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No. 3630 | |
議論の前提条件について | |
パンツァー | 2003/02/11 21:32 |
議論の対象となっているのは、銀英伝の小説を元にした「仮定」の話です。 この「仮定」の一つとして、冒険風ライダーさんの「移動要塞」論があります。 > 私たちの議論が紛糾した理由は一つ、恒久的移動要塞が可能であることが「証明された」という論が横行し、そこから「ヤンやラインハルトが愚かである」と展開したことに、私が承服できないからです。ただし、二人の英雄のことは今は論じません。その前提となった「既に証明できた」とする論に対する反論です。 ここで、「恒久的移動要塞が可能である」ということの意味が重要ですが、 これは、例えば同盟が、イゼルローン要塞の改造に着手すれば必ず成功する、という意味ではありません。工場で多量生産されている製品の中に不良品が発生することがあるように、100%の成功率を約束するものではありません。 「自給能力(無補給)」と「航行能力」とを備えた「移動要塞」が、原理的に実現可能である、という趣旨です。繰り返しますが、実際に実行してみたら失敗する可能性がない、という意味ではありません。 つまり、実際に実行してみたら失敗する可能性があるからといって、 Kenさんの主張される 「銀英伝の記述だけでは、可能であると証明するにも、不可能と証明するにも、不十分である」<Kenさんの記載(No3599)> ということには、なりません。 ☆検証すべき点 したがって、「自給能力(無補給)」と「航行能力」とを備えた「移動要塞」に関して、 A 「自給能力(無補給)」の検証と、 B 「航行能力」の検証と、 C この両者の組合せの検証と、 を行って問題がなければ、「移動要塞」が「原理的に可能」ということが言える訳です。 実際の運用や施工期間、政治上の問題等の予備的問題では、ここでは当然省略します。 ☆「仮定」の検証は、「演繹」により行うべきである。 ○「ピタゴラスの定理」の「証明」等の引用により、「演繹」により証明しなければ意味が無い、というのが、Kenさんの趣旨かと考えておりました。 しかし、 Kenさんの記載(No3625) <私が、物理法則の復権を提案したのは、銀英伝の記述に基づいての演繹証明などできるわけがないから、次善策として、現実世界の科学手法を取り入れてみてはどうか、と考えたからです。> と今回記載していることから見て、「演繹」により証明すること、は考えていない(もしくは放棄した)、ということですね。 ○ここで、私が部分的に「帰納法」と「演繹法」とを取り違えていた部分があることを、述べておきます。 「これは、経験則を重視して、その背後の理論を演繹するという手法ですが」(No3587) ここで「演繹」とした部分は、「帰納」の間違いです。 ○また、以下の指摘に回答しておきます。 Kenさんの記載(No3625) <ただ、この記述は正しくありません。平凡社の百科事典に本当にそう書いてあるなら、明らかな誤植です。「昨日までずっと、太陽が東から昇り西へ沈んだから、今日以降もそうだろう」というのは、論理学では「帰納(induction)」といい、「演繹(deduction)」とは明確に区別されます。「演繹」とは、例えば次のような論理展開のことです。> これは、次のような展開になります。 前提「毎日、太陽は東から昇り西に沈む」 結論「今日、または明日も、太陽は東から昇り西に沈む」 つまり、「毎日」という範疇には、「今日」「明日」が含まれるから、 「毎日」において成り立つことは、必然的に、「今日」「明日」においても成立する、といっている話です。この論理展開が「演繹」です。 誤植ではありません。 ☆「仮定」の検証は「現実世界の科学手法」により行うべきである。 ○私は今回、「演繹」にこだわる(と私が推測していた)Kenさんの論陣に対して、反論を展開するつもりだったので、やや面食らっております。 ともかく、現時点では、Kenさんの言う「現実世界の科学手法」を検証手段とせよ、という趣旨ですね。 Kenさんの記載(No3572) <科学の本質とは、 観測→考察→普遍化(数式化)→予測 を行うことです。> Kenさんの言う「現実世界の科学手法」は、上記ですよね。 実際は、 観測→考察→仮説の設定(数式化)→実験(変数の代入)→仮説の立証(変数を変えた場合の予測を可能とする理論の構築) となるものだと思いますが、 まあ、Kenさんの言う「現実世界の科学手法」に従ってみましょう。 ○ここでまず、(No3572)における、Kenさんの言う「現実世界の科学手法」に基づいた検証作業の一例について、考察してみます。 Kenさんの記載(No3572) <例えば、燃料タンクを半分だけ満たした自動車が、200キロを走行したという「観測結果」があるとします。(中略)その前提としては、「タンク10分の1の燃料で40キロ走った」「4分の1では100キロ走った」「半分では200キロ走った」という観測結果の積み重ねがあり> 「観測」された内容は、この四つですね。 「燃料タンクを半分だけ満たした自動車が、200キロを走行した」 「タンク10分の1の燃料で40キロ走った」 「4分の1では100キロ走った」 「半分では200キロ走った」 Kenさんの記載(No3572) <「燃料の量と走行距離には、線形の比例関係がある」という、数式化された法則が導かれ、その理論的裏づけとして、> これが、「普遍化(数式化)」ですね。 Kenさんの記載(No3572) <「燃焼した燃料の体積と、発生する燃焼ガスのモル数には、化学式が保証する比例関係があり、内燃機関のピストンに外部から加わる力が一定なら、ガスのモル数とガスの圧力には比例関係があり、シリンダの断面積とピストンのストロークが一定なら、ガスの圧力と一回転あたりのエネルギーには比例関係がある」 という、考察がなされているのです。> 「考察」の内容は、上記ですね。 <数式化された法則が導かれ、その理論的裏づけとして、>という記載があるので、「普遍化(数式化)」の後に、「考察」が書かれたものと判断します。 この考察は、「観測」の内容とは全然関係ないんですよね。また、「普遍化(数式化)」の内容とも直接関係が無いですね。 つまるところ、Kenさんの言う「考察」は、「自動車」に関する「考察」を意味するわけですね。 この「考察」は、全然意味のない作業ですよ。 自動車の構造がブラックボックスであったとしても、 「観測結果」を「前提」として考察すれば、「燃料の量と走行距離には、線形の比例関係がある」という「結論」(「普遍化(数式化)」)が、導き出せますよね。 「考察」というのは通例、「前提」より「結論」を導くための思考過程を指すものでしょう。「前提」や「結論」と関わり無い、自動車の構造などを考える過程ではないはずですよ。 Kenさんの記載(No3572) <科学者は、断じて「半分の燃料で200キロ走ったから、満タンなら400キロ走るだろう」などという、いい加減な推測をしているのではありません。> とKenさんは書いていますが、「考察」の意味内容を考慮すると、 現実の科学者は、Kenさんの言う「いい加減な推測」をしているわけです。 Kenさんの記載(No3572) <タンク半分の燃料で200キロ走ったから、タンクを75%満たせば300キロは走るだろう、という予測はできません。なぜなら、そのような観測結果はどこにもないからです。それどころか、タンク75%の燃料で、200キロプラス1メートルを走れる。という予測すらできません。> そして、Kenさんの言う「現実世界の科学手法」の最終過程の「予測」を、このように述べていますが、このようにはなりません。 Kenさんが「普遍化(数式化)」したのは、 「燃料の量と走行距離には、線形の比例関係がある」 という内容なのですから、 「タンクを75%満たせば300キロは走る」わけです。 つまり、「予測」はできるのです。 もっとも、「実績」はありません。実際に実行してみた場合、「タンクを75%満たせば300キロは走る」のか、どうかは定かではありません。 でも、実際に実行してみた場合の可否を問題にするのであれば、それは、以上の「現実世界の科学手法」とは別の話です。 それにも関わらず、 「燃料の量と走行距離には、線形の比例関係がある」にも関わらず、「タンクを75%満たした場合」の結論が導けないとするなら、 それはどんな理由であるか、私はそこを考えてみました。 パンツァーの記載(No3613) <これに準じて考えるなら、タンク半分の燃料で100キロ走ることができるか(四分の一の燃料を残して停止すること)、ということすら、予測できないのではありませんか>。 私がこのように書いたのは、Kenさんの主張の意図が、 <「燃料の量と走行距離には、線形の比例関係がある」という、数式化された法則> があっても、「観測結果」以外の再現は否定する法則なのだ、という風に捉えたからです。例えば、「タンク半分の燃料で100キロ走る」場合は、前記の観測結果のなかにないので、不可能だということかな、と判断したのです。 ○「タンクを75%満たせば300キロは走る」だけは否定できるような都合の良い「普遍化(数式化)」ができるかどうか、一つ考えてみてください。 「実績が無い」ということで否定するのであれば、 「タンクを8分の1だけ満たした場合」に関しても、同様に否定されることになるでしょう。 ☆Kenさんの思考過程 Kenさんの記載(No3625) <「証明した」「立証した」といいながら、やっていることは、すべて帰納じゃないか。証明じゃなく類推じゃないか。 > と言い続けていたのです。不沈戦艦さんは、私が「・・・かもしれない」という議論ばかりしていると言われました。当然です。私は帰納ではなく演繹を行うことを求めていたのですから。演繹とは(つまり証明とは)、「・・・かもしれない」という疑義の存在を許さないものです。> <私が、物理法則の復権を提案したのは、銀英伝の記述に基づいての演繹証明などできるわけがない> <次善策として、現実世界の科学手法を取り入れてみてはどうか> ○上で、「帰納」と「演繹」を取り違えた、という私が言うのもなんですが、 「帰納」:より個別的で単純な事例の集りから,より一般的な法則を導く 「演繹」:ある一般的法則が与えられた場合,個別的な適用例をその法則の意味から導きだす といったことですね。 Kenさんの言う「現実世界の科学手法」においても、 「観測→考察→普遍化(数式化)」 の過程では、「帰納」が用いられているわけです。 「普遍化(数式化)→予測」 の過程が、「演繹」に相当しましょう。 結局、Kenさんの言う「現実世界の科学手法」においても、「帰納」を排除することにはなりません。 ☆☆「仮定」の検証において考慮すべきこと 私は以下の二点を提案します。 1 「作中事実」より「帰納」的に導ける「要素」は、その仕組み(構造)がブラックボックスであってもよい。 上の例での「自動車」で、自動車の構造がブラックボックスであっても差し支えないように、銀英伝に登場する物に関して、その構造が「私たちが知っている物理法則」で説明がつくか否かは、まったく関わりがありません。 2 「仮定」に適用する「扱い」は、すべての「仮定」で「均等」にすべき ○例えば、 第一の仮定を「艦隊がワープ航法により一般に航行できる」とします。 第二の仮定を「移動要塞もワープ航法により一般に航行できる」とします。 ここで、第一の仮定が「作中事実」より、特殊例を考慮せず、「帰納」的に導けるというのであれば、第二の仮定も「作中事実」より、特殊例を考慮せず、「帰納」的に導けるとして欲しいのです。 ○ここで、すべての「仮定」で「均等」にすべき、とするのは、客観的な議論を行う上での必要条件だと考えるからです。そうでないと、場合によっては、厳密な基準を適用し、他の場合には緩やかな基準を適用するなど、恣意的な主張になってしまいます。 ○すべての「仮定」で「均等」にするとは、次のようなことです。 例えば、 「ガイエスブルグ要塞の実績以上に、移動化されたイゼルローン要塞が移動できる根拠が無い」というのであれば、 艦隊に関しても、「作中事実とされている航行しか、実行できる根拠が無い」としてください。つまり、艦隊の移動に関する「作中事実」と異なる仮定の一切について、そんな仮定ができる根拠は無い、としてください。 イゼルローン要塞の移動化が「帰納」的に信頼に値しないものだとするならば、以下、 パンツァーの記載(No3598) 「銀英伝中に記載されている事実としての「艦隊の移動」は、記載内容だから認める。しかし、例えば、バーミリオン会戦の時点で、ヤン艦隊がフェザーンを攻略するといった仮定は認めない。艦隊の移動可能性は「証明」されていないのだから、他の記載で「艦隊の移動」が扱われていようとも、「バーミリオン会戦の時点のヤン艦隊」において「艦隊の移動」ができるという根拠にはならない。なぜならば、経験則を重視するだけ(他の記載における艦隊の移動の例の引用だけで)で終わったら、「背後の理論を演繹(「帰納」に訂正)」したことにはならない、からだ。「艦隊が一般に移動可能である」という証明にならないからだ。」 上で、「自動車」について述べたのと同様の理屈です。 「自動車」で「燃料の量と走行距離には、線形の比例関係がある」という「普遍化(数式化)」をするのであれば、実績のない量の燃料を搭載しても成立するのですから。 ○特殊例とは、 Kenさんの記載(No3579) <元々のドライアイスの質量は、240兆トン弱ですが、(中略)当初の塊の2.3%−−約5兆トン半になるかと思います。外壁の厚さが50mなら(これでも過大であるように私には思えますが)、さらに1兆トンほど軽くなります。 このようなことを意味します。 もしも、このような特殊な場合に関する考慮も必要であるとするなら、 艦隊の一般の移動可能性についても、特殊な場合に関する考慮により、艦隊は一般に移動可能ではない、という結論を導いてください。 「均等」であるべき、という要請からです。 ☆☆現時点の結論として Kenさんの言う「現実世界の科学手法」を用いて、 「移動要塞」論を、 「銀英伝の記述だけでは、可能であると証明するにも、不可能と証明するにも、不十分である」<Kenさんの記載(No3599)> としたならば、 銀英伝における一切の仮定(例えばヤン艦隊がフェザーンを攻略するといった仮定)が、 「銀英伝の記述だけでは、可能であると証明するにも、不可能と証明するにも、不十分である」<Kenさんの記載(No3599)> となるでしょう。 銀英伝そのものを、作中事実以外の一切の可能性を否定すべきだ、という結論でよいのでしたら、何もいうことはありませんが。 |
No. 3632 | |
Re:議論の前提条件について | |
Ken | 2003/02/11 22:00 |
パンツァーさん、 はじめに謝罪します。平凡社百科事典の記述を、読み違えたのはたしかに私です。パンツァーさんが言われるとおり、あれは「演繹」です。 ところで、 >私は今回、「演繹」にこだわる(と私が推測していた)Kenさんの論陣に対して、 >反論を展開するつもりだったので、やや面食らっております。 >ともかく、現時点では、Kenさんの言う「現実世界の科学手法」を検証手段とせよ、という趣旨ですね。 これはちょっと違います。私が言いたかったのは、 *物理学的な考察を否定するなら、あとに残るのは数学的な証明(つまり演繹)しか、ないではないか *でも数学的な証明なんてできないから、そこで議論が終わりになる。 *それくらいなら、私たちが知っている物理法則が通用すると仮定した方が、豊かな考察ができるかもしれない ということでした。3点目は、私の希望にすぎません。 いまは、とりあえずこれだけを回答させていただきます。次の発言は、パンツァーさんの書き込みを、熟読した上で。 一点だけ。 あなたとは、空転しない議論ができるような気がします。 それでは、私の次の書き込みをお待ちください。 |
No. 3633 | |
Re:議論の前提条件について | |
Ken | 2003/02/11 22:53 |
パンツァーさん、 もう一度謝罪します。 言葉は正確に使用せねばなりません。(←自分に言ってるんですよ) #3625 by Ken 私が、物理法則の復権を提案したのは、銀英伝の記述に基づいての演繹証明などできるわけがないから、次善策として、現実世界の科学手法を取り入れてみてはどうか、と考えたからです。 #3630 by パンツァー ともかく、現時点では、Kenさんの言う「現実世界の科学手法」を検証手段とせよ、という趣旨ですね。 #3632 by Ken *それくらいなら、私たちが知っている物理法則が通用すると仮定した方が、豊かな考察ができるかもしれない 「現実世界の科学的手法」と「私たちが知っている物理法則」とは、別物です。後者は前者の産物ですから。 議論の前提条件ですが。 1.恒久移動要塞が可能であると、演繹的に証明する 2.恒久移動要塞が可能であると、私たちが知っている物理法則を使って判断する 3.恒久移動要塞が可能であると、現実世界の科学的手法で、判断する のうち、どれが達成されても、私たちの間では、恒久移動要塞が可能であると、結論することにしませんか? 1はおそらく無理だと思いますが。 2と3のどちらで、「可能である」という結論へ到達しても、私は大満足です。ぜひ、私を納得させてください。 それでは、次のお返事は明日以降に。 おやすみなさい。 |
No. 3635 | |
気になる事をいくつか | |
Night | 2003/02/12 00:19 |
前に(No.3603)、この議論はやめるべきではと書いた者です。 今回の議論も収束しつつあるようですが、過去ログや現在の議論を見てると、どうも気になる点がいくつか出てきたので、前言を翻すようですが、できれば皆さんの意見を聞きたいと思って書き込みます。 なお、私のスタンスは前回同様、「移動要塞の恒久的な運用は、銀英伝の記述だけでは、可能であると証明するにも、不可能と証明するにも、不十分である」のままです。また、以下の記述は、一部、前回の記述と重複する点があります。 (1) イオン・ファゼカスは大質量ワープの実例ではない 過去ログのNo.1923や、No.3497を読む限り、冒険風ライダーさんやパンツァーさんは、イオン・ファゼカスにはワープエンジンがついており、それゆえに大質量ワープの実例であると主張していらっしゃるようですが、私には納得できません。 なぜなら、イオン・ファゼカスがワープしたという記述は銀英伝1巻序章には無いからです。それは冒険風ライダーさんが > 第一、敵側がワープを使えるのにこちらが使えないのでは、捕捉されたらその時点で一巻の終わりで、そもそも逃げ切ること自体不可能としか言いようがないと思うのですが。 という論理で出した推論に過ぎません。 別に、追撃と捜索を振り切る方法はワープだけとは限らないでしょう。捕捉される前にどこかに隠れるという手もありますし、エル・ファシルの時のヤンのように計略を使って逃れるという手もあります。 何より、イオン・ファゼカスがワープできたとすると、まずいことがあります。銀英伝3巻のワープ実験の描写を見る限り、「大質量ワープ」という技術は、既存技術の応用に過ぎなくとも、この時点における最新の技術であるとしか読めません。この時、明らかに帝国の人々は、40兆トンの質量が本当にワープできるのか否か知らなかったのです。 また、同盟側にとっても大質量ワープは新技術でした。それは銀英伝3巻P140下段の以下のムライ少将の台詞の他、イゼルローンの面々の反応を見れば明らかです。 >「それにしても、とんでもないことを考えたものですな。要塞をワープさせてくるとは……帝国軍は新しい技術を開発させたと見える」 結局、イオン・ファゼカスがワープしたとするには、次のような推論を受け入れる必要があります。すなわち、『銀英伝の宇宙では、かつては奴隷階級の人々でも容易に実現できる大質量ワープの技術が確立されていたが、その後、帝国、同盟の双方でその技術は存在も含めて忘れられ、3巻の時点で再発見された』というものです。 これが非常に強引な推論である事は論を待たないと思います。イオン・ファゼカスがワープできないとしても格段の矛盾が生じない以上、オッカムの剃刀の原則から言っても、どちらの解釈を取るべきかは自明と思います。 また、こう考える事で、ハイネセン達がイオン・ファゼカスから恒星間宇宙船に乗り換えた理由も良く分かります。勿論、ドライアイスは熱に弱いということもあったのでしょうが、未知の宇宙に旅立つために彼らはワープできる宇宙船に乗りかえる必要があった、ということなのでしょう。 (2) 自給自足艦隊は実現できない 過去ログのNo.1912で冒険風ライダーさんは「魔法の自給自足システム」が長征一万光年の80隻の恒星間宇宙船につまれており、それにより自給自足していたと推論しています。さらにそれを受けて、「無限の自給自足能力を持つ宇宙艦隊」が可能であると述べ、 > ヤンやラインハルトも含めた銀英伝世界のキャラクター全てが「軍隊は補給に頼らなければならない」という固定観念に囚われてでもいたのでしょうか。 と、批判されています。 私にはこれは非常に不思議な論理に思えます。銀英伝宇宙で「無限の自給自足能力を持つ宇宙艦隊」など実現できない事は、銀英伝全編の記述から明らかだからです。推論が(作中)事実に合わない場合は、まず推論の間違いの可能性から検討するべきだと思うのですが……。 この問題に関しては、別段、「無限の自給自足能力を持つ宇宙艦隊」を導入しなくとも説明はつくと思います。帝国から脱出した後は戦闘のような激しい消耗行為はないわけですから、後は基本的に水も空気も食料も完全リサイクルの方針で行けばいいわけです。もちろん、相応のエネルギー供給は常に必要になるでしょうが、この燃費問題に関しては冒険風ライダーさん自身がNo. 1923 で原子力空母を例に出して説明をしてくださっているので、私も特に問題はないかと思います。また、銀英伝1巻の記述にあるように、星間物質や立ち寄った星系の無人惑星に物資を求めるという方法もこの世界では確立されているようですから、なお、問題はないかと思います。 いっそのこと、最低限必要な人員を除いて、冷凍睡眠で全員眠らせてしまうという手もあるかもしれません。これなら、自給自足の問題も反乱の問題もかなり解決できるでしょう。勿論、銀英伝世界に冷凍睡眠に関する記述などありませんが、それでも私は、作品全てを破壊してしまう「無限自給自足艦隊」を導入するよりは、「冷凍睡眠」を導入する方がマシだと思います。(あくまで、極端な話としてですが) なお、長征一万光年については、因果関係についても考えておく必要があると思います。つまり、長征一万光年を成功させたが故にハイネセン達は同盟の礎となることができたのであり、失敗していたら単に宇宙の藻屑になって忘れ去られていたということです(その場合は、幸運な別のハイネセン達が今とは別の同盟の礎になっていたかもしれません)。 つまり、『ハイネセン達の宇宙船や補給体制に多少の不備があったとしても、単に幸運であったが故に長征一万光年は成功したのではないか』という事も考えるべきではないか、ということです。 (3) イゼルローンを本当に移動要塞化できるのか? 同盟側の移動要塞作戦の根底には、次の論理があります。つまり、『ガイエスブルク要塞を移動要塞化できたのだから、同じ要領でイゼルローン要塞も簡単に移動要塞化できる』というものです。 この論理の前半部は紛れもない作中事実であり、疑念を挟む余地はありませんが、後半部は自明の理ではありません。 記述によると、ガイエスブルクの直径は40〜45kmで質量は約40兆トン。これに対し、イゼルローンの直径は60km。イゼルローンの半径はガイエスブルクの1.5〜1.3倍で、単純に考えれば質量は3.38倍〜2.37倍。 過去ログを読む限り、移動要塞肯定派の方々は、ガイエスブルク同様、12基のワープエンジンと通常航行エンジンをイゼルローンに付けることを想定されているようですが、これで本当にうまくいく保障はあるのでしょうか。 ・体積・質量が3倍近くになるわけですが、エンジンの数は12基のままで良いのでしょうか? エンジン出力やエンジン数を3倍にする必要はないのでしょうか? ・エンジン出力を3倍にする必要がある場合、従来通りのエンジンをそのまま使えるのでしょうか? ・エンジン数を3倍にする必要がある場合、12基のワープエンジンの同調と36基のワープエンジンの同調の難易度は同等なのでしょうか、格段の差があるのでしょうか? ・ワープエンジンの配置は同じく輪状でよいのでしょうか。それとも二重の輪や球状にするような独創性が必要になってくるのでしょうか? ・通常航行時のエンジンについてですが、質量が3倍になった時、実戦に耐えうる機動性を確保できるでしょうか? ・巨大質量のワープ時の時空震に関して帝国側で懸念されていたようですが、イゼルローンのワープの場合もガイエスブルク同様、問題なしと考えて良いのでしょうか? ・以上の全ての疑問に答えるための理論研究や実験は、ヤン達に与えられた人材、時間、予算で進められるものだったのでしょうか? ワープの理論も実験データ、その他の細かい事情を知らない我々には、これらの問題に対して「そんな事は簡単だ」とも「難しくて不可能」とも判断することはできません。つまり、これらの問題は移動要塞作戦の不確定要素です。 また、不確定要素は上に挙げただけでなく、理論と運用の違いに関する問題や、工業力の問題、資金の問題、ヤン自身や将兵の心理の問題といった問題が以前の議論で挙げられています。 こういったことを考えると、私にはやはり「イゼルローンの移動要塞化」という作戦は、可能であるとも不可能であるとも言えない、不確定要素の大きなプランと思えるわけです。 ですが、冒険風ライダーさんは「絶対にできたはずなのだから、それをしなかったヤンは無能で愚劣」とおっしゃっているようにしか聞こえない。 そこが、なんとも納得できないわけです。 |
No. 3636 | |
Re:気になる事をいくつか | |
古典SFファン | 2003/02/12 03:31 |
横レスですが・・ > (1) イオン・ファゼカスは大質量ワープの実例ではない ・・・・・・ > > 第一、敵側がワープを使えるのにこちらが使えないのでは、捕捉されたらその時点で一巻の終わりで、そもそも逃げ切ること自体不可能としか言いようがないと思うのですが。 イオン・ファゼカスが建造されたのがアルタイル星系の外惑星にあたる星だった場合(ドライアイスで地表が覆われているくらいですから、太陽から遠いというのはありそうな話ですが)、そこから先はいきなり、何もない恒星間空間です。 あの世界で長距離探知技術がお粗末なのはよく知られています。 (500〜1000光秒の有効探知距離しかないんじゃなかったでしたっけ・・) もし、イオン・ファゼカスが恒星間空間にワープなしで乗り出したとしたら、宇宙船程度の大きさの物体を発見するのは不可能だったかも知れません。 もっとも、その場合、数光年以内にある恒星系に網を張って(コストを考えると警戒衛星などを置いて)待つと言う手はあったでしょうが、 、恒星系内に入る前にイオン・ファゼカスを乗り捨てて、探知しにくいサイズで偽装を施したダミー隕石などで恒星系内に入る手もあったでしょうし。 アルタイルから手ごろな距離には結構な数の恒星系があったような。 > (2) 自給自足艦隊は実現できない ・・・・・・ > この問題に関しては、別段、「無限の自給自足能力を持つ宇宙艦隊」を導入しなくとも説明はつくと思います。帝国から脱出した後は戦闘のような激しい消耗行為はないわけですから、後は基本的に水も空気も食料も完全リサイクルの方針で行けばいいわけです。もちろん、相応のエネルギー供給は常に必要になるでしょうが、この燃費問題に関しては冒険風ライダーさん自身がNo. 1923 で原子力空母を例に出して説明をしてくださっているので、私も特に問題はないかと思います。また、銀英伝1巻の記述にあるように、星間物質や立ち寄った星系の無人惑星に物資を求めるという方法もこの世界では確立されているようですから、なお、問題はないかと思います。 本スレのどこかで既出ですが、星間物質というのは、本来かなり薄いようです。あの世界でも我々の世界と同程度しか、それがないとしての話ですが・・。 木星型の惑星から水素やヘリウムを取ったり、彗星の巣から彗星を拾ったりすれば、燃料や有機物の原料は足りると言う発言が、それに続いていますが・・「どういう場合にどういう内容の補給が、どのくらい必要か」というのは、原作ではきちんと書いてないので、なんともいえないところですかね・・。 > (3) イゼルローンを本当に移動要塞化できるのか? ・・・・・・ > 記述によると、ガイエスブルクの直径は40〜45kmで質量は約40兆トン。これに対し、イゼルローンの直径は60km。イゼルローンの半径はガイエスブルクの1.5〜1.3倍で、単純に考えれば質量は3.38倍〜2.37倍。 確か60兆トンのはずです。 半径と同程度しか質量増大が見られないと言う事は、中身が詰まっていない・・? イゼルローンは言わば敵地への前哨基地であり、補給が切れても持ちこたえなければなりませんから、格納スペースが大きく取られているのでしょうか。 > ・体積・質量が3倍近くになるわけですが、エンジンの数は12基のままで良いのでしょうか? エンジン出力やエンジン数を3倍にする必要はないのでしょうか? 質量は1.25倍、体積3倍・・・・ どちらにしても数は増すと考えたほうが合理的でしょうか。 質量に比例するならエンジン数は16、体積に比例するなら36。 技術的にはともかく、エンジン数が3倍に増したら、工数が当然3倍掛かるのは辛かったかも知れませんね。 |
No. 3637 | |
徹底反論3−1 | |
a-ru | 2003/02/12 03:37 |
S.Kさん、確かに内容が噛み合わなくて歯がゆく思っています(特に自分の力の無さに)。しかし、それは仕方なしと言うことです、逆だと反対に怖すぎです(笑)。特に私はあなたとの議論で不快な記憶が無いので、謝られてもただただ恐縮するばかりで。(笑) あなたの意見を取り入れて、考察などあさってみました。 Bに入る前にS.Kさんへ >悪いですが、ここで示唆されている原作6〜8巻のヤンの逆境について@突然アンドロメダ共和国が援軍にくるAハンサムのヤンは突然起死回生の大魔術を思い付くBなにもない現実は非情である のどれ、もしくはどうだとお考えですか? 手厳しいですね(笑)。 私の例は、実例ではなく、相似、近似例と呼べばよいのでしょうか、そういう類で述べたのです。私のあげた例が、規模が大きくなって、対象の言葉が入れ替わったときに、イゼルローン改造計画に繋がらないかということです。ぜひ、お聞きしたいのですが、このような状況の中でどのように説得するのでしょうか。短期間に説得する方法をお聞きしたいがために例をあげたわけです…て先にそれを言えって感じですけど。 何度か出た話ですがガイエスブルグ要塞が移動した事実は認識されてますか? これもまた手厳しい。要塞に対する認識の違いでしょうね。 私のガイエスブルグ要塞に対する認識は「固定式砲台を取り外して、普通の船につけた」だけものである。そして、冒険風ライダーさんのいう移動要塞というのは完全な「戦艦」であるという認識です。 ガイセスブルク要塞の失敗は「固定式砲台を取り外して、普通の船につけた」という無理が作中の結果をもたらしたのではないかと分析しているのですがいかがでしょうか。あと以前の、空母と移動要塞設計思想の件ですが、やはり違います。あくまで空母は戦場に巻き揉まれる前に退避する、直接戦闘には参加しないのに対して、移動要塞は危険を侵して、戦場に飛びこむわけですから。空母は、英語の意味では「戦闘機の運び屋」です。 >それは最初の論点が違います。 う〜ん、論理の基本は帰納法ではないでしょうか?帰納法で原因を突き止め、演繹法でそれを証明する、それで結果が同じになったときに、はじめて正しいと言う事が証明されるのではないですか。それをいくつも積み重ねて統計を取り、近似値を求め証明されたときに、はじめて予測を立てることが出来るのではないでしょうか。 ではなぜガイエスブルグ要塞があれほど短期間で工事ができたのかという理由について最も合理的な理由はなんでしょうか。私が考えつく理由は「徹底反論」のレスで述べています。他にどんな理由が上げられるか?教えていただきたいです。 >冒険風ライダーさんの説明や他の方の質問内容を考えもせず自分の疑問もしくは主張に固執された論者が複数名残念ながら存在した事が一番長期化と紛糾の原因ではなかったでしょうか。 逆ではないですか。これほどの疑問・批判があるならばもう一度提案を再点検するべきだったと思います。過去のレスでの冒険風ライダーさんの返答は真正面からその疑問に対して答えていないように思いました。 では、B実用化したと仮定して、民主主義をどのように残すのかです。 ここでは、全体をまとめるために、政治、大衆心理、ヤンの思考法などをもとに推論をします。 「望郷の念に囚われることがない要塞の居住システム」について 望郷の念を完全に忘れさせることは難しいのではないでしょうか。 非常手段を用いれば、できるかもしれませんがリスクを伴います。 「イゼルローン要塞の構造的な独裁権力者、ヤン・ウェンリー」について このことをヤンの責任にするのは無理があるのではないでしょうか。彼は、あくまでもイゼルローン要塞と艦隊長官に過ぎないわけです。この構造を見直すべき責任は、同盟政府であり、議会です。 イゼルローン要塞は、特殊な環境上取り扱いが難しいです。 政府の言い分をあげるとするならば、 @イゼルローンは同盟の最前線であり、常に戦時体制にある。 Aイルゼルローン要塞の重要性上、政府直轄地とせざるおえない。 Bイゼルローンの民衆は「住民」というよりも「滞在者」と言う性格が強い。などもあげられるでしょう。 イゼルローンの管理は軍が行っているわけですから、地方自治を行うとするならば、軍政の監視が主な役割だと思われます。 要塞改造の政治的可能性について ヤンは要塞改造ができなかった理由に、「資金」をあげました。大きな要の一つと言えるでしょう。ただ「資金がない」という理由を額面通りにとって良いか、その裏の意図の可能性も考える必要があるでしょう。彼の先見力のことを考えてみればの話しですが。 冒険風ライダーさんは、 <同盟政府&軍首脳部に対して「移動要塞が持つ強大な潜在的脅威と無限の可能性」を報告し、その対策を考えると共に、移動要塞実現のための研究・開発チームを設けさせること。こんな簡単なことすらも行わなかった> これが簡単なことだと片付けられることでしょうか。私が、イゼルローン要塞改造計画をシュミレーションしてみます。 報告後の大きな決定手順の流れを述べると、まず軍首脳→国防委員会→同盟閣僚会議→同盟議会の順が考えられます。イゼルローン要塞が国防上最重要拠点の一つであることからも、最高機関である同盟議会承認が必要だということには無理は少ないでしょうと認めていただけるでしょう。 しかも、この過程のなかで微塵も思いつかせては行けないことは、「同盟滅亡の可能性」と「イゼルローン要塞ごと亡命する危険性」についてです。可能な限り隠しとおさなければ行けないでしょう。 特に「イゼルローン要塞ごと亡命する危険性」の露見は可能性が高いでしょうし、自己保身能力の高い人ほどこういった事には、敏感に感づくものであることは否定はないと思います。と言うことは自己保身連中との取引なども考えなければならない。 それでも露見した場合は、この議題は紛糾するでしょう。イゼルローンが最も亡命しやすい位置にあるということまで露見すると、ヤンの権限は三つにぐらいに分割することも考えられます。三つに分割された場合、ヤンファミリーで固められることが出来れば問題はありませんがそれがうまく行くのか。うまくいかなければ、今後の戦術上支障をきたすことも予想されます。 議会の承認を得たとします。ここでは、議会の決議がどのくらい要したのかは分かりませんので飛ばします。 改造までの計画立案をする必要がありますが、同盟初の要塞はイゼルローン要塞で、元々は帝国製です。イゼルローン要塞について調査チームを編成が必要です。部品規格は同じなのでしょうか、同じとしておきます。技術チームはこの計画のもとになったガイセスブルク要塞どういう物かを調査する必要がありますが、外観の情報しか分からないでしょう、要塞の質量、大きさなどの情報はあるのでしょうか? また改造期間中は裸も同然、攻撃を受けたらガイセスブルクの二の舞です。隠蔽方法も考えなければ行けないでしょう。まあそれは、外交や謀略活動でどうにかする以外無いといえるでしょうが、逆に怪しまれる危険もあるので加減が難しいところです。 あと、ガイセスブルクはエンジン一基攻撃を受けただけで爆散したとあったので戦闘時はエンジンを格納する必要があります。格納してしまうと移動は出来ないですけど背に腹は変えられません。格納するにも装甲が薄くなっては意味が無いからそれも考えなければならないです、など調査しました。 設計図を描きました、機械を動かすためのソフト制作。イゼルローン移動要塞模型を作り、実験も行いました、などやっておいた方がいいでしょう。 改造工事を開始します。できる限る短期間で工事を終わらせる必要があり、正確でなければ大変なことになります。 改造工事責任者、どのくらいで工事は完成するのでしょうか?ガイエスブルクは三ヶ月程度らしいですけど、そんなこと知らないですよね。 やっと完成しました。どのくらい、資金をつぎ込んだのか、時間を費やしたのか忘れてしまいました。なぜか同盟も滅んで、民主主義の灯火はイゼルローン移動要塞だけになってしまいました。 そして、新たなる物語が始まるんでしょうね。 では完成した移動要塞、どの様に活躍するのでしょうか?次回シュミュレーションしてみましょう。 |
No. 3638 | |
横レスにもなりゃしませんが | |
駆け出し | 2003/02/12 05:12 |
駆け出しでございます。 先だってより、要塞の移動化とそれに付帯して、ラインハルトやヤンの有能、無能説まで出てきまして、みなさまの書き込みを興味深く拝読しておりました。 もっとも、科学超絶ドオンチの私としては、字面を追うのが精一杯、というのが、正直なところです。 科学的な考察に関しては、私の出る幕はございませんが、ラインハルトやヤンの能力ということについては、いささか考えるところもあります。 私はラインハルト・フォン・ローエングラムという人のことを考えると、いつもきまってひとりの人物を思いだします。あくまで、私見ですが、似ているな、と思うのです。 それは、上杉謙信です。 謙信については、みなさまもよくご存知だと思いますので、ここでくだくだしくは書きません。 私が考えるラインハルトと謙信の最大の共通点は、両者ともイデオロギーの人である、ということです。 謙信が領土欲ではなく、関東管領の責務として、関東の安定を回復しようと奔走したように、ラインハルトにも、効率や合理性を度外視した、戦いと勝利に対する思想があったように思われるのです。 ガイエスブルグの失敗の後も、要塞の移動化は帝国内部で何度も献策されたのかもしれません。しかし、イデオロギーの人・ラインハルトにとって、その戦術は、彼の好むところではなかったのかもしれません。だから、採用しなかったではないでしょうか。 それが一軍の最高司令官として正しいのかどうか、私にはわかりません。 ただ、私はラインハルトはやはり有能な人物であったと思います。どれほどムダな出征を繰り返し、大義名分に振り回されていたとしても、上杉謙信が無能呼ばわりされることが少ないのと同じ意味で、ですが。 上杉謙信、と来れば、武田信玄です。 私は、ヤン・ウェンリーという人の中に、信玄の影を見ます。とくにイゼルローンを移動要塞としなかった点では。むろん、その他の性癖や言動はまったくちがうのですが。 「銀英」の原形である「銀河(宇宙でしたっけ?)のチェスゲーム」の中で、ヤンという人は、質実剛健な人物として描かれています。 あるいは、田中氏が人物を造形する際に、参考したのでは、と考えたりもします。 失礼しました。 |
No. 3640 | |
Re:徹底反論3−1 | |
倉本 | 2003/02/12 12:54 |
> これもまた手厳しい。要塞に対する認識の違いでしょうね。 > 私のガイエスブルグ要塞に対する認識は「固定式砲台を取り外して、普通の船につけた」だけものである。そして、冒険風ライダーさんのいう移動要塞というのは完全な「戦艦」であるという認識です。 > ガイセスブルク要塞の失敗は「固定式砲台を取り外して、普通の船につけた」という無理が作中の結果をもたらしたのではないかと分析しているのですがいかがでしょうか。あと以前の、空母と移動要塞設計思想の件ですが、やはり違います。あくまで空母は戦場に巻き揉まれる前に退避する、直接戦闘には参加しないのに対して、移動要塞は危険を侵して、戦場に飛びこむわけですから。空母は、英語の意味では「戦闘機の運び屋」です。 前から見てて思ってるんですが皆さん移動要塞が戦闘に参加することを当然と考えてますけど。 冒険風ライダーさんは移動要塞をそんなことに使うとはいってないと思います。 移動要塞は要塞の持つその無限の自給自足能力を使って艦隊に補給を行うもので強力な要塞砲で戦闘するようなものではないのではないでしょうか。 ですから移動要塞が戦闘することを前提にした批判は筋違いです。 |
No. 3641 | |
議論の前提条件に対する理解 | |
パンツァー | 2003/02/12 21:15 |
☆皆の考える「議論の前提条件」 Kenさんがこの掲示板で展開している主張は、 作品擁護論や作品批判論(冒険風ライダーさんの言葉ですが)における「議論の前提条件」について、異議を差し挟む、という行為です。 「移動要塞」論の討論に参加している多くの人は、賛否両論を問わず、「作中事実」に基づく帰納的な解釈を展開しています。 その解釈における質はともかくとして、多くの者は、「議論の前提条件」は、 「作品設定を前提とした擁護や批判は、帰納的な解釈により行うものである(これ以外では行いようが無い)」 と考えているのです。 なお、「作品設定を前提とした擁護や批判」において、「作品設定そのものに対する批判」は除きます。(銀英伝は科学的におかしい、等の批判) 別に、多数決で決めろ、といっているわけではありません。 以下説明を加えますが、「作品設定を前提とした擁護や批判」において、演繹的に証明できる部分など、あるわけがないのです。Kenさんは、No3628等で不沈戦艦さんが述べられていることを、理解しているでしょうか。 討論の他の多くの参加者も、「演繹的に証明できる部分がない」ことを、(どの程度意識しているかは別として)知っているから、「作中事実に基づく帰納的な解釈」を展開しているわけです。 私としては、「議論の前提条件」について異議を差し挟むことで、「移動要塞」論の是非を曖昧にしてしまおうとする「逃げ」を、絶対に許容したくないので、丁寧に説明を加えているのです。 ☆パンツァーが追加する「議論の前提条件」 私は、「作品設定を前提とした擁護や批判は、帰納的な解釈により行うものである(これ以外では行いようが無い)」 とする「議論の前提条件」に加えて、 「銀英伝そのものを、作中事実以外の一切の可能性を否定すべきだ、という結論」 を排除することを、 「議論の前提条件」に追加します。 例えば、「艦隊の移動可能性」に関しても、「作中事実」以外の航行は、 「銀英伝の記述だけでは、可能であると証明するにも、不可能と証明するにも、不十分である」 とする態度です。 @これに異議があるかどうか、まず教えてください。 以下の議論は、この点に関して、異議が無い、という前提で進めていますので、異議があるとすると話すことがまったく別となります。 (ほとんど有意義な話はできなくなるかと思います) ☆Kenさんが今回提案する「議論の前提条件」 Kenさんの記載(No3633) > 議論の前提条件ですが。 > > 1.恒久移動要塞が可能であると、演繹的に証明する > 2.恒久移動要塞が可能であると、私たちが知っている物理法則を使って判断する > 3.恒久移動要塞が可能であると、現実世界の科学的手法で、判断する Kenさんは、この三つの手法で、「作品設定を前提とした擁護や批判」が可能である、と考えている、ということでしょうか。 ○3の解釈について ここで、3については、「現実世界の科学的手法」の定義があいまいなので、なんとも言いかねますね。 パンツァーの記載(No3630) <「考察」というのは通例、「前提」より「結論」を導くための思考過程を指すものでしょう。> AKenさんの主張する「現実世界の科学的手法」(No3572)において、「考察」の意味は、上記の内容であることに同意しますか。 同意するのであれば、 パンツァーの記載(No3630) <Kenさんの言う「現実世界の科学手法」においても、 「観測→考察→普遍化(数式化)」 の過程では、「帰納」が用いられているわけです。 「普遍化(数式化)→予測」 の過程が、「演繹」に相当しましょう。> で述べた通り、 Kenさんの主張する「現実世界の科学的手法」は、「帰納」+「演繹」(ほとんど自明の内容)となって、要するに「帰納的な解釈により行う」ことと同意義となります。 ここで「演繹」がほとんど自明としたのは、例えば(No3630)において、 「燃料の量と走行距離には、線形の比例関係がある」という、数式化された法則が導かれれば(つまり帰納的に導かれれば)、「証明」が終わっているからです。「太陽が昇る」の話でも、「毎日、太陽は東から昇り西に沈む」が導かれれば、「今日、または明日も、太陽は東から昇り西に沈む」などという結論は、自明ですよね。 「演繹」のありがたみを感じることは、少ないのではありますまいか。 例えば、一般相対性理論よりブラックホールの存在が予測される、とか言うのは、「演繹」によって導かれる劇的な結果でしょうが。 繰り返しますが、Kenさんの主張する「現実世界の科学的手法」が「帰納的な解釈により行う」ことと同意義となる、ことには同意しますか? ○1と2について 1と2の手法で、例えば、「移動要塞」論とは関わりの無い、「艦隊の移動可能性」の可否についても、このような手法で、実証できますか? 私は、この二つの手法で誰かが、「艦隊の移動可能性」を実証しようとするのであれば、間違いなく論破する自信がありますよ。 この二つの手法で、「作品設定を前提とした擁護や批判」が可能かと言えば、結論を述べると、それは不可能です。 以下、個々について述べていきます。 ○1について B演繹法というのは、ある「前提」に対する「結論」が真である、という話ですから、まず「前提」が必要となるわけです。 移動要塞の可否を問えるような「前提」をそもそも設定できますか? 逆にいえば、「艦隊の移動可能性」の可否を問えるような「前提」を設定できますか? ○2について 例えば、「演繹」の前提として、「私たちが知っている物理法則」を適用してはどうか、といった提案ですかね、これは。 C同じことですが、「艦隊の移動可能性」を実証することができますか? パンツァーの記載(No3617) <不沈戦艦さんが指摘されましたが、「ワープエンジン」って、Kenさんの言う「私たちの物理法則」に当てはまるのですか。「ワープエンジン」の原理に関して、今日我々が知っている物理学で納得できるような説明もありませんよね。> Kenさんの記載(No3617) <私の理解では、超空間を通過して、宇宙の一点から別の一点まで、通常航行では不可能な短時間に移動する、ということは私たちが知る物理法則に、完全否定はされていないと思います。この点は、例えば永久機関などとは性質を異にします。NASAの故カール・セイガン博士は、(中略)スティーブン・ホーキング博士も、(以下略)> だから、「ワープエンジン」の原理が、今日我々が知っている物理学で納得できる、ということにはならないですよね。 第一に、この点で、まったく同意できません。 それに、「私たちが知っている物理法則」の適用は、諸刃の剣だと思いますよ。「作品設定」の中で、どのように拡大解釈しても、「私たちが知っている物理法則」と合致しない例が見つかったなら、直ちに「作品設定」に対する重大な違反です。 「銀英伝の作品設定」を「前提」としないのであれば、そもそも「移動要塞」など問題にもなりません。 ☆「作品設定を前提とした擁護や批判は、帰納的な解釈により行うものである(これ以外では行いようが無い)」に不満なら、整合性のある「作品設定を前提とした擁護や批判」のための手法を提示せよ D「議論の前提条件」に異議を差し挟むのも結構ですが、Kenさん自身で、「帰納的な解釈により行う」以外の「手法」を提示してみてください。 上の1・2については、まったく成り立たないでしょう。 3についても、「帰納的な解釈により行う」以外の意味なら、それを明示してください。 そして、 例えばKenさんがなにか提示できる手法があるなら、 Eまず、「艦隊の移動可能性」について実証してみてください。 「艦隊の移動可能性」すら、怪しい評価方法では、他の「仮定」に適用できるものとは言えないでしょう。 ☆現時点について Kenさんご自身に自覚して欲しいのですが、現時点では、Kenさんは、なにか有効な説をなにも展開していないのです。 例えば、(No3630)の私の指摘内容に対して、有効な反論を展開できないのであれば、Kenさんが主張してきたことは、単なる「言いがかり」になるのですよ。 ☆回答を期待する点について 上記で@A等の丸付きの数字で、回答を期待する個所を明示しました。 これらに回答してもらえると、話がしやすいですね。 急ぎませんので。 |
No. 3643 | |
同盟側私的返答 | |
八木あつし | 2003/02/13 01:42 |
どうもこんばんは。久々に長いレスです。 実は実家に帰っていました。実家ではPCとゲームは1日1時間(笑)と決められていまして、ロクに文章を書くだけの時間が取れず、長文が書けずに短くレスをするだけでした。また全てのレスをPCで読む時間もそんなに取れないので、携帯のIモードで読んでいました。いや〜、読みづらいことこの上ない(笑)。PCが使えないので、余った時間は実家に置いていた銀英伝のアニメをたっぷり見てきました。やっぱアニメは良いです。 それにしても各ツリーで論戦が起きていますね。局地戦の嵐です(笑)。現在の主戦場はKenさんがいるところですか。私も対冒険風ライダー戦だけでなく、戦線を拡大しようかな。(^^;) それにしてもこの移動要塞ネタが復活するまで、皆さんずっとROMをしていたのですね。これだけの人が参加してくるとは、思いもしませんでした。タナ撃つBBSを見つつ、虎視眈々と自分が得意とするネタを待つ論客の方々。まぁ私も人のことは言えませんが(笑)。 色々とレスがありますが、一部の方が勘違いをしている部分を見つけたので書いておきます。ガイエスブルク要塞の改造工事の期間です。3ヶ月と誰かが書いていましたが、そんなに掛っていません。 原作とアニメ版を参考にすると 1月18日 同盟軍アッテンボロー分艦隊と帝国軍アイヘンドルフ分艦隊の遭遇戦 3月上旬? 通常エンジン試験成功。ガイエスブルク移動要塞、ワープ実験宙域に通常航行にて移動開始。 3月17日(アニメは18日) ワープ実験成功。ガイエスブルク派遣軍によるイゼルローン要塞攻略作戦が決定。 このスケジュールからガイエスブルク要塞の改造工事完了は、ガイエスブルクへの移動時間を考えて1ヶ月半というところですね。どんなに掛っても時間的に2ヶ月は掛っていませんね。 < 私の論に対して「そんなことはヤンの性格ではできないだろう」とか「ヤンの民主主義思想に反する」とかいった類の「ヤンの性格的要素」のみをベースとした反論については、「たかがその程度の理由で実行に移せなかったヤンの方が愚かである」「ヤンはすでに民主主義の擁護者ではなく破壊者なのであり、そんな思想を信奉する意味はない」という批判へと自動的に変換させて頂きますので、その辺はご了承を。> ここを読んで思ったのは、最初から「IFネタにすべきだったのでは」でした。この冒険風ライダーさんの言葉は、あきらかに批判を超えて架空戦記的な事象(反銀英伝)にまでなってしまいますね。 ライダーさんがこのようにいきなり宣言されると、私としても困ってしまいます。私がライダーさんに論戦で勝とうとしても、かなり攻め方が限られてしまいますので。こうなると私としては、軍事の天才であるヤンはとっくにライダーさんの主張を思考しており、その上で全て実現不可能・ないし無意味だと判断して実行をしなかった。つまりライダーさんは今回ヤンを無能・愚劣だと主張していますが、無理難題ばかりを言うライダーさんこそ無能・愚劣だと持っていくしかないのですが……。 > >第8次イゼルローン要塞攻防戦以降 <> まず言うまでもなく、ヤンの場合も件の移動要塞を見た瞬間に「移動要塞が持つ強大な潜在的脅威と無限の可能性」に気づいた、という前提から始めます。 > この可能性に気づいたヤンが最初にやるべきだったことは、移動要塞ができようができなかろうが、まずは「移動要塞が持つ強大な潜在的脅威と無限の可能性」を政府ないしは軍上層部に報告することです。これはヤンの立場にいる者であれば絶対に行わなければならない義務ですらありますし、ヤンの「あの」性格でさえ、実行の障害になることはありえないでしょう。 > そもそも、「移動要塞が持つ強大な潜在的脅威と無限の可能性」というのは、私が「最強の武器」と定義する「無限の自給自足システム」だけが全てではありません。単に戦術的な観点のみを見ても、移動要塞の強力な主砲と外壁は大艦巨砲主義の可能性を示唆していますし、何よりも第8次イゼルローン要塞攻防戦終盤で発生した「要塞特攻」の改良戦術「小惑星特攻による要塞破壊」があります。特に後者は、イゼルローン要塞の防衛が国の命運をも左右する同盟にとっては、ほとんど最悪の脅威といっても過言ではない戦術です。ラインハルトがこの戦術を用い、再び要塞を攻撃にかかる可能性は、いくら検討してもし過ぎるということはないでしょう。 > もちろん実際には、せっかく移動要塞を提唱されたラインハルトが「移動要塞が持つ強大な潜在的脅威と無限の可能性」に全く気づかなかったばかりか、かつて自分自身で述べていたはずの「要塞特攻」をすらもすっかり忘れ去ってしまうという「重度の健忘症」を患ってしまっていたため、「小惑星特攻による要塞破壊」が実行に移されることはありませんでしたが、それはあくまでも「僥倖」とでも言うべき結果論の話なのであって、それとは別に、移動要塞技術がもたらす様々な可能性を、ヤンも同盟政府&軍首脳部も「将来的にありえる脅威」として、ありとあらゆる角度から検討しなければならなかったはずでしょう。 > 同盟政府&軍首脳部に対して「移動要塞が持つ強大な潜在的脅威と無限の可能性」を報告し、その対策を考えると共に、移動要塞実現のための研究・開発チームを設けさせること。こんな簡単なことすらも行わなかった時点で、ヤンの識見のなさと怠慢さは充分に批判されて然るべきなのです。> まずこの小惑星攻撃に移動要塞が避けることが出来るか? これが最大の問題点になります。 この小惑星攻撃に近い事例として、アルテミスの首飾りへの氷塊による攻撃が当たります。この作戦でヤンはバーラト星系第4惑星ハイネセンの衛星軌道に展開する12個軍事衛星に対して、バーラト星系第6惑星の氷をくり抜いてエンジンを装着し光速に近い速度まで加速させ、この氷塊を軍事衛星にぶつけることで破壊しました。 バーラト星系外縁部からハイネセンまでの距離は約65億キロ。艦隊にとっては指呼の距離とあります。ハイネセンの救国軍事会議は、アルテミスの首飾りへの攻撃の直前になって初めて氷塊に気付きました。結果はなすすべもなく、軍事衛星は全て破壊されました。 これから判る通り、意外に近距離であっても動く氷塊に気付かなかったのです。そして軍事衛星よりも圧倒的に巨大であり、戦艦よりも速度が遅い(アニメは同速度に見えますが、ゲームは艦隊のほうが速いです)移動要塞が、至近距離でやっと探知して、それから避けられるはずもありません。氷塊ないし小惑星は、艦隊のスピードの何十・何百・何千倍の速度です。遠距離で探知したとしても光速に近い速度で迫ってくる物体を果たして直径60キロのイゼルローンが避けることができますか? ヤン艦隊がアルテミスの首飾りへの攻撃時に、ハイネセン本星への被害を与えない攻撃軌道を計算しました。常に移動要塞が航行エンジンを使い中途半端に移動していたとしても、すぐに見破られるでしょう。仮に緊急移動で1〜2個ぐらいなら避けることが出来ても、10個も同時に撃たれれば無理ですね。 ヤンはアルテミスの首飾りを破壊しました。そしてガイエスブルク移動要塞も粉砕しました。そのヤンが、私の考えるようなことに気付かないはずがありません。その上で、ハードウェアの限界を知るヤンだからこそ、イゼルローンはそのままにしていたのではないでしょうか? 第一狭い回廊内では、少々動いたところで意味はさしてないでしょう。それに、4〜5巻の時点では要塞が動いても意味がありません。帝国軍の来襲を防ぐためにもイゼルローン回廊から出るわけにはいかないからです。ラグナロック作戦で帝国軍はフェザーンを占領しました。この時点でイゼルローンの戦略的価値は激減しました。しかも3倍のロイエンタール軍に囲まれている状況では、移動要塞が動けるわけはありません。かといってロイエンタール軍が迫る前に同盟領に要塞が引けば、易々と回廊突破、同盟領侵入を招きます。結局、移動要塞にしようがしまいがさしたる意味はありません。改造した分だけ資金と労力の無駄です。 4〜5巻でヤンの行動を非難できるのは、バーミリオン会戦で政府の停戦命令に従ったこと。そしてその後メルカッツ達を逃がしたことだけです。 私はむしろ「アルテミスの首飾り破壊作戦から見る軍事要塞破壊論」を唱える方が良いのでは。 < ではこの時点で移動要塞が建造できる可能性はあったのか? これについては、「ヤン自身に積極的なやる気と意志さえあれば決してできないことではなかった」というのが私の意見ですね。 これにはまず、2つの方法が考えられます。まずひとつは、件の「小惑星特攻による要塞破壊」の脅威に備える対策として移動要塞改造を提起すること。ラインハルトが愚鈍でさえなければ、「小惑星特攻による要塞破壊」は実際に起こりえる可能性があったのですから全くのウソではありませんし、「小惑星特攻」に対する防衛は、むしろ移動要塞よりも静止要塞の方が「事前に察知しても、要塞自体が動いてかわすことができない」という点ではるかに不利です。当然「小惑星特攻」が成功した場合は、イゼルローン要塞が完全破壊されて同盟の防衛線そのものが瓦解してしまうのですから、むしろ同盟側は自らの保身のためにもイゼルローンを移動要塞に改造する必要性があるのです。 もちろん、同盟も予算不足は深刻でしょうし、政治家の面々もヤンに対して隔意を抱いてはいるでしょうが、だからといってイゼルローン要塞が「小惑星特攻」によって破壊されるという事態まで望んではいないはずです。3巻の査問会でヤンに対して精神的リンチを浴びせていた連中が、「移動要塞襲撃」の報を受けて面食らっていた様子を思い出してみてください。むしろ、自分達の保身のためにも、かなりの無理をしてでも予算を出し、イゼルローン要塞を移動要塞に改造することに賛同してくれることでしょう。> ケンプ提督の要塞特攻は、追い詰められた結果のことです。本当は要塞特攻というのは、もっともしてはならない愚作なのです。 話は変わりますが、帝国軍艦隊の作戦可能距離は帝都オーディンからイゼルローン要塞周辺まででしょう。新書3巻44Pのシャフトの説明やイゼルローン要塞の建設理由から、イゼルローン回廊を通り抜ける当たりで補給が切れるのでしょう。もし要塞という補給基地がなければ、回廊を突破したあとに補給切れになってしまいます。イゼルローンもなく、ガイエスブルクもなければ回廊を突破したあとの補給が持たず、同盟首都ハイネセンまで行けません。 ヤンはその補給拠点としてのイゼルローンの有意性から要塞を破壊されないという可能性。もしくはその時にならねば考えても仕方ないと思ったのでしょう。何にしろ小手先で、移動要塞化してもどうせ回廊内ではまず避け切れません。それならば、資金と労力を使わない方がマシです。 < それでも動かない、というのであれば、いっそということでヤンが「敵軍襲来の際に首都に呼びつけられ、不当な査問会で精神的リンチを受けていた話」をネタに政治家達を脅迫するという手もあります。「国防のために必要な移動要塞改造を受け入れないのであれば、この事実を同盟市民の前で告発する」とでも言って。ヤンを熱狂的に支持している同盟市民達は当然ヤンの言うことを信じるでしょうし、そんなことをされたら政治家達の政治生命も絶たれてしまいますから、いくら個人的にヤンを憎もうが、彼らはヤンの要求に応じざるをえません。 「トリューニヒト政権は同盟における主要報道機関を押さえているからその手の脅迫は無駄」という反論があるかもしれませんが、イゼルローン要塞にはヤンが自由に動かすことのできる報道システムが存在します。これは銀英伝8巻でヤンが死亡した時、それを全宇宙に発表する際に使われていますので、これを使えば件の話を全宇宙に対して大々的に報道することができるでしょう。ヤンの脅迫を妨げる政治的・物理的要素はどこにも存在しないのです。 これで移動要塞は余裕で完成させることができるでしょう。後の運用はヤン次第、といったところですね。> 積極的にヤンを民主主義の破壊者にしてどうするのですか(笑)。ヤンがあの査問会に耐えたのも、あくまでも制服軍人の上司である国防委員長、それも選挙によって選ばれた代議士であったからです。確かにあれはあまりに不当でした。だからといって、軍人が政治家を脅迫して良いわけではありません。 せめてヤンの権限内で出来る策を考えてください。これでは一方的に私が不利ですよ。 > >バーラトの和約後の同盟 < これに関しては今回が初出となるのですが、ヤンがレベロと手を組み、将来に備えた移動要塞改造のための研究やエンジン製造を秘密裏に行わせるといった手段も考えられますね。「バーラトの和約」には、戦艦や宇宙空母の製造禁止は明記されていても、「巨大エンジン自体を製造してはいけない」などという規則はどこにも存在しませんし、実際には大量の戦闘艦艇をチュン・ウー・チェン辺りが大量に隠蔽できていたことなどを考えても、隠蔽工作などは比較的容易に行えそうですしね。将来イゼルローン要塞を「例のトリック」で奪取した時、すぐさま移動要塞を改造することができるように準備しておけば、未来の可能性がより大きく開かれたであろうことはまず間違いありません。 バーミリオン会戦時に、わざわざ「政府の命令と同盟の国内法に違反してまで」メルカッツらを逃亡させた挙句、不要不急の戦艦奪取などを行わせて同盟を滅亡させるきっかけを自ら積極的に作ってしまうような「民主主義を破滅させる愚策」などよりも、こちらの方がはるかに懸命で賢い選択だったのではないかとすら思えるのですが。> ヤンが2ヶ月でハイネセンを脱出する羽目になったのを忘れたのですか。レベロとヤンが手を組むことはありませんよ。手を組むためには、帝国高等弁務官のレンネンカンプが何も行動しないというのが最低条件です。しかしそれはレンネンカンプの性格上無理でしょう。ヤンはハイネセンから逃げるしかありません。 もしメルカッツ提督達を逃がしていなかった場合、ヤンは巡航艦レダ2号しか手元にありません。イゼルローン再攻略を担った600隻の艦艇と兵員1万6000人はいなくなるのです。レダ2号1隻でイゼルローン再攻略はさすがに無理でしょう。 ヤンと同盟との和解が不可能になった時点で、同盟も民主主義も滅んで終わりです。 > >エル・ファシル時代 < 八木さんは何か重大なことを忘れ去ってはいませんか? 同盟建国の礎となった偉大なる先人達が、これ以上ないほどに劣悪な環境の中、長さ122q、幅40q、高さ30q、推定質量234兆2400億トンの超巨大ドライアイス船を、たった3ヶ月程度の時間で完成させ、無事に航行させることに成功した「作中事実」を。これには言うまでもなくエンジンの開発・製造・設置作業だって当然含まれているのですよ? あの酷寒の惑星の奴隷階級にすら簡単にできたことが、エル・ファシルの生産力をもってしてできないはずがないではありませんか。 しかも八木さんは「巨大なエンジンを30個以上『も』製造するのです」とさかんに強調されておられますが、そもそも最低でも数千〜数万隻単位で艦艇が運用される銀英伝世界で、いくら巨大とはいえ、32個のエンジンというのはむしろ圧倒的に少ない方なのではありませんか? 巨大エンジンひとつに戦艦1隻分の費用と資材が必要だったとしてもたかだか32隻ほど、イオン・ファゼカス号のエピソードとも併せて考えるともっと少ない負担で完成する可能性も高いので、大した負担であるとは私には全く考えられないのですけど。 工員に関しても、民間から技術者達をアウトソーシングしてこき使うといった手もあるでしょうし、最悪、全ての艦艇補修を一時的に中止してでも、工員達を移動要塞の方に集中させる方法だってあるでしょう。移動要塞が完成した後に改めてゆっくりと艦艇補修を「移動要塞の中で」行えば良いのですし、移動要塞にはそれだけの価値が充分にあります。> ●250年以上前に鉱山奴隷40万人が3ヶ月掛けてドライアイスの宇宙船を造った → ならば、イゼルローンは3ヶ月で移動要塞になるだろう。 ● 2年前に約9万人の工兵が1ヶ月半を掛けてガイエスブルクを移動要塞に改造した → ならば、イゼルローンは3ヶ月で移動要塞になるだろう。 この二つ。どちらの主張が信じられると思いますか? まず下の例でしょう。 250年前のイオンファゼカス号のことは、今回は全然関係ありませんよ。第一、エンジンを何機か造ったかも記述はありません。ものすごく燃費の悪い巨大エンジンを一つ取り付けただけかもしれませんよ。エンジンの同調問題も何もなし。とにかく脱出できれば良い。 もう一つ言えば、鉱山奴隷ということで40万人のほとんどが何らかの工学知識を持っていた可能性が高いことです。(氷に10M穴を掘ってそれをまた埋めろ、という命令を与えられていたのではないかぎり) それに対して、エル・ファシルの300万人は一般市民です。しかも農業従事が多いでしょう。一般市民に、鉱山奴隷ほどの工学知識はまずないですよ。 また確かにイゼルローンの設備でエンジンぐらいは、時間こそ掛かるものの完成するかもしれません。しかし問題はエンジンの取り付けであり、同調させる問題です。ヤン艦隊の200万将兵は、あくまでも艦艇の乗組員であり専門工兵ではありません。しかもそのうちの2割は新兵です。また五月雨式に数が増えていった訳であり、イゼルローン奪還直後の兵員は1万6000人というところです。エル・ファシルの市民もせいぜい徴兵された経験がある市民がいる程度です。艦艇を造る設備がエル・ファシルに無い以上、エル・ファシルの市民はそんなに役に立ちません。 イゼルローンの改造では、ガイエスブルクの例を最大限参考にすべきです。イゼルローンの改造に、イオンファゼカスの例を参考にされても私は相手にしません。 ガイエスブルクは、専門工兵約9万人が1ヶ月半取り組み改造できました。ガイエスブルクよりも一回り大きいイゼルローンが、専門工兵も技術者の民間人もロクにいない状態でありながら、たったの3ヶ月で改造できるでしょうか? 私は無理だと言わざるしかありません。 < まあこれに関してはさすがに可能性100%とまでは言いませんけど、事前の準備とやる気さえあれば、この時期でも移動要塞が実現する可能性は充分に存在しえたとは言えますし、すくなくとも銀英伝本編で行われた、100%必敗確実だった「回廊の戦い」の準備などを行うよりは、はるかに勝算の見通しは立ったのではないでしょうか。> ここでライダーさんは可能性100%ではないと書かれています。確かに移動要塞完成の可能性はあるかも知れません。しかし失敗の方が確実に高いですよ。中途半端な改造で動きもしないイゼルローン、修理の全く終わっていない艦艇群。これではどうしようもないです。移動要塞という失敗必至の賭けより、ベターを選ぶのは指揮官として当然ですよ。 よく必敗だと言われますが、ヤンは勝つのが目的ではなく民主主義を残すのが目的なのです。なので回廊の戦いはあれで良かったと思っています。 むしろ移動要塞となったイゼルローンで帝国領に侵入してどうするのですか?(同盟領は帝国軍が迫っているので無理) 艦艇は2万隻しか収容できず、その艦艇の補充の当てもない。帝国領内を破壊しながら逃げ回るのでは、民主主義を残せもしません。イゼルローン回廊とフェザーン回廊を固められたら、同盟領に行くことも適いません。 あと移動要塞は補給拠点として以外ではそんなに強くありません。アッテンボロー分艦隊とアイヘンドルフ分艦隊の遭遇戦では、相手を発見したのは時間的距離で50分でした。50分の距離がありながら、新兵中心のアッテンボローは逃げませんでした。つまりこの程度の時間的距離では逃げられないのです。艦艇よりも遅い要塞では、最後には追いつかれるでしょう。一個艦隊がイゼルローン移動要塞に接触できれば、それでほぼ終わりです。要塞の移動を中止して敵艦隊を排除しなければなりません。一個艦隊は例え全滅してでも足止めをして増援が来るのを待てば、最後にヤン艦隊は動けなくなり要塞に籠もって、戦うしかありません。待つのは敗北です。ラインハルトもここまでくれば、容赦はしないでしょう。 > やはりヤンの方もまた、「移動要塞が持つ強大な潜在的脅威と無限の可能性」を無視した挙句、民主主義を守るために自分がなすべきこともやらなかったばかりか、むしろ民主主義を破滅に導いた愚か者であったと言えそうです。 今回と過去の論戦を読んでみて思ったのは、ライダーさんの提唱した「移動要塞説」は、複合的な要素が絡み合っているので難しくなったのかな、でした。ライダーさんの説には、「軍事設定面的要素」「登場人物への批判的要素」「反銀英伝的要素」の3つが絡み合っているので、話を複雑にして同時に論戦も荒れるのでしょう。まぁ確信はありませんけど。(^^;) 各要素の1つだけ捉えて論を展開しても、どこかの要素が致命的に欠けるので、ライダーさんや不沈戦艦さんあたりの「斉射三連」で無理やり撃沈させられるのかもと考えてみたりします。 もしこの移動要塞ネタをヤン側でのみ、しかも思いっきりIFシナリオバリバリで行けばここまで荒れなかったかもしれません。例えばムライ中将が「こんなこともあろうかと思って用意していたエンジンが役に立ちそうですな」ってね。これならばヤンを無能扱いにするとか一切関係がなくなるので、荒れることはないですね。その分レスは半分以下になりそうですが(笑)。 ただ冒険風ライダーさんは、銀英伝の設定上の可能性と同時に反銀英伝的なIFも話されているので、少し混乱してしまいます。ここは私も人のことを言えませんけど。 出来が悪い返答になってしまったかも知れません。その点はご容赦下さい。 |
No. 3644 | |
Re:議論の前提条件に対する理解 | |
Ken | 2003/02/13 01:50 |
パンツァーさん、 あなたは誤解をされています。私の論旨ではなく、この議論に参加している私の意図をです。 冒険風ライダーさんが展開した論旨−−恒久的移動要塞が可能であることが、作中事実から立証されたとする論旨−−に、正確にはその論旨を立証する方法に、私が強い不満をもっているのは、まぎれもない事実です。ライダーさんの立証方法は、私が正しいと信じる立証方法とは、あまりにも乖離しております。 しかし、だからといって、私が恒久移動要塞の可能性を、なにがなんでも否定しようとしていると思われているなら、それは誤解です。 また、私が挙げた3つの立証方法 > 1.恒久移動要塞が可能であると、演繹的に証明する > 2.恒久移動要塞が可能であると、私たちが知っている物理法則を使って判断する > 3.恒久移動要塞が可能であると、現実世界の科学的手法で、判断する に続く、パンツァーさんの書き込みは、まるで私が、できるはずのないことを要求し、あなたをトラップにかけようとしていると、あなたが考えている−−そのように読めます。 もし、あなたがそう考えているなら、それも誤解です。 私の意図が、恒久移動要塞の可能性を否定する、そのことだけにあるなら、なにがなんでも「演繹的証明」に固執したはずです。パンツァーさんが言うとおり、銀英伝の記述だけで、恒久移動要塞が可能であると演繹的に証明するなど、不可能に決まっているからです。 でも、私はそこで議論を終わりにしたくなかったのです。移動要塞について、その原理、性能、生産性、安定性・・・そんなことを、この掲示板で議論するのは、すごく楽しい作業だと思ったからです。 そして、「現実世界の科学的手法」を持ち出したのは、それによって議論が発展する、少なくとも継続するのでは、と思ったからです。「まとめ」とタイトルをつけた#3625の投稿の末尾に、 >私が、物理法則の復権を提案したのは、銀英伝の記述に基づいての演繹証明などできるわけがないから、次善策として、現実世界の科学手法を取り入れてみてはどうか、と考えたからです。 と書いた意図はそこにありました。 パンツァーさんが述べたように、現実世界の科学者は、観察結果から仮説を「帰納」することで、いろいろなことを「立証」しています。そしてそのような仮説は、パンツァーさんの言葉を借りれば、往々にして「ブラックボックス」の形をとります。 分かりやすい例に、ニュートン力学の成立過程があると思います。ニュートン力学は、有名無名の多くの人の努力と業績の集大成ですが、ニュートン自身を含む最も重要な貢献者は、おそらく次の3名でしょう。 *一生を捧げて、天体観測を行った、デンマークのブラーエ *ブラーエの観測結果を使って、「惑星運動の3法則」を帰納した、ドイツのケプラー *ケプラーの法則を、きれいに説明できる理論を立てた、イギリスのニュートン そして、ケプラーが彼の法則を帰納した段階では、まだ「ブラックボックス」でした。それでも当時の多くの人に「事実」として受け入れられていたでしょう。ちょうど、ピタゴラス以前の人にとって、彼の定理が、既知の事実だったように。この点からいえば、銀英伝の記述に基づいてある仮説を帰納する、というパンツァーさんの論旨には何の異存もありません。 ただ、問題は、ケプラーがやったような帰納を、移動要塞についてできるのか、という点なのです。ケプラーの帰納の背後には、ブラーエを含む多くの人の観測結果がありました。ところが、銀英伝の移動要塞となると、ガイエスブルグの一例があるのみです。これでいったいどんな帰納ができるのでしょうか? 私は、銀英伝の記述は、帰納的に仮説を導くには、証拠として貧弱すぎると思うのです。一方に、「貧弱ではない」という冒険風ライダーさんたちの主張があり、そこに論争を生じたわけですが。 冒険風ライダーさんたちと論争する一方で、私は、弱すぎる帰納の根拠を補強できる方法を考えました。そして、結局それをやるには現実世界の科学者たちがやっていること、つまり少ない観察結果の「すきま」を物理理論で埋めるしかない、と考えました。だからこそ、一度は捨てることに同意した物理法則(私たちが知っている物理法則)を復権させようと、冒険風ライダーさんに提案したのです。拒絶されましたが。 パンツァーさんに理解していただきたいのは、私が物理法則を使おうと提案したのは、帰納を補強するためだということです。破壊するためではありません。 私は、パンツァーさんのこれまでの書き込みを見て、私と思考過程の似ている部分が多く、非常に「話が通じやすい」人ではないかと思っていました。とくに、パンツァーさんが、 ><数式化された法則が導かれ、その理論的裏づけとして、>という記載があるので、「普遍化(数式化)」の後に、「考察」が書かれたものと判断します。 と、書いたのを読んで、思わず膝をうちました。「なるほどそのとおりだ」と思ったからです。私は「観察→考察→普遍化→予測」と書きましたが、ブラーエ、ケプラー、ニュートンの業績の順序を考えても、たしかにパンツァーさんの方が正しいのです。 ですから、パンツァーさんとなら、上に書いたような、移動要塞の原理の考察など、「楽しい作業」をいっしょにやれるのでは、と期待したのです。例えば、観察中さんが挙げられた「木星型のガス状巨星からのエネルギー補給」などには、大きな関心をもっています。 パンツァーさんの書き込みに対して、私が回答できるのは以上です。なお、パンツァーさんが提示された私への質問は、上記のように私の意図への誤解に基づくものと思われますので、回答はひかえさせていただきます。 できれば、私の提案を容れていただき、これからも議論を続けてゆきたいと思います。 しかし、上に書いた内容も所詮は「詭弁」と言われるのであれば、私たちの議論もここまでです。 |
No. 3645 | |
追記 | |
八木あつし | 2003/02/13 20:15 |
同盟側(またはヤン側)でイゼルローン要塞を移動要塞化するのは、政治的・設備的・軍事的に考えて大変に厳しい状況だと思います。 ただ私もイゼルローン要塞の移動要塞への改造は、状況さえ変われば可能だと思います。また移動要塞になったときの戦略性、未来への可能性もあるでしょう。 では、いつだったら一番状況が良かったのか? 私はヤン亡き後のユリアン率いるイゼルローン共和政府こそ、移動要塞の無限の可能性を活かせたのだと思います。 政治的には、惑星エル・ファシルというお荷物にエル・ファシル政権という目の上のこぶが消えています。またヤン亡き後、イゼルローンからの離脱希望者を全てハイネセンに送り出したことで、ある程度の覚悟を決めたものが残り、組織的に純化されています。 組織体制も政治面でフレデリカ、軍事面でユリアン、その補佐に旧ヤン艦隊幕僚が加わり、一般将兵や住民が選んだ代表者が一人もいないという、まさしく理想的な「民主集中制」です(笑)。イゼルローン共産党とも言えますね。 設備的には、とにかくイゼルローンのミサイル工場や艦艇補修設備を改造して、エンジン開発工場に作り替えます。時間を掛ければ改造も可能でしょうし、エンジンも造れるでしょう。 軍事的には、ラインハルトがヤン亡き後のイゼルロ−ンに興味を失っており、回廊出口には半個艦隊程度が警備を行っているだけです。とにかく要塞に閉じ籠もっていれば、帝国軍が攻撃してくることもありません。少なすぎる人員でも、ゆっくりと時間を掛けて改造をやり遂げることが出来るでしょう。 10巻でユリアン指揮のイゼルローン革命軍が最初の戦いで帝国軍に勝ちましたが、移動要塞を使えばさらに楽に回廊突破を出来るでしょう。そのあとはヤンの考えた「人民の海」作戦でも、第2の長征一万光年でも思うがままです。 ということで、移動要塞を思いつかなかったユリアン。そして移動要塞構想をユリアンに語らなかったヤンを責めてみてはどうでしょう。 |
No. 3647 | |
結局、何が言いたいの? | |
パンツァー | 2003/02/13 21:09 |
Kenさんの記載(No3644) > あなたは誤解をされています。私の論旨ではなく、この議論に参加している私の意図をです。 何を言っているのですか? 問題なのは、「論旨」であって、「意図」なんかじゃないでしょう。 Kenさんの記載(No3644) > パンツァーさんの書き込みに対して、私が回答できるのは以上です。なお、パンツァーさんが提示された私への質問は、上記のように私の意図への誤解に基づくものと思われますので、回答はひかえさせていただきます。 私は、他の人(冒険風ライダーさんや不沈戦艦さん)が放擲したような、Kenさんの質問にも、まともに回答してきたのですよ。 それが、私の質問には答えられないというわけですか? 私の問いには、基本的にまともに答えてないでしょう、Kenさんは。 次から次へ、新しい質問を提示するだけで。 フェアでない、とは思いませんか? Kenさんの記載(No3625) <私たちの議論が紛糾した理由は一つ、恒久的移動要塞が可能であることが「証明された」という論が横行し、そこから「ヤンやラインハルトが愚かである」と展開したことに、私が承服できないからです。ただし、二人の英雄のことは今は論じません。その前提となった「既に証明できた」とする論に対する反論です。 以前に書いたように、冒険風ライダーさんも、ライダーさんと論拠を同じくする人たちも、何かを「証明する」とはどういうことかを誤解しておられます。「ピタゴラスの定理」を持ち出したのは、そのことを分かりやすく解説するためでしたが、あまり役に立たなかったようです。> 新規スレッドを立ててまで、このようなことを述べる意図は、いったい何なのでしょうか? 私は、ここで「証明」の対象となっているのは、「移動要塞」だけかと思いましたが、 (銀英伝を含めて)作品を元にした「仮定」の話はできないと、言いたいのですか? それだったらですね、別に「移動要塞」だけが「論じられない」のではなく、艦隊の移動自体も仮定することができないのですよ。 「艦隊の移動」についても、 「銀英伝の記述だけでは、可能であると証明するにも、不可能と証明するにも、不十分である」<Kenさんの記載(No3599)> でよいのですか? 銀英伝に登場するテクノロジー一般が、仮定の対象にはできない、という結論には、さすがに満足していないと思ったのですがね、私は。 だから、 同じ論理で、「艦隊の移動」についても証明ができますか、といった趣旨の話を、何度も何度も繰り返ししていますよね。 (No3598)、(No3630)、(N03641)等で。 まったく、この問いに対する回答がありませんが。 新規スレッドの題名である「まとめ」を、 Kenさん自身で果たしてください。 A銀英伝に登場するテクノロジー一般が、 「可能であると証明するにも、不可能と証明するにも、不十分である」 なのか、 B「移動要塞」だけが、 「可能であると証明するにも、不可能と証明するにも、不十分である」 (銀英伝に登場するテクノロジー一般は問題なし) なのか、 是非ともお聞かせ願いたい。 この問いに答えてもらえば、Kenさんの考える「議論の前提条件」についても、私が推測することができます。 回答がAの場合は、 そもそも銀英伝世界そのものの仮定を許さない態度なのですから、「移動要塞」論にだけ異議を提示する意図が不明です。 パンツァーの記載(No3613) <つまり、この態度を推し進めれば、銀英伝作中の記載事実以外の選択肢は無かった、ということになるでしょう。唯一信頼に値する検証をクリアしたといえるのが、実際に行われたこととされる作中事実のみに限定されるのですから。 この場合は、作中人物も、決められた台本通りに行動する舞台役者のようなものであって、彼らの天才だとか愚劣だとかを論じることすら、無意味ですね。そのように行動するように決定されていたということでしょうから。> まったく、面白くない結論ですね。 回答がBの場合は、 手始めに、「艦隊の移動」に関する証明から、はじめてください。 「艦隊の移動」が「作中事実」の航路の移動以外は、「可能であると証明するにも、不可能と証明するにも、不十分である」となったら、お話にならないでしょうから。 > できれば、私の提案を容れていただき、これからも議論を続けてゆきたいと思います。 まず、ここ一連の投稿で何が言いたかったのか、明らかにしてください。 上のAかBの択一の問い、簡単でしょう。とりあえず、この問いにだけでも答えてもらえなければ、Kenさんが何を言っているのか、さっぱり分かりません。 > しかし、上に書いた内容も所詮は「詭弁」と言われるのであれば、私たちの議論もここまでです。 私が「詭弁」といったのは、「ピタゴラスの定理の証明」を用いて、「移動要塞」論に、Kenさんが異議を唱えた点です。 前回「言いがかり」といったのは、銀英伝に登場するテクノロジー一般には批判を加えないのに、「移動要塞」論にだけは批判を加えていながら、銀英伝に登場するテクノロジー一般が成立する根拠を示してない点です。 特に、今回の回答がAであるならば、私がKenさんに対して、「詭弁」および「言いがかり」と断じたことを、謝罪いたしましょう。 今回の内容に関しては、本論に関わることが論じられているとは言えず、「詭弁」だと言うべき点は見当たりませんね。 |
No. 3649 | |
Re3643/3645:移動要塞シミュレーション | |
冒険風ライダー | 2003/02/13 23:56 |
<ここを読んで思ったのは、最初から「IFネタにすべきだったのでは」でした。この冒険風ライダーさんの言葉は、あきらかに批判を超えて架空戦記的な事象(反銀英伝)にまでなってしまいますね。 ライダーさんがこのようにいきなり宣言されると、私としても困ってしまいます。私がライダーさんに論戦で勝とうとしても、かなり攻め方が限られてしまいますので。こうなると私としては、軍事の天才であるヤンはとっくにライダーさんの主張を思考しており、その上で全て実現不可能・ないし無意味だと判断して実行をしなかった。つまりライダーさんは今回ヤンを無能・愚劣だと主張していますが、無理難題ばかりを言うライダーさんこそ無能・愚劣だと持っていくしかないのですが……。> 前回もそうでしたが、移動要塞関連のシミュレーションを行うに際してあえて「個人的性格」や「思想信条」といった要素を排除するのは、このシミュレーション自体が「移動要塞の可能性や移動要塞の効果的な使用方法を明らかにする」というテーマを訴えること「のみ」を目的としているからです。純粋に「ヤンやラインハルトならばどうするか」というテーマであれば当然「個人的性格」や「思想信条」といった要素も考慮に含めるのですが、今回のシミュレーションはそれとはやや異なる主旨なわけです。 それに私は、過去の銀英伝考察シリーズで「ヤンの民主主義擁護思想」だの「謀略否定・信念否定思想」だのといったものについても検証した結果、ヤンの思想信条がいかに現実と乖離し、破綻しているかを立証していましてね。そのようなヤンのご都合主義的な破綻思想を尊重しなければならない理由など、私は全く見出すことができませんし、それをベースにヤンを擁護されても「ヤンの思想自体が完全に破綻しているのだから、そんな擁護は無意味だろう」としか反論の返しようがないのです。 そもそも、ヤンが置かれている状況は常に「敗北の一歩手前」に近い状態にあるわけでしょう。ならば手段も問わずどんな卑劣な策でも躊躇なく使い、敵味方を徹底的に欺いてでも、何が何でも自軍が勝利できる道を模索しなければならないはずではありませんか。本来ならば、たかだかヤン個人が抱く「信念」ごときにいちいち拘泥しなければならない必要性など、全くと言っても良いほどにありえないはずなのです。「信念」などのために取るべき策が取れなくなるなど、「信念否定」を是とするヤンの思想信条(←これ自体がすでに矛盾のような気もしますが(笑))にすら明白に反するではないですか。 ですので、「ヤンの個人的性格や思想信条【だけ】の理由で、ヤンが移動要塞を使いこなすことができない」という反論の類は、私にとっては笑止な限りでしかないばかりか、むしろ「ヤンが無能かつ退嬰的である証」とすら判定せざるをえないのですし、それは、「移動要塞の可能性を全く顧みなかったヤンは愚かである」という私の主張を却って補強する結果としかなりえないわけです。 私のシミュレーションを何が何でも覆したいのであれば、ヤンの「個人的性格」や「思想信条」といった要素「以外」の理由を挙げ、なおかつそれが移動要塞実現の可能性を「100%完全に」否定するものでなければならない、そう私は考えています。 <まずこの小惑星攻撃に移動要塞が避けることが出来るか? これが最大の問題点になります。 この小惑星攻撃に近い事例として、アルテミスの首飾りへの氷塊による攻撃が当たります。この作戦でヤンはバーラト星系第4惑星ハイネセンの衛星軌道に展開する12個軍事衛星に対して、バーラト星系第6惑星の氷をくり抜いてエンジンを装着し光速に近い速度まで加速させ、この氷塊を軍事衛星にぶつけることで破壊しました。 バーラト星系外縁部からハイネセンまでの距離は約65億キロ。艦隊にとっては指呼の距離とあります。ハイネセンの救国軍事会議は、アルテミスの首飾りへの攻撃の直前になって初めて氷塊に気付きました。結果はなすすべもなく、軍事衛星は全て破壊されました。 これから判る通り、意外に近距離であっても動く氷塊に気付かなかったのです。そして軍事衛星よりも圧倒的に巨大であり、戦艦よりも速度が遅い(アニメは同速度に見えますが、ゲームは艦隊のほうが速いです)移動要塞が、至近距離でやっと探知して、それから避けられるはずもありません。氷塊ないし小惑星は、艦隊のスピードの何十・何百・何千倍の速度です。遠距離で探知したとしても光速に近い速度で迫ってくる物体を果たして直径60キロのイゼルローンが避けることができますか? ヤン艦隊がアルテミスの首飾りへの攻撃時に、ハイネセン本星への被害を与えない攻撃軌道を計算しました。常に移動要塞が航行エンジンを使い中途半端に移動していたとしても、すぐに見破られるでしょう。仮に緊急移動で1〜2個ぐらいなら避けることが出来ても、10個も同時に撃たれれば無理ですね。> まず、移動要塞の航行速度を検証するに際して、ゲーム版の設定を重視する必要性は全くないでしょう。ゲーム版ではゲーム性を重視しなければならない必要上、設定を故意にいじくることが少なくありませんからね。原作ではかなり弱い設定となっているはずのスパルタニアンやワルキューレなどの単座式戦闘艇が、ゲームによってはかなり強く設定されていることなどはその典型です。 移動要塞の機動力の実態については、推察できる記述が銀英伝の作中にもあります。ガイエスブルク移動要塞は、ヴァルハラ星系外縁部に到達した3月17日から24日経過した4月10日に、オーディンから約6250光年離れたイゼルローン回廊に到達しています。これがいかに速いかは、ハイネセン−イゼルローン間の約4000光年における艦船移動期間が「通常3〜4週間」(銀英伝3巻 P115)と言われていることからも伺えるでしょう。つまり移動要塞の航行速度は、実は通常艦船よりもかなり速いといっても過言ではないのです。 それに、移動要塞が小惑星を避けるのだってそんなに難しくもないでしょう。たとえば、イゼルローン要塞が周回軌道している恒星アルテナを「盾」にできる位置に要塞を移動させても良いでしょうし、いっそのこと、イゼルローン回廊を一旦出て、安全が確認された後にまた改めて戻るという方法もあります。こちらの移動に合わせて小惑星がエンジンを起動させて軌道修正を行うのであれば、その時こそ例のエンジン攻撃によって小惑星を自滅させてしまえばそれで済んでしまう程度の話でしかありません。イゼルローン回廊前面を常に哨戒して小惑星群の早期発見に努めれば、機動力が速いことも併せ、移動要塞はかなりの高確率で小惑星攻撃をかわすことができるでしょう。 そして今更言うまでもないでしょうが、静止要塞の方は小惑星攻撃を自身がかわすことは全く不可能であり、さらにイゼルローン要塞がなくなってしまえば、同盟の国防そのものすら危うくなってしまう……ということを考えれば、私はイゼルローン要塞を移動要塞に改造する必要性は絶対にあったのではないかと考えざるをえないのですけどね。 <ヤンはアルテミスの首飾りを破壊しました。そしてガイエスブルク移動要塞も粉砕しました。そのヤンが、私の考えるようなことに気付かないはずがありません。その上で、ハードウェアの限界を知るヤンだからこそ、イゼルローンはそのままにしていたのではないでしょうか? 第一狭い回廊内では、少々動いたところで意味はさしてないでしょう。それに、4〜5巻の時点では要塞が動いても意味がありません。帝国軍の来襲を防ぐためにもイゼルローン回廊から出るわけにはいかないからです。ラグナロック作戦で帝国軍はフェザーンを占領しました。この時点でイゼルローンの戦略的価値は激減しました。しかも3倍のロイエンタール軍に囲まれている状況では、移動要塞が動けるわけはありません。かといってロイエンタール軍が迫る前に同盟領に要塞が引けば、易々と回廊突破、同盟領侵入を招きます。結局、移動要塞にしようがしまいがさしたる意味はありません。改造した分だけ資金と労力の無駄です。> 小惑星特攻によってイゼルローン要塞が破壊されてしまった場合、イゼルローン要塞内に存在する軍民合わせて500万人以上もの人命までもが存亡の危機に晒されてしまう、という可能性については考慮されていますか? 八木さんの主張に従うと、イゼルローン要塞の住民には逃げる時間すら全く与えられないように見えるのですが、彼らの人命を尊重する必要性というものは全く存在しないのでしょうか? もしヤンがこのような危険性をも全て承知の上でイゼルローン要塞をあえてそのままにしているというのであれば、ヤンは単に無能というだけでなく、「戦闘の際に民間人を平気で巻き込む非人道主義者」ということにもなりかねないのではありませんか? それから、ヤンは移動要塞が出現するかなり前から、帝国側がフェザーン回廊から侵攻してくる可能性を考えていたのでしょう? ならば静止要塞を使ったイゼルローン回廊防衛にこだわる愚も知り尽くしていたはずなのですから、なおのことイゼルローン要塞を移動戦力化する可能性を考慮しても良かったのではないでしょうか? エンジンに弱点を抱え込む移動要塞でも、使い方次第では一発勝負用の強大な戦力たりえますし、そもそも銀英伝本編で見られるような「エンジンの弱点」があるのであれば、構造設計そのものから防御優先で考えるなり、エネルギー中和磁場に強力なものを据えつけるなりして、簡単に破壊されないようにその防御力を強化することによって、ある程度戦闘に使えるようにする手段だって決して考えられないことではないでしょう。ただでさえ戦力的劣勢を抱え込んでいる同盟なのですから、移動要塞というのは単に「戦力」という観点のみから見ても、その戦略的劣勢をある程度挽回してくれたであろう貴重な決戦兵器たりえたはずです。 イゼルローン回廊からの敵軍侵攻など、イゼルローン要塞自体が移動戦力化することに比べれば何ら問題になりません。いざとなれば史実同様の「正規軍によるゲリラ戦」を、移動要塞を使って、しかも同盟領内で派手に行えば良いだけのことですしね。 <積極的にヤンを民主主義の破壊者にしてどうするのですか(笑)。ヤンがあの査問会に耐えたのも、あくまでも制服軍人の上司である国防委員長、それも選挙によって選ばれた代議士であったからです。確かにあれはあまりに不当でした。だからといって、軍人が政治家を脅迫して良いわけではありません。 せめてヤンの権限内で出来る策を考えてください。これでは一方的に私が不利ですよ。> と言っても、ヤンはあの時の査問会でさえ辞表を叩きつけようとしていましたし、そもそもあのような「政治家の横暴」を結果として黙認してしまうような行為が、民主主義やシビリアン・コントロールのためになるとは、私には全く思えないのですけどね〜。それに「移動要塞の改造」自体は、軍事責任者が提示する軍事的要求としては極めて真っ当なものなのですし、ことさら査問会の件を誇示せずとも、査問会を行った政治家側の方でヤンに引け目や「査問会の件をバラされるかもしれない」という恐怖を抱いている可能性もありますから、ヤンの要求も案外すんなり通りそうな気もするのですがね。 あくまで脅迫がダメだと言うのであれば、いっそのこと、査問会の件をヤンが大々的に公表してトリューニヒト政権を瓦解させ、新政権に改めて移動要塞改造案を提示するという手もあります。ヤンにしてみれば、アレほどまでに嫌いぬいているトリューニヒトに一矢報いることができるわけですし、民主主義の「自浄作用」にも合致し、さらには救国軍事会議クーデターで失墜していた軍部の発言権の回復にも繋がって一石三鳥という按配です。これならばヤンの「あの」性格でさえ、実行を妨害する障害など何もないのではないかと思うのですけど。 軍人は政治家の命令にただひたすら盲従するのではなく、軍事責任者として意見を述べ、それが通るように努力しなければならない。それこそが民主主義国家におけるシビリアン・コントロールであると私は考えているのですけど、違いますかね? <ヤンが2ヶ月でハイネセンを脱出する羽目になったのを忘れたのですか。レベロとヤンが手を組むことはありませんよ。手を組むためには、帝国高等弁務官のレンネンカンプが何も行動しないというのが最低条件です。しかしそれはレンネンカンプの性格上無理でしょう。ヤンはハイネセンから逃げるしかありません。 もしメルカッツ提督達を逃がしていなかった場合、ヤンは巡航艦レダ2号しか手元にありません。イゼルローン再攻略を担った600隻の艦艇と兵員1万6000人はいなくなるのです。レダ2号1隻でイゼルローン再攻略はさすがに無理でしょう。 ヤンと同盟との和解が不可能になった時点で、同盟も民主主義も滅んで終わりです。> あの〜、そもそもヤンがバーミリオン会戦時における無条件停戦命令と同盟の国内法を勝手に無視してメルカッツらを逃した挙句、メルカッツらに戦艦奪取を実行させたことこそが、同盟を崩壊させる最後の引き金となっているのですが、たかだか600隻前後の艦艇と兵員1万6000人を手に入れる程度のことで、それが全てチャラになるとでも言うのでしょうか? レベロとヤンが手を組み、移動要塞の下準備と戦力隠蔽に協力し合っていれば、その程度の戦力など軽く調達することができる程度のシロモノでしかないのではありませんか? これは当時宇宙艦隊総参謀長の地位にあったチュン・ウー・チェンなどが、どれほどまでの戦力を隠蔽できていたかを考えてみれば一目瞭然でしょう。 第一、レベロとヤンが手を組むなど、レベロが政権についた時点から秘密裏に連絡を取り合ったりすることで、いとも簡単に実現させることができますし、それが達成されれば、これまた「バーラトの和約」の条文中にもなかった内政干渉行為を行ってきたレンネンカンプの「言いがかり」の類なども簡単に撃退することができたはずでしょう。それに銀英伝考察2でも述べましたが、あのレンネンカンプの内政干渉に関しては「素直に受け入れる」という選択肢もまたかなり危険な要素を孕んでいるのですから、そんな愚劣な意見を受け入れさせないためにも、ヤンとレベロは手を組むべきだったのです。 八木さんの主張は、単に結果から逆算したヤン免罪論でしかないと思うのですが。 <ここでライダーさんは可能性100%ではないと書かれています。確かに移動要塞完成の可能性はあるかも知れません。しかし失敗の方が確実に高いですよ。中途半端な改造で動きもしないイゼルローン、修理の全く終わっていない艦艇群。これではどうしようもないです。移動要塞という失敗必至の賭けより、ベターを選ぶのは指揮官として当然ですよ。 よく必敗だと言われますが、ヤンは勝つのが目的ではなく民主主義を残すのが目的なのです。なので回廊の戦いはあれで良かったと思っています。 むしろ移動要塞となったイゼルローンで帝国領に侵入してどうするのですか?(同盟領は帝国軍が迫っているので無理) 艦艇は2万隻しか収容できず、その艦艇の補充の当てもない。帝国領内を破壊しながら逃げ回るのでは、民主主義を残せもしません。イゼルローン回廊とフェザーン回廊を固められたら、同盟領に行くことも適いません。> すいませんが、「回廊の戦い」は「民主主義を残すのが目的」という観点から言っても「最低最悪の愚挙である」としか私は見てはいないのですよ。敵側のラインハルトの胸先三寸に全てを依存しているだけでしかないヤンの方針など、作中記述から見ても必敗100%確実だと私は何度も繰り返し述べていますよね? それとも、あの当時の惨状におけるヤンに何か起死回生の必勝の策があったとでもお考えなのでしょうか? 作中記述を見る限りでは、当のヤンですらそんなことは全く考えついてなどいなかったようなのですけど。 第一、ヤン側にはラインハルトを交渉のテーブルにつかせることのできる外交カードが何ひとつ存在しない状態であったというのに、一体どうやってラインハルトと「民主主義を残すのが目的」の交渉を行うように話をもっていくことができるのでしょうか? ラインハルトと戦い続ける「だけ」では圧倒的物量作戦で圧殺される可能性が濃厚ですし、事実そうなりかけたではありませんか。もしあの時にラインハルトが突然病に倒れ、ラインハルトの側から停戦を申し出るなどという「類まれなる僥倖」に恵まれなかったら、そのままヤンは敗北の道を転がり落ち、民主主義(とヤンが呼んでいるシロモノが本当に「民主主義」という名に値するものなのかどうかは知りませんが)もまた抹殺されていたはずなのですけど、それでも「ベター」な選択だといえる根拠は何なのですか? 確かに私が提案している移動要塞改造も、確かに失敗する要素は少なくないかもしれませんし、懸念される問題もたくさん存在するでしょう。しかしそれでも、成功する可能性は決してゼロにはなりえない以上、障害があるのであれば、ありとあらゆる策を使ってその障害を排除・消滅させる努力を行っていくべきなのですし、またそうしていくことこそが、将兵を指揮統率し、国民を守るべき最高司令官としての責任と義務でもあるでしょう。工員が足りないというのであれば工員を強引にでも調達する術を考えるべきですし、時間が足りないのであれば時間稼ぎの外交手段を模索するべきです。あの愚劣な「回廊の戦い」などで「滅びの美学」でも堪能したいというのでなければ、これこそがあの当時のヤンに与えられた唯一の可能性であり、何物にも勝る「ベター」なのです。 そして、移動要塞を使って「帝国領内のゲリラ戦」を展開し、要所要所を徹底的に破壊する、もしくはそれを辞さない強硬な態度を内外に示せば、それこそがラインハルトを本当の意味で屈服させ、交渉に応じさせる強力な外交カードとなりえるのです。最悪、「交渉に応じなければ、我々は未来永劫戦い続け、帝国および帝国250億の民全てを文字通り『消滅』させる所存である」というくらいの強烈な脅しの類でも行わなければ、あの「戦争狂」のラインハルトを「実力で」交渉のテーブルにつかせるなど、できるわけがないのです。 その後は、銀英伝本編の流れに従ってどこか適当な惑星に民主主義の存続を許してもらうなり、それこそ第二の長征一万光年でも実行するなりすれば良いでしょう。どうせ「回廊の戦い」でヤンが勝てるはずがないことなど、事前予測でさえ一目瞭然だったわけなのですから、可能性がゼロではない限り、移動要塞改造をやってはいけない理由などどこにも存在しません。むしろ、諦めこそが敗北に繋がるのです。 繰り返し言いますが、「回廊の戦い」でヤンが勝てる可能性も、民主主義が生き残れる可能性も、どちらも一片たりとも存在する余地すらありません。可能性が全く存在しない「回廊の戦い」と、とにもかくにも可能性が存在する移動要塞戦略のどちらを取るべきだったか、答えは一目瞭然なのではありませんか? >追記 いや〜、冗談抜きで笑わせてもらいましたよ。よりによって、あの「民主主義」の名に値しない独裁体制を敷いているはずのイゼルローン共和政府が、まさかこんな形で民主主義防衛の旗手たりえるとは(爆)。もしこれが実現された場合は、何か途方もない皮肉的状況が成立したのではないかと思えてなりませんが。 確かに八木さんの仰る通り、移動要塞構想を思いつかなかったユリアンおよび、移動要塞構想をユリアンに語らなかったヤンは批判されて然るべきでしょうね。様々な意味で何とも皮肉な話ではあるのですけど。 |
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