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銀英伝考察3
銀英伝の戦争概念を覆す「要塞」の脅威
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No. 6105
要塞移動化戦略(ログ)に関する疑問点
神楽 2004/12/15 03:37
 始めまして、神楽と申します。
 本日、久々にログの続きを読み、最後まで読破しました。
 ただ、中盤以降はその移動要塞化戦略に関連した、回廊の戦いに興味を誘われました。

 「きっかけ」と「幸運」に関する事で。

 軍事というのは、本来ある程度個人的人格に依存するものです。特に昔ともなれば。
 それの”良い点”を最大限に発揮する為、戦略がしっかりと練られる事になります。
 深い意味では、有能な人材の発掘、組織整備から始まり、戦力の配置に補給の用意…これは既に銀河英雄伝説でも語られていた事です。

 まず、ラインハルトの我侭によって引き起こされた戦いである事を、冒険風ライダーさんは、認めていながら理解していません。
 確かに我侭(プライド、矜持、その他)によって引き起こされた戦いです。
 同時に、今までの敗北から学んだ点の少ない、愚かな判断だったことも確かです。

 ですが、我侭とは、周りが見えなくなっているから、我侭と言うのです。
 我侭といった行動の精神心理は、それの立脚基盤が非常に脆い事を意味しています。
 つまり、いとも簡単に自分の主張の間違いが暴露される危険性を孕んでおり、尚且つ、人間は我侭になった後の段階として”気付く”という機会を与えられます。
 では、ヤン=ウェンリーはこの”我侭”に対抗する為には、この間違いを突きつければ良い、となります。

 戦略的、軍事的に見れば、或は”軍事の常識”を考えれば、これはナンセンスと言って良いでしょう。
 何故ならそれは、冒険風ライダーさんが言われるとうり、一個人の心に期待した戦略であるからです。

 しかし、これは現実的に通用する思考でも有るのです。

 結局は”神聖なる皇帝”という存在が、このときほど有効に働く事は有りません。
 例えば、これが徹底管理された”組織”に対抗した戦いで有ったなら、ヤンはそれこそ愚かな選択をしています。
 帝国軍は両回廊の出入り口を閉鎖し、ヤン郎党の降伏か自滅を待つ戦略を取ったでしょう。
 勿論、順序だてた考えが大多数を占める、という前提では有ります。

 結局、ラインハルトは”愚かな戦争”を始めていたが故に、この戦いはヤンに勝算が現れます。


 冒険風ライダーさんの理論における問題は、貴方の戦略理論は、相手が”常識的存在”である事を前提とした”現代戦略”である事です。

 銀河英雄伝説の世界は、現代よりも未来の世界ですが、現代とは最も違う、大きな点が有ります。
 個人に対して依存するアドバンテージが、極めて高いといった点です。
 特に、最終戦は”ヤン軍閥”対”ラインハルト帝国”の戦いなのであり、ラインハルトの決定は皇帝では神の意志として存在し、
ヤンの決定も、少なくともヤン一党の中では信頼を超えた位置に存在します。

 つまりは”現代戦略”よりも”中世以前戦略”に近い構造となっているのです。
 ある意味で、冒険風ライダーさんの主張は間違いでは有りません、しかし、適用範囲をやや間違えているのです。
 確かに”現代戦略”の視点から見れば、愚かな判断に見える事は間違い有りません、事実そうです。
 しかしながら、その理論は、実際には曹操も、孔明も、信長も、秀吉も、家康も、歴史的に高い評価を得ている人物全てにいえる事となるのです。
 三国時代の郭嘉は「袁家の兄弟は、互いに争うだろう。自滅を待てば良い」と評しました。
 彼等は今まで協力し合わなければ曹操に対抗出来ないという事を、嫌と言うほど思い知らされていたにも関わらず、実際に争い、そして衰退して行ったのですから、
これは中世以前の戦略だからこそ通用する考察であって、現代戦略では通用しない考察です。
 しかし、先に述べたように、銀英伝は個人アドバンテージの強い、やや中世以前に近い世界構成と成っています。

 また、ラインハルトが攻撃を強行したからには、遮二無二攻め立てる可能性が高いと判断すべきとも仰っています。
 今までの攻撃失敗の被害を知りつつ、それでも攻撃を開始した。
 部下からの進言も全てを退け、握手を拒絶すれば戦うのみ、とまで断言した。

 確かにこれだけ揃えば、冒険風ライダーさんのように判断するに十分な要素です。

 しかしながら、よくよくラインハルトを観察した人物であれば、それは違うと断言する事もできるのです。


 で、ここからが重要です。
 ここから以下を特に良く読んで欲しいのです。


 ラインハルトが実際に攻撃を強行した我侭の根源、及びその我侭の強度。

 これらは、戦略的考察によって測るものでは有りません。
 人物的考察によって測るものです。

 ヤンはこの点において”戦略的考察”はともかく、”人物的考察”の面において、ラインハルトを見切っています。
 ラインハルトを良く理解し、ラインハルトを人物考察の中心に置く事で、その戦略を補強しています。

 ここから先は【ラインハルト考察】がメインになる為”現代戦略”から離れて来ます。


 なにやら議論が中途半端で勿体無く感じたので、こういった提案をさせて頂きました。
 「回廊の戦い」を語る為には、実際の戦略的判断と同時に、ラインハルト個人に対する洞察を行わなければならない、と感じます。

 勿論、私なりに考えるラインハルトの精神構造が存在します。
 これは【中々答えを出し辛く、人それぞれの感じ方が有る】以上、敢えて触れません。

 当時のヤンの「ラインハルト個人に依存した戦略」を愚かだ、と判断するのであれば、ラインハルトの考察から始めるべきではないか、と感じました。


 基本の意見は、以上です。
 つまり、私が言いたいのは、明確な批判ではなく、ラインハルト個人に対する見解の違いが大きく、判断が分かれたのではないか?

 という疑問を感じた為、今回書き込ませて頂きました。
 何かの参考にでも成れば幸いです。


No. 6106
追伸
神楽 2004/12/15 03:41
 やや説明不足でした。

>”我侭”と”気付かせる”事。

 気付かせれば良い、と書きましたが、それにも幾つもの方法が有ります。
 理論整然と、懇々と説く方が良い事も有れば、一発頬を叩いた方が良いことも有ります。

 では、ラインハルトにはどういった手段が有効か?

 この点が重要ですが、先の書き込みで既に書いたように、
個人で解釈が大きく離れる事になってしまいますので、私は敢えて述べません。


No. 6124
Re6105/6106:少し遅レス
冒険風ライダー 2004/12/18 03:19
<まず、ラインハルトの我侭によって引き起こされた戦いである事を、冒険風ライダーさんは、認めていながら理解していません。
(中略)
 我侭といった行動の精神心理は、それの立脚基盤が非常に脆い事を意味しています。
 つまり、いとも簡単に自分の主張の間違いが暴露される危険性を孕んでおり、尚且つ、人間は我侭になった後の段階として"気付く"という機会を与えられます。
 では、ヤン=ウェンリーはこの"我侭"に対抗する為には、この間違いを突きつければ良い、となります。>

 その「間違いを突きつければ良い」とやらを実現すればラインハルトが自分と妥協してくれると「何を根拠に」ヤンは考えていたのか、ということが、あの一連の問題の本質なのですけどね。第一、たかだか「この"我侭"に対抗する為」などのために、わざわざラインハルトの戦争狂的性格に付き合った挙句、勝算皆無の絶望的な戦いで貴重な戦力を浪費しなければならない理由と余裕が、当時のヤン一派の一体どこにあったというのです?
 そもそも、本当に「ラインハルトの我侭」に対して「この間違いを突きつければ良い」とヤンが考えるのであれば、むしろ逆に、徹底的に戦争を回避することでラインハルトを逆上させ、いたずらに「ヤン打倒」を絶叫させることで周囲の人間に不信と反感を抱かせるように仕向けた方がはるかに効果的ですよ。現にラインハルトの戦争狂的性格については作中でさえ批判の声が上がっていたくらいですし、それに対してラインハルトがあくまでも気づかない、もしくは「気づかないフリをする」というのであれば、それはラインハルトがかつての門閥貴族やルドルフ・フォン・ゴールデンバウムと同レベル以下の「独善」にまで堕ちたということで、ラインハルトの名声と人気に対する大ダメージとなりえるでしょう。
 戦争そのものが自己目的化するくらいにラインハルトが戦いを欲していたからといって、質的にも量的にも圧倒的不利なヤン陣営がそんなものに付き合わなければならない理由など、宇宙の果てまで探してもあるわけないでしょう。現代戦略だろうが中世以前戦略だろうが、「ラインハルトと戦い続ければ、ラインハルトは自分と妥協してくれるだろう」という考えを裏付ける、確たる保証などどこにも存在しないのですから。


<つまりは"現代戦略"よりも"中世以前戦略"に近い構造となっているのです。
 ある意味で、冒険風ライダーさんの主張は間違いでは有りません、しかし、適用範囲をやや間違えているのです。
 確かに"現代戦略"の視点から見れば、愚かな判断に見える事は間違い有りません、事実そうです。
 しかしながら、その理論は、実際には曹操も、孔明も、信長も、秀吉も、家康も、歴史的に高い評価を得ている人物全てにいえる事となるのです。
 三国時代の郭嘉は「袁家の兄弟は、互いに争うだろう。自滅を待てば良い」と評しました。
 彼等は今まで協力し合わなければ曹操に対抗出来ないという事を、嫌と言うほど思い知らされていたにも関わらず、実際に争い、そして衰退して行ったのですから、
 これは中世以前の戦略だからこそ通用する考察であって、現代戦略では通用しない考察です。
 しかし、先に述べたように、銀英伝は個人アドバンテージの強い、やや中世以前に近い世界構成と成っています。>

 その「中世以前に近い世界構成」にしたところで、「(客観的には)非合理的な行動を裏付ける【(主観的には)合理的な理由】」というものがあると思うのですけどね。オウム真理教の狂信的かつ(客観的には)非合理的な行動にも、(教祖や幹部や信者達の主観的には)合理的な理由があったように。その「(客観的には)非合理的な行動を裏付ける【(主観的には)合理的な理由】」を見極め、自分が有利なように政戦両略を推し進めて成功したからこそ、過去の英雄や謀略家達は歴史に名を残しているわけです。
 もっと身近な例を挙げてみれば、創竜伝のストーリー進行や竜堂兄弟の「常人には到底理解も納得もできない低能かつおバカで(客観的には)非合理的な行動原理」にしたところで、そこには「奴らはその場その場の刹那的な感情と病的なプライド意識だけで後先考えずに行動している」とか「作者である田中芳樹が個人的なストレス解消目的のためだけに書き散らしている」とかいった類の「(客観的には)非合理的な行動を裏付ける【(主観的には)合理的な理由】」というものが存在するわけです。そういったものは、別に「中世以前に近い世界構成」などと限定せずとも、現代世界にだっていくらでも存在するでしょう。
 しかし、「ラインハルトと戦い続ければ、ラインハルトは自分と妥協してくれるだろう」などとヤンが考えられるだけの「(客観的には)非合理的な行動を裏付ける【(主観的には)合理的な理由】」に基づいた根拠なんてどこに存在するというのです? 私が今まで指摘し、あなた自身も「確かにこれだけ揃えば、冒険風ライダーさんのように判断するに十分な要素です」と認めている、あの戦争狂的性格から導き出せる「(客観的には)非合理的な行動を裏付ける【(主観的には)合理的な理由】」からは、「ラインハルト相手に戦争を仕掛ければ仕掛けるほど、ラインハルトを悪戯に喜ばせ、結果として泥沼の消耗戦に陥るだけ」という結論以外に到達のしようがないでしょう。そして、「それも含めて」私はラインハルトとヤンの両方を批判しているのですがね。
 それに対して「よくよくラインハルトを観察した人物であれば、それは違うと断言する事もできるのです」などと言い切るのであれば、

<勿論、私なりに考えるラインハルトの精神構造が存在します。
 これは【中々答えを出し辛く、人それぞれの感じ方が有る】以上、敢えて触れません。>
<この点が重要ですが、先の書き込みで既に書いたように、
個人で解釈が大きく離れる事になってしまいますので、私は敢えて述べません。>

 などと逃げてないで、「中世以前に近い世界構成」なり「(客観的には)非合理的な行動を裏付ける【(主観的には)合理的な理由】」に基づいた「私なりに考えるラインハルトの精神構造」や、それに対するヤンの対抗方法といったものを「自分の価値観や言葉」でもって明確に提示してはくれませんかね? 今のままでは私の解釈しか出ていないわけですから、「個人で解釈が大きく離れる事になってしまいます」以前の問題でしかないのですけど。
 「個人で解釈が大きく離れる事になってしまいます」という認識と、それを踏まえた上で個人の解釈をつき合わせて議論するということのは何ら矛盾するものではないと思うのですけど、違いますかね?


No. 6128
Re:Re6105/6106:少し遅レス
神楽 2004/12/20 01:05
 申し訳有りませんが、もう一回、私の文章をよく読んで頂けますか?
 全くもって的外れなレスを頂いているので、答えるに答えられません。
 とりあえずレスしておいた方が良いだろうといった点はレスを返しますが……
何はともあれ、もう一回考えてからにして頂けるでしょうか?

 それとも、レスの無い点においては全て了解頂けたと考えても良いのでしょうか?


No. 6129
再追記失礼
神楽 2004/12/20 01:13
 それからもう一点。
 精神学分野と、中世以前の詳細な政治学を学んだ経験はお有りですか?

 ひとまず、質問までに。


No. 6131
Re6128/6129:結局、何が言いたいの?
冒険風ライダー 2004/12/21 01:48
<申し訳有りませんが、もう一回、私の文章をよく読んで頂けますか?
 全くもって的外れなレスを頂いているので、答えるに答えられません。>

 「よく読む」も何も、あなたの主張には私の主張に対抗しえるだけのアンチテーゼが何ひとつ示されていないではありませんか。自分から仕掛けておきながら、現時点までのあなたは、ただ単に「見解の相違」だの「個人の解釈」だのといった「魔法のアイテム」を盾に逃げ回っているだけでしかないのですし。
 あなたは私の主張に対して「冒険風ライダーさんの理論における問題は、貴方の戦略理論は、相手が"常識的存在"である事を前提とした"現代戦略"である事です」だの「それは違うと断言する事もできるのです」と異を唱えてきたのでしょう? ならばそれを立証できるだけの「ヤン=ウェンリーはこの"我侭"に対抗する為には、この間違いを突きつければ良い」だの「私なりに考えるラインハルトの精神構造」だのといった主張の具体的な内容を、本来「あなたから先に」提示すべきなのですよ。それを全く行おうとしない現時点では、あなたは私に対して実質「何も言っていない」状態でしかない、ということが、あなたは全く自覚できないのですかね?
 また、人様の反応に対して「全くもって的外れなレスを頂いているので、答えるに答えられません」などと言い切るのであれば、「何故に」的外れであるかも「自分の言葉で」かつ「客観的な根拠を伴う形で」語るべきでしょう。それとも、これに関しても、また例の「魔法のアイテム」を駆使して逃げ回るおつもりですか?


<それとも、レスの無い点においては全て了解頂けたと考えても良いのでしょうか?>

 私の投稿のどこをどう読んだらそう解釈できるのか理解不能ですね。それに何故「レスの無い点においては全て了解頂けたと考えても良いのか」と「私の文章をよく読んで頂けますか」という全く関係のない2つの事象が「二者択一の選択肢」になっているのかも全くもって意味不明ですし。
 そもそも現時点でのあなたは私の主張に対して、明確なアンチテーゼも、自分個人の見解や解釈も全く述べてはいないわけですから、議論はそのスタートラインにすら全く到達してなどいないわけで、よって現状では私はあなたの主張に対して賛成も反対もしようがないのですが。


<精神学分野と、中世以前の詳細な政治学を学んだ経験はお有りですか?>

 この質問は議論に関係することとは到底思えませんので、回答する必要を認めません。
 あしからず。


No. 6132
Re:Re6128/6129:結局、何が言いたいの?
神楽 2004/12/22 02:20
 私が申している事は、貴方の言っている事が的外れだと申し上げているのです。
 レスの頂きたいところに関してレスを頂けず、あまり重視していない点にレスを頂いても、私としては本題から剃れてしまいますから、
 順序が逆になる事は避けたいのです。
 ですから、レスの無い点には賛同いただけたのか、お聞きしたいのです。
 賛同して頂いているのであれば、私は明確な話を提示出来ますし、賛同して頂いていないのなら、何故その点に関してレスを頂けないのでしょうか?
 対抗するも何も、どちらか片方が正しい理論であるとした主張に、まず、それはおかしくはないか。
 それを幾つかの例えを混ぜて述べたつもりです。

 もちろん、理論の点においても一切の反論が無いのではありません。
 明確な理由を述べていないのは上記の事が有る為です。まず議論をする前に、了解頂きたい点が有るのです。
 繰り返しますが、レスの無かった点に関しては、同意頂けたのでしょうか?
 或は、レスを返すのが面倒だったのか、それとも読んだのが面倒だったのか、それはこちらから解りません。
 レスが無いなら、レスの無い理由を頂けますか?


 ただ、理論的な観点のレスに関しては下に続きを。

>精神分野、中世以前の政治
 大いに関係が有ります。
 この点に関してはふとした疑問から質問させて頂きましたが、冒険風ライダーさんの中世以前か否かに大きな差異は無いとした点と、
 ラインハルトがそう判断するに足る根拠、とした点に関係が有ります。

 まず、中世以前の政治体系と大きな差異が無いとするのであれば、それを知らなければ断言出来ないかと考えます。
 精神分野に関しても、相手の人間的資質を考える為には、一定の勉強が必要です。
 人間は計算機では有りませんから、その行動パターンや考えを解釈する為にも、基本くらいは抑えるべきかと考えます。

 しかし、その点に関して認識が大きく違ったと考えた為、お聞きしました。
 知っているのであれば、特に不利益が無いのであれば、普通に知っているとお答えしても構わないと存じます。
 良ければお教え願えないでしょうか?


No. 6137
『的を示す』のが近道と思います。
ポルトエシュタード 2004/12/23 00:26
 横レス、失礼します。私はポルトエシュタードと申します。
 さて、神楽さんは「的外れ」と仰っていますが、貴方が建設的な議論を望むのなら、第一段階として具体的に示されては如何ですか?「どのレスはこのレスに対して○○の点で的外れである」という感じで。少なくとも私には冒険風ライダーさんのレスの何処が「的外れ」なのか、残念ながら判別できませんので。

 私の貧弱な観察力では、おそらく神楽さんは

>で、ここからが重要です。
>ここから以下を特に良く読んで欲しいのです。

を主眼においていたのに、ここにレスが無いから「的外れ」とレスされたと思いますが、その思考における前段部分ですでに破綻しているという指摘が、冒険風ライダーさんのレスではないでしょうか?ならば、貴方はその前段部分について説明するしかないと思います。冒険風ライダーさんが誤解されていると思うのなら、その誤解を解くために説明するのは、貴方の務めではありませんか?それを単に「的外れ」と言われても、【貴方の的】は【貴方にしか】見えていませんから、冒険風ライダーさんが「?」となるのも当然と思います。せっかくですから誰が見ても【的】が分かるように、クリスマスツリーばりに明るくライトアップしてください(笑)。


No. 6138
Re6132:まずは「あなたが先」です。
冒険風ライダー 2004/12/23 01:38
<私が申している事は、貴方の言っている事が的外れだと申し上げているのです。
 レスの頂きたいところに関してレスを頂けず、あまり重視していない点にレスを頂いても、私としては本題から剃れてしまいますから、
 順序が逆になる事は避けたいのです。
 ですから、レスの無い点には賛同いただけたのか、お聞きしたいのです。>
<繰り返しますが、レスの無かった点に関しては、同意頂けたのでしょうか?
 或は、レスを返すのが面倒だったのか、それとも読んだのが面倒だったのか、それはこちらから解りません。
 レスが無いなら、レスの無い理由を頂けますか?>

 前回も前々回の投稿でも言いましたけど、あなたの「的外れ」だの「レスの無い点」だのといった「決め付け」には、「何故そういう結論が導かれるのか」という「理由」が何も書かれていないのですよ。どこがどう「的外れ」なのか、また自分が重視する主張はどこで、どのような形でレスがつかなかったのか、ということが「あなたの投稿から」明確に提示されないことには、私としてもあなたの主張に対して賛成も反対もしようがないのですが。
 あなたにとっては明々白々な理由で私を論難しているのでしょうけど、人様に「文章をよく読め」などと命じる前に、まず自分の文章こそがきちんと他人に伝わるような構成になっているのか、ということを、あなたの場合は特に見直すことを私の方からオススメしますよ。まあ、反論はしたいが言質は取られたくないという理由で、あえて「逃げ」と「防御」の姿勢に徹しているのかもしれませんがね。
 あなたの文章は全体的に説明不足な感が否めません。それこそ「議論以前の問題」としか言いようがないくらいに。


<まず、中世以前の政治体系と大きな差異が無いとするのであれば、それを知らなければ断言出来ないかと考えます。
 精神分野に関しても、相手の人間的資質を考える為には、一定の勉強が必要です。
 人間は計算機では有りませんから、その行動パターンや考えを解釈する為にも、基本くらいは抑えるべきかと考えます。
 しかし、その点に関して認識が大きく違ったと考えた為、お聞きしました。
 知っているのであれば、特に不利益が無いのであれば、普通に知っているとお答えしても構わないと存じます。
 良ければお教え願えないでしょうか?>

 「お教え願えないでしょうか」も何も、あなたの言う「中世以前の政治体系」と「精神分野」とは一体何のことを指しているのか、またそれを「学んだ」と定義できる基準とは何か、ということが私にはまるで分からないので、これまた回答のしようがないのですけどね。たとえば、どこぞの大学なりセミナーなりで特定の学問を専攻したり、何らかの資格(精神科医の免許とか)を取得したりしたか、といった類のことを尋ねているわけですか?
 定義が非常に曖昧なあなたの質問に対して私が何かを返答したところで、後出しジャンケン的にあなた個人の定義でもって「それは違う」などと一方的かつ勝手気侭に断定され、勝利宣言などされても困るのですよ。この件に関しても、上記の定義について何か具体的な例示なり、あなた個人の見解なりを示してもらわないことには、私としても回答を拒否せざるをえませんし、質問そのものが議論に関係ない事象であるを見做さざるをえないのですけど。

 それと、これは逆に私からの質問なのですが、あなたが最初の投稿で強調していた「中世以前戦略」だの「中世以前に近い世界構成」だのといった概念を、私はNo.6124で述べたように「オウム真理教や昨今の田中芳樹のような【(客観的には)非合理的な行動】を裏付ける【(主観的には)合理的な説明】で動く世界」と解釈した上で論を展開していたわけですが、この解釈はあなた的には正しいのでしょうか? もし違っている場合は、私としても対処法を変えなければなりませんので、あなたの主張が具体的にどのようなものであるかを「あなたの言葉で誰にでも分かりやすく」説明して下さい。


No. 6142
「移動要塞」こそ、”我侭”戦略に対抗する「最も有効な策」
パンツァー 2004/12/27 13:17
私も、神楽さんの論旨が不明確に感じます。
私は、蒸し返し時の「移動化要塞」の議論の参加者の一人ですが、冒険風ライダーさんの主張に基本的に賛成した立場にありました。したがって、偏見を有する部分があるかもしれませんが、客観的根拠に基づく反論には従いたいと考えております。

さて、神楽さんの論旨では、「我侭」なラインハルトに対抗する最も有効な戦略は、「この間違いを突きつければ良い」ということですよね。


>  では、ヤン=ウェンリーはこの”我侭”に対抗する為には、この間違いを突きつければ良い、となります。
>
>  戦略的、軍事的に見れば、或は”軍事の常識”を考えれば、これはナンセンスと言って良いでしょう。
>  何故ならそれは、冒険風ライダーさんが言われるとうり、一個人の心に期待した戦略であるからです。

つまり、物理的な実害ではなく、相手の心理にもっとも打撃を与える方策を採るべき、ということですよね。
下の二つの神楽さんの記載より見る限り、そのように思えます。


>  冒険風ライダーさんの理論における問題は、貴方の戦略理論は、相手が”常識的存在”である事を前提とした”現代戦略”である事です。

>  つまりは”現代戦略”よりも”中世以前戦略”に近い構造となっているのです。
>  ある意味で、冒険風ライダーさんの主張は間違いでは有りません、しかし、適用範囲をやや間違えているのです。
>  確かに”現代戦略”の視点から見れば、愚かな判断に見える事は間違い有りません、事実そうです。

「中世以前の戦略だからこそ通用する」が、「現代戦略では通用しない」例として、三国志の袁家の話が登場します。


>  三国時代の郭嘉は「袁家の兄弟は、互いに争うだろう。自滅を待てば良い」と評しました。

 しかし、上のような戦略は、欧米列強の植民地支配や、日本による朝鮮支配などでもあたりまえの例です。僅かな兵力でインカ帝国を滅ぼしたコルテス、インドの分裂を利用したイギリス、など。また、冷戦時代には、米ソは直接戦争をすることはなく、もっぱら諜報機関による謀略行為に走っていたわけですし。敵の内部分裂を利用し、指導者や支配階級層の心理を逆手に取るのは、いつの時代にも通用する戦略です。

 一方、冒険風ライダーさんが、「移動要塞」の件で主張した論点の一つは、イゼルローン要塞を、ガイエスブルグ要塞のような移動要塞として、ラインハルト軍の集中攻撃を逃れるべし、というものでした。
 これこそ、「我侭」で「”愚かな戦争”を始めてい」るラインハルトをして、疲れさせ、戦争を焦るあまり、ラインハルトの望まぬ戦場で、各個撃破されてしまう恐れを生じさせるものです。帝国軍の同盟領侵攻時に、ヤン率いる1個艦隊により、帝国軍の艦隊が次々と各個撃破されてしまったように。

 移動要塞の戦略は、ラインハルト側の選択し得る最上の戦略(「帝国軍は両回廊の出入り口を閉鎖し、ヤン郎党の降伏か自滅を待つ戦略」)に対して有効であるだけでなく、ラインハルトの「我侭」な戦略に対しても、極めて有効です。

 ちなみに、
 最上の合理的戦略は、「我侭」な戦略、よりも効果的な戦略であるのです。
 したがって、「最上の合理的戦略」に対応した策は、言うまでも無く「我侭な戦略」に、さらに有効に対応するのです。上で示したように。

 う〜ん、冒険風ライダーさんの「移動要塞」が、ラインハルトの”我侭”に対抗する「最も有効な策」でもある以上、神楽さんの論旨は、まったくもって、意味不明ですねえ。


No. 6145
移動要塞論の単純な要旨
パンツァー 2004/12/29 19:38
冒険風ライダーさんの移動要塞論は、
質量弾による攻撃の話など、多岐に渡る考察が含まれていますが、
移動要塞そのものに限って言えば、次のような話になります。

ガイエスブルグ要塞がワープ可能で自在に宇宙を移動可能などという設定を設けてしまったら、イゼルローン要塞に関しても同様のことがなりたってしまうことになる。
要塞級の質量体が移動可能などという設定を入れてしまったら、
ヤン率いる一個艦隊による神出鬼没の戦略を、
補給源(イゼルローン要塞)付きで可能としてしまって、
ヤンを屈服させることなどほとんど不可能になってしまうではないか!
といったことです。

この結論が気に食わない人々は、
ガイエスブルグ要塞ではワープ可能であるが、
イゼルローン要塞ではワープ不可能である理由、
を探すことにやっきになっているわけです。
しかし、
要塞級の質量体が移動可能(ワープ可能)としてしまった以上、
質量がたかが数倍程度の違いなど、相対的に見たら小さな差異なんですよ。

普通に考えてですね、
ガイエスブルグ要塞ではワープ可能であるが、
イゼルローン要塞ではワープ不可能である理由、
を探す、
ってのは、明らかに不自然なのじゃありませんか?

逆に言えば、
冒険風ライダーさんの移動要塞論は、
ヤンやラインハルトに感情移入している人々の素朴な感傷を、
決定的に破壊してしまうだけの破壊力を持っている、
恐るべき脅威、
ということなんでしょうね。

心情的には、理解できないわけではありません。


No. 6150
Re:移動要塞論の単純な要旨
Night 2004/12/30 01:20
 移動要塞の技術問題についてはかなり論議が錯綜した経緯があり、これ以上議論しても得られる所は少ないと思うのですが、以前に言い残したと思えるところもありますので、コメントしたいと思います。

 まず最初に、以下の基本的な事実を明確にしたいと思います。それは、

『(大質量)ワープは、我々の世界の技術を超えた高度なテクノロジーであり、それに関する理論も実験データも持たない我々には、その適用範囲や限界等の詳細について信頼できる結論を出すことができない』

という単純な事実です。
 ガイエスブルク要塞を移動要塞化できたことは、紛れもない作中事実です。しかし、その事実から直ちに『イゼルローン要塞も同じ要領で簡単に移動要塞化できる』という結論を導き出すことはできないのです。何故かと言うと、上に書いたように、我々は本当は(大質量)ワープの詳細な内容について全くと言っていいほど何も知らないので、その適用範囲や限界等について信頼できる結論を出すことができないからです。


> この結論が気に食わない人々は、
> ガイエスブルグ要塞ではワープ可能であるが、
> イゼルローン要塞ではワープ不可能である理由、
> を探すことにやっきになっているわけです。
> しかし、
> 要塞級の質量体が移動可能(ワープ可能)としてしまった以上、
> 質量がたかが数倍程度の違いなど、相対的に見たら小さな差異なんですよ。

 それは違います。
 理論検証も実験も抜きで技術の適用範囲を2倍、3倍にするということを、『相対的に見たら小さな差異なんですよ』の一言で済ませるわけには行かないのです。例を挙げて説明します。
 A社という建築会社が、既存技術を応用して、従来より高層のビルを建てる技術を開発したとします。A社はこの新技術を利用して、高さ400mのビルを建てることに成功しました。
 それを見ていたB社は、その技術の概要を読み取り、パンツァーさんと同様に『たかが数倍程度の違いなど小さな差異』だと考え、高さ800mのビルを建てることに挑戦したとします。B社の試みは成功するでしょうか。
 成功するか失敗するか、その技術の詳細を知らない人間には分かりません。ですが、仮にここでは成功したとします。すると、それを見ていたC社はこう思います。『新技術を使って800mのビルを建てることができた。数倍程度の違いは小さな差異だから、1600mのビルだって建てられるはずだ』。C社の試みは成功するでしょうか。

 これ以上繰り返す必要はないと思います。この論法を繰り返す限り、月に届くようなビルだって建てられることになってしまいます。現実にはそんなことはありえないのです。必ず、どこかで破綻します。
 破綻させないためには、理論検証と実験がどうしても必要なのです。高層ビルを建てる際、どのような問題が存在するのか。新技術は、それらの問題をどのようにクリアしているのか。それ故、その技術の限界はどこまでと言えるのか。それらの調査と確認を行って初めて、『この技術を使えば、1000mまでのビルなら建てる事ができる』というような信頼できる結論を出せるのです。


> 普通に考えてですね、
> ガイエスブルグ要塞ではワープ可能であるが、
> イゼルローン要塞ではワープ不可能である理由、
> を探す、
> ってのは、明らかに不自然なのじゃありませんか?

 イゼルローン要塞がワープ可能である可能性はあります。
 それは、B社が800mのビルに挑戦して成功するかもしれないのと同様です。
 同時に、イゼルローン要塞がワープ不可能である可能性もあります。
 それは、C社が1600mのビルに挑戦して失敗するかもしれないのと同様です。
 我々に言えるのは『ワープ可能であるかもしれないし、不可能であるかもしれない』というひどく曖昧な結論だけです。
 しかし、それはある意味、当然の結果です。
 本当は、ワープについて誰も詳しい事を知らないのです。『知らないものは知らない。分からないものは分からない』という結論が出てくるのは当たり前です。

 むしろ。
 私にはパンツァーさんの自信の方が理解できません。何故、そこまでパンツァーさんは自信満々に可能と考えているのか。その自信は一体何に基づいているのか。
 技術系の仕事をしている身から申し上げれば、

『新技術を導入したシステムを構築したい。その技術の詳細は良く分かってないけど、既に動いているシステムの実例は1つある。処理範囲は数倍に拡大するけど、それくらい小さな差異だよな』

などという仕事が来たとしても、到底、即座に可能とはお答えできません。その技術の内容の調査と、できればある程度の実験をしなければ、引き受けかねます。

 とりあえず、以上です。


No. 6156
相対的の意味
パンツァー 2004/12/30 08:34
>  理論検証も実験も抜きで技術の適用範囲を2倍、3倍にするということを、『相対的に見たら小さな差異なんですよ』の一言で済ませるわけには行かないのです。例を挙げて説明します。

 核心部分たる「相対的」の意味が正しく伝わってないようですね。もう少し、補足説明を行ってみましょう。

 ここで「相対」としているのは、戦艦等の質量体と要塞級質量体との重量比に比べたら、要塞同士の質量比など、問題にならない程度に小さい、ということです。

 孫引きになりますが、過去の考察ログを見ると、作中には輸送艦の重量が10万トンとか20万トンとかいう記載があるようですね。そこで、多めに見積もって、100万トン(重量トンと仮定)くらいの艦船は、銀英伝世界では普通にワープしているとしましょう。
(艦船に用いられる容積トンと重量トンとの違いが峻別されてないかもしれないが)

ガイエスブルグ要塞は、40兆トンであるとのことでした。
そうすると、100万トンの艦船に対して、4000万倍もの質量を、ガイエスブルグ要塞は持っているわけです。

 4000万倍もの質量の増大に対応して、ワープを可能とすることが、作中で設定されてしまっているわけです。
 4000万倍もの質量増大における技術的困難に比べたら、数倍程度の質量増大における技術的困難などは、相対的に見て、無いに等しいといっているのです。

 Nightさんの上げている400mとか1600mとかのビルの話は、非常に恣意的です。
 現実に、400m級のビルぐらいは存在するわけですから、そこから数倍といったら、これは難しい話ですよね。
 しかしですねえ、400m級のビルの建造技術しかないと思われているところが、いきなり16億m(16万km:400m×4000万)のビルの建造が可能だ、となったら、32億m(2倍)だろうが48億m(3倍)だろうが、可能に見えてきますよ。

 物理学では、天文学とか素粒子とか、桁数の変動規模が大きい分野では一般に、1桁の違い程度は、問題とならないですね。

 繰り返しますが、4000万倍もの質量増大における技術的困難に比べたら、数倍程度の質量増大における技術的困難などは、相対的に見て、無いに等しい、ということです。

必要があればレスしますが、帰省するので、ちょっと先になります。


No. 6157
ヤンの怠慢となる点
パンツァー 2004/12/30 13:26
 前段部分に対する回答としては不十分だったかもしれないので、追加します。

>  移動要塞の技術問題についてはかなり論議が錯綜した経緯があり、これ以上議論しても得られる所は少ないと思うのですが、

同感です。
そこで、まったく分かりやすい、「移動要塞論」の有利点を、再び列挙しておくことにします。

 イゼルローン要塞の移動化(ワープ移動可能)が実現されれば、ヤン一党は、ラインハルト率いる帝国軍に対して、不敗の抵抗体制を築くことができる。これに対して、これ以外の策は愚作である。イゼルローン要塞に篭っての抵抗は、作中にたびたび登場する質量弾攻撃などに対してまったく無力であるばかりか、帝国艦隊による直接攻撃にも圧倒的な数的劣勢のため対抗しえず、非常に危険な策である。ラインハルトの気が(イゼルローン要塞の攻略前でも攻略失敗後でも)変われば、蓋をされて、手詰まり状態に陥るだけである。
 したがって、イゼルローン要塞の移動化は、ヤンにとっては、第一に優先すべき検討課題であった。イゼルローン要塞の移動化の実現の可否は、ヤン一党の運命を決定的に変更するものであるのだから。
 しかしながら、作中には、ヤンが、イゼルローン要塞の移動化を検討したところが、またくない。補給源に拘束されるためにイゼルローン要塞に篭るという戦略的選択をせざるを得なかったヤンにとって、抜本的な戦略変更を可能とする方策であったにも拘らず。

 No.6156で、質量比4000万倍時ワープの技術的困難に比して、質量比数倍時ワープの技術的困難は無視できる(単純比較で0.0001%程度の困難性?)、と言う話をしましたが、これを検討しないのは怠慢でしょう。
 ヤンは、ほとんど似たようなこと(ガイエスブルグ要塞の移動化)を目の当たりにしているのです。なにも、要塞級質量体のワープなど誰もやっていない世界で、ヤンに、「お前は抜本的戦略変更のために当然イゼルローン要塞の移動化を思いつくべきだった」、などと言う話をしているのではないのですから。

 話のレベル的には、艦船のワープ移動があたりまえの状況における要塞のワープ移動は、コロンブスの新大陸発見などに近いような気がしますね。
 コロンブスの時代は、基本的に沿岸航海であって、既知の港間を、その沿岸沿いに進んだり、地中海のような沿岸地形が既知の海域を横断する程度のものですが、コロンブスは未知のアメリカ大陸周辺の西インド諸島まで航海する実例を示したわけです。この実例が示されると、雪崩のように、旧大陸(ヨーロッパ)・新大陸(アメリカ)間の航海が実現されるようになりましたね。
 別に、帆船の時代に蒸気船で進んだわけでもなく、船の技術に格段の技術的革新があったわけではなく、基本的には運用の偉大なる先駆、ということになりますね。
(銀英伝でシャフトが技術上の問題は無い、と豪語するように)
この種の偉大なる先駆というものは、通例たちまち広がるものです。携帯電話にメール機能やデジカメ機能をつけたとか。ここでも、コンパクト化など、技術上の課題は当然ありますが、組み合わせの改善と、抜本的な新技術の実現とは、技術的革新のレベルが違います。

 上の話に連結すると、ヤンに「この種の偉大なる先駆」になれ、と言っているわけでは全然無く、帆船を蒸気船に進歩させるような「格段の技術的革新」を要するわけでもない、ということです。

(主たる回答は以上です)

 それから、以下の話は、以前のKenさんとの議論の蒸し返しになりそうですね。

> 『(大質量)ワープは、我々の世界の技術を超えた高度なテクノロジーであり、それに関する理論も実験データも持たない我々には、その適用範囲や限界等の詳細について信頼できる結論を出すことができない』

 この話なんですが、これは以前Kenさんとの議論でも提示したように、大質量を問わず、ワープ自体が未知で現代科学による類推も効かない技術ですので、ここで、「適用範囲や限界等の詳細について信頼できる結論を出すことができない」などといい始めると、なにもいえないことになります。
(1997年ワープは不可能と結論された、なんて話があるようですね。例えば「ワープ」「トリビア」で検索されるとヒットします)
 Kenさんに提示した具体例は、もしこのような事を言い出すなら、艦船一般がワープできるという保証すら、ないことになってしまうぞ! というものでした。
 作中には、作中で実際に行われたワープ移動の例がありますが、「適用範囲や限界等の詳細について信頼できる結論を出すことができない」と言うなら、これ以外のワープ移動の実現性についても、確からしい、と言い得ないことになるからです。ヤン艦隊が帝国首都フェザーンを攻略する、などという仮定の戦略を考えること自体、不可能となってしまいます。この仮定の戦略の前提条件として、同盟艦隊のフェザーンへのワープの可能性が問われることになると思いますが、同盟艦隊のフェザーンへのワープの実例が作中に示されていない以上、この前提条件自体が崩れてしまいます。


No. 6161
Re:相対的の意味
Night 2004/12/30 22:33
 まだ、論点がうまく一致していないようなので、論旨が上手く伝わらなかった点を中心に再度まとめてみたいと思います。

 まず、ワープに関する知識の問題について。
 議論に際して重要な事があります。それは、分かっている事は分かっている事として、良く分からない事は良く分からない事として、全く分からない事は全く分からない事として、知識をその確からしさと一緒に正しく整理することです。
 銀英伝のワープについて分かっていることも色々あります。例えば、それは銀英伝の世界では比較的ポピュラーな技術であること。戦艦、民間船を問わず宇宙船にはワープエンジンが搭載され、それによって恒星間の航行が一般的に行われている事。宇宙船に乗る人員が生命の危険を特に感じていないらしい事からして、通常のワープ航行は特に危険ではないこと、などです。
 上に挙げた事実は、銀英伝の記述全般から一般に導き出される知識です。私は、これらの知識の確からしさに異を唱えるつもりは全くありません。例えば、同盟艦隊がフェザーンにワープした事はないかもしれませんが、帝国戦艦や民間の商船が航路に沿ってごく普通にフェザーンにワープしています。だったら、同盟戦艦がワープできないと考える理由は特にないので、同盟艦隊はフェザーン攻略をすることもできたでしょう。

 私が前回主張したかった事は『(大質量)ワープは全く未知の技術であり、我々はそれに関する確かな知識を持たないので、その"詳細"について結論を出すことができない』ということです。この"詳細"とは、適用範囲や精度、限界といった、もっと技術の内側に踏み込んだ問題を指します。
 今回の大質量ワープに関して、具体例を挙げます。

・この技術がワープさせることのできる質量の理論的な限界値はどの程度なのか?
・質量が増加した場合、ワープエンジンの出力増加で対応するのか? ワープエンジン数増加で対応するのか?
・大質量ワープは、通常のワープに比べて、どの程度危険なのか?
 その危険度はワープ対象の質量が増加すると、どのように変化するのか?
 (一定値? 比例関係? 指数級数的? それ以外?)
・時空震の問題が帝国側で検討されていたが、具体的にどのような悪影響があるのか?
 質量増加と時空震はどのような関係にあるのか?
・12個のワープエンジンを同時動作させるという技術は具体的にどのようなものか?
 24個、36個、48個とエンジンを増やした場合、難易度はどのように変化するのか?

 上記のような問題は、イゼルローン移動要塞化の実現性について具体的に検討しようと思うなら、避けて通る事はできないものです。しかし、これらについて、我々は理論や実験データといった確かな知識を全く持っていません。根拠とできる確かな知識がないところから、信頼できる結論を出すことはできない、ということを私は言いたいのです。


> >  理論検証も実験も抜きで技術の適用範囲を2倍、3倍にするということを、『相対的に見たら小さな差異なんですよ』の一言で済ませるわけには行かないのです。例を挙げて説明します。
>
>  核心部分たる「相対的」の意味が正しく伝わってないようですね。もう少し、補足説明を行ってみましょう。
>
>  ここで「相対」としているのは、戦艦等の質量体と要塞級質量体との重量比に比べたら、要塞同士の質量比など、問題にならない程度に小さい、ということです。
>
>  孫引きになりますが、過去の考察ログを見ると、作中には輸送艦の重量が10万トンとか20万トンとかいう記載があるようですね。そこで、多めに見積もって、100万トン(重量トンと仮定)くらいの艦船は、銀英伝世界では普通にワープしているとしましょう。
> (艦船に用いられる容積トンと重量トンとの違いが峻別されてないかもしれないが)
>
> ガイエスブルグ要塞は、40兆トンであるとのことでした。
> そうすると、100万トンの艦船に対して、4000万倍もの質量を、ガイエスブルグ要塞は持っているわけです。
>
>  4000万倍もの質量の増大に対応して、ワープを可能とすることが、作中で設定されてしまっているわけです。
>  4000万倍もの質量増大における技術的困難に比べたら、数倍程度の質量増大における技術的困難などは、相対的に見て、無いに等しいといっているのです。
>
>  Nightさんの上げている400mとか1600mとかのビルの話は、非常に恣意的です。
>  現実に、400m級のビルぐらいは存在するわけですから、そこから数倍といったら、これは難しい話ですよね。
>  しかしですねえ、400m級のビルの建造技術しかないと思われているところが、いきなり16億m(16万km:400m×4000万)のビルの建造が可能だ、となったら、32億m(2倍)だろうが48億m(3倍)だろうが、可能に見えてきますよ。
>
>  物理学では、天文学とか素粒子とか、桁数の変動規模が大きい分野では一般に、1桁の違い程度は、問題とならないですね。
>
>  繰り返しますが、4000万倍もの質量増大における技術的困難に比べたら、数倍程度の質量増大における技術的困難などは、相対的に見て、無いに等しい、ということです。
>

 上のような主張を聞かされてもなお、私に言えることは変わりません。
『ある新技術により、従来の技術の適用範囲を4,000万倍に拡大できた』ことが事実であっても、それは『その技術を使えば適用範囲を8,000万倍、12,000万倍に拡大できる』ことを証明した事にはなりません。『従来の範囲を何倍に拡大したか』ということと、『その技術自体の限界はどこにあるのか』ということは、本来、全く別の問題だからです。
 パンツァーさんはこの二つを同一視して『可能に見えてきますよ』の一言で済ませていますが、これがその感覚的な一言で済ませられる問題なら、証明のための理論も実験も必要なくなり、科学者も技術者も随分楽になると思います。

 なお、前回挙げたビルの例は単なる一例です。お望みであれば、出発点となるA社のビルの高さを16万kmにしても構いません。B社はそれを見て32万kmのビルに挑戦するでしょう。C社は64万kmに挑戦するでしょう(もう月軌道を突破してますが……)。あくまで例えに出した話ですから、初期値が何であろうと構わないのです。いずれにせよ、『数倍程度の違いなど、相対的に見たら小さな差異』という荒っぽい論法の先にあるのが無限ループの繰り返しの果ての破綻であるという結論に変わりはありません。
 あるいは、計算機の性能の方が例として分かりやすいかもしれません。この分野にLSI技術がもたらした革新は非常に大きなものであり、現代の計算機は、第一世代の計算機に対して、数百万から数千万倍の性能を持っています。
 では、Pentium4の2GHzを作る技術があれば、4GHz, 6GHzのCPUも作れるのか?
 そんな事はないのです。技術のもたらした革新と、その技術自体の限界は、本来別の問題であるからです。


 最後になりますが。
 ここから先は大質量ワープの詳細に少し踏み込んだ話になるので、私の推測が幾分混じっています。それを前提に割り引いてお聞きください。
 大質量ワープの詳細についても、分かっている事が少しあります。それは、ガイエスブルク要塞をワープさせる為に取り付けられたワープエンジンは12個であり、大質量ワープとは、それら12個のワープエンジンを完全に同時作動させる事によって行われる、ということです。
 つまり、単純に考えれば、1個のワープエンジンは、ガイエスブルク要塞の1/12をワープさせる力を持っているということになります。1個のエンジンによるワープは既存技術の範囲ですから、既存のワープ技術の確認できる最大ワープ質量は3.3兆トンです。
 パンツァーさんは艦船と要塞の質量比から拡大範囲を4,000万倍とされていますが、この計算によれば、拡大範囲は単に12倍となります。
 こういう考え方もある、ということで。


No. 6162
Re:ヤンの怠慢となる点
タグチ 2004/12/31 00:30
パンツァー様

ROMに徹しており初登場ですが横レス失礼します。


> >  移動要塞の技術問題についてはかなり論議が錯綜した経緯があり、これ以上議論しても得られる所は少ないと思うのですが、
>
> 同感です。
> そこで、まったく分かりやすい、「移動要塞論」の有利点を、再び列挙しておくことにします。
>
>  イゼルローン要塞の移動化(ワープ移動可能)が実現されれば、ヤン一党は、ラインハルト率いる帝国軍に対して、不敗の抵抗体制を築くことができる。これに対して、これ以外の策は愚作である。イゼルローン要塞に篭っての抵抗は、作中にたびたび登場する質量弾攻撃などに対してまったく無力であるばかりか、帝国艦隊による直接攻撃にも圧倒的な数的劣勢のため対抗しえず、非常に危険な策である。ラインハルトの気が(イゼルローン要塞の攻略前でも攻略失敗後でも)変われば、蓋をされて、手詰まり状態に陥るだけである。
>  したがって、イゼルローン要塞の移動化は、ヤンにとっては、第一に優先すべき検討課題であった。イゼルローン要塞の移動化の実現の可否は、ヤン一党の運命を決定的に変更するものであるのだから。
>  しかしながら、作中には、ヤンが、イゼルローン要塞の移動化を検討したところが、またくない。補給源に拘束されるためにイゼルローン要塞に篭るという戦略的選択をせざるを得なかったヤンにとって、抜本的な戦略変更を可能とする方策であったにも拘らず。
>
>  No.6156で、質量比4000万倍時ワープの技術的困難に比して、質量比数倍時ワープの技術的困難は無視できる(単純比較で0.0001%程度の困難性?)、と言う話をしましたが、これを検討しないのは怠慢でしょう。
>  ヤンは、ほとんど似たようなこと(ガイエスブルグ要塞の移動化)を目の当たりにしているのです。なにも、要塞級質量体のワープなど誰もやっていない世界で、ヤンに、「お前は抜本的戦略変更のために当然イゼルローン要塞の移動化を思いつくべきだった」、などと言う話をしているのではないのですから。

ご自身も指摘されている通り、「作中には、ヤンが、イゼルローン要塞の移動化を検討したところが全く無い」と言うのが要点ではないでしょうか。
作中の記述、出来事から判断すると確かに、帝国軍はガイエスブルグ要塞を実戦に投入できるレベルまで移動化させ得る技術を持っていました。ではイゼルローンはどうか?
ガイエスブルグでは確かに移動要塞を可能としましたが、イゼルローン若しくはそれに等しい質量を移動化させたと言う記述はありません。
ワープの技術的困難性が自身の質量に起因するとしても少なくとも数倍の差があるイゼルローン要塞をガイエスブルグと同列に扱うのは技術的に無理がありすぎると思います(もちろん主観的意見なのですが)
仮に帝国軍に技術的なアドバンテージがあるとしイゼルローン要塞を移動化させ得たとしても同盟軍には可能かどうか、それが問題です。
帝国軍に出来た事が必ずしも同盟軍に出来たとは云えないでしょう。
あくまで要塞の移動化を実現し得たのは帝国軍であったと言うのが重要なポイントだと考えられます。
その帝国軍にした所で数倍の質量を持つイゼルローン(≒相当の質量)を移動化させた記述はありません。
であるならばガイエスブルグに匹敵する質量をワープさせた事も無ければ、イゼルローンの質量を移動さた実績も無い(記述)同盟に、
イゼルローン要塞を移動化させる事が可能でしょうか?
つまり同盟側はそのような要塞級の質量を移動化させる技術を持ち得なかったと言うのが自然な考え方ではないでしょうかと思われます。

だとするならば結局同盟側で、ガイエスブルグ、イゼルローン級に匹敵する質量をワープさせたと言う記述が無い限り
ヤン一党がイゼルローンを移動化させ得る可能性は無かったと考えるのが自然だと思われます。好意的に解釈するなら移動化の検討を行うのも技術的な困難性から選択肢となりえなかったと思われます。



>  話のレベル的には、艦船のワープ移動があたりまえの状況における要塞のワープ移動は、コロンブスの新大陸発見などに近いような気がしますね。
>  コロンブスの時代は、基本的に沿岸航海であって、既知の港間を、その沿岸沿いに進んだり、地中海のような沿岸地形が既知の海域を横断する程度のものですが、コロンブスは未知のアメリカ大陸周辺の西インド諸島まで航海する実例を示したわけです。この実例が示されると、雪崩のように、旧大陸(ヨーロッパ)・新大陸(アメリカ)間の航海が実現されるようになりましたね。
>  別に、帆船の時代に蒸気船で進んだわけでもなく、船の技術に格段の技術的革新があったわけではなく、基本的には運用の偉大なる先駆、ということになりますね。
> (銀英伝でシャフトが技術上の問題は無い、と豪語するように)
> この種の偉大なる先駆というものは、通例たちまち広がるものです。携帯電話にメール機能やデジカメ機能をつけたとか。ここでも、コンパクト化など、技術上の課題は当然ありますが、組み合わせの改善と、抜本的な新技術の実現とは、技術的革新のレベルが違います。
>
>  上の話に連結すると、ヤンに「この種の偉大なる先駆」になれ、と言っているわけでは全然無く、帆船を蒸気船に進歩させるような「格段の技術的革新」を要するわけでもない、ということです。
>
> (主たる回答は以上です)
>
>  それから、以下の話は、以前のKenさんとの議論の蒸し返しになりそうですね。
>
> > 『(大質量)ワープは、我々の世界の技術を超えた高度なテクノロジーであり、それに関する理論も実験データも持たない我々には、その適用範囲や限界等の詳細について信頼できる結論を出すことができない』
>
>  この話なんですが、これは以前Kenさんとの議論でも提示したように、大質量を問わず、ワープ自体が未知で現代科学による類推も効かない技術ですので、ここで、「適用範囲や限界等の詳細について信頼できる結論を出すことができない」などといい始めると、なにもいえないことになります。
> (1997年ワープは不可能と結論された、なんて話があるようですね。例えば「ワープ」「トリビア」で検索されるとヒットします)
>  Kenさんに提示した具体例は、もしこのような事を言い出すなら、艦船一般がワープできるという保証すら、ないことになってしまうぞ! というものでした。
>  作中には、作中で実際に行われたワープ移動の例がありますが、「適用範囲や限界等の詳細について信頼できる結論を出すことができない」と言うなら、これ以外のワープ移動の実現性についても、確からしい、と言い得ないことになるからです。ヤン艦隊が帝国首都フェザーンを攻略する、などという仮定の戦略を考えること自体、不可能となってしまいます。この仮定の戦略の前提条件として、同盟艦隊のフェザーンへのワープの可能性が問われることになると思いますが、同盟艦隊のフェザーンへのワープの実例が作中に示されていない以上、この前提条件自体が崩れてしまいます。

結局、この移動要塞論は同盟軍に要塞レベルの質量を移動化させ得た記述が無い限りその後の議論はなんら意味の無いものではないでしょうか。
要塞論否定派が納得し得ないのは、ガイエスブルグの只一例をもって果たして他に適用できるかどうか納得できるかどうかだと思われます。
それを乗り越えない限り、移動要塞の有効性を論じることに意味は無いのです。

もっとも逆説的には、ヤン一党の移動要塞を論ずるよりもライハンルト陣営の移動要塞論の方がはるかに現実的ではないでしょうか


No. 6163
Re:ヤンの怠慢となる点
ナマケモノ4世 2004/12/31 11:17
同盟軍がイゼルローン要塞を移動要塞にしなかったのは危険が大きいからではないでしょうか。原作でもたしかうまくいかないと消滅する危険があるといっていたと思います。帝国軍ならまあガイエスブルグ要塞の時のデーターがありますからまだ良いですが
同盟軍は当然一からはじめることになります。同盟軍はイゼルローン要塞消滅という事態を招きかねないこのような計画を実行できなかったのではないでしょうか?帝国軍はガイエスブルク要塞が消滅しても別の要塞で実行するか別の作戦を考えればよいですが、同盟軍はまイゼルローン要塞消滅という事態になったらそれは即国家存亡の危機に直結します。
それに私は移動要塞がそんなに自由に運用できるものなのか疑問に思います。消滅の危険が一度の移動成功で払拭されたかどうかわからないからです。イゼルローンにただ移動できれば良いのと艦隊のように自由に運用できるのとはイコールでは無いように思います。
それに移動要塞は原作でもわかる通り移動中に攻撃されると意外ともろいもののようです。
あくまで移動要塞は要塞攻撃用の攻城兵器としてのみ有効なものだと思います。


No. 6169
質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである
パンツァー 2005/01/05 00:38
> 『ある新技術により、従来の技術の適用範囲を4,000万倍に拡大できた』ことが事実であっても、それは『その技術を使えば適用範囲を8,000万倍、12,000万倍に拡大できる』ことを証明した事にはなりません。『従来の範囲を何倍に拡大したか』ということと、『その技術自体の限界はどこにあるのか』ということは、本来、全く別の問題だからです。
>  パンツァーさんはこの二つを同一視して『可能に見えてきますよ』の一言で済ませていますが、これがその感覚的な一言で済ませられる問題なら、証明のための理論も実験も必要なくなり、科学者も技術者も随分楽になると思います。

 上の記述は、Nightさんの主張の核心部分でしょうから、これに基づいて、回答してみましょう。

 後部に「証明のための理論も実験も必要なくなり」とありますね。ワープ移動に関する問題でも、理論部分と、実践部分(実験部分)とを、分けて考えた方が良さそうです。

 作品の設定において、ワープ移動は、理論的には、質量の大小によらず成立するように描かれています。

(a)銀英伝3第四章Vの冒頭で、「要塞を移動させることに関しては、技術上、なんら問題は無い。解決すべき点は、質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである」と、シャフト技術大将が述べています。補足的に、考えられる理論上の問題として、「時空震の発生による影響」と、「12個のワープエンジンの同時作動の可否」と、が上げられています。
(b)銀英伝3第四章Uの末尾付近に、ラインハルトの発言として、「(中略)シャフトは自信満々だが、この計画の困難は発案より実行にあるのだ。(以下略)」とあります。
 前回私があげた、コロンブスの話と同様の記載ですね。

 上の二発言は、ガイエスブルグ要塞級の質量が、ワープ移動の限界であることを示唆するような内容を含んでおりません。「質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである」を、素直に取るのが、作品上の設定を前提とするならば自然でしょう。

 Nightさんの主張がイマイチよくわかりませんが、例えば、艦船級(100トンクラス)の質量からガイエスブルグ要塞程度の質量(40兆トン)までは、ワープ移動は成立するが、それ以上(イゼルローン要塞)などは、不明確である、と言った感じに見受けられます。
 しかし、上にあげた作品の自然な解釈を無視するならば、艦船級から40兆トンまでの個々の質量の場合にしても、ぜんぜん、何も言いえなくなってしまうわけです。そんなことは作品には書いてないぞ、と。私が例にあげている同盟軍によるフェザーン侵攻作戦の可能性が危うくなる所以です。
 つまり、上の作品中の二発言に対して、「質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである」を、あくまでガイエスブルグ要塞にのみ適用可能なものであって、ワープ移動一般に関する理論ではない、と解釈するのであれば、「我々はワープ移動なるものがどんなものか分からない以上、何もいえないことになる」という結論に至らざるを得ないものと思います。

 再び本論に戻りますが、
 ワープ移動を一般化する理論として、質量の大きさが(大きく)変動すべき場合に考慮すべき点は、「質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである」ということです。
 一方、この一般原則を破りかねない別の理論として、同じく前記(a)の引用部分に、「時空震の発生による影響」と、「12個のワープエンジンの同時作動の可否」と、が上げられています。

 つまり、以下の三点くらいが、作品で設定されている理論部分です。
(1)質量に応じたエンジン出力を用意すること
(2)必要なエンジン出力を確保する際に複数のエンジンが必要であれば、同時作動を実現すること
(3)エンジン出力に応じて発生する時空震の影響が、許容範囲であること

 一方、実践部分です。
 ガイエスブルグ要塞に関しては、帝国軍は、実験を行ってみました。それは首尾よく成功を収めたわけです。

 私が延々主張している「技術上の困難」とは、この実践部分の困難に過ぎません。

>  その危険度はワープ対象の質量が増加すると、どのように変化するのか?
>  (一定値? 比例関係? 指数級数的? それ以外?)

Nightさんは、質量増大における困難度の増加は、必ずしも一次比例の関係ではあるまい、と述べていますが、質量増大に応じて困難度が増す、という関係自体は、作品の各部の記述を見ても、成立するものでしょう。

 そこで、私は、質量増大に応じて、(実践における)技術上の困難度が増すであろう、という前提を打ち立てました。
 帝国軍が艦船級の質量体よりガイエスブルグ要塞をワープ移動させた困難度(以下、ガイエスブルグ要塞の困難度)と、
 同盟軍が艦船級の質量体よりイゼルローン要塞をワープ移動させる場合の困難度(以下、イゼルローン要塞の困難度)とを、
 比較してみることにしたのです。

 再掲載しませんが、艦船級の質量体を100万トン程度とした前提での概算で、
 ガイエスブルグ要塞の困難度に比して、イゼルローン要塞の困難度は、無視できるほど小さい(0.0001%程度の困難度)、と述べたのです。逆に言えば、帝国軍が抱えていたのと同程度のリスクで、同盟軍が、イゼルローン要塞のワープ移動が可能であろう、と見積もれるのです。

 Nightさんの主張に、「従来の技術の適用範囲を4,000万倍に拡大できた」とありますが、これはあくまで、実践部分の話なのです。
 言うなれば、理論的には成立しているが、実践が伴っていない、というだけの話です。実際にやってみるまで、うまくいかないことがあるのは、当然のことです。

 理論的には、ワープ移動の場合、
「質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである」
であって、質量増大によっては、「時空震」と、「複数ワープエンジンの同時作動」が、これを脅かす理論となりうる、というだけの話です。繰り返しますが、質量増大によるこれらの困難度の増大は、4000万倍対数倍程度であって、0.0001%程度の困難度でしかありません。

 ロケットの理論とか、原子力(潜水艦の)エンジンとかは、理論的には、半世紀以上も昔から成立しているわけですが、わが国では、失敗続きですね。これは、この種の分野に進出するのが遅く、人材の育成やデータの蓄積等の問題があるのでしょうが、そもそも、理論的に無理があるわけではありません。理論を見つけ出すための実験を行っているわけでは、断じてないのです。理論を実践レベルに引き上げるための実験を行っているのです。

 今回の要塞級質量体のワープ移動に関しても、帝国軍は、仮説の立証のために実験を行ったのではなく、理論を実践レベルに高めるための小実験等を行った後、兵器として活用可能な実践を行ったわけです。
 仮説の検証のための実験ではなく、理論を実践レベルで生かす場合に発生する困難の排除、が行われたのです。

 『その技術自体の限界はどこにあるのか』という問いに対しては、以上述べたように、作品設定を自然に解釈すれば、ワープ移動に関しては、そんな限界は設けられていない、という回答を提出します。ただ、質量増大に応じて、上の(2)(3)の理論の影響が、あまりにも大きく響く場合と言うのは、ありえるでしょうが。

 どうも、Nightさんの主張は、作品設定を無視しているように見受けられますが、如何でしょうか?


No. 6170
Re:ヤンの怠慢となる点
パンツァー 2005/01/05 00:52
> ご自身も指摘されている通り、「作中には、ヤンが、イゼルローン要塞の移動化を検討したところが全く無い」と言うのが要点ではないでしょうか。

ご指摘のように、
この部分が要点です。

> ヤン一党がイゼルローンを移動化させ得る可能性は無かったと考えるのが自然だと思われます。好意的に解釈するなら移動化の検討を行うのも技術的な困難性から選択肢となりえなかったと思われます。

ここなんですけど、
作中に、検討が行われた節がまったくないので、
ヤンの怠慢、と言う結論は動かないのではないか、と思います。


No. 6172
Re:質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである
Night 2005/01/07 02:00
 主張が良く分からないとのことですので、結構長くなりますが、私の考えについてまとめてみます。

 命題には真偽の判定が容易なもの(例えば、作中にはっきりとそれに関する記述があるもの。『ヤン・ウェンリーは男である』は真)もありますが、簡単に真偽を判定できないものもあります。その例として、『同盟によるフェザーン侵攻は可能である』という命題が挙がっています。実際に同盟艦隊がフェザーンにワープした事実はない。だったら、本当に可能かどうかは分からないであろう、と。
 このような命題に関しては、"確からしさ"で重み付けされた手持ちの判断材料を、天秤の真偽の皿に乗せていくことになります。最終的な判断は、真と偽のどちらが重いかと、天秤の傾き具合によって決められることになります。

 同盟によるフェザーン侵攻の命題ですが、真の皿に乗せられる材料として、『帝国艦隊も民間船も、実際に同盟とフェザーンの間を行き来している』というはっきりとした作中事実があります。これは、完全に確かな"重い"知識です。逆に、偽の皿に乗せられる材料は全くと言っていい程ありません。よって、天秤は真の方に大きく傾き、この命題には、『ほぼ確実に真』という判定を下す事ができます。この判定は余程のことが無い限り覆ることのない、信頼できるものです。

 次に、『艦船級から40兆トンまでの個々の質量もワープ可能である』という命題について判定します。
 我々は理論も実験データも持たないので、ワープの詳細を知りません。いくつかの作中事実からそれを類推するだけです。この命題の場合、艦船とガイエスブルクがワープ可能であること、および、一般的に、技術的な問題の難易度は扱う対象の規模と相関関係にあるということから、『軽い物と重い物の両方をワープできるなら、その中間の重さの物もワープできるだろう』という推論は、ある程度の確からしさで言えると思われます。これは真の皿に乗せられる"やや重い"材料です。逆に、偽の皿に乗せられる材料は特にありません(中間の質量だけワープできないと考える理由も特にありませんから)。よって、天秤は真の方に傾き、この命題には、『おそらく、真』という判定を下す事になります。ただ、こちらの結果は先のフェザーン侵攻の命題とは異なる点があります。真の皿に乗せた材料は"やや重い"程度のものですので、何かのきっかけで偽の皿に乗せられる"重い"材料が出てきた場合、容易に判断が覆るということです。例えば、『実は、艦船級と40兆トンの間には、どうしても理論的にワープできない質量帯があったのだ』ということが判明したとしても、私は驚きません。不確実な材料を乗せた分、判定の結果が信頼できないものになるのは当然だからです。

 以上を踏まえた上で、『イゼルローン要塞もワープ可能である』という命題について判定します。
 先程使った『軽い物も重い物もOKだから、中間の重さの物もOK』という推論は、もう使えません。ガイエスブルクより重い物がワープした確かな事実がないからです。結局、真の皿に乗せられるのは『ガイエスブルクはワープできた』という、この件についてはわずかな重さの材料だけです。ただ、偽の皿に乗せられる材料もあまりありません。そちらには『一般的に、技術的な難易度は扱う対象の規模に従って増大する』という推論が乗ることになりますが、ワープの詳細が良く分からないので、これがどの程度の重みを持ってのしかかってくるのか良く分かりません。あまりに材料が乏しいので、最終的な判定は不能となります。

 私の主張は、『天秤に乗せる重い材料が全く無いか、非常に乏しい時、その判定結果は信頼できない』ということです。


>  作品の設定において、ワープ移動は、理論的には、質量の大小によらず成立するように描かれています。
>
> (a)銀英伝3第四章Vの冒頭で、「要塞を移動させることに関しては、技術上、なんら問題は無い。解決すべき点は、質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである」と、シャフト技術大将が述べています。補足的に、考えられる理論上の問題として、「時空震の発生による影響」と、「12個のワープエンジンの同時作動の可否」と、が上げられています。
> (b)銀英伝3第四章Uの末尾付近に、ラインハルトの発言として、「(中略)シャフトは自信満々だが、この計画の困難は発案より実行にあるのだ。(以下略)」とあります。
>  前回私があげた、コロンブスの話と同様の記載ですね。
>
>  上の二発言は、ガイエスブルグ要塞級の質量が、ワープ移動の限界であることを示唆するような内容を含んでおりません。「質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである」を、素直に取るのが、作品上の設定を前提とするならば自然でしょう。

 はい。これらの発言は、ガイエスブルク要塞級の質量が、ワープ移動の限界であることを示唆するような内容を含んでいません。
 ただ、二人が話題にしているのは、今回のガイエスブルク移動要塞化計画の成否についてであり、その焦点はあくまで『ガイエスブルクが本当にワープできるか否か』にあります。彼らの発言がいかなる質量に対しても適用可能かについては疑問が残ります。
(ガイエルブルク以外の質量について、例えば上で挙げたような『実は、艦船級と40兆トンの間には、どうしても理論的にワープできない質量帯があったのだ』と言う事実が仮にあったとしても、上記の発言の文脈でシャフトやラインハルトがそれについていちいち細かく言及する意味も必要性もないということです。別に、学生に対して専門の講義をしているわけではないのですから)


 この後、困難度の見積もりの話になり、色々な計算がされているようなのですが、その計算の根拠や妥当性が良く分かりません。
 今回、パンツァーさんの挙げられている理論に従って単純に考えれば、イゼルローンは36基のワープエンジンでワープさせる事になると思われます。そうなれば「12基のエンジンは同調させられるが、36基のエンジンは同調させられない」というようなリスクが出てくることが考えられるわけですよね。
 このような事態が起こるリスクを、パンツァーさんは4000万倍対数倍程度であると言い、0.0001%程度であると言っていますが、何故、そうなるのかが私には良く分かりません。
(戦艦と要塞の質量比と、複数のエンジンが同調できるか否かという確率との間に、どういう関係があるんですか? 普通、無関係だと思うんですが……)

 できれば、このように考えられる根拠について、もう少し詳細を教えてください。そうでないと、何とも申し上げられません。


>  今回の要塞級質量体のワープ移動に関しても、帝国軍は、仮説の立証のために実験を行ったのではなく、理論を実践レベルに高めるための小実験等を行った後、兵器として活用可能な実践を行ったわけです。
>  仮説の検証のための実験ではなく、理論を実践レベルで生かす場合に発生する困難の排除、が行われたのです。

 帝国軍が行っていた実験の詳細は不明です。
 実験の結果、得られた事実は『ガイエスブルクをワープさせることはできる』というものであって、その結果がさらに一般的な『いかなる質量の要塞でも、恒久的移動基地として運用することができる』という事実を含んでいたか否かは、分かりません。それを判断するには、実験内容の詳細について知る必要があります。


>  『その技術自体の限界はどこにあるのか』という問いに対しては、以上述べたように、作品設定を自然に解釈すれば、ワープ移動に関しては、そんな限界は設けられていない、という回答を提出します。ただ、質量増大に応じて、上の(2)(3)の理論の影響が、あまりにも大きく響く場合と言うのは、ありえるでしょうが。

 その通りです。
 ですから、『ガイエスブルク要塞を移動要塞化できた』という事実から、直ちに『イゼルローン要塞も同じ要領で簡単に移動要塞化できる』という結論を導き出すことはできないのです。
 大きく響くか、響かないかは、(2)(3)の理論の詳細について知らなければ判定できません。そういうことを、私は当初から主張しているつもりです。


No. 6174
作品の解釈について
パンツァー 2005/01/08 18:15
大分長文になりましたが、
主たる要点は、前半部にあります。

以前、冒険風ライダーさんが指摘されていましたが、
作品の解釈は次のようにして行なうべきものです。
(1)SFであっても、基本的には現実の我々と同じ世界の物語である。人間の性質や物理法則一般に関してもそのとおり。
(2)作品中で設定されている内容は、(1)の適用の例外事項であって、この例外事項に関しては、当然作品の設定が優先される。

つまり、作品に示唆されていない内容については、現実の我々の世界の内容に準じて考えるのが妥当なのです。

ワープ移動に関する設定をどのように解釈するかを、再び検討してみます。

(a)銀英伝3第四章Vの冒頭の記載
「要塞を移動させることに関しては、技術上、なんら問題は無い。解決すべき点は、質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである」

ここで、この検討に先立って、参考のため、「男女雇用均等法」という法律のネーミングの理由を説明しましょう。
(ア)「雇用機会はどの人間にも平等であるべきだ」という命題があります。
(イ)しかし、わが国が男社会であるために、女性の雇用機会が損なわれているという現実があるわけです。
(ウ)そこで、男性だけでなく女性にも雇用機会が与えられるべき、という理由で、「男女雇用均等」を謳う法律が制定されたわけです。

シャフト技術大将が、「要塞を移動させることに関しては、」とわざわざ断ったのは、銀英伝世界の住人にとって、艦船級の質量体のワープ移動は常識であるが、要塞級の質量体の移動は常識ではないからです。
つまり、上の「男女雇用均等法」と対応させて述べると、
(ア)「ワープ移動は、質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである」
(イ)しかし、(銀英伝世界の住人に)通常知られているのは、艦船級の質量体のワープ移動のみである。
(ウ)そこで、シャフト技術大将は、ラインハルト等へのワープ移動に関する説明で、「要塞を移動させることに関しては、」とわざわざ断る必要があった。

繰り返しますが、
現実の世界で「男女雇用均等」と謳うのは、「雇用機会はどの人間にも平等であるべきだ」という命題が、現実には男性にしか適用されていないからです。
シャフト技術大将が、「要塞を移動させることに関しては、」とわざわざ断るのは、「質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである」というワープ移動の原理が、現実には艦船級の質量体でしか実行されてないからです。

以上を踏まえて、上の(1)(2)の手法に従ってみましょう。
我々の世界のニュートン力学において、「質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである」という法則がある。
一方、銀英伝でもワープ移動に関して、「質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである」という法則がある。
特定の質量に限定されるような例外事項はどこにも見当たらず、質量一般において成り立つものと解釈するのが自然である。

このように考えないとしたら、要は、結局、作者が設定したわけではない(読者が勝手に設定した)裏設定にも、作品に対して等しく影響力を及ぼすべき、ということになるのですよ。

例えば、以下のNightさんの記載
「例えば、『実は、艦船級と40兆トンの間には、どうしても理論的にワープできない質量帯があったのだ』ということが判明したとしても、私は驚きません。」
これは、上の(1)(2)以外に、
(3)一読者の考えた設定
を、作品の解釈に取り入れろ、といっているに等しいのです。

繰り返しますが、作品で設定されている例外事項を除いては、すべて、現実の我々の世界の法則性を準用すべきなのです。
(3)のような解釈の原則を認めるなら、実は、ヤンやラインハルトは、遺伝子工学で作り出された人造人間だった、とかいう解釈だってできることになりますよ。ヤンやラインハルトが人造人間ではない、と作品中に明言されてないのは、我々の世界の常識を準用して、当然(腎臓でない)自然の人間あることが分かりきっているからにすぎません。
上の解釈の方法論(1)(2)を、読者は作品を読む過程で、一々、実行しながら、読んでいるのですよ。こんなことに疑いを抱く人は、通常いないはずです。
*****
次に、Nightさんの記載を検討していきましょう。

>  私の主張は、『天秤に乗せる重い材料が全く無いか、非常に乏しい時、その判定結果は信頼できない』ということです。

上は、Nightさんの判断基準の説明ですね。

(A)
 同盟によるフェザーン侵攻の命題ですが、真の皿に乗せられる材料として、『帝国艦隊も民間船も、実際に同盟とフェザーンの間を行き来している』というはっきりとした作中事実があります。これは、完全に確かな"重い"知識です。逆に、偽の皿に乗せられる材料は全くと言っていい程ありません。よって、天秤は真の方に大きく傾き、この命題には、『ほぼ確実に真』という判定を下す事ができます。この判定は余程のことが無い限り覆ることのない、信頼できるものです。

上の記載を見る限り、Nightさんは暗黙の前提として、次の二つの前提を打ち立てています。
1:作品中で実際にフェザーンに向かわなかった帝国艦艇や民間船も、作品中で実際にフェザーンに到達した艦船と同じ構造をしている。
2:同盟の艦船も、作品中で実際にフェザーンに到達した艦船と同じ構造をしている。
作品中の一体どこに、同盟の艦船が、作品中で実際にフェザーンに到達した艦船と同じ構造をしている(例えば、当然ながら質量の大きさも同じ)、と記載されていますか?

同盟の艦隊がワープを行なっている記載は作品中にありますが、それが例えば作品中に記載のないフェザーンへのワープ移動に関しても、可能であると言い切れるのでしょうか?
「艦船級と40兆トンの間には、どうしても理論的にワープできない質量帯があったのだ」という可能性を認める人が、
「フェザーン行きの航路に関しては、同盟の艦艇では、どうしてもワープできなかったのだ」
という可能性を、どうして否定できるのでしょうか?

繰り返しますが、
「作品中で実際にフェザーンに到達した帝国艦艇や民間船」と「同盟の艦船」との間の関係に問題がないことを証明しない限り、
「作品中で実際にフェザーンに到達した帝国艦艇や民間船」の例がいかに多数存在しようとも、
なんの参考例にもなりませんよ。

ちなみに、私は、
上の解釈の方法論(1)(2)にしたがって、
ワープ移動は「質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである」という原則を守る移動体(艦船)であれば、なんでも基本的にワープ移動可能であると見ているので、航路に限定されることも当然なく(フェザーン行きの航路であろうがなかろうが)、作品中に実行例がなくても、「同盟の艦船がフェザーンに到達できる」と考えます。

上の解釈の方法論(1)(2)を利用しないということが、
どれだけ難しいか、お分かりになるでしょうか?

(B)
>  次に、『艦船級から40兆トンまでの個々の質量もワープ可能である』という命題について判定します。
>  我々は理論も実験データも持たないので、ワープの詳細を知りません。いくつかの作中事実からそれを類推するだけです。この命題の場合、艦船とガイエスブルクがワープ可能であること、および、一般的に、技術的な問題の難易度は扱う対象の規模と相関関係にあるということから、『軽い物と重い物の両方をワープできるなら、その中間の重さの物もワープできるだろう』という推論は、ある程度の確からしさで言えると思われます。これは真の皿に乗せられる"やや重い"材料です。逆に、偽の皿に乗せられる材料は特にありません(中間の質量だけワープできないと考える理由も特にありませんから)。よって、天秤は真の方に傾き、この命題には、『おそらく、真』という判定を下す事になります。ただ、こちらの結果は先のフェザーン侵攻の命題とは異なる点があります。真の皿に乗せた材料は"やや重い"程度のものですので、何かのきっかけで偽の皿に乗せられる"重い"材料が出てきた場合、容易に判断が覆るということです。例えば、『実は、艦船級と40兆トンの間には、どうしても理論的にワープできない質量帯があったのだ』ということが判明したとしても、私は驚きません。不確実な材料を乗せた分、判定の結果が信頼できないものになるのは当然だからです。

まず、
「一般的に、技術的な問題の難易度は扱う対象の規模と相関関係にある」とか、『軽い物と重い物の両方をワープできるなら、その中間の重さの物もワープできるだろう』と述べて、
上の解釈の方法論(1)(2)を利用していますね。

次いで、
「真の皿に乗せた材料は"やや重い"程度のものですので、何かのきっかけで偽の皿に乗せられる"重い"材料が出てきた場合、容易に判断が覆るということです。」と述べていますが、
ここで「やや重い」っていうのは、
(A)の話における参考例(帝国艦船や民間船)の数に比べて、(B)の話の参考例は少ない、という意味なんでしょうね。
まあ、それはよいとして、
「何かのきっかけで偽の皿に乗せられる"重い"材料が出てきた場合」
これが問題です。
作品の設定の対象は、外伝をどうするかという話もありましたが、基本的に銀英伝全10巻です。今後、新たな判断材料が出現することはありません。したがって、「何かのきっかけで偽の皿に乗せられる"重い"材料が出てきた場合」以降の記載は、無意味です。

(C)
>  先程使った『軽い物も重い物もOKだから、中間の重さの物もOK』という推論は、もう使えません。ガイエスブルクより重い物がワープした確かな事実がないからです。結局、真の皿に乗せられるのは『ガイエスブルクはワープできた』という、この件についてはわずかな重さの材料だけです。ただ、偽の皿に乗せられる材料もあまりありません。そちらには『一般的に、技術的な難易度は扱う対象の規模に従って増大する』という推論が乗ることになりますが、ワープの詳細が良く分からないので、これがどの程度の重みを持ってのしかかってくるのか良く分かりません。あまりに材料が乏しいので、最終的な判定は不能となります。

 (B)で
「一般的に、技術的な問題の難易度は扱う対象の規模と相関関係にある」とか、『軽い物と重い物の両方をワープできるなら、その中間の重さの物もワープできるだろう』
という推論が、「ある程度の確からしさで言えると思われ」ると、
Nightさんはしていました。
要は、質量によらずワープできる、といっているのです。
それならば、
「軽い物で成り立ち、重い物でも成り立つ場合、その重いものより若干重いものでも、ワープできるだろう」
という推論も、
「ある程度の確からしさで言えると思われ」ると思いますね。

が、まあ、このような推論自体が、
すでに、上の解釈の方法論(1)(2)を適用している結果なんですよ。
ワープに関しても、ワープという超絶的な移動結果については未知としても、ワープ移動を可能とする要件(質量とか、エンジン出力とか)については、現代の物理学を準用して考えているのです。
Nightさんにおいても。

あと、重要と思われる点を、数点回答していきます。

>  この後、困難度の見積もりの話になり、色々な計算がされているようなのですが、その計算の根拠や妥当性が良く分かりません。
>  今回、パンツァーさんの挙げられている理論に従って単純に考えれば、イゼルローンは36基のワープエンジンでワープさせる事になると思われます。そうなれば「12基のエンジンは同調させられるが、36基のエンジンは同調させられない」というようなリスクが出てくることが考えられるわけですよね。

この点なんですけど、過去ログにもこのような話がありますが、イゼルローン要塞の場合、36基必要かどうかは不明ですよ。
1基の出力限界が本当に3.3兆トンなのでしょうか?
3.3兆トン以下の質量体だったら、1基のワープエンジンで済むというのも、変な感じがします。
作品中には、推進力は、質量の重心位置を貫かなければならない、という話はありましたので、12基というのはあるいは姿勢制御用に必要な話かもしれないのです。ワープエンジンは通常エンジンとしても使用できるようですから。
それに、艦船に搭載するワープエンジンと、要塞に搭載するワープエンジンとは、規格が異なるのではないか、とも思えます。質量に応じて、高出力のワープエンジンを作ったのかもしれませんし。

したがって、はっきり言いえるのは、
質量増大の大きさに応じた困難度があるのではないか、ということです。

上の話も、36基対12基だとしたら、単純に考えたら、3倍の困難度ということになりますね。結局、困難度を、質量の増大による一次比例的に、捉えていることになるわけです。

しかし、その前に、4000万倍の困難度を、やすやすと帝国軍はクリアしているわけですから、さらに3倍程度困難度が増したって、しれていると思いますよ。
私が艦船級の質量(100万トンクラス)と、要塞級の質量(40兆トンくらす)とを、技術的困難の比較基準としている理由も、このようなところです。


> >  『その技術自体の限界はどこにあるのか』という問いに対しては、以上述べたように、作品設定を自然に解釈すれば、ワープ移動に関しては、そんな限界は設けられていない、という回答を提出します。ただ、質量増大に応じて、上の(2)(3)の理論の影響が、あまりにも大きく響く場合と言うのは、ありえるでしょうが。
>
>  その通りです。
>  ですから、『ガイエスブルク要塞を移動要塞化できた』という事実から、直ちに『イゼルローン要塞も同じ要領で簡単に移動要塞化できる』という結論を導き出すことはできないのです。
>  大きく響くか、響かないかは、(2)(3)の理論の詳細について知らなければ判定できません。そういうことを、私は当初から主張しているつもりです。

(2)(3)の理論とは、
複数エンジンの同時作動の話と、時空震の話でしたが、
どちらも質量の大きさに比例する話ですね。
私が言っている「大きく響く場合」とは、
例えば、艦船級から要塞級のように、4000万倍も質量が増大する場合を指すのです。
もちろん、上の話を離れて一般的な話であれば、数倍程度で「大きく響く場合」も当然あるでしょう。数倍程度で「大きく響く場合」のであれば、4000万倍も質量が増大する場合は、まったくお話にならないというだけの話です。
逆に、4000万倍も質量が増大して問題がないのであれば、数倍程度で大きく響くわけがない、のです。
このような推論は、皆、上の解釈の方法論(1)(2)にしたがってのものです。


No. 6177
大質量ワープの臨界点について
Night 2005/01/09 02:13
>  『その技術自体の限界はどこにあるのか』という問いに対しては、以上述べたように、作品設定を自然に解釈すれば、ワープ移動に関しては、そんな限界は設けられていない、という回答を提出します。ただ、質量増大に応じて、上の(2)(3)の理論の影響が、あまりにも大きく響く場合と言うのは、ありえるでしょうが。

 上に反論するため、一つの思考実験を組み上げましょう。そして、『シャフト方式の大質量ワープでは、ある臨界点より大きな質量をワープさせることはできない』ということを証明して見せます。
(ただし、No.6161の計算同様、ここから先は大質量ワープの詳細に少し踏み込んだ話になるので、私の推測が幾分混じっています。その意味で、厳密に言えば"証明"ではなく"推論"になりますが、かなり確度の高い推論であろうと私は考えています)

 本編に以下のような記述があります。これは、恒星アムリッツァ近辺で行われたアムリッツァ会戦の一場面です。
(以下、銀河英雄伝説1巻黎明編の第9章Iより。徳間ノベルスだと1巻P225下段)

<キルヒアイス艦隊の急行動を見て、その進行方向に居あわせた同盟軍の戦艦がパニックに襲われ、大質量のちかくであるにもかかわらず、跳躍したのである。
 必ずしも珍しいことではなかった。逃走不可能を知った宇宙船が、確実な死より未知の恐怖を選んで、進路の算定も不可能なまま亜空間へ逃げ込んでしまうのだ。逃走ができぬとあれば、降伏という方法もあり、その意思を示す信号も定められているのだが、逆上した者は、それに気づかない。亜空間に逃げ込んだ人々がどのような運命に迎えられたか、それは死後の世界について定説がないのと同様、誰も知らなかった。>

 上の記述から、『大きな質量の近くでは正しくワープを行うことができない』ということが分かります。SFでは時々見かけられる設定ですが、銀英伝のワープもこれを踏襲していると言うことです。
 すると、以下のような思考実験が成立します。

(1) ワープ対象となる大きな質量を用意する。
(2) シャフト方式の大質量ワープを行うため、質量の表面に複数のワープエンジンを取り付け、同時起動させる。
(3) しかし、これらのワープエンジンは必然的に『大きな質量の近く』で動作することになる。よって、最初に用意した質量がある程度以上大きい場合、ワープを正しく行うことはできず、大質量ワープは失敗する。

 以上、証明終わり。
 あるいはこう言い換えても良いでしょう。『大質量をワープさせるためには、正確なワープが必要である。しかし、大質量はそれ自身が正確なワープを阻害する要因である。よって、大質量ワープとは本質的に自己破壊的な要素を抱えており、質量がある臨界点を超えた時点で自己破綻してしまう』と。このような臨界点が存在することは、上の証明に従う限り、確実です。
 この臨界点が具体的にどの程度の値かを計算するためには、『質量の大きさによってどのようにワープの正確さが変動するか』と、『大質量ワープに必要なワープの正確さ』について具体的に知る必要があります。それは我々には手の届かぬ領域の知識なので、計算は不可能です。それがガイエスブルクの質量以上、恒星アムリッツァの質量以下に存在するという以上のことは分かりません。


 この話は、いくつかの興味深い示唆を与えてくれます。
 第一に、シャフトもラインハルトも、上記の臨界点の問題について特に発言で触れていないということです。特にシャフトはこの問題について当然知っているはずなのに、何も言っていない。彼は嘘をついたのでしょうか。
 そうではありません。今回のガイエスブルク計画とは直接の関係がないと思ったから、あえて口にする意味も必要も感じなかった。その解釈で充分でしょう。
 そもそも、個人の一言、二言の発言から、科学、技術の全容を読み取ろうとすることに無理があるのです。シャフトの発言が厳密には正しくなくても、この点で彼を責めるのはお門違いというものです。

 第二に、この問題は『解決すべき点は、質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである』という主張が間違っていることを示しています。この問題の原因は、質量とエンジン出力の関係ではないからです。その証拠に、どれだけたくさんのエンジンを使おうと、どれだけ高出力のエンジンを使おうと、この問題は解決できません。
 また、この問題はエンジン同調の問題でも、時空震の問題でもありません。よって、冒頭の『限界は設けられていない』というパンツァーさんの主張は誤り、となります。

 第三に、この問題は、素人考えでは理論的に正しそうに見えても、実際には見落としていることがあるということの実例です。私は、当初、このような問題がありうるということに全く気がついていませんでした。それは、パンツァーさんも同様でしょう。結局、専門家でない我々には良く分かっていないのです。ワープが実際どういうものかも、それが抱える問題も。
 言うなれば、それは、航空力学も実際の飛行機もほとんど知らぬ素人たちが、飛行機について議論しているようなものです。それまで模型飛行機しか知らなかった人々が、いきなり数百トンもの実用機を見せられ、「さあ、この3倍の大きさの実用機は、飛べるか飛べないか」と聞かれたとします。どう答えるか。
 実際に3倍の飛行機が飛べるか飛べないかを判定するには、航空力学と実験の助けを必要とします。少なくともそこで『いや、模型飛行機の数千万倍の重さの実用機が飛べるなら、その3倍程度の実用機が飛べない確率は0.0001%です』などと言ったところで、その見積もりが正確である可能性など、万に一つもないでしょう。
 我々に可能な唯一の答、それは、『いや、我々は飛行機について詳しいことは知らないので、飛べるかどうかは分かりません』というものではないでしょうか。


No. 6178
絶縁体が電気を通さないというのは誤りである。
蜃気楼 2005/01/09 23:44
 横から失礼します。

 >『解決すべき点は、質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである』という主張が間違っていることを示しています。

 「要塞に関しては」間違っていることを示しているとは思えません。

 「要塞を移動させることに関しては、技術上、なんら問題は無い。解決すべき点は、質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである」

 この発言を見る限り、「臨界点」というのは要塞の質量をはるかに越えたところに有ると考えるのが自然では?
 理論上の臨界点がイゼルローン要塞以下の質量だというのなら、実際にやってみたら、ガイエスブルクの質量でもワープできない可能性はありますよ。
 それにもかかわらず一言も言及してないとは思えません。

 それに、「臨界点」があることの証明がまったくされていません。
 「臨界点」という以上ある質量を越えた物体が近くにあると、例えそれが1gでもワープできないということになりますが。
 ただ単に、大質量が近くにあるとワープが困難になり、恒星クラスだと不可能という話かもしれません。
 そして、後者なら、イゼルローンがワープできないということは、ガイエスブルクのワープが非常に危険かつ困難ということになると思うのですが。

 ちなみに地球と太陽の質量を比べた場合地球の質量は「無視できるほど」小さいです。
 太陽は1.989×10の30乗Kg
地球は5.972×10の24乗Kg


No. 6179
Re:絶縁体が電気を通さないというのは誤りである。
Night 2005/01/10 01:06
>  >『解決すべき点は、質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである』という主張が間違っていることを示しています。
>
>  「要塞に関しては」間違っていることを示しているとは思えません。
>
>  「要塞を移動させることに関しては、技術上、なんら問題は無い。解決すべき点は、質量とエンジン出力の関係、ただそれだけである」
>
>  この発言を見る限り、「臨界点」というのは要塞の質量をはるかに越えたところに有ると考えるのが自然では?
>  理論上の臨界点がイゼルローン要塞以下の質量だというのなら、実際にやってみたら、ガイエスブルクの質量でもワープできない可能性はありますよ。
>  それにもかかわらず一言も言及してないとは思えません。

 この話はパンツァーさんの主張への反論から始まっています。
 パンツァーさんの元々の主張とは、以下の通りです。

<『その技術自体の限界はどこにあるのか』という問いに対しては、以上述べたように、作品設定を自然に解釈すれば、ワープ移動に関しては、そんな限界は設けられていない、という回答を提出します。ただ、質量増大に応じて、上の(2)(3)の理論の影響が、あまりにも大きく響く場合と言うのは、ありえるでしょうが。>

 その前の文脈も踏まえて言い換えるなら、

『質量とエンジン出力の関係さえクリアすれば、あとはエンジンの同時作動と時空震の問題が大きく響かない限り、ワープできる質量に限界は設定されていない』

 ということになります。
 この臨界点の話は、上記の主張へのアンチテーゼです。上の条件を全てクリアしてもなお、大質量ワープが失敗する状況が存在するということを明確にしたかったのです。


>  それに、「臨界点」があることの証明がまったくされていません。
>  「臨界点」という以上ある質量を越えた物体が近くにあると、例えそれが1gでもワープできないということになりますが。
>  ただ単に、大質量が近くにあるとワープが困難になり、恒星クラスだと不可能という話かもしれません。
>  そして、後者なら、イゼルローンがワープできないということは、ガイエスブルクのワープが非常に危険かつ困難ということになると思うのですが。

 確かに、「臨界点」というと、その点を超えた瞬間に全てが引っくり返るというイメージになりますが、徐々にワープの危険度が増加していき、最終的にワープ不可能になるという形になるかもしれません。そういう意味では、語が不適切だと思われます。

 なお、この臨界点(をどう呼び直すべきか。限界深度?)が具体的にどの辺りになるかは、先に書きましたように計算不能です。
 ですが、それがガイエスブルクの質量のかなり近くにあったなら、確かに、シャフトはそれについて発言していたはずと考える方が自然です。ですので、それは、少なくともシャフトが『特に危険はない』と思うくらいには遠くにあるのでしょう。(シャフトがどれだけ安全度を見込んだかは分かりませんが)


>  ちなみに地球と太陽の質量を比べた場合地球の質量は「無視できるほど」小さいです。
>  太陽は1.989×10の30乗Kg
> 地球は5.972×10の24乗Kg

 はい、こういう話は良く分かっています。恒星アムリッツァの質量が具体的にどれだけかは分かりませんが、それと比べるとガイエスブルクもイゼルローンもおそらく芥子粒よりもはるかに小さく、両者の違いなど微々たるものに見えるでしょう。

 ですが、恒星アムリッツァは、あくまで『大質量が近くにあったせいでワープが失敗した』と確認された具体例がこれだけであるというだけなので、実際の下限はもっと下にあってもおかしくありません。
 艦船が、惑星の地表上からいきなりワープしないのは、これが原因だと思えなくもないのですが、良く分からない事について語るのは止めておきます。


No. 6180
静止状態の質量と、加速状態の質量との質的相違
パンツァー 2005/01/10 01:23
以下の根拠は、関係があるのでしょうか?

> (以下、銀河英雄伝説1巻黎明編の第9章Iより。徳間ノベルスだと1巻P225下段)
>
> <キルヒアイス艦隊の急行動を見て、その進行方向に居あわせた同盟軍の戦艦がパニックに襲われ、大質量のちかくであるにもかかわらず、跳躍したのである。
>  必ずしも珍しいことではなかった。逃走不可能を知った宇宙船が、確実な死より未知の恐怖を選んで、進路の算定も不可能なまま亜空間へ逃げ込んでしまうのだ。逃走ができぬとあれば、降伏という方法もあり、その意思を示す信号も定められているのだが、逆上した者は、それに気づかない。亜空間に逃げ込んだ人々がどのような運命に迎えられたか、それは死後の世界について定説がないのと同様、誰も知らなかった。>

ここで言われていることは、単に、
「ワープする質量体の近くに、他の大質量体が存在すると、進路の算定が不可能になる」
ということですよね。
「ワープする主体の質量の大きさが増加すれば、最終的にワープできなくなる」
という結論には、全然ならないと思いますが。

大体、相対的な大質量体の影響により、目的地に到達できない、という話であって、ワープそのものが行えないと言うわけではないですね。しかも、逃走中のように時間的余裕が無い場合に、大質量体の影響を加味した航路計算を行い得ないだけの話で、通常(非戦闘時)なら、ワープできるのかもしれません。

> (1) ワープ対象となる大きな質量を用意する。
> (2) シャフト方式の大質量ワープを行うため、質量の表面に複数のワープエンジンを取り付け、同時起動させる。
> (3) しかし、これらのワープエンジンは必然的に『大きな質量の近く』で動作することになる。よって、最初に用意した質量がある程度以上大きい場合、ワープを正しく行うことはできず、大質量ワープは失敗する。

(3)と、恒星アムリッツァとに関して、明らかに異なる状況と言えば、
ワープエンジン付き質量体(ガイエスブルグ要塞等)のワープに際して、
恒星アムリッツァは静止状態にあるのに対して、
各ワープエンジンに対応する部分の質量は、加速状態にある、ということです。

地球は(確か)時速1350km程度で自転していますが、地上の人間は止まっている限り、空気抵抗の影響を受けたりすることはありません。地上の人間が風防のない単車などで走行すれば顔面にもろに風圧を感じますが、これは静止している地球の空気に対して、相対的に、単車上の人間が移動したためです。

ワープエンジンにより加速されている部分の質量の影響と、その外部の静止している質量の影響とは、質的に明らかに異なるのではないでしょうか。

したがって、Nightさんの結論部
>  この話は、いくつかの興味深い示唆を与えてくれます。
より続く「第一には」「第二には」の結論は、前提が崩れているので、成り立たないでしょう。

次いで、結論部の「第三には」について

>  第三に、この問題は、素人考えでは理論的に正しそうに見えても、実際には見落としていることがあるということの実例です。私は、当初、このような問題がありうるということに全く気がついていませんでした。それは、パンツァーさんも同様でしょう。結局、専門家でない我々には良く分かっていないのです。ワープが実際どういうものかも、それが抱える問題も。
>  言うなれば、それは、航空力学も実際の飛行機もほとんど知らぬ素人たちが、飛行機について議論しているようなものです。それまで模型飛行機しか知らなかった人々が、いきなり数百トンもの実用機を見せられ、「さあ、この3倍の大きさの実用機は、飛べるか飛べないか」と聞かれたとします。どう答えるか。
>  実際に3倍の飛行機が飛べるか飛べないかを判定するには、航空力学と実験の助けを必要とします。少なくともそこで『いや、模型飛行機の数千万倍の重さの実用機が飛べるなら、その3倍程度の実用機が飛べない確率は0.0001%です』などと言ったところで、その見積もりが正確である可能性など、万に一つもないでしょう。
>  我々に可能な唯一の答、それは、『いや、我々は飛行機について詳しいことは知らないので、飛べるかどうかは分かりません』というものではないでしょうか。

同じだと思いますよ。
はっきり言って、ベースは質量とエンジン出力の関係ですよ。
飛行機の場合は、空気の存在が無視できないですよね。つまり、重力方向については、浮力による影響が、エンジン出力の不足分を補ってくれるわけであり、水平方向に対しては空気抵抗と言う形で、エンジン出力の抵抗となるわけです。この空気抵抗の影響度は、機体形状によっても、変化するものですね。
エンジン出力の増大も一般に可能ですね。これは、プロペラ式や、ジェットエンジン、さらにはロケットエンジンといった、エンジン自体の方式の変更や、同じ方式のエンジンであっても出力に大小を与えることによって、達成されています。
機体強度の問題に関しても、実用性やコストを無視すれば、(質量を増大させることで)いくらでも頑丈に作りうるわけで、それをエンジン出力で補えれば対応できるはずです。

現在の航空機は、重量限界に達しているわけではないでしょう。
コストとか実用性を度外視すれば、三倍どころか10倍でもそれ以上でも、まだまだ重い航空機をいくらでも飛ばせるのではありませんか。
(が、飛行機の底面にズラリと車輪を並べても過重を支えきれないとか言う限界は、容易に起こりうるかもしれませんが)

第二次大戦中、アメリカ軍は、B29(別名:スーパーフォートレス、超要塞)などという爆撃機を製造しましたが、この前身のB17爆撃機などと比べても、倍くらいは重いのじゃないのでしょうか(ちょっと調べきれておりませんが)。

>  実際に3倍の飛行機が飛べるか飛べないかを判定するには、航空力学と実験の助けを必要とします。

これで、十分なんですよ。
この「実験の助け」というのは、なんらかの理論に基づいて作ってみたものが、本当に理論通りに動くかどうかの検証に当たるわけです。
Nightさんが「航空力学」と呼んでいる部分、つまり理論部分で道筋が立てられたなら、あとは実験するしかないのです。
上で述べたとおり、Nightさんの言う「航空力学」上の問題では、別に、3倍どころか10倍でも問題が起こるとは思えないですね。必要なエンジン出力さえ確保できれば。

帝国軍も、ガイエスブルグ要塞に関して、
「小規模の実験がかさねられ、要塞のワープインおよび(以下略)」(3巻雌伏篇4章V4段落目)
実験を積み重ねて、実施段階の不具合を潰していったわけですから。
同盟側においても、既知の理論で問題が無さそうに思えたら、後は実験を積み重ねて検証するしかないのは、当然のことです。

なにせ、宇宙の方が、空中の場合よりも話が単純ですので、上で述べた車輪の話のような問題も発生しないわけです。


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