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銀英伝考察3
銀英伝の戦争概念を覆す「要塞」の脅威
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No. 3603
もうおやめになった方が
Night 2003/02/09 04:25
 以前の移動要塞議論の頃から見ていたROMですが……。

 余計なお節介かもしれませんが、この話題に関する議論は、もうおやめになった方
が良いかと思います。これ以上議論しても、平行線になるばかりで、肯定派・否定派
双方の納得できるような合理的結論に至ることはないと思います。事実、以前の議論
もそのようになったからこそ終わった訳ですし。
 なお、私自身のスタンスとしては、Kenさんの発言中の「移動要塞の恒久的な運用は、
銀英伝の記述だけでは、可能であると証明するにも、不可能と証明するにも、不十分
である」というものです。これは明らかに「移動要塞は不可能である」とするスタンス
とは異なるものです。


(1) 移動要塞問題に含まれる技術の問題
 移動要塞問題には作中世界における技術的な問題がいくつも含まれており、このよ
うな問題に対して是なり非なりの判断を下すのに充分な材料は、銀英伝の記述中には
ないと思います。

 例を挙げるとすれば、イゼルローンの移動要塞化工事についてです。作中では、確
かにガイエスブルク要塞が移動要塞に改造された訳ですが、これと同じ理論によって、
イゼルローンを移動要塞化できるのでしょうか?
 記述によると、ガイエスブルクの直径は40〜45kmで質量は約40兆トン。これに対し、
イゼルローンの直径は60km。イゼルローンの半径はガイエスブルクの1.5〜1.3倍で、
単純に考えれば質量は3.38倍〜2.37倍。
 ガイエスブルクは輪状に取り付けられた12基のワープエンジンと通常航行エンジン
によって移動するわけですが、イゼルローンの場合はどうなるのでしょう。

・体積・質量が3倍近くになるわけですが、エンジン数も単純に3倍にすれば大丈夫な
 のでしょうか?

・ワープエンジンの配置は同じく輪状でよいのでしょうか。それとも二重の輪や球状
 にするような独創性が必要なのでしょうか?

・ワープエンジンは完全に同調する必要があるようですが、12基のエンジンの同調と
 36基のエンジンの同調の難易度は同等なのでしょうか、格段の差があるのでしょう
 か?

・通常航行時のエンジンについてですが、質量が3倍になった時、実戦に耐えうる機
 動性を確保できるでしょうか。

・巨大質量のワープ時の時空震に関して帝国側で懸念されていたようですが、イゼル
 ローンのワープの場合もガイエスブルク同様、問題なしなのでしょうか。

 ワープの理論も実験データも持っていない我々には、これらの問題に対して「そん
な事は簡単だ」とも「難しくて不可能」とも判断できる材料がないわけです。
 過去ログでは、冒険風ライダーさんは、イオン・ファゼカス号による大質量ワープ
を判断材料にしていたようですが、それも奇妙な話です。大質量ワープは銀英伝3巻
の時点では紛れもなく新技術だったわけですから、それ以前のイオン・ファゼカス号
はワープできなかった、と考えるのが自然だと思います。
(それとも、知らないうちに帝国も同盟も技術レベルが低下したのでしょうか……)


(2) 書かれていないことは否定も肯定もできない(しにくい)
 結局、イゼルローンが移動要塞化されることはなかったわけですが、それはヤン達
が全員無能で単純にこの作戦を思いつかなかったのが原因なのでしょうか。それとも、
この新作戦に関する研究チームは発足されたのだが、これまでの過去ログで散々検討
されたような、技術的・経済的・時間的・心理的・政治的な障害によりプランが棄却
されたのが原因なのでしょうか?
 これに関しても、前者とも後者とも我々には判断がつきません。前者も後者も、そ
れを否定するに充分な記述は銀英伝の中にない(ように見える)からです。
 それも、当たり前といえば当たり前の話です。銀英伝という小説は、ラインハルト
とヤンという二人の英雄の生き様の物語であり、移動要塞の是非を検討するためのも
のではないのですから。

※ただ、どちらがよりもっともらしい解釈か、と聞かれれば、私は後者を選びます。
作中、ヤンやその幕僚は有能な人材として描かれており、それに逆らってまであえて
彼らを無能とせずとも、イゼルローンが移動要塞化されなかった理由は説明できてい
るからです。


No. 3605
Re:これは
Ken 2003/02/09 05:44
不沈戦艦さん、

>あくまで「こういう風にやるべき」という「例」として出したものですので、「これをベースに進めろ」とか、「必ずレス寄越せ」とかいうつもりは全くありません。

はじめに、この#3596でのご発言にレスを入れなかったことを、お詫びします。言い訳をもうしますと、あの投稿がツリー構造を示すインデントで見る限りは、#3585の冒険風ライダーさんの投稿へのレスになっていたのと、私のハンドル名が文中になかったので、最初は、私へ向けて発した投稿とは思わなかったのです。せっかくアドバイスをいただいたのに。もっと注意して読むべきでした。

以下に述べることが、不沈戦艦さんへの回答として認めていただけるかどうかは分かりません。とりあえずは、私が提供できる最善のものを提供します。

結局、今回の冒険風ライダーさんとの議論の中で、科学的考証という切り口では、私は三つの異なる立場を、時間経過とともに切り替えながら採ったと思います。

1.最初は、自分の中の当然の常識に基づいて、私が知る現実の物理法則に準拠して、正否を判断しようとしました。
2.次に、冒険風ライダーさんの主張を入れ、現実の物理法則を、本議論に限っては持ち込まないことを了承しました。
3.最後に、現実の物理法則の復権を、ライダーさんにお願いしました。

そして、ご存知のように、3に関する合意がえられなかったので、私たちの議論が終了したのです。

>「作品論争」である限り、「銀英伝の記述から導き出した推論」を根拠にあげれば、「証明」としては十分ではないですか。

私もそう思いましたので、2でライダーさんに同意したのです。また、私はガンダムはまったく知りませんが、不沈戦艦さんが挙げられた例は、理解できるつもりです。もしも、銀英伝の中に、ラインハルトが移動要塞を駆使して同盟領まで攻め込んだという記述があり、私が「そんなことは物理学的に不可能だ」と否定したなら、それは不沈戦艦さんが言われるとおり、作品世界を破壊する「空想科学読本的突っ込み」にすぎません。

しかし、銀英伝の記述のなかで、ガイエスブルグは同盟領まで到達して「いない」のです。仮に同盟領まで航行する能力があったとしても、ヤンに破壊されたことで、それを証明する機会を永久に失ったのです。これが銀英伝の記述です。

そして、この点は、移動要塞は可能であるとする他の「証拠」についても同じです。イゼルローンは、銀英伝の全記述を通して、静止要塞として始まり、静止要塞として終わりました。ヤンやユリアンの、「自給自足で数十年持ちこたえる」という戦略も、そこにはイゼルローンを移動要塞にする、という計算因子は入っておりません。これが銀英伝の記述です。帝国へ侵攻した同盟軍や、ラグナロック時の帝国軍が補給の心配をしていないといっても、それは艦船の話で要塞の話ではないのです。これが、銀英伝の記述なのです。

「再度整理しました」とタイトルをつけた#3579の投稿は、つまりはこのことを説明しようとしたのです。説明が冗長に、あるいはライダーさんが言われたように「弁護士」のような口調になったのは、私の表現力不足です。

ともあれ、本来ならば、ここで「移動要塞が可能であるという証明はできない」として、決着がつくはずでした。

ただ、私はこの問題は考察対象として面白いし、昨年盛り上がった(のか、荒れたのか分かりませんが)議論に、自分が参加できなかったことが残念で、なんとか銀英伝の記述に基づき、可・不可いずれの結論にいたるせよ、移動要塞の可能性にもっと明確な答えを得られないものか、と考えました。そのためには、銀英伝の記述が最終回答を与えぬままに終わった「空白の部分」を埋めねばなりません。

そして、空白を埋めるための手段として、一度は捨てた「現実世界の物理学」を利用したいと思ったのです。理由は、先の発言で述べたとおり、現実世界の物理は、現実世界において、ありとあらゆる場合を実験で直接確かめられない、という「空白」を埋めるために利用されるからです。

実際に冒険風ライダーさんと論争をしていたときは、上のように論点をまとめられず、混乱を招いたことは、申し訳なかったと思います。


No. 3607
徹底反論
a-ru 2003/02/09 07:30
度々横レス失礼します。
冒険風ライダーさん(以下氏と省略させていただきます)が指摘された「要塞が恒久的な自給自足が可能である」ことは、銀英伝ファンとしては悲しむべき事実であり、それを指摘した氏は、賞賛されるべきでしょう。そして、このような興ざめの設定をした田中芳樹氏は、弾劾されるべきミスを犯したと言えるでしょう。この悲しい事実に対して、過去の投稿者を含めてほぼ認めていると言っても良いでしょう。

 しかし、ここからが問題です。氏は、要塞性能とガイセスブルク要塞が移動した事実を元に「移動要塞」という新兵器を考案し、このような画期的な兵器を思いもつかなかった(という事実も不明であるのに)論で、二人の英雄であるラインハルト、ヤンを無能、愚者と告発する暴挙に出たのです。無論、そのような論を認めることは「掟(ルール)破り」になります。銀英伝が「二人の英雄を軸にした英雄叙事詩」という根本を覆してしまうからです。Ken氏、八木氏などの否定派が反論をするのも極々当然でしょう。また、Ken氏は「二人の名誉毀損に対して、その当人は過去の人物であり、反論することが出来ない」思ったからこそ弁護人という形で受けて立ったと私は考えています。
 私自身としては、二人を弁護する気はそれほどありませんが、このようなルール改正をするのならば、もっと精緻に検証してくれなければ納得できないという立場です。その論理に隙が感じられないのならば、全面的に賛同します。
 もう一つ、みなさん簡単に無能、愚かと言いますけれど、現在生きている人に対してならば、その人にはまだ名誉挽回の機会がありますが、過去の人は、直接反論することが出来ないこと、その人達の愚かさは、人間共通の愚かさであり、彼らの有能さはその人個人から発露しているものです、「一事が万事」とはいいますが歴史を語る上でそういう態度で望むのはどうでしょうか。
 長くなりました。では、反論を始めます。

 このレスでは同盟側の実現性について論じているので、その反論を論じます。私の論点は、@移動要塞は技術的には可能であるが、実用までは少なくとも数年はかかるA兵器としての価値B実用化したと仮定して、民主主義をどのように残すのか、この三つの疑問に対して答えていただきたいです。
 @ここは、製造技術、戦術・戦略技術を論じます。氏は、「要塞」と「移動要塞」は対した違いがないと考えておられるようですが、私はそうは思いません。「似て非なるもの」だと断言します。
 まず設計の戦略的・戦術的意味が違います。 要塞は、イゼルローンを例に取るとイゼルローン回廊という地形効果を利用した「関門拠点」といえますし、ガイセスブルクは「地方戦略拠点」(推察)だったのでしょう。それに対して、氏の言う移動要塞は「能動的拠点」といえます。設計思想が移動と停止、攻撃と防御など正反対です。これは、まさしく新兵器です。
 ただし優れた戦術家は戦術上、当然兵器の性能、効果は考慮に入れているでしょう。しかし、新兵器である以上実績は無いわけです。そのような信頼できない物に頼らざおえないという時点で勝つことは難しいのではないでしょうか。では、ガイセスブルクについてはと言う疑問があると思いますが、これは、要塞の一形態だといえます。移動したのはイゼルローン前までで、その後は戦闘中に効果的に動いたと言う事実はなかったのでは、試作機と思えます。
 ただ動けは解決と言うのは安直スギでは?有用に動いたか?の方が遥かに重要だと思います。
 次に改造秘匿問題ですが、氏は時間的に問題ないと言っておられますが、それは読者(後世の人)と言う立場から論じているからでは?
 イゼルローンは主戦場であり、帝国もそこを拠点と分かれば追撃してくるのは時間の問題です。作中では、主戦、慎重論があると言っていますが、そんなことはスパイでもいない限り、分かるはずもありません。
 また、要塞に対する攻撃方法がヤンも分かっているし、ラインハルトも分かっているわけですから、まずやらなければならないことは、「戦艦修復後、早急なる撤退」という原作通りの考えに行きつくと思うのですがいかがでしょう?
 私が疑問に思うことは二つ、「移動要塞は有用に動くのか」「攻撃される危険性の中で、工事を進めることができるのか」です。
 上記この問題がクリアーしたからと言ってもAの問題も解決していただかなければならないですが、ここで止めます。ぜひ、私の疑問を解決していただきたいです。


No. 3610
Re:徹底反論
S.K 2003/02/09 17:34
 a-ruさん、要塞外壁の件ではご評価感謝いたします。
 そういう訳で自重してたんですが場荒しにならない程度に肯定派的解説を少々御披露いたします。
 冒険風ライダーさん、穴だらけでしたら御叱責下さい。

>@移動要塞は技術的には可能であるが、実用までは少なくとも数年はかかる

 まず帝国側については「ガイエスブルグが成功したので無問題」ではないでしょうか。
 別にシャフト技術総監が個人的特異技術を駆使した産物ではないのでガイエスブルグ改修時の資料さえあれば十分再現可能でしょう。
 加えて「手柄急ぎのシャフトの急かし」がないのでガイエスブルグの3ヶ月に対して半年〜1年かける事も帝国側なら可能ですし、ミュラーがおそらく持ち帰ったであろう運用ノウハウから改良さえ可能なはずですが誤解がありますか?

 同盟側は「“できるかもしれないのでやってみる価値”がある」(原作6〜8巻時点)が妥当な結論ですね。
 古来の戦争のセオリーで「援軍のない篭城戦は必敗する」は例外は無かったはずでかつ「防御側に対して3倍以上の戦力で攻撃した場合の勝率は高い」も攻撃側に致命的な錯誤がない限りおおむね通用します。
 そして流石にラインハルトもこの点についてはほぼ戦略的失策を犯していないのでおそらくフィッシャー戦死後の「回廊の戦い」は「ヤン艦隊壊滅(もしくは壊滅的打撃)の後回廊両側面からの艦隊砲撃か漫画版のシトレ元帥が試みた無数の無人艦特攻などで要塞陥落」の流れに本来なっていた可能性は極めて高いと思うのですが。
 しかし逃亡できるなら話は別です。
 この時点でヤンは「無尽蔵の補給港」を持って艦隊戦力と共に逃げてこそ無用の人死にを避け勝機を待つ事ができたのです。
 これについては「駄目で元々」で移動要塞プランに着手して非難されるいわれはまずありません。
 おそらく一番あの時点で混乱が少なかったであろう「投降して帝国に釈明する」を選択できなかった時点でどうあれヤンは「戦う」選択をしたのですから「100%の敗北」を避けるあらゆる努力を試みるべきではなかったでしょうか。
 ただし私は5巻以前のヤンは多分「有用だとわかっていてもやらなかった」と考えます。
 理由は「ラグナロック作戦」発動までは「軍事的投機を触発しかねない軍事ハードプラン」をおそらくヤンは忌避してあくまで「回廊制圧」の事実に基づく「綱渡りの平和」を希求しただろうと推測されるからです。
 以上、同盟については状況の変化で「移動要塞プラン」への取り組みも変化があると判断します。

>A兵器としての価値

「単体戦闘能力が貧弱なので空母は無価値」とはお考えにならないと思います。
「それ自体が強大な戦闘力を有する閉鎖系生活サイクルを内包した移動軍港」が存在するならその価値は疑い様がないと思います。

>B実用化したと仮定して、民主主義をどのように残すのか

 ヤン艦隊サイドの事情に限っていい疑問ですね。
 冒険風ライダーさんの考察の移動要塞論過去ログで既出の意見で恐縮ですが「逃げて逃げて逃げ続ける」でいかがでしょう?
 もう少し恵まれた条件でもう一度「長征一万光年」をやる訳です。
 それで以前六三さんが「人的資源は無限な訳がない、裏切り者だって出るだろうし必ず瓦解する」という意見を出されましたが、それって「逆境における国家体制の存亡の岐路」という状況で必ず起こる言ってみれば人間の性とか業とかその類ですよね。
 はっきり言ってそこまで移動要塞に責任を転嫁するのは無理というものでしょう。
「帝国の支配下からの脱出の可能性」を示すだけでも過分に役割を果たしているとするべきではありませんか。

 あと@の補足ですが「工事の安全性」については移動要塞考察のA〜Cと「ラインハルト本隊到着までにそれなりの時間があり、先遣隊のファーレンハイト・ビッテンフェルト2個艦隊は要塞攻略に着手するどころか駐留艦隊に敗走の憂き目を見た」史実をご覧の上御勘案下さい。

 最後に「移動要塞の有用性」と「移動要塞を有効に運用できなかったとしてのヤン・ラインハルトの評価」は分けて反論可能ですしそうした方がいいんじゃないかと思いますよ。
「視野が狭いので功績を全否定するのは極論である」とか「考えつかなかったのも一つの史実でありかつ他の全人類全てが発想しなかったのだから比較論として『銀河英雄伝説』においてヤンとラインハルトのみ酷評するのはアンフェアである」とかは実は私も思わないではないです。

 長文かつ勝手な見解を冒険風ライダーさん、a-ruさん、ご覧の全ての方々にお詫びいたします。


No. 3611
Re:これは
不沈戦艦 2003/02/09 18:45
> 不沈戦艦さん、
>
> >あくまで「こういう風にやるべき」という「例」として出したものですので、「これをベースに進めろ」とか、「必ずレス寄越せ」とかいうつもりは全くありません。
>
> はじめに、この#3596でのご発言にレスを入れなかったことを、お詫びします。言い訳をもうしますと、あの投稿がツリー構造を示すインデントで見る限りは、#3585の冒険風ライダーさんの投稿へのレスになっていたのと、私のハンドル名が文中になかったので、最初は、私へ向けて発した投稿とは思わなかったのです。せっかくアドバイスをいただいたのに。もっと注意して読むべきでした。
>
> 以下に述べることが、不沈戦艦さんへの回答として認めていただけるかどうかは分かりません。とりあえずは、私が提供できる最善のものを提供します。
>
> 結局、今回の冒険風ライダーさんとの議論の中で、科学的考証という切り口では、私は三つの異なる立場を、時間経過とともに切り替えながら採ったと思います。
>
> 1.最初は、自分の中の当然の常識に基づいて、私が知る現実の物理法則に準拠して、正否を判断しようとしました。
> 2.次に、冒険風ライダーさんの主張を入れ、現実の物理法則を、本議論に限っては持ち込まないことを了承しました。
> 3.最後に、現実の物理法則の復権を、ライダーさんにお願いしました。
>
> そして、ご存知のように、3に関する合意がえられなかったので、私たちの議論が終了したのです。
>
> >「作品論争」である限り、「銀英伝の記述から導き出した推論」を根拠にあげれば、「証明」としては十分ではないですか。
>
> 私もそう思いましたので、2でライダーさんに同意したのです。また、私はガンダムはまったく知りませんが、不沈戦艦さんが挙げられた例は、理解できるつもりです。もしも、銀英伝の中に、ラインハルトが移動要塞を駆使して同盟領まで攻め込んだという記述があり、私が「そんなことは物理学的に不可能だ」と否定したなら、それは不沈戦艦さんが言われるとおり、作品世界を破壊する「空想科学読本的突っ込み」にすぎません。
>
> しかし、銀英伝の記述のなかで、ガイエスブルグは同盟領まで到達して「いない」のです。仮に同盟領まで航行する能力があったとしても、ヤンに破壊されたことで、それを証明する機会を永久に失ったのです。これが銀英伝の記述です。
>
> そして、この点は、移動要塞は可能であるとする他の「証拠」についても同じです。イゼルローンは、銀英伝の全記述を通して、静止要塞として始まり、静止要塞として終わりました。ヤンやユリアンの、「自給自足で数十年持ちこたえる」という戦略も、そこにはイゼルローンを移動要塞にする、という計算因子は入っておりません。これが銀英伝の記述です。帝国へ侵攻した同盟軍や、ラグナロック時の帝国軍が補給の心配をしていないといっても、それは艦船の話で要塞の話ではないのです。これが、銀英伝の記述なのです。


1.ガイエスブルグ移動要塞は、元の位置→ヴァルハラ星系→イゼルローン要塞という移動を「作中事実」としてやってのけた。また、その際にあれほど補給を重視するラインハルトが、エンジンの同調という技術的問題について言及してはいても、移動要塞の補給については気にもしていない。
2.重量としては、ガイエスブルグやイゼルローン以上の、「長征一万光年」のイオン・ファゼカス号のような「超巨大ドライアイス船」が、奴隷階級に落とされていたような連中の、帝国からの脱出に使用できたという「作中事実」がある。

 で十分でしょう。帝都からイゼルローン回廊までだって、大した距離なのです。「イゼルローン回廊までは、安全な帝国内の移動だったから、補給を繰り返しながら何とか行けただけかも知れない」って説明の「作中事実が裏打ちしている根拠」は何なのですか。Kenさんは、何も示していないではないですか。「私が知る物理法則」を繰り返しているだけで。それに、燃料補給を繰り返せば何とかイゼルローン回廊まで進める程度の航続距離しかないような代物を、イゼルローン要塞の攻撃に実戦投入するほど、ラインハルトは「莫迦」である、と本気で主張するんですか。昔の例ですが、太平洋の日米戦で戦闘機の作戦行動範囲は、「航続距離の1/3」が妥当なところですよ。1/3の燃料で戦場まで到達し、1/3の燃料で空中戦、1/3の燃料で基地や空母まで帰還、という割りふりです。イゼルローンに到達するのがやっと、なんて代物をイゼルローン攻撃に使用する、なんて「狂気の沙汰」としか言いようがありませんね。2.についても、「イオン・ファゼカス号が同盟領まで逃げるのに使用された訳ではない。航続距離は案外短かったかも知れない」なんてのは、これもまるっきり話にも何にもなりはしませんよ。帝国から脱出し、同盟を建国した人々ってのは、航続距離が案外短く、逃げ切れるかどうかも分からないような代物で、脱出を敢行するほど「莫迦」なんですか。

 また、「艦船には燃料の心配はないにしても、要塞についてはそれは言えないかも知れない」なんて、そんな無茶をよく言ったもんですね。あなたがすべきなのは、「かも知れない」を繰り返すことではなく、「要塞の移動には、膨大な量の燃料が必要であって、その補給に難儀していた」ということを裏打ちする「作中事実」を「銀英伝の記述」の中から探し出して指摘することですよ。それができない限り、あなたの主張には何ら説得力は見出せません。それに、普通に考えれば、図体がでかい方がスペースに余裕がありますから、何をするにも有利になるんですけどね。当然、燃料に関してもそれは言えます。駆逐艦より戦艦大和の方が航続距離が長い、ということをまさか理解できないとは仰りますまい?セスナ機よりB747の方が、遠距離まで移動できますよね。「図体が大きくなると航続距離が減るかも知れない」ってどういう理屈なんですか。


> 「再度整理しました」とタイトルをつけた#3579の投稿は、つまりはこのことを説明しようとしたのです。説明が冗長に、あるいはライダーさんが言われたように「弁護士」のような口調になったのは、私の表現力不足です。
>
> ともあれ、本来ならば、ここで「移動要塞が可能であるという証明はできない」として、決着がつくはずでした。

 単にあなたが「私は認めたくないんだ!」と言い張っているだけでしょ。確かに、決着はついてますけどね。あなたが認めたくないだけで。あなたが何度「認めたくない」と繰り返したところで、「反論」には全くなっていないんですよ。


> ただ、私はこの問題は考察対象として面白いし、昨年盛り上がった(のか、荒れたのか分かりませんが)議論に、自分が参加できなかったことが残念で、なんとか銀英伝の記述に基づき、可・不可いずれの結論にいたるせよ、移動要塞の可能性にもっと明確な答えを得られないものか、と考えました。そのためには、銀英伝の記述が最終回答を与えぬままに終わった「空白の部分」を埋めねばなりません。
>
> そして、空白を埋めるための手段として、一度は捨てた「現実世界の物理学」を利用したいと思ったのです。理由は、先の発言で述べたとおり、現実世界の物理は、現実世界において、ありとあらゆる場合を実験で直接確かめられない、という「空白」を埋めるために利用されるからです。

 だからここが完全に「ずれている」なんですって。「現実世界の物理学」のことはお忘れなさいよ。それと「かも知れない」「かも知れない」を繰り返すのも、お止めになるべきです。冒険風ライダー氏は、そんなことは言ってませんよね?「かも知れない」ということは。「これこれこういう理由で、こういう結論になる筈である。それに関する銀英伝の作中の証拠はこれ」という形で示してはいても。

「かも知れない」の連発では「自分が認めたくないだけ」と思われても、仕方ありませんよ。あなたは、すでにそういう状態に陥っています。


No. 3613
議論の前提条件として
パンツァー 2003/02/09 19:16
> 要するに、私としては、アーレ・ハイネセンたちはイオン・ファゼカスを234兆トンのまま飛ばせるよりも、船体を軽くするように努力をしたはずではないか、と言いたかったのです。あるいは、冒険風ライダーさんとのやり取りの中で用いた厳密な定義をするなら、「ハイネセンたちがイオン・ファゼカスを軽くしようとした可能性を否定証明はできないでしょう」ということでした。

冒険風ライダーさんも回答されているように、「船体を軽くする」ことを重視したのであれば、そもそも推定重量234兆トンもの塊を切り出す必要がないわけです。
むしろ、耐久性重視を目的として、十分な防壁を備えることを意図した、と考える方が自然ではないですか。例えば、宇宙空間航行時における浮遊物との衝突等にも耐える必要があるでしょうから。


> ところで、パンツァーさんが挙げられた他の疑問に応える前に、もしも差し支えなければ、この移動要塞問題を論ずる上でのパンツァーさんの基本スタンスを確認させていただいても、よろしいでしょうか?あるいはこれまでの発言で、すでに明らかにされたかもしれませんが、どうか再度説明をいただけるとありがたいのです。基本的な前提に合意がないと、冒険風ライダーさんと私の間の議論のように、果てしなく空回りし、互いの論点が相手に通じないと思われますので。
>
> 1.パンツァーさんは、銀英伝の世界が私たちの世界と、同じ物理法則に従うという立場をとられますか?それとも、私たちの知らない物理法則に従う世界だと思われますか?

表現が二つ出てきていますね。
A「私たちの世界と同じ物理法則」
B「私たちの知らない物理法則」

Aは、物理法則というものが存在しているが、私たちが知っているか否かを問いませんよね。
Bは、物理法則というものが存在している上で、私たちが知っている(現在正しいと認識している)ものに限定されますよね。
意味が異なるわけですよ。

私の考えは、
「私たちの世界と同じ物理法則」に従う立場であるが、「私たちが知っている(現在正しいと認識している)物理法則」とは限らない、というものです。

もう少し説明を追加すると、古代人も、地動説を信じる中世人も、認識している物理法則が違うにせよ、「同じ物理法則」に支配されていることには、かわりないと考えられるからです。

他でも述べましたが、
未来においては、「エネルギー保存則」が破れる可能性だってあるわけですよ。特殊な条件下では。
このスレッドの投稿中にも散見しましたが、「質量保存の法則」は破れることがあります。例えば、核分裂や核融合といった核反応では、質量欠損が生じますから。だからといって、通常一般に「質量保存の法則」は破れるわけではありません。ドライアイスの塊における構造強度の話は、当然銀英伝世界でも通用すると考えています。

また、観察中・・・さんとの一連の投稿においては、「エネルギー保存則」を破らないで説明のつく解釈、について考えてみました。

もっとも、不沈戦艦さんの指摘を援用して考えると、まったく異なる物理体系が存在するという仮定もありえるわけです。

私としては、銀英伝の世界をベースに考えることを最重要事としているので、
「私たちの世界と同じ物理法則」
に従わないとする仮定であっても、構わないと考えています。


>  いうまでもなく、銀英伝を支配する最も重要な「物理法則」は銀英伝の記述である、という点は、冒険風ライダーさんが繰り返し言っておられるとおりです。ただ、いくら銀英伝が大作でも、あらゆる事象をもれなく説明し尽くすことは不可能ですから、どうしても「書かれていない」部分が出てきます。その部分を埋めるのに、私たちの物理法則を使うことを認めるかどうか、ということです。

まず、「書かれていない」部分って、具体的に何を指すのですか。

不沈戦艦さんが指摘されましたが、「ワープエンジン」って、Kenさんの言う「私たちの物理法則」に当てはまるのですか。「ワープエンジン」の原理に関して、今日我々が知っている物理学で納得できるような説明もありませんよね。

つまり、例えば、「艦隊がワープ航行する」という記載に対して、「ワープエンジン」の原理がない部分を、「私たちの物理法則を使うこと」で埋める、ということですか。

今日の我々は知らないが、「エネルギー保存則」が部分的に破れる可能性だって否定しきれないわけです。上で「質量保存の法則」が破れる場合については説明しました。これだって、一時代前の人類はびっくり、ですよ。
銀英伝の記述の中で、「可能だ」とされていることに関しては、原理はよく分からないけど、未来に認識される物理法則では、説明がつくのかもしれないわけです。いくら不満であっても、銀英伝の記述を無視するのであれば、それは銀英伝の根本的否定です。


> 2.パンツァーさんは、「移動要塞の恒久的な運用は可能である」という立場と、「不可能である」という立場の他に、「銀英伝の記述だけでは、可能であると証明するにも、不可能と証明するにも、不十分である」という立場を認めますか?これは、前の両者の妥協案でも中間案でもありません。それ自体が、独立した一つの考察です。これは移動要塞だけでなく、どんな問題についてもいえることです。

もちろん論理的に考えれば、
a「移動要塞の恒久的な運用は可能である」
b「移動要塞の恒久的な運用は不可能である」と、
c「銀英伝の記述だけでは、可能であると証明するにも、不可能と証明するにも、不十分である」
の三通りに分類されますね。この三通り以外の場合は存在しないということです。

ただし、以下述べる理由で、この討論に関しては、bとcとは実質的に同一であると考えます。


>  この点も、冒険風ライダーさんと私の議論が空回りする原因の一つです。ライダーさんは、この第三の立場を認めようとはされず、「恒久移動要塞可能説を否定するのなら、それが不可能であることを証明せよ」と言われています。私にはそうとしかみえません。

冒険風ライダーさんは、
1「銀英伝中の記載」をベースとして「可能なこと」を列挙し、
2「可能なこと」の組み合わせとして、
3「移動要塞が可能」
という結論を導き出しているのです。
これは、自説の論証作業です。

そして、1または2に「誤謬」や「論理の飛躍」があるなら、それを突いてみろ、といっているのです。
1または2の「誤謬」や「論理の飛躍」を指摘できたなら、
「移動要塞の恒久的な運用は可能である」
を否定できるのですから。

つまり、
念のため追加しますが、
aの否定は、bもしくはcにならざるを得ないわけです。したがって、aの否定が達成できれば、それがbであるかcであるかを問う必要はないのではありませんか。

要は、Kenさんが、1または2のどちらかに、納得していないからでしょう。
その納得していない点を指摘すればよいのです。
つまり言い方の問題です。

くれぐれも申し上げておきますが、
「銀英伝世界」の否定につながらない方向で、考えを進めてください。
「銀英伝世界」の否定に繋がる論を展開するのであれば、そもそも論ずることがありません。

それから、
No3572「証明責任2」の記載内容を見て感じたことを記します。

例えば、以下のような記載がありますね。
<タンク半分の燃料で200キロ走ったから、タンクを75%満たせば300キロは走るだろう、という予測はできません。なぜなら、そのような観測結果はどこにもないからです。それどころか、タンク75%の燃料で、200キロプラス1メートルを走れる。という予測すらできません。物理法則を考えないのなら、直接観測された結果以外のいかなる予測も、根拠のない憶測であります。>

これに準じて考えるなら、タンク半分の燃料で100キロ走ることができるか(四分の一の燃料を残して停止すること)、ということすら、予測できないのではありませんか。
ジャンボジェットなどの場合は、燃料を残して着陸ができないため、天候等の変化により引き返す際には、無駄に空中を旋回して燃料を消費します。つまり、100キロ走って停止、みたいなことができません。
この自動車にしたところで、100キロ走って停止の場合の不測の事態の発生を、どうして、以上だけの観測結果から導き出すことができるのでしょうか?
「タンク10分の1の燃料で40キロ走った」「4分の1では100キロ走った」「半分では200キロ走った」という観測結果といった、燃料をすべて消費した観測結果しかないのですからね。

冒険風ライダーさんは、銀英伝を利用した「仮定」を述べているのです。
冒険風ライダーさんの提示した「仮定」は、「移動要塞」に関するものですが、他の「仮定」だって当然ありうるものです。

ここで、「要塞」の移動可能性に対して、「ピタゴラスの定理の証明」に準じるような検証作業を要求するのであれば、例えば、銀英伝中における「艦隊」に対しても同様の検証作業を行って欲しいのです。

「実施の可能性」の程度比較を、作品中で実施されている対象(例えば艦隊)と、「仮定」における対象(例えば移動要塞)とで、「均等」にして欲しいのです。

もしも、作品中で実施されている対象(例えば艦隊)に関しては、記載内容なのだから絶対だ、で終わりにするのであれば、ありとあらゆる「if」の可能性を否定することになります。No3598で私が述べたように、ヤン艦隊がフェザーンを攻略する可能性を論ずることすら、不可能となります。

さらに進めて考えれば、作中に出てくる行動しか許容されない、という宣告に等しいものとなるのではありませんか。

No3579
<元々のドライアイスの質量は、240兆トン弱ですが、(中略)ドライアイス本体の質量は、当初の塊の2.3%−−約5兆トン半になるかと思います。>

このような特殊事情を考慮してよい、となれば、銀英伝中の艦隊の行動一般に関しても、特殊事情が存在していた、ということを認めなければならないことになるでしょう。それを否定しきれない、というわけです。

つまり、この態度を推し進めれば、銀英伝作中の記載事実以外の選択肢は無かった、ということになるでしょう。唯一信頼に値する検証をクリアしたといえるのが、実際に行われたこととされる作中事実のみに限定されるのですから。

この場合は、作中人物も、決められた台本通りに行動する舞台役者のようなものであって、彼らの天才だとか愚劣だとかを論じることすら、無意味ですね。そのように行動するように決定されていたということでしょうから。

要するに、銀英伝作中の記載事実と、「仮定」とで、「均等」な扱い(「均等」な検証作業)をしないのであれば、それは(移動要塞だけを貶める意図での)恣意的な態度としか、みなしようがありません。

議論の前提条件として、以上のことを申し上げます。


No. 3614
Re:これは
Ken 2003/02/09 20:36
不沈戦艦さん、

>ガイエスブルグ移動要塞は、元の位置→ヴァルハラ星系→イゼルローン要塞という移動を
>「作中事実」としてやってのけた。また、その歳にあれほど補給を重視するラインハルト
>が、エンジンの同調という技術的問題について言及してはいても、移動要塞の補給につい
>ては気にもしていない。

私が記憶する限りでは、ラインハルトが「補給」を問題にするのは、常に戦時です。もう少し具体的にいえば、物資の生産・ストック位置を離れて遠征するか、敵の攻撃で自軍の資源(物資、エネルギー、人員、艦船等)が損耗する可能性が大きいか、またはその両方の条件がある場合です。そして、私は、イゼルローン回廊へ入る前のガイエスブルグは、この条件には合わないと思います。

>帝国から脱出し、同盟を建国した人々ってのは、航続距離が案外短く、逃げ切れるかどう
>かも分からないような代物で、脱出を敢行するほど「莫迦」なんですか

帝国から脱出し、同盟を建国した人々は、逃げきれるかどうか完全な自信を得るまで、自由を求めての「賭け」に出られないほど、臆病だったのでしょうか?時間が経過すれば、イオン・ファゼカスを利用するより、もっと成功率の高いチャンスがくるという確信があったのでしょうか?


ただ、申し訳ありませんが、私は、不沈戦艦さんや冒険風ライダーさんを相手に、上のような議論を展開して論争をするつもりはありません。私が納得できないのは、「移動要塞は実現可能である」という結論ではないからです。私が納得できないのは、要するに次の2点です。

一つ目は、「移動要塞は可能である」ことを証明するための理論に「すき」があることです。不沈戦艦さんは、

>数学の定理を証明するような、厳密な科学的考証

を求めるのは誤りだと言われました。あるいは、不沈戦艦さんにとって、「現実の物理法則を否定すること」と「厳密な科学的考証を行わないこと」は同義なのかもしれません。

しかし、私にとっては、両者は同義ではありません。現実の物理に従う科学論にせよ、銀英伝の記述に従う作品論にせよ、何かを「証明」するには、厳密さが要求されます。それができないのなら、「移動要塞を実現できる可能性がある」という表現にとどめておけばよいのです。

二つ目は、ヤンとラインハルトが愚か者である、という結論です。不沈戦艦さんや冒険風ライダーさんのように、銀英伝の作品設定を最大限重視する人が、なぜこのように、設定を大きく乖離する結論を主張されるのでしょうか?


No. 3615
御一考あれ
S.K 2003/02/09 22:06
Kenさん
> 私が記憶する限りでは、ラインハルトが「補給」を問題にするのは、常に戦時です。

 いくら何でも「ガイエスブルグ要塞移動」は「ケンプ・ミュラーによるイゼルローン攻略戦」の第一段階、すなわち最初期の「戦中」です。
「戦略」とは「戦う前に想定されうるあらゆる事態に万全の準備を整える」事であり、この段階でいきあたりばったりな真似をするようなラインハルトであればそれはアムリッツァのフォークと大差ない代物でしょう。
 何故そんな酷い侮辱を「常勝の天才」になさるのですか。


> >帝国から脱出し、同盟を建国した人々ってのは、航続距離が案外短く、逃げ切れるかどう
> >かも分からないような代物で、脱出を敢行するほど「莫迦」なんですか
>
> 帝国から脱出し、同盟を建国した人々は、逃げきれるかどうか完全な自信を得るまで、自由を求めての「賭け」に出られないほど、臆病だったのでしょうか?時間が経過すれば、イオン・ファゼカスを利用するより、もっと成功率の高いチャンスがくるという確信があったのでしょうか?

 あの、それは「回廊の戦い」におけるヤン艦隊も同条件なのですが。
「援軍の見込みのない篭城戦は必敗する」は史実のセオリーであり、ラインハルトが要塞攻略に揃えた戦力は「防御側に優越するに必要な攻撃側の戦力は3倍」を充分に満たしておりヤンはその事実を知っています。
「全戦力を温存して逃走できる可能性=移動要塞構築」があるなら最低限考慮した上で不可能な理由をヤンはユリアン=読者に「人民の海計画」と同様に述べなくてはならないのですが。


> 一つ目は、「移動要塞は可能である」ことを証明するための理論に「すき」があることです。不沈戦艦さんは、
>
> >数学の定理を証明するような、厳密な科学的考証
>
> を求めるのは誤りだと言われました。あるいは、不沈戦艦さんにとって、「現実の物理法則を否定すること」と「厳密な科学的考証を行わないこと」は同義なのかもしれません。
>
> しかし、私にとっては、両者は同義ではありません。現実の物理に従う科学論にせよ、銀英伝の記述に従う作品論にせよ、何かを「証明」するには、厳密さが要求されます。それができないのなら、「移動要塞を実現できる可能性がある」という表現にとどめておけばよいのです。

 事実ガイエスブルグ要塞は移動したんです。
 移動要塞の実現にこれ以上何が必要なんですか。
 銀河英雄伝説3巻(デュアル文庫版5・6巻)お読みじゃないのですか?


> 二つ目は、ヤンとラインハルトが愚か者である、という結論です。不沈戦艦さんや冒険風ライダーさんのように、銀英伝の作品設定を最大限重視する人が、なぜこのように、設定を大きく乖離する結論を主張されるのでしょうか?

「移動要塞」という「作中事実」が含む「ある重大な可能性に何故気付かなかったのか」という疑問からでしょう。
 尤もこれについては私も「移動要塞の有用性」を大いに認めた上で「全人類規模で誰も気付かない事での判断で酷評と思う」と3610番の投稿で申しておりますが。

一度大荒れになった話題をあえてもう一度議題にされているのですからもう少し相手の冒険風ライダーさんの議論姿勢、議論前提を考慮して過去の考察ログを重々点検した上で異議を唱え意見を開陳された方が誰にとっても幸福ではないですか。


No. 3616
徹底反論2
a-ru 2003/02/09 23:30
はじめに、S.Kさんはじめまして、本当にありがとうございます。
私のいくつかのレスが、私の意図と全く噛み合わなかったり、相手にされていないと言うのはとても苦しかったので、このようにレスをいただいたのはとても感謝しています。大げさかと思われますが、心が晴れ渡り、報われたような気分です。
私の都合上、前レスは中途半端なモノでしたが、以後の意見がS.Kさんへ返答となって納得いただければ幸いです。
 ということでS.Kさん、同盟側は「“できるかもしれないのでやってみる価値”がある」といわれますが、それはあなたが後世の人に立場に立っているから言えることです。まずは、「イゼルローンは主戦場であり、帝国もそこを拠点と分かれば追撃してくるのは時間の問題です」そして指揮官は常に最悪の事態を考慮しなければいけません。その最悪の事態とは、「ヤンが考えうる以上に早くイゼルローンに到着すること」ではないでしょうか。
 例えば、家を建てるとき、雲行きが怪しくなって、台風が来ることは予想できても、いつ来るか分からないとき、現場監督として工事をはじめられますか?そんな危険を犯せますか。そのような状況で成功できる人は、天下無敵の大バカか、大天才か分かりませんが、少なくとも「普通の人」ではないですよね。そんな人を参考にできるのでしょうか。たとえ、賭ける価値があるとして、賭けの相手は天才ラインハルト、負ければ自分を含めて500万人以上の死、勝てば銀河の果てまで逃げつづけることが出来る…どうでしょうか。
あと、空母と移動要塞は設計思想が別のように思います。
空母は「戦闘能力の高いが航続距離・時間が短い戦闘機、戦略爆撃機を燃料補給、修理を行って飛行機が継続的に作戦を遂行するために海上から支援する」ものであり、移動要塞は「拠点・自己補給・戦闘」三つの思想(コンセプト)を一つにまとめたものである、と解釈しています。

では本論をはじめます。まず、@で書き忘れたことを述べます。
「イゼルローン要塞の職業人口比率」について
イゼルローンの人口構成は作中では、民間人300万人、軍人200万人とのことですが、この中で技術者とよばれる人たちがどのくらいいると言われるのでしょうか。しかも宇宙関連などの高度技術者や熟練技術者はどのくらいいるのでしょうか?記憶があいまいで恐縮ですが、大敗戦以降、同盟は慢性的な人材不足に陥っているという記述が作中にあったと思うのですがどうでしょうか。また、冒険風ライダーさんは民間人技術者の徴収で10万人と見積もっていますが、その数はどこから出てくるのでしょう?技術者の数は早期改造工事の要だと思いますがどのようにお考えになりますか?
「ガイセスブルク要塞移動の実現までの計画時間」について
帝国の移動要塞計画は、ラインハルトへ提出するまでどれほどの期間を費やしたのかということです。科学技術長官なのか、それとも名もなき天才なのか、もしくは同志が集い議論を闘わせた物なのか、いったいどれほどの時間をかけて計画を練り上げたのでしょう、模型なども作ったのでしょうか…。とにかく、ガイセスブルク要塞を三ヶ月で動かせたのですから、ねじ一本一本のことまで書かれた、稀代の芸術作品的設計図だったではと私は思いを馳せるのです。しかし、同盟でこれが当てはまるのでしょうか、帝国と同盟は技術的に差がないといいますが、差はあります。例えば要塞があるか、ないか、です。要塞建設実績のない同盟に、しかも帝国製の要塞を改造することに困難はないのでしょうか。
 まあ、同盟にも計画が在ったかもしれませんが内容が不明なものを前提に議論を進めて良いのでしょうか。
ここでの疑問は二つ、「イゼルローン内での技術者の人口(万単位)」「帝国で移動要塞開発計画の発案から提出までの設計・試作期間とそれを同盟にほぼ一致して計画できると言う論拠」です。
ではAに行きます。

A移動要塞が兵器として実際に有用と言えるかについて反論します。
氏は、移動要塞の設計思想として「恒久的(少なくとも50年)自給自足可能な拠点兵器」と考えておられると言うことで「補給万能論」者という立場に勝手にしますが宜しいですよね。
 この前提で、私も反論します。私はそれほどまでに補給が万能であるとは思わない立場です。そもそも、補給とは「国力を戦闘力に変換するための一システム」に過ぎないと考えています。例えて言うと、人間の循環系がこれにあたるでしょう。重要でありますが、補給によって戦艦を破壊できるでしょうか、そんな事はないでしょう。つまり、それ以上でもそれ以下でもないことです。
 また補給の優劣が戦術で現われるのは、指揮官、戦力、戦術運用などが両軍同等の力で接近している「接戦」か、国力勝負の「持久戦」かです。
 そして、移動要塞で帝国の補給線を延ばそうという戦術ですが、それが間違っています。断ち切りやすくするために補給線を延ばすのです。ではどのように補給線にダメージを与えるのでしょう。ただでさえ少ない25千の戦艦を割くのですか?要塞の防御はどうなるのでしょう。別働隊の弾薬、食料は?指揮官は?そして何より、同盟だけが無補給可能なわけではありません。帝国にも出来るのです。そして、要塞など作らなくとも、兵器製造艦、食料生産艦など必要な物資を生産できる艦を作ったほうが遥かに運用やコストなどの面で優れていると思います。
 よく家電製品で、多機能をウリにした商品がありますが、結局使いこなせないことがあります。一つ一つ役割のはっきりした物のほうが使いやすいことは良くあることではないでしょうか?そして、複雑なものほどチョットしたことで壊れやすいものです。移動要塞は、動力、工場群、エンジンなど複雑に入り組んだ高度な兵器です。故障頻度や耐久度でも未知の領域ではないでしょうか、商品の法則からいくと…。
 軍隊はスペシャリストの集団です。その中で移動要塞がトータルスペシャリストなれるのでしょうか?私は、移動要塞は結局「器用貧乏」な兵器になる可能性があると推測します。
 @にもつながることなのですが、要塞動力源の最大出力と最大出力の耐久時間はどの程度なのでしょうか。トールハンマーの攻撃後、時間がかかると言うことは、少なくともコンデンサー的なものでエネルギーをためなければいけないし、冷却も必要かもしれません。これについて言えることは、要塞動力源は、要塞機構全般を維持しつつ、トールハンマーを連射することは出来ない程度の動力であることの証左ではないでしょうか。例え、移動する余力があったとして、攻撃を受けた場合、兵器生産しながらの移動が可能な程の余力があるのか、という疑問が出てきます。
 これは余談ですが、1日あたりミサイル生産個数は6千、万、十万?ここは記憶があいまいなので先に誤りますが、少なくとも千、万ではすぐ底づいてしまうのではないでしょうか、貯蔵にも限度がありますし、これ以上は追究しません。

 私が疑問に思うことは「要塞動力源の最大出力と最大出力の耐久時間はどの程度なのか」「移動要塞が完成されたとして、現在全戦力で帝国の補給線が長期的に断てるのか」の二つです。
次は、Bについて述べます。


No. 3617
Re:議論の前提条件として
Ken 2003/02/09 23:55
パンツァーさん、

>「船体を軽くする」ことを重視したのであれば、そもそも推定重量234兆トンもの塊を切り出す必要がないわけです。

234兆トンの塊は、ハイネセンたちが切り出したのではなく、もともとその形であったのではないでしょうか?

〜ハイネセンらが選んだのは、とある峡谷をまるまる埋めつくしたドライアイスの巨大な塊で、長さ一二二キ口、幅四〇キロ、高さ三〇キロという数値であった。〜

という記述が、黎明篇の序章にありますから。

>むしろ、耐久性重視を目的として、十分な防壁を備えることを意図した、
>と考える方が自然ではないですか。例えば、宇宙空間航行時における浮
>遊物との衝突等にも耐える必要があるでしょうから。

耐久性を重視した防壁を備えることには、まったく異論がありません。ただ、エンジンの出力等の制限がある場合、耐久と軽量化のどちらをとるかは、設計思想にかかわって来ます。例えば、戦争中の日本は後者の設計思想をもってゼロ戦を作ったのです。アーレ・ハイネセンたちがどちらを選択したのか、銀英伝に記述はありませんが、私なら浮遊物との衝突に備えて重量を増やすよりも、最大限可能な速度で、帝国から逃げるほうを選びます。

ひとつ断っておきたいのは、私が挙げた「厚さ100mの外壁を残してくりぬく」という設定は、計算がやりやすいからそうしてみた、という以上の意味はありません。強度を保ちかつ質量を軽減するのは、質量自体を武器にする特殊例(例えば戦車など)を除いて、「動くもの」なかでも「飛行するもの」を設計するときの基本だと思います。私は、イオン・ファゼカスの質量が宇宙要塞より大きいと断じることはできない、と言いたかったのです。

>A「私たちの世界と同じ物理法則」
>B「私たちの知らない物理法則」

>Aは、物理法則というものが存在しているが、私たちが知っているか否かを問いませんよね。
>Bは、物理法則というものが存在している上で、私たちが知っている(現在正しいと認識して
>いる)ものに限定されますよね。
>意味が異なるわけですよ。

言葉どおりの解釈としては、パンツァーさんが言われるとおりです。私がAとして意図したのは、「私たちが知っている物理法則」という意味でした。知っているものでなければ、目的のために使用できません。

>まず、「書かれていない」部分って、具体的に何を指すのですか。

もっとも端的には、

移動要塞には、どれだけのエネルギーを要するのか?
静止要塞には、どれだけのエネルギーを要するのか?
艦船の航行には、どれだけのエネルギーを要するのか?

といったところでしょうか。これらの情報があれば、

艦船が無補給で長期間活動できることが、要塞にも同じことができる証明になるか?
イゼルローンが静止状態で長期間活動できることが、移動要塞にもなりうることの証明になるか?

という考察への道を開くと思います。

>不沈戦艦さんが指摘されましたが、「ワープエンジン」って、Kenさんの言う「私たちの物理法則」
>に当てはまるのですか。「ワープエンジン」の原理に関して、今日我々が知っている物理学で納得で
>きるような説明もありませんよね。

私の理解では、超空間を通過して、宇宙の一点から別の一点まで、通常航行では不可能な短時間に移動する、ということは私たちが知る物理法則に、完全否定はされていないと思います。この点は、例えば永久機関などとは性質を異にします。NASAの故カール・セイガン博士は、一生を疑似科学や神秘主義との戦いに捧げたような人ですが、その彼も「コンタクト」の中で、超空間トンネルを通っての移動を描いています。スティーブン・ホーキング博士も、「スタートレック」のスタジオを訪れたとき、「自分は『これ』を実現させるために、働いています」という言葉を残しました。いわゆる「ブラックホール」は、難しい言葉ですが「空間の連続性が切れる」点なのです。

>つまり、例えば、「艦隊がワープ航行する」という記載に対して、「ワープエンジン」の原理がない部分を、
>「私たちの物理法則を使うこと」で埋める、ということですか。

それはちがいます。私が意図したのは、例えば、上に挙げた移動要塞や静止要塞や艦船の消費エネルギーを、あるいはそれが無理なら、せめて相対的な大小関係を、私たちが知る物理法則で考察できないだろうか、ということでした。

>今日の我々は知らないが、「エネルギー保存則」が部分的に破れる可能性だって否定しきれないわけです。
>上で「質量保存の法則」が破れる場合については説明しました。これだって、一時代前の人類はびっくり、
>ですよ。銀英伝の記述の中で、「可能だ」とされていることに関しては、原理はよく分からないけど、未
>来に認識される物理法則では、説明がつくのかもしれないわけです。

そのとおりです。そしてそういうことを考察するのは、私は大好きです。

ただ、私が言いたかったのは、「どういう物理法則が成り立つのか分からない」という要素を大きくするほど、移動要塞に限らず、どんなことででも「証明」するのは難しくなる、ということです。

>ただし、以下述べる理由で、この討論に関しては、bとcとは実質的に同一であると考えます。

>1「銀英伝中の記載」をベースとして「可能なこと」を列挙し、
>2「可能なこと」の組み合わせとして、
>3「移動要塞が可能」

>そして、1または2に「誤謬」や「論理の飛躍」があるなら、それを突いてみろ、といっているのです。

>要は、Kenさんが、1または2のどちらかに、納得していないからでしょう。
>その納得していない点を指摘すればよいのです。

その点は、私の方にも誤解はないかと思います。ただ、ライダーさんが「可能だと証明した」と言われることが、私から見ると証明になっていないのです。

たとえば、冒険風ライダーさんは、ガイエスブルグがイゼルローンの位置まで移動した事実をもって、ただちに移動要塞で同盟領への侵攻も可能である、と言われます。しかし、同盟本土までの距離が、イゼルローンまでの距離よりも大きい以上は、ライダーさんの「証明」には穴があるのです。大穴といってもよいでしょう。それに対するライダーさんの反論もよく承知しているつもりです。そしてその反論自体にも穴があるといっているのです。

>「銀英伝世界」の否定につながらない方向で、考えを進めてください。
>「銀英伝世界」の否定に繋がる論を展開するのであれば、そもそも論ずることがありません。

これは「銀英伝世界」をどのような切り口で捉えるか、に関わります。例えば、銀英伝世界を「ガイエスブルグが移動した」世界であると捉えるなら、世界を守るには移動要塞が可能とするしかありません。一方「ガイエスブルグがイゼルローンまで移動した」世界であると捉えるなら、「恒久的」移動要塞を否定しても、世界の崩壊は起こりません。あるいは、銀英伝世界を「エネルギー補給が問題にならない」世界として捉えるなら、恒久的移動要塞の実現可能性は非常に高くなります。一方「艦船のエネルギー補給が問題にならない」世界であると捉えるなら、可能性が一気に低くなります。

そして私が言う「厳密性」とは、「ガイエスブルグが移動した」ことと「ガイエスブルグがイゼルローンまで移動した」ことを、厳密に区別すること等を意味します。

>ジャンボジェットなどの場合は、燃料を残して着陸ができないため、天候等の変化により引き
>返す際には、無駄に空中を旋回して燃料を消費します。つまり、100キロ走って停止、みた
>いなことができません。
>この自動車にしたところで、100キロ走って停止の場合の不測の事態の発生を、どうして、
>以上だけの観測結果から導き出すことができるのでしょうか?

私は、背後の物理法則を考えなくても証明できることもあることの例として「既に走行を実現した距離よりも短い距離を走行できる」ことを挙げたのです。これは論理の精密さを期すために付加したことで、あの発言のポイントは「物理法則を考えないと、最も直接的に観測された以外のいかなることも証明できない」という点にありました。パンツァーさんの指摘は、私自身が挙げた、この論旨への例外的ケースをも否定するものです。その可否はともかく、冒険風ライダーさんとの議論の中の位置付け的には、それでもかまいません。

>ここで、「要塞」の移動可能性に対して、「ピタゴラスの定理の証明」に準じるような検証作業
>を要求するのであれば、例えば、銀英伝中における「艦隊」に対しても同様の検証作業を行って
>欲しいのです。

すみません。この部分とこれに続く部分は、パンツァーさんの言われる意味がわかりません。

艦隊に関しては、既に数千光年の距離を航行した「実績」があるのだから、ヤンがフェザーンを攻略する上でも、「距離」が障害になることはないでしょう。

もう少し具体的に説明していただけると、ありがたいのですが。


No. 3618
Re:徹底反論2
S.K 2003/02/10 00:12
 a-ruさん、どうもです。
 本当ならBを待って返答すべきなんですが都合で今現在の分だけ返答させていただきます。


>  ということでS.Kさん、同盟側は「“できるかもしれないのでやってみる価値”がある」といわれますが、それはあなたが後世の人に立場に立っているから言えることです。まずは、「イゼルローンは主戦場であり、帝国もそこを拠点と分かれば追撃してくるのは時間の問題です」そして指揮官は常に最悪の事態を考慮しなければいけません。その最悪の事態とは、「ヤンが考えうる以上に早くイゼルローンに到着すること」ではないでしょうか。
>  例えば、家を建てるとき、雲行きが怪しくなって、台風が来ることは予想できても、いつ来るか分からないとき、現場監督として工事をはじめられますか?そんな危険を犯せますか。そのような状況で成功できる人は、天下無敵の大バカか、大天才か分かりませんが、少なくとも「普通の人」ではないですよね。そんな人を参考にできるのでしょうか。たとえ、賭ける価値があるとして、賭けの相手は天才ラインハルト、負ければ自分を含めて500万人以上の死、勝てば銀河の果てまで逃げつづけることが出来る…どうでしょうか。

 前段指揮官の心得については同意いたしますがその後の想定にギャップがあるようです。
「台風の中の建築」ではなく私は「核ミサイル到達前にシェルターを構築できるか」の問題だと思っております。
 ヤンに先見の明があればあるほど「篭城して消耗死か工事が不成功に終わって要塞壊滅か」は遅いか早いかの違いでの玉砕に他ならず、唯一の突破口が「イゼルローン要塞ごと逃亡」であると考えるでしょう。
 とにかく「回廊の戦い」でヤンの最終的な勝機が限りなく0に近かった事だけは間違いないです。


> あと、空母と移動要塞は設計思想が別のように思います。
> 空母は「戦闘能力の高いが航続距離・時間が短い戦闘機、戦略爆撃機を燃料補給、修理を行って飛行機が継続的に作戦を遂行するために海上から支援する」ものであり、移動要塞は「拠点・自己補給・戦闘」三つの思想(コンセプト)を一つにまとめたものである、と解釈しています。

 そうでしょうか?
 空母機能を艦隊に適用できて戦闘力も絶大という空母の上級版、超大型戦闘空母(コロニー機能付き)と解釈しておりますが。


> では本論をはじめます。まず、@で書き忘れたことを述べます。
> 「イゼルローン要塞の職業人口比率」について
> イゼルローンの人口構成は作中では、民間人300万人、軍人200万人とのことですが、この中で技術者とよばれる人たちがどのくらいいると言われるのでしょうか。しかも宇宙関連などの高度技術者や熟練技術者はどのくらいいるのでしょうか?記憶があいまいで恐縮ですが、大敗戦以降、同盟は慢性的な人材不足に陥っているという記述が作中にあったと思うのですがどうでしょうか。また、冒険風ライダーさんは民間人技術者の徴収で10万人と見積もっていますが、その数はどこから出てくるのでしょう?技術者の数は早期改造工事の要だと思いますがどのようにお考えになりますか?
> 「ガイセスブルク要塞移動の実現までの計画時間」について
> 帝国の移動要塞計画は、ラインハルトへ提出するまでどれほどの期間を費やしたのかということです。科学技術長官なのか、それとも名もなき天才なのか、もしくは同志が集い議論を闘わせた物なのか、いったいどれほどの時間をかけて計画を練り上げたのでしょう、模型なども作ったのでしょうか…。とにかく、ガイセスブルク要塞を三ヶ月で動かせたのですから、ねじ一本一本のことまで書かれた、稀代の芸術作品的設計図だったではと私は思いを馳せるのです。しかし、同盟でこれが当てはまるのでしょうか、帝国と同盟は技術的に差がないといいますが、差はあります。例えば要塞があるか、ないか、です。要塞建設実績のない同盟に、しかも帝国製の要塞を改造することに困難はないのでしょうか。
>  まあ、同盟にも計画が在ったかもしれませんが内容が不明なものを前提に議論を進めて良いのでしょうか。
> ここでの疑問は二つ、「イゼルローン内での技術者の人口(万単位)」「帝国で移動要塞開発計画の発案から提出までの設計・試作期間とそれを同盟にほぼ一致して計画できると言う論拠」です。

 これは先に述べた「やるしかない」という事情と先に「ガイエスブルグ要塞という実例を目撃した」実績にかけるしかないでしょうね。
 あとガイエスブルグ移動の要は技術ではなく「エンジンの同調」という運用面、ソフトウェアが主眼目である事は原作に繰り返し述べられております。
 であればこそラインハルトも工事そのものを「実現性あり」と判断して認可したのですし。


> A移動要塞が兵器として実際に有用と言えるかについて反論します。
> 氏は、移動要塞の設計思想として「恒久的(少なくとも50年)自給自足可能な拠点兵器」と考えておられると言うことで「補給万能論」者という立場に勝手にしますが宜しいですよね。
>  この前提で、私も反論します。私はそれほどまでに補給が万能であるとは思わない立場です。そもそも、補給とは「国力を戦闘力に変換するための一システム」に過ぎないと考えています。例えて言うと、人間の循環系がこれにあたるでしょう。重要でありますが、補給によって戦艦を破壊できるでしょうか、そんな事はないでしょう。つまり、それ以上でもそれ以下でもないことです。
>  また補給の優劣が戦術で現われるのは、指揮官、戦力、戦術運用などが両軍同等の力で接近している「接戦」か、国力勝負の「持久戦」かです。
>  そして、移動要塞で帝国の補給線を延ばそうという戦術ですが、それが間違っています。断ち切りやすくするために補給線を延ばすのです。ではどのように補給線にダメージを与えるのでしょう。ただでさえ少ない25千の戦艦を割くのですか?要塞の防御はどうなるのでしょう。別働隊の弾薬、食料は?指揮官は?そして何より、同盟だけが無補給可能なわけではありません。帝国にも出来るのです。そして、要塞など作らなくとも、兵器製造艦、食料生産艦など必要な物資を生産できる艦を作ったほうが遥かに運用やコストなどの面で優れていると思います。

 私は「イゼルローンを持って逃げよう」と考えているので移動可能な武装コロニーは充分な役割を果たすと判断します。
 これを武力で駆逐する為には同等以上の移動戦闘要塞複数個か考えるのも嫌な位の艦隊を銀河全域に配備する他ないでしょう。
 それくらいなら「逃げるなら好きにするがいいさ」で諦めた方が帝国には若干の威信の揺らぎはあっても利が大きいのは間違いありません。

 では上記補足なども必要でしたら次回Bへの返答の折に。


No. 3619
Re:徹底反論2
a-ru 2003/02/10 03:58
>  本当ならBを待って返答すべきなんですが都合で今現在の分だけ返答させていただきます。

いえいえ、私はいろいろと問題をしてくれた方がやる気も出ますし、多くの疑問を指摘することでより深い議論、考証ができると考えているので今後も宜しくお願いします。

> 「台風の中の建築」ではなく私は「核ミサイル到達前にシェルターを構築できるか」の問題だと思っております。

これは、台風=帝国軍、家(外壁工事中)=改造途中の要塞、責任者=ヤンという例えだったのですが、分かりにくかったようですね。
 仮に工事をはじめたとするならば、秒単位の競争だということを合意いただける前提の元に話しを進めます。ヤンが持っている帝国に対する判断材料は、@ラインハルトが高い確率で来ること。Aラインハルトがイゼルローン攻略法を持っている可能性があること。Bイゼルローンと帝国の前線基地の距離と時間(これは危険材料にもなり得る)。など、私が今考えつくこと限りですけど。そして最も重要で分からないことは、いつラインハルトが進軍するかという事だと思います。これは、単に予測とか曖昧なことではなく、情報の質と速さだけの問題でしょう。それを得る方法がヤンにあるのでしょうか。せいぜい、要塞付近を哨戒するくらいです。
つまり、判断材料が少なすぎるのではないでしょうか。

>  ヤンに先見の明があればあるほど「篭城して消耗死か工事が不成功に終わって要塞壊滅か」は遅いか早いかの違いでの玉砕に他ならず、唯一の突破口が「イゼルローン要塞ごと逃亡」であると考えるでしょう。

彼の先見性は銀英伝ナンバーワン(私的に)だと思っているので、その先見した結果、移動要塞にしなかったというのが、私の意見の一つなのです。(笑)
もう一つあります、原作の通りに要塞を出ることです…て出てましたのよね、記憶が曖昧で済みません(恥)。

>  とにかく「回廊の戦い」でヤンの最終的な勝機が限りなく0に近かった事だけは間違いないです。

全く仰る通りです。

>  そうでしょうか?
>  空母機能を艦隊に適用できて戦闘力も絶大という空母の上級版、超大型戦闘空母(コロニー機能付き)と解釈しておりますが。

設計コンセプトは違うが、運用目的は同じと考えるべきでしょうか。

>  これは先に述べた「やるしかない」という事情と先に「ガイエスブルグ要塞という実例を目撃した」実績にかけるしかないでしょうね。
>  あとガイエスブルグ移動の要は技術ではなく「エンジンの同調」という運用面、ソフトウェアが主眼目である事は原作に繰り返し述べられております。
>  であればこそラインハルトも工事そのものを「実現性あり」と判断して認可したのですし。

 それは帝国側ならば、それで問題ないと思います。ガイセスブルク着工前段階(計画立案、模型作成、ソフト面など)あった可能性がありますし、何年、何十年、もしくは何ヶ月か、は解らないですが。
しかし、それをそのまま同盟に当てはめることが出来るとなぜ言えるのでしょうか。
 帝国、同盟の技術レベルは同程度といいますけど、二つの国は交戦状態です。技術者の交流があったのですか?確かに亡命者の中には技術者もいた可能性がありますが、要塞関係の技術者が亡命したとするならば、なぜ要塞を作らなかったのかも考えなければならないです。
 二つの国は技術の発展の仕方が別ですから、同盟にあって、帝国に無いものもあるでしょうし、帝国にあって、同盟に無い技術も在ったと考えるべきじゃないでしょうか?まあこれは私の推察ですけれども。

>  私は「イゼルローンを持って逃げよう」と考えているので移動可能な武装コロニーは充分な役割を果たすと判断します。

それは、ハード的に問題が発生する可能性を考えなければ可能でしょうね。

>  これを武力で駆逐する為には同等以上の移動戦闘要塞複数個か考えるのも嫌な位の艦隊を銀河全域に配備する他ないでしょう。

活動拠点は、おのずと限定されると言うのが私の考えです。それはのちほどに。

>  それくらいなら「逃げるなら好きにするがいいさ」で諦めた方が帝国には若干の威信の揺らぎはあっても利が大きいのは間違いありません。

 鋭いですね(笑)。というか答えの一つ言われてます。(笑)
このことはかなり重要だと思うんですけど。これもBで詳しく述べます。

後、私見なのですが優れた軍人・戦術家(死傷兵の少ないタイプ)は、いかにミスを少なくし、アクシデントを可能な限り排除する、信頼性の置けない物に対しては、出来る限り頼らないようにする。そのために与えられた条件の中で戦術を練ります。そして、最大限の情報収集を行い、謀略を用い、地形を選び、戦術立案をします。それに頼らない方法を模索するのです、だから大敗も無く、死傷者が少なく出来るのです。 また、Bにつながることですが、同盟において「移動要塞計画」は政治レベルの話しです。一軍人に過ぎないヤンの一任で決定できることではないのではないでしょうか。


No. 3620
Re:徹底反論2
S.K 2003/02/10 06:25
 ちょっと目がさめたのでお返事を入れておきます。


> > 「台風の中の建築」ではなく私は「核ミサイル到達前にシェルターを構築できるか」の問題だと思っております。
>
> これは、台風=帝国軍、家(外壁工事中)=改造途中の要塞、責任者=ヤンという例えだったのですが、分かりにくかったようですね。

 理解した上で「緊急性と危険度の桁違い」ぶりを表現した訳です。


>  仮に工事をはじめたとするならば、秒単位の競争だということを合意いただける前提の元に話しを進めます。ヤンが持っている帝国に対する判断材料は、@ラインハルトが高い確率で来ること。Aラインハルトがイゼルローン攻略法を持っている可能性があること。Bイゼルローンと帝国の前線基地の距離と時間(これは危険材料にもなり得る)。など、私が今考えつくこと限りですけど。そして最も重要で分からないことは、いつラインハルトが進軍するかという事だと思います。これは、単に予測とか曖昧なことではなく、情報の質と速さだけの問題でしょう。それを得る方法がヤンにあるのでしょうか。せいぜい、要塞付近を哨戒するくらいです。
> つまり、判断材料が少なすぎるのではないでしょうか。

 そうでもありません。
 既に絶望的な戦略的状況にヤン=エルファシル政権はあるのです。
 であればこそ「マル・アデッタの戦い」におけるビュッコックの戦死や同盟崩壊は逐次ヤンにも伝わる訳です。
 オーベルシュタインに愚挙と酷評される「回廊の戦い」ですがとにかくにももう勝負はついていて帝国側には何一つ隠す必要はないのです。
 と申しますかこれは本当に愚挙に属する行いですが暗にラインハルトが「すこしでも五分の条件にしてヤンを打倒したい」と考えて情報管制を行わなかった可能性は極めて高い傍証があります。
 先遣艦隊のビッテンフェルトは開戦に先んじて降伏勧告を行っていますが本気でローリスクでイゼルローン陥落を帝国が狙っているならこれは敗戦以上に許されない暴挙です。
 つまりヤンは完全ではないにしろそれなりのプランを立てるだけの材料はあったと考える方が物語の史実上妥当です。
 つまり「必敗の確定は了解していた」なら投機的行為も充分な説得力を持ちます。
 少なくとも「ラインハルトの気が済むまで絶望的消耗戦に付き合って生き延びて和平」よりはまだ自助努力の余地がある分高確率でしょう。


> >  空母機能を艦隊に適用できて戦闘力も絶大という空母の上級版、超大型戦闘空母(コロニー機能付き)と解釈しておりますが。
>
> 設計コンセプトは違うが、運用目的は同じと考えるべきでしょうか。

 そうですね。


> >  これは先に述べた「やるしかない」という事情と先に「ガイエスブルグ要塞という実例を目撃した」実績にかけるしかないでしょうね。
> >  あとガイエスブルグ移動の要は技術ではなく「エンジンの同調」という運用面、ソフトウェアが主眼目である事は原作に繰り返し述べられております。
> >  であればこそラインハルトも工事そのものを「実現性あり」と判断して認可したのですし。
>
>  それは帝国側ならば、それで問題ないと思います。ガイセスブルク着工前段階(計画立案、模型作成、ソフト面など)あった可能性がありますし、何年、何十年、もしくは何ヶ月か、は解らないですが。
> しかし、それをそのまま同盟に当てはめることが出来るとなぜ言えるのでしょうか。
>  帝国、同盟の技術レベルは同程度といいますけど、二つの国は交戦状態です。技術者の交流があったのですか?確かに亡命者の中には技術者もいた可能性がありますが、要塞関係の技術者が亡命したとするならば、なぜ要塞を作らなかったのかも考えなければならないです。
>  二つの国は技術の発展の仕方が別ですから、同盟にあって、帝国に無いものもあるでしょうし、帝国にあって、同盟に無い技術も在ったと考えるべきじゃないでしょうか?まあこれは私の推察ですけれども。

 前記の通り6〜8巻(文庫版11〜16巻)のヤンは「それでもやるべきだった」のです。
 もう一度申しますが「回廊の戦い」でヤンの軍事的勝機は 限りなく0に近いものです。
 逆にいえば「何をやっても損はない」状態だったのです。
 どんなに不安材料が多くても「移動要塞計画」は成功すればほぼ丸儲けの次善に近い結末だったのですから。
 ちなみに最善はロムスキーを説得してエルファシルを投稿させ、レンネンカンプ関連の一連の騒動に対する釈明と正式な裁判をマルアデッタの戦い前にラインハルトに投降して要求する事だったとリスク回避の観点からは考えますが。


> >  私は「イゼルローンを持って逃げよう」と考えているので移動可能な武装コロニーは充分な役割を果たすと判断します。
>
> それは、ハード的に問題が発生する可能性を考えなければ可能でしょうね。

 絶対にメルトダウンする原発にたたずむのと整備状態が当てにならない飛行機で避難する事の二択なら飛行機に乗る人間の方が絶対多いとこれは断言できます。


> 後、私見なのですが優れた軍人・戦術家(死傷兵の少ないタイプ)は、いかにミスを少なくし、アクシデントを可能な限り排除する、信頼性の置けない物に対しては、出来る限り頼らないようにする。そのために与えられた条件の中で戦術を練ります。そして、最大限の情報収集を行い、謀略を用い、地形を選び、戦術立案をします。それに頼らない方法を模索するのです、だから大敗も無く、死傷者が少なく出来るのです。 また、Bにつながることですが、同盟において「移動要塞計画」は政治レベルの話しです。一軍人に過ぎないヤンの一任で決定できることではないのではないでしょうか。

 それなので同盟では「回廊の戦い」に限定して論じている訳です。
 どうにかして逃げる以外には全滅必至の状況下でどんなに可能性が低くても逃げる方策を考え試みる事はどれほど投機的でも「名将」の名に恥じるものではないですよ。
 また、その時点で「一軍人」といううのはヤン個人の気の毒ながら身勝手な願望であって、あの時点のイゼルローン=エルファシル陣営にとってヤンは「最後の希望」「逆転の切り札」に他なりません。
 あの状況でヤンが「必要です」といえば極論ですがスパルタニアン隊による神風特攻隊だって結成されたでしょう。
 それが「全員生き延びて逃げる方策」となれば従わない人間はまずいないでしょうし、いても相手にされない事を請け合えます。


No. 3623
Re:徹底反論2-2
a-ru 2003/02/11 04:40
Bに進めないのは、当方の都合なのでお気遣い無く。
一番主張が長くなる予定なのでエネルギーを使うので。

>  理解した上で「緊急性と危険度の桁違い」ぶりを表現した訳です。

そうではないかと思いました。(笑)
 私がここで例えたかったことは、近似型(タイプ、パターン)をあげて、ある人(対象)を自分の状況に置き換えることで理解を深める手段だと「台風と家」を例にあげたのです。私の例は出来が悪かったかもしれません。(苦笑)
 勢いで言ってしまいますと、私がこの「徹底反論」を投稿したのは、RAMさんが「ホームズ」の例を引用して言われた意見と同じように考えたからです。
 私のこれまでの質問・疑問に対する解答は無いものものが結構含まれていると思います。それを分かっていてあえてしたのは、これだけ謎か在る移動要塞を軽軽しく言うべきではないと言いたいのです。今までの賛成派の意見ではまだまだ、説得材料が足りませんし、説得力にも欠けています。なにより、賛成派は「ない」ものを「ある」「できる」と主張しているのですからより精緻な証拠を示さなければなりません(当時の同盟、帝国の状況、時間を元に資金、大衆の人心掌握法など)。
否定派の説得材料より少ない中で説得しなければならないのです。
 そして、この議論するならば順序として、移動要塞が何故出来なかったのか?を徹底的に考え、シュミュレーションし出来なかった理由を考えるべきではないでしょうか。そして、それを元に「移動要塞ができる可能性」を探る議論、シュミュレーションをすべきだではないでしょうか。それから…の可能性はというように遊ぶ。これが銀英伝世界で楽しく遊ぶための態度だと私は言いたいのです。(言っちゃった)
最後にRAMさんの至言を聞く方がいなかったのか?堂々巡りの議論も少なくなかったと思います。
Bは書き上げるのにかなり力が要るので少しお待ち下さい。


No. 3624
Re:徹底反論2-2
S.K 2003/02/11 10:42
> Bに進めないのは、当方の都合なのでお気遣い無く。
> 一番主張が長くなる予定なのでエネルギーを使うので。

了解です。


> >  理解した上で「緊急性と危険度の桁違い」ぶりを表現した訳です。
>
> そうではないかと思いました。(笑)

 悪いですが、ここで示唆されている原作6〜8巻のヤンの逆境について@突然アンドロメダ共和国が援軍にくるAハンサムのヤンは突然起死回生の大魔術を思い付くBなにもない現実は非情である のどれ、もしくはどうだとお考えですか?


>  私のこれまでの質問・疑問に対する解答は無いものものが結構含まれていると思います。それを分かっていてあえてしたのは、これだけ謎か在る移動要塞を軽軽しく言うべきではないと言いたいのです。今までの賛成派の意見ではまだまだ、説得材料が足りませんし、説得力にも欠けています。なにより、賛成派は「ない」ものを「ある」「できる」と主張しているのですからより精緻な証拠を示さなければなりません(当時の同盟、帝国の状況、時間を元に資金、大衆の人心掌握法など)。

 何度か出た話ですがガイエスブルグ要塞が移動した事実は認識されてますか?
 あと実は冒険風ライダーさんの考察移動要塞論A〜Gまでの討論成果をかなり参考にして私は話しておりますがそこにもa-ruさんの求める回答がないかは一度ご覧になるべきでしょう。
 記録があるのにあまり既出の説明を2度したい人間は少ないですよ。


>  そして、この議論するならば順序として、移動要塞が何故出来なかったのか?を徹底的に考え、シュミュレーションし出来なかった理由を考えるべきではないでしょうか。そして、それを元に「移動要塞ができる可能性」を探る議論、シュミュレーションをすべきだではないでしょうか。それから…の可能性はというように遊ぶ。これが銀英伝世界で楽しく遊ぶための態度だと私は言いたいのです。(言っちゃった)

 それは最初の論点が違います。
 冒険風ライダーさんは「移動要塞」という作中事実に対して「実は莫大な可能性のあるハードウェアであり、有効活用するとこう」と示すのが目的だったのであり、a-ruさんの論点は検討価値はありますがあくまで冒険風ライダーさんの「移動要塞論」に対するものであり、であればまず最初は「移動要塞の可能性とその使用法、そこにいたるまでのノウハウ説明」に耳を傾けるべきでしょう。
 その説明を「理解」した上ではじめて議論になります。
「理解」としたのは「正確な把握を要する」という意味で「納得」「賛同」する必要は必ずしもはないからです。


> 最後にRAMさんの至言を聞く方がいなかったのか?堂々巡りの議論も少なくなかったと思います。

 冒険風ライダーさんの説明や他の方の質問内容を考えもせず自分の疑問もしくは主張に固執された論者が複数名残念ながら存在した事が一番長期化と紛糾の原因ではなかったでしょうか。


No. 3625
まとめ
Ken 2003/02/11 12:30
おそらく、私の論は、肯定・否定の対象となる以前に、非常に分かりにくかったのではないか、と思います。私たちが、日常生活で行っている精神活動とは、一線を隔する思考活動を持ち込んだからです。もちろん完全に理解し、その上で否定なり肯定なりをされた方もいるでしょう。しかし、そうではない方もおられると思いますので、再度論点を整理し、つまるところ私が何を言おうとしていたのか、説明をさせていただきます。

はじめに言っておきたいのは、私は「恒久的移動要塞は不可能である」とは言っておりません。今回の討論に参加した当初は、可能・不可能のどちらへも、天秤を傾斜することはできませんでしたが、冒険風ライダーさんとの議論を経た今では、「可能である」とする側に傾斜しています。この点で、冒険風ライダーさんの構築力と説得力は見事です。また、私がそのように考えていることで、ライダーさんや他の方が「それでよし。この問題は終了」とされるのなら、以降の文章を読んでいただく必要もありません。そういう人たちとは、問題にしている部分が異なるのですから。

************************************************

私たちの議論が紛糾した理由は一つ、恒久的移動要塞が可能であることが「証明された」という論が横行し、そこから「ヤンやラインハルトが愚かである」と展開したことに、私が承服できないからです。ただし、二人の英雄のことは今は論じません。その前提となった「既に証明できた」とする論に対する反論です。

以前に書いたように、冒険風ライダーさんも、ライダーさんと論拠を同じくする人たちも、何かを「証明する」とはどういうことかを誤解しておられます。「ピタゴラスの定理」を持ち出したのは、そのことを分かりやすく解説するためでしたが、あまり役に立たなかったようです。

そんな中で、私が注目したのは、パンツァーさんの投稿にあった以下の記述です。

演繹:自然科学において一般的な法則から当面の特殊な事象に関する結論を導き出す過程「いっそう日常的な例としては、〈毎日太陽は東から昇り、西に沈む〉ということから、今日も、また明日もそうだ、と結論することも、演繹的推理の例である。」
(平凡社:世界大百科事典)

引用をして下さったパンツァーさんには感謝いたします。

ただ、この記述は正しくありません。平凡社の百科事典に本当にそう書いてあるなら、明らかな誤植です。「昨日までずっと、太陽が東から昇り西へ沈んだから、今日以降もそうだろう」というのは、論理学では「帰納(induction)」といい、「演繹(deduction)」とは明確に区別されます。「演繹」とは、例えば次のような論理展開のことです。

1.太陽は東から昇る。
2.太陽は動きつづける。
3.太陽は動く方向を変えることはない。
4.西は東の対極にある。
5.ゆえに、太陽は西へ沈む。

1と2と3と4が前提として正しければ、5が唯一の結論となります。「演繹」とはこういうもので、演繹過程が正しければ、それは「証明」と考えてよいのです。帰納と演繹の対比について、「Microsoft Encarta」百科事典の記述を引用します。(原文は、投稿の末尾にあります。)

〜しかし、帰納は非常に重要な点で演繹とは異なる。演繹においては、前提が真なら結論は必ず真でなければならない。一方、帰納においては、たとえ可能性が高い論であっても、前提は真だが結論は偽である可能性が残るのである。〜
(カリフォルニア大学リバーサイド校、哲学科助教授ジェノヴィヴァ・マーティ)

「deduction」と「induction」というもともと難解な数学的概念に、「演繹」と「帰納」という難解な訳語を充てたことで、混乱を拡大させた昔の(おそらく徳川末期か明治の)学者の罪は大きいと思います。もっと単純に「deduction」は「証明過程」、「induction」は「類推過程」でよかったのです。あるいは、「de-」と「in-」の対比を活かしたいなら「可能性の絞込み」と「可能性の展開」でよかったのです。

そして、私は、冒険風ライダーさんの論旨に対して、

「証明した」「立証した」といいながら、やっていることは、すべて帰納じゃないか。証明じゃなく類推じゃないか。

と言い続けていたのです。不沈戦艦さんは、私が「・・・かもしれない」という議論ばかりしていると言われました。当然です。私は帰納ではなく演繹を行うことを求めていたのですから。演繹とは(つまり証明とは)、「・・・かもしれない」という疑義の存在を許さないものです。

そして、非常に大切なことですが、演繹と帰納は、科学論であるか作品論であるか、とは、完全に独立した、何の関係もない、100%別個の問題です。物理法則に基づく科学論にせよ、作品の記述に基づく作品論にせよ、演繹は演繹、帰納は帰納です。「証明」とは演繹を行うことです。

ただ、それでは帰納には何の価値もないのでしょうか?それはちがいます。現実世界の科学者は、観察結果を前提とした帰納を、日々実行しています。

私が言いたいのは、科学者は帰納を行うが、帰納「だけ」でことを済ませない、ということです。彼らは観察結果から背後の物理法則を「帰納」し(類推し)、その法則が正しければ観察されるはずの結果を予測し、あらたな観察で予測が正しかったことを確認します。同じ確認が最低一つのの追試でも行われたとき、その法則は当面の真実として受容されます。ただし、演繹にもとづく結論ではないので、いつか覆される可能性は、残ります。パンツァーさんが「質量保存則」を例に挙げられたように。

私が、物理法則の復権を提案したのは、銀英伝の記述に基づいての演繹証明などできるわけがないから、次善策として、現実世界の科学手法を取り入れてみてはどうか、と考えたからです。結果として、それで何かを証明できたかどうかは分かりません。でもやらないよりはましだろうと思ったのです。

しかし、今となっては、余計なことだったかもしれない、と思います。あくまでも「証明」という言葉に、古代ギリシャ以来用いられてきた定義を適用して、押し通した方が、誤解も生じず、論点が明確になったかとは思います。


「Encarta」の原文。

However, induction differs from deduction in a crucial aspect. In deduction, for an argument to be correct, if the premises were true, the conclusion would have to be true as well. In induction, however, even when an argument is inductively strong, the possibility remains that the premises are true and the conclusion false.

Genoveva Marti
Assistant Professor, Department of Philosophy, University of California at Riverside.


No. 3627
Re:徹底反論2-2補足
S.K 2003/02/11 15:44
> > 最後にRAMさんの至言を聞く方がいなかったのか?堂々巡りの議論も少なくなったと思います。
>
>  冒険風ライダーさんの説明や他の方の質問内容を考えもせず自分の疑問もしくは主張に固執された論者が複数名残念ながら存在した事が一番長期化と紛糾の原因ではなかったでしょうか。

 最後配慮不足の表現でしたので追加いたします。
「質問者は既出の質問を読んだ上で誰かへの回答にまとめてもらう配慮があって良かったのではなかったか」という意味です。
 事実回答者の冒険風ライダーさんも大きな負担に近いニュアンスの発言をされた経緯もありましたし。
 当時の参加者の方々の名誉と不充分なレスを受けたa-ruさんに深くお詫び申し上げます。


No. 3628
Re:反論が目的の反論では駄目でしょう
不沈戦艦 2003/02/11 16:58
> Kenさん
> > 私が記憶する限りでは、ラインハルトが「補給」を問題にするのは、常に戦時です。
>
>  いくら何でも「ガイエスブルグ要塞移動」は「ケンプ・ミュラーによるイゼルローン攻略戦」の第一段階、すなわち最初期の「戦中」です。
> 「戦略」とは「戦う前に想定されうるあらゆる事態に万全の準備を整える」事であり、この段階でいきあたりばったりな真似をするようなラインハルトであればそれはアムリッツァのフォークと大差ない代物でしょう。
>  何故そんな酷い侮辱を「常勝の天才」になさるのですか。

 特に付け加えることはありません。「平時」と言うのは無理がありますよ。


> > >帝国から脱出し、同盟を建国した人々ってのは、航続距離が案外短く、逃げ切れるかどう
> > >かも分からないような代物で、脱出を敢行するほど「莫迦」なんですか
> >
> > 帝国から脱出し、同盟を建国した人々は、逃げきれるかどうか完全な自信を得るまで、自由を求めての「賭け」に出られないほど、臆病だったのでしょうか?時間が経過すれば、イオン・ファゼカスを利用するより、もっと成功率の高いチャンスがくるという確信があったのでしょうか?

「イオン・ファゼカス号はワープできなかった可能性がある」とか「ワープできても航続距離が極めて短かったかも知れない」ということを前提にしてそういうことを言うのなら、それは単に「勇気と無謀を取り違えている」という類でしょう。「賭け」ではなく「自滅願望」としか言いようがありませんね。


> > 一つ目は、「移動要塞は可能である」ことを証明するための理論に「すき」があることです。不沈戦艦さんは、
> >
> > >数学の定理を証明するような、厳密な科学的考証
> >
> > を求めるのは誤りだと言われました。あるいは、不沈戦艦さんにとって、「現実の物理法則を否定すること」と「厳密な科学的考証を行わないこと」は同義なのかもしれません。
> >
> > しかし、私にとっては、両者は同義ではありません。現実の物理に従う科学論にせよ、銀英伝の記述に従う作品論にせよ、何かを「証明」するには、厳密さが要求されます。それができないのなら、「移動要塞を実現できる可能性がある」という表現にとどめておけばよいのです。
> >
>  事実ガイエスブルグ要塞は移動したんです。
>  移動要塞の実現にこれ以上何が必要なんですか。
>  銀河英雄伝説3巻(最新文庫版5・6巻)お読みじゃないのですか?

 これも、特に付け加えることはありませんね。「銀英伝作中ではガイエスブルグ要塞は容易く移動した」という「作中事実」を無視しないでください。


> > 二つ目は、ヤンとラインハルトが愚か者である、という結論です。不沈戦艦さんや冒険風ライダーさんのように、銀英伝の作品設定を最大限重視する人が、なぜこのように、設定を大きく乖離する結論を主張されるのでしょうか?
> >
> 「移動要塞」という「作中事実」が含む「ある重大な可能性に何故気付かなかったのか」という疑問からでしょう。
>  尤もこれについては私も「移動要塞の有用性」を大いに認めた上で「全人類規模で誰も気付かない事での判断で酷評と思う」と3610番の投稿で申しておりますが。
>
> 一度大荒れになった話題をあえてもう一度議題にされているのですからもう少し相手の冒険風ライダーさんの議論姿勢、議論前提を考慮して過去の考察ログを重々点検した上で異議を唱え意見を開陳された方が誰にとっても幸福ではないですか。

「作中事実」から推論した「移動要塞の可能性」が、別の「作中事実」である「魔術師だの天才だのと呼ばれるヤンとラインハルト」ということと、矛盾している訳です。「作中事実」として「魔術師だの天才だの」たちの行動より、もっと優れた行動があり得るのなら、「魔術師に天才という作中の評価」に疑問を持つことは変ですかね。

 しかし、これはいずれにしても「作中事実と作中事実の対立」があるからこそ、冒険風ライダー氏の「移動要塞論」が出てくるんでしょ。それに対して反論する根拠が「現実の物理学」だけじゃお話にも何にもなりはしません。だから、何度も「作中事実を根拠にして反論しなければならない」と言っているんですけどね。まだKen氏は理解できないんですか?


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