エーリッヒ・ヴァレンシュタインの思考パターンを見てみると、どうも彼は「暗殺」という要素を全く無視しているか、非常に軽視しているようなところが多々見受けられます。
これは「本編」の頃から一貫して変わることなく、かつ「他人に対する攻撃策」「自分に対する防衛策」の双方について当てはまります。
たとえば「本編」では、ラインハルトに愛想を尽かして敵視するようになったり、ヤンの戦略戦術や謀略に翻弄される事態に直面したりしてさえ、ヴァレンシュタインは彼らを戦略や政略で圧倒することは画策しても「暗殺」で排除しようとは欠片たりとも考えていません。
また逆に、クロプシュトック侯事件やキュンメル事件などといった「原作知識で事前に把握できる暗殺事件」を除けば、ヴァレンシュタインは他者が自分に対して画策する暗殺絡みの謀略について、事前には全く予測も対策もできておらず、奇跡的に助かった後に反撃に転じるというパターンが常態化していました。
「亡命編」の場合はさらに深刻で、ヴァレンシュタインはそもそも自身がカストロプ公からの刺客であるフロトー中佐に暗殺されかかったことがきっかけで同盟に亡命する羽目になったにもかかわらず、そのことにトラウマを覚えたり脅威を感じたりしている様子もなければ、それを教訓とした事前対策に取り組む気配すらもありません。
そして何よりも、アレほどまでにラインハルトを恐れ、彼の脅威から逃れるために数百万単位もの虐殺に手を染めることすら辞さないほどのヴァレンシュタインが、「工作員を派遣してラインハルトひとりを暗殺する」という、ある意味最も犠牲が少なくて済むであろう策謀に思い至りすらもしないのは不自然もいいところです。
フェザーン勢力や地球教が昔から暗殺をも含めた様々な蠢動を行っているという作中事実を、原作知識を有するヴァレンシュタインは当然のごとく把握しているはずなのですから、それに対する防衛策という観点だけで考えてさえも「暗殺」という要素を除外できるものではないと思うのですけどね。
しかも原作知識と「暗殺」を組み合わせれば、要人になる前で警備の薄い人間を人知れず殺すことも充分に可能となるのですからなおのこと。
「自分が生き残ること」を至上命題とするヴァレンシュタインにとって、「暗殺」という手段が持つ脅威と有効活用については、むしろいくらでも検討して然るべきものではなかったのかと。
まさか、この期に及んで「暗殺で歴史は動かない」などという、原作「銀英伝」でも言われていた綺麗事な理想論の類に拘泥しているわけではあるまいに。
ところで、今回から第7次イゼルローン要塞攻防戦の検証に入ることとなるのですが、この戦いは帝国パートをメインにストーリーが進行していくこともあり、ヴァレンシュタインの出番がかなり少ないですね。
第7次イゼルローン要塞攻防戦でヴァレンシュタインが出てくるのは、会戦の帰趨が決し始める終盤に差し掛かってからのことになりますし。
もっとも、そのような少ない出番であっても、出てくる際にはいつもの「神(作者)の奇跡」やキチガイ発言を忘れない辺りが、狂人ヴァレンシュタインの面目躍如と言えるところではあるのですが(笑)。
その面目躍如ぶりが今回の戦いでどのような形で発露されているのかは、これから披露していく考察にて語っていくことと致しましょう。
なお、「亡命編」のストーリーおよび過去の考察については以下のリンク先を参照↓
亡命編 銀河英雄伝説~新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
http://ncode.syosetu.com/n5722ba/
銀英伝2次創作「亡命編」におけるエーリッヒ・ヴァレンシュタイン考察
その1 その2 その3 その4 その5 その6 その7 その8 その9 その10 その11 その12 その13
第7次イゼルローン要塞攻防戦は、動員兵力を実際よりも少なく発表し、既存の艦隊で基本的な応戦を行いつつ、隠蔽していた戦力で帝国軍の後方を襲撃し包囲網を構築することで殲滅を行う、という形で同盟軍が勝利を勝ち取っています↓
http://ncode.syosetu.com/n5722ba/52/
> 今、同盟軍は五個艦隊で要塞を包囲している。第一、第五、第十、第十二、そしてシトレの直率部隊だ。しかし表向き動員したのは第五、第十、第十二艦隊と直率部隊となっている。第一艦隊はバーラト星系で海賊退治だ。そういう事にしてマスコミの目を誤魔化した。
http://ncode.syosetu.com/n5722ba/55/
> 今回の戦いで一番苦労したのが動員兵力の秘匿だった。公表では五万五千隻、第五、第十、第十二の三個艦隊、そしてシトレ元帥の直率部隊、これが内訳だ。その他に密かに動員したのが第一、第四、第六の三個艦隊。第一艦隊は海賊組織の討伐という名目で艦隊を動かし、第四、第六の両艦隊は艦隊司令官が代わったことで訓練に出ている事になっている。
しかしこれって、「亡命編」における同盟で果たして実現可能なことなのでしょうか?
作者氏がどういう意図でそんな設定をでっち上げたのか不明なのですが、実は「亡命編」における自由惑星同盟って、情報管理があまりにもお粗末極まりない惨状を呈していたりするんですよね。
たとえば39話では、第6次イゼルローン要塞攻防戦における同盟軍総司令部で交わされた作戦会議やヴァレンシュタインの主張内容などが、帝国軍のオフレッサーにすら掌握されてしまっている様子が描かれています。
これは帝国軍の情報部がフェザーン経由で入手した情報とのことでしたが、同盟軍総司令部の作戦会議内容なんて軍事機密の最たるものであるはずなのに、それがこうも簡単に敵国に流出している時点で、同盟側のインテリジェンス(防諜・諜報)能力の低レベルぶりが知れようというものです。
また45話では、ヴァレンシュタインがシトレ・トリューニヒト・レベロの3者と秘密会議を行っていたことがマスコミに察知され、同盟のTVニュースで大々的に報じられていたりします。
こういう秘密会議というのは、内容はおろか「そういうことが行われていた」という事実自体が本来漏れてはならない機密事項でもあるはずなのですが……。
銀英伝3巻でヤンを査問会にかけた件が、外部はむろんのこと、同盟軍ナンバー2の座にあったビュコックですらフレデリカの話を聞くまで知ることができなかったことを考えると、「亡命編」における同盟のインテリジェンスの水準は原作と比較してさえも杜撰極まりないシロモノであると評さざるをえません。
ところが「亡命編」の第7次イゼルローン要塞攻防戦では、その杜撰なインテリジェンスぶりを露呈しているはずの同盟が、自国のマスコミはおろかフェザーンさえも欺いたというのですから驚きです↓
http://ncode.syosetu.com/n5722ba/52/
> 遠征軍の動きを見る限り、こちらの動員兵力を知らなかったと見て良い。知っていればヴァンフリートにのこのこ出てはこなかっただろう。フェザーンも騙されたようだ。後々帝国とフェザーンの関係が難しくなりそうだがそれも今回の戦いの狙いの一つではある。
フェザーンの諜報活動は、原作における同盟のインテリジェンス体制をすらも突破するほどの精度と優秀さを誇っています。
原作1巻でヤンとローゼンリッターによる無血占領が行われた第7次イゼルローン要塞攻防戦においても、第13艦隊の動向は「亡命編」と同じく「新艦隊最初の大規模演習」として擬態されていたにもかかわらず、フェザーンは第13艦隊の軍事目的および最終到達地点を正確に喝破していました。
その情報を察知したフェザーンが帝国に対し報告を行わなかったのは、半個艦隊でイゼルローンが落とせるはずがないという思い込みと、ヤンの軍事的手腕がどのようなものかを見たいというルビンスキーの意向によるものでしかなく、しかもそのルビンスキー自身、全く予想外の結果に驚愕するという事態に直面しています。
そして、次の同盟軍による帝国領侵攻作戦では、同盟最高評議会で議決された後で「3000万人以上もの動員計画がある」という事実をすぐさま察知し、帝国高等弁務官レムシャイト伯に報告を入れ、帝国軍に対して事前準備を促しています。
これだけの「相対的な優秀さ」を誇るフェザーンの諜報活動を、原作にすら劣る「亡命編」における同盟のインテリジェンスが欺くことに成功するというのは、ヨタ話にしても無理があり過ぎなのではないかと。
そして何よりも、その同盟の悲惨なインテリジェンスの実態を、ヴァレンシュタインは充分に把握できていたはずなのです↓
http://ncode.syosetu.com/n5722ba/24/
> 何をどう宜しくするのか、グリーンヒル参謀長が何を期待しているのか想像はつくが、うんざりだ。あの駄法螺作戦の所為だな……。あれはラグナロック作戦のパクリなのだが、あれを同盟が実施できる可能性はまずない。不可能ではないのだが成功する見込みは限りなく低いだろう。理由は二つある。
>
> 一つは誰でも分かる、作戦目的を秘匿出来るかだ。少しでもフェザーン、帝国に知られれば作戦は失敗する……。帝国ならともかく同盟では難しいだろう。
しかし、第7次イゼルローン要塞攻防戦の戦力隠蔽も、ヴァレンシュタインが「駄法螺作戦」と主張するフェザーン侵攻作戦と同程度には秘匿性が求められるはずなのですが。
「少しでもフェザーン、帝国に知られれば作戦は失敗する」という点では、どちらも全く同じなのですから。
他ならぬ自分自身が「あれを同盟が実施できる可能性はまずない」とまで述べていたレベルの隠蔽工作を、ヴァレンシュタインは一体どうやって実現させたというのでしょうか?
シトレ・トリューニヒト・レベロを交えた秘密の会談でも、ヴァレンシュタインは今後の戦略や司令長官の人事については言及していても、同盟におけるインテリジェンスの問題については全く何も主張してなどいませんでしたし。
「亡命編」における同盟の機密情報の漏洩ぶりな惨状を鑑みても、今回の作戦で見られるような情報統制を行うためには、下手すれば軍どころか国家体制そのものをも一変させるレベルの大規模な組織改革が必要不可欠であり、それは一朝一夕に行えるものなどではありえないでしょう。
同盟軍の各艦隊指令官達が使い物にならないとヴァレンシュタインは作中で嘆きまくっていましたが、現状の同盟で本当に一番使えないどころか有害ですらあるのはインテリジェンスの分野なのです。
ヴァレンシュタインが直接指揮しているわけでもなく放置状態にすらある同盟のインテリジェンスのどこをどうやって使えば、フェザーンすらも欺けるほどの情報操作&統制が可能になるというのですかね?
他ならぬヴァレンシュタイン自身、フェザーンの諜報能力については原作知識からも充分に熟知しえる立場にあったはずでしょうに。
あんなド素人でもありえなさそうな低レベル過ぎるインテリジェンスに勝利の命運を委ねるなど、普通に考えたら自殺行為もいいところなのではないかと思えてならないのですが。
それとも、これもまた「神(作者)の奇跡」の産物だったりするのでしょうかねぇ(笑)。
にわかには信じ難い論理でもって第7次イゼルローン要塞攻防戦の勝利の帰趨が決したことに、しかし当然のごとくヴァレンシュタインが満足などするはずもありません。
いつ如何なる時にも常に被害者意識を持つことを忘れない狂人ヴァレンシュタインは、被害妄想狂患者としての禁断症状を既に発症しつつあり、それは「神(作者)の祝福」から発せられる超高濃度の放射線のようなものを浴び続けているがために、原作よりも頭の水準を著しく劣化させられたヤンの発言によって爆発するに至ったのです↓
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> ヴァレンシュタイン准将が席に戻るとヤン准将が困惑したような表情で話しかけ始めた。
> 「駐留艦隊を無理に殲滅する必要は無いんじゃないかな、イゼルローン要塞は攻略しないんだろう? 余りやりすぎると帝国軍の恨みを不必要に買いかねない。適当な所で切り上げた方が……」
>
> ヤン准将は最後まで話すことは出来なかった。ヴァレンシュタイン准将が冷たい目でヤン准将を見据えている。
> 「不必要に恨みを買う? 百五十年も戦争をしているんです、恨みなら十二分に買っていますよ。この上どんな不必要な恨みを買うと言うんです?」
> 「……」
>
> 「遊びじゃありません、これは同盟と帝国の戦争なんです。もう少し当事者意識を持って欲しいですね。何故亡命者の私が必死になって戦い、同盟人の貴方が他人事な物言いをするのか、不愉快ですよ」
> 「……」
>
> ヤン准将は反論しなかった。口を閉じ無言でヴァレンシュタイン准将を見ている。その事がヴァレンシュタイン准将を苛立たせたのかもしれない。准将は冷笑を浮かべるとさらに言い募った。
>
> 「亡命者に行き場は無い、利用できるだけ利用すれば良い、その間は高みの見物ですか、良い御身分だ」
いくらヤンでも、よりによってヴァレンシュタインなどに「高みの見物ですか、良い御身分だ」などとは言われたくなかったでしょうねぇ(苦笑)。
何しろ、当のヴァレンシュタイン自身、裁判の場においてさえ「仕事をせずに給料を貰うのは気が引けますが、人殺しをせずに給料を貰えると思えば悪い気持ちはしません。仕事が無い? 大歓迎です。小官には不満など有りません」などとほざいて平然としていられる厚顔無恥な精神と頭の構造の持ち主なのですから(爆)。
そもそもこの発想自体、元々はヤンこそが本家本元なわけなのですから、ヤンはヴァレンシュタインに全く同じことを言い返して自らの正当性を主張しても良かったのではないかと。
それに対してヴァレンシュタインが下手に反論を返したり勤労の美徳など説いたりしようものならば、下手すれば38話の軍法会議で嘘八百を並べていたということになって偽証罪にすら問われかねないのですから(笑)。
まさか今更、「アレは自分自身についてのみ適用されるものであって、他人に関しては情け容赦なく勤労の美徳を説いていきます」などというダブルスタンダード丸出しな弁明をするわけにもいかないでしょうし。
目先の口喧嘩に勝つことしか眼中になく、後先考えることなくその場凌ぎの罵倒にばかり精を出すような奴は、こういう形で常に自分で自分の足を引っ張ることになるわけです。
自分を特別扱いせず、自分と他人で常に同じ論理を適用しても矛盾も問題も生じることのない理論を作るよう心掛けていくだけで、ヴァレンシュタインも今よりはかなりマシなシロモノになるのではないかと思うのですが……。
まあ、ヴァレンシュタインがそんなことを期待できるような手合いなどでないことは、最初から分かりきっている話でしかないのですけどね(苦笑)。
さて、禁断症状を発症したヴァレンシュタインが他人に当り散らすのは、ヤクが切れた麻薬中毒患者が暴れ回ることくらいに当然の話ではあるのですが、ここで愚かにもヴァレンシュタインの肩を持つバカがひとりしゃしゃり出てきました。
「茶坊主」という言葉と概念の生きた見本とすら言えるのではないですかね、こういうのって↓
http://ncode.syosetu.com/n5722ba/55/
> 「そこまでだ、ヴァレンシュタイン、言い過ぎだぞ」
> ワイドボーン准将がヴァレンシュタイン准将を窘めた。ヴァレンシュタイン准将が納得していないと思ったのだろう、低い声でもう一度窘めた。
> 「そこまでにしておけ」
>
> ヴァレンシュタイン准将はワイドボーン准将を睨んでいたが“少し席を外します”と言うと艦橋を出て行った。その後を気遣わしげな表情でミハマ少佐が追う。二人の姿が見えなくなるとヤン准将はほっとした表情でワイドボーン准将に話しかけた。
>
> 「有難う、助かったよ」
> 「勘違いするなよ、俺は“言い過ぎだ”と言ったんだ。間違いだと言ったわけじゃない」
> 「……」
>
> 「奴はお前を高く評価している。それなのにお前はその評価に応えていない」
> ワイドボーン准将の口調は決してヤン准将に対して好意的なものではなかった。そしてヤン准将を見る目も厳しい。ヤン准将もそれを感じたのだろう、戸惑うような表情をしている。
>
> 「そうは言ってもね、私はどうも軍人には向いていない」
> 「軍を辞めるつもりか? そんな事が出来るのか? 無責任だぞ、ヤン」
> 「……」
> 准将の視線が更に厳しくなったように感じた。
>
> 「ラインハルト・フォン・ミューゼルは着実に帝国で力を付けつつある。彼の元に人も集まっている、厄介な存在になりつつあるんだ。どうしてそうなった? ヴァンフリートの一時間から目を逸らすつもりか?」
> 「……」
>
> ワイドボーン准将の言葉が続く中シトレ元帥は目を閉じていた。戦闘中に眠るなど有りえない、参謀達の口論を許す事も有りえない。眼をつぶり眠ったふりをすることでワイドボーン准将の言葉を黙認するという事だろうか……。つまり元帥もワイドボーン准将と同じ事を思っている?
>
> ヤン准将が顔面を蒼白にしている。ヴァンフリートの一時間、一体何のことだろう……。
> 「お前がヴァレンシュタインより先に軍を辞める事など許されない。それでも辞めたければミューゼルを殺してこい。それがせめてもの奴への礼儀だろう。俺達が奴を苦しめている事を忘れるな」
どう考えてもヴァレンシュタインこそが100%責任を負うべき「伝説の17話」問題を、この期に及んで葵の印籠のごとく振りかざしてヤンを論難する低能バカが未だに存在するとは……。
そもそも、ヴァンフリート星域会戦の全体像って、この時点に至るも未だに全容が解明されてなどいないはずなんですよね。
原作にもこんな記述があるのですし↓
銀英伝外伝3巻 P26下段~P27上段
<三月二四日に入ると、戦場はますます混沌とした様相をしめしはじめた。帝国軍と同盟軍の各部隊が、それぞれに分断しあい、孤立させあって、無秩序に混在し、前線は錯綜して、相対的な位置関係を把握するのが、いちじるしく困難になったのである。完全な戦況解析がおこなわれるまで、二〇年を必要としたほどであった。>
当然、ヴァンフリート星域会戦が終結してまだそこまで時間が経っていない55話時点で完全な戦況解析が達成されているわけもなく、「一時間の遅れ」なるものの【正確な実態】はヴァレンシュタインも含めて誰にも分からないものなのです。
「一時間の遅れ」などというシロモノは、原作知識というヴァレンシュタイン以外の何者も確認などできない、傍目から見れば「電波系」としか評しようのないことを根拠にしたヴァレンシュタインの勝手な思い込みに過ぎないのですが。
考察4でも述べたがごとく、ヴァレンシュタインがやらせた救援要請通信の乱発をミュッケンベルガーが早期に受信したことが、「一時間の遅れ」に繋がった主要な原因であるのかもしれないのですし。
それ以前に、そもそも当時のヤンとビュコックの関係を読み誤ってヤンをビュコック艦隊の作戦参謀に配置したのも、ヤンおよび同盟軍上層部にラインハルトの情報を教えなかったことも、全てヴァレンシュタインの責任に帰するべき失態ではありませんか。
そんな錯誤と責任転嫁に満ち溢れたタワゴトをほざくヴァレンシュタインも、そんなシロモノを無条件に受け入れてしまっている周囲の人間も、揃いも揃って頭がおかしいと言わざるをえないところでしょう。
そもそも、「伝説の17話」当時あの場にいなかったワイドボーンが、何故ヴァレンシュタインの自爆発言の内容を正確に知っているのでしょうか?
あの自爆発言は、それ単体でヴァレンシュタインを処刑台へ送り込めるだけの威力を誇っているのですから、シトレやトリューニヒトとの提携が実現した55話時点だと、最高機密扱いか記録破棄が行われていたとしても何ら不思議なものではないはずでしょう。
正式な報告書として挙げられた事案だからその情報は同盟軍の高級士官が全て共有しえるものとして扱われているのであれば、ロボス辺りが38話の軍法会議で普通に利用していても良さそうなものだったのですが。
いくら「神(作者)の奇跡」の産物であるとは言え、あの自爆発言の問題点を誰も理解することができないほどに同盟軍上層部が低能揃いというのは、何とも常識外れなトンデモ設定であると言わざるをえないところなのですけどねぇ(苦笑)。
まあ、ワイドボーンは原作からしてヤンにシミュレーションで無様に敗北した挙句、正攻法にこだわってラインハルトに戦死させられたコチコチの理論バカとして描かれていたわけですから、ワイドボーン個人のこの茶坊主っぷりについてだけ言えば、皮肉にも逆に原作の設定に忠実であるとすら言えるのでしょうけど(爆)。
自らの衝動の赴くままにヤンを罵倒し、お節介な茶坊主に制止させられたヴァレンシュタインは、さすがにヤバいとでも考えたらしい神(作者)が発した遠隔操作用の電波でも受信したのか、いつものヴァレンシュタインには全くもって似つかわしくない反省らしきことを考え始めます。
しかし、一見反省しているような体裁を整えていながら、実際には自己正当化の要素が随所にちりばめられているのが、ヴァレンシュタインらしいと言えばらしいところで↓
http://ncode.syosetu.com/n5722ba/56/
> 別に好きで七百万人殺そうとしているわけじゃない。殺す必要が有るから殺すんだ。まあ最終的な目標が和平だというのはヤンは知らないからな、あんな事を言ったんだろう。人を殺すことで和平を求めるか……外道の極み、いやもっとも原始的な解決法と言うべきかな。ヤンじゃなくても顔を顰めるだろう。
>
> 分かってはいるんだ、ヤンがああいう奴だってのは……。ヤンは戦争が嫌いなんじゃない、戦争によって人が死ぬのが嫌いなんだ。だからあんな事を言い出した。でもな、帝国と同盟じゃ動員兵力だって圧倒的に帝国の方が有利なんだ。そんな状況で敵兵を殺す機会を見逃す……。有り得んだろう、後で苦労するのは同盟だ、そのあたりをまるで考えていない。
>
> 結局他人事だ。つくづく参謀には向いていないよな。誰よりも能力が有るのにその能力を誰かのために積極的に使おうとしない。俺が居るのも良くないのかもしれない。ヤンにしてみれば自分がやらなくても俺がやってくれると思っているんだろう。
>
> 参謀はスタッフだ、スタッフは何人もいる。全てを自分がやる必要は無い。つまり非常勤参謀の誕生だ。ヤンは指揮官にしてトップに据えないと使い道が無い。お前の判断ミスで人が死んだ、そういう立場にならないと本気を出さない。良い悪いじゃない、そういう人間なんだ。どうにもならない。
>
> あんな事は言いたくなかったんだけどな、俺の気持ちも知らないでと思ったらつい言ってしまった、落ち込むよ……。 “亡命者に行き場は無い、利用できるだけ利用すれば良い、その間は高みの見物ですか、良い御身分だ”
>
> そんな人間じゃない、ヤンはそんな卑しい心は持っていない、卑しいのはそんな事を言う俺の心だ。後で謝るか……、謝るべきだろうな、俺はヤンを汚い言葉で不当に貶めたんだ。ワイドボーンが止めてくれなかったら一体何を言っていたか……。
実のところ、56話の時点でこんなことを語っていること自体が、逆にヴァレンシュタインが全く反省などしていない証拠でもあったりします。
「伝説の17話」の後にもヴァレンシュタインは反省らしきことを語っているのですが、その時と全く同じ構図「ヤンの気質を充分に理解していながら、それでも衝動的に罵倒を投げつけずにいられない」がそっくりそのまま繰り返されているのですから。
ヤンに対する期待感からあえて厳しいことを厳しい口調で述べている、というわけでもないことは、モノローグどころか表面的な態度から見てさえも明らかなのですし。
そもそもヴァレンシュタインは、元々ラインハルトに対抗する必要性から言ってもヤンを必要としていると他ならぬ自分自身で明言しているのですから、そのヤンから好感を抱かれ味方になってもらえるような言動を常に心がけるべきではありませんか。
作中のような態度を披露していては、ヤンでなくても苦手意識を抱かざるをえませんし、それどころか憎悪・敵意すら抱かれても文句は言えないでしょう。
たとえ内心で軽蔑や侮蔑の念を抱いていたとしても、表面的にはおべんちゃらを並べたり相手に同調したりして相手の歓心や好意を獲得し、諫言するにしてもできるだけ相手の反感を買わないようなやり方に努める。
組織人として生き、組織内で味方を得るためには必要不可欠な処世術であるはずなのですけどね、これって。
それをロボスやフォークはむろんのこと、自分の頼もしい味方となりえるはずのヤンやシトレに対してすら全く行おうとせず、感情の赴くままに罵倒しまくる行為を延々と繰り返すヴァレンシュタインが、いくら口先だけで反省の念を述べようが、そんなものに到底信用などできるものではありません。
その後の言動や態度が改善されてこそ本当の反省の成果であると言えるのであって、口先や頭の中だけのその場凌ぎな反省であれば誰にだってできるのですから。
前者が全く伴わない後者のみの反省しかすることがないヴァレンシュタインは、そう遠くない未来にまた同じ轍を踏むことになるのが最初から目に見えているのですが。
「自分が卑しい人間だ」という反省も「自分はヤンやラインハルトに遠く及ばない人間だ」と同様に、口先だけで実体も信憑性も全く伴っていないシロモノであろうことは一目瞭然なのですし。
そして、この上っ面だけの反省の弁以上に笑止なのは、「別に好きで七百万人殺そうとしているわけじゃない。殺す必要が有るから殺すんだ」などと平然とほざくヴァレンシュタインのダブルスタンダードぶりにあります。
そんなことを言い出したら、「本編」でヴァレンシュタインが散々非難していたラインハルトの焦土作戦やヴェスターラントの虐殺黙認などについても、「勝利と巨大な犠牲を回避するための必要な最小限度の犠牲だった」の一言で終わってしまうではありませんか。
特にオーベルシュタインなどは、まさに原作の銀英伝の中でそう言っていたのですし。
全く同じことを自分がやるのはOKなのに他人がやるのはNGって、そういうダブルスタンダードな主張は「自分だけを特別扱いしている」という点で醜悪極まりないシロモノでしかないのですが。
それにヴァレンシュタインの思考基準では、戦争で親兄弟や親戚・知り合いなどが殺されても「有能な敵」を恨むべきではなく、そんなことをするような人間はシスコンやファザコン等のコンプレックス持ちかつ「思い込みが激しくて感情の制御が出来ないガキ」でしかないのでしょう?
そんな連中をいくら殺したところで、別に罪悪感に苛まれる必要なんてどこにもないではありませんか(笑)。
むしろ、そいつらのコンプレックスを断ち切ってやったことに感謝すらされて然るべき、というのがヴァレンシュタインの考えでもあるわけですし(爆)。
というか、ヴァレンシュタインが本当に虐殺と犠牲を回避したいのであれば、それこそ今回の考察の冒頭で私が述べたように「ラインハルトひとりを暗殺する」という手段を使っても良いはずなのですけどね。
すくなくとも、戦場で数百万単位の敵方の軍人を殺すよりは、数でも質でも犠牲ははるかに少なくて済むのですから。
それをせず、「不必要に」戦場での虐殺と犠牲を出すことにこだわるヴァレンシュタインは、すくなくとも自分の罪にある程度自覚的ではある原作のラインハルトやオーベルシュタインなど比べ物にならないレベルで、「大量虐殺者」としての心性と資質を救いようのないほどに兼ね備えている存在であるとすら言えるのではないですかねぇ。
ヴァレンシュタインに本当に反省する気などない事実や自己客観視の欠如ぶりは、以下の2つのやり取りの中でも充分過ぎるほどに窺い知ることができます↓
http://ncode.syosetu.com/n5722ba/56/
> 「そうじゃありません、彼女が心配しているのはヤン准将の事です。准将がヤン准将を何時か排斥するのではないかと心配しているんです。怖がられていますよ、ヴァレンシュタイン准将。准将がそうやって自分を抑えてしまうから……」
>
> 馬鹿馬鹿しい話だ、何で俺がヤンを排斥する。ヤンの事が好きだからと言って俺を敵視するのは止めて欲しいよ。対ラインハルトの切り札を自分で捨てる馬鹿が何処にいる。
鏡を見てみたらどうです?
「対ラインハルトの切り札を自分で捨てる馬鹿」が常に目の前に映し出されていますから(爆)。
それに、ここで問題なのは「自分がどう思っているか」ではなく「他人から自分がどのような目で見られているか」でしょうに。
「本編」でラインハルト&キルヒアイスを死に追いやり、「亡命編」でもヤンやシトレに対して被害妄想に満ちた憎悪を抱き、何よりもアレだけ好き勝手に振る舞って処罰されることすらもないヴァレンシュタインは、他人から「怖い」「この人から自分は憎まれている」と見られて当然なのですから。
自分の頭の中だけでどれだけ相手を絶賛していようが、それを態度や言葉に表わさなければ、相手が自分の考えを正しく理解したりするはずなどないでしょうに。
前世と今世を含めればそれなりの人生経験もあるでしょうに、そんな当たり前の常識すらも全く身についていないヴァレンシュタインは、まさに「思い込みが激しくて感情の制御が出来ないガキ」以外の何物でもないし、反省心も皆無であると言わざるをえないところなのですけどね。
http://ncode.syosetu.com/n5722ba/56/
> 「そんな事はしませんよ、ミューゼル中将と互角に戦える人物が同盟にいるとすればヤン准将だけです。私はミューゼル中将にもヤン准将にも及びません。私はヤン准将の力を必要としているんです」
> 俺の言葉にサアヤは可笑しそうに笑った。
> 「准将だけです、そんな事を言うのは。他の人は准将ならミューゼル中将に勝てると思っています」
>
> 阿呆が、俺は天才じゃない、原作知識を上手く利用しているだけだ。どいつもこいつも何も分かっていない、俺は独創性なんぞ欠片もない凡才だという事は誰よりも自分が一番良く分かっている。
「俺は天才じゃない」以外は全部過大&自画自賛もいいところですね、ヴァレンシュタインの自己評価は(笑)。
ヴァレンシュタインが本当に「原作知識を上手く利用している」のであれば、ヴァンフリート星域会戦でラインハルトを殺すこともできたでしょうし、それ以前にそもそもラインハルトと対決する事態すら避けることが可能だったはずでしょう。
むしろ、あまりにも原作知識の活用が稚拙過ぎて、読者としてはイライラさせられることもしばしばだったりするのですが。
そして何よりもヴァレンシュタインは、「独創性なんぞ欠片もない凡才」ではなく「思い込みが激しくて感情の制御が出来ないガキ同然の心性とメンタリティしか持ちえない、厚顔無恥かつ被害妄想狂患者の狂人」というのが正しい評価でしょうに(爆)。
ヴァレンシュタインほどに「自分というものが全く分かっていない人間」というのも、そうそういるものではないのですけどねぇ(苦笑)。
ただ、極めて悪い意味で思考回路と感情抑制機能がイカれている頭をしているがために、周囲からは逆に物珍しい珍獣的な希少価値を伴って見えることはあるわけですが。
それが他者から、ある種の「独創性」として評価されることも当然あるでしょうね。
もっとも、そんなシロモノを持つことなど、私であれば絶対に願い下げですけど(苦笑)。
ところでヴァレンシュタインは、56話の冒頭で「帝国と同盟じゃ動員兵力だって圧倒的に帝国の方が有利なんだ。そんな状況で敵兵を殺す機会を見逃す……。有り得んだろう、後で苦労するのは同盟だ、そのあたりをまるで考えていない」などとヤンの態度を非難しております。
では、その舌の根も乾かぬうちに、第7次イゼルローン要塞攻防戦の締めとしてヴァレンシュタインが取った選択肢は一体何だったのか?
次回の考察は、その部分も含めたヴァレンシュタインとラインハルトの会談内容をメインに語ってみたいと思います。