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銀英伝考察3
銀英伝の戦争概念を覆す「要塞」の脅威
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No. 3652
軍事的設定について
八木あつし 2003/02/14 03:13
どうもあの追記は、冒険風ライダーさんに大いにウケたみたいですね。これでこそ書いた甲斐もあります(笑)。
ところで私の数ある趣味の一つに共産趣味があります(笑)。そのため、いわゆる革命的左翼、日本の革命運動・学生運動について積極的に調べています。そこで新たに知った趣味的知識をもとに銀英伝を読むと、これまでとは違った見方も出来るようになりました。私も人が悪くなったものです。(^^;)
イゼルローンを奪還したヤン一党には、どちらかというと20世紀初期の中国動乱に乱立した軍閥に近い気がします。しかしイゼルローン共和政府は、中国共産党や日本共産党、日本新左翼の組織システムである民主集中制がハッキリと見られます。もしかしたら田中芳樹はその辺りのことを全て知った上で、敢えて民主主義への皮肉を交えながら行ったのではないか?と現在では思えてしまいますね(笑)。

イゼルローン共和政府は、一般将兵や住民に言論の自由こそあれ、民主集中制の名の下に全ての権限を中央指導部にもってきているわけです。中途半端な民主主義しか知らない旧同盟国民には、それで通じてしまい疑問にも思わないのでしょう(笑)。
そして将来、帝国を打倒し革命が実現したときにこそ、全ての人民に民主主義の全権利を与えるのでしょう。もちろん(党)中央が変質しない限りにおいてですが(笑)。

それでは本題に。
え〜、今回は私と冒険風ライダーさんの間で軍事的について違いがあるのでそこについて述べておきたいと思います。意外に違っていたので少し驚きました。

< まず、移動要塞の航行速度を検証するに際して、ゲーム版の設定を重視する必要性は全くないでしょう。ゲーム版ではゲーム性を重視しなければならない必要上、設定を故意にいじくることが少なくありませんからね。原作ではかなり弱い設定となっているはずのスパルタニアンやワルキューレなどの単座式戦闘艇が、ゲームによってはかなり強く設定されていることなどはその典型です。>

実は田中芳樹原作の銀河英雄伝説において「単座式戦闘艇」こそ最大の問題であり、失敗であり、私の最大の不満であります。田中芳樹は「バカ」なのか?と思ってしまうミスです。
艦隊決戦において、単座式戦闘艇の数についての記述はそう多くはありません。
・要塞決戦でミュラー艦隊がワルキューレ2000機を投入した場面。
・バーミリオン会戦ではヤン艦隊が160機のスパルタニアン、ラインハルト艦隊が180機のワルキューレが格闘戦をした場面。
上記の2つぐらいでしょう。
まずここですでにおかしいのです。敢えて言えば作者自身が最初から間違っているのです。
第3巻1章でアイヘンドルフ分艦隊の艦隊編成が書かれています。約1700隻のうち、宇宙母艦の数は30ないし40とあります。
そして第5巻8章でバーミリオン会戦時のヤン艦隊の艦艇数1万6420隻、ラインハルト艦隊の艦艇数1万8860隻とあります。この艦艇数から単純にアイヘンドルフ分艦隊の編成数を10倍してみると、ヤン艦隊には宇宙母艦が約300隻、ラインハルト艦隊には宇宙母艦が約450隻近く配備されていると推測できます。
ここまで書くと分かってもらえると思いますが、バーミリオン会戦での投入された戦闘艇よりも何と宇宙母艦の数の方が多いのです(笑)。異常ですね。まったくもって異常ですよ。
要塞決戦時のミュラー艦隊は8000隻です。そのため宇宙母艦は約130隻というところでしょうか。ワルキューレ2000機を130隻の宇宙母艦で割ると、1隻あたりの搭載機数は15機というところです。これはいくら何でも少なすぎるでしょう。要塞攻撃の為にワルキューレを敢えて多くしたのだとすると、より設定がおかしくなってしまいますね。大体、第2次世界大戦の空母でさえ60〜100機の艦載機を搭載できるのです。このことこそ田中芳樹が、宇宙戦争が扱いながらいかに軍事的設定を疎かにして作品を書いたのか判るというものです。
原作で宇宙母艦についてきちんと記述されていないので、代わりにアニメで設定付けされました。それによると同盟軍の宇宙母艦のスパルタニアン搭載機数は100機。同盟軍の巡航艦も3機のスパルタニアン搭載とあります。(徳間アニメージュ文庫「ラインハルトとヤン」より) 帝国軍についてはハッキリと判りませんが、まずこれに準じているでしょう。
そのため私は、原作における戦闘艇の戦闘シーンの描写はともかく、戦闘艇の数については明確な田中芳樹の間違いであり、信ずるに足りぬというスタンスです。この戦闘艇に関してはアニメ版の設定および描写の方が正しいでしょう。
冒険風ライダーさんもアニメ版の銀英伝は見ていると思います。その戦闘シーンでは、戦闘艇が戦艦を単機であっさりと破壊するなど大活躍をしています。そのためゲームで戦闘艇が強いのは、ある意味当たり前なのです。原作の戦闘艇の機数が、宇宙母艦の数に対して完全に間違っているのですから。

しかし私も過去ログを全て読み返したわけではないので判らないのですが、誰か以前に艦隊決戦における戦闘艇の数がおかしいという問題を提唱していましたか? いなかったら私が最初ですね(笑)。何でも一番は気持ちがいいので。(^^)


< 移動要塞の機動力の実態については、推察できる記述が銀英伝の作中にもあります。ガイエスブルク移動要塞は、ヴァルハラ星系外縁部に到達した3月17日から24日経過した4月10日に、オーディンから約6250光年離れたイゼルローン回廊に到達しています。これがいかに速いかは、ハイネセン−イゼルローン間の約4000光年における艦船移動期間が「通常3〜4週間」(銀英伝3巻 P115)と言われていることからも伺えるでしょう。つまり移動要塞の航行速度は、実は通常艦船よりもかなり速いといっても過言ではないのです。>

冒険風ライダーさんが通常航行の速度が艦艇よりも速いから早く回廊に着いたと考えています。しかし私は、ワープ距離が普通の艦艇、というか艦隊よりも長いので回廊に早く着いたと考えています。この時点で私たち二人の考えは全く逆ですね。
如何に巨大エンジンが12機あるとは言え、質量が40兆トンもある物体が、宇宙戦艦よりも速いとはとても思えません。むしろ巨大な12個のワープエンジンの力で、より遠くまでワープできると考えた方が私は納得できます。
また宇宙艦隊が、1万5000隻近くの艦艇で同時にワープするのに対して、移動要塞ならば要塞内に艦隊を収容してワープすれば、質量が重くとも1個の物体がワープするだけです。1万以上の複数同時ワープよりも、1個だけのワープの方がワープアウトを考えてみても安全で、しかもより長く遠くへワープできると予想します。
やはり私は、移動要塞の通常航行での速度は、艦艇よりも遅い。よくいって同速度だと思います。

<それに、移動要塞が小惑星を避けるのだってそんなに難しくもないでしょう。たとえば、イゼルローン要塞が周回軌道している恒星アルテナを「盾」にできる位置に要塞を移動させても良いでしょうし、いっそのこと、イゼルローン回廊を一旦出て、安全が確認された後にまた改めて戻るという方法もあります。こちらの移動に合わせて小惑星がエンジンを起動させて軌道修正を行うのであれば、その時こそ例のエンジン攻撃によって小惑星を自滅させてしまえばそれで済んでしまう程度の話でしかありません。イゼルローン回廊前面を常に哨戒して小惑星群の早期発見に努めれば、機動力が速いことも併せ、移動要塞はかなりの高確率で小惑星攻撃をかわすことができるでしょう。>

まず小惑星(ないし氷塊)のエンジンですが、アルテミスの首飾り攻撃時における銀英伝2巻の記述やアニメ版での描写を見る限り、ガイエスブルクのようにリング上にはつなげていません。どちらかと言えば、筒型になっています。また早期に発見して攻撃しても、アルテミスの首飾りの高出力レーザー砲やミサイル攻撃でも防げませんでした。あるいはトゥールハンマーなら破壊できるかも知れませんが、連射が出来ない分、波状攻撃を掛けられれば終わりです。

そして移動要塞が実際に避けられるかどうかです。まず最初に言っておくことがあります。
私はガイエスブルク移動要塞の通常エンジンによる航行は、「前進」と「後進」だけしか出来ないと確信しています(爆)。理由はアニメでガイエスブルク移動要塞が動くときは、常に直線運動だったからです(爆)。
アニメ版で宇宙艦艇の移動(前進)は、核融合炉が動力源と思われる後尾の主機関で行っていると思います。しかし急停止、艦首を敵に向けながらの後退、横への平行移動、回頭などは艦首及び側面の噴射口から推進剤のようなものを噴射して行っています。つまり後尾の主機関は、基本的に前進用だけだと思えるのです。
しかし当然ながらガイエスブルク移動要塞には、エンジンだけでそんなもの姿勢制御用の噴射口はありません。造ろうにもエンジンによる移動ならまだしも、推進剤噴射で40兆トンのスライド移動は不可能でしょう。ガイエスブルクが左に回頭するためには、エンジンを吹かして前進して大回りに左へ向かうしかないでしょう。恐ろしいほどの無駄です。
本当のことを言えば、ガイエスブルク移動要塞は「前進」しか出来ない!としたかったのですが、イゼルローンの要塞主砲の射程圏内に近づいたあと、一旦射程圏外へ後退していました。まさか大回りでUターンしたとは思えないので、艦艇と違いエンジンが逆噴射も出来るように改良していたと推測します。
私はこの仮説から、移動要塞は基本的には構造上、前進後進しかできないと考えています。横移動が出来なければ小惑星(氷塊)攻撃を避けることは無理でしょう。

今回は時間がないのでここまでとさせてもらいます。


No. 3654
Re:結局、何が言いたいの?
Ken 2003/02/14 08:52
パンツァーさん。

>私は、他の人(冒険風ライダーさんや不沈戦艦さん)が放擲したような、Kenさんの質問にも、まともに回答してきたのですよ。

ありがとうございます。


パンツァーさんの挙げられたAかBかの二者択一は、すこし単純すぎると思いますが、今回の議論の流れの中では、Bととっていただいても結構です。艦船に比べて、要塞に関する証明のreliability(信憑性と訳すのかな?)が著しく低い、というのが論旨ですから。


[艦隊と要塞の違いについて]

私は、何かを証明する方法として、

1.演繹的に証明する。
2.帰納的に証明する。
3.現実世界の科学手法を用いる。

という3案を提案しました。

この中で、本当の意味での「証明」ができるのは、実は1だけです。この形で何かを証明した人は、天地に向かって「自分の証明は完璧だ。覆すことはだれにもできない」と宣言できるでしょう。ピタゴラスの定理を持ち出したのは、それを明らかにするためでした。

次に2の帰納法ですが、私がG・マーティの言葉を引用したように、これは厳密な意味での証明ではありません。それでも観察例を積み重ねるほど信憑性が増してゆきます。多くの天文家の数十年の観察に支えられたからこそ、ケプラーの法則は受け入れられ、ニュートンの考察にも大きな影響をあたえました。

そして3ですが、これは純然たる帰納の弱点を補うものです。多様なの因子を多様な条件で観察するのは、生身の人間には難しいので、観察例には不可避的に「すきま」を生じます。そのすきまを既知の物理法則で、場合によっては新しい物理法則で埋めようとする作業です。

さて、銀英伝ですが、1の形で「どこへでも行ける」ことを証明するのは、要塞どころか艦隊でも不可能です。演繹法にしたがう限り、ヤン艦隊がフェザーンへ侵攻できることすら証明できません。ここでは、艦隊と要塞には差がありません。それどころか、パンツァーさんが挙げられた「A」、つまり

>A銀英伝に登場するテクノロジー一般が、
>「可能であると証明するにも、不可能と証明するにも、不十分である」

という結論になると思われますが、これを持ち出すと、「なにも証明はできない。終わり」と「まったく、面白くない結論」になるので、今はこの立場をとりません。


帰納法ではどうでしょう?上に書いたように、帰納法は純然たる証明ではありませんが、とにかく観察例を積み重ねるほど信憑性が増します。つまり、帰納法とは観察例を積み上げることで信憑性を増大させる作業だといえます。

そして、艦隊と要塞の差はここで生じます。

銀英伝の記述では、艦船(質量数万トン以下の構造物)の宇宙航行は、ヤノーシュ博士以後だけ考えても千年以上の歴史があります。また航行の形態も多様です。移動距離を考えても、「一万数千光年の征旅」もあれば、艦隊間のシャトル連絡もあります。

艦船が航行する環境も一様ではありません。穏やかな宙域の穏やかな航行もあれば、危険に満ちた「難所」の航行もあります。難所の例としては、同盟第2艦隊が入ったレグニッツァの雲海中や、ビッテンフェルト艦隊が横断したランテマリオの気流などがあります。シュタインメッツ艦隊など、ブラックホールの危険にさらされながら、「シュワルツシルト半径ぎりぎりの線へ突進し、双曲線軌道に乗って船の推力にまさる速度」を得るという曲芸をやっています。多様な条件での多様な観察例。つまり、艦船の航行には、帰納を行う上で、なによりも大切な、観察の積み重ねがあるのです。

ところが、移動要塞となると、あとにもさきにも、ガイエスブルグの一例しかありません。40兆トンの質量が、ある条件の中で、イゼルローン要塞の位置まで移動しただけです。

帰納法で証明しようとするとき、艦隊と要塞にはこのような差があるのです。

現実世界の既知の物理法則を利用しての考察は、帰納法の弱点を補う上で、私が最もやりたいことですが、冒険風ライダーさんにも、パンツァーさんにも否定されております。

以上です。


No. 3655
Re:徹底反論3−1
S.K 2003/02/14 22:38
> a-ruさん
> 特に私はあなたとの議論で不快な記憶が無いので、謝られてもただただ恐縮するばかりで。(笑)

 お心遣いいたみいります。


> Bに入る前にS.Kさんへ
>
> >悪いですが、ここで示唆されている原作6〜8巻のヤンの逆境について@突然アンドロメダ共和国が援軍にくるAハンサムのヤンは突然起死回生の大魔術を思い付くBなにもない現実は非情である のどれ、もし
> くはどうだとお考えですか?
>
> 手厳しいですね(笑)。
> 私の例は、実例ではなく、相似、近似例と呼べばよいのでしょうか、そういう類で述べたのです。私のあげた例が、規模が大きくなって、対象の言葉が入れ替わったときに、イゼルローン改造計画に繋がらないかということです。ぜひ、お聞きしたいのですが、このような状況の中でどのように説得するのでしょうか。短期間に説得する方法をお聞きしたいがために例をあげたわけです…て先にそれを言えって感じですけど。

 そうですね、まず民主的にイゼルローン幕僚とエルファシル臨時政府首脳部を奪取したイゼルローン要塞に召集、上記@〜BにC時期尚早な挙であった。エルファシル独立政府を解散、ヤンとロムスキーは事ここに及ぶに至ったレンネンカンプ帝国総督府とレベロ同盟代表の迷走を指摘し弁明すべく帝国法廷に出頭 を示唆して決議を取ることが可能ですね。
 勿論この間にも「否決されたら中止すれば済む事だから」で要塞改造工事は強行してかまわないでしょう。
 中止を言いたてても、おそらくはヤン以外の誰も「ではどうなさいまか?」の疑問に回答はできないでしょう。
 それ以外では「軍事に関する全権はヤン・ウェンリーの指揮下」でごり押ししても誰もヤンを不信任して代わりに帝国と戦う事は不可能なのでまずは通るでしょう。
 改造までの道はそれなりに開けていますよ。


> 何度か出た話ですがガイエスブルグ要塞が移動した事実は認識されてますか?
>
> これもまた手厳しい。要塞に対する認識の違いでしょうね。
> 私のガイエスブルグ要塞に対する認識は「固定式砲台を取り外して、普通の船につけた」だけものである。そして、冒険風ライダーさんのいう移動要塞というのは完全な「戦艦」であるという認識です。
>  ガイセスブルク要塞の失敗は「固定式砲台を取り外して、普通の船につけた」という無理が作中の結果をもたらしたのではないかと分析しているのですがいかがでしょうか。あと以前の、空母と移動要塞設計思想の件ですが、やはり違います。あくまで空母は戦場に巻き揉まれる前に退避する、直接戦闘には参加しないのに対して、移動要塞は危険を侵して、戦場に飛びこむわけですから。空母は、英語の意味では「戦闘機の運び屋」です。

 うーん、それで「戦闘空母」という単語を使ったのですが。
 あとは倉本さんのお話にも少々かかりますが後方支援に徹する局面もあるでしょう。
 ただ倉本さんには「最初から戦闘に立つ気が無くとも包囲される可能性は常にある」ので移動要塞の戦闘能力は計算しておく必要があるのではと申し上げます。


> >それは最初の論点が違います。
>
> う〜ん、論理の基本は帰納法ではないでしょうか?帰納法で原因を突き止め、演繹法でそれを証明する、それで結果が同じになったときに、はじめて正しいと言う事が証明されるのではないですか。それをいくつも積み重ねて統計を取り、近似値を求め証明されたときに、はじめて予測を立てることが出来るのではないでしょうか。
> ではなぜガイエスブルグ要塞があれほど短期間で工事ができたのかという理由について最も合理的な理由はなんでしょうか。私が考えつく理由は「徹底反論」のレスで述べています。他にどんな理由が上げられるか?教えていただきたいです。

 a-ruさんと逆の理由、つまり「用途が斬新だっただけで使用される機材と技術は極めてありふれた物だった」という説を押しております。
 ラインハルトはシャフトから説明を受けると同時にプロジェクトを立ち上げ同じく講習期間などもとりたてて設けない説明でケンプとミュラーは改築工事の指揮を始めています。
 ならば実際の工事担当者には大規模だから相応の時間が必要なだけで理解に困る点は何一つなかったとするのが自然ではないでしょうか。


> >冒険風ライダーさんの説明や他の方の質問内容を考えもせず自分の疑問もしくは主張に固執された論者が複数名残念ながら存在した事が一番長期化と紛糾の原因ではなかったでしょうか。
>
> 逆ではないですか。これほどの疑問・批判があるならばもう一度提案を再点検するべきだったと思います。過去のレスでの冒険風ライダーさんの返答は真正面からその疑問に対して答えていないように思いました。

 補足でも申しましたが「質問者サイドで回答窓口を絞る努力」はあってしかるべきだったと思いますよ。
 少なくとも質問者の大半が冒険風ライダーさんの回答を希望していたのですから、負担を減らしてさしあげる努力も必要だったでしょう。


> では、B実用化したと仮定して、民主主義をどのように残すのかです。

 恐ろしく乱暴な切り方ではありますがそれは帝国から逃げ切り当座の安全が保証されてから内部崩壊覚悟で喧々囂々始めるのが正しいでしょう。
「非帝国」以外には多分に接点の少ない脆い共同体である事実は用心して然るべきです。


> 要塞改造の政治的可能性について
>  ヤンは要塞改造ができなかった理由に、「資金」をあげました。大きな要の一つと言えるでしょう。ただ「資金がない」という理由を額面通りにとって良いか、その裏の意図の可能性も考える必要があるでしょう。彼の先見力のことを考えてみればの話しですが。
>
> 冒険風ライダーさんは、
> <同盟政府&軍首脳部に対して「移動要塞が持つ強大な潜在的脅威と無限の可能性」を報告し、その対策を考えると共に、移動要塞実現のための研究・開発チームを設けさせること。こんな簡単なことすらも行わなかった>
>  これが簡単なことだと片付けられることでしょうか。

 まあ「ハード信仰嫌い」「軍事的優位を得た政府の判断にアムリッツァで懲りた」を理由にラグナロック以前のヤンは気付いても移動要塞の可能性は秘匿しただろうと私は思いますが、単純にプラン提出という行為と有意義と思っての計画推進は楽だったのではと思います。
 フォーク准将はイゼルローン奪取からかなりの短期間で帝国侵攻計画を打ち出して来ました。
 フォークには政治力がありましたがヤンには実績があります。
 敵も多いヤンですので採用されたかは微妙ですが少なくとも相応の場で論議の俎上に乗ったことはまず信じていいでしょう。

 あとガイエスブルグ敗北の原因はケンプの資質とそれを配慮できなかったラインハルトに帰結する所が大きいと思いますよ。
「即断能力」が元戦闘機乗りのケンプの長所の一つでしょうが、もしミュラーの判断を尊重して「ヤン不在」の対策を練っていたら、もし要塞特攻にあたってミュラーに自艦隊の指揮をも委ね2個艦隊でイゼルローンまでのルートを間に合わせにでも確保・防衛してもらっていれば別の結果も有り得た事でしょう。


No. 3656
Re3652:銀英伝世界の軍事的設定
冒険風ライダー 2003/02/14 23:45
<そのため私は、原作における戦闘艇の戦闘シーンの描写はともかく、戦闘艇の数については明確な田中芳樹の間違いであり、信ずるに足りぬというスタンスです。この戦闘艇に関してはアニメ版の設定および描写の方が正しいでしょう。
冒険風ライダーさんもアニメ版の銀英伝は見ていると思います。その戦闘シーンでは、戦闘艇が戦艦を単機であっさりと破壊するなど大活躍をしています。そのためゲームで戦闘艇が強いのは、ある意味当たり前なのです。原作の戦闘艇の機数が、宇宙母艦の数に対して完全に間違っているのですから。>

 単座式戦闘艇の弱さに関しては↓
http://tanautsu.duu.jp/the-best01_05_08_aa.html
 のURL先である程度語られてはいるようですが、確かにあの単座式戦闘艇のあまりの弱さと数の少なさは私も疑問には思っていましたよ。何しろ、攻撃力も防御力も弱小で、数も艦船の10分の1以下、下手すると100分の1近くしかない、ときているのですから「一体何のために存在しているんだ?」とは私もやはり考えざるをえませんでしたし。
 ただ、原作ではあくまでも「単座式戦闘艇は弱い」というのが常識のようですし、銀英伝3巻でユリアンが巡航艦レンバッハを撃破する描写などを見てもそれは明らかなので、この件に関してアニメ版の設定を重視するというのも少々考えものではないかと思うのですけど。件の巡航艦撃破のシーンは、アニメ版にも全く同じものがありましたし。
 いずれにせよ、単座式戦闘艇の作品設定に関しては、今回のスレッドとは全く関係のない話題ですので、議論したいのであれば別スレッドを立てた上で改めて議題を提起していく方が良いでしょう。このスレッドでこの話題を展開しても、移動要塞スレッドに吸収されるだけです。


<冒険風ライダーさんが通常航行の速度が艦艇よりも速いから早く回廊に着いたと考えています。しかし私は、ワープ距離が普通の艦艇、というか艦隊よりも長いので回廊に早く着いたと考えています。この時点で私たち二人の考えは全く逆ですね。
如何に巨大エンジンが12機あるとは言え、質量が40兆トンもある物体が、宇宙戦艦よりも速いとはとても思えません。むしろ巨大な12個のワープエンジンの力で、より遠くまでワープできると考えた方が私は納得できます。
また宇宙艦隊が、1万5000隻近くの艦艇で同時にワープするのに対して、移動要塞ならば要塞内に艦隊を収容してワープすれば、質量が重くとも1個の物体がワープするだけです。1万以上の複数同時ワープよりも、1個だけのワープの方がワープアウトを考えてみても安全で、しかもより長く遠くへワープできると予想します。
やはり私は、移動要塞の通常航行での速度は、艦艇よりも遅い。よくいって同速度だと思います。>

 すいませんが、私が「移動要塞の航行速度」として言及したのは、一応ワープと通常航行の双方を含めてのものです。
 八木さんの前の投稿No.3643における反論の中にも、

<あと移動要塞は補給拠点として以外ではそんなに強くありません。アッテンボロー分艦隊とアイヘンドルフ分艦隊の遭遇戦では、相手を発見したのは時間的距離で50分でした。50分の距離がありながら、新兵中心のアッテンボローは逃げませんでした。つまりこの程度の時間的距離では逃げられないのです。艦艇よりも遅い要塞では、最後には追いつかれるでしょう。一個艦隊がイゼルローン移動要塞に接触できれば、それでほぼ終わりです。要塞の移動を中止して敵艦隊を排除しなければなりません。一個艦隊は例え全滅してでも足止めをして増援が来るのを待てば、最後にヤン艦隊は動けなくなり要塞に籠もって、戦うしかありません。待つのは敗北です。ラインハルトもここまでくれば、容赦はしないでしょう。>

 というものがあったので、私は「移動要塞の航行速度は艦船よりも速いのだから、速度差で追いつかれることはありえない」という意味も含めて反論したまでです。これは「ワープをも含めた移動要塞の航行速度全般」について言及したものではなかったのですか?
 あと通常航行に関しても、八木さんはNo.3643の投稿の中で「アニメは同速度に見えますが」とはっきり言っていますよね? ならばゲームごとにいちいち設定が異なり、しかもゲーム性を重視するために設定そのものを色々といじくっているゲーム版の設定を重視する必要性はないでしょう。銀英伝ゲームはパソゲー・コンシューマー合わせて10前後は余裕で出ていますし、統一された設定というのもほとんど存在しないのですから(ゲームによっては、原作で「最も弱小な存在」であるはずの単座式戦闘艇が「最も強大なユニット」になっているものすらあります)、証拠能力としてはあまり信用できるものではないのではないかと。
 設定重視で行くのならば、基本はあくまで原作を第一に尊重し、原作で補えない設定をアニメ版から持ってくるというのが、一番矛盾の生じない理想的な方法ではないでしょうか。


<まず小惑星(ないし氷塊)のエンジンですが、アルテミスの首飾り攻撃時における銀英伝2巻の記述やアニメ版での描写を見る限り、ガイエスブルクのようにリング上にはつなげていません。どちらかと言えば、筒型になっています。また早期に発見して攻撃しても、アルテミスの首飾りの高出力レーザー砲やミサイル攻撃でも防げませんでした。あるいはトゥールハンマーなら破壊できるかも知れませんが、連射が出来ない分、波状攻撃を掛けられれば終わりです。>

 これに関しては、銀英伝外伝短編「黄金の翼」のストーリーで展開されている「第五次イゼルローン要塞攻防戦」が参考になるでしょう。
 第五次イゼルローン要塞攻防戦では、当時の宇宙艦隊司令長官シドニー・シトレ大将の指揮により並行追撃と無人艦突入作戦によって「イゼルローンの厚化粧を一部だけ剥ぎとった」というレベルの善戦を行うことに成功しています。この戦いでは、トゥールハンマー主砲射程に引きずりこもうとする敵艦隊の後退につけこむ形で同盟軍が並行追撃を行い、敵味方を故意に入り乱れさせることによってトゥールハンマーを事実上無力化させた上で、積載されたウラン238ミサイルと液体ヘリウムを満載した無人艦を要塞に特攻させる作戦が展開されたのです。
 この作戦は途中までは非常に上手くいっていたのですが、無人艦突入による要塞陥落に恐れをなした当時のイゼルローン要塞司令官クライスト大将が、味方をも巻き添えにする無差別主砲斉射を決断し、トゥールハンマーを乱射させたがために作戦の前提そのものが瓦解してしまい、結局は失敗に終わってしまいます。
 この戦いの様子から、たとえ「アルテミスの首飾り」破壊時に使用された氷塊や無人艦クラスでイゼルローン要塞を攻撃しても、トゥールハンマーの主砲斉射1発があればいともたやすくねじ伏せられてしまうことがお分かり頂けるでしょう。第五次イゼルローン要塞攻防戦時に敢行された無人艦突入作戦でさえ、実は「並行追撃によってトゥールハンマーを無力化させる」という前提条件によって、初めて成立しえたシロモノでしかなかったのです。
 また、トゥールハンマー発射から再発射までにかかる時間はわずか200秒弱(銀英伝10巻 P57)でしかありませんし、イゼルローン要塞にはトゥールハンマー以外にも、電磁砲・荷電粒子ビーム砲・レーザー砲などに代表される砲塔・銃座が総計1万以上も存在します(「夜への旅立ち」収録「黄金の翼」 P208)。これでは、たかだか氷塊や無人艦程度のシロモノで波状攻撃を仕掛ける「だけ」では、数えるのもウンザリするほどの膨大な物量を事前に用意した上で長時間、しかも常に大量に突入させ続けない限り、イゼルローン要塞を仕留めることなど不可能に近いのです。だからこそ、第五次イゼルローン要塞攻防戦の後、無人艦突入作戦はイゼルローン要塞を巡る戦いにおいて全く使用されることはなかったのです。
 全長1キロクラスの無人艦や氷塊を使った特攻作戦が、第五次イゼルローン要塞攻防戦以降の戦いで全く使用されなかった理由は、これで説明可能でしょう。

 しかし、これは要塞クラスの小惑星特攻に関してはまるで適用できません。要塞対要塞の戦いを見れば分かる通り、要塞の主砲をもってしても、要塞クラスの巨大な図体を誇る小惑星を傷つけることはできても、完全に消滅させてしまうことは不可能なのです。だからこそ、ヤンもラインハルトも「要塞特攻」などという、私に言わせれば「コストパフォーマンスの壮大なる浪費」としか思えないような策を立案したりもするのですし、小惑星特攻に対する対処法は「かわす」以外の方法がありえないわけです。
 で、続きなのですけど、


<私はガイエスブルク移動要塞の通常エンジンによる航行は、「前進」と「後進」だけしか出来ないと確信しています(爆)。理由はアニメでガイエスブルク移動要塞が動くときは、常に直線運動だったからです(爆)。
アニメ版で宇宙艦艇の移動(前進)は、核融合炉が動力源と思われる後尾の主機関で行っていると思います。しかし急停止、艦首を敵に向けながらの後退、横への平行移動、回頭などは艦首及び側面の噴射口から推進剤のようなものを噴射して行っています。つまり後尾の主機関は、基本的に前進用だけだと思えるのです。
しかし当然ながらガイエスブルク移動要塞には、エンジンだけでそんなもの姿勢制御用の噴射口はありません。造ろうにもエンジンによる移動ならまだしも、推進剤噴射で40兆トンのスライド移動は不可能でしょう。ガイエスブルクが左に回頭するためには、エンジンを吹かして前進して大回りに左へ向かうしかないでしょう。恐ろしいほどの無駄です。
本当のことを言えば、ガイエスブルク移動要塞は「前進」しか出来ない!としたかったのですが、イゼルローンの要塞主砲の射程圏内に近づいたあと、一旦射程圏外へ後退していました。まさか大回りでUターンしたとは思えないので、艦艇と違いエンジンが逆噴射も出来るように改良していたと推測します。
私はこの仮説から、移動要塞は基本的には構造上、前進後進しかできないと考えています。横移動が出来なければ小惑星(氷塊)攻撃を避けることは無理でしょう。>

 この仮説の成立はどう考えても無理でしょう。八木さんの仮説は、現代世界で言えば「ハンドルがない大型トラックを使って荷物を運搬する」とか「一切の方向転換ができない飛行機を使って物資や客を輸送する」といった類の与太話に近いものがあるのですけど、そんなものが成立するはずもないことなど、少し考えてみれば簡単に分かる話ではありませんか。そもそも、もしそんな欠陥を抱えたシロモノに将兵や艦隊を満載して要塞攻撃を行わせていたのであれば、ラインハルトは無能どころか「狂人」と評しても甘すぎるくらいに常軌を逸していると言わざるをえません。そこまでラインハルトを貶めて一体何になるというのですか?
 第一、あの移動要塞が方向転換を行うなど、私には非常に簡単であるようにしか思えませんけどね。素人考えではありますが、たとえば左旋回する際には、進行方向右エンジン3つほどの出力を上げて要塞を左に方向転換させ、目的の角度まで曲がったら右エンジンの出力を元に戻した上で、今度は進行方向左エンジン3つの出力を上げ、旋回が止まり、バランスが取れたところで全エンジンの出力を均等にする。こんな形で旋回は充分に可能でしょうし、また同じような要領で上方や下方に移動することだってできるでしょう。
 そもそも、仮にも3次元世界の宇宙空間で「前進と後退しかできない」などという1次元ないしは2次元の世界をうろついている移動要塞など、戦う以前に目的地にたどり着けるのかどうかさえも怪しいシロモノでしかないのではありませんか? 八木さんの仮説は極めて大きな無理があり過ぎるように思います。

 それと八木さんにひとつ質問があるのですけど、八木さんは「移動要塞に改造しても、小惑星特攻を避けることはできない」という論説を展開しておられる割には、静止要塞の危険性について全く触れておらず、また小惑星特攻の危険性を承知していながら「イゼルローン回廊の拠点防衛」については何故か執拗に固執しておられます。では八木さんはイゼルローン「静止要塞」を一体どのように運用していけば良いと考えておられるのでしょうか?
 もし八木さんの仰る説が仮に正しいとするのであれば、イゼルローン要塞は静止要塞だろうが移動要塞に改造しようが、拠点防衛に関してはどちらも危険であることには変わりがないということになります。ならば小惑星特攻の前には「的」にしかなりえないイゼルローン要塞に依存した防衛に固執することは、自軍の将兵や要塞内の民間人を無用の危険に晒すことになってしまう愚策であると言っても過言ではないでしょう。にもかかわらず、あくまでイゼルローン「静止要塞」に拠った回廊防衛にこだわる八木さんの主張はどうもよく理解できないのですよ。小惑星特攻に晒されるイゼルローン「静止要塞」は全くなす術もなく、軍民500万人と共に相当悲惨な最期を迎えるのではないかと私は考えているのですけど、それは一向にかまわないという意見なのですか?
 むしろ、そのような「的」になる危険性を避けるためにも、イゼルローン要塞を移動要塞に改造することによって、防衛方法を抜本的に変革したほうが良いのではないでしょうか。すなわち、拠点防衛ではなく、敵の侵攻に応じて臨機応変に移動&戦闘配備を可能とする艦隊と同じような運用システムに切り替え、味方艦隊の支援・援護を目的とした兵器として機能させるのです。これならばイゼルローン回廊だけでなく、敵の侵攻に応じていつでも好きな場所に要塞を自由に展開させることができ、要塞を同盟の国防に大きく寄与させることができますし、もちろん小惑星特攻の標的になる愚を避けることもできます。
 こういったメリットを全て捨て去り、小惑星特攻の標的になる危険性を考慮しても、あくまでイゼルローン回廊の拠点防衛を何が何でも行わなければならない理由があるとでも言うのであれば、是非ともその理由と要塞の具体的な運用方法を教えて頂きたく思います。


No. 3657
取り急ぎ返答を
八木あつし 2003/02/15 01:53
<原作における戦闘艇の少なさについて>
え〜戦闘艇の数に関しては、改めてレスをたてます。まぁ移動要塞論が終結してからですね。

<移動要塞の速度>
ゲーム版の移動要塞はとりあえず横にどかします。ちなみに私が参考にしたのは、セガサターンとプレイステーション用に製作されたシミュレーションゲーム「銀河英雄伝説」でした。
個人的には貴族連合軍を使ってラインハルト軍を打ち破るシナリオを用意して欲しいです。

<小惑星(氷塊)攻撃>
通常航行の無人戦艦特攻と光速に近い速度で突っ込む小惑星(氷塊)では、同じように論じられません。トゥールハンマーの発射後、200秒の充電中に第2撃がやって来ますよ。それに衝突時の衝撃が全く違いますし。
またイゼルローンの要塞主砲以外の砲塔からの攻撃が、アルテミスの首飾りの高出力レーザー砲よりも高いとは思えません。削れても破壊はできないでしょう。それに1万以上の砲塔があるといっても、球体の全周囲に1万です。まぁアニメ版の流体金属に浮かんでいる浮遊砲台システムならば砲塔の集中ができますが、原作版では無理でしょう。

<ガイエスブルク移動要塞の移動>
これはアニメを見たときの感想にも近いので、取り下げてもいいのですが……。しかし捨てきれないなぁ。

<要塞の役割・運用について>
私はイゼルローン要塞を自衛も可能な巨大補給基地だと考えています。あくまでも要塞主砲や防御外壁は二次的なものにすぎないと。
第3巻でのシャフトの台詞やイゼルローン要塞建造の理由などから、帝国軍宇宙艦隊の活動限界点は、オーディンからイゼルローン回廊同盟側出口だと推測できます。その艦隊の補給問題を解消するために、中継補給基地としてイゼルローンが建造されました。
これまで同盟軍がそれこそ小惑星攻撃の波状攻撃を掛けて要塞を破壊しなかったのも、将来の帝国領侵攻における補給拠点が必要だからこそ無差別破壊攻撃をしなかったのでしょう。あと同盟には要塞建造のノウハウがまるでなかったのも理由かもしれませんが。

冒険風ライダーさんがこうすればよりベターに、よりベストになったと主張されるのに対して、私は移動要塞にしたくとも様々な条件で出来なかったので原作の流れが一番のベターになってしまったと考えています。
3645の追記で書いたのは、同盟側ではイゼルローン共和政府時代でしか移動要塞に出来ないと言いたかったのです。笑い話みたいですが(笑)。

それにしても何か勝手が違っています。ここ半年のタナ撃つBBSに出てきた銀英伝IFシミュレーションにほぼ常に参加してきた身としては、今の自分の進め方に???なところもあるのも確かです。
普通ならば移動要塞の可能性のIFに挑戦しているのが私なのですけどねぇ。(;´ー`)y-~~~

とここで論戦の途中ですが……スミマセン。m(_ _)m
私の諸事情(自サイトの更新・文芸部への作品提出・引っ越しの準備)で、少しばかり時間が取れない状態になってしまいました。(それにここに書き込みばかりしているのを同志や部員にバレたのもあります(汗))
次のレスが何時になるかは神のみぞ知ります。


No. 3660
亜光速ミサイルシステム
SAI 2003/02/15 21:49
 今、銀英伝を読み返して思ったんですが、ヤンが移動要塞を
考え付くよりも、むしろ自分でアルテミスの首飾り攻撃時に使い、実証
した亜光速ミサイルを使ったシステムをどうして思いつかなかったか
不思議に思いました。

どういうものかというと、ヤンが間に合わせで作ったものよりはもう
少し上等に製造した亜光速ミサイルと、FTLデータリンクとセンサー
を積んだ小型軽量で高起動な機体、まあ、新開発しないならスパルタ
ニアン改造型をたくさん、これだけです。

どれも安く簡単につくれる物だけですが、艦隊も移動要塞も撃破でき
る。なぜかといえば、亜光速ミサイルを、目標自体は探知できません。
正確には可能ですが、回避も迎撃もする時間は無い。銀英世界において
超光速の探査手段はないため、光の速さとほぼ同じ速度で進む亜光速
ミサイルを目標自体のセンサーで発見したときにはもう命中寸前で
あるからです。
 同時にこれは亜光速ミサイル自体にセンサーをつけても何も見えない
ということを意味します。

そのままならまっすぐ飛ぶしか能の無いミサイルにすぎませんが、
FTLデータリンクを積んだセンサーがあれば違います。
目標の位置を観測し、その情報をFTLでミサイルに伝達、同時に
センサーそのものの位置をも伝達します。FTLはもろもろの記述から
超光速ではあれど有限の速さなので、センサーから送信された時刻と
ミサイルで受信した時刻の差から距離が出ます。それを最低三つの
センサーからの情報があればミサイルの現時点の位置がわかります。
ミサイルをある程度軌道変更が可能なようにつくれば、目標への誘導
ができます。
回避も迎撃もできない、理論上の射程は無限大の必殺の魔弾の出来上がりです。
艦隊も移動要塞も発見され次第、破壊されてしまう、それを避けるためには、ワープ不可能な星系内(星系入り口にワープアウトしてから
通常航行で星系内に侵入してくる。それから星系内でワープで逃げ出したとかワープを使った戦闘機動というのはない)には侵入できません。

移動要塞破壊シミュレーション

移動要塞が星系入り口にワープアウト、星系内部に侵攻を開始する。
要塞から艦隊が出撃し、索敵機を放つ。
それを発見した星系側は、多数の戦闘艇を発進させ、要塞側の索敵機を
撃破もしくは追い払うことで、要塞側の索敵ラインを下げさせる。
十分に下がったところで、艦隊攻撃用多弾頭型亜光速ミサイルを発射、
戦闘艇は艦隊の至近で測定およびミサイルの誘導を開始する。艦隊や要塞では小型戦闘艇の効果的な迎撃はできない。できるなら、ワルキューレの迎撃にスパルタニアンは使わない。小型戦闘艇で艦艇はおろか、
要塞に傷をつけることはできないが、それはこの場合問題ではない。
亜光速ミサイルは最終段階で、多数の弾頭を放射、慣性の法則により
亜光速で飛んでくる弾頭により戦艦は次々に爆散し、要塞以外に配置
されたセンサーは無くなる。亜光速ミサイルにとっては要塞に配置さ
れたせンサーは無いに等しい。その時点で要塞破壊用の亜光速ミサイル
が飛来する。要塞がどれだけの速度を出そうとも亜光速ミサイルに
とっては止まっているに等しい。もし、亜光速ミサイルを回避
できるというなら、ほぼ同じ速度のトゥールハンマーも回避できる
はずだが、そのような記述はない。さらにいえば回避しようにも
見えたときにはもう遅い。
さて着弾するが威力については、要塞対決の時に、工作艦で運べる
程度の兵器でイゼルローンの装甲に直径3キロメートルの巨大な
すり鉢上の穴が開いたとあるので、装甲も無敵ではない。破壊も可能
である。少なくとも、工作艦で運んだ兵器を亜光速ミサイルにつめば
それ以上の損害を与えることは可能である。回避も迎撃もできない
兵器に一方的にやられるのだから破壊は時間の問題でしかない。
 何発目かの着弾したときついに、核融合爆発を起こし、移動要塞は
歴史の一ページとなった。


これはイゼルローン要塞破壊のシミュレーションでもあります。
ヤンは自分でイゼルローンは難攻不落の鉄壁の要塞ではないという
事を実証したにもかかわらず、そのことをクーデター後に同盟政府に
具申した形跡も無いし、あまつさえ、そこにこもるんですから、
不思議だとしかいいようがないです。だれか、ヤンがどうしてそうした
のか説明してほしいです。


No. 3661
「回廊の戦い」の意義と勝算
Night 2003/02/16 00:31
>  繰り返し言いますが、「回廊の戦い」でヤンが勝てる可能性も、民主主義が生き残れる可能性も、どちらも一片たりとも存在する余地すらありません。可能性が全く存在しない「回廊の戦い」と、とにもかくにも可能性が存在する移動要塞戦略のどちらを取るべきだったか、答えは一目瞭然なのではありませんか?

(A) 「回廊の戦い」の勝算=0%
(B) 「移動要塞化」の勝算>0%

であるから、B>Aであることは明らかと冒険風ライダーさんは上の文章で主張されているようですが、本当に勝算が0%であるなら、何故、ヤンは降伏でも逃亡でもなく、「回廊の戦い」を選択したのでしょうか。それこそ、「滅びの美学」でも堪能したかったのでしょうか。
 それは明らかにヤンの人物像とかけはなれています。彼は彼なりに「回廊の戦い」において勝利と民主主義の生き残る可能性を見出したからこそ、戦ったのです。それについてやや長くなりますが、思うところを述べたいと思います。


(1) 「回廊の戦い」の意義と勝利条件
 「勝算」を計算するためには、まず「勝利」とは何であるか定義する必要があります。
 ラインハルト、ヤンの双方において「回廊の戦い」の目的と勝利条件について銀英伝8巻を元に簡単にまとめてみましょう。

【ラインハルト】
 目的  :宇宙統一の画竜点睛。バーミリオンの雪辱を果たし矜持を守る。戦争欲。
 勝利条件:用兵の妙を以って、艦隊戦により正面からヤンを打ち負かす。

 ラインハルト側についてすぐに分かる事は、その目的も勝利条件も非常に個人的なものだということです。「回廊の戦い」の目的は彼の自己満足以外になく、彼がもう少し戦意を抑え、深い度量を持って事に臨んでいたなら、戦う前にヤンと会談の場を持ち、その(ささやかな)要求を呑んだやもしれません。つまり、帝国側にとっての「回廊の戦い」の意義は、それこそ『専制君主のわがままをかなえるため』でしかないということになります。
 それが分かっていたからこそ、ヒルダも双璧もマリーンドルフ伯さえも親征に対しては批判的であったわけです。

 では、それに対抗する立場のヤンの目的と目指した勝利条件は何だったでしょうか。

【ヤン】
 目的  :来るべき専制の冬に備えて民主主義の芽を残す。
 勝利条件:戦術的勝利を重ねる事によりラインハルトを講和の場に引きずり出す。

 ヤンの目的はラインハルトや帝国の打倒ではなく、内政自治権を有する民主共和制の一惑星の存在を認めさせるというささやかなものです。そのために、ラインハルトを講和の場に引きずり出すことが彼が目指した勝利条件です。
 では、どのようにすればラインハルトを交渉のテーブルにつかせることができるのでしょうか。ラインハルトの為人、および昨今の情勢をよく理解していたヤンにとって、それは明白でした。つまり窮鼠猫を噛むの例え通り、少数の戦力であっても、回廊の地形を活かし、戦術上の計略をめぐらして帝国軍を迎え撃ち、多大な損害を与えた上で、上に書いた『この戦いをこれ以上進めたとしても、失うもの/失ったものは多く、それに比べて得られるものはあまりに少ない』という事実をラインハルトを含めた帝国軍(これには幕僚から一般兵士まで全てを含みます)に再認識させ、この戦いの意義について考え直させれば良いのです。ラインハルトも暗愚な君主ではないのですから、そうなれば、不毛な泥仕合の事態を解決するために話し合いと講和という流れになる可能性は高いといえるでしょう。

>  第一、ヤン側にはラインハルトを交渉のテーブルにつかせることのできる外交カードが何ひとつ存在しない状態であったというのに、一体どうやってラインハルトと「民主主義を残すのが目的」の交渉を行うように話をもっていくことができるのでしょうか? ラインハルトと戦い続ける「だけ」では圧倒的物量作戦で圧殺される可能性が濃厚ですし、事実そうなりかけたではありませんか。もしあの時にラインハルトが突然病に倒れ、ラインハルトの側から停戦を申し出るなどという「類まれなる僥倖」に恵まれなかったら、そのままヤンは敗北の道を転がり落ち、民主主義(とヤンが呼んでいるシロモノが本当に「民主主義」という名に値するものなのかどうかは知りませんが)もまた抹殺されていたはずなのですけど、それでも「ベター」な選択だといえる根拠は何なのですか?

 まず、ラインハルトが停戦を申し出たのは、単に病に倒れたからではありません。8巻P108の記述にある通り、その時に夢に出てきたキルヒアイスに無用な戦について諌められたからです。そのような夢を見た理由については、ヒルダが親切に分析してくれています。

> 科学的に説明しえることである。意識の氷面化に混在する思惟と感情のうちから、複数の水流がからみあって上昇する。永遠に失われた友人に対する哀惜の念、それにともなう自己の過失への、増殖してやまない悔い。ヤン・ウェンリーという敵手に対する敬愛の思い。ファーレンハイト、シュタインメッツ両上級大将をはじめとする数百万の戦死者に対する自責の念。戦闘の推移の、いつにない鈍重さに対するいらだち。戦闘以外に事態を解決する有効な手段がないか、と思案する戦略家としての識見。
> それらの混沌のうち、もっとも明澄な部分が、ジークフリード・キルヒアイスという人格の中に統一され、結晶化される。ラインハルトは無意識のうちに、彼自身のかたくなさを説破して態度を変更させるための、もっともすぐれた方法を擬人化させたのだ……。

 病気も夢も、単にきっかけに過ぎません。この時点で、ラインハルトには停戦と会談を申し出るだけの充分な理由はあったわけです。そしてそれは、紛れもなく、ヤンが諦めることなく戦い抜いた結果なのです。
 もちろん、ラインハルトが停戦を申し出なかった可能性も充分考えられる以上、ヤンにとって「回廊の戦い」は賭けでもありました。しかし、紛れもなくその「勝算」は0%ではありませんでした。(実際、停戦と会談は申し込まれたのですから)

 勿論、彼我の戦力差は明らかであり、ラインハルトが何が何でもヤン達を倒すつもりだったら、ヤンがそれに抗することは不可能だったでしょう。その意味で、冒険風ライダーさんが、『敵側のラインハルトの胸先三寸に全てを依存しているだけでしかないヤンの方針』と言うのは全くその通りと申し上げるしかありません。
 しかし、そんな事はヤン自身が一番よく分かっていた事です。その上で、彼はその『ラインハルトの胸先三寸』を動かす方法こそを構想し、かつ、実現させたわけです。

 私は、これは『勝利』と呼んで恥じる事のない業績と思います。


(2) 移動要塞化の勝算はどれくらいのものなのか?

>  そして、移動要塞を使って「帝国領内のゲリラ戦」を展開し、要所要所を徹底的に破壊する、もしくはそれを辞さない強硬な態度を内外に示せば、それこそがラインハルトを本当の意味で屈服させ、交渉に応じさせる強力な外交カードとなりえるのです。最悪、「交渉に応じなければ、我々は未来永劫戦い続け、帝国および帝国250億の民全てを文字通り『消滅』させる所存である」というくらいの強烈な脅しの類でも行わなければ、あの「戦争狂」のラインハルトを「実力で」交渉のテーブルにつかせるなど、できるわけがないのです。

 上記のような焦土戦には私は全く賛成できません。それは「そんなことを行うのは情において忍びがたい」というような感情レベルの話だけでなく、もっと実利的な面からもそう言えます。
 まず、例え脅しであっても、民主主義の基盤である無辜の人民を虐殺するという宣言など、ヤン達の因って立つ理想、大義名分を自ら放棄するに等しい所業です。このような脅しをしたが最後、イゼルローンは『民主主義の最後の砦』どころか『邪悪な政治テロリスト達の巣窟』として認識され、ヤン達は全宇宙の人民達からの支持をほとんど全て失うでしょう。それどころか、内部にも多くの離反者を生み出すことになりかねません。
 次に、そのような卑劣な脅しをかけられたら、なおのことラインハルトは交渉のテーブルにつくわけにはいかなくなります。それは、政治テロリストの要求に帝国が屈するということを意味するからです。
 ラインハルトの認識の中で、イゼルローンは「単に目障りなだけの虻」から、「帝国臣民に仇なす毒蛇」になるでしょう。そうなったら、もう彼は「正面から艦隊戦で勝負」などという甘さは捨て、圧倒的な物量を活かしてイゼルローン包囲網を完成させ、今度こそ小惑星特攻だろうと何だろうと手段を選ばずにイゼルローンを抹殺しようとするでしょう。例え神出鬼没の移動要塞だろうと、全宇宙から御尋ね者の身、いずれ疲れ果てたところを捕捉され、沈められるというのがこのシナリオの結末のように思えます。

 いうなれば、それが帝国本土から遠く離れた「回廊の戦い」に限定される限り、ラインハルトの自己満足のために始めたものなのですから、やめるのも妥協するのも『ラインハルトの胸先三寸次第』です。
 ですが、舞台を帝国本土に移し、無関係の人民を巻き込み始めたら、ラインハルトには自らの臣民を守る義務がある以上、簡単にやめることも妥協する事もできなくなります。
 そうなると、彼我の物量差が効いてきます。移動要塞にどれだけの可能性があろうと、一機のハードウェアで宇宙情勢全てをひっくり返す事は不可能です。


(3) まとめ
 繰り返しになりますが、銀英伝8巻の時点で、既に宇宙の趨勢は決まっています。彼我の物量差は明らかで、弱小勢力が独自路線を貫こうと思ったら、昔から言われる『侮られるほど弱からず、恐れられるほど強からず』という方針を慎重に実践して行くしかないと思います。
 ですから、移動要塞が、冒険風ライダーさんが言う程にそんなにも強力であるというなら、それが強力であればあるほど『恐れられるほど強からず』に引っかかる危険性も強くなるわけです。(焦土作戦のようなひどい作戦をするならなおさらです)
 そのような要素も考えると、最初に書いた(B)「移動要塞化」の勝算(>0%)が、(A)「回廊の戦い」の勝算(>0%)よりも、本当に上であるか否かは、分からないと申し上げるしかない。それを一刀両断にB>Aと断定するには、Aの具体的な勝算の程は勿論のこと、Bにおけるイゼルローン移動要塞化の実現の不確実さ、かかる人手・時間・資金のコスト、(2)に書いたような作戦上の危険性も含め、あまりに不確定要素のパラメータが多すぎると思うからです。

 なればこそ、私は「回廊の戦い」を選択したヤンを一方的に無能、愚劣と嘲笑する気にはなれません。それは、歴史上の人物を、当時の事をよく知らない後世の人間が、後知恵を巡らせて断罪しているようにも思えるからです。


No. 3662
Re:亜光速ミサイルシステム
古典SFファン 2003/02/16 04:48
> どういうものかというと、ヤンが間に合わせで作ったものよりはもう
> 少し上等に製造した亜光速ミサイルと、FTLデータリンクとセンサー
> を積んだ小型軽量で高起動な機体、まあ、新開発しないならスパルタ
> ニアン改造型をたくさん、これだけです。

えーと・・・
これも、実を言うと議論しようとすると前提の調整が要ると思いますが(笑)、
まず、われわれの知る物理では、光速近くになると二つの破壊的要素が効き始めます。
一つは星間物質です。
薄くはありますが、光速付近ではウラシマ効果により航行する物体の時間が遅くなるのと相俟って、相対的に、
「一定の時間内に物体前面からぶつかってくる星間物質の量と相対速度は莫大になる」
事になります。
バサード・ラムの場合、機体前方に展開されるラムスクープ場(銀英伝の表現では「バスケット状の磁場」)が星間物質をキャッチし、
言わば真空地帯を作ってくれるのでいいのですが、それなしだと、
光速近くでぶつかってくる星間物質の抵抗で、物体は簡単に破壊されます(実際、プラズマ化するほどの相対速度です)。
もう一つは電磁波です。
星虹と呼ばれる現象ですが、亜光速航行する物体は、次第に波長が短くなる前方からの電磁波にさらされます。
これは探知障害になり得ます。
(いずれも本当に光速に近づいてから顕著になる現象ですが。)

ヤンが使った氷塊は巨大なので、前方からぶつかって来る星間物質を、言わばラムスクープ場で衝角のようにかきわけながら直進できるかも知れませんが、
スクープ場を係留する物体の質量が小さいと、ちょっとした乱流(こんな速度では、星間物質は凄まじく濃い流体も同然です)が生じても、進路は途方もない勢いで跳ね出してしまうはずです。
要するに、小さいミサイルだと進路が予測不能なぶれ方をする可能性が大です。

「誘導が効きづらい」と言う現象については、理由は違うけれどSAIさんも考慮しておられるようですが、
要するにこの種のミサイルは、
・助走距離が要る=いきなり亜光速では撃ち出せない。
 (作中でヤンが使った氷塊もかなりの加速距離を取っている)。
・ミサイルも弾頭も、一瞬でもスクープ場が消えたら、星間物質の抵抗で跡形もなくプラズマと化して消滅する=SAIさんが仰るような使い方は難しい。
・誘導が難しい=星間物質の抵抗で、予測困難な進路のブレが生じる。
ブレを補正しようにも、星虹による探知障害でセンサーは使用不能、
ウラシマ効果によりミサイル自身の時間がのろくなっているので
反応も遅くなる。

ましてイゼルローン回廊のように星間物質が航行障害になりかねないほど濃い(とされている)領域があちこちにあるようなところだと、
小型のミサイルが何かにぶつかって爆発する可能性も大です。
(何しろ相対速度が光速ですから・・・(−−;;;)
あるいは、近接信管を持つ機雷でスペースデブリをばら撒く手もあります。
ラムスクープ場はミサイル前面に展開しているので、普通の金属探知と
同じく、センサーに引っかかります。
何しろ光速ですから、ミサイルとの衝突速度も凄まじいものです。
ラムスクープ場による遮蔽を失ったミサイルの破片は、星間物質が片付けてくれる・・・と想定する事も可能です。

実を言うと、防衛手段の要件は考えられるものの、
「それで防げるか、防げないか?」
となると、私には答えを出す決定打がありません。
なにぶん、作中ではおそらく、そういう細かいことは考えていないと思われるので・・・。

ヤンが使った氷塊は(偶然かも知れませんが)幾つかの要件をクリアーしています。
まず、かなり大きいという事。
ラムスクープ場を失ったら崩壊蒸発が始まるとは言え、崩壊しながら速度が落ちていくので、
蒸発しきる前に目標をヒットする確率が高いという事です。

それに、細かく砕けると蒸発してしまう氷なので、ある程度距離があるところで迎撃されたら、ハイネセンにぶつかる前に蒸発してしまう可能性が高いこと。

あれが引き起こせる最悪の事態は、「適当な」大きさに砕かれて
誘導不能の状態でハイネセンを襲う事だったと思われますが、
ヤン艦隊が制宙権を奪取していたあの状況では、ほぼその心配はないと
いう事で・・・。


No. 3663
Re:亜光速ミサイルシステム
古典SFファン 2003/02/16 05:19
追伸:

これまた物理的な笑える話ですが(笑)、
亜光速で衝突する物体が十分に「小さい」場合、あまり被害を与えずに「通過」してしまう可能性があります。

固体中を衝撃波が伝達しえる速度は、固体中の音速です。
固体はそれより速くは変形できません。
それより早く固体が破壊されるメカニズムは、ぶつかったところに対して運動エネルギーが熱になって解放される事により、
固体が「ガス→プラズマ」になって、「蒸発」して行くような過程をたどるはずです。

光速で襲う物体の場合、その運動エネルギーが熱になりきるより速く、
衝突した物体を「貫通」して突破してしまうのではないか?
という疑問があります。
ライフルで言う貫通銃創のようなものです。
弾体が速過ぎて周囲に被害が広がる暇が無いと。
(実際の速度比はライフルの場合よりも遥かに大きい)
動力部に当たればまた別かと思うんですが、戦艦程度の大きさの物体を、比較的小さいミサイルで、
亜光速でピン・ポイント狙撃するのは、先に述べた状況(星間物質の乱流の中)ではまずしんどいんじゃないかと。
つまり、当てづらく、当たったとしても爆散ではなく、「小破」「中破」レベルではないかという事ですね。
(この辺は、ライフルでも、高速で軽いタマは貫通力に優れるが、低速で重いタマは破壊力に優れるのと同じ。また、ライフル弾が風に流されるのと、星間物質の乱流に亜光速の物体が流されるのは少し似ている)

ヤンが使った氷塊と「アルテミスの首飾り」の場合、サイズが違います。
氷塊は砕けながら運動エネルギーの全てを衛星に叩きつけ、また、
砕ける事で抵抗を生んで速度を相殺しています。
形状も、3kmもある棒状?なので、十分に減速しながら運動エネルギーを解放できるのではないかと。

要するにこの兵器、「攻城戦」では切り札として使えるにしても、
まず制宙権を奪って助走距離を確保し、ある程度接近するまでラムスクープ場を失わないようにミサイルを守り、
接近後は的にヒットするまでミサイルを砕かれないようにしないと
完全な効果を発揮しないという事・・・。

つまり「使えるが、それが来ると知っている相手には対応策を立てる事も出来る」ともいえます。

あくまで物理的要件に基づく推定なんで、作中で氷爆弾が使われなかった理由と重なるかどうかは作者のみぞ知るというところでしょうか・・。


No. 3667
Re:亜光速ミサイルシステム
SAI 2003/02/16 10:58
ではどうすべきかの対処方法を。

ミサイルの観測問題は、ミサイル自体には、あまりセンサーをつみ
ません。ミサイルに先行して展開したセンサーにやらせます。
これは実は何でも良いんです。このシステムだけに頼るなら
コストの関係上、センサーがたくさんいるから小型戦闘艇なわけで
艦隊と組み合わせるなら、戦艦でもいい。用は目標の近くで観測
できるハードウェアならなんでもいい。ミサイル自体には観測させま
せん。

小型ではうまくゆかない、加速距離がいる。弾頭ではうまくゆかない。

その問題は、まず大型にする。大型の場合、コストの問題上、敵艦隊
すべての撃破するわけには行かないので、艦隊と組み合わせて、
敵旗艦の撃破、膠着状態の打破、突撃前の制圧攻撃というふうに
使うことになるでしょう。
小型でもうまくゆくくらいに速度を
落とす。別に亜光速まで速度を上げることが目的なわけではなく
ようは敵を撃破できればいい。速度を上げればあげるほど回避率
迎撃率は下がるけど、困難も増える。困難と回避率と迎撃率を
天秤にかけてちょうど良いところにすればいいんです。
その場合は超高速長射程ミサイルという名前になるでしょうが。

加速距離は遠距離で撃てばいいんです。観測の問題はセンサーと
ミサイルを分離すればいい。敵を撃破できるなら亜光速まで
到達しなくてもいいし。

弾頭は10万隻撃破するのに10万発用意するのは面倒だな
というだけです。うまく行かないなら、今までの艦隊と組みあわ
てつかえばいい

スペースデブリの問題は
1無い方向から突入させる
全部有るわけがない。あったら艦隊もろくに行動できなくなりますので
ただ来る方向を制限できるのでそこは工夫しないといけませんが。
2ゼッフル粒子か何かで掃除する

ようはは戦術の問題であり、使い方を考えればいいんです。

古典SFファンさんの言った問題以外にもあるでしょうけど、
それは実戦テストを繰り返して改良すればいい。


No. 3668
Re:亜光速ミサイルシステム
古典SFファン 2003/02/16 12:16
> 小型ではうまくゆかない、加速距離がいる。弾頭ではうまくゆかない。
>
> その問題は、まず大型にする。大型の場合、コストの問題上、敵艦隊
> すべての撃破するわけには行かないので、艦隊と組み合わせて、
> 敵旗艦の撃破、膠着状態の打破、突撃前の制圧攻撃というふうに
> 使うことになるでしょう。
> 小型でもうまくゆくくらいに速度を
> 落とす。別に亜光速まで速度を上げることが目的なわけではなく
> ようは敵を撃破できればいい。速度を上げればあげるほど回避率
> 迎撃率は下がるけど、困難も増える。困難と回避率と迎撃率を
> 天秤にかけてちょうど良いところにすればいいんです。
> その場合は超高速長射程ミサイルという名前になるでしょうが。
>
> 加速距離は遠距離で撃てばいいんです。観測の問題はセンサーと
> ミサイルを分離すればいい。敵を撃破できるなら亜光速まで
> 到達しなくてもいいし。

物理的には、そのくらいで特に問題ないんじゃないでしょうか。
(細かいことを追求しようとしても、あの世界の技術の詳細がわからない)
そこは兵器ですので、システマティックに改良していくと、どこかで使えるポイントが見つかる可能性はあります。

実際、この種のミサイルが「上手く作るとほとんど迎撃できない」と言うのは、
われわれが知る物理法則上はどうにもならない事実です。

実は(別の作品でですが)この種のミサイルを発案・使用した人は既に居るんです。
既に20年ほど前の話ですが、相対論的速度のミサイルは、迎撃不能の「準光速ミサイル」として、
あの富野総監督が「伝説巨神イデオン」の中で使用しています。
艦艇を的にするにはミサイルのコストが掛かりすぎるので、主に惑星を目標にして、一発で惑星の防空体制を破壊するのに使用されていました。

上手くヒットするとMV^2に従い、同じトン数の核融合爆弾より巨大な威力を持ち得るので、兵器としては魅力的です。
艦隊相手はコスト上疑問がありますが、惑星や要塞に対し大規模なダメージを与えるつもりなら使えるでしょう。

でもまあ、何故か(笑)銀英伝の世界でこの種のミサイルは実用化されていない、というか登場しない。
理由は、案外くだらない事なのかも知れないし、何か技術的に未知の障害でもあったのかも知れない。
その辺は、「推測が多くなる」と申し上げた通りです。

当方からは例によって、
「それでディフェンス出来る」とは限らないが、防御側で見つけ出せる「隙」となり得るものだけ指摘するにとどめます。

まず、ここ。
>ミサイルの観測問題は、ミサイル自体には、あまりセンサーをつみ
>ません。ミサイルに先行して展開したセンサーにやらせます。
当然ながら防御側としては「センサーを潰せ」ですね。
もちろんセンサーは隠れているでしょうが、そこは「隠す技術」と「見つける技術」の勝負という事になります。
あるいは、FTLを妨害するだけでもミサイルの命中率を落とせます。
艦隊戦の最中は当然、広範囲にFTLが妨害されるのは暗黙の了解と思います(確かそういう描写はあった。妨害しすぎでシャトルで情報を槍としていたケースもあり)。

>加速距離は遠距離で撃てばいいんです。観測の問題はセンサーと
>ミサイルを分離すればいい。敵を撃破できるなら亜光速まで
>到達しなくてもいいし。
バサード・ラムを使う場合、遠距離から電磁探知が可能です。
ミサイル本体より遥かに大きなラムスクープ場を展開しなければならないので(しないと星間物質の抵抗で破壊されます)、
ミサイルが光速より十分低い速度だと、センサーに捕まってから通信するだけの隙が出来てしまいます。

さらにこれですが
>スペースデブリの問題は
>1無い方向から突入させる
>全部有るわけがない。あったら艦隊もろくに行動できなくなりますので
>ただ来る方向を制限できるのでそこは工夫しないといけませんが。
>2ゼッフル粒子か何かで掃除する
これは、防御側がこの種の防御兵器を開発する隙があるという事です。
ラムスクープ場を探知して爆発し、多量のデブリをばら撒く機雷を開発する、と。
ラムスクープ場はミサイル前方に展開していますので、ミサイルが来るよりもわずかに早く、機雷は反応できます。

ちなみに、光速の何分の1かの速度だと、デブリもそう大きいものである必要はなく、「ラムスクープ場で排除できない」ものであれば十分です。
ほとんど顕微鏡サイズのものでも、当たったらミサイルは進路をそれるか、破壊されます(MV^2。運動エネルギーは質量×速度の二乗)。
展開範囲が十分広ければ「濃密なガス」でも同じ働きをします。

要するに完璧な兵器はないという事です。
亜光速とか、光速の何分の1とかのミサイルが防御しづらいのは確かですが、銀英伝の世界設定と技術体系だと(おそらくは、ですが)、防御の可能性は残っていると。

あまり積極的理由はありませんが、この種の兵器があの世界でメジャーでない理由があり得るとしたら、
誘導が難しく、助走距離が必要なため、艦隊戦に使いづらいと考えられること。
敵艦の位置を、かなり近づくまでまともに掴めず、妨害されるとFTLによる誘導がおぼつかない状態では、ミサイルのヒット率は下がるはずです。
その状況下で大型のミサイルで戦艦を狙うと、ミサイルが光速以下だと、戦艦が気づいて自動回避する可能性は残っています(人間の反応速度ではむりっぽだが)。
何よりセンサーを潰す(FTLを妨害して無効化する)技術は発達していそうですし。

この種のミサイルについて完全な否定は出来ません。
実際、固定目標に使うには有効で、大きく重く、光速に近づけるほど迎撃不能性が増大するのはヤンが示した通り。
艦隊相手だと先のような疑問あり(上手く作り、状況を選ばないとヒットできないかも知れない)ですが、イゼルローン要塞に氷をぶつけていけない理由はありません。
まあ作中では大質量ワープの技術を手にしている帝国側にしか出来ないんですが(イゼルローン周辺には手ごろな物体が無いと思われる)、
ワープで適当な物体を運んで来る事は出来たはずです。
・・・もっとも、イゼルローンを破壊してしまったら、ヤンたちは艦隊を抱えて逃げ出し、それこそ新たな長征に出てしまったかも知れませんが。
(移動要塞を連れて行けば有用かも知れないが、逃げ出す事自体に要塞は要らない。ただ逃げてしまえばいいのだ・・どこまでも)。


No. 3669
すくなくとも冒険風ライダーさんに謝罪を
パンツァー 2003/02/16 12:19
☆Kenさんの論点の1

Kenさんの記載(No3564)
> パンツァーさんの挙げられたAかBかの二者択一は、すこし単純すぎると思いますが、今回の議論の流れの中では、Bととっていただいても結構です。艦船に比べて、要塞に関する証明のreliability(信憑性と訳すのかな?)が著しく低い、というのが論旨ですから。

この主張は、Kenさんの考え方を示す上で、重要な示唆を与えますね。

「艦船に比べて、要塞に関する証明の信憑性」が高かろうが低かろうが、問題ではないのですよ。「艦船」の証明ができなければ、そもそも「銀英伝を論じる」ということ自体が、「銀英伝の作品設定そのものへの批判を行う場合」を除いて、崩壊するのです。

「艦船の移動」の証明は終了している、という立場をとらないのであれば、「銀英伝を論じる」ことが無意味である、と言っているに等しいのです。

冒険風ライダーさんに限らず、この掲示板で一般に論を展開している人は、「作品設定」であるから「艦船の移動」を当然のこと(証明されているもの)、として扱っているのです。
Kenさんが「作品設定を前提とする」という態度をとらないのであれば、「艦船の移動」の証明を独自に行う必要があるのです。

要するにKenさんは、根拠もなく、信じたいもの(艦船の移動)は信じるが、信じたくないもの(移動要塞)は信じない、といっているだけなのです。

Kenさんは、次に述べる「帰納法の場合」を、原則的に取りたくない、といっているわけでしょう。だったら、「艦船の移動」の証明を独自にしない限りは、単に信じたくないから信じない、というだけの話になるのですよ。

Kenさんの記載(No3564)
> >A銀英伝に登場するテクノロジー一般が、
> >「可能であると証明するにも、不可能と証明するにも、不十分である」
>
> という結論になると思われますが、これを持ち出すと、「なにも証明はできない。終わり」と「まったく、面白くない結論」になるので、今はこの立場をとりません。

特に、こんなことを言うのであれば、そもそも冒険風ライダーさん等に絡んだKenさんの態度自体が、非常に身勝手なものではありませんか。
「今はこの立場をとりません」というのであれば、
冒険風ライダーさんに対して、謝罪して欲しいですね。言いがかりであったと。少なくとも自分のやったことを自覚している現時点においては。

☆Kenさんのいう「帰納法」の場合

> そして、艦隊と要塞の差はここで生じます。
>
> 銀英伝の記述では、艦船(質量数万トン以下の構造物)の宇宙航行は、ヤノーシュ博士以後だけ考えても千年以上の歴史があります。また航行の形態も多様です。移動距離を考えても、「一万数千光年の征旅」もあれば、艦隊間のシャトル連絡もあります。

艦船と要塞との違いは、移動に関しては、基本的には質量が相違する、という点ですよね。

「艦船(質量数万トン以下の構造物)」という限定を加えていますが、こんな限定は根拠がありませんよね。Kenさんは、(No3572)等に出てくる「自動車」の例でも、根拠なく勝手に、「半分」より多い燃料の場合を否定していましたが。

艦船の証明が終わっている時点で、
質量とエンジン出力に対する関係が導かれているのです。
同じ艦船であっても、質量の大きなものもあれば、小さなものもあるのです。

したがって、単純に考えれば、「物体の移動」に関する信頼性に値する理論が存在する上で、「質量」に関する一変数が相違するだけなのです。

銀英伝3巻140P
<「新しい技術と言うわけでもない。スケールを大きくしただけのことだろう。それも、どちらかというと、あいた口がふさがらないという類だ」言わずもがなの異論を、シェーンコップが唱える>

シェーンコップでなくても、現代の我々でも、当然の予測ですね。
「艦船の移動」の証明が終わった時点で、「移動要塞」に関しても大半の証明が終わっているのです。
そして、(質量を問わぬ)「物体の移動」に関する理論に、ガイエスブルグ要塞のような大質量を代入してみると、この場合も成立した。つまり、「物体の移動」に関する理論は、大質量の場合でも成立した、ということです。

だから、
「艦船(質量数万トン以下の構造物)」であったにせよ、「物体の移動」に関する理論が構築された段階で、大質量に関しても「原理的に可能」の域に、必然的に達してしまうのですよ。
そこに、大質量の実例としての、ガイエスブルグ要塞が、ほとんど問題もなく実現された記載が存在しています。
他にも、「艦船(質量数万トン以下の構造物)」よりも大質量の例としては、例の氷塊もあれば、イオンファゼカス号もありますよね。

ちなみに、艦船が(質量数万トン以下の構造物)であるっていうのは、作品中のどこかに記載されていますか。参考までに引用個所を知りたいですね。

☆Kenさんの提示する証明の方法

> 私は、何かを証明する方法として、
>
> 1.演繹的に証明する。
> 2.帰納的に証明する。
> 3.現実世界の科学手法を用いる。
> という3案を提案しました。

1の論理の展開が、まったくわかりません。これまでにも私は、演繹法は「前提」に対する「結論」が真であるのだから、まず「前提」が必要だ、と述べましたよね。
どうやったら、そういう都合のよい「前提」が見つけられるのですか?

例えば、「現代の自動車」の証明とやらを、Kenさんのいう「演繹」で説明してみてください。「現代の自動車」すら説明できないのであれば、何を証明することができるというのですか。
「前提」部分を「帰納法」で導くのであれば、「演繹」で説明するってことにならないでしょうし。

3も同じです。論理展開が不明です。これに関しては、これまでの私の投稿でも述べていますよね。
これに関しても、「現代の自動車」の証明を、「現実世界の科学手法」で説明してもらえれば、よいですね。
まあ、(No3572)等に出てくる「自動車」が、Kenさんのいう「現実世界の科学手法」の説明でしたから、この説明において、私が提示した疑問に回答する、という形でも構いませんが。


No. 3671
Re:すくなくとも冒険風ライダーさんに謝罪を
Ken 2003/02/16 17:04
パンツァーさん。


>☆Kenさんの論点の1

パンツァーさんのご指摘どおり、一方で演繹証明を必要とする立場をとらない、といいながら、冒険風ライダーさんにのみそれを求めるのは不当に聞こえますね。

でもそれには理由があります。今回の議論に対する私のスタンスは、「恒久移動要塞が可能と断じるにも、不可能と断じるにも、銀英伝の記述は不十分」というものです。これに対して、冒険風ライダーさんのスタンスは、恒久移動要塞の現実性やそのベースとなる「無限の自給自足能力」は銀英伝世界において、存在が「立証」されている、というものです。冒険風ライダーさんは、銀英伝世界では、恒久移動要塞や無限の自給自足システムができるかもしれないという「可能性」を指摘されたのではありません。それ以外に解釈のしようがない、と言われているのです。

そして私は、私が「証明できない」と思う仮説を「証明できる」という人に、「それでは証明をお願いします」と言ったのです。

証明方法としては、物理法則の適用を否定される以上、

演繹:
銀英伝の記述を前提とし、そこから「それ以外には到達しようのない」結論へ到達する。

帰納:
銀英伝の記述から、恒久移動要塞の信憑性を増大させる記述を集めてくる。

のどちらかしかありません。そして、銀英伝の記述中に、移動要塞の実例がガイエスブルグただひとつしかない以上は、帰納法で証明するにはデータ不足です。それなら、データの量に依存しない演繹をやるしかないではありませんか。私は、冒険風ライダーさんとの議論の流れでは、今でも相手に「ピタゴラス型」の証明を求めています。そこまでできなくても、せめて私が「再度整理しました」とタイトルをつけた#3579でいろいろ挙げた「・・・かもしれない」式の疑義の存在を一切許さない証明をです。

恒久移動要塞は「可能性がある」というだけの人には、証明を求めたりなどしません。


>☆Kenさんのいう「帰納法」の場合

>ちなみに、艦船が(質量数万トン以下の構造物)であるっていうのは、作品中のどこかに記載されていますか。

おっしゃるとおり、「数万トン」というのは私の勇み足でした。艦船の質量に関する具体記述は少ないのです。私は本伝10篇と外伝の1、3、4を読みましたが、この中で艦船の質量に言及したのは、黎明篇中の二ヶ所しかなかったと思います。

五〇〇○万人の一八〇日分の食糧といえば、穀物だけでも一〇〇〇万トンに達するであろう。二〇万トン級の輸送船が五〇隻必要である。
(黎明篇、第八章−1)

グレドウィン・スコット提督の率いる同盟軍の輸送艦隊は、一〇万トン級輸送艦一〇〇隻、護衛艦二六隻から成っていた。
(黎明篇、第八章−4)

どちらも輸送艦で、前者は20万トン、後者は10万トンです。艦船の質量に関して、これ以外の記述がある場合は、どうかご教授願います。ただ、これしか記述がないのなら、読者としては、艦船の質量はおおむねその程度と推測する以外にないだろう、と考えた次第です。

はっきりしているのは、要塞は艦船よりも質量が大きいということです。ガイエスブルグの来寇が告げられたとき、オペレータとキャゼルヌの間で交わされた言葉はこうでした。

「質量は、概算四〇兆トン以上です」
「兆だと!?」
(雌伏篇、第六章−1)

キャゼルヌの言葉を、私は次のように解釈しました。

1.40兆トンの移動は例がない
2.そもそも「兆」単位のトン数の移動に例がない。

このことをもって、艦船の質量は、要塞とは「桁」の異なるものだといえるでしょう。

さて、本論ですが、

>したがって、単純に考えれば、「物体の移動」に関する信頼性に値する理論が存在する上で、「質量」に関する一変数が相違するだけなのです。

その「信頼性に値する理論」が、要塞の質量に至るまで通用するという証明はどこにあるのでしょうか?

パンツァーさんの理論を展開すると、「ハンググライダーからエアバスまで、航空機には多種多様な質量があるから、10万トンの航空機でも飛ばせる」と言っているように思われます。

「例の氷塊」は亜光速に達しただけでワープをしていないし、質量は「たったの」10億トンです。イオン・ファゼカスは「無名の一惑星」まで航行しただけで、航行距離に関する何のデータもありません。「恒久移動要塞」は、兆単位の質量を動かすこと、それをワープさせること、「無名の一惑星」より遠くの地へ行くことの「すべて」を求められます。

恒久移動要塞を可能と帰納するための例証は、依然としてガイエスブルグしかありません。例証が一つしかないというのは、一般則を帰納する上で、重大な障害であると思います。

基本的に陸戦兵であるシェーンコップが「新しい技術と言うわけでもない」と言ったたのと、参謀であるムライが「帝国軍は新しい技術を開発させたと見える」と言ったのと、どちらが正しいかで、一つの議論になるでしょう。しかし、仮にシェーンコップが正しいとして、「何をするための」技術を彼らは論じているのか、が問題です。

40兆トンの質量を動かすことですか?40兆トンの質量を帝国本土からイゼルローンまで動かすことですか?それとも40兆トンの質量を恒久的に動かすことですか?

初めの二つが(ある条件のもとで)できたことをもって、三つ目も可能である、と断言できるのでしょうか?私が#3579で例に挙げたように、北朝鮮のミサイルが日本を攻撃できることを誰も疑わないことをもって、同じミサイルがアメリカまで届くことを自明であるとできるのでしょうか?


>☆Kenさんの提示する証明の方法

>1の論理の展開が、まったくわかりません。これまでにも私は、演繹法は「前提」に対する「結論」が真であるのだから、まず「前提」が必要だ、と述べましたよね。
どうやったら、そういう都合のよい「前提」が見つけられるのですか?

「前提」となるのは、銀英伝の記述でしょう。例えば、

*ヤンはフレデリカよりも年長である。
*フレデリカはユリアンよりも年長である。
*ゆえに、ヤンはユリアンよりも年長である。

というような形で証明ができれば、完璧です。

もっとも、私個人に限っていうなら、とりあえず#3579で挙げた点を、完璧に論破していただければ、それでもかまいません。


No. 3672
Re3661:勝算について
冒険風ライダー 2003/02/17 01:40
<まず、ラインハルトが停戦を申し出たのは、単に病に倒れたからではありません。8巻P108の記述にある通り、その時に夢に出てきたキルヒアイスに無用な戦について諌められたからです。そのような夢を見た理由については、ヒルダが親切に分析してくれています。>
<病気も夢も、単にきっかけに過ぎません。この時点で、ラインハルトには停戦と会談を申し出るだけの充分な理由はあったわけです。そしてそれは、紛れもなく、ヤンが諦めることなく戦い抜いた結果なのです。
 もちろん、ラインハルトが停戦を申し出なかった可能性も充分考えられる以上、ヤンにとって「回廊の戦い」は賭けでもありました。しかし、紛れもなくその「勝算」は0%ではありませんでした。(実際、停戦と会談は申し込まれたのですから)>

 その「病気」だの「夢」だのといった「ラインハルトに和平を決断させた要素」自体が、「戦術レベルの勝利を重ねることによってラインハルトを交渉の場に引きずり出す」などという、「戦略構想」と呼ぶことすらおこがましいヤンの杜撰な発想とは全く無関係かつ想定外なところから出てきたものだからこそ「事前予測としてヤンに勝算はない」と評されるのだということがまだ分からないのですか? 「類稀なる僥倖」が起こった「結果」から逆算してヤンを過大評価しても、それは「ほめ殺し」となって却ってキャラクターを不当に貶めることに繋がるだけです。
 そもそも、ラインハルトはバーミリオン会戦時に自軍がヤン艦隊に追い詰められて敗色濃くなった状況に陥った時でさえ、「一旦シャトルで脱出して再起を図るべき」という部下の助言を退けていましたし、かの「回廊の戦い」の時でさえ、ラインハルトは出征の際に「ヤンとその一党を討たない限り、オーディンにもフェザーンにも帰らない」などと堂々と宣言すらしていたではありませんか。ラインハルトは最初からヤン一党と「対等の交渉」を行うつもりなどさらさらなく、しかも自らの個人的矜持とプライドのために戦うこと自体が「楽をして勝つ」「自分や部下の身の安全」「帝国の安定」などといったことよりもはるかに優先されるべき最優先事項とすら化している始末だったのです。このような人間に対して「戦術レベルの勝利を重ねることによってラインハルトを交渉の場に引きずり出す」などという「戦略構想」を打ち立てること自体、すでに考え方の根本から誤っていると言わざるをえないでしょう。
 また、これは以前にも述べたことなのですけど、「戦術レベルの勝利を重ねることによってラインハルトを交渉の場に引きずり出す」という戦略構想では、ヤンはバーミリオン会戦における唯一の勝機であった「ラインハルトを殺す」という選択肢を全く取ることができず、常に手足を縛られて戦わざるをえないのに対し、ラインハルトはヤンを殺す事もイゼルローン軍を壊滅させる事も可能という状況が出現してしまいます。この格差は、はっきり言って彼我の戦力差と戦略的格差以上に巨大かつ絶望的です。この状況ではヤンの側に一発逆転の可能性すらありえず、彼我の戦力差と戦略的格差によって押し潰される運命が待っているだけであるというのは誰の目にも明らかなのです。これではますますもって「対等の交渉」が行われる可能性は存在しえません。
 しかも、仮に万が一その戦略でラインハルトが民主主義の価値を理解してくれたとしても、それによってラインハルトが自動的に和平を結んでくれると考えるのは、ヤンが全否定しているはずの一種の希望的観測ないしは精神論とでも評するべきものでしょう。ラインハルトにしてみれば、和平を結ばずにイゼルローンを陥落させればラインハルトの悲願である銀河統一が達成されるのであり、たかが「民主主義の価値を理解した」などという理由程度でその利益を放棄してヤンと和平を結ぶという事態は、普通ではとても考えられたものではありません。ラインハルト以外の人間であれば絶対和平に応じることなどありえなかったでしょうし、そのラインハルトでさえ、何度も言うようにヤンの杜撰な構想とは全く無関係かつ想定外なところから出てきた「類稀なる僥倖」が勝手に発現するなどという「ご都合主義的な事態」が起こらなければ、そのままヤンを一方的に葬り去っていたことでしょう。
 さらに言えば、そもそもラインハルトがわざわざ回廊内に侵入して戦うなどという、あの時点で取りえた策の中でも一番の愚策としか言いようのない戦略など取らず、たとえばエル・ファシル本星を包囲・占領してヤンを回廊外へ誘い出すといった類の戦略を取ったりしたら、ヤンが前提としている「ラインハルト軍を回廊内に誘い込む」という戦略構想自体までもが破綻してしまい、バーミリオン会戦の二番煎じみたいな結末に陥った可能性は極めて高いでしょう。それを「結果として」ラインハルトがやらなかったのは、ラインハルト自身が愚かだったからであってヤンが懸命だったのではありません。そして、これに関する対策を何ら立てなかったこと自体、ヤンは愚かであったと評されて然るべきなのです。
 そして、これほどまでに最悪な状況で仮に万が一ラインハルトが交渉に応じたとしても、彼我の戦力差と戦略的格差のために、ヤン側はラインハルト側の要求を全て受け入れざるをえない状況に追い込まれることは火を見るよりも明らかですから、交渉は決して対等なものになどなりえず、最悪交渉が決裂する可能性も濃厚に存在します。たとえば「将兵全員を助命してやるから、今後二度と民主主義思想を掲げないこと」という提言が和平条件として出されたりしたらどうするのでしょうか? 断れば再び絶望的な戦いを行わなければなりませんし、受け入れれば民主主義は滅亡です。これではどちらにせよ、ヤンの目的が達成されることはありえません。こんな要求でさえ、生きるためには受け入れなければならないほどに、ヤンの力は圧倒的に弱小なのです。
 上記で挙げたようなことは、事前予測でも充分に把握することができるものです。ヤンの戦略構想や事前予測とは全く無関係かつ想定外の「類稀なる僥倖」がなかったら、絶対にヤンが敗北していたことは間違いなかったでしょう。だからこそ、事前予測として、ヤンには勝利できる可能性も、民主主義を残すことができる可能性も全くありえなかったと言わざるをえないのです。


<勿論、彼我の戦力差は明らかであり、ラインハルトが何が何でもヤン達を倒すつもりだったら、ヤンがそれに抗することは不可能だったでしょう。その意味で、冒険風ライダーさんが、『敵側のラインハルトの胸先三寸に全てを依存しているだけでしかないヤンの方針』と言うのは全くその通りと申し上げるしかありません。
 しかし、そんな事はヤン自身が一番よく分かっていた事です。その上で、彼はその『ラインハルトの胸先三寸』を動かす方法こそを構想し、かつ、実現させたわけです。>

 上でも述べたように、ヤンの戦略構想の中には「ラインハルトが病で倒れ、夢の中でキルヒアイスに諌められる」などという予測などどこにも存在しなかったのですし、「病気」や「夢」のような要素は、ラインハルトの脳内妄想で自己完結的に出現したものでしかなく、ヤンの戦略構想とは全く無関係なものでしかありません。「結果」を逆算してヤンを過大評価するのは止めていただきたいですね。
 これがヤンによってもたらされたと言うのであれば、「魔術師ヤン」が実は本当の魔術師で、何らかの魔術を使ってラインハルトの健康状態や深層心理をはるか遠方から操ってラインハルトを動かしていた、などといった類のトンデモ裏設定でも作成するしかないでしょう。もちろん、そんなものが一切成立しないことに関しては今更言うまでもないでしょうが。


<まず、例え脅しであっても、民主主義の基盤である無辜の人民を虐殺するという宣言など、ヤン達の因って立つ理想、大義名分を自ら放棄するに等しい所業です。このような脅しをしたが最後、イゼルローンは『民主主義の最後の砦』どころか『邪悪な政治テロリスト達の巣窟』として認識され、ヤン達は全宇宙の人民達からの支持をほとんど全て失うでしょう。それどころか、内部にも多くの離反者を生み出すことになりかねません。
 次に、そのような卑劣な脅しをかけられたら、なおのことラインハルトは交渉のテーブルにつくわけにはいかなくなります。それは、政治テロリストの要求に帝国が屈するということを意味するからです。>

 心配はいりませんよ。相手は所詮他国民なのですから、ヤン達がわざわざ擁護しなければならない理由など法的にも道義的にも全く存在しませんし、そもそも帝国側も、バーミリオン会戦時にミッターマイヤーとロイエンタールがヒルダの提言に従って惑星ハイネセンを包囲した挙句、「降伏しなければ惑星ハイネセンに無差別攻撃を加える」などといって同盟政府を「脅迫」したという「前科」が立派に存在しますからね。同等報復を行ったところで、帝国臣民はともかく、元同盟市民は(表面はともかく内心では)さぞかし溜飲を下げることでしょうし、報復心や復讐心からむしろ熱狂的に支持さえする可能性もありえます。そもそも、自分達に危害が加わることさえなければ、いくら余所で虐殺が大々的に展開されようが所詮は他人事でしかありませんし。
 それに250億の民を全て抹殺することすら可能とされる「移動要塞を使った破壊戦略」というのは、現代で言えば「核抑止力」に近い威圧を敵に与えることができるものです。アメリカ同時多発テロなどで「テロリストとの妥協はありえない」などと強気の姿勢を示しているアメリカでさえ、「核抑止力」に対してどれほどまでに恐怖しているかについては今更言うまでもないでしょう。「人口の大半が死ぬ」という「脅し」は、かの強大国アメリカをすら震え上がらせることができるほどに強大な抑止力たりえるのですし、ラインハルトもまた、そのような「脅し」が実際に実行などされてはたまったものではないでしょう。ラインハルトがルドルフ・フォン・ゴールデンバウムのように「たかだか数十億の人間、死んでも一向にかまわない」などという「鋼鉄の心臓」でも持ち合わせているのであれば話は別ですが。
 最初の段階では軍事拠点限定で積極的な破壊活動を展開し、ある程度破壊が進んだところで、惑星オーディンなりどこか適当に人口の多い惑星なりに要塞主砲の照準を定めた上で、「バーミリオンの報復」と称して例の脅迫を行い、期限を定めて和平交渉を要求する、という段取りで行けば、ラインハルト側にも引け目があることですし、核抑止力的な力の論理も働き、そうそう強気な態度に出ることもできなくなるのですから、本当の意味で「対等な和平交渉」を行うことができるようになるでしょう。すくなくとも、「ラインハルト個人の慈悲」などでかろうじて成立し、皇帝の気分次第で明日にでも崩壊しかねない「バーラト自治区」のような弱小民主主義などよりは、はるかに自立しえる民主主義が生き残れる可能性がこちらに存在することは確実です。
 移動要塞を使った戦いは、単純なテロリズムというよりは「利用される軍事力のレベルと比較すると、一般に強い影響を及ぼすことの多い伝統的でない戦術を利用しながら、小数の戦闘者や軍事力を行使して、数の少ない比較的困難な特定の目標をめざす戦争活動」と定義される「非対称戦争」と「従来の国家間紛争」の中間くらいのところに位置するものでしょう。やっていることは「非対称戦争」の形態と非常によく似ていますが、移動要塞は同時に「民主主義国家」でもありえますしね。それほどまでの強大な力を持つ移動要塞を「テロリズムの道具」などと定義すること自体、根本的に間違っているのです。


No. 3674
Re:Re3661:勝算について
八木あつし 2003/02/17 05:38
以外に早く戻って来れました。
結局、400字詰め原稿用紙で5枚の作品を何とか書き上げて部に提出しました。出来映えは聞かないでください(笑)。

< その「病気」だの「夢」だのといった「ラインハルトに和平を決断させた要素」自体が、「戦術レベルの勝利を重ねることによってラインハルトを交渉の場に引きずり出す」などという、「戦略構想」と呼ぶことすらおこがましいヤンの杜撰な発想とは全く無関係かつ想定外なところから出てきたものだからこそ「事前予測としてヤンに勝算はない」と評されるのだということがまだ分からないのですか? 「類稀なる僥倖」が起こった「結果」から逆算してヤンを過大評価しても、それは「ほめ殺し」となって却ってキャラクターを不当に貶めることに繋がるだけです。>

すでにラインハルトとヤンの行動を全否定して不当に貶めていた冒険風ライダーさんから、まさか「キャラクターを不当に貶めることに繋がる」などという言葉が出るとは思いもしませんでした。

< 心配はいりませんよ。相手は所詮他国民なのですから、ヤン達がわざわざ擁護しなければならない理由など法的にも道義的にも全く存在しませんし、そもそも帝国側も、バーミリオン会戦時にミッターマイヤーとロイエンタールがヒルダの提言に従って惑星ハイネセンを包囲した挙句、「降伏しなければ惑星ハイネセンに無差別攻撃を加える」などといって同盟政府を「脅迫」したという「前科」が立派に存在しますからね。>

5巻でヤンがユリアンに語った場面が、全くむなしくなりますね。冒険風ライダーさんにとっては、帝国の民衆を気に掛けるヤンは、むしろ惰弱が偽善だと映るのでしょうか。しかしヤンの言葉は紛れもない作中事実です。

<同等報復を行ったところで、帝国臣民はともかく、元同盟市民は(表面はともかく内心では)さぞかし溜飲を下げることでしょうし、報復心や復讐心からむしろ熱狂的に支持さえする可能性もありえます。そもそも、自分達に危害が加わることさえなければ、いくら余所で虐殺が大々的に展開されようが所詮は他人事でしかありませんし。>

ここの部分は、当たっていると思います。9・11同時テロへのイスラム諸国やパレスチナ人民の感想と同じでしょう。もっともパレスチナ人民は最悪の場合、イスラエル軍へ自爆テロに撃って出られますが、旧同盟市民は衛星軌道上からの砲火をただ浴びるだけです。
喝采からすぐさま悲鳴、そしてヤンと帝国への怨恨に変わるだけでしょう。

< それに250億の民を全て抹殺することすら可能とされる「移動要塞を使った破壊戦略」というのは、現代で言えば「核抑止力」に近い威圧を敵に与えることができるものです。アメリカ同時多発テロなどで「テロリストとの妥協はありえない」などと強気の姿勢を示しているアメリカでさえ、「核抑止力」に対してどれほどまでに恐怖しているかについては今更言うまでもないでしょう。「人口の大半が死ぬ」という「脅し」は、かの強大国アメリカをすら震え上がらせることができるほどに強大な抑止力たりえるのですし、ラインハルトもまた、そのような「脅し」が実際に実行などされてはたまったものではないでしょう。ラインハルトがルドルフ・フォン・ゴールデンバウムのように「たかだか数十億の人間、死んでも一向にかまわない」などという「鋼鉄の心臓」でも持ち合わせているのであれば話は別ですが。>

敬愛する姉上が無事ならば、帝国民衆が少々死んだところであまりかまわないんじゃないですか。あとで少しばかり反省をして、自分にも責任はあるが、より多くの責任はヤンにある!とパフォーマンスでもすれば大丈夫でしょう。

< 最初の段階では軍事拠点限定で積極的な破壊活動を展開し、ある程度破壊が進んだところで、惑星オーディンなりどこか適当に人口の多い惑星なりに要塞主砲の照準を定めた上で、「バーミリオンの報復」と称して例の脅迫を行い、期限を定めて和平交渉を要求する、という段取りで行けば、ラインハルト側にも引け目があることですし、核抑止力的な力の論理も働き、そうそう強気な態度に出ることもできなくなるのですから、本当の意味で「対等な和平交渉」を行うことができるようになるでしょう。すくなくとも、「ラインハルト個人の慈悲」などでかろうじて成立し、皇帝の気分次第で明日にでも崩壊しかねない「バーラト自治区」のような弱小民主主義などよりは、はるかに自立しえる民主主義が生き残れる可能性がこちらに存在することは確実です。>

イゼルローン移動要塞が帝国領の惑星を1つ攻撃するたびに、旧同盟領の惑星を1つ攻撃されたらどうするのですか? 帝都オーディンに照準を向けたとき、ハイネセンに帝国艦隊の照準が向けられたら。もはやどうしようもありません。互いに動けなくなるだけです。それともラインハルトが罪もない民衆を攻撃しないと信じて、移動要塞はオーディンを攻撃してみますか。
冒険風ライダーさんは、旧同盟領が報復攻撃にさらされても民主主義存続のためには必要最低限の犠牲だと言われるのでしょうか。ヤン側にとっては、旧同盟領を中心に民主主義体制を残さないといけないのに、これでは旧同盟市民にお前たちのせいで帝国軍の無差別攻撃を受けた、とむしろ恨まれるだけです。気まぐれな民衆とはそういうものでしょう。
もっとも移動要塞が帝国領を破壊しつくした後、第二次長征一万光年に出発するのなら話は別ですが。

それではオーディンへの無差別攻撃を示唆して、対等?な和平交渉をしたとしましょう。果たしてどのような和平を結ぶのですか?
「旧同盟領の全面返還。フェザーンの中立化。移動要塞はこちらがそのまま保有する。不可侵条約の締結」 仮にこれで和平調印をしたとします。
といってもバーラトの和約を半年で破った帝国です。しかも脅しによって無理やり結ばされた和平条約を守る必要など、どこにもありません。準備が整い次第、すぐに復讐戦を挑む方が自然です。それとも不可侵条約を結べば、それをラインハルトが守ると思いますか?
そしてひとたび、同盟領に移動要塞が戻ればその戦略的価値は激減します。帝国領をゲリラ攻撃するからこそ、この上ない力を発揮できたのです。同盟領内に入れば、もはや防御拠点でしかありません。
また旧同盟軍はすでに壊滅しています。宇宙戦力は、移動要塞に収容できた2万隻だけです。
それに対して帝国軍は正規艦隊だけで10万隻以上の戦力です。
しかも本国の星系警備隊など雑多な戦力を合わせるとこれまた10万隻になります。イゼルローン・フェザーン両回廊の帝国側出口に、その戦力を各5万隻ずつ布陣させれば、エンジンに弱点を持つ移動要塞の回廊突破は不可能です。あとは、正規艦隊を再編成して第三次ラグナロック作戦を発動し、旧同盟領に雪崩れ込むだけです。
バーラト自治区だろうが、同盟領全域だろうが関係ありません。民主主義の苗床は、それこそ帝国の心次第でどうにもなります。もっとも皇帝の温情による和平と脅しによって押しつけられた和平。どちらがすぐに破れるかは火を見るよりも明らかですね。

< 移動要塞を使った戦いは、単純なテロリズムというよりは「利用される軍事力のレベルと比較すると、一般に強い影響を及ぼすことの多い伝統的でない戦術を利用しながら、小数の戦闘者や軍事力を行使して、数の少ない比較的困難な特定の目標をめざす戦争活動」と定義される「非対称戦争」と「従来の国家間紛争」の中間くらいのところに位置するものでしょう。やっていることは「非対称戦争」の形態と非常によく似ていますが、移動要塞は同時に「民主主義国家」でもありえますしね。それほどまでの強大な力を持つ移動要塞を「テロリズムの道具」などと定義すること自体、根本的に間違っているのです。>

イゼルローン要塞のヤン一党は、ヤン元帥を頂点とする軍閥ではなかったのでしたか? もしくは民主集中制による原始共産組織。
まぁエル・ファシル独立政権が要塞に逃げ込んでいるので、彼らを傀儡にすれば「民主主義国家」の体裁だけは整えられますが……。しかし本来の国民であるエル・ファシル住民は遙かな敵地ですけどね。
結局帝国にとっては、要塞に立てこもる叛乱勢力が神出鬼没のゲリラに変わるだけです。それも無辜の民衆を攻撃するという、悪逆非道なゲリラです。

これまで冒険風ライダーさんが主張されてきたことを実行するヤンだったならば、第2巻の救国軍事会議のクーデター時にさっさと権力を握っているでしょう。これならば全ての制約がなくなるので、移動要塞への改造もその後の戦略も立て安くはなります。唯一、勝てるかどうかは判りませんが、帝国のラインハルト・フォン・ローエングラムと対等に戦えるでしょう。
私としては、第2巻終了時での独裁者ヤン誕生、もしくはイゼルローン共和政府時代が、移動要塞の改造及び利用ができると思います。問題はどちらも民主主義を守るためと言いながら、体制が民主主義によって出来た体制じゃないことですね(笑)。


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