銀英伝考察3−Q

銀英伝の戦争概念を覆す「要塞」の脅威

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コンテンツの総収録投稿数626件の内、256〜270件目の投稿を掲載

収録投稿256件目
board4 - No.3698

Re:移動要塞の技術問題について

投稿者:古典SFファン
2003年02月20日(木) 05時27分

>  結局の所、上で冒険風ライダーさんが主張しているようなことの根底には、一つの論理があります。つまり、『ガイエスブルク要塞を移動要塞化できたのだから、同じ要領でイゼルローン要塞も簡単に移動要塞化できる』というものです。
>  上で冒険風ライダーさんが補足している事も、結局はその延長に過ぎません。要は、上の論理の末尾に『障害があったとしても、工員を余分に注ぎ込んだり、時間稼ぎをしたりといった努力さえすれば、実現できるはずだ』という文が追加されているだけです。
>
>  上の論理の前半部は紛れもない作中事実であり、疑念を挟む余地はありませんが、後半部は自明の理ではありません。銀英伝の歴史上、移動要塞化が行われたのはガイエスブルク要塞ただ一機であり、その成功は、直ちにイゼルローンも移動要塞化できることが証明された事を意味しません。二つの要塞は必ずしも同じではないからです。
>
・・・・・・・・・・・・・・・・
>
>  できれば、他の皆さんの御意見も聞きたいと思っています。

では、他方からですが・・・・
この問題についての判断は「是々非々」です。

ガイエスブルクの、「工員延べ9万人で1.5ヶ月」(約13.5万人・月)
などという規模の事業を、特に思い悩む事もなく指揮統率し、きちんと仕上げて
みせる帝国軍と、ほぼ互角の力量を持つ(はず)の同盟軍の持つノウハウというのは、
明らかに現代の水準を遥かに超えています。

直径40〜60kmの「要塞」というのは、一個の人間の頭の中では到底想像
できないほどの要素数を持っています。
しかもイゼルローンの場合、内部にエコシステムを持っていたり都市機能があったり
工場ブロックがあったり、1つの分野の専門家では仕切れないほどの多岐に渡る機能
を果たすようになっています。

そんなものをかなり短期間に構築したり(確かあの要塞は4年くらいで作ってた
はず・・)、さらに他の部分のバランスを崩さずに巨大なエンジンを外付けしたり、
同調して作動させるというのは、基礎科学・工学に加え、大規模な事業を行うための、
人間側の組織化・運用のノウハウについても相応の発達がなければ不可能なことです。

要するに、あの世界では前提として相当に高いテクノロジーと、そのテクノロジーを
運用できる分厚い技術者の層があると言う事です。
しかし、それが具体的にどう言うものなのかは決して語られない。

作者にもわからないから?

いえいえ、それもあるでしょうが、何よりも、
「主人公たちはそう言うものの中身に主体的に関わらない立場」
だからです(笑)。
主人公たちはたくさんの「便利な魔法の黒い箱」を使っています。
黒い箱の中身はわからないのですが、それがどう言う事に使えるかは知っていて、
突拍子もないやり方で利用する事は出来てしまうのです。

これは、現代人の大半が、エンジンの内部構造を事実上知らずに車を操っているのと
変わり映えしない構図です。
作者は、明らかに技術的な細部に立ち入らないで済むための道具立てとして、そう言う
世界観を準備しています。

ガイエスブルクとイゼルローンは、確かに同一ではありません。
・・しかし、この「同一でない」部分が、
「4階建ての建物と6階建ての建物」
の相違程度のレベルであれば、工数を何倍か掛け算すれば、話は終わってしまいます。
(単純に1.5倍で済まないのは確かですが・・)
もちろん、
「12基のエンジンと36基のエンジンの同期は、同じように見えて質的に全く異なる問題を提供する」
という事も、同様にあり得ます。

作者が巧妙なのは、そう言う問題を突っ込むための尻尾を容易に掴ませないように、
あの世界を作っている所です。

例えば、移動要塞の問題をシンプルに書き出してみるとしましょう。
a)ガイエスブルクを移動要塞化出来た以上、イゼルローンも「出来る可能性がある」 b)ガイエスブルクを移動要塞化出来た以上、イゼルローンも「出来る」
c)ガイエスブルクは移動要塞化出来たが、イゼルローンは大型なので、「同じ手では改造が不可能」

a)は○です。
b)は判定不能です。
c)は判定不能です。

c)をさらに分解してみると、
c1)イゼルローンはガイエスブルクより大きい(3倍の規模(内容積)である)。
c2)故に、移動要塞化に必要なエンジンの数や出力も大きい(3倍である)。
c3)故に、移動要塞化の困難は3倍以上である。
のような問題となります。

c1)は○です。
c2)は判定不能です。
c3)は判定不能です。

ここで「判定不能」と言っているのは、物理法則を傍証に使えない場合、量的問題に
ついて正しい判断を引き出す方法がないからです。
「3倍の大きさなら3倍の出力が必要」と言う推定を、物理法則への依存なしに検証
する事は出来ません。作中に書いていない限りは。
その推論を肯定する事も否定する事も、論理的に不可能なのです。

それは銀英伝においては、明らかに意図的に成されている事です。
正直に言って、あの世界にはa)b)c)を連立して答えを確定するための情報が、
意図的に欠落させられています。
作中で整合性のあるような言い方をするならば、
「主人公たちがそんな問題をいちいち気にしていないし、知っていても日常構ったりしない」
ために。
また、そのようなアプローチで物事を描く事を、作者が選択しなかったが故に。

>ワープやエンジンについて、私と同様、銀英伝の作中事実しか知らない冒険風ライダーさんは、いかなる根拠や証明によって『成功する可能性は決してゼロにはなりえない』『とにもかくにも可能性が存在する』というようなことを断言しているのか。
私も、「改造に成功する可能性がある」事は肯定します。
なぜなら、作中では既に1個の移動要塞が存在しているからです。
可能性はゼロではありません。

しかし、それは
「ヤンはイゼルローンを改造すべきだった」
「それしか可能性はない」
と言う意見を肯定する事には繋がりません。

移動要塞にすると否とを問わず、帝国軍にはイゼルローンを捕捉撃滅する手段を
用意することが出来た、と言うのが、当方の見解です。

その手段は、事実上迎撃不能な「亜光速のミサイル」です。

ヤンは巨大な氷塊を使いましたが、もっと小さいものでも出来ます。
老朽化した戦艦や巡洋艦にバサード・ラムを積んでミサイルに変えれば済む事です。
このようなミサイルの実現可能性は、イゼルローンを移動要塞に改造する可能性
と同じく、「既にヤンがアルテミスの首飾りを亜光速の氷塊で破壊している」と
言う作中事実によって支えられています。

この種のミサイルは長射程(バサード・ラムの燃料は星間水素で、燃料が切れると
言う事がありません)で、亜光速に達した後はほとんど迎撃不能です。
この特質を利して、移動要塞のエンジンを破壊し、足止めするのに使えます。

どんなにあがいても、移動要塞はエンジンが弱点です。
装甲は固定要塞と同程度まで持っていけるかも知れませんが、肝心なのは、
「固定要塞は、極端に言えば動力部と司令区画、港湾施設さえ無事なら、他はめためた
にタマをぶち込まれてもその戦略的意味を失わないが、移動要塞はエンジンが動作中に
被弾したら大損害を受け、動作中でなくてもエンジンが破壊されたら戦略的意味の半分
を喪失する」
と言う事です。

これは、固定要塞が「そこにある」(戦略的要地を押さえる)事に意味のある存在
であるのと対照的に、移動要塞が「神出鬼没である」事に意味のある存在だからです。
足止めされても要塞としての機能は残るのですが、イゼルローン回廊のように、
そこを通らないとどうしようもない要地を押さえるようなケースは別として、
どこかの惑星を襲った時に足止めでもされたら、
「この惑星は全帝国のために犠牲となってもらい、厄介な移動要塞を断固撃滅する」
という結論を出した司令官に殲滅攻撃を掛けられかねません。
と言うか、逃げ回る移動要塞を捕まえるのがどれほどしんどいかを考えたら、
司令官は必ずそうしなければならないとも言えます。

移動要塞が無敵ではないという見解の元に、当方の意見を述べます。

ヤンがイゼルローンを移動要塞に改造しなかった理由は
「意味がない」
と判断したからでしょう。

イゼルローン要塞に関する限り、同盟存続時の要塞の存在目的は
「戦略的要地であるイゼルローン回廊を押さえる」
事であり、移動する理由がありません。

ヤンは亜光速の氷塊を武器として使った張本人です。
この手のタマの直撃を受けたら、要塞がどうなるかは一番良く知っています。
この戦術のバリエーションと、それに対応する防御策のバリエーションを
一通り考える事も、彼なら出来たはずです。

全くの不意打ちで亜光速のミサイルを打ち込まれたらほとんど対処法がありませんが、
探知距離内(500〜1000光秒)に一定数しかミサイルが入ってこなければ、
理論上は要塞主砲による迎撃が(なんとか)可能なはずです。
が、主砲の発射間隔と、ミサイルの数がつりあわなければ、何発か撃たれることは
覚悟しなければならない。

そう言う場合、要塞にエンジンを積むと弱点が増えてしまいます。
「要塞が動かせる」事のメリットと、「弱点が増える」事のデメリットを天秤に
掛けて、デメリットが少ない方を取ったのではないでしょうか。

移動要塞を駆使したゲリラ戦については、選択肢の1つとして考えられはしても、
「結局捕捉撃滅される」
のでは、改造工数を割り引くとデメリットのほうが多くなる。

何よりも、ヤンはラインハルトから譲歩を引き出すための戦いを考えていたのであり、
それには無差別テロにも分類されかねないようなタイプのゲリラ戦は全く論外だった
でしょう。
・・なぜなら、相手がラインハルトだからです。
全くあり得ない話ではありますが、例えば相手がルビンスキーであったら、神出鬼没で
物資の分捕りまくり(通商破壊)を行ったかも知れません。

Nightさんの仰るように、ヤンが採用した戦略は、ラインハルトの為人に合わせられて
いたと、私も思います。
その戦略地図に、「移動要塞」は必要なかった。それだけの事であると。

もう1つオマケしておきます。

回廊決戦でヤンの勝機が薄かったのは、客観的に言って事実だと思います。
ラインハルトの譲歩を引き出すための戦いとはいえ、相手が翻意する前に、戦闘を
継続できないほどのダメージを与えられてしまう事はあり得たはずです。

そう言う場合、彼は常套手段を駆使する事を考えていたのではないかと、
私は思います。

つまり「逃げる」。

艦隊を組んで逃げるチャンスはなかったでしょう。
彼自身は逃げる気もなかったはずです。

が、戦況が決した後、ばらばらに散って脱出する指示を出す程度の事は出来た
はずです。

長征1万光年に出たければ、別に要塞は要らない。
あれば便利かも知れないが、どこまでも逃げて新しい自由惑星同盟を作りたいのなら、
そんなものに頼る必要はない。
10隻でも20隻でも逃げ延びればいい。
補給なしには遠くまで行けないというのなら、先祖がやったように無人惑星に潜み、
船を作り直すがいい。

要塞など抱えていたところで、多少楽が出来るというだけの事。
そんなハードウェアに頼るような発想は、ヤン・ウェンリーの為人にはおよそ
ふさわしくないものと私には思えます。

収録投稿257件目
board4 - No.3700

Re:移動要塞の技術問題について

投稿者:Night
2003年02月20日(木) 09時32分

>  何回も繰り返している主張なのですが、誰からも反応が来ないので、もう一度書こうと思います。(しつこいと思われるかもしれませんが……)

 すいません、自己フォローしておきます。
 誰からも反応が来ない、と書きましたが、No.3635に対しては古典SFファンさんと、それにつながる形でKenさんから反応をもらっています。

 私が言いたかったのは、「移動要塞肯定派の方のどなたからも反応が来ないので」という意味です。この辺りの問題について、肯定派の方々がどのように整理しているのか知りたかったのです。
 細かいようですが、念のため。

収録投稿258件目
board4 - No.3704

Re:徹底反論3−2前  Re:No.3697 Re:移動要塞の技術問題について

投稿者:S.K
2003年02月20日(木) 21時41分

> まずはじめに「銀英伝」は歴史書です(作者談)。しかし、科学的、技術的記述についてはこの歴史書の著者(作者)が知識不足や認識不足のため信用度が若干落ちているものです。これがおそらくは、後世の人(読者)の評価ではないかと思います。
> しかも、当時の技術レベルなどに関しては不明な部分が多く、後世の技術史家の悩みの種です。
> この書がおもに取り扱っている内容は、政治史、戦史の他に、当時軍事的成功を収めた二人の英雄とその周辺人物について詳細な記述がある珍しい書です。そして我々(読者)は「当時の事実を知る唯一の手がかりである歴史書を元に議論を進める」という前提で進めます。

 そこまでいくと「作中事実に基づいた考証」ではなくいわゆる「二次創作」というものになります。
 小麦で焼いているからといってわざわざパンフラワーを食べて不味いと評するのは見当違いです。

> 何故このような当たり前のことを述べているのか?
> S.Kさん、あなたは前々回のレスで三択を出されましたが、私の答えはどれも違います。私の答えは「過去の出来事」です。そして、読者の立場とは「後世の人」である。つまり、過去のことは不変であることから、新事実(証拠)が発見されない限り変えることは出来ません。
> このことを納得いただける前提で進めます。

 上記から全く判別できない選択肢が二つありますのでもう少し詳しくお願いします。
「何も無い、現実は非情である(回廊の戦いでヤン艦隊に勝ち目はない)」のと「大魔術師ヤンはラインハルトの変心を未来における既定事実として知っていた」なのですが、前者なら相互理解に到達したで構いませんが後者ですと「本の読み方が違った」で決着になります。
 私は架空歴史スペオペを読んでいたので「帝都物語」に関する論述は今回特に行う気はありません旨失礼ながら御了承下さい。

> 次に、理論の進め方として帰納法(逆算)と演繹法(順算)があります。
> (中略失礼いたします)
> 「ガ要塞・移動計画」は違うことは先の例でも述べました。

 目的・用途をどう持ってきても「大質量物質の航行及びワープ」という物理的事実が証明されていますが「戦艦は航行できるが山のような艦載機を積んだ空母などという代物が航行できる訳がない、沈没するに決まっている」という主張ではありませんね?

> <「戦闘空母」という単語を使ったのですが。>と言われますが「戦闘」という言葉を加えただけで重なる部分があるものの、設計目的・思想、運用方法が変わるということをご理解いただきたいと思います。

 というより「自己戦闘能力を保有した」「コロニー付き」「原子力空母」と表現したいのですが(単なる空母に生活圏自給維持能力と対艦戦闘力はありませんので)何か誤解してますか?
 もしくは誤解の余地のある表現でしたか?

> 話しを戻します。つまり、事実ではない以上「移動要塞」とは氏の妄想の産物ではないでしょうか。

「ガイエスブルグ移動要塞は歴史家・田中芳樹氏の誇大表現、もしくは妄想であってケンプ・ミュラー両提督は通常2個艦隊を上回る大艦隊でイゼルローン攻略に臨んだ」事実が証明されれば仰る通りです。
 そうでなければ「銀河英雄伝説」本編を「史実」として解釈した上で構築された冒険風ライダーさんの考察に対して「かみあわないから」でなされた誹謗になります。

>私は「移動要塞」が存在できた可能性は少ないながらもあったとは思いますが、諸事情で無かったと考える事が事実に沿っていると思います。

 その「諸事情」を作中の整合性から類推し構築して具体的に展開すべきであり、それでこそa-ruさんの御意見が「移動要塞否定論」として有意義なものになると考えますがいかがでしょう。

>  私は「銀英伝」という歴史書は一度しか読んでませんけど、「二人の英雄を中心に歴史が展開している」という大きな柱を中心に、「機能不全の民主主義制VS機能改善した専制君主制の興亡」「補給の重要性(意味は弱められましたがまだフォローできる可能性はあり)」などありますが、全体を通して、「人間というものが描写されている」ということで、良い歴史書ではないかと思います。
>  しかし、「二人の英雄を中心に歴史が展開している」ということに触れる事柄は、一番意味のある「人間というものが描写されている」と言うことに重大な影響を与えます。よって繊細に取り扱わなければならないところであることをご理解いただきたい。
> 下手すれば「銀英伝」の意義自体が無意味になります。

 ナポレオンは数々の私的・公的な錯誤を重ねていますが彼が傑出した存在だった事に異を唱える人間は否定論者でも少数でしょう。
「愚行」=「英雄の全業績の否定」は何か間違っていませんか?
 翻って英雄がやろうが愚行は愚行であり錯誤は錯誤なのです。
 少なくとも本編中でさえ「『回廊の戦い』は愚行であった」と帝国側は上はオーベルシュタインから下はミッターマイヤー艦隊の一兵卒(「皇帝は勝利ではなく流血をお好みあるか!」とヤン一派壊滅が銀河平定に繋がるからとおそらく自分をごまかして戦っていたのでしょうにラインハルトがいきなり和平を言い出したのでつい激昂してしまった兵士)まで密かに認定しておりますがそれをもって「ラインハルトなど一切評価するにあたわない」という結論に作中および読者間において到達すると思いますか?
 それは杞憂の類でしょう。
 今回「移動要塞論」においてはヤン・ラインハルトの識見が疑問視される題材が俎上に上っただけで別の題材もしくは作品全体では別の評価が勿論あるでしょう。

 正直「移動要塞考察」に対する不沈戦艦さんの疑問例の別の切り口として「スペオペ架空戦記なのだから『逃亡劇』より『両雄相打つ大艦隊戦』の方が遥かにダイナミズムに富んだ面白い展開じゃないか、本編の通りで何が悪いのか」という疑問提示はありえます。
 ただ「考察シリーズ・ロイエンタールの叛逆について」でかわされた激論のごとく「もっと自然な流れというものがあるべきで、それを描写しないで登場人物の行動を描くのはその登場人物の価値を下げる事になる」という命題は解決する必要があるわけで、「友人や家族はおろか同国人でさえないラインハルトの情動を類推して期待」というヤンと「ヤンに艦隊戦で勝利したい」ラインハルトでは酷評やむなき所でしょう。

> P.S もしS.Kさんの都合が宜しければ、
> メールで意見をまとめるというのはどうでしょうか。

 そうする事が有意義である事を提示していただければ構わないのですが「異論の討議乃至すり合わせの過程」を参加者とROMに開陳する事もお互い同意見の他の方々もいる以上それなりに有益ではないかと思うのですがこの点いかがでしょう。

> 私の疑問は、ガイエスブルク要塞を移動させた事実が冒険風ライダーさんのいう 恒久的移動要塞と言えるのかと言うことです。
> シャフト科学技術総監は「要塞砲に対して要塞砲で対抗する」という
> (天才か、ド素人の発想だと私は思ってしまうのですが)ロマンあふれる面白い発想の元に計画しているわけで移動要塞を造る事が目的ではなく、要塞を移動させることだけが目的であると言えるのではないでしょうか。このことは、工期も一ヶ月程度で出来た原因の一つの可能性を示しています。

 ラインハルトまでシャフトの「男のロマン」に付き合う必然性はありません。
 技術士官がそう考えたからといって「兵器の有効活用」を考えない軍人は二流の人材と呼ばれて文句は言えますまい。
「イゼルローン攻略艦隊の母港兼後方支援兵器兼イゼルローン破壊後の回廊制圧拠点」くらいの使い道はラインハルトはもちろんケンプもミュラーも考えたでしょう。
 そうでなければこの発想を発展させて要塞砲とジェネレーター兼航行エンジンを直結させた「要塞砲艦」でも何隻か建造したほうが期間はかかっても有効だったでしょう。

> しかし、これ以上の考えは述べて無いわけで、そのような物であるからエンジン部に弱点を抱えたと言えるのではないでしょうか。
> ラインハルトは兵器技術士ではない以上、分からなかったとしても無理はないでしょう。

「要塞特攻に失敗した」で欠点というのは「顕微鏡で釘を打ったら曲がった打ち方になった上に壊れた。顕微鏡とは使えない道具だ」という評価に近いのでは。

> 銀英伝のなかでこれこそ、移動要塞という兵器の存在がはっきりと分かるところがあるのならばぜひ提示していただきたいです。

 銀河英雄伝説3巻(文庫版5・6巻)全部。
 ガイエスブルグ移動要塞は運用を間違えただけです。
 主将が思考に柔軟性と応用力のあるロイエンタールか、若輩ながら才幹にあふれかつ若輩だからこそ新規の技術運用にさほどの違和感も覚えないであろう副将ミュラーの提言に積極的に耳を傾ける度量を持つミッターマイヤー(こちらのタイプの主将ならシュタインメッツやワーレンでも悪くない人選だったでしょう)ならまた違った結果が出たでしょう。

> また、ヤンやユリアンの言動を見る限り、逃亡する場合の話しではないですか。帝国でゲリラ行為をするという記述は全く無いですし、何とか自給できると言っていることから、戦闘行為が起こると自給に支障を来たす可能性もあります。自給が出来るからといって、消耗戦になれば間違いなく負けます。

「まあ個人的には、移動要塞を使った和平条件としては「我々は第二の長征一万光年を行うので、帝国側は一切の追撃を行わないこと」とするのが、一番話が手っ取り早く、かつ双方共に満足する和平条件になるとは思いますがね。これならば帝国側もあっさり飲むでしょうし、移動要塞側も長征先に未来への可能性を見出すことができます。(冒険風ライダーさん No.3683 Re3674:諸々レスより抜粋)」
 私のお勧めで考察過去ログを読んでいただいてのお話でしたら恐縮ですが長期の論議の末上記の考えを有効としておられますが。
 進行中のスレッドまで読まないのは失礼ですよ。

> 第3に要塞内の統治方法にしても、独裁体制は軍事行動もする以上、ぎりぎり受け入られるでしょう。また、長期間になれば選民思想を取り入れることは維持のためには有効な手段と言えます。確かに、独裁官というのは民主主義の一形態としてありますけど、この体制は民主主義と言えるんですか?どちらかと言えば最近話題の近隣国といい勝負としか思えないですね。

 現実の似た様な成り立ちの国で、指導者の資質と国民性の違いでキューバは結構うまくやっている様ですよ(社会主義国家ですが)。
「上手くいくあてもない理想より現実を見ましょう」とシェーンコップあたりは言い飽きたでしょうし「先の話は勝つかヤン提督がおかしくなってからの話さ」とアッテンボローやポプランあたりは言うでしょう。

> また、オーディン攻撃を実行するとき、はたして指揮官は実行できるのでしょうか?良くて拘束、悪くて銃殺のいずれかの可能性の方が高いと考えるのは自由惑星同盟人民を信用し過ぎですか?しかも反骨精神旺盛な方々がいらっしゃるのに。

「人格の高潔さと公正さ」においてかのオーベルシュタインさえ疑念を挟まない(9巻叛乱終結後のフェルナーとの会話より)ミッターマイヤーは5巻バーミリオン会戦において無防備の惑星ハイネセンへの攻撃を表明する事で同盟政府を脅迫してヤンに降伏を強要しましたが。
「緊急避難」という概念は存在します。
 まして8巻時のヤン一党はこの時のミッターマイヤーを遥かに上回る危地にいるのですから。

 あと文章を逆順にして申し訳ありませんが

> 彼らにも愚かしいことはありますし、矛盾もあります。しかし、長所と短所はコインの裏表、見る方向で評価も変わるものです。
> そんなことは今も、昔も、大差ないからこそ歴史は面白いと思います。

 上記を理解しておられるなら

> そして移動要塞ことよりも、一番大きな問題は、ラインハルト、ヤンをこの一事で無能とすることが正当な評価といえるのかということです。そして、仮に彼らが無能だとしたら、彼らについてきた諸将は無能なのか?大衆は?そして、読者はどうなるのか?
> と言うような疑問が沸いてきます。

 必要のない疑問でしょう。
「移動要塞論」での両雄批判はこの題材に限ってのものですから(一応は)。

収録投稿259件目
board4 - No.3705

Re:移動要塞の技術問題について

投稿者:S.K
2003年02月20日(木) 21時55分

>  私が言いたかったのは、「移動要塞肯定派の方のどなたからも反応が来ないので」という意味です。この辺りの問題について、肯定派の方々がどのように整理しているのか知りたかったのです。

 同スレッドのパンツァーさんのKenさんへのレスや拙いながら私のa-ruさんへのレスなどご覧いただけますか?
 パンツァーさんは完成度の高い、私は一応程度の説明になっていると思いますが。
 Nightさんへの直レスではない失礼はお詫びいたしますが否定派のどなたに申し上げても肯定理由と内容が相手の方で変化するわけではありませんので。
 そもそも移動要塞論考察者御本人の冒険風ライダーさんがこの件での意見を開陳しておられるので「移動要塞肯定論」のサンプルは充分揃っているのではないでしょうか。

収録投稿260件目
board4 - No.3706

Re:「詭弁」「言いがかり」であることの明らかな根拠

投稿者:Ken
2003年02月20日(木) 23時12分

パンツァーさん、

了解しました。私の#3625での発言は、たしかに要塞のみならずすべてのものに演繹証明を求めている、と解釈されてもしかたがありません。私の自覚としては「詭弁」を弄したというより、艦船のことなどまったく念頭になかったのですが、論理的には矛盾があり、詭弁と言われても反論できないでしょう。ご迷惑をおかけしたパンツァーさんと冒険風ライダーさんに、謹んで謝罪をさせていただきます。

申し訳ありませんでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

上のことを言った上で、あらためて主張をします。

艦船には求めない演繹証明を、恒久移動要塞に求めることは、不当ではありません。

理由は簡単です。銀英伝世界の宇宙船の移動には、帰納を行うに十分な例証があるが、恒久移動要塞には貧弱きわまるものしかないからです。帰納ができないものを証明しようとするなら、残る手段は演繹しかありません。それができないなら、仮説そのものを撤回すべきです。

銀英伝世界では、艦船の移動は千年以上の歴史があります。地球対シリウスの戦いも艦隊戦です。宇宙を航行する艦船は、しばしば数万隻の単位で登場します。

歴史が長く数が多いだけではありません。その移動形態も実に多様です。移動距離で言えば、ジェシカが「ハイネセンの隣の惑星テルヌーゼンに」帰った短距離便から、ビッテンフェルトのいう「一万数千光年の征旅」までそろっています。航行環境も、「穏やかな宙域」「レグニッツァの大気中」「恒星アムリッツァの巨大な炎の影」「ランテマリオの潮流」「ブラックホールの半径ぎりぎり」と一様ではありません。そしてなによりも肝腎なことですが、これらはすべて、「某艦船(艦隊)がこのように航行した」という直接記述です。

これほどまでの観察例があればこそ、ピタゴラス型の証明がなくても、銀英伝世界の宇宙艦船が、宇宙の各所へ航行できることは、立派な作中事実となっているのです。

ところが、移動要塞となると、ガイエスブルグの一例しかありません。一つの例証に基づいての帰納など、帰納の名に値しません。

>こんな方法が適用できるなどという結論が一人歩きされたのでは、たまったものではありません。

わずか一つの事例をもって、「帰納した」の「立証した」のという結論が一人歩きしたら、地道な観察を積み上げることで、本物の帰納をしたブラーエやケプラーは、たまったものではありません。

そして、恒久移動要塞可能説をとなえる人たちは、事例が一つではないと主張するために、途方もない歪曲をしています。パンツァーさんの言葉を借りれば「詭弁」を弄して恥じるところがありません。

<第一、それはイゼルローンの食糧生産・貯蔵能力を大きく凌駕していた>
<貴族のばか息子どもが、穴のなかにひっこんでいれば長生きできるものを、……(略)……>
<……(略)……イゼルローン要塞を橋頭堡として、また補給拠点として利用できたからである。>
<つまり帝国軍は、今度は艦隊を根拠地ごと、ここまで運んできたわけだな。>

これらは、従来から挙げられていた、

<イゼルローン要塞にとどまっているかぎり、食糧も武器弾薬もどうにか自給自足できる>
<五〇年後には、おれは九〇歳近くになってしまうな、生きていれば、だが>

と同種の「根拠」です。これで「無限の自給自足能力」を持つ移動要塞が実現できると主張しているのです。

こんなモノの、どこが「根拠」ですか。

40兆トンを越える質量を宇宙のあちこちへ引っ張りまわすことと、上の記述と何の関係があるのですか。上はすべて、静止要塞の自給を述べているだけではないですか。「我が家はソーラーパネルの自家発電。テレビも洗濯機もソーラーパワーでうごく」と自慢する人が、調子にのって家屋に新幹線のモータと車輪を取り付け、公道を走ろうというのです。「それはできない」という反論に、「バカか、お前。テレビも洗濯機も新幹線も電気でうごくんだ。ウチのパネルは、その電気をつくるんだぞ」と、いきまいているのです。

ソーラー発電が備わった家があることを、どうこねくりまわしたら、その家があちこちへ動き回るに十分なエネルギーがあるという結論になるのですか。

この巨大すぎる詭弁は、すべての始まりとなった「銀英伝考察3」の冒頭の書き込みが起源となっています。非常な長文ですが、イゼルローンを題材にした、要塞の自給能力の部分を要約すれば、以下のようになります。

50年無補給で活動できる → 半永久的に機能し続ける → 無限の自給自足能力をもつ → 移動要塞が無限に活動する

はじめは「50年」だったのが、「半永久」にすりかわり、やがて「無限」の自給能力をもつことになりました。さらには、すべて「静止要塞」の話だったのが、移動のエネルギーなど完全に無視して、「恒常的に動く」要塞でも同じことができることになりました。ひとつの表現から次の表現へ転じるとき、演繹はもちろん帰納すら行われてはいません。すこしだけ意味の似ている言葉に順に置き換え、前提から超絶飛躍した結論へもっていったのです。

噴飯ものの「考察」は続きます。

恒久移動要塞の成立に必要な2つの要素、つまり大質量の移動と無補給の長距離移動を「立証」する根拠として、

1.質量234兆トンのイオン・ファゼカス
2.燃料補給の心配がない艦船の長距離移動

が、ことあるごとに持ち出されました。2つの要素の片方だけ成立する事例を1つずつもってきて、それが、2つ「同時に」成立することの証拠にされてしまいました。燃料のいらない帆船で世界を周航したマゼランと、20万トンのタンカーとを例に挙げ、タンカーが風の力で地球を一周できることになりました。

無茶苦茶です。

まだ続きます。巨大な歪曲の三つ目は、いわゆる「既知の物理法則」に関するものです。

当初はまともなものでした。銀英伝世界を我々が知る物理が支配するという記述はないから、恒久移動要塞可能説を、物理法則を根拠に否定するのは不当である、というもっともな主張でした。

ところが「肯定派」はそこから大きく踏み出し、銀英伝世界はファンタジーの世界であるとして、否定派が「自分の」仮説を支持するため既知の物理法則を持ち出すのも禁じ、それをやれば「銀英伝世界の破壊」と決め付けました。物理法則に関する記述がないのを幸い、「銀英伝世界は、我々ファンタジー軍が占領統治する」と一方的に宣言したのです。

以上に挙げたことが歪曲や詭弁でないとしたら、いったいなんだというのですか。

「細部」に関して。

>意図的かどうか知りませんが、記載事実を曲げるのは、歓迎できないですね。

私は、銀英伝の本伝十篇と外伝三篇(外伝2は読んでる途中)を読み、艦船の質量に関する唯一の記述を紹介したのです。「記載事実を曲げる」とは、どういう意味でしょうか?私が数字を改変したといいたいのですか?それとも、より信頼性のある数字を見つけたのですか?

>そして、質量が重ければ、それに対応して、出力が必要となるだけです。
>出力が不足すれば、加速に時間を要するというだけの話です。

なんですか、これは?

既知の物理法則を否定していたのが、一転して肯定することに決めたのですか?それとも、自分の主張の味方をしてくれる物理則なら、よろこんで採用するのですか?

しかも、上の記述で何を言いたいのですか?

大質量の加速には大出力と長時間が必要である・・・当たり前です。そして、そのことこそ、大質量の移動には大きなエネルギーを要するということではないですか。エネルギーは出力と時間の積分だと高校で教わらなかったのですか?それともまだ中学生ですか?

質量40兆トンの要塞と20万トンの輸送船を同じ速度まで加速すると、要塞の方が2億倍も多量ののエネルギーを使うのです。ここまで条件が異なるのに、艦船のエネルギー事情を、要塞に当てはめてなにをしようというのですか?

最後に、

>「このような主張をされる以上は、」っていうのは、「銀英伝の二人の英雄を「愚か者」呼ばわり」することですよね。

>例えば、「このような主張」をしない場合は、
>「自分以外の仮説が決して成立しないことまでも立証する責任」
>がないのですか?
>主張の内容によって、「立証する責任」の中身が変化するわけはないでしょう。

私の文章力は貧弱かもしれませんが、いくらなんでも上記は誤読の度が過ぎます。「このような主張」とは、「自分はあることを証明した」という主張です。当然、自分以外の仮説が成立しないことを証明する責任があります。

今回の投稿は以上です。

収録投稿261件目
board4 - No.3707

Re:移動要塞の技術問題について

投稿者:RAM
2003年02月21日(金) 00時02分

S.Kさん、こんばんわ。

> 同スレッドのパンツァーさんのKenさんへのレスや拙いながら私のa-ruさん
> へのレスなどご覧いただけますか?
> パンツァーさんは完成度の高い、私は一応程度の説明になっていると思いますが。
>  Nightさんへの直レスではない失礼はお詫びいたしますが否定派のどなた
> に申し上げても肯定理由と内容が相手の方で変化するわけではありませんので。
>  そもそも移動要塞論考察者御本人の冒険風ライダーさんがこの件での意見を
> 開陳しておられるので「移動要塞肯定論」のサンプルは充分揃っているのでは
> ないでしょうか。

これまでのやり取りの全てとは言いませんがログは読んでおります。
失礼ですがそれでもNightさんの質問の回答らしきものがどれなのか分からない
んですけど…。私の読み落しでしょうか? それとも読解力がないのでしょうか?

Nightさんにしても回答がどれか分からないもしくは的が外れていると感じたので
質問したのではないかと思います。

お手数ですが、質問の回答部分がどのレス番号のどの部分かもしくはもっと
分かりやすくご教授頂けないでしょうか。

すみませんがお願いします。

収録投稿262件目
board4 - No.3716

横レス失礼

投稿者:平松重之
2003年02月22日(土) 02時11分

<どちらも輸送艦で、前者は20万トン、後者は10万トンです。艦船の質量に関して、これ以外の記述がある場合は、どうかご教授願います。ただ、これしか記述がないのなら、読者としては、艦船の質量はおおむねその程度と推測する以外にないだろう、と考えた次第です。>

<意図的かどうか知りませんが、記載事実を曲げるのは、歓迎できないですね。>

<私は、銀英伝の本伝十篇と外伝三篇(外伝2は読んでる途中)を読み、艦船の質量に関する唯一の記述を紹介したのです。「記載事実を曲げる」とは、どういう意味でしょうか?私が数字を改変したといいたいのですか?それとも、より信頼性のある数字を見つけたのですか?>

 おそらくKenさんはノベルズ版の記述を、パンツァーさんは文庫版の記述をそれぞれ参考になさっているのでしょう。実は、ノベルズ版の後に出版された文庫版やコミック版ではこれらの数字が修正されているのです。
 例えばノベルズ版では「5000万人の180日分の食糧は1000万トン必要」だと書かれていますが、コミック版では「5000万人の90日分の食糧は50億トン必要」と修正されています。
 という訳で、別にKenさんが記載事実を曲げた訳ではないと思います。まあ、この場合は修正された数字の方を採用するべきだとは思いますけど。

収録投稿263件目
board4 - No.3717

Re:横レス失礼

投稿者:Ken
2003年02月22日(土) 02時54分

平松さん、こんばんは。

記述内容に変更がありましたか・・・

それにしても、

5000万人の180日分の食糧は1000万トン必要 = 1人1日1.1キロ
5000万人の90日分の食糧は50億トン必要 = 1人1日1.1トン

となりますが。しごく常識的な数字から、わざわざ途方もない数字に変更されたのですね。田中氏はなにを考えたのでしょうか?

ノベルズ版と文庫版がどう違うのかよく分かりませんが、本掲示板に投稿する多くの人が、「何頁の上段」とかいう形で引用箇所を指摘しているのをみると、私が持っているのと異なるようです。私のには「上下段」はありませんので。

これからもよろしくお願いします。

収録投稿264件目
board4 - No.3718

Re:移動要塞の技術問題について

投稿者:S.K
2003年02月22日(土) 13時40分

 RAMさん御丁寧にどうもです。
 遅くなりましてすみませんが御要望にお応えいたしましょう。
 あと肯定派意見で不沈戦艦さんのお名前を忘れておりました事をRAMさん
不沈戦艦さんにお詫び申し上げます。

 ただし一点、「的が外れていると感じた」から「回答されてない」というのはいささか受け手側の身勝手ではあるまいかと思いますのでその点御了承下さい。
 いかなる形であれ回答は回答であり「意を汲めない」から「無視された」というのは事実に反します。

> (1) イオン・ファゼカスは大質量ワープの実例ではない
No.3635 NIGHTさんの質問)

> 「イオン・ファゼカス号はワープできなかった可能性がある」とか「ワープできても航続距離が極めて短かったかも知れない」ということを前提にしてそういうことを言うのなら、それは単に「勇気と無謀を取り違えいる」という類でしょう。「賭け」ではなく「自滅願望」としか言いようがありませんね
No.3628 不沈戦艦さんレス抜粋)

> <「新しい技術と言うわけでもない。スケールを大きくしただけのことだろう。それも、どちらかというと、あいた口がふさがらないという類だ」言わずもがなの異論を、シェーンコップが唱える>
>
> シェーンコップでなくても、現代の我々でも、当然の予測ですね。
> 「艦船の移動」の証明が終わった時点で、「移動要塞」に関しても大半の証明が終わっているのです。
> そして、(質量を問わぬ)「物体の移動」に関する理論に、ガイエスブルグ要塞のような大質量を代入してみると、この場合も成立した。つまり、「物体の移動」に関する理論は、大質量の場合でも成立した、ということです。
>
> だから、
> 「艦船(質量数万トン以下の構造物)」であったにせよ、「物体の移動」に関する理論が構築された段階で、大質量に関しても「原理的に可能」の域に、必然的に達してしまうのですよ。
> そこに、大質量の実例としての、ガイエスブルグ要塞が、ほとんど問題もなく実現された記載が存在しています。
> 他にも、「艦船(質量数万トン以下の構造物)」よりも大質量の例としては、例の氷塊もあれば、イオンファゼカス号もありますよね。
No.3669 パンツァーさんレス抜粋)

> また、イオンファゼカス号に関しても、Kenさんの「仮定」を用いても、少なくとも半光年くらいは移動したのだから、大質量体の移動が、「実際的に可能」とされた例となりますね。
No.3685 パンツァーさんレス抜粋)

 補足しますとイオン・ファゼカス号が航行中事故死したアーレ・ハイネセン以下を除く第一長征世代存命中に惑星ハイネセンに到達した描写は作中にありますよ(生憎今原作は手元にないのでこれは自力で探してください。作中の同盟建国史部分です)。
「イオン・ファゼガス号が」です
 ワープ無しにどうやって?

> (2) 自給自足艦隊は実現できない
(No.3635 NIGHTさんの質問)

> > でもそれには理由があります。今回の議論に対する私のスタンスは、「恒久移動要塞が可能と断じるにも、不可能と断じるにも、銀英伝の記述は不十分」というものです。これに対して、冒険風ライダーさんのスタンスは、恒久移動要塞の現実性やそのベースとなる「無限の自給自足能力」は銀英伝世界において、存在が「立証」されている、というものです。冒険風ライダーさんは、銀英伝世界では、恒久移動要塞や無限の自給自足システムができるかもしれないという「可能性」を指摘されたのではありません。それ以外に解釈のしようがない、と言われているのです。
>
> 1「これに対して、冒険風ライダーさんのスタンスは、恒久移動要塞の現実性やそのベースとなる「無限の自給自足能力」は銀英伝世界において、存在が「立証」されている」
>
> 私は今、銀英伝全10巻を読み進めているところですが、
> 例えば、銀英伝考察3で出てきた引用も含めて、以下のような記載があります。
>
> A銀英伝1巻P190上段17行目
> <第一、それはイゼルローンの食糧生産・貯蔵能力を大きく凌駕していた>
> (生産能力を有している点に注意)
>
> B銀英伝2巻P161下段13行目
> <貴族のばか息子どもが、穴のなかにひっこんでいれば長生きできるものを、わざわざ宇宙の塵となるためにでてくるとはな>
> (穴とは、ガイエスブルグ要塞を指す)
>
> C銀英伝3巻P44上段10行目
> <―かつて帝国軍が敵の勢力範囲の奥深く侵攻しえたのは、イゼルローン要塞を橋頭堡として、また補給拠点として利用できたからである。>
>
> D銀英伝3巻P140下段7行目
> <つまり帝国軍は、今度は艦隊を根拠地ごと、ここまで運んできたわけだな。>
> (根拠地とは、ガイエスブルグ要塞を指す)
>
> A・C・Dより伺えるのは、要塞(イゼルローン要塞とガイエスブルグ要塞とを区別しないが)は、補給源として機能しうる、ということですね。
> 特に、Aでは、イゼルローン要塞で負担しきれない補給を、ハイネセンに求めています。ということは、帝国軍が焦土作戦(生活物資の撤去)を取らなかった場合、同盟の艦隊は補給に窮することはなかったと推測されます。
>
> また、Bに関連して、貴族連合軍の戦略を検討してみると、かれらは初めからオーディンを放棄して、ガイエスブルグ要塞を根拠地としているのです。もしも、ガイエスブルグ要塞が「半永久的な」補給源として機能しないのであれば、かれらは簡単に兵糧攻めを受けてしまうわけで、ラインハルト軍は、黙って待っていればよい、ということになります。
>
> 「無限の自給自足能力」は銀英伝世界において、存在が「立証」されていないとすれば、以上の「引用」と、明らかに矛盾することになります。
> 特に、「無限の自給自足能力」がないとしたら、貴族連合軍の戦略など、まったくバカですね。
>
> 2「銀英伝世界では、恒久移動要塞や無限の自給自足システムができるかもしれないという「可能性」を指摘されたのではありません。それ以外に解釈のしようがない」
> もし、これを否定するとなると、上記4つの引用は、どのように解釈するのでしょうか?
No.3685 パンツァーさんレス抜粋)

 何をもってこれが納得の可否を問わず回答であると解釈なさらないのか理解できません。

> (3) イゼルローンを本当に移動要塞化できるのか?
(No.3635 NIGHTさんの質問)

> 1.ガイエスブルグ移動要塞は、元の位置→ヴァルハラ星系→イゼルローン要塞という移動を「作中事実」としてやってのけた。また、その歳にあれほど補給を重視するラインハルトが、エンジンの同調という技術的問題について言及してはいても、移動要塞の補給については気にもしていない。
> 2.重量としては、ガイエスブルグやイゼルローン以上の、「長征一万光年」のイオン・ファゼカス号のような「超巨大ドライアイス船」が、奴隷階級に落とされていたような連中の、帝国からの脱出に使用できたという「作中事実」がある。
>
>  で十分でしょう。帝都からイゼルローン回廊までだって、大した距離なのです。「イゼルローン回廊までは、安全な帝国内の移動だったから、補給を繰り返しながら何とか行けただけかも知れない」って説明の「作中事実が裏打ちしている根拠」は何なのですか。Kenさんは、何も示していないではないですか
No.3611 不沈戦艦さんレス抜粋)

> 銀英伝3巻P45上段13行目
> <現在のワープエンジンの出力では、巨大な要塞を航行させることはできないので、一ダースほどのエンジンを輪状にとりつけ、それを同時作動させることになる。技術上の問題はなく、あとは指揮官の統率力と作戦実行能力の如何による・・・。>
>
> これはシャフトの台詞ですが、「移動要塞論」を否定したいがために、「技術上の問題はなく」という台詞を否定しますか?
> それこそ、銀英伝の否定ですよ。
>
> 繰り返しますが、質量が大きくなることで、加速時間を要する、ということだけが考えられる問題点です。
> 「現在のワープエンジンの出力では、巨大な要塞を航行させることはできない」
> と書いてある所以です。
>
> ☆Kenさんの「帰納」法
>
> > 恒久移動要塞を可能と帰納するための例証は、依然としてガイエスブルグしかありません。例証が一つしかないというのは、一般則を帰納する上で、重大な障害であると思います。
>
> 上で述べましたが、
> 「一つの帰納」によって、「大結論」(移動要塞論)が導かれないからといって、それは「作品の仮定の証明」ができない、ということを意味しません。
>
>
> 「物体の移動」に関する信頼性に値する理論が、(質量の異なる)「艦船の移動」による帰納により証明されて、存在する上であれば、
> 既に「質量」を問わず、原理は確立しているのです。
> 上記のシャフトの台詞「技術上の問題はなく」も、無視しますか?
>
> むしろ、ガイエスブルグ要塞という実例が存在することにより、「原理的に可能」が「実際的に可能」の段階まで高めれているのです。
No.3685 パンツァーさんレス抜粋)

>  同盟側は「“できるかもしれないのでやってみる価値”がある」(原作6〜8巻時点)が妥当な結論ですね。
> 古来の戦争のセオリーで「援軍のない篭城戦は必敗する」は例外は無かったはずでかつ「防御側に対して3倍以上の戦力で攻撃した場合の勝率は高い」も攻撃側に致命的な錯誤がない限りおおむね通用します。
> そして流石にラインハルトもこの点についてはほぼ戦略的失策を犯していないのでおそらくフィッシャー戦死後の「回廊の戦い」は「ヤン艦隊壊滅(もしくは壊滅的打撃)の後回廊両側面からの艦隊砲撃か漫画版のシトレ元帥が試みた無数の無人艦特攻などで要塞陥落」の流れに本来なっていた可能性は極めて高いと思うのですが。
> しかし逃亡できるなら話は別です。
> この時点でヤンは「無尽蔵の補給港」を持って艦隊戦力と共に逃げてこそ無用の人死にを避け勝機を待つ事ができたのです。
> これについては「駄目で元々」で移動要塞プランに着手して非難されるいわれはまずありません。
> おそらく一番あの時点で混乱が少なかったであろう「投降して帝国に釈明する」を選択できなかった時点でどうあれヤンは「戦う」選択をしたのですから「100%の敗北」を避けるあらゆる努力を試みるべきではなかったでしょうか。
No.3610 拙文より抜粋)

 とりあえず最低限の範囲で以上ですが御納得いただけましたでしょうか。

収録投稿265件目
board4 - No.3720

Re:移動要塞の技術問題について

投稿者:古典SFファン
2003年02月22日(土) 15時10分

・・横レスですが・・・

> > そこに、大質量の実例としての、ガイエスブルグ要塞が、ほとんど問題もなく実現された記載が存在しています。
> > 他にも、「艦船(質量数万トン以下の構造物)」よりも大質量の例としては、例の氷塊もあれば、イオンファゼカス号もありますよね。
> (No.3669 パンツァーさんレス抜粋)
>
> > また、イオンファゼカス号に関しても、Kenさんの「仮定」を用いても、少なくとも半光年くらいは移動したのだから、大質量体の移動が、「実際的に可能」とされた例となりますね。
> (No.3685 パンツァーさんレス抜粋)

あの・・・
大質量物体の航行例として挙がっているうち、氷塊はワープではありません。亜光速航行です。
むしろ、氷塊は「帝国はともかく同盟は、大質量物体をワープさせていない」例です。

純粋に作中の記述のみを元に述べます。
氷塊       ・・ワープ× 亜光速○ 通常航行?
要塞       ・・ワープ○ 亜光速? 通常航行○
イオンファゼカス ・・ワープ? 亜光速? 通常航行?

イオン・ファゼカスがワープしたとは、作中には書いていません。
要塞が亜光速航行したとも書いていません。
氷塊がワープしたとも書いていません。

これらは「大質量ワープ」の話題で横並びにするには不適当だと思われます。
パンツァーさんの並べ方は「大質量物体の航行」で、それはそれで正しいのですが、Nightさんの話題は「ワープ」に関するもので、
それに関する例として妥当とは思えないのですが?

>  補足しますとイオン・ファゼカス号が航行中事故死したアーレ・ハイネセン以下を除く第一長征世代存命中に惑星ハイネセンに到達した描写は作中にありますよ(生憎今原作は手元にないのでこれは自力で探してください。作中の同盟建国史部分です)。
> 「イオン・ファゼガス号が」です
>  ワープ無しにどうやって?

これも横レスだったので、S.KさんとRAMさんの質疑応答にはあまり関係ないのかも知れませんが・・
私は、自分なりにこれに対する回答を持っていましたし、Nightさんにも返しています。
ワープでないとしても、他の恒星系に楽に到達する手段はあの世界にはあるのです。
ヤンも使っています。

これは直接には作中には書いていない話なので、あくまで推定です。
しかし、
1.ヤンたちの時代には、要塞ほどの大質量ワープの技術は帝国が開発するまで存在しなかったはず(シェーンコップたちの台詞より)
2.作中ではイオン・ファゼカスがワープを使ったとはどこにも書いていない
3.大質量物体(氷塊)が亜光速で運動し、ヤンがそれを「アーレ・ハイネセンの故事に習った」と2巻で発言している事

特に3が重要です。
ヤンが文字通りの事を喋っているとすると、イオン・ファゼカスは亜光速航行していたという事以外の何者でもないからです。

それと、作中でイオン・ファゼカスは同盟まで航行していません。
同盟の祖先たちは、「無名の惑星の地下に潜み」50隻の船を建造しています。
イオン・ファゼカスは、作中でもあまり遠くまで航行していないのです。

イオン・ファゼカスがどのくらいの距離を航行したかという記述は作中にありません。
しかし、実は亜光速の物体にとって、そんな事は問題ではないのです。
「亜光速の物体の時間は遅くなる」
ウラシマ効果と呼ばれる物理的現象が、この世界にはあるのです。

物体は光速に近づくほど、その時間の進行が遅くなります。

光速に近づけるだけ近づいている場合、物体の時間と外界の時間の流れ方の違いは、「外界では何百年と経っているのに物体のほうでは一瞬」
という事もあり得るのです。

ワープ航法なしでも、他の恒星系に到達するまで中に乗っている人が生きている事は出来るのです。

到達に何年か、あるいは10年くらい掛かったとしても、大半が亜光速であったとしたら、他の恒星系に到達するまで、船内の時間はあまり経過しないのです。
それに、2巻でヤンが氷塊を加速するのに使った、バサード・ラムによる恒星間ラムジェットは、光速付近に達していれば燃料補給を必要としません。
楽に亜光速を保つ程度の事は出来るのです。

それから・・・
アルタイルから半光年などというところに恒星系はありません。
たしか、どこも数光年以上は離れています。
ワープなしで航行するには最低そのくらいの歳月は(外界から見て)かかるはずですが、船内でそれだけの時間が掛かったとは限りません。

あと、「アーレ・ハイネセンの事故死」についてですが・・・
亜光速の物体は、航行中より減速中が非常に危険です。
周りの物体との速度比が非常に大きいため、星間ガスの抵抗や、
前方からの短波長の強い電磁波に曝される危険があります。
減速に入ると船内時間と外界の時間は次第に同じ速さに近づいていきます(ウラシマ効果のメリットも消える)。
この期間中に何か、船外作業しなければならないような事があると、
その人物の死亡率は赤丸急上昇(死語)です。
・・・まあ、そういう記述は作中にないので、何があったのかは単なる妄想ですが・・。

収録投稿266件目
board4 - No.3721

Re:横レス失礼

投稿者:砂倉
2003年02月22日(土) 15時12分

> それにしても、
>
> 5000万人の180日分の食糧は1000万トン必要 = 1人1日1.1キロ
> 5000万人の90日分の食糧は50億トン必要 = 1人1日1.1トン
>
> となりますが。しごく常識的な数字から、わざわざ途方もない数字に変更されたのですね。田中氏はなにを考えたのでしょうか?
>
> ノベルズ版と文庫版がどう違うのかよく分かりませんが、本掲示板に投稿する多くの人が、「何頁の上段」とかいう形で引用箇所を指摘しているのをみると、私が持っているのと異なるようです。私のには「上下段」はありませんので。

初めまして、ROMですが、記載関係に関して少しだけ。
これは逆では?
ネット検索で見たらファイナルバージョンらしい文庫版(徳間デュアル文庫)は、1000万トンになっているようですよ。

ちなみに私の持っている新書版(TOKUMA NOVELS)は上下のある初刷が1982年の物です。
1991年の55刷が私の所持品ですが、50億トンと記載されているので、旧版では50億トンのままなのだと思っていましたが、
平松重之氏の投稿から推測すると、初刷からしばらくは1000万トンだったのでしょうか?
或いは、私の所持品の刷より後で修正されたとか。
平松重之氏の所持しているノベルズ(TOKUMA NOVELS)の刷番か、Ken氏の所持している文庫が徳間デュアル文庫で有ることが解れば、問題はないと思います。
それに修正された数字を採用するのなら、当然一番新しい銀河英雄伝説である、徳間デュアル文庫版の1000万トンを採用することになると思いますので。

収録投稿267件目
board4 - No.3722

Re:移動要塞の技術問題について

投稿者:古典SFファン
2003年02月22日(土) 15時32分

追伸:

要するに私は亜光速ミサイルからこっち「亜光速のオニ」になっているような感じですが(笑)、
「何でも亜光速」と主張したいわけではありません。

作中で使われた小道具と、ヤンたちの発言から推して、亜光速航行も十分に有力候補であると主張したいだけです。

以前、ワープ船を持っている相手に亜光速航行で逃げたら、たちまち追いつかれてしまうのではないかと言う話も(どこかで)あったような気もしますが、
「有効探知距離500〜1000光秒の世界」
では、1000光秒ずつワープして捜索をすることになります。

1000光秒ずつワープ、1000秒以内に捜索、1000秒以内にまたワープ・・・
を繰り返さない限り、1光日を捜索するのに1日、1光月を捜索するのに1ヶ月掛かり、
しかも敵の逃走したと推定される範囲は1日ごとに1立方光日ずつ増大していきます。
数日も経過すると、捜索範囲は文字通り天文学的なオーダーに達し、人間が建造可能な数の宇宙船では到底捜索できなくなるでしょう。

相手が航路をたどっていたり、危険宙域を避けなければならず要路になるポイントが限られる場合を除いて、あの世界の探知技術では、
亜光速であろうとワープであろうと、ろくに宇宙船を追跡する事が出来ない。
(航路封鎖や捜索などもそれなりにやっている事があるので、何らかの方法があるのは確かですが、ヤンたちが捕まらなかった例を見ても、待ち伏せや捜索が容易でないのは確かでしょう)

ゆえに、イオン・ファゼカスに関してだけは、その大きさと重さ、建造された時代、登場人物たちの会話から推定して、
「ワープよりむしろ建造が容易であったろう亜光速船ではなかったのか?」
と、私は推定しています。
(ヤンはあっという間に亜光速の氷塊を準備していますし)

収録投稿268件目
board4 - No.3723

Re:移動要塞の技術問題について

投稿者:Ken
2003年02月22日(土) 18時39分

<補足しますとイオン・ファゼカス号が航行中事故死したアーレ・ハイネセン以下を除く第一長征世代存命中に惑星ハイネセンに到達した描写は作中にありますよ(生憎今原作は手元にないのでこれは自力で探してください。作中の同盟建国史部分です)。
「イオン・ファゼガス号が」です
ワープ無しにどうやって?>

まさか意図的な「うそ」でもないでしょうが、上は作中事実の誤認です。黎明篇序章「銀河系史概略」より抜粋します。

***************************

白く輝くドライアイスの宇宙船はイオン・ファゼカス号と命名された。氷の小舟の製作者である少年の名である。四〇万人の男女がこの船に乗りこみ、アルタイル星系を脱出した。後世、歴史家によって「長征一万光年」と称されることになる長い旅路の、それが第一歩であった。

銀河帝国軍の執拗な追撃と捜索をかわして、彼らは無名の一惑星の地下に姿を隠し、そこで八○隻の恒星間宇宙船を建造すると、銀河系の深奥部に歩を踏み入れた。そこは巨星、矮星、変光星などの危険が満ちた巨大な空間だった。造物主の悪意が脱出者たちの頭上に次々と降りかかった。

***************************

なぜ、ハイネセンたちは、時間と労力をつぎ込み、帝国軍に発見されるリスクをおかしてまで、無名の一惑星で宇宙船を作らねばならなかったのでしょうか?

収録投稿269件目
board4 - No.3725

Re:移動要塞の技術問題について

投稿者:Night
2003年02月22日(土) 21時46分

 まず、申し訳ありません。下手な自己フォローでかえって皆様を困惑させてしまったようです。
 私が前回自己フォローを入れたのは、「誰からも応答をもらっていない」などと書いたままだと、直レスとしてついている古典SFファンさんやKenさんをまるで無視しているようにも取れるので、だとしたら誤解を解いておきたかったということでした。他の関連スレッドも一応読んではいたのですが、あまり私の投稿に関連することが書かれているとは思えなかったので読み飛ばしてしまっていたというのが真実です。以下で、その理由を含めていくつか説明を加えたいと思います。
(長くなるので、S.Kさんがまとめて下さった投稿の流れの引用は省略させていただきます。ご了承ください)

(1) イオン・ファゼカスは大質量ワープの実例ではない
 これに関しては、既に古典SFファンさんが投稿をして下さっているので、補足すべきことはあまりありません。
 イオン・ファゼカスに関する記述はそもそも非常に少ないです。私の知る限りでは、銀英伝1巻序章と、2巻の氷塊攻撃の引き合いに出された部分だけです(他にあれば是非教えて欲しいと思います)。それについて分かっているのは、それがドライアイスから作られたということと、40万人の男女がアルタイル星系を脱出するのに使われたこと、それらの人々は「無名の一惑星」で80隻の恒星間宇宙船に乗り換えて未知の宇宙に旅立った事だけです。実際に移動した距離や、ワープしたか否か、正確な質量すら全く不明です。
 問題だと思ったのは、以前の議論からの流れで、これが「大質量ワープ」の実例としてしばしば引き合いに出されるようになったからです。それに対して、私が主張したかった事は以下の通りです。

・大質量ワープは、帝国、同盟の双方にとって、銀英伝3巻の時点での新技術である。
・よって、それ以前のイオン・ファゼカスが大質量ワープしたとすると、帝国、同盟の双方で非常に御都合主義的な文明の衰退が起きたことを認めなければならない。
・イオン・ファゼカスがワープしたとしなければどうしても説明できないような事例もないのだから、強力な反例が見つかるまでは、これを大質量ワープの実例と考えるべきでない。

 残念ながら、S.Kさんがまとめて下さった投稿の流れは、このワープの問題に関して議論をしたものとは思えません。

(2) 自給自足艦隊は実現できない
 要塞の無限自給自足システムについて、私はかつて否定的でしたが、現在は「否定しきれないという意味での可能性はある」という位置に来ています。(正直、あまり納得できてはいないのですが……)
 ですが、「無限の自給自足艦隊」で冒険風ライダーさんが主張されている事はこれをさらにスケールアップしたものです。長征一万光年を引き合いに出した上で、これが宇宙船レベルでの無限の自給自足の実例であるとし、銀英伝世界では無限に自給自足できる艦隊が実現できるのだが、登場人物全てが固定観念に囚われていたのでそれが分からなかっただけだ、と冒険風ライダーさんは言っているのです。
 これは、銀英伝の記述全てを覆すような途方もない主張です。であれば、その主張の根拠となる事例は、寸分の疑いもなく立証された頑強なものでなければなりません。
 だからこそ私は、宇宙船レベルでの無限自給自足システムなど想定しなくても、長征一万光年を成功させることは可能だったのではないか、というアンチテーゼをこれに投げかけたわけです。
 S.Kさんがまとめて下さった投稿の流れは、「要塞」レベルでの自給自足について議論したものです。「宇宙船」レベルでの自給自足に関して議論をしたものではありません。

(3) イゼルローンを本当に移動要塞化できるのか?
 以前の投稿の繰り返しになりますが、私がここで主張したかった事は、肯定派の皆さんの主張の根底にある『ガイエスブルク要塞を移動要塞化できたのだから、同じ要領でイゼルローン要塞も簡単に移動要塞化できる』という論理の前半部は真であるが、それを以って直ちに後半部も真であるとすることはできない、ということでした。
 それを明らかにするために、要塞の大きさの違いを挙げた上で、前半部が真であっても、後半部が偽となるような例を挙げたつもりでした。
 これに対する反応は、当然、私が挙げた例への反論というような形になると思っていましたので、そうでない投稿は私への反応ではないと思ったのが真実です。
 S.Kさんがまとめて下さった投稿の流れを読みましたが、上の論理の証明、すなわち『ガイエスブルクを移動要塞化できたという事実から、(ほぼ)間違いなくイゼルローンも移動要塞化できるという結論を導く事ができる。体積が3倍になろうと全く問題はないのだ』と言うようなことを示したような投稿は見当たりませんでした。

 なお、「駄目で元々でやってみる」については補足しておきたいと思います。
 イゼルローンを移動要塞化できる可能性は、確かにあります。その意味で、この主張は正しいです。(私がNo.3700で否定しているのは、「努力さえすれば絶対実現できる」というような主張です。ガイエスブルク→イゼルローンの応用の途上で解決困難な技術上の問題にぶつかれば、いくら努力しても実現できないということはありえるからです)
 ですが、この移動要塞化成功の可能性が具体的にどの程度のものなのか、あまりに情報が少ないので我々には分かりません。一方、ヤンには「回廊の戦い」という選択肢もありました(こちらの勝算については別に投稿しています)。ヤンの苦しい台所事情を考えれば、両方の作戦に着手してどちらつかずになるより、一つの作戦に専念すべきであるというのは妥当な推測と思われます。
 二つの作戦のどちらの勝算が大きいかは、我々にはわかりません。であれば、「移動要塞化」を選ばなかったからといって、ヤンを一方的に無能、愚劣と断罪するのは誤りではないでしょうか。

収録投稿270件目
board4 - No.3726

Re:Re3691:勝算の実態

投稿者:Night
2003年02月23日(日) 01時13分

>  だから何度も言っているように「類稀なる僥倖」という「『結果として』発生した偶発的要素」から逆算して「ヤンに勝算があった」と結論付けるのは間違っていますって。その「実際にヤンがこの賭けに勝った」という事実は、ヤンの戦略構想とは全く無関係かつ想定外のところから出てきたものでしかなく、しかもラインハルトはイゼルローン要塞に籠もったヤンの手強さも、「回廊の戦い」で自他共に多大な犠牲が出ることをも全て承知の上で、「ヤンを叩き潰す」と宣言して遠征を行っていたのですから、そんな相手と和平が成立しえると考えること「自体」がすでに根本から間違っているのです。

 「類稀なる僥倖」に関しては前回も説明したので、もう言える事は余り残っていません。重要なのはヤンの善戦の結果、ラインハルトが置かれた状況である。きっかけなど無数にあり、病気も夢もその一つに過ぎなかったということを繰り返すだけです。(その夢にしたところで、たまたま偶然見たのではないのだろうということをヒルダが分析しているのですが)
 言うなれば、これは宝くじを買うようなものです。宝くじのどの一枚が当たるかを予測することは、それこそ「類稀なる僥倖」「ご都合主義」でもなければ不可能なことです。ですが、ある程度の量をまとめ買いすれば、この中のどれか一枚くらいは当たるだろうということは予測できます。この時、重要なのは当たるという結果だけであり、どの一枚が当たるかなど、買った人間には分からないし、また、知った事でもありません。私が言いたいのはそういうあたりまえのことに過ぎません。
 次に、『多大な犠牲が出ることを承知の上の相手とは和平が成立しない』ですが、ラインハルトは多大な犠牲を出す事は想定していなかったでしょう。そこまでの意義がこの戦いにはありませんし、イゼルローンにヤンがあろうとも、帝国軍にもラインハルトがあり、何より、彼我の戦力差はとても大きなものでした。次のような記述があります。(8巻P96)

> イゼルローン回廊に侵入する以前と較べても、すでにファーレンハイトとシュタインメッツの両上級大将が戦没している。自由惑星同盟を滅亡せしめた後、政治的にはその余喘に過ぎぬヤン・ウェンリーの一党に、これほどの苦闘を強いられるとは、皇帝ですら想像しえたかどうか。双方の戦力差と、戦いの目的とを考慮すれば、これまでのところは帝国軍の敗勢を認めざるをえない。

 ラインハルトには「本来、この親征はこうあるべき」という当初計画があったのでしょう。『圧倒的多数の兵力を揃えた上でヤンと一大決戦を構え、用兵の妙を以ってこれを打ち倒す。残存兵力については各個撃破してもいいし、降伏させても良い。いずれにせよ、こちらの圧倒的優勢は揺るがないのだから、大きな犠牲は出ないだろう』というような。また、彼我の戦力差を単純に考えれば、この計画そのものは間違っているわけではありません。
 ヤンの目論見は、その「本来こうあるべき」当初計画を戦術的勝利で打ち砕くことでした。帝国側に計画の見直しをさせれば、皇帝は優秀な戦略家なのだから『停戦、講和』という選択肢も当然考慮するだろう。それが、ヤンの狙いでした。

>  それに前の投稿でも書きましたけど、バーミリオン会戦時におけるラインハルトの対応から考えても、戦いを続けることによってラインハルトとの和平が成立することなどありえなかったことは一目瞭然なのですよ。バーミリオン会戦でアレほどまでに追い詰められていた時のラインハルトは、ヤンの目的が自分の生命を絶つことによって帝国軍を退却に追いやる事を充分に承知しており、逃亡すれば再起を図ることが可能であることも知っており、さらには周囲からさえもそのように進言されていたにもかかわらず、それでもあくまで逃亡を頑なに拒んでいたではありませんか。敗北寸前の状態でさえこの有様では、自らの優勢を信じ、勝勢に乗っている時ではなおのこと、和平交渉を自分から提案してくるなどという事態など、本来ならば到底考えられないことなのです。実際、例の「病気」と「夢」がなければ、ラインハルトはそのまま戦いを継続してヤンを打倒してしまっていたことでしょう。

 だから、『ラインハルトは頑固な性格ですから、犠牲が出ても頑なさを固持して、講和にならない可能性だって充分ある』ということは何度も言っています。
 それから、上で冒険風ライダーさんが出している事例を「回廊の戦い」にあてはめるのは不適切です。この事例やキュンメル事件のような事例から言えることは、ラインハルトは自己保存欲よりもプライドを優先させる傾向があるということだけです。見苦しく生き延びるよりは潔く死ぬことを選択するというような。
 「回廊の戦い」でラインハルトが迫られている選択は、あまり意義のない戦いで無闇に将兵を損なうことを続行すべきか否かということです。守るべき対象が自己か他者かという点で、この二つの選択の性質は大きく違っています。

 『勝勢に乗っている時ではなおのこと、和平交渉を自分から提案してくるなどという事態など、本来ならば到底考えられないこと』に関しては、地形や計略を使った善戦によってその「勝勢」を揺るがし、ラインハルトにとっての「本来ならば」を本来でなくしてしまうことこそがヤンの作戦の目的なのですと申し上げるしかありません。
 病気や夢については、もう説明しません。

>  さらに言えば、もし本当に「帝国軍に多大な損害を与えることによってラインハルトを交渉の場に引きずり出す」などという戦略方針を取るのであれば、そもそもイゼルローン要塞に立て籠もって防衛体制が完備した時点で、ヤン側から「我々は帝国と敵対するつもりはない、今後のことで話し合いたいので和平交渉の席を設けて頂きたい」といった類の提案を、自軍の軍事力を大々的に誇示しながら全宇宙に向けて発信することによって、ラインハルト以外の人間を動かせば良かったのです。
>  周知のように、あの愚劣な「回廊の戦い」はラインハルトひとりが周囲の反対を押し切って強引に行ったものでしかなく、周囲はことごとくラインハルトの出征に反対していました。そこに「和平」という揺さぶりをかけ、ラインハルト以外の人間を動かし、下から意見を突き上げさせることによって最終的にラインハルトが「動かざるをえない状態」に持っていき、和平を実現させた方がはるかに効果的なのです。成功すれば全く戦わずしてそのまま和平交渉に入ることができますし、成功しなくても、ラインハルトの侵攻を遅らせる時間稼ぎ程度にはなったはずです。
>  またこの策は、ラインハルト麾下の将兵の厭戦気分にも訴えることができます。ラインハルトはそうでなくても、実際に前線に出て戦う者たちにとっては、辺境の僻地にあるイゼルローン回廊などどうでも良いものでしかないでしょうし、ヤンの脅威を知る者も少なくはないのですから、「そこまでやる必要はあるのか」という感情を刺激することができるわけです。示威行為としては、実際に戦うことなどよりも、こちらの方がはるかに効果があります。
>  それに対して、ただ単に戦うだけでは、ヤンの側も損害が出ますし、ラインハルトの戦闘意欲を悪戯に刺激することによって、戦い自体が泥沼化・消耗戦化する可能性も出てきます。それは必然的に自軍の弱体化をもたらし、ただでさえ圧倒的な戦力差を更に拡大させる結果にも繋がりかねないでしょう。それではますますもって「対等の交渉」が行われる可能性はなくなっていき、最終的な破滅の結末を迎えるだけです。
>  武力とは政治的・外交的敗北を償う最後の手段であり、発動しないところにこそ価値がある。これは銀英伝の中でも語られている警句なのですがね。

 上で冒険風ライダーさんが仰っていることは全くごもっともと思います。というか、ヤンは当然そのような下工作の類はできる限りしたんじゃないでしょうか。してないという記述も特にありませんし。
 銀英伝の記述中に上のような話が見当たらないのは、結局、ラインハルトの意思が変わらなかったからでしょう。その後の話の大筋に変化があるわけでもないので、省略されたというだけではないでしょうか。

>  それにヤン自身、かつてユリアンに対してこんなお説教を垂れていたはずでしょう↓
>
> 銀英伝外伝2巻 P101下段
> <「戦略には、勘なんかの働く余地はない。思考と計算と、それを現実化させる作業とがあるだけだ。たとえば、ある方面に一〇〇万の兵力を配置するためには、兵力それ自体の他に、それを輸送するハードウェアと、一〇〇万人分の食糧と、それら全てを管理するソフトウェアが必要で、そういったものは勘からは生まれてこない。だから、職務に不誠実な軍人ほど戦略を軽視して、戦術レベルで賭けをしようとする。さらに無能で不誠実な軍人になると、精神論で戦略の不備や戦術の不全をごまかそうとする。食糧や弾薬を補給もせずに、闘志で敵に勝つことを前線の兵士に強要する。結果として、精神力で勝ったということはある。だけど最初から精神力を計算の要素にいれて勝った例は、歴史上にひとつもないよ」>
>
>  「精神力」のところを「ラインハルトに対する希望的観測」に置き換えて考えてみると、上で述べられている「無能で不誠実な軍人」という評価は、まさに「回廊の戦い」におけるヤンに対してこそ当てはまるものでしょう。ラインハルトの胸先三寸が当てになるという「根拠のない勘」でもって「戦略の不備や戦術の不全をごまかそうと」し、勝算が全く存在しないはずの戦いに、あるはずもない勝利の幻想を見出していたのですから。全く「回廊の戦い」というのは、ヤンが否定していたところの「最初から精神力を計算の要素にいれて勝った」最初の実例となるのではないのでしょうかね。もちろん「類稀なる僥倖に恵まれた『結果として』」ですが。

 別に、ヤンは意図的に戦略を軽視していたわけではないでしょう。特に同盟からの逃亡以降は状況がそれを許さなかっただけです。
 ただ、確かに冒険風ライダーさんの言うとおり、戦術レベルの勝利で戦略レベルの敗北を覆そうとするのは、不自然で無理があり、危ない橋を渡っているようなものです。しかし、ヤンとしては、民主主義を生き残らせるために敢えてその橋を渡ることに賭けるしかなかったのでしょう。
 別の橋(イゼルローン移動要塞化)を渡るという賭けについては、そちらの橋の強度が全く分からない以上、我々にはそれを選ばなかった事が賢明な選択だったのか愚かな選択だったのか、断定する術はありません。ただ、最近の亜光速ミサイルの話題を読んでいると、やはりそちらのシナリオは、たとえ移動要塞化に成功したとしてもテロリストの汚名を得た上に敗死のように思えます。(最初から長征一万光年に出るなら話は別ですが、それならば専用の宇宙船を大量生産する計画の方がマシのような気がします。移動要塞はワープに一回失敗すれば、そこで全てアウトです)
 「類稀なる僥倖」についてはもう説明しません。

>  あの当時のヤンがラインハルトと戦うことで唯一の勝機を見出すことがあるとすれば、それはバーミリオン会戦と同様、ラインハルトを殺すこと以外にはありえないのです。そして、それが全く不可能事であることなど、さすがのヤンですら認識できていたことでしょう。だからこそ、あの当時のヤンに勝算などありえないのです。

 これについても、もう繰り返しません。
 バーミリオンの時とは事情が違うことなど当たり前です。ヤンはラインハルトを倒しての勝機を狙ったのではない。もっと別の勝機を狙っただけです。

>  この議論で論じる際に重要なのは、戦時におけるラインハルトの対応「だけ」であることがお分かり頂けていますか? そりゃ確かにラインハルトは平民や部下達からも慕われてはいたでしょうし、政治面では多大な功績を上げてもいたでしょうが、それはあくまでも政治家として評価した場合の話であって、戦時におけるラインハルトの愚劣な「凶行」の罪を覆すものなどでは全くありえません。
>  実際、戦時におけるラインハルトは、それこそ「戦争狂」としか評しえないほどに戦争を追い求め続け、第8次イゼルローン要塞攻防戦、マル・アデッタ会戦、回廊の戦いと、明らかに「個人的矜持とプライドを満たす」という愚かしい理由などのために無為無用な戦いを自ら仕掛け、将兵を死地へ追いやってきたのです。そして、このような「凶行」に関しては、一般将兵の間からも「皇帝は戦いではなく流血をお好みあるか」だの「いつまで戦いを続けるつもりだ、もういいかげんにしてほしい」だのといった怨嗟を込めた不満が出てきていますし、オーベルシュタインもラインハルトの「戦争狂」的性格を「ゴールデンバウム王朝の門閥貴族とどこが違うのか」と批判していたではありませんか。その負の側面は決して肯定されるべきものなどではないのです。
>  政治家としてのラインハルトの評価と、戦略家としてのラインハルトの「凶行」はこの際分けて考えてください。私が論じているのは後者の方なのですから。

 私は、ラインハルトの負の側面を肯定する気などありません。正の側面は正として、負の側面は負として、それぞれ正等に評価されるべきです。私が前回、ラインハルトを不当に貶めているといったのは、冒険風ライダーさんが負の側面だけを並べ立ててそれがラインハルトの全てであると言っているように思えたからです。
 私が言いたいことは、『ラインハルトには「皇帝の為人、戦いを嗜む」という戦争狂としての一面が確かにあったが、「無益に兵士達を殺さない」と誓うような名君としての一面もあった。これはどちらかが真でどちらかが偽と言うようなものではなく、どちらもラインハルトと言う人格を構成する一部だった』というようなことです。

>  外交に限らず、あらゆる交渉や取引においても、基本的には力の強い者が弱い者に対して主導権を握るのは、力の論理から言っても当然のことです。たとえささやかな要求であっても、相手を威圧できるだけの軍事力を背景に要求しなければ、足元を見られて更に値切られることは確実です。一般社会においても、力の源が軍事力ではなく経済力や特殊技術、あるいは商品価値などだったりするだけで、本質的にはこれと全く変わることがありません。
>  そもそもラインハルトは、ヤンとその一党を全て滅ぼし、宇宙を統一することを望んでいたのでしょう? その望みの前では、「弱小勢力は弱小なりに宇宙の片隅で勝手にひっそり生きていきますので、その許可を頂きたい」などという「ささやかな要求」でさえ、本来ならば宇宙統一にとっては邪魔になるものでしかないのですし、将来的な禍根を残す可能性が全くないとは決して言い切れない「許されざる要求」なのです。ならばその「ささやかな要求」を押し通す「だけ」でも、相手を威圧し、自分達の要求を堂々と主張することができるだけの軍事力が必要になることは自明の理というものでしょう。ラインハルトの立場であれば、ヤンの「ささやかな要求」でさえも簡単に潰してしまうことができるのですから、「軍事力を背景にした対等の交渉」というのは、「ささやかな要求」を通すための最低必要条件でしかないのです。
>  「ささやかな要求」ですら聞き入れられないかもしれないほどに、「回廊の戦い」時におけるラインハルト側は圧倒的優勢にあり、それに対するヤン側は見るも無残なほどの弱小集団でしかないのです。だからこそ、「対等の交渉」を行うためには、それなりの切り札や軍事力が必要となるのです。

 確かに、全く無力な勢力は、強大な勢力に一方的にいいようにされるしかないでしょう。それが弱肉強食というものだからです。ここで私が言いたいのは『弱小な勢力であっても、その弱小なりの力を示す事で、強大な勢力から譲歩を引き出すことができる』ということです。
 分かりやすいので、窮鼠猫を噛むの例えを出したいと思います。窮鼠に噛まれた猫は、それ以後は面白半分では鼠に手を出すことはなくなるでしょう。戦えば勝つ事は分かっていますが、つまらないことで怪我をしても全く割に合わないからです。ここで猫から相応の譲歩を引き出すにあたり、鼠は猫より強くなる必要も、猫と対等の立場に立つ必要もありません。
 この時点でのヤンとラインハルトの立場も似たようなものです。ヤンの戦力はラインハルトより小さいとはいえ、運用次第では決して無視できるものではありません(というか、それを示すためにこそヤンは善戦する必要があったのです)。戦いを続行すれば、最後に勝つのはラインハルトですが、その場合、ラインハルトは無償で銀河統一を得られる訳ではありません。さらに数十万、数百万の将兵の命と、おそらく数名の提督の命を支払わなければなりません。
 ですから、ヤンにはラインハルトから譲歩を引き出す余地があります。それは、上に書いたような「弱小勢力は弱小なりに宇宙の片隅で勝手にひっそり生きていきますので、その許可を頂きたい」というような形になるわけです。

 あと、冒険風ライダーさんはここでヤンの戦力をやたら過小評価している割には、『ラインハルトはイゼルローン要塞に籠もったヤンの手強さも、「回廊の戦い」で自他共に多大な犠牲が出ることをも全て承知の上だった』みたいにも書いていて、今ひとつ首尾一貫しているように思えないのですが、どうなんでしょうか。

>  前の方で引用した「ラインハルトの為人」を擁護していた箇所と、上記の引用文は内容が大きく矛盾しているように思えるのですが、上記の意見を採用するのであれば、ラインハルトは弁護の余地なく愚かな人間であったということでかまわないのですね? だとすると「ラインハルトとは交渉の余地が全くなかった」という私の主張は正しいということになってしまいますが。

 矛盾に関しては、上に書いたように、ラインハルトという人格そのものにある種の矛盾が入っているからです。ラインハルトには民を大切にするような褒め称えられるべきところも、無用な戦を好むような批判されるべきところも両方あるということです。
 私が「ラインハルトは愚かだ」と言ったのは、もっと穏やかに事態を解決する方法はいくらでもあるのに、「正々堂々と実力で勝つ」と言う固定観念を捨てなかったからです。話の一切通じぬ愚か者、という意味で言った覚えは全くありません。

>  それと、あなたはどうもラインハルト「だけ」を見据えて相手をしてさえいれば良く、それ以外の予測など考えるにも値しないなどと本気で考えているようですが、ならばバーミリオン会戦時にラインハルトが追い詰められていた時に、ラインハルトの意向を無視したヒルダが独断でミッターマイヤーとロイエンタールを説得して惑星ハイネセンに脅しをかけさせ、ヤンの「戦術的賭博」を根底から覆してしまった事件は一体どう説明するのですか? ラインハルトだけを見ていれば良いわけではないことなど、この事例ひとつ取っても一目瞭然ではありませんか。「回廊の戦い」でまた同じことが繰り返されない、という保障などどこにもないのですよ?
>  ラインハルト自身がエル・ファシル本星の制圧や回廊封鎖作戦などを考えなかったとしても、部下が全く考えないということはありえませんし、ラインハルトが部下の進言を受け入れる可能性だって考えられるでしょう。また、戦況が膠着状態に陥り、にっちもさっちもいかなくなった場合に、ラインハルトが事態打開の策としてエル・ファシル本星の制圧を決断する可能性もありえるのです。未来がどのように推移し、どのような事態が待ち構えているかなど誰にも分かるはずもないのですから、ヤンの立場であれば、起こりえる最悪の事態を全て想定し、可能な限りの対策を立てなければならないのは当然の事ではありませんか。
>  ヤンが相手にするべき敵は皇帝ラインハルトだけでなく、政府も軍も全て含めた「帝国という専制国家」そのものなのです。そしてバーミリオン会戦でラインハルトひとりのみを見据えた「戦術的賭博」が、ヒルダによって見事に覆された前例があるにもかかわらず、相も変わらずただラインハルトひとりのみを見据えた「戦術的賭博」を行うこと自体、無能の証以外の何物でもないのです。

 バーミリオンの時、ラインハルトは生きるか死ぬかの緊急事態でした。だから、ヒルダや双璧の独走も、それがラインハルトを救ったと言うことで許されたわけです。ですが、回廊の戦いではラインハルトは健在ですぐに生命の危険があるわけではありません。指揮系統も失われていません。部下がラインハルトの意向を無視して勝手に兵を動かすのは明確な命令違反です。その部下がラインハルトの激怒を買って終わりです。
 ラインハルトが部下の進言を受け入れたらどうするかですが、なおさらお話になりません。バーミリオンの屈辱をもう一度味わってまで小さな勝利(というか、精神的には明らかな惨敗)を得るより、ラインハルトは素直にヤンに停戦と会談を申し出るでしょう。こんなこと、ラインハルトの性格を考えれば余りに明らかだと思うんですが。

> <交渉というのはそれを行うことによって両者に益があるから、行われるのです。少なくとも、それは強者が弱者に一方的に要求を押し付けて終わりというようなものではない。
>  上のような会話が行われた結果、交渉決裂、再戦となった時、ヤンも死ぬかもしれませんが、ラインハルトもまた少なからぬ人命を支払わなければならない。しかし、それは、二人のどちらにとっても好ましくない事態でしょう。
>  であればこそ、双方それなりに納得のできる妥協点を見つけあうわけです。その時、ヤンが提出する「内政自治権を有する民主共和制の一惑星の存在を認めて欲しい」という妥協案について、ラインハルトが妥当と思うか否かが、交渉の最大のポイントになるわけですが、これについては10巻でユリアンが交渉成立させているという作中事実もあるわけですから、それから考えれば、全くお話にならないということはないでしょう。というか、交渉成立になった可能性は、充分にあると思いますが。>

>
>  ヤンにとっては確かに交渉の成立がその後の命運を左右するわけですし、目的を達成することができる唯一の手段なのですから、そりゃ必死にもなるでしょうが、一方のラインハルト側はというと、こちらは必ずしも交渉に行わなければならない必要性などないのですよ。ラインハルト側はヤンおよびその一党を殲滅してしまえば、それで銀河統一という目的を達成することができるのですし、仮に再戦となってまたダメージを受けたとしても、要塞に閉じ籠っている相手の戦力が再び回復するわけでもないのですから、あらゆる犠牲を覚悟で何が何でもヤンの首を取ってもかまわないわけです。というか、ラインハルト側にとってはむしろそちらの方がはるかに目的にかなっているのですし、将来発生するかもしれない問題の芽を事前に摘み取ることもできるわけなのですから、交渉を意図的に決裂させ、交渉決裂の全責任をヤン側に擦りつけて再戦に突入する、という手を使う可能性も充分に考えられるのですけどね。

 何というか、これを読んでるとラインハルトはただただ交渉決裂になる事だけを望んでいるように思えるのですが、だったら何故、会談を申し込んだのでしょうか。
 交渉がうまく成立する事で益を受けるのはヤンだけではありません。ラインハルトだって相応に得をするのです。これ以上むやみに将兵や提督を失うことなく共和主義者達から物騒なイゼルローンを取り上げ、辺境に追いやる事ができます。
 何かどうも、このあたりの感覚が全くかみ合っていない気がしてなりません。

>  また銀英伝本編で交渉を申し込んだラインハルト自身、作中で次のような主張を展開しています↓
>
> 銀英伝8巻 P109下段〜P110上段
> <皇帝ラインハルトは国政に無関心であったり無責任であったりしたわけではない。彼は良心的な為政者であったと、姿勢においても結果においても、評してよいであろう。しかし、彼はまず本質的に軍人であり、為政者としての彼が意識と努力の産物であったのに、他方の彼は無意識と天分とで構成されていた。したがって、彼の支配体制、彼の帝国においては、つねに軍略が政略に優先する。このとき、彼の精神の辺境には、ヤンとの会談を自身で否定する部分もたしかに存在した。
> 「予自身が不甲斐なくも発熱したという理由もあるが、将兵も疲労しているし、補給を待つ必要もある。ヤン・ウェンリーとの会談は、そのまま妥協を意味しない。再戦の準備をととのえるため時間をかせがなくてはならぬ」>

>
> 銀英伝8巻 P123下段〜P124上段
> <ラインハルトは秘書官のヒルダ、ごく近い将来に大本営幕僚総監となるはずのマリーンドルフ伯爵令嬢に、つぎのように明言しているのである。
> 「予はヤン・ウェンリーに手を差しだすつもりだが、ひとたびそれを拒まれたときには、ふたたび握手を求めるつもりはない」
>  ラインハルトの気性からいっても、皇帝としての尊厳からしても、それは当然のことであった。>

>
>  これらの記述をどう読んでも、ラインハルトは会談による和平にそれほどの意義を見出していたようには見えないのですがね。また、仮にラインハルト自身が納得したとしても、ラインハルト麾下の将兵や将帥達、さらには帝国政府が納得しない、という事態も考えられるでしょう。ヤンとヤン一党は、ラインハルトを除く全ての帝国側関係者にとっては「帝国統一の障害」としてしか映らないでしょうし、今までの戦いで仲間や親兄弟を殺された怨みなどもあるでしょうからね。上の主張と併せ、ラインハルトがそのような部下や将兵の感情を蹴ってまで、ヤンに譲歩しなければならない理由があったようには到底思えません。

 そりゃ、ラインハルトは自らが旗を振り上げて始めた親征が中途で終了となれば、面白くはないでしょう。感情を納得させるためにも上のようなことは言いたくなるでしょう。しかし、政略レベルで会談が有効と思ったからこそそれを申し出た訳であり、会談をまとめる気が全くないということにはならないでしょう。
 あと、冒険風ライダーさん自身が、最初の方で『あの愚劣な「回廊の戦い」はラインハルトひとりが周囲の反対を押し切って強引に行ったものでしかなく、周囲はことごとくラインハルトの出征に反対していました』というようなことを仰っているのですが……帝国関係者が本当にヤンたちをそんなに障害に思っているなら、当然、親征に賛成する声の方が大きかったでしょう。帝国関係者は親征に賛成だったのか、反対だったのか、いったいどちらなんですか。

>  銀英伝10巻でユリアンがラインハルトとの交渉を成立させることができたのは、皮肉なことにユリアンがヤンに比べてあまりにも未熟で、かつ戦力も問題にならないほど少なかったがために、却ってラインハルトの戦闘意欲を削いでしまい、温情を示す「余裕」が出てきたことが何よりの原因でしょう。そして何度も言われているように、バーラト自治区は帝国内務省でさえ「難治の地である」と匙を投げた地域であり、しかも「皇帝の温情」によってかろうじて成り立っている弱小政体、いつでも帝国側の意のままにできるという状態に置かれているわけです。はっきり言いますけど、その実態は「自治区」というのも哀れなほど惨めな隷属的存在でしかありません。

 上で冒険風ライダーさんが言っている事は全く作中事実と反します。10巻P173下段に以下のような記述があります。

> 「ヤン・ウェンリーの精神的な遺産を継承したと称するほどの男なら、先人に智は及ばずとも、勇においてはいささかは非凡なところがあろう。ヤンの後継者の名は何といったか」
> 「ユリアン・ミンツと申します、陛下」
>  ミュラーが返答した。
> 「そのミンツなる者が、予の兵士達の抵抗を排して、予のもとに至りえたならば、すくなくともその勇を認め、対等の立場で要求を受諾してやってもよい」
> 「わが皇帝、であれば……」
> 「それとも、いわゆる専制君主の慈悲や、その臣下の協力がなければ、ここへ至る力もないというのでは、何を要求する資格もあるまい。すべて、その者が姿を予の前にあらわしてからのことだ」

 ユリアンは未熟だからラインハルトとの交渉を成立させる事ができたのではありません。ヤンの後継者であることを実力で証明してみせたからこそ、それができたのです。また、上記の会話の中でラインハルトは端的に「慈悲をかけるつもりはない」ということを言っています。冒険風ライダーさんの言っている事はまるで正反対です。
 また、バーラト自治区についてですが、最初の要求は一惑星だったものが、一星系にまでなったことが、帝国側の大幅な譲歩であったことがまず書かれています。もちろん、その後に軍事面、経済面その他の問題が書かれているのですが、要は悪い条件だけを一方的に押し付けられたのではなく、良い条件もあるということです。本文の中でも次のように書かれています。(10巻P215)

> ラインハルトがユリアンに対してしめした寛大さは、両刃の剣であったし、それをラインハルトもユリアンも承知していた。

 その後の帝国との共存については、以前にも投稿したように『侮られるほど弱からず、恐れられるほど強からず』を慎重に実践していく必要があるでしょう。ですが、仮にも皇帝の名の下に認められた自治区ではあるのだし、その後の外交はユリアンとその後継者達の働き次第でしょう。
 というか、この時点ではこれ以上のことを望む方が間違っています。そもそも、同盟の命脈が尽きた遠因は、市民が政治をないがしろにしたからです。ユリアンたちが現在おかれている状況は、そのまま現在の銀河の民衆の心にある専制政治と共和政治の力関係の差を表しています。ここから一足飛びに帝国と同等の力を得ようとしても、無理が生じるだけです。いつか専制の冬が訪れた時にこそ、このバランスは崩れます。ユリアンたちの使命はその時まで、共和政治の命脈をつなぐ事です。よって……

>  結局のところ、本当の意味で民主主義の擁護を掲げるのであれば、自前の軍事力で自立し、敵を圧倒できるだけの体制を整えるしか方法はないわけです。その意味で、ラインハルトの胸先三寸に全ての命運が委ねられている「回廊の戦い」は、勝算ゼロ・100%必敗確実であると言わざるをえないのです。

ということには賛成しかねます。ただ、交渉に関して上で冒険風ライダーさんが述べている認識から計算すると、このような結論になってしまうことは判ります。

 また、繰り返しますが、以上を総合すると「回廊の戦い」の勝算は必ずしも大きなものではないかもしれませんが、ゼロではありません。

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