これで速度も向上するとなれば相当なまでに使い勝手の良い機器となるであろうことは確実です。
同じ部屋の中限定であれば、通信速度の向上も普通に見込めるのですし。
これまで有線と比較して速度が遅い上に不安定だった無線LANが積極活用できるようになれば、家庭のみならず企業でも使用頻度は高まるのではないでしょうか?
特に、10台程度のパソコン使用がメインの中小企業だと、ギガコース使用&有線も可能な無線LANルータの導入というコンボは大きな威力を発揮しそうです。

次世代の無線LAN規格「IEEE802.11ac」が電波法改正で解禁となり、無線LANの世界が新たな時代を迎えようとしています。
今回の規格登場で、ネット接続のあり方も大きく変わってくるかもしれませんね。

薬師寺シリーズに実写化のオファー?

https://twitter.com/adachi_hiro/status/315614174199808001
<先日、ある方に「薬師寺涼子は実写映像化しないのですか?」と聞かれた。「いま実写化すると、お涼は剛力さんになりそうで」と言ったら、「あー、それはありますね」と真顔で頷かれたので困った。そこは笑うところだから。>

https://twitter.com/adachi_hiro/status/315631495547076609
<@fukurokujyu0207 剛力さんは剛力さんで魅力的な方なんですけどね。内緒ですけど、ずいぶん前に講談社に「この子は薬師寺をやるために生まれてきたような子なんですよ」との売り込みがあったそうです。オトナの事情でお断りしてしまったようなのですが、写真だけでも見たかったです。>

せっかく実写化のオファーが来たのであれば素直に便乗しておけば良かろうに、何故わざわざ話を棒に振りますかねぇ、講談社も。
薬師寺シリーズなんて、実写化しにくい田中作品の中では比較的安い製作費で実写化しやすい部類に入るでしょうに。
「アンフェア」や「ストロベリーナイト」シリーズなどのように、女刑事が主人公の作品なんて、昨今ではさして珍しくもないのですし。
基本的に1話完結方式の薬師寺シリーズは「話の区切り」がつけやすく、その点でも実写化にはおあつらえ向きなわけで。
作品の品質だけで見れば、パクリ元たる極楽大作戦やスレイヤーズなどの方がはるかに優れているのですが、こちらは「どこら辺を実写化すべきなのか?」という問題が常に付き纏いますからねぇ。
シリーズ化するほどの人気が獲得できる保証もない以上、「いつでも終わらせられる」形にするのは、特に実写化の際には必須事項になるわけで。
もちろん、今更言うまでもなく原作からしてゴミもいいところな薬師寺シリーズは、そのまま原作を忠実に再現すれば大コケするのは確実なのですから、ストーリーなどは原型を留めないほどに改変する必要性が生じるであろうことは間違いないのですが(爆)。

薬師寺シリーズ以外で比較的安価に実写化製作が可能な田中作品と言えば、「晴れた空から突然に…」くらいしかないですからねぇ。
他の作品は、ファンタジー要素が強すぎたり、軍隊同士の衝突などの描写が頻発したりする等の問題から、下手すればハリウッド映画並の製作費や大量の配役動員が要求されるようなシロモノばかりなのですし。
銀英伝が舞台化したのだって誰も予想できなかったくらいなのですし、実写化というのは舞台化以上にハードルが高いのですからねぇ。
講談社が薬師寺シリーズの実写化オファー話を蹴った「大人の事情」とやらの実態が如何なるものだったのか、少々気になる話ではあります。

映画「相棒シリーズ X DAY」感想

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映画「相棒シリーズ X DAY」観に行ってきました。
人気テレビドラマ「相棒」シリーズのスピンオフ作品で、同シリーズの脇役である警視庁刑事部捜査一課の伊丹憲一と、警視庁サイバー犯罪対策課の岩月彬をコンビが主人公の物語となります。
今作では休暇でイギリスにいるらしい杉下右京や、杉下右京の元相棒である神戸尊もチョイ役で出演していますが、本当にちょこっとだけしか登場していないですね(苦笑)。
私の「相棒」シリーズの映画観賞歴は、2010年末に公開された「相棒-劇場版Ⅱ- 警視庁占拠!特命係の一番長い夜」に続き今作で2作目。
あの頃と同じく、TVシリーズの「相棒」は相変わらずほとんど観賞していなかったりするのですけどね(^^;;)。

東京のとあるビルの下で、燃やされた数十枚の1万円札と共に屋上から落下したと思しき男性の遺体が見つかり、警察が捜査に入るところから物語は始まります。
今作限定ながらも晴れて脇役から主役へと出世することになった警視庁刑事部捜査一課の伊丹憲一は、現場検証の最中、ひとりの来訪者を迎えることとなります。
その人物、警視庁生活安全部サイバー犯罪対策課の岩月彬は、今回の事件で遺体となった中山雄吾が、実は岩月彬が一週間かけて追跡していた不正アクセス事件の容疑者であったことを告げます。
そこまで追跡していたのだからさぞかし遺体に関心があるのかと思いきや、岩月彬は「殺人事件は自分の管轄外だから」と、これで自分の仕事は終わったとばかりにその場を立ち去ろうとします。
その態度に腹を立てた伊丹憲一と、自分の職分にのみ忠実な岩月彬は、以後、顔を合わせる度に皮肉の応酬を交わすほどの犬猿の仲となってしまいます。
中山雄吾は、死亡する直前にあるデータをネット上にばら撒いており、そのデータは何者かによって削除依頼がプロバイダ管理者等によって頻繁に出されていました。
元々中山雄吾は東京明和銀行のシステムエンジニアであったことから、削除依頼は東京明和銀行の上司が出したのではないかと伊丹憲一は睨みます。
そして伊丹憲一は、東京明和銀行の上司・朽木貞義と面談する際、あくまでも不正アクセス事件のみを追う岩月彬と偶然鉢合わせすることになります。
2人は朽木貞義から、ネット上に流出したとされるデータを入手。
ところがここでも、どちらがデータ調査の主導権を握るかを巡り、2人は対立することになります。
結局、その場は岩月彬が伊丹憲一を完全無視してデータを持ち去るという形で決着するのですが。
さらに2人にとって災難は続き、その後、警視庁の捜査本部で二人一組のチームを編成することになった際、刑事部と生活安全部でそれぞれ1人ずつ余りが生じたことから、2人は全く異なる所轄でありながら上層部の意向によってコンビを組まされる事態となってしまうのでした。
考え方も行動原理もまるで正反対な2人は、互いに苦虫を噛み潰すような表情を浮かべながらも、捜査に乗り出していくことになるのですが……。

映画「相棒シリーズ X DAY」は、昨今の金融問題が大きなテーマとなっている作品です。
日本政府は数百兆~千兆円規模の借金を抱えているとか、少子高齢化で経済が衰退していくとか、今やすっかり決まり文句と化した感すらあるプロパガンダが展開されています。
作中でも、財務省関係者や政治家達が、「日本国債は暴落する」だの「日本経済は破綻する」だのといったスローガンを堂々とのたまい、しかもそれが具現化する日を「XDay」と呼んでいる始末です。
ところが現実には、当の財務省自身が、とにかく日本の格付けを下げる方向にばかり動く外国の格付け会社に対し、こんな意見書要旨を出している過去があったりするんですよね↓

http://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/rating/p140430.htm
> 1.貴社による日本国債の格付けについては、当方としては日本経済の強固なファンダメンタルズを考えると既に低過ぎ、更なる格下げは根拠を欠くと考えている。貴社の格付け判定は、従来より定性的な説明が大宗である一方、客観的な基準を欠き、これは、格付けの信頼性にも関わる大きな問題と考えている。
>  従って、以下の諸点に関し、貴社の考え方を具体的・定量的に明らかにされたい。
>
> (1)日・米など先進国の
自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。
>
> (2)格付けは財政状態のみならず、広い経済全体の文脈、特に経済のファンダメンタルズを考慮し、総合的に判断されるべきである。
>  例えば、以下の要素をどのように評価しているのか。
> ・ マクロ的に見れば、
日本は世界最大の貯蓄超過国
> ・ その結果、
国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に消化されている
> ・ 日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も世界最高
>
> (3)各国間の格付けの整合性に疑問。次のような例はどのように説明されるのか。
> ・ 一人当たりのGDPが日本の1/3でかつ大きな経常赤字国でも、日本より格付けが高い国がある。
> ・ 1976年のポンド危機とIMF借入れの僅か2年後(1978年)に発行された英国の外債や双子の赤字の持続性が疑問視された1980年代半ばの米国債はAAA格を維持した。
> ・ 日本国債がシングルAに格下げされれば、日本より経済のファンダメンタルズではるかに格差のある新興市場国と同格付けとなる。
>
> 2.以上の疑問の提示は、日本政府が改革について真剣ではないということでは全くない。政府は実際、財政構造改革をはじめとする各般の構造改革を真摯に遂行している。同時に、格付けについて、市場はより客観性・透明性の高い方法論や基準を必要としている。

この意見書要旨は2002年に出されたものなのですが、リーマン・ショック後でさえも日本の国債は買い手がつかないどころか、逆にますます買い手超過・金利低下が続くありさま。
日本経済の実態は、とても作中で言われているような「XDay」なるものが出現するような状況からは程遠いものがあるという事実を、他ならぬ財務省自身が主張しているわけです。
にもかかわらず、作中の警察幹部や財務省関係者達が「XDay」なるものの脅威を声高に説いた挙句、それに関連して「日本人は複雑な真実よりも分かりやすいウソを信じる」などとのたまうに至っては、一種のコメディとして大いに笑えるものがありますね。
まさか、上記引用の意見書要旨が「分かりやすいウソ」なわけがないのですし、そもそもそんなウソを、財務省が、しかも日本国内ではなく外国の格付け会社相手につかなければならない理由自体が全くありません。
日本国内向けのプロパガンダと違い、外国向けの意見書要旨というのは、下手すれば外交問題にまで発展するレベルのリスクがあるのですから当然のことです。
となると、作中で大いに謳われている「XDay」というもの自体が、実は財務省が考える壮大なまでのウソであり、作中の登場人物達はまんまとそれに騙されている、という全く逆の構図も実は立派に成立しえるわけですね。
財務省が「XDay」のような日本経済の破綻を訴えるのには大きな理由があります。
それは第一に「増税がしたい」からであり、第二に「天下り先が欲しい」からです。
「このままでは日本経済は破綻する、【だから】増税をしなければならない」というのは、増税反対の声をかき消すのには充分な説得力を持ちえます。
1998年の消費税増税や、民主党政権下で決定された三党合意の消費増税などは、まさにこの論法に基づいて決められたものですし、だからこそ彼らは「日本経済の破綻【という名の葵の印籠】」を、増税反対の声を抑えるために何かと振りかざすわけです。
そして一方、増税が決定されれば、財務省はその権限を大いに駆使することで、特定の組織に対して「お前のところの税率は低めにしておいてやるから天下りさせろ」と主張することも可能となるわけです。
消費税の増税問題では、日用品や出版物などに対する軽減税率の適用が何かと話題になっていますが、これもその一環だったりするわけで。
財務省にとっての「日本経済の破綻」というスローガンは、自分達の利益を通すのに非常に都合の良い「分かりやすいウソ」である、というわけです。
そういう観点から見ると、作中における「XDay」というのは、作品の意図とは全く異なるもうひとつの意味を持ってくることになりますね。
「日本経済は安泰だ」という「分かりやすいウソ」に騙される人間を嘲笑っている政財界の大物達が、「日本経済は破綻する」という「分かりやすいウソ」に騙されていることに気づかない、などという「複雑な真実」の構図が現出することになるわけで。
まあ、映画の製作者達がそこまでの意図やメッセージを込める形で今作を製作したのかと問われると、私も大いに疑問符をつけざるをえないところではあるのですけど。
作中の登場人物達は、杉下右京や岩月彬も含め、「XDayは実際に起こりえる」という前提を当然のものと考えた上で「XDay」について語っていたりするわけですからねぇ(-_-;;)。

「XDay」関連以外の作中の展開に目を向けてみると、今作の主人公である伊丹憲一と岩月彬が、顔を合わせる度に皮肉の応酬を交わしながらも、次第に分かりあっていく過程が、王道的な展開ながらも良かったですね。
当初はやたら淡々としていた岩月彬も、物語終盤では意外にも犯罪を追う熱血漢と化していましたし。
このコンビ、映画後も続くことになるのでしょうかねぇ。

刑事物や「相棒」シリーズのファンであれば、やはり今作はオススメの一品なのではないかと。

映画「だいじょうぶ3組」感想

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映画「だいじょうぶ3組」観に行ってきました。
「五体不満足」の著書で知られるベストセラー作家・乙武洋匡(おとたけひろただ)の同名小説を原作とし、さらに同作品に登場する「生まれつき手足のない新任教師」を、原作者自ら出演&熱演する人間ドラマ作品です。

東京の郊外にある松浦西小学校。
新学期を迎えるとある年の4月、5年3組に二人一組の教師が赴任してきました。
ひとりは、生まれつき両手足がないという先天性四肢切断を持ち、松浦西小学校5年3組を担当することになった新任教師・赤尾慎之介。
もうひとりは、一応今作の主人公で、教育委員会から派遣した赤尾慎之介のサポート役の補助職員・白石優作。
2人は仕事仲間であると同時に幼馴染の関係にもあり、互いにタメ口で語り合う仲でもあります。
新学期初日から遅刻してきたらしい2人は、赤尾慎之介の手足のない身体に驚きの表情を浮かべる5年3組28名の生徒達に挨拶した後、職員室で早々に遅刻について叱られることになってしまいます。
さらに5年1組を受け持つ担任教師・青柳秀子には、「もっと教師としての自覚を持ってください」などとキツい調子で釘を指される始末。
しかし、赤尾慎之介はそれでもメゲることはなく、担任就任早々に今度は桜の大木の下にホワイトボードを持ち出し、5年3組の生徒一同を集めてホームルームの授業をおっぱじめたりするのでした。
当然、青柳秀子はカンカンに怒って補助職員の白石優作に詰め寄り、白石優作は言い訳と謝罪に四苦八苦することになるのですが(苦笑)。

それからしばらく経過したある日。
5年3組の生徒のひとりである「ブーちゃん」こと山部幸二の上履きが紛失するという事件が発生します。
報告を受けた赤尾慎之介と白石優作は、生徒全員に上履きを探させると共に自分も一緒に学校中を探し回るのですが、紛失した上履きは全く見つかりません。
そんな中、5年3組では、上履きを隠した人間がクラス内にいるのではないかという疑惑が持ち上がります。
5年3組はクラスメイト同士が掴み合いを始めるほどに騒然となりますが、赤尾慎之介の取りなしで何とかその場は沈静化し、事件はとりあえず棚上げにされます。
その後、運動会や遠足など、様々なイベントを迎えることになる5年3組の面々達。
そして赤尾慎之介は、その中でクラスメイト達の信奉を少しずつ獲得していくことになるのですが……。

映画「だいじょうぶ3組」では、原作者たる乙武洋匡が自ら演じる「生まれつき手足のない新任教師」こと赤尾慎之介を補助する、TOKIOの国分太一が扮する教育委員会の職員・白石優作が主人公ということになっています。
ところが実際には、作中における登場頻度や露出度は、どう見ても赤尾慎之介の方が圧倒的に多く、逆に白石優作のそれは、むしろ全体的に見てもかなり少ない部類に入るようにすら思われるくらいなんですよね。
かく言う私自身、エンドロールで国分太一の名前が一番最初に出てくるのを見るまでは、てっきり乙武洋匡の方が主演だとばかり考えていたくらいでしたし。
原作自体が乙武洋匡の自伝ということもあり、当然主演もそちらだろうと考えるのが自然だったのですから、これはちょっとした驚きでしたね。
まあ実質的には、国分太一と乙武洋匡の2人が主演ということではあったのでしょうけど。

その国分太一が演じる白石優作は、かつては作中の赤尾慎之介と同じく教師だったものの、昨今話題になっているモンスタークレーマーへの対応に忙殺された挙句、教師職から教育委員会へ異動となって挫折を味わったという過去を持っています。
赤尾慎之介の補助職員になったのも、幼馴染の要望を叶えると同時に、かつてのように子供達と再び向き合いたいからという理由もあったのだそうで。
そんな彼にとって、生徒達の信頼を次々と勝ち取っていく赤尾慎之介の存在は、さぞかし眩しいものに見えたことでしょうね。
特に物語後半では、登山遠足のために同行できない赤尾慎之介と一緒に遠足に行くべく、5年3組の生徒達が一丸となって校長に陳情するという光景まで現出しているわけですし。
並の教師どころか、それなりに慕われている教師でさえ、生徒をそこまで駆り立ているのは至難の業もいいところでしょう。
そりゃ白石優作も、赤尾慎之介相手にある種の尊敬と敗北感も覚えようというものです。
それが、登山遠足で生徒と昼食を兼ねた休憩をしていた際に現れたのでしょうね。
もちろん、当の赤尾慎之介は赤尾慎之介で、障害者としての悩みや葛藤もあれば、健常者に対して越えられない壁のようなコンプレックスを常に抱いていたりもするのですが。

今作の大きな特徴のひとつは、手足がない赤尾慎之介が、普段どのように日常生活を送っているのかがきっちり描かれている点ですね。
普段どうやって食事をしているのかとか、手紙に文字を書く様子とか、電動車椅子なしで階段を上る様とか、作中の赤尾慎之介というより原作者の乙武洋匡が普段やっていることが再現されているような感じでした。
物語序盤でも、生徒達が興味津々で赤尾慎之介が食事をする様に注目しているシーンがありましたが、観客にしてもそれは同じ心境だったことでしょう。
こういう描写が生々しく描かれている作品というのは、映画に限らず巷のエンターテイメント媒体でもそうそうあるものではないので、その点は結構新鮮な部分がありましたね。
この辺りは、さすが「五体不満足」の著者である乙武洋匡ならではの体当たりな演技が光っていると言えるでしょうか。
一方で、白石優作の恋人らしい坂本美由紀は、正直作中での存在意義が今ひとつ分かりにくい存在でした。
いくら白石優作が忙しそうにしているからって、変に遠慮して自己主張を控えた挙句、自分で勝手に不満を爆発させている様は、見ていてもどかしいものがあった上に「面倒な女だな」と考えるのに充分なものがありましたし。
彼女の言動から垣間見えるその心情は「もっと私のことを見て!」というものではあったのでしょうけど、別に白石優作だって坂本美由紀に全く構わなかったわけではなく、彼的にはむしろ誠実に向き合っていた部類に入るでしょうに。
相手が浮気をしているとか、なおざりな態度に終始しているとか言った事情でもあるのならともかく、そうではないのに不満を鬱積させるというのはどうにも理解に苦しむものがありますね。
映画ではラストで強引に上手く行きそうな雰囲気に収めようとしていましたが、あの後の2人の関係って果たしてどうなるのでしょうかね?

元々が自伝ということもあり、作中の物語は淡々とした調子で進行していくため、アクションシーンや手に汗握るスリリングな展開等の派手な描写は一切存在しない作品です。
しかし、教師・生徒それぞれが抱く葛藤や心の交流など、人間ドラマ的な要素はそれなりに「魅せる」ものがある映画でもあります。
そういったものが好きな方と、あとは作中の小学校の風景を見て昔を懐かしみたい方にはオススメの作品であると言えるでしょうか。

映画「ジャックと天空の巨人(3D版)」感想

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映画「ジャックと天空の巨人」観に行ってきました。
イギリスの有名な童話「ジャックと豆の木」および「Jack the Giant Killer」をベースに、天空に浮かぶ島に生息する巨人と人間の戦いを描いた冒険ファンタジー作品。
今作は2D・3Dの同時上映なのですが、観賞可能な時間帯には3D版しか公開されていなかったため、今回は泣く泣く3D日本語吹替版での観賞となりました(T_T)。
カネがかかるだけの3D版なんて、できることなら観賞したくなどないのですけどねぇ、私は。
相変わらず、3Dについては悪戯に目が疲れるだけのどうでも良い出来でしかなかったですし。

物語の冒頭は、母親を亡くして父子家庭で育っている幼いジャックが、父親にせがんで「天空の巨人の伝説」を読んでもらうところから始まります。
同じ頃、王城ではこれまた王妃にせがんで同じ伝説を呼んでもらっているジャックと同年輩のイザベラ王女の姿がありました。
父親と王妃が共に読んでいた「天空の巨人の伝説」の内容は、地上で闇の魔力?を持つ種から巨大なツタが天へ向かって伸びていき、そこから巨人がやってくるというもの。
人間達は巨人と凄惨な戦いを繰り広げたものの、図体に物を言わせた巨人達の膂力は圧倒的であり、人間側は一方的に蹂躙されていました。
しかし人間側は一計を案じ、ひとりの巨人を殺して手にした心臓を元に、ひとつの冠を作り上げます。
巨人達はその冠を持つ者の命令には絶対的な服従を余儀なくされ、結果、人間達は巨人達に「天へ帰れ」と命じて巨人達を撤退させることに成功。
そして、巨人達が昇っていったツタを切断して地上と天空を繋ぐルートを断ち切り、ようやく地上に平和が訪れたのでした。
当時の王様であるエリック王は英雄として崇められることになります。
そして後には、巨人を退避させた冠と、巨大なツタを生やす魔法の種数粒が残されたのでした。
この「天空の巨人の伝説」を聞かされたジャックとイザベラは満足し、それぞれ父親と王妃に見守られながら、眠りにつくことになるのでした。

それから10年後。
父親を亡くし、叔父に引き取られていたジャックは、馬と荷台を売り払って当座のカネを作るべく、王城がある城下町へとやってきていました。
長年親しんできた馬との別れを惜しみながら買い取り手を捜し歩く中、ジャックは幼い頃に両親に読んでもらっていた「天空の巨人の伝説」の舞台公演が行われている場所に辿り着きます。
そこでジャックは、ひそかに城を抜け出し、フードをかぶって顔を隠しながら舞台を観覧していた王女イザベラと初対面することとなるのでした。
王女を探していた騎士団と共に王女が去り、舞台観覧の間に荷台が紛失してしまったことに気付いたジャックは、とりあえず馬だけでもカネにしようと買い取り手探しを再開します。
そこへ、何やらワケありの修道僧がジャックに声をかけ、馬を譲ってもらいたいと申し出てきます。
ところがその修道僧には持ち合わせがなく、ジャックに対し数粒の豆を渡し、それを修道院に持っていけばカネに変えてくれるとジャックを諭します。
ただし、その豆は決して水に濡らしてはならない、とも。
ジャックが返答を渋って考え込んでいる間に、その修道僧はさっさと馬に飛び乗ってその場を立ち去ってしまい、ジャックはカネを手にするための手段を全て失ってしまうのでした。
ジャックはショックを受けながらも、修道僧からもらった豆を手に、叔父が待つ家に戻ることとなるのですが……。

映画「ジャックと天空の巨人」は、前半部分は童話「ジャックと豆の木」のストーリーをなぞりつつ、王国の陰謀劇なども織り交ぜ、巨人との戦いがメインとなる物語中盤以降は完全オリジナルな展開が繰り広げられます。
事前予測に反してアクションシーンも多く、特に物語後半は巨人を相手にした城塞の攻防戦をメインに扱っていることもあり、なかなかに見応えのある構成となっています
決して客受けしない映画ではなく、スタンダードに面白い作品なのではないかと思われます。
にもかかわらず今作は、アメリカで劇場公開されて以降、その製作費に比べて悲惨なまでの興行収益しか稼げていないという惨状を呈しているみたいなんですよね↓

http://www.cinematoday.jp/page/N0050847
>  [シネマトゥデイ芸能ニュース] 新作が不調だった今週末は、1,000万ドル(約9億円)以上の興収を記録した作品は、トップの映画『ジャックと天空の巨人』のみで、それも決して大ヒットとはいい難い2,720万ドル(約24億4,800万円)という結果となった。(1ドル90円計算)
>
>  世界の子どもたちから愛されている童話「ジャックと豆の木」をベースに、
製作費をおよそ2億ドル(約180億円)もかけ、映画『X-MEN』シリーズでおなじみのブライアン・シンガー監督がメガホンを取った本作は、高い興収を期待されていたのだが、主演ニコラス・ホルトの知名度の低さや、CGIの巨人たちがグロテスクなことなどが災いし、かなり不本意な結果に……。

http://www.cinematoday.jp/page/N0051062
>  代わって第2位は、映画『ジャックと天空の巨人』で984万ドル(約8億8,560万円)。去年の今ごろに公開され、散々な結果に終わった映画『ジョン・カーター』がよく引き合いに出されているが、『ジャックと天空の巨人』の2週目における下降率63.8パーセントは、『ジョン・カーター』の同時期55パーセント降下よりも大きく、このままいくとトータルの興収は『ジョン・カーター』を下回る6,000万ドル(約54億円)にも達しないのではと予想されている。

http://www.cinematoday.jp/page/N0051291
>  代わって第4位は、映画『ジャックと天空の巨人』で632万ドル(約5億6,880万円)。これまでの興収トータルは5,401万ドル(約48億6,090万円)となっている。

アメリカの映画公開から既に3週間の時間が経過してさえ、製作費のようやく4分の1強を回収した程度でしかないというのは、ほとんど壊滅的な成績であるとしか言いようがないですね。
上記記事でも引き合いに出されている映画「ジョン・カーター」も、2012年トップクラスと謳われる「悲惨なまでの赤字映画」として知られていますし。
日本を含めた世界各国ではまだまだこれからとは言え、本家アメリカでこのスタートは正直かなり厳しいものがあるでしょう。
しかし、これは「ジョン・カーター」もそうだったのですが、今作も内容的にも演出面でも決して客受けしない駄作というわけではなく、充分な集客力もありそうな作品だというのに、一体何がここまで興行収益を左右しているのでしょうかね?
仮にも2億ドルもの製作費をかけているのであれば、宣伝広報の類だってそれなりに展開はしているでしょうし、「ジャックと豆の木」という世界的にも知名度が高いであろう童話をベースにしているのであれば、無名というわけではないのですし一定の客もつきそうなものではあるのですが。
今作の公開とほぼ同時期に、映画「オズ はじまりの戦い」も劇場公開されていて、しかもこちらは大ヒットしているようなので、客足をそちらに取られでもしたのでしょうかねぇ(-_-;;)。
内容は悪くないのに興行収益的に駄作扱いされるというのは、何とももったいない話であるとしか言いようがないのですが……。

作品内容に目を向けてみると、個人的に惜しいと思われるのは、イザベラ王女の許嫁で王家簒奪の野心を胸に秘めているロデリック卿とその部下が、かなり早い段階でさっさと物語から退場してしまうことですね。
序盤から中盤にかけてアレほどまでに分かりやすい大物な黒幕ぶりを演出していながら、あんなしょうもない油断からエルモントとの一騎打ちに引きずり込まれた挙句にあっさり討ち取られてしまうというのは、正直「竜頭蛇尾」な感が否めないところですね。
私はてっきり、ロデリック卿は物語終盤近くまで生き残りつつ、ジャックやエルモントやイザベル王女と対峙しつつ、巨人や王国も交えた三つ巴な戦いを繰り広げるものとばかり考えていたので、あの早すぎる退場は期待外れもはなはだしかったです。
巨人達は、ラスボスである二対の頭を持つファロン将軍も含め、どいつもこいつも脳筋な頭しか持ち合わせていませんでしたし、頭脳派のロデリック卿がいなくなったのはその点でも手痛いダメージでした。
物語終盤の巨人達の王城攻撃は、膂力と体格に物を言わせた力任せなシロモノにしかなっていなかったですし。
王城の地理も政治も熟知しているロデリック卿が巨人達を率いていれば、終盤の王城攻防戦もあるいは巨人側の勝利に帰したかもしれなかったのですが。
映画の演出面でも、当然のごとく巨人を従える冠を持つロデリック卿を主人公達が倒すことで、巨人達との戦いにも終止符が打てるという流れに持っていけるわけですし、彼のあまりにあっさりし過ぎな退場は何とも惜しまれるところではありますね。
ただそれを除いても、ジャックが持っていた魔法の豆の使った巨人退治や、ラストの王冠のオチなど、小道具の使い方はなかなかに上手いものがあったのですけど。

どの年齢層を問わず、老若男女誰もが楽しめるスタンダードな映画に仕上がっているのではないかと思います。

最近のハリウッド映画ではセックスシーンが減っている?

ハリウッド映画からセックスシーンが激減したと、アメリカの雑誌で報じられているようです↓

http://eiga.com/news/20130320/14/
> [映画.com ニュース] ハリウッド映画からセックスシーンが激減していると、エンターテインメント・ウィークリー誌が報じた。
>
> 「氷の微笑」「ゴースト」「テルマ&ルイーズ」を例に挙げるまでもなく、
かつてハリウッド映画にセックスシーンがつきものだった。しかし現在、メジャー映画ではかなり減少しており、今年の第85回アカデミー賞作品賞にノミネートされた全9作品うち、セックスシーンが含まれているものはひとつもない。
>
> ジェニファー・ローレンスが、性に奔放なキャラクターを演じ主演女優賞を受賞した「世界にひとつのプレイブック」でも、濡れ場は皆無。ハリウッドのメジャースタジオの依頼で脚本分析をするメディア調査会社IPSOSの重役は、過去2年間で劇的にセックスシーンが減ったことを
「カットされることになると分かっているので、脚本家が最初から省くようになりました」と説明する。
>
> では、どのような理由でスタジオはセックスシーンをカットするようになったのか。それには、複数の理由が考えられる。まず、興行収入をアップさせるためには、若年層の動員が欠かせない。そのためには、
17歳以下の入場を禁止するR指定ではなく、R-13(13歳未満の子どもの鑑賞については保護者の注意が必要)に抑える必要がある。映画のレイティングを審査するMPAAは、暴力描写よりもヌードやセックス描写に厳しいことで知られていることもある。
>
> さらに、インターネットの普及によるヌードの価値低下が挙げられる。いまではオンライン上のアダルトサイトで容易にヌードを閲覧できるため、映画におけるヌードシーンが観客動員につながらなくなってしまったという。そして、VFXの躍進。VFXこそ観客動員の鍵となっているため、派手な映像に力を入れるようになったことも一因になっているようだ。もっとも、この傾向がみられるのはハリウッドのメジャー作品に限定されている。

しかし、そもそもハリウッド映画って、そこまでセックスシーンを大々的に売りにしていましたっけ?
昔からハリウッド映画に慣れ親しんでいた私でも、セックスシーンをそこまで売りにしている作品にはあまり心当たりがないのですが。
去年日本で公開され私が観賞した映画だけを見ても、セックスシーンそのものや婉曲な描写を持つ洋画作品は、ざっと思い浮かぶだけでもR-15指定の「ドラゴン・タトゥーの女」「ラム・ダイアリー」、名にも指定されていない作品でも「Black & White/ブラック&ホワイト」「スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン」「007 スカイフォール」とそれなりの数はあります。
ただ、これらの作品は別にセックスシーンが「売り」というわけではなく、物語の構成要素のひとつとしてたまたまセックスシーンが入っているだけという一面が強いでしょう。
そしてそれは、特にセックスや性の問題をテーマにした作品でもない限りは、ハリウッド映画のスタンダードなあり方でもあったわけで。
昔からアクションシーン等の派手な描写を売りにしてきたハリウッド映画に、セックスや性の問題を扱った作品が元からそこまで多かったわけでもないでしょうし、「激減」とまで言われるほどに数が減っているようにはあまり思えないところなのですけどね。

記事にもあるように、セックスシーンの有無はR-15&PG-12指定の問題とも絡み、ひいては興行収益にも多大な影響を及ぼすので、避ける傾向にあることは確かにそうでしょう。
ただ逆に、R-15&PG-12指定の作品だと、セックスやバイオレンスな描写が昔よりも過激になっている一面もありそうな感じなのですが。
言ってみれば、通常の作品とR-15&PG-12指定作品との「棲み分け」が進んだ結果、セックスシーンもしくはそれを匂わせる「通常の作品」が減ったのではないか、というのが実態に近いのではないかと。
実際、「テッド」のような下ネタ満載のR-15作品なども増えているわけですし。
先日観賞したPG-12指定映画「クラウド アトラス」でも、モロなセックスシーンが普通にあったりしましたからねぇ。
昨今の映画を見ても、セックスシーンを扱う作品は昔と比べてもそこまで減ってなどいないのではないか、という感触すら感じられるくらいなのですが、実際はどんなものなのでしょうか?

映画「クラウド アトラス」感想

ファイル 928-1.jpg

映画「クラウド アトラス」観に行ってきました。
アメリカ・ドイツ・シンガポール・香港の4ヵ国共同合作で、トム・ハンクス等の有名俳優が多数出演している作品。
今作では、作中に様々なバイオレンス・セックス描写に加えてゲイ描写までもがあるためPG-12指定されています。
内容的にはR-15でも違和感がなかったシロモノでしたが(苦笑)。

映画「クラウド アトラス」の舞台となる時代は、1849年・1936年・1973年・2012年・2144年・2321年の6つであり、それぞれに事情が異なる6人の主人公とそれに付随するエピソードが存在します。
1849年の奴隷貿易が華やかりし時代、南大西洋でアメリカへ帰る途上にある弁護士アダム・ユーイングの話。
1936年のイギリス・スコットランドで、映画のタイトルにもなっている幻の交響曲「クラウドアトラス6重奏」を完成させる作曲家ロバート・フロビシャーの話。
1973年のアメリカ・サンフランシスコで、かつてのロバート・フロビシャーのゲイ友達だったシックススミスが出会う、芸能ジャーナリストのルイサ・レイの話。
2012年のイギリス・ロンドンで、殺人事件を起こした作家ダーモットの著書がヒットしたことから荒稼ぎをするも、そのために生命を狙われた上に老人施設に監禁されることになってしまう、編集者ティモシー・キャベンディッシュの話。
2144年の元韓国・ソウルの上に新たに築かれているネオ・ソウルで、クローンでありながら革命家への道へ進んでいくソンミ451の話。
そして2321年、文明が崩壊し汚染された地球で、人食いを生業とするプレシエント族の脅威に怯えながら質素な暮らしを営むヴァリーズマン・ザックリーの話。
これら6つの時代の6人の主人公が織り成す6つのエピソードが、6つ全て同時に進行していくという破天荒な形で、映画の物語は繰り広げられていくことになります。
ひとつの時代のエピソードが終わったら次の時代へ……という形ではないんですね。
また、今作に出演している俳優さん達は、6つの時代のそれぞれで全く異なる役柄を担当しており、「ウォーリーをさがせ!」的なノリで彼らを探していくのも楽しみのひとつに入るかもしれません。
何しろ、彼らが演じる役柄の中にはチョイ役・端役的な人物どころか、作中に登場する写真の中に顔が写っているだけなシロモノまであるのですから(^_^;;)。
エンドロールでキャストと共にその全容が紹介されているのですが、「正解」を知った時は心の中で思わず唸ってしまったものでした。
細かいところで非常によく作り込んでいる作品だなぁ、というのがアレを見た時の感想でしたね。

登場人物達の設定も時代背景も全く異なり、一見全く無関係かつバラバラに展開されているかに見える各時代のストーリーは、しかし色々なキーワードや後代の視点などを駆使することで相互に関連性を持たせていますね。
たとえば、1936年のロバート・フロビシャーは、作曲を行う際に1849年のアダム・ユーイングの手記を探しており、その内容が途中で切れているのに不満を漏らしたりしています。
そのロバート・フロビシャーが作曲した「クラウドアトラス6重奏」は、1973年の主人公であるルイサ・レイがレコード店で手に取っていたり、2144年におけるネオ・ソウルのクローン喫茶?で奏でられていたりします。
逆に後代の視点から前時代の筋書きが明かされたり、ある時代の登場人物の台詞を別の時代の登場人物がそのままなぞっていたりと、各時代のエピソードとの相互関連性を示す要素が作中にはふんだんに盛り込まれています。
また、全時代共通と特徴として、各時代のエピソードを担う主人公達には、身体のどこかに彗星の痣が刻み込まれています。
これが何を意味するのかは作中では具体的に語られることがないのですが、各時代のエピソードを比較する限りでは、「彗星の痣がある人物=共通の魂を持つ存在」というわけではなさそうな感じではありますね。
今作は「輪廻転生」や「時代が変わり、何度生まれ変わっても同じ過ちや行動を繰り返す人間」というのがテーマにあるようなのですが、「彗星の痣がある人物」は各時代毎に全く共通項のない人生を送っているみたいですし。
作中描写から見た限りの設定としては、各時代で同一俳優が演じている登場人物が「輪廻転生」の関係にある、と考えるのが妥当なのではないかと。
作中で成立している恋人関係なども、同一の俳優さん同士の組み合わせが時代を超えて成立していたりもしますし、逆に1936年における主人公のゲイ関係や自殺のエピソードなんて、他の時代のどこにも共通項が存在しないですからねぇ。
6つの時代の物語は、2つが主人公死亡というバッドエンド、4つが将来に希望を見出すトゥルーエンドという形で終わっているという違いもあるのですからなおのこと。
とはいえ、全時代の主要登場人物に刻まれている「彗星の痣」が全くの偶然で存在するということはいくら何でもないでしょうし、こちらはこちらで「輪廻転生」とは全く別の意味が何かありそうな感じではあるのですが……。

個人的に気になったのは、2144年から2321年のエピソードの間に、如何にして人類の文明が滅亡し、ソンミ451が女神として崇められるようになったのか、という点ですね。
作中における2321年は「地球崩壊後106回目の冬」なのだそうで、これから逆算すると、地球における人類の文明が滅びたのは2215年前後ということになります。
ソンミ451が活躍する時代から文明崩壊までは、まだ70年以上の歳月があることになりますし、作中の2144年当時は統一国家が成立していたようなので、国家間による全面核戦争で文明が崩壊したとは考えにくいところです。
2321年のエピソードでは、過去の歴史を知るメロニムについて「地球は毒されている」と評していることから、核戦争レベルの地球全体の汚染が伴うような大破局が発生したであろうことは確実です。
致死性ウィルスによる疫病の大量発生程度のことでは、人類の人口激減は発生しえても地球全体の汚染まではさすがに伴いようがないのですし。
となると、2144年時点でも旧ソウルが水没するほどに進んでいた「地球温暖化による海面上昇」がさらに進行し、それと共に世界的規模で原発事故のごとき地球を汚染する大破局が発生し文明が崩壊した、ということにでもなるのでしょうか?
2321年に現存している旧文明の「海を走る船」には核融合エンジンが搭載されているとのことですし、そんな環境で今更原発に頼るのか、という問題もありますが(苦笑)。
あるいは、ソンミ451やチャン・ヘチュが所属していたレジスタンス組織のような存在が他にも大量に勃興し、レジスタンス組織と政府軍による内戦状態から核の応酬のごとき戦争にでも発展したのでしょうか?
これだと、ソンミ451が「レジスタンスの象徴」として崇められる理由もできますし、それが後代に神格化されて宗教信仰にまで発展したという筋書きにもある程度は納得がいくのですが……。
しかしいずれにせよ、ザックリーに過去の歴史について問われたメロニムも、「人類の欲望が知恵が追いつかないほどに大きくなった」ことが滅亡の原因だと述べただけで、具体的な理由や真相については結局触れず終いでしたからねぇ。
人類の文明が崩壊し地球が汚染された真相とは一体何だったのか?と色々想像力を掻き立てられる話ではありますね。

作中には一応カーチェイスやアクションシーンなどもあり、その手の描写が好きな方の要求にも対応した構成になっています。
ただ、今作最大の特徴である「6つの時代の6つのエピソードの同時進行」という形態は、やはりその分かりにくさから「観客を選ぶ」という一面があるのはどうにも否めないところですね。
実際、アメリカ国内では1億ドルの映画製作費に対して、かろうじてその4分の1を超えた程度の興行収益しか稼げていないようですし。
世界総合の興行収益では何とか黒字を達成したようなのですが。
単純明快なストーリーではなく、複雑な構成の物語を楽しみたい、という方にはオススメの映画であると言えるかもしれません。

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