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銀英伝考察3
銀英伝の戦争概念を覆す「要塞」の脅威
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No. 1743
Re:移動要塞は何故作られなかったか?
平松重之 2002/04/17 00:49
 冒険風ライダーさん

 それにしても、銀英伝に関しては設定擁護派を自認しておられた冒険風ライダーさんがこの様な問題提起をなさったのは少し意外でしたね。

<そもそも「移動要塞」の技術自体、実はそれほど難しいものではないのです。何しろ、シャフト自身が明言しているように、要塞の移動させる技術は「要塞にワープエンジンと通常航行用エンジンをそれぞれ12個ずつ円状に設置し、全てを同時に稼動させる」(銀英伝3巻 P45)という、ただそれだけの話でしかないのですから。「移動要塞」の提唱に際し、シャフトは別に何か特殊な技術を発明したわけではなく、ただ単に既存の宇宙航行用エンジンを少しばかり応用した使用方法を考案したに過ぎなかったわけです。これならばヤン側が「移動要塞」の技術を真似てしまうことはそれほど困難なことではないでしょう。>

 同盟に関しては、既に他の方々から指摘がありましたが、

1、イゼルローンを移動式に改造しようにも経済的に余裕がない。
2、艦隊を要しているだけでも恐ろしいヤンに、移動要塞を与えるような度量がトリューニヒト政権やエル・ファシル独立政権にあるとは思えない。
3、ワープエンジン(12基)・通常航行用エンジン(12基)の取り付け及び調整などには、史実のガイエスブルクの場合一月(三巻P35)から三月半ば(P98)と、6万4千人(途中で2万5千人が増員された)の工兵を動員して2ヶ月近くかかっている。何ヶ月もの工事の間に敵の波状攻撃があった場合、それを防ぎ切るのは難しいのではないか。また、工事を隠蔽しようにも要塞内部に隠し数量を情報操作出来る艦隊と違い、要塞にエンジンを取り付ける工事は要塞外部で行なわざるを得ないので、合計24基ものエンジンを取り付けている途中で発覚する恐れが高いのではないか。

 と、経済的・政治的・時間的に見て要塞の改造工事に着手するのは無理があったのだという事なのでは?
 また、ガイエスブルク移動要塞の例からも分かる通り、移動要塞には外部に取り付けたエンジン部の防御力が低いという弱点があります。航行用エンジンが一つでも破壊されればバランスを失って航行不能となり、惰性での回転で内部は大混乱に陥ってしまいますし、エンジンは要塞の核融合炉に連結していると思われますので、エンジンが爆発すれば他のエンジンや核融合炉が誘爆してしまう危険性もあり、そうなった場合、巨大な要塞から大爆発に巻き込まれない安全圏まで脱出出来る可能性は低いと思われます(現にガイエスブルクの爆発に巻き込まれたケンプ・ミュラー艦隊はそれまで残存していた兵力の8割を失っている)
 更に、12個のワープエンジンはワープの際に完全に連動させねばならず、失敗すれば亜空間に消えるか原子に還元してしまう(三巻P98)という通常の艦艇のワープに比べ高いリスクを移動要塞のワープは背負っているのです。
 将兵や市民はガイエスブルクの悲劇的な最期を知っているでしょうし、要塞主砲や駐留艦隊を駆使してもエンジンを守り切れると言う保証はありません。「通常要塞の防御力」と「移動要塞の防御力」の信頼の差や、ワープの度に複数のエンジンの完璧な連動を求められるという危険性を考えれば、義務としてある程度リスクを背負わざるを得ない将兵はともかく、移動要塞に一般市民である将兵の家族を長期的に居住させるのは、将兵や市民から強い抵抗があるのでは?それらの問題を何とかしない限り、「自給自足可能な移動要塞」という構想は実現困難なのでは?

<6.イゼルローン要塞の構造的な独裁権力者、ヤン・ウェンリー>

 外伝二巻P119でアッテンボローは「イゼルローンは軍用施設だから司法警察権はMP(憲兵)にある」と明言しており、同盟ではイゼルローンは少なくとも法的には都市ではなく単なる軍用施設という扱いだったようです。まあ、確かに500万もの軍人や市民が住んでいる以上は地方自治体として扱うべきだったという御意見は「なるほど」と思いました。


No. 1744
要塞の「自給自足」の考察から移動要塞を否定してみます。
Tomo 2002/04/17 02:45
はじめまして、Tomoと申します。以前から気になっていた話題なので参加させていただきます。

 さて、数ある銀英伝のSF設定のなかでも私が一番不思議だったのが要塞の「自給自足」システムでした。完全に独立した自給自足システムとはどのようなものでしょうか。
「完全に独立」している以上、質量やエネルギーは常に一定です。この中で一つのコミュニティーが半永久的に活動可能するためには最低必要条件として、完全なリサイクルシステムが必要です。卑近なレベルでいえば排泄物、生活ごみ、排ガスから極端な話、遺体すら有機物質として再利用しなければなりません。さらには勝手に子供を生むことすら許されない厳格な人口管理政策が必要でしょう。これらはあくまで必要条件であり、そもそも(必ずしも物理的に正確な意味では用いていないのですが)エントロピー増大則に反している気がします。

 さらには
兵器を作る→戦争する→消耗する
というサイクルを繰り返すことによりエネルギー、物質の絶対量が減少していきます。

 以上の理由より「完全に独立した」自給自足システムは不可能だと考えます。つまりやはり外部からのある程度の補給は不可欠です。しかし冒険風ライダーさんがおっしゃるようにユリアン率いる共和政府は全宇宙を敵にまわしながら補給の心配だけはしていません。(コーネフによる密輸の記述はありますが規模を考えれば砂漠に水をまくようなものでしょう)では一体彼らはどのようにしてイゼルローンを維持していたのでしょうか。ヒントは「長征一万光年」にあると考えます。「長征一万光年」においてドライアイスの宇宙船で帝国から脱出することからはじまります。そして「本格的な恒星間移動宇宙船」は星間物質によって建造すればよい、という記述があったはずです。つまり銀英伝世界において、星間物質から必要な物やエネルギーを得る技術が存在しイゼルローンにおいてもその技術により補給を行っているのではないでしょうか。さらにいえばあのような巨大要塞を維持するためには並の量の星間物質ではとてもおぼつきません、そこで仮定ですがあの宙域(その他要塞が存在する場所はすべて)には通常よりはるかに濃密に星間物質が存在するのではないでしょうか。つまり要塞が存在する場所というのは戦略上の要所であり、かつ要塞の維持が可能なほど星間物質が満ちている、という条件を仮定することにより冒険風ライダーさんが提唱された移動要塞の驚異的な戦略的価値を否定することができます。自由に移動できたとしても行き先に星間物質が希薄、ないし採取が困難な状態であれば「無限の回復力」を発揮することができません。

まあ「星間物質」を都合よく使いすぎてる気がしますが、「完全に独立した」「永久機関のごとき」軍事要塞の存在よりかはまだましな気がします。ていうかそんなものつくる技術力があるなら戦争なんかしなくてもみんなハッピーじゃん〜、と思ったりしますし(笑)


No. 1746
どもです。
KUR 2002/04/17 11:45
ども、こんにちは、KURです。

>  在日米軍だけでなく日本の自衛隊もそうですが、いくら何でも一軍事基地の司令官が、基地の内部はともかく、基地の存在する都市や町、さらにはそこに住んでいる住民を直接支配しているなどということはありえないでしょう。日米安保条約にも自衛隊法にも、そのような規定はどこにも存在しませんし、戦時や災害などの非常時ならばともかく、すくなくとも平時でそのようなことが許されることはありません。
>  定期的に行われる選挙ではきちんと住民の自由投票によって政治家が選出されていますし、革新系の知事や自衛隊演習場などが存在している地域では、むしろ地方行政・住民と在日米軍・自衛隊との間で諍いが起こっているところもあるくらいです。
>  これから考えても、イゼルローン要塞におけるヤンの権勢がいかに独裁権力者としての性格を濃厚に保有しているかがお分かりいただけるのではないでしょうか。何しろヤンは、イゼルローン要塞内における地方自治の原則すらも一切認めなかったのですから。


いや、嘉手納や横須賀に住んでいる普通の市民じゃなくて、
米軍基地内に居住している民間人の扱いはどうなんだろう、ということです。
つまり将兵の家族とか、基地内の小中高校の教師とかですね。
彼らにも、基地司令官の指揮権が及ぶのかどうかということが問題だと思います。

というか、彼らが投票権を行使しているかも非常に疑問なんですが。
アメリカはその辺には配慮しそうなので、何らかの措置はあるとは思いますが…


No. 1748
Re:要塞の「自給自足」の考察から移動要塞を否定してみます。
本ページ管理人 2002/04/17 22:35
正直、昔から作中で大艦巨砲主義が否定されているのが納得行きませんでした。
現代世界ならともかく、圧倒的な戦闘力でアウトレンジ出来るハードウェアがなんであの世界で否定されるようになったんでしょうか。
ガンダムの場合は、ビームライフルが戦艦砲と同等の威力があるという、ある意味反則な設定があるんでひとまず納得できるんですけど。


> 「完全に独立」している以上、質量やエネルギーは常に一定です。

有機物はまだ循環が可能だとしても、無機物は自給できるのでしょうか?例えば、資源のない境遇は日本を想起させます。
イゼルローンも生産工場に代表されるインフラは整備されているようですが、大東亜戦争時の日本は空襲でインフラを破壊される以前に海上封鎖でダメージを受けていたわけですし。

ところで、イゼルローンが戦闘状態になった際には、おそらく500万都市が戒厳令下に置かれる(置かざるを得ない)はずですが…
ヤンやジェシカが一般市民の立場なら、真っ先にこういう状態に反対する行動を起こしそうなものですし、必ずこういう集団がいそうなものですが、我らが司令官殿はこういうとき、どのような対処をするんでしょうか?


No. 1749
Re:Re1735/1737/1738/1740:要塞関連レス
tina 2002/04/17 23:21
あーやっぱりわかってくださらなかった(泣)
やっぱあのレスじゃ私の言いたい事は伝わらなかったようです。
みなさーん!
私の一回目のレスは気にしないでください(笑)
二回目の、私のレスに対する私のレスだけ見てください!

私は何も「要塞特攻」という一部のことにこだわったつもりはないんです。
ケンプの死から学ぶ事って、嫌でも「要塞を攻撃するということ」と、「自ら移動要塞を使うということ」の二つにわかれるじゃないですか。
で、私が言いたいのは、「二人はそのどちらも活かす機会がなかった」と。

「要塞攻撃」については、ケンプ以降、イゼルローン以外要塞戦が行われておらず、イゼルローン攻防の時は、どちらかの陣営に占拠する勝算があった。
ヤンの再奪取以降のラインハルトの対イゼルローン戦については後述します。
学習を実践に移す機会がなかったわけです。

「移動要塞」についても、結論からいえば「二人とも実行に移す機会がなかった」かと。
ヤン側は、「経済的な問題」「政治的な問題」「工事の問題」と常に三拍子がそろっていた。
ラインハルト側は、強大なリスクを背負ってまで、そんなものを作る必然性がなかった。
工事に関しては、やっぱり無理があると思います。
ぱっと見てもよくわからない兵士の数などや、広大な宇宙のどこかに隠せばいい艦艇などとは、ちょっと違うのではないでしょうか。
工事したということにもしなっていたら、それはそれで冒険風ライダーさんの攻撃対象になったでしょうしね(笑)

だから、ケンプの死後、それを踏まえた要塞戦が出て来なかったのは、作中人物が阿呆なわけではなく(ここ重要)、正当性があったんだよ、というお話です。
よーするに枝葉末節の部分(笑)
他は大方認めますよと。
おわかり頂けましたか?
要塞に関しては、私もかなり疑問に思っている事があるのでまた別に。

ラインハルトについてはねぇー。
「人生とはなんぞや?」
という問いと密接に結び付きますから。簡単に答えは出ないっすね。
でも、だからと言って議論をやめてはいけない問題でもあります。
え?
このスレッドでやる問題じゃないって?
まぁいいじゃないですか(笑)

だいたい私は、「将来の夢は?」と聞かれてまよわず「ヤンの性格のラインハルト!!」と今だに答えてしまう人なので(おっ年齢暴露?)。
もちろん「ヤンの性格のラインハルト」が、思想的に存在し得ないことなんてわかってますよ。
うーんなんというか、彼ら二人のファンなら、なんとなくニュアンスはわかってくれるのでは。
ってなんの話や!(笑)
だから、「考察シリーズ」とかを読んで、冒険風ライダーさんにボコされているラインハルトを、どーしても弁護したくなったりするのです。
要塞とは離れてしまうので、本格的な議論は後日に回してちょろっとだけ。

銀英伝の中には、名台詞がいっぱいありますよね。
特にヤン!
その中でも、結構心に残っていることばがあるんです。
「納得しない、ということが問題なんだ」
「人類は、命よりも大切なものがある、という考えと、命より大切なものはない、という考えの間で揺れ動いている。人類は二千年たってもこの答えをみつけられずにいる。まだまだ解決できるとは思わない」
みたいな台詞。(詳細は違ってると思うけど)

例えば、よくこのページにもでてくる宋のシンカイ(漢字でないっす)さん。
彼の和平によって歴史は納得したんでしょうか?
結局後に「復讐だ」みたいな感じでモンゴルと共同で金滅ぼして、墓穴掘ってますよね。
彼のようなかなり悪役な人物の評価のでさえ、数百年たった現代でも、冒険風ライダーさんと田中さんのように、正反対の意見が存在するのです。
ラインハルトなんていう、めちゃめちゃヒーロー的な人物の評価は、とても難しいし、多分これも数百年議論されるでしょう。
ただ、皇帝ラインハルトや、それにつき従った将兵たちは、簡単に全否定されてしまうような人生だったんでしょうか?
それではあまりにも、イゼルローンに没したたくさんの将兵たちが浮かばれないと思います。

ラインハルトの考えも一面の真理。
民衆はヒーローを望む、というのも真実。
しかしその一方で、「人は生きるために生きる」というのも立派な真理。
こういったことを考えた時、「ラインハルトを全否定する」なんてことは誰にもできないはずです。
ラインハルトはやはり、「ベストではないけれどよりベター」だと思いますよ?

さらに私の考えを言えば、人生とは「いかに楽しむか」であり、
「人は楽しむために生きる」
んだと思います。
もちろんこれは「アッハッハ」と笑う事だけじゃありませんよ。
夢をかなえたり、目標を達成したりという事もです。
で、歴史って言うのは「人生」だと思ってます。
いろんな考えがぶつかったり、楽しかったり悲しかったり。
そう思ったとき、やっぱ歴史にはシンカイみたいな人がいるよりは、ラインハルトのようなヒーローがいてくれたほうが、楽しいのでは?
「確かに効率はいいかもしれないが、卑怯な手を使った人」と、「効率はよくないが、ヒーローであった人」だったら、後者のほうが歴史に必要だ、と”私は”思います。
これは結構重要な事ではないでしょうか?
もちろん、「楽しい」という言葉をそのまま受け取られると困りますが。
「楽しい歴史を作り上げる」ということは、「生きること」に匹敵すると私は思います。
どうですか?結構内面的に深い意味を帯びていると思いません?
その意味って何か説明せよ、っていわれるとまだ自分でもまとまってないのでこまりますが(笑)

脱線してごめんなさい。
要塞に関しては前半のところまでで。


No. 1750
Re1743/1744/1746/1748:色々レス
冒険風ライダー 2002/04/18 00:51
>平松さん
<それにしても、銀英伝に関しては設定擁護派を自認しておられた冒険風ライダーさんがこの様な問題提起をなさったのは少し意外でしたね。>

 実はこの銀英伝考察3で述べている「無限の自給自足能力を駆使した移動要塞戦術」というネタ自体は、銀英伝考察1で書いた「信念否定論」と並んで、すでに10年近くも昔から頭の中で考えていたことでしてね。何しろ、作中のキャラクター達が常に補給の重要性を説いているそのすぐ目の前に「永久要塞」が存在したものですから、「これって銀英伝の軍事思想と矛盾するんじゃないの?」とは当時から考えていたものでした。
 ただ、これをどのように論評するかに当たっては私自身もずいぶんと悩みました。普通に要塞の自給自足能力が持つ設定矛盾を指摘するだけでは面白くないですし、あげ足取り的な批判だと私自身も考えていたくらいでしたからね。実際、このネタは自分の胸の中に永久保存するに留めておこうかと何度か考えたこともあったほどです。
 で、最近になってようやく、新規に思いついたいくつかのネタと組み合わせ、さらに設定矛盾を問題にするのではなく、ヤンとラインハルトの政治・軍事思想の方に致命的な一撃を与える形にすることで面白い考察にすることができることに気づき、今回の運びとなったわけです。
 ストーリー批判に関しては「思想を憎んで設定を憎まず」が私の思想信条ですからね。今回もその流れから決して外れてはいないのですよ。


<ワープエンジン(12基)・通常航行用エンジン(12基)の取り付け及び調整などには、史実のガイエスブルクの場合一月(三巻P35)から三月半ば(P98)と、6万4千人(途中で2万5千人が増員された)の工兵を動員して2ヶ月近くかかっている。何ヶ月もの工事の間に敵の波状攻撃があった場合、それを防ぎ切るのは難しいのではないか。また、工事を隠蔽しようにも要塞内部に隠し数量を情報操作出来る艦隊と違い、要塞にエンジンを取り付ける工事は要塞外部で行なわざるを得ないので、合計24基ものエンジンを取り付けている途中で発覚する恐れが高いのではないか。>

 要塞改造の工期に関しては、時間的にちょうど入れ違いになった前の投稿No.1742で私も見解を述べていますが、最初から綿密な計画を持ってやる気でいれば決して不可能な工事ではなかったと私は考えています。
 工事に必要な技術要員の調達に関しても、軍の工兵だけでなく民間人からもエンジン整備が可能な技術者を徴用するなりすれば、10万人ぐらいは問題なく揃えることができるでしょう。全く同じ条件ないしはそれ以上の人員を揃えて突貫工事を行っていけば、ガイエスブルクのときと同様ないしはそれ以下の工期で改造工事を終わらせることも可能です。
 加えて、ガイエスブルク移動要塞改造の時は、それが技術的に可能であることがまだ「理論上証明されただけ」で、実行過程では様々な事態を想定して色々な回り道をしなければならなかったことにも留意する必要があるでしょう。それ以降はすでに実際的に実現可能であることが確認されているのですから、その分工期を短縮させることもできるのではないでしょうか。
 また、要塞にエンジンを設置する工事については、せっかくケンプがその身を犠牲にして実証してくれたガイエスブルク移動要塞の戦訓を生かさない手はないでしょう。すなわち、要塞移動時はエンジンを外部に出して推進させながら、停止時には要塞外壁の内部にエンジンを格納できるようにする工事も同時に行い、移動要塞の致命的な弱点となるであろうエンジンを要塞外壁で防御できるように要塞改造を行うのです。アニメ版の流体金属外壁であれば浮遊砲台が外壁の中から現れてくる描写があったくらいですから話は簡単でしょうし、四重複合装甲の外壁であっても似たようなシステムで砲台を守ってはいるでしょうから、それを応用した工事を行えば、エンジン格納工事もそれほど難しくはなさそうに思えるのですけどね。
 それと情報漏洩に関しても、何年単位にも上る長期的な情報封鎖ならばともかく、せいぜい2〜3ヶ月程度の間であれば、イゼルローン回廊全域を全面立入禁止宙域に指定したり、緘口令を布いたり、様々な情報操作などを行ったりしていけば、イゼルローン要塞内にスパイでもいない限りはイゼルローン回廊の内情を外部から隠蔽するなど容易なことでしょう(しかもこれらは戦時には常識的に行われていることです)。そもそも、敵が軍を率いてイゼルローン回廊に到達するだけで、宇宙航行の事情から約1ヶ月ほどは確実にかかるので、事前の防御も容易なものですよ。これもそれほど重大な脅威とまで言われるほどのものでもないかと。
 平松さんが仰っている移動要塞関連の諸々の問題は決して解決困難な命題などではありません。ヤンにせよラインハルトにせよ、移動要塞の重要性を認識し、その気になって要塞改造に挑んでいれば、最強の兵器と軍隊を手に入れることができたと言うのに。常に補給の重要性を説いていながら実際はあのザマなのですから、なんとも滑稽な話としか言いようがないではありませんか。



>Tomoさん
<ヒントは「長征一万光年」にあると考えます。「長征一万光年」においてドライアイスの宇宙船で帝国から脱出することからはじまります。そして「本格的な恒星間移動宇宙船」は星間物質によって建造すればよい、という記述があったはずです。つまり銀英伝世界において、星間物質から必要な物やエネルギーを得る技術が存在しイゼルローンにおいてもその技術により補給を行っているのではないでしょうか。さらにいえばあのような巨大要塞を維持するためには並の量の星間物質ではとてもおぼつきません、そこで仮定ですがあの宙域(その他要塞が存在する場所はすべて)には通常よりはるかに濃密に星間物質が存在するのではないでしょうか。つまり要塞が存在する場所というのは戦略上の要所であり、かつ要塞の維持が可能なほど星間物質が満ちている、という条件を仮定することにより冒険風ライダーさんが提唱された移動要塞の驚異的な戦略的価値を否定することができます。自由に移動できたとしても行き先に星間物質が希薄、ないし採取が困難な状態であれば「無限の回復力」を発揮することができません。>

 ひとつ質問したいのですが、星間物質とはどのようなものなのでしょうか?
 もしそれが小惑星や隕石だと言うのであれば、イゼルローン要塞が置かれているアルテナ星系はひとつの惑星も持たない孤独な恒星系なので、この設定が成立することはありえませんが。
 また、特定の星系でしかその手の星間物質が手に入らないと言うのであれば、太陽エネルギーということもないですよね。これだと移動要塞が威力を誇る際の障害とはなりませんし。
 銀英伝世界における要塞の場合、要塞の中心部に位置する核融合炉が全要塞にエネルギーを供給しているという描写がレンテンベルク要塞関連の記述に存在しますし、イゼルローン要塞にも巨大な核融合炉が存在するらしいので、これが「無限の自給自足能力」を支えるエネルギー供給源になっているという説が一番妥当なところではないかと思うのですが。



>KURさん
<いや、嘉手納や横須賀に住んでいる普通の市民じゃなくて、
米軍基地内に居住している民間人の扱いはどうなんだろう、ということです。
つまり将兵の家族とか、基地内の小中高校の教師とかですね。
彼らにも、基地司令官の指揮権が及ぶのかどうかということが問題だと思います。
というか、彼らが投票権を行使しているかも非常に疑問なんですが。
アメリカはその辺には配慮しそうなので、何らかの措置はあるとは思いますが…>

 たとえ米軍基地内に居住している民間人でも、日本国籍を持っているのであれば、選挙権も被選挙権も保有しているでしょう。日本の選挙制度にそのような差別があるといった類の話は聞いたことがないですし、第一、彼らは基地の中に拉致されて行動の自由を失っているわけではないのですから。そして、選挙権や被選挙権を実際に行使しているかどうかはその人の個人的な意思の問題であって、一連の軍事問題とは何の関係もない事です。言うまでもないことですが「与えられているが使わない」と「最初から与えられていない」では大違いです。
 在日米軍基地とイゼルローン要塞の決定的な違いは、前者が都市や町に寄生し、日米安保条約なり日米地位協定なりに基づいて土地を貸与してもらっている存在であるのに対して、イゼルローン要塞は「軍事基地の中に都市が存在する」という、全く逆の立場関係を持っていることです。そして「大都市イゼルローン」はあくまでも「軍事基地イゼルローン」に奉仕する存在でしかなく、主体はあくまでも軍の方なのです。
 これだけでも、在日米軍の司令官とヤン、どちらがより強大な権力者であるかが分かろうというものではありませんか。



>管理人さん
<有機物はまだ循環が可能だとしても、無機物は自給できるのでしょうか?例えば、資源のない境遇は日本を想起させます。
イゼルローンも生産工場に代表されるインフラは整備されているようですが、大東亜戦争時の日本は空襲でインフラを破壊される以前に海上封鎖でダメージを受けていたわけですし。>

 さすがに大型艦船の類を自給することはできないみたいですね。武器弾薬の類を自給することは可能みたいですが。

<ところで、イゼルローンが戦闘状態になった際には、おそらく500万都市が戒厳令下に置かれる(置かざるを得ない)はずですが…
ヤンやジェシカが一般市民の立場なら、真っ先にこういう状態に反対する行動を起こしそうなものですし、必ずこういう集団がいそうなものですが、我らが司令官殿はこういうとき、どのような対処をするんでしょうか?>

 要塞防御司令官であるシェーンコップが秘密裏に処理していき、ヤンは事後処理の書類にサインするだけ、というのが一番ありえそうなシナリオでしょうかね。もちろん、ヤンが決断にあたふたするのを見かねたシェーンコップに半ば引きずられる形で、というパターンになるでしょうけど。
 イゼルローン要塞の住民をヤンが自分の意のままにできることはほぼ間違いないでしょう。銀英伝3巻でガイエスブルク要塞来襲の際、留守司令官であったキャゼルヌが民間人に対して退避準備を命じていましたし、銀英伝5巻でも、ヤンは住民の感情に配慮することなくイゼルローン要塞放棄を決定しています。
 いや〜、独裁権力というものは良いものですね〜。誰にはばかる必要もなく、好き勝手に基本方針を決定し、有無を言わさず他人に命令を下し、強制的に従わせることができるわけなのですから。


No. 1751
星間物質について
テム太郎 2002/04/18 02:39
とても面白い話題なので、思わずレスをつけたくなりしゃしゃり出てきました。

Tomoさん>星間物質とは別名「影の物質」と呼ばれている物のことですよね?
ということで、ずうずうしくも説明したいと思います。

そもそも我々がものを見ることができるのは電荷を持った素粒子が振動することによって発生する電磁波(光)を目とかアンテナでキャッチできるからです。この電磁波の発生や光が網膜の視神経を刺激するといった現象は、すべて電磁相互作用のたまものです。
ですが、我々が観測できるだけの物質の持つ質量だけでは銀河のような美しい渦巻き型の形は作られることがないのです。(計算上)質量にして我々が見える物質の10倍以上はないと渦巻き型銀河はできません。
つまり電磁相互作用をすることがない(光や電波による観測が不可能な)物質がそれだけあるということなのです。
電磁相互作用がないということは分子を結びつける力も電磁力なので、実在する物質と星間物質(影の物質)が互いに同じ位置にあってもお互いに素通りしてまったく気がつかないという不思議な物質です。
ただこいつには質量はありますので、質量があるということはそれを一旦エネルギーに変換しそれを我々が知る物質に変換するということは可能です。(つまり補給は可能!)
こんな不思議な物質の存在は「超ひも理論」において実在することが予測されてます。が、なんせ観測不能なんでどういうものか全く分かってないというのが現在の状況です。

ただ今から何百年もあとの人類の科学技術だったら、こんな夢みたいなことでもできるかな・・・?


No. 1752
Re:Re1743/1744/1746/1748:色々レス
KUR 2002/04/18 12:17
ども、KURです。

>  たとえ米軍基地内に居住している民間人でも、日本国籍を持っているのであれば、選挙権も被選挙権も保有しているでしょう。日本の選挙制度にそのような差別があるといった類の話は聞いたことがないですし、第一、彼らは基地の中に拉致されて行動の自由を失っているわけではないのですから。そして、選挙権や被選挙権を実際に行使しているかどうかはその人の個人的な意思の問題であって、一連の軍事問題とは何の関係もない事です。言うまでもないことですが「与えられているが使わない」と「最初から与えられていない」では大違いです。
>  在日米軍基地とイゼルローン要塞の決定的な違いは、前者が都市や町に寄生し、日米安保条約なり日米地位協定なりに基づいて土地を貸与してもらっている存在であるのに対して、イゼルローン要塞は「軍事基地の中に都市が存在する」という、全く逆の立場関係を持っていることです。そして「大都市イゼルローン」はあくまでも「軍事基地イゼルローン」に奉仕する存在でしかなく、主体はあくまでも軍の方なのです。
>  これだけでも、在日米軍の司令官とヤン、どちらがより強大な権力者であるかが分かろうというものではありませんか。

あーーーー。どうして話がすれ違うのかわかりました。
すいません、説明不足でしたが私は「在日米軍基地内に居住する米国民間人」の話をしていたんです。
将兵の家族とか、軍に委託された民間施設の勤務者とか、
故郷を遠くはなれて異国の軍事基地に居住する人たちのことです。
イゼルローン居住の民間人に近いのは、おそらくそういう立場の人たちだと思います。
「彼らの指揮権は基地司令官に属するんだろうか?」というのが私の疑問だったわけです。

米軍の将兵が10万人いるわけだから、軍関係の民間人も相当の数が日本の軍事基地内に居住していると思うんですが、
彼らの政治的権利やら住民としての権利やらの扱いがどうなっているのか興味あります。


No. 1753
考察の考察(爆)
Merkatz 2002/04/18 21:10
これはまた凄い指摘ですね。
補給を考えなくてよい軍隊というのは、永久機関と同じ類いの発想ですから、
これが可能な存在というのは、銀英伝が前提にしている現在の兵法の延長線上というのを覆してしまいますね。

さて、大筋においては冒険風ライダーさんの精緻な論に納得しましたが、
工事などに関してはやはり無理があると思います。



[要塞が改造されなかった理由]

・同盟側(ガイエスブルグ要塞襲撃後)
第一に経済的問題。
アムリッツァ以後崩壊した軍の建て直しに手一杯な同盟が、
余計な工事に割く人員も金も無い。
本土防衛の任務のみなら、要塞を機動化しなくとも従来のヤン艦隊+イゼルローン要塞で果たせる。
(中立地帯のフェザーンを突破してくるなど慮外のこと)
第二に時期を外したこと。
移動要塞が真に必要なとき(すなわちアムリッツァ会戦時)、まだ技術は確立されておらず、
手法が帝国によって提示されたときは、同盟が帝国領を再侵攻する可能性はゼロであり、
移動要塞の必然性が無かった。

・同盟崩壊後(エル・ファシル政権時代)
またまた第一に経済的問題。
フェザーン独立商人を通じて金策に走っていたヤンや、
格段資源も無いエル・ファシル恒星系に、
大規模工事を行う経済力はない。
第二に戦略的見地から必要性が無いこと。
ヤンがイゼルローンに立て篭もることを選択したのは、
狭い回廊で数に勝る帝国軍に不利な戦いを強いるということにあった。
ゆえに要塞が移動する必要は無い。

さらに両方に共通な事項として、技術問題。
「実現可能であることが確認されているから、その分工期を短縮させることもできる」のは帝国のみ。
同盟はそれを見たというだけで、実際のノウハウを持っていない。
帝国から技術を盗みでもしない限り、工期は同じだけかかる。
それも技術レベルがまったく同等と仮定しての話であるから、
もし戦争による疲弊により技術レベルが下がっているなら、
帝国がやったより時間がかかる可能性すらある。
例えればフェラーリもトヨタも同じ自動車メーカーだからといって、
F1でいきなり参戦一年目のトヨタが、
ワールドチャンピオンをとることは不可能なのと同じ理屈である。

・帝国側(シャフトによる提案時)
ここでラインハルトが事の重大性に気づかなかったのはまったく指摘通り。
ガイエスブルグ、レンテンベルク、ガルミッシュなどの諸要塞をすべて移動要塞化し、
一つでイゼルローンを牽制しつつ、他でフェザーンを突破すれば、
同盟軍に為す術は無い。
史実のラグナロック作戦よりずっと少ない被害で同盟を占領できたであろう。

・同盟占領後(ルッツ要塞司令官時)
移動要塞の必要性が無い。
形式的には同盟は滅び、宇宙は新帝国の統一するところとなったのだから、
移動要塞で遠征する事態などあり得ない。
バーラトの和約以後、同盟は重武装を禁じられている。
姿をくらましたヤンが再びイゼルローンを占領するなど神でもなければ分からない。
フェザーン回廊−ウルヴァシーのラインで駐留軍も存在しており、
イゼルローンを緊急に移動要塞化する必要がない。

そして最大の懸案は敵の目の前で悠長に工事ができるかということ。
イゼルローン回廊では常に哨戒任務が行われていた。
(同盟・帝国双方)
ガイエスブルグ作戦の呼び水となったのも、哨戒任務中の帝国軍と交戦したことだった。
すなわち、イゼルローン要塞がどちらの手にあろうとも、
通常の哨戒任務で様子を窺うことは常に行われており、
大規模な外装工事を始めれば確実にばれてしまうだろう。
窺うといっても別に艦隊が要塞に接近する必要は無い。
無人の強行偵察艦で遠距離から撮影すればよい。
現在のスパイ衛星すら、地表の一円玉を見つけられるというのだから、
この時代の偵察用カメラなら、要塞外装で工事が行われているかいないかくらいの判断はつくだろう。



・・・とまあ主に二点について考察してみました。
移動要塞を作らなかったヤンやラインハルトは間抜けかという点は、
シャフトに提案された時のラインハルトはそう言われても仕方ないが、
それ以外は必要性・緊急性が薄いのではないかということ。
敵の目の前で工事ができるかという点は、
偵察任務の艦隊が四六時中ウロウロしているのに完全に秘匿するのは不可能ではないかと。
しかしそうするとイゼルローン要塞が誕生しなくなる(笑)。


No. 1754
脱線です
Merkatz 2002/04/18 21:35
> ラインハルトについてはねぇー。
> 「人生とはなんぞや?」
> という問いと密接に結び付きますから。簡単に答えは出ないっすね。
> でも、だからと言って議論をやめてはいけない問題でもあります。
> え?
> このスレッドでやる問題じゃないって?
> まぁいいじゃないですか(笑)

(中略)

>
> さらに私の考えを言えば、人生とは「いかに楽しむか」であり、
> 「人は楽しむために生きる」
> んだと思います。
> もちろんこれは「アッハッハ」と笑う事だけじゃありませんよ。
> 夢をかなえたり、目標を達成したりという事もです。
> で、歴史って言うのは「人生」だと思ってます。
> いろんな考えがぶつかったり、楽しかったり悲しかったり。
> そう思ったとき、やっぱ歴史にはシンカイみたいな人がいるよりは、ラインハルトのようなヒーローがいてくれたほうが、楽しいのでは?
> 「確かに効率はいいかもしれないが、卑怯な手を使った人」と、「効率はよくないが、ヒーローであった人」だったら、後者のほうが歴史に必要だ、と”私は”思います。
> これは結構重要な事ではないでしょうか?
> もちろん、「楽しい」という言葉をそのまま受け取られると困りますが。
> 「楽しい歴史を作り上げる」ということは、「生きること」に匹敵すると私は思います。
> どうですか?結構内面的に深い意味を帯びていると思いません?
> その意味って何か説明せよ、っていわれるとまだ自分でもまとまってないのでこまりますが(笑)
>
> 脱線してごめんなさい。
> 要塞に関しては前半のところまでで。

tinaさん、はじめまして。

言いたいことよく分かります。
私も歴史が好きなのは、そういう人間臭さとも言うべき部分に惹かれての事ですから。(^^)
もうまったく理屈で考えると、ラインハルトのやったことは愚行でしかないと言われれば、
はいその通りですと肯くしかない。
でもやっぱり全否定はしたくないんですよね。
秦檜の選択はまったく正しかった。現実主義でつけいる隙が無い。
対して岳飛は空想的だ。軍事ロマンチシズムだ。
でもやっぱり、歴史が秦檜だけだったら?
歴史のページのどこをめくっても秦檜だけだったら、
そんな歴史は面白いだろうか?血肉の通ったものと感じられるだろうか?
色々な人間がいて、色々な悲喜劇が繰り返されるからこそ、歴史というのは興味が尽きないのではないかと、私は思っています。

まあ人物評価というのは、ほんと万人を納得させるものは無理ではないかと。
人によって物差しが違いますし、その各々の物差しも、
きちんとした基準に沿って行われているので、善悪二元論みたいな単純な比較もできませんし。
(冒険風ライダーさんのラインハルトへの評価も、私は正当であると思っています)
だからあっちが間違っていて、こっちが正しいとかではなく、
当てる光の角度によってまったく違った影ができてしまう歴史の奥深さみたいなものを、感じ取れればいいんじゃないかなと。

私も何が言いたかったのか、訳が分からなくなってきましたが。(^^;;


No. 1755
Re1749/1751/1752:今回は短レス
冒険風ライダー 2002/04/19 01:08
>tinaさん
 要塞関連の議論に関しては、次の投稿でMerkatzさんのNo.1753に対する反論という形で返答するという形を取らせて頂きますので、しばらくお待ちください。アレにきちんとした反論を行なうには色々考えなければならないですし、内容も結構長くなりそうなので。
 それと、後半部分の「泣き言」に等しい書き込みに関しては、私は一切取り合うつもりはありません。私の主張に対する明確な理論を伴った反論となっていない単なる個人的な感情論でしかない以上、それはあなたが「個人的に」胸の中に抱いていれば良いだけの話でしかありませんので。



>テム太郎さん
 Tomoさんの真意がどのようなものかは今のところ分かりませんが、とりあえずご説明ありがとうございます。
 ただ、どういうものなのかが具体的に分からないのでは、どう議論するにせよ結構きついですね。銀英伝でも「星間物質」に関する記述は、銀英伝1巻序盤にある「長征一万光年」の記述の中にしかありませんでしたし。



>KURさん
<あーーーー。どうして話がすれ違うのかわかりました。
すいません、説明不足でしたが私は「在日米軍基地内に居住する米国民間人」の話をしていたんです。
将兵の家族とか、軍に委託された民間施設の勤務者とか、
故郷を遠くはなれて異国の軍事基地に居住する人たちのことです。>

 それでは話が噛み合うはずもないですね。私が提唱していた問題は「ヤンがイゼルローン要塞の独裁権力者になりおおせているがために、イゼルローン住民の『地方選挙権』と『地方自治の権利』が失われてしまっている」というものだったのですから、「イゼルローンは在日米軍基地によく似ている」と言われた時、私は「在日米軍基地が存在する町民ないしは都市住民の『地方選挙権』の有無」のことかと解釈していましてね。「何でこんな簡単なことが分からないんだ? まさか在日米軍基地が日本の地方自治権を剥奪しているとでも言うのか?」と考えてしまいましたよ。

 まあそれはさておき、今度こそKURさんの意図に基づいた回答を致しますと、これまた言うまでもないことですが、在日米軍基地に在住しているアメリカ兵の家族には、日本国籍を保有していない限りは、当然ながら外国である日本の国政に参加する権利は一切存在しません。ただし、彼らがアメリカ国籍を保有している場合、アメリカ本国の国政に参加する権利は当然認められます。
 国外に移住している人が本国の選挙に参加できる制度としては「在外選挙制度」と呼ばれるものがあります。これは本国の国籍を保有する海外在住者が、予め「在外選挙人名簿」に登録しておくことで、選挙の際には在外公館などで在外投票を行うことができる制度です。日本では1999年5月より衆参両議院選挙のみに限定してこの制度が導入され、海外在住者も本国の国政に参加することができるようになっています。
 アメリカでは日本よりも早くこの制度が導入されており、在外選挙はすでに定着しているものであるそうなので、在日米軍の軍人および家族はこれを使って本国の国政に参加しているのではないでしょうか。

 しかしこれって、私が問題にしている件のイゼルローン要塞の内部事情とはあまり関係がないようにしか思えないのですけどね。私が問題にしているのはあくまでもイゼルローン住民が持つべき「地方自治権」および「地方選挙権」についてですし、そもそもヤンが統治していた当時のイゼルローン要塞は、歴史が浅いとは言えれっきとした同盟領土であって、決して同盟国外に存在していたわけではありません。国外に在住している人に「現地の地方選挙権」が存在しないのはむしろ当然のことで(その国に帰化して国籍を獲得すれば話は別ですが)、元から在住している人のそれと同一に見ることはできないと思うのですが。


No. 1759
Re:考察の考察(爆)
倉本 2002/04/19 09:27
> しかしそうするとイゼルローン要塞が誕生しなくなる(笑)。

イゼルローン要塞は完成に予定より多くの予算と長い期間がかかったはずです。
これは同盟軍による妨害があったからと考えてはどうでしょう。
予算と工期の算出に同盟軍が妨害するということを計算に入れてなかった。
だから予定より長引いて予算も膨らんでしまった。
銀英伝の帝国貴族ならありえそうなミスだと思いませんか。


No. 1762
Re:Re1749/1751/1752:今回は短レス
tina 2002/04/20 00:06
>  それと、後半部分の「泣き言」に等しい書き込みに関しては、私は一切取り合うつもりはありません。私の主張に対する明確な理論を伴った反論となっていない単なる個人的な感情論でしかない以上、それはあなたが「個人的に」胸の中に抱いていれば良いだけの話でしかありませんので。


うわー、感じ悪・・・。(笑)
さて、「取り合うつもりは無い」と書かれたのでそうそう突っ込んだ議論は書きません。
ただ一つだけ。このレスだけの話ではなく、「考察シリーズ」とかも読んでみて総じて思ったことを書きますので、まぁ読んでみてください。

結局このラインハルトの問題って、「感情と理性」っていう問題を大きくはらんでるじゃないですか。
ラインハルトに限らず、歴史上の議論になってる問題って、突き詰めてゆけばこれですよね。
で、理論って言うのは「理性側」に依存していることでしょ?
例えば大きく分けて、「感情尊重側」と「理性尊重側」がいたとします。
いくら「感情側」が理論武装したとしたって、「感情」を「理性」で説明せよって言われても無理なように、やっぱりどこかで不整合ができてしまう。
結局、「明快な根拠にもとずく理論」という、完全に「理性側」の土俵で争っているわけで、これでは「感情側」の出る幕は無い。
反対に、「感情側」の土俵で争ったとして、「それは感情的に間違っているからおかしい」などといえば、すぐに「ただのワガママ」といわれてしまうわけです。

つまり何がいいたいのかというと、「理性」で「感情」を説明することも、「感情」で「理性」を感じることも、非常に難しいという事はみんなわかっている訳です。
だから、「理性」と「感情」の折り合いを見つけ、相対的に両方の立場を踏まえて議論をしていこう、という流れになるのが賢いありようというものであります。
それを冒険風ライダーさんは、「理論的に叩き潰した」だの、「全否定した」だのと勝ち誇り、感情側を「明快な理論を伴わない感情論」として一蹴する。
非常に滑稽だと思います。

人間は感情を抜きにしては生きられません。
逆に、理性を抜きにしても生きられません。
「そんなことはわかっている。」
そう、みんなわかっているのです。
それでもその折り合いが見つけられずに、我々の祖先たちは苦しみ、悩みつつ、その中で歴史を作ってきたのです。
「全否定」できるような問題だったら、答えは等に定まっている。
滑稽な態度は、自分だけでなく、これまで悩みぬいてきた全ての人類に失礼だと思いますよ。

突っ込んだことを書かない、とか言いながら長くなってしまいました。(笑)
駄文ですいません。
どうでしょう?


No. 1763
Re:移動要塞建設の問題点
平松重之 2002/04/20 01:50
<工事に必要な技術要員の調達に関しても、軍の工兵だけでなく民間人からもエンジン整備が可能な技術者を徴用するなりすれば、10万人ぐらいは問題なく揃えることができるでしょう。全く同じ条件ないしはそれ以上の人員を揃えて突貫工事を行っていけば、ガイエスブルクのときと同様ないしはそれ以下の工期で改造工事を終わらせることも可能です。>
<加えて、ガイエスブルク移動要塞改造の時は、それが技術的に可能であることがまだ「理論上証明されただけ」で、実行過程では様々な事態を想定して色々な回り道をしなければならなかったことにも留意する必要があるでしょう。それ以降はすでに実際的に実現可能であることが確認されているのですから、その分工期を短縮させることもできるのではないでしょうか。>

 あまり要塞の工事に技術者を振り向けると、一方で駐留艦隊の修理・整備がおろそかになってしまうのでは?要塞の工事と艦の修理・整備を並行して行なえば時間か仕事の質かどちらかを犠牲にしなければなりません。突貫工事で移動要塞が完成しても、それを守備する機動力の状態が著しく悪いままでは勝算は少ないでしょうし、そういった状態をいつまでもラインハルトが座視する訳はないと思うのですが。

<また、要塞にエンジンを設置する工事については、せっかくケンプがその身を犠牲にして実証してくれたガイエスブルク移動要塞の戦訓を生かさない手はないでしょう。すなわち、要塞移動時はエンジンを外部に出して推進させながら、停止時には要塞外壁の内部にエンジンを格納できるようにする工事も同時に行い、移動要塞の致命的な弱点となるであろうエンジンを要塞外壁で防御できるように要塞改造を行うのです。アニメ版の流体金属外壁であれば浮遊砲台が外壁の中から現れてくる描写があったくらいですから話は簡単でしょうし、四重複合装甲の外壁であっても似たようなシステムで砲台を守ってはいるでしょうから、それを応用した工事を行えば、エンジン格納工事もそれほど難しくはなさそうに思えるのですけどね。>

 それでも、やはり通常要塞との防御力への将兵の信頼の差は大きいのではないかと。例えエンジンを格納すれば防御的には問題なしと技術的に保証されたとしても、ガイエスブルクの悲劇的な最後と言う生々しい前例がある以上、将兵達の心理的抵抗は大きいでしょう。
 将兵達は義務ある軍人たる自分達だけならともかく、家族までも移動要塞に乗せるのは断固反対するのでは?

<それと情報漏洩に関しても、何年単位にも上る長期的な情報封鎖ならばともかく、せいぜい2〜3ヶ月程度の間であれば、イゼルローン回廊全域を全面立入禁止宙域に指定したり、緘口令を布いたり、様々な情報操作などを行ったりしていけば、イゼルローン要塞内にスパイでもいない限りはイゼルローン回廊の内情を外部から隠蔽するなど容易なことでしょう(しかもこれらは戦時には常識的に行われていることです)。そもそも、敵が軍を率いてイゼルローン回廊に到達するだけで、宇宙航行の事情から約1ヶ月ほどは確実にかかるので、事前の防御も容易なものですよ。これもそれほど重大な脅威とまで言われるほどのものでもないかと。>

 Merkatzさんからもご指摘がありましたが、無人の強行偵察艦で遠距離から要塞外部を撮影されれば早い時期に露見してしまうのでは?要塞外部での工事はやはり隠蔽は難しいでしょう。

 ちなみに星間物質については、2巻のP187にも記載があり、バサード・ラム・ジェットエンジンは「前方に巨大なバスケット型の磁場を投射し、イオン化されて荷電した星間物質をからめとる」とあります。
星間物質は9割が水素原子ないし水素分子で、残り1割のほとんどはヘリウム原子と言われているとかいう話を何かの本で読んだ様な…。


No. 1764
Re1753:移動要塞の諸問題について
冒険風ライダー 2002/04/20 02:12
 今回は少し順不同で引用レスをつけていきます。
 まずは技術問題と工事の問題から始めましょうか。


>技術問題
<「実現可能であることが確認されているから、その分工期を短縮させることもできる」のは帝国のみ。
同盟はそれを見たというだけで、実際のノウハウを持っていない。
帝国から技術を盗みでもしない限り、工期は同じだけかかる。
それも技術レベルがまったく同等と仮定しての話であるから、
もし戦争による疲弊により技術レベルが下がっているなら、
帝国がやったより時間がかかる可能性すらある。
例えればフェラーリもトヨタも同じ自動車メーカーだからといって、
F1でいきなり参戦一年目のトヨタが、
ワールドチャンピオンをとることは不可能なのと同じ理屈である。>

 技術的な問題に関してはあまり考慮する必要性はないでしょう。銀英伝考察3本編でも述べた通り、移動要塞に必要な技術とは「要塞にワープエンジンと通常航行用エンジンをそれぞれ12個ずつ円状に設置し、全てを同時に稼動させる」だけのものでしかありませんし、銀英伝3巻でヤンがケンプの「要塞特攻」を、通常航行用エンジン一基を破壊することで止めたという描写は、ヤンが「移動要塞技術」の基本原理と弱点に気づいていたことを何よりも雄弁に証明するものです。しかも要塞に輪状に設置してあるワープエンジンと通常航行用エンジン自体も別に特殊な技術で開発された特注品というわけでもなく、それまでに存在した既存のエンジンを使用しただけのものでしかないのです。
 さらに、移動要塞改造工事に際して、工事の総指揮に当たっていたのはケンプとミュラーであり、ラインハルトやヒルダが「ケンプは良くやっている」などと述べている辺り(銀英伝3巻 P98〜99)、軍事司令官の指揮が工事の精度を左右していることを伺わせます。ならば彼ら以上に移動要塞技術に理解と指揮官としての力量とを併せ持つヤンが工事の総指揮に当たれば、更なる工事の精度の向上と工期の短縮が容易に実現しえるはずでしょう。
 ついでに言うと、これは多分に銀英伝描写の矛盾ではないかと私は思うのですが、銀英伝3巻のガイエスブルク改造工事が2ヶ月かかったというのも、実際には工事が命令されてから、オーディンからガイエスブルク要塞のある星系まで技術者が移動しなければならず、さらに最終ワープ実験が行われた3月17日までに、今度はガイエスブルク要塞をヴァルハラ星系外縁部まで持ってこなければならないという宇宙航行事情が存在するため、実際にガイエスブルク要塞改造に費やした工期は2ヶ月よりも短くなければならないのです。そしてオーディンからガイエスブルクまで移動するのにかかる時間は片道で通常20日、いくら急いでも14〜15日はかかってしまいますので、実際に要塞改造工事が行われた期間は、オーディン−ガイエスブルクの「往復航行時間」を差し引いた1ヶ月以下にまで下がってしまうのです。2月下旬頃から3月17日までの最後の20日ほどにはすでに工事自体は終了しており、ガイエスブルク要塞は最終確認テストを何度も行いながらヴァルハラ星系外縁部へと向かっていたというのが実情でしょう。
 以上のことから、移動要塞を改造するに際し、工期についても技術に関しても何ら問題は生じないと思われます。


>工事秘匿の問題
<そして最大の懸案は敵の目の前で悠長に工事ができるかということ。
イゼルローン回廊では常に哨戒任務が行われていた。
(同盟・帝国双方)
ガイエスブルグ作戦の呼び水となったのも、哨戒任務中の帝国軍と交戦したことだった。
すなわち、イゼルローン要塞がどちらの手にあろうとも、
通常の哨戒任務で様子を窺うことは常に行われており、
大規模な外装工事を始めれば確実にばれてしまうだろう。
窺うといっても別に艦隊が要塞に接近する必要は無い。
無人の強行偵察艦で遠距離から撮影すればよい。
現在のスパイ衛星すら、地表の一円玉を見つけられるというのだから、
この時代の偵察用カメラなら、要塞外装で工事が行われているかいないかくらいの判断はつくだろう。>

 失礼ながら、上記発言は宇宙空間におけるイゼルローン要塞の大きさと、銀英伝世界における索敵・哨戒事情に対する認識不足を露呈した意見であると私は考えます。
 まず前者ですが、イゼルローン要塞の直径は約60kmで、これは確かに銀英伝世界では一番大きな要塞となっているわけですが、宇宙空間における惑星として見ると、これがまたどうしようもないほどに小さな存在でしかないのです。
 その参考として太陽系内に存在する主な惑星の赤道直径を挙げてみますと、

太陽  ―→ 約140万km
水星  ―→ 4878km
金星  ―→ 1万2103km
地球  ―→ 1万2756km
月   ―→ 3476km
火星  ―→ 6786km
木星  ―→ 14万2984km
土星  ―→ 12万0536km
天王星 ―→ 5万1118km
海王星 ―→ 4万9528km
冥王星 ―→ 2284km

 となっており、どれもイゼルローン要塞の何十〜何百倍もの大きさを誇っています。
 また、火星と木星の間には、太陽系誕生の際にできた小さな欠片と言われている「小惑星帯」と呼ばれるものがありますが、この小惑星帯にさえ、イゼルローン要塞以上の大きさを持つ小惑星はたくさん存在するのです(小惑星の赤道直径の平均はだいたい100km前後。大きいものになると1000km近くも存在するものがあります)。宇宙空間の広大さの前では、イゼルローン要塞といえども芥子粒並に小さな存在でしかありえないのです。
 さらにこれに追い討ちをかけるのが、後者の銀英伝世界における索敵・哨戒事情です。銀英伝世界の単位で言えば、哨戒部隊が敵を探知できる範囲はせいぜい500〜1000光秒の間が限界で、それ以上遠方の敵を探知・目視できるような技術などそもそも最初から存在しないのです。もし仮にそんなものがあったならば、銀英伝3巻冒頭にあった帝国軍と同盟軍との接近遭遇戦はありえなかったでしょう。むしろ、宇宙空間の感覚で言えば、いくら哨戒部隊といえども、たかだか500〜1000光秒程度の距離しか見ることができないからこそ、あのような接近遭遇戦が発生したと考えるのが自然です。
 これではイゼルローン要塞が存在するアルテナ星系にまで進出し、さらに奥深くまで近づかければ、敵側はイゼルローン要塞を目視することすら不可能でしょう。Merkatzさんが主張している「無人の強行偵察艦で遠距離から撮影すればよい」という構想は成立のしようがありませんし、逆に防御側は宇宙空間の広大さを利用することで、星系内の事情を隠蔽することが容易に行えるわけです。
 以上のことから、要塞内部にスパイでも存在するか、敵がよほど味方の本拠地に接近してこない限りは、星系内における要塞の大規模工事を外部から隠蔽することも極めて容易な話であると思われます。また、イゼルローン要塞の建造に関しても、そのような事情があったからこそ建造可能となったのではないでしょうか。



 上記の前提を踏まえて、要塞を建造する時期に関する話題に移りますが、

>同盟側(ガイエスブルグ要塞襲撃後)
>同盟占領後(ルッツ要塞司令官時)

↑の2つに関しては私も同意しますし、

>帝国側(シャフトによる提案時)

↑に関しては私も同じ考えを持っていましたので、特に議論すべきこともないでしょう。
 時期的に私が問題だと思うのは、

>同盟崩壊後(エル・ファシル政権時代)

↑これなんですよね。この時期こそ、ヤンは移動要塞の驚くべき戦術的・戦略的価値を徹底的に活用すべきだったし、またラインハルト側も、あくまで短期決戦を行いたいのであればこの技術を見直すべきだったのです。
 まずヤン側ですが、そもそもあの当時のヤンにとってイゼルローン要塞に立て籠もって戦うことは必ずしも最善の選択ではなかったと、銀英伝考察3で引用した「共和革命戦略」とやらを語るくだりでヤン自身が明言しています。そうであるなら、移動要塞技術を駆使して「共和革命戦略」を行うという「最善の選択」を捨ててまで「次善の策」に固執しなければならない理由などどこにも存在しないでしょう。前述した時間的・技術的・秘匿などの問題が解決できるのであればなおのことです。
 また経済的な問題に関しても、一時的に大量の国債を発行して当座を凌ぎ、大戦果を挙げた上でフェザーン商人達の協力を仰ぐといった方法も使えたはずでしょう。それどころか、あの当時におけるエル・ファシル独立政府の実力と可能性が未知数であったことを考えれば、ただひたすらイゼルローン要塞に立て籠もって逼塞しているよりも、こちらの方がはるかにフェザーン商人の損得勘定に訴えることができる理に適った方法です。
 そもそも単純に考えてみても、移動要塞技術を使えば、バーミリオンの前哨戦でヤンが駆使した「正規軍によるゲリラ戦」の戦術が、より完璧な形で実現させることが可能となるではありませんか。それをひたすら駆使して帝国軍を奔走させ、補給の負担に悲鳴を上げるまで戦い続ければ、ヤンが望んだであろう帝国との和平も自分達に極めて有利な形で締結することすらもできたかもしれないのです。すくなくとも「イゼルローン回廊にひたすら立て籠もってラインハルトの個人的感情に訴える」などという、あまりにも愚劣な希望的観測に頼るよりははるかにマシな選択ではありませんか。
 結局、ヤンには移動要塞を使わなければならなかった必要性と緊急性があったにもかかわらず、ヤンもまたラインハルトと同様に、「無限の自給自足能力と強大な戦闘能力を持つ要塞」が「移動できる」事実が持つ驚異的な潜在的能力に全く気づくことがなかったわけです。「回廊の戦い」のような極めて愚かしい「子供の戦争ごっこ」は、まさにそれゆえに生まれたと言っても過言ではなかったでしょう。
 これから考えると、移動要塞の潜在的脅威に気づかなかったヤンの責任は、極めて重大であったと言わざるをえません。

 そしてヤンによるイゼルローン再占領後の帝国ですが、もしあくまでヤンがイゼルローン要塞を動かすことなく籠城戦を行う構えを見せ続けるのであれば、その時こそラインハルトは、以前に自分で考案した「要塞特攻」を敢行するべきだったのではないのですか? まあ実際には同盟領内に要塞は存在しないので、銀英伝考察3で私が提唱した「要塞特攻」の応用戦術「小惑星特攻」を行うということになるわけですが。
 慣性航行による「小惑星特攻」でイゼルローン要塞を完全破壊し、ヤンが拠って立つ補給基地を消滅させてしまえば、放っておいてもヤンは自滅してしまったはずでしょう。「短期決戦による銀河統一」というラインハルトの夢も、これで完璧にかなえられることになりますし、「戦争キチガイ」よろしくヤンとの戦いを求め続けて将兵を無為に戦没させていくよりもはるかにまともな選択肢と言えるではありませんか。しかもこちらはヤン以上に条件は恵まれていたのですし、そもそもラインハルト自身が過去に「要塞を無力化させるためなら、要塞に要塞をぶつけて破壊しても良かったのだ」と明言していたはずなのですけどね。
 これでも、イゼルローンを再占領された立場に置かれて以降のラインハルトに、移動要塞の存在意義を顧みる必要性はなかったと言えるのですか?


No. 1767
個人的見解
本ページ管理人 2002/04/20 02:12
> うわー、感じ悪・・・。(笑)
> さて、「取り合うつもりは無い」と書かれたのでそうそう突っ込んだ議論は書きません。
> ただ一つだけ。このレスだけの話ではなく、「考察シリーズ」とかも読んでみて総じて思ったことを書きますので、まぁ読んでみてください。
> で、理論って言うのは「理性側」に依存していることでしょ?
> 例えば大きく分けて、「感情尊重側」と「理性尊重側」がいたとします。
> いくら「感情側」が理論武装したとしたって、「感情」を「理性」で説明せよって言われても無理なように、やっぱりどこかで不整合ができてしまう。
> 結局、「明快な根拠にもとずく理論」という、完全に「理性側」の土俵で争っているわけで、これでは「感情側」の出る幕は無い。
> それを冒険風ライダーさんは、「理論的に叩き潰した」だの、「全否定した」だのと勝ち誇り、感情側を「明快な理論を伴わない感情論」として一蹴する。
> 非常に滑稽だと思います。


理論だけで推し量れない感情が社会ひいては歴史に与える影響は大きいものがあります。社会や歴史が人間の集合体である以上は当然のことでしょう。

ですが、論として語る場合には理論で語るのは当然でしょう。
でなければ、たとえば極端な話、tinaさんの論に対して「うわ、何このtinaって奴、キモ」という感情「論」もアリになってしまいますよ。
人間は不条理な感情で動くものですが、その不条理さが社会や歴史に与えた影響を「理性的に」考察し、位置づける事が論の役割だと私は思います。


No. 1769
ヤンには移動要塞化できない理由がある
テム太郎 2002/04/21 10:28
冒険風ライダーさんの考察でなるほどなと思ってたんですが、私としては1つ腑に落ちないところがあります。
私としてはたとえ移動要塞化についてヤンが思いついていたとしても実行できないと考えます。
なぜか?それはヤンが「国家の存続」より「個人の自由・権利・生命・財産」の方が大事と考えてるからです。
要塞を恒星間移動させるにはワープさせる必要があります。
まさにここが問題なのです。
イゼルローン要塞には民間人もいます。そして、その中に何十万という人口がいる以上妊婦がいない訳がありません。
ポプランとかシェーンコップみたいなやつがいるんですよ!妊婦がいない訳ないじゃないですか!
どういう訳かこの時代でも避妊についての完璧な防護策はないようです。(カリンの存在がそれを証明している)
銀英伝の中ではワープ航法は妊婦?かもしくは胎児?に悪影響があると書いてありましたよね。(この辺記憶があいまい)
ということはイゼルローン要塞に住んでいる妊婦さんは、イゼルローン要塞が移動することはもちろんイゼルローンから出ることもできません(正確には宇宙船での恒星間移動ができない)。
話のエピソードの中で子供を生んだ直後の女性ばかりを乗せた船のエピソードはあったような気がしますが、妊婦が移動したというエピソードってありませんでしたよね?(これも記憶があいまい)
「イゼルローン要塞がワープするので母体or胎児に影響があります。妊婦の方はすみやかに降ろしてください。」という命令はヤンの性格では絶対にできない。
個人の、しかも民間人の自由・生命を政治的に奪うことになるからです。
もしこういう命令をヤンがしたとすれば、そのときからヤンの名声にはキズがつき、将兵がヤンに対する信頼を失墜させ、戦闘において大切な士気を落とすことになりかねません。
妊婦だけをその宙域に残すという手もありますが、宇宙の只中に移動もできない宇宙船がぽつんと1つ置き去りにされるという状況を民間人が許すでしょうか?
安全にワープ航法をするためにはイゼルローンに住む人に対してワープを行う11ヶ月ぐらいまえから「性行為を行う場合は完全に避妊しなければならない。もし妊娠しても軍は一切の責任を負わない」という法律?(規則?)を作らないといけません。
多分この法案?は内部から瓦解して成立できないでしょう。
銀英伝本編で行われた選択肢もある以上、この方策は取らなかったとも考えられます。
ヤンが民間人を犠牲にしてもイゼルローン要塞ワープを実施すべきだったと主張はできると思いますが、それをやったらヤン=ウェンリーじゃありません。
この時点までにヤンについてオーベルシュタイン的一面を多少なりとも書いてあれば「あり」だったかもしれませんが、ヤンの性格をそういう人ではないと書いてしまっている以上、明らかに性格とは反する行動を取ることになってしまいます。
セルバンデスの時代からキャラクターには性格があるのですからその性格に基づく行動じゃないと変になっちゃいます。
読者のヤンに対する信頼も失墜して5巻以降の売上が激減してたかもしれません。
やっぱ何だかんだいってもいろんな人の生活もかかってる商売ですから、作者みずから読者を決定的に裏切る展開にはできないでしょう!
と、私は考えますがいかがでしょう。
自分自身ではこの意見に対するいい反論が思いつきませんので、冒険風ライダーさんをはじめ皆さんの知恵でこの意見を打ち負かしてください!

でも、自分で言ってて疑問に思うことが1つ。エルファシルに妊婦はいなかったのかな・・・?


No. 1771
Re1762/1763/1769:マルチレス
冒険風ライダー 2002/04/21 16:12
>tinaさん
<つまり何がいいたいのかというと、「理性」で「感情」を説明することも、「感情」で「理性」を感じることも、非常に難しいという事はみんなわかっている訳です。
だから、「理性」と「感情」の折り合いを見つけ、相対的に両方の立場を踏まえて議論をしていこう、という流れになるのが賢いありようというものであります。
それを冒険風ライダーさんは、「理論的に叩き潰した」だの、「全否定した」だのと勝ち誇り、感情側を「明快な理論を伴わない感情論」として一蹴する。
非常に滑稽だと思います。>

 あのですね、銀英伝におけるヤンやラインハルトに見られる思想や行動原理のどこに「『理性』と『感情』の折り合いをつけている部分」が存在するのですか? 「より最善の方法を模索する」という「理性的な考え」を完全に放棄してしまい、「個人的な欲求を満たしたい」いう「感情論『だけ』」で「しなくても良かったはず」の戦争を頻発させ、しかもそれによって大量の将兵を「戦略的・政治的に見てもその必要がなかったにもかかわらず」戦没させてしまうという、彼らが全否定していたはずのゴールデンバウム王朝や門閥貴族らと全く同じことを「結果的に」行っていたという自己矛盾にまで陥っていたヤンやラインハルトの行動は、「『理性』と『感情』の折り合いをつける」という観点から見ても充分過ぎるほどの大問題と言えるのではないのですか?
 ましてや、ヤンやラインハルトには、将兵の犠牲を最小限に抑えて最大効率を上げるための作戦を遂行し、国民の平和と安全を守る立場と責任が存在したはずでしょう。その重大な責務を担うはずの戦争指導者が、自らの個人的感情や意地・プライドに基づいて無意味な戦いを頻発させ、将兵を無為に殺したり、国家を破滅させたりして良いわけがありません。それによって麾下の将兵や国民がどれほどまでに塗炭の苦しみを味わうことになるか、まさか理解できないわけではないでしょう。
 国家や軍の最高責任者が自らの個人的感情を最優先させて無用の犠牲を増やすことは、その責任論から言っても「愚行」を通り越して「悪行」ですらあります。そして政治というものはあくまでも「結果」のみが評価されるものですし、またそうあるべきものなのです。ヤンとラインハルトの「愚劣な子供同士の戦争ごっこ」はその基準から著しく反していたのですから、他者からどのようにボロカスに言われても仕方ありますまい。

 それとですね、人間が個人的にどのような思想や感情を抱いていようがそれ自体は個人の自由というものでしょうが、それを基に論文を公開の場で発表したり、他人と議論したりする時には、自分の言動に対する責任を取り、反対の意見を持つ人達の主張に対してすくなくともまともに対抗できる程度の「理論」を展開することが当然要求されます。
 そのような発言の場で、相手の主張に対抗できるだけの検証や反論を行うことなく「ロクな理論的根拠を持たない感情論」を唱えている者は、他者から「泣き言を並べている」などと言われても文句は言えないのですよ。公式の場における議論のルールや発言の責任とはそういうものなのです。
 もし、あくまで私の主張が不当であると思い、その主張を叩き潰したいと考えるのであれば、それこそ「ヤンやラインハルトが作中で取った行動にそれなりの理性的・感情的な整合性があった」ことを「明快な根拠」と「理論的説得力を伴った反論」で証明してみて下さい。それもできないでただ「泣き言」を並べているだけの人間と議論をするつもりなど私には毛頭ありません。
 最初のtinaさんの投稿には、すくなくとも内容の説得力はともかく「相手の主張に対して理論的に反論しよう」という姿勢自体は垣間見えることができたからこそ、私も議論に応じていたのですけどね〜。



>平松さん
<あまり要塞の工事に技術者を振り向けると、一方で駐留艦隊の修理・整備がおろそかになってしまうのでは?要塞の工事と艦の修理・整備を並行して行なえば時間か仕事の質かどちらかを犠牲にしなければなりません。突貫工事で移動要塞が完成しても、それを守備する機動力の状態が著しく悪いままでは勝算は少ないでしょうし、そういった状態をいつまでもラインハルトが座視する訳はないと思うのですが。>

 まず移動要塞改造工事を突貫で行った後に、艦艇の修理・整備を行えば良いだけなのではありませんか? 移動要塞の改造さえ行ってしまえば、艦艇の修理・整備など、イゼルローン要塞内にある整備工場を駆使して、いつでもいくらでも行うことが可能なのですから。
 こんなものは懸念材料でも何でもないと思いますが。


<それでも、やはり通常要塞との防御力への将兵の信頼の差は大きいのではないかと。例えエンジンを格納すれば防御的には問題なしと技術的に保証されたとしても、ガイエスブルクの悲劇的な最後と言う生々しい前例がある以上、将兵達の心理的抵抗は大きいでしょう。
 将兵達は義務ある軍人たる自分達だけならともかく、家族までも移動要塞に乗せるのは断固反対するのでは?>

 は? ガイエスブルク移動要塞が持っていた致命的弱点を技術的に完全解決できることが立証されるのに、なぜ将兵達の移動要塞に対する心理的抵抗が問題になるのですか? 要塞外壁に対する将兵の信頼感は要塞主砲クラスの脅威でもない限り絶対のものですし、それ以上にヤンの指揮に対する絶対的かつ崇拝的な信頼というものも存在するでしょうに。一度移動要塞を短距離ワープでもさせて安全を実証してしまえば、将兵の心理的抵抗など問題にならないレベルまで雲散霧消してしまうことでしょうよ。
 しかも、要塞外部に家族を置けば、家族を外部の敵に攻撃・虐殺されたり人質に取られたりする可能性が多分に存在するのに対して(敵が将兵の家族の身元を確認して人質に取ってしまうなど容易なことです)、要塞都市の安全は余程の事態でも起こらない限りこれまた絶対のものですし、前線の将兵達にとって、常に家族と一緒に過ごせる環境は大変貴重なものです。一般将兵達にとっては、そちらの懸念と利益の方が、「安全が実証された移動要塞に対する不安」などよりもはるかに重大なものと認識されるようにすら見えるのですが。



>テム太郎さん
<イゼルローン要塞には民間人もいます。そして、その中に何十万という人口がいる以上妊婦がいない訳がありません。
ポプランとかシェーンコップみたいなやつがいるんですよ!妊婦がいない訳ないじゃないですか!
どういう訳かこの時代でも避妊についての完璧な防護策はないようです。(カリンの存在がそれを証明している)
銀英伝の中ではワープ航法は妊婦?かもしくは胎児?に悪影響があると書いてありましたよね。(この辺記憶があいまい)
ということはイゼルローン要塞に住んでいる妊婦さんは、イゼルローン要塞が移動することはもちろんイゼルローンから出ることもできません(正確には宇宙船での恒星間移動ができない)。
話のエピソードの中で子供を生んだ直後の女性ばかりを乗せた船のエピソードはあったような気がしますが、妊婦が移動したというエピソードってありませんでしたよね?(これも記憶があいまい)
「イゼルローン要塞がワープするので母体or胎児に影響があります。妊婦の方はすみやかに降ろしてください。」という命令はヤンの性格では絶対にできない。
個人の、しかも民間人の自由・生命を政治的に奪うことになるからです。
もしこういう命令をヤンがしたとすれば、そのときからヤンの名声にはキズがつき、将兵がヤンに対する信頼を失墜させ、戦闘において大切な士気を落とすことになりかねません。>
<ヤンが民間人を犠牲にしてもイゼルローン要塞ワープを実施すべきだったと主張はできると思いますが、それをやったらヤン=ウェンリーじゃありません。
この時点までにヤンについてオーベルシュタイン的一面を多少なりとも書いてあれば「あり」だったかもしれませんが、ヤンの性格をそういう人ではないと書いてしまっている以上、明らかに性格とは反する行動を取ることになってしまいます。>

 残念ですが、銀英伝でこの論法が成立する余地は一切存在しませんね。というのも、銀英伝5巻のイゼルローン要塞放棄の際、ヤンは要塞に居住する全ての将兵と民間人を引き連れて脱出を行っていたからです。
 将兵と民間人を合わせて500万人も存在すれば、イゼルローン要塞脱出の時点で妊娠中だった女性がひとりも存在しないわけがないでしょう。現に戦艦ユリシーズには、出産後とは言え600人もの乳児と母親が医師や看護婦と共に搭乗していたのですから(銀英伝5巻 P58)、それよりも遅れた出産直前とか妊娠3〜8ヶ月ほどの妊婦が一切存在しなかったとは全く考えられません。
 にもかかわらず、ヤンはワープ航法が妊婦と胎児に与える悪影響を充分に承知・認識していながら、帝国軍のフェザーン&同盟領内侵攻に呼応して行われた「緊急的かつ受動的な脱出作戦」という、妊婦全員を出産させる時間的余裕のない状況下で、妊婦の出産事情を何ら考慮することなくイゼルローン要塞放棄と脱出を行っていたわけなのですから、これはヤンがイゼルローン要塞放棄と妊婦&胎児の生命を天秤にかけ、前者に軍配を上げていた何よりの証拠でしょう(ちなみにその判断は正しかったと私も考えています)。
 しかも移動要塞戦術を行う際には、イゼルローン要塞放棄と違って時間的・行動的な自由がある程度は存在するわけなのですから、事前の対策を練ることも容易に行うことができます(これに関しては下で後述)。過去の自分の「前科」を無視し、「事前の対策措置」を取ることなく、ヤンが「妊婦と胎児の生命」を根拠にイゼルローン要塞改造を決断しないのは、第一に怠慢であり、第二にとんでもない偽善行為そのものではありませんか。


<妊婦だけをその宙域に残すという手もありますが、宇宙の只中に移動もできない宇宙船がぽつんと1つ置き去りにされるという状況を民間人が許すでしょうか?
安全にワープ航法をするためにはイゼルローンに住む人に対してワープを行う11ヶ月ぐらいまえから「性行為を行う場合は完全に避妊しなければならない。もし妊娠しても軍は一切の責任を負わない」という法律?(規則?)を作らないといけません。
多分この法案?は内部から瓦解して成立できないでしょう。>

 ↑これって軍の中では何ら非常識な法律ではないのですけどね。性病対策の観点から、軍が将兵の性行為に関する規則を作成したり、慰安所の設置を設けたりするのは常識ですし、イゼルローン要塞内部の男性の大半が軍に所属しているわけでしょう。上記のような法律ないしは軍規を徹底させるのは別に難しいことでも何でもないことのように思えるのですけど。
 もし何らかの事情でどうしても出産しなければならない事情が存在するというのであれば、どこか適当な惑星に近づき、ワープを使わない宇宙船を使って妊婦を下ろし、民間の産婦人科の病院などで安全に出産させた後、また改めて要塞に搭乗させるといった処置を「特例で」認めてやれば良いだけの話でしかありません。
 上記に見られるような対策措置を事前に行うことが可能である以上、要塞内に居住する妊婦&胎児の存在は、移動要塞戦術を実行するに際して何ら障害となることはありえないのです。


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