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銀英伝考察3
銀英伝の戦争概念を覆す「要塞」の脅威
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No. 6333
イゼルローンへの質量兵器攻撃についての一考察
平松重之 2005/03/08 02:17
 何ゆえヤン一党が籠るイゼルローン要塞に対し、ラインハルトは質量兵器での攻撃が行わなかったのか?ちょっと理屈を考えてみました。
 それについて言及するためには、まずイゼルローン要塞が存在するイゼルローン回廊について調べてみる必要があります。
 帝国領と同盟領の間には「サルガッソ・スペース」と呼ばれる「変光星、赤色巨星、異常な重力場」(黎明篇第五章T、ノベルズ版一巻P114上段)が密集している宙域が横たわっています。イゼルローン回廊はその宙域に存在する、細い一筋の安全地帯であり、帝国領と同盟領を結ぶ数少ないルートの一つです。
 銀英伝世界にはワープ(空間跳躍)航法が存在しますが、このサルガッソ・スペースを飛び越える事は出来ないと思われます(出来るのならそもそもイゼルローン回廊の存在意義がなくなります)。
 また、回廊内でのワープイン及びワープアウトについてですが、

 黎明篇第九章T(ノベルズ版一巻P225下段)
<キルヒアイス艦隊の急行動を見て、その進行方向に居あわせた同盟軍の戦艦がパニックに襲われ、大質量のちかくであるにもかかわらず、跳躍したのである。>

 上記の文章はアムリッツァ星域会戦の描写の一節ですが、これを見る限り、大質量の近くでのワープには大きな危険が伴う事が示唆されています。先にも書いた通り、イゼルローン回廊は「変光星、赤色巨星、異常な重力場」といった大質量の天体が密集した宙域の中に存在しますので、当然「回廊内での」及び「回廊内への」ワープは危険であると思われます。
 その証拠の一つとして、第五次イゼルローン攻防戦においての次のような描写が挙げられます。

 外伝「黄金の翼」(徳間ノベルズ「夜への旅立ち」P177)
<五月二日、シトレ総司令官は旗艦ヘクトルの作戦会議室に、一〇〇名をこす幕僚を参集した。
「わが軍は過去、四度にわたってイゼルローン要塞へ直接の攻撃をかけ、四度にわたって敗退した。不名誉な記録というべきだ。今回の遠征は、この記録を中断させるのが目的であって、これ以上の更新はのぞましくない」
 幕僚たちの間から、消極的な笑声がおこった。この宙点からイゼルローン要塞までは、ほぼ九〇時間行程の距離であり、すでに帝国軍の前哨地点とみなさねばならず、シトレ総司令官の冗談めいた口調も、彼らの緊張を完全にほぐすことはできなかった。>

 この文章から見ても、イゼルローン回廊内でのワープは不可能で、通常航行で回廊内を進まねばならない事が分かります。
 また、第六次イゼルローン要塞攻防戦においては、次のような描写があります。

 外伝「千億の星、千億の光」第七章U(ノベルズ版外伝第三巻P169上段〜下段)
<一方、自由惑星同盟軍は、この年初めに、ヴァンフリート星系で経験した、漫然たる無秩序な消耗戦で、さすがに、多少は学ぶところがあったようである。動員された同盟軍の艦艇は三万六九〇〇隻、これが総司令官ロボス元帥の指揮を受け、きわめて迅速な行軍と、緻密な補給計画によって、帝国軍の機先を制し、一〇月半ばには、イゼルローン回廊の同盟側出入口を扼して、帝国軍の戦術的展開を封じこめてしまった。まことに、幸先よいことに思われた。>

 上記の文章から考えると、出入口を扼した敵の後背に、回廊内からワープして攻撃を仕掛けるという事も出来ないと思われ、これも回廊内での(への)ワープが出来ない事の証拠の一つになりえると考えられます。
 さて、「イゼルローン要塞級の大質量の小惑星にエンジンを取り付けて要塞の火力が届かない遠距離から発射し、ある程度加速がついた所でエンジンを停止させ、そのまま慣性航行によってイゼルローン要塞に衝突させる」という案ですが、イゼルローン回廊は先にも書いた通り「変光星、赤色巨星、異常な重力場」の密集する宙域の中に存在します。また、イゼルローン回廊も自然に形成された宙域である以上、直線的な通路ではなく、多少なりとも曲がりくねった通路であると考えた方が自然です。そうなると、要塞や要塞に駐留する艦隊の目や火力の届かない安全な遠距離から打ち出した場合、イゼルローン要塞に激突する前に「変光星、赤色巨星、異常な重力場」が密集する宙域に突入してしまい、それら大質量の天体の重力に囚われてしまうのではないでしょうか?
 まあ、仮にイゼルローン回廊は直線的な通路であり、質量兵器をそのまま遠距離から突入させても問題なくイゼルローン要塞に衝突するコースを進ませる事が出来るとします。
 まず、「イゼルローン要塞は特定の宙域に固定された要塞である」という認識についてですが、これはやや事実と異なります。

 野望篇第一章T(ノベルズ版二巻P11下段)
<イゼルローンは、銀河帝国領と自由惑星同盟領の境界に位置する人工惑星で、恒星アルテナの周囲をまわっている。いわゆる「イゼルローン回廊」の中心にあり、ここを通過しないかぎり、おたがいの領域に軍隊を侵攻させることは不可能だ。>

 この文章を見る限り、イゼルローン要塞は特定の位置に固定された要塞ではなく、恒星アルテナの周囲を公転している事が分かります。となれば、イゼルローン要塞に慣性航行で進む質量兵器を激突させる場合、事前に要塞の公転も計算に入れて発射のタイミングや角度を定めなければなりません。
 ですが、この場合イゼルローン要塞はそのまま予想通りに公転軌道を周るでしょうか?と言うのは、もしイゼルローン要塞が何らかの原因で公転軌道を外れようとした場合に、当然それを修正するための姿勢制御システムのようなものがイゼルローン要塞には存在すると考えられるからです。銀英伝世界では重力制御や慣性制御も実現していますし(黎明篇序章、ノベルズ版一巻P7上段。もしなければ、万が一に公転軌道から外れた場合、宇宙をあてもなく漂流するか、下手をすれば恒星アルテナに突っ込んでしまう危険性があります)。
 となれば、ガイエスブルク移動要塞のような自由自在な機動力は到底望めないにしても、遠距離からの質量兵器の接近を察知し、その姿勢制御システムを駆使して公転速度を停止ないし遅滞させれば、質量兵器には肩透かしを食わせる事が出来るのではないでしょうか(これでは近距離からのビームやミサイルをかわすのはさすがに無理でしょうが)。
 また、「イゼルローン要塞の近距離まで近付き、そこから発射し、ある程度加速がついた所でエンジンを停止させ、そのまま慣性航行によってイゼルローン要塞に衝突させる」という案ですが、先にも書いた通り、回廊内深部へのワープは事実上不可能と思われますので、ワープで要塞近辺に接近する事は出来ません。通常航行で回廊内を航行し、それほどの近距離まで近付こうとした場合、当然要塞より遥かに遠くでイゼルローン要塞の哨戒網(哨戒艦隊や偵察衛星など)に捕捉されます。そうなれば、「エンジンを取り付けた大質量の天体」の存在はいち早くイゼルローン要塞首脳の知る所となり、当然ヤンは質量兵器としての用途を見抜き、駐留艦隊を派遣して阻止しようとするでしょう。質量兵器に護衛艦隊がついていたとしても、小惑星に取り付けられたエンジンを守りつつ応戦するのは困難でしょうし、ヤン艦隊は回廊での戦闘に慣れています(乱離篇第四章U、ノベルズ版八巻P84下段)。かくしてエンジンは要塞より遥かに遠い宙域で破壊され、質量兵器としての使用は出来なくなるのではないでしょうか。
 かくして上の様に考えたが故に、ラインハルトはヤン一党の籠るイゼルローン要塞に質量兵器で攻撃を行う事を断念したのではないでしょうか。


No. 6337
Re6333:銀英伝世界における質量弾攻撃の成功率
冒険風ライダー 2005/03/09 02:27
<ですが、この場合イゼルローン要塞はそのまま予想通りに公転軌道を周るでしょうか?と言うのは、もしイゼルローン要塞が何らかの原因で公転軌道を外れようとした場合に、当然それを修正するための姿勢制御システムのようなものがイゼルローン要塞には存在すると考えられるからです。銀英伝世界では重力制御や慣性制御も実現していますし(黎明篇序章、ノベルズ版一巻P7上段。もしなければ、万が一に公転軌道から外れた場合、宇宙をあてもなく漂流するか、下手をすれば恒星アルテナに突っ込んでしまう危険性があります)。
 となれば、ガイエスブルク移動要塞のような自由自在な機動力は到底望めないにしても、遠距離からの質量兵器の接近を察知し、その姿勢制御システムを駆使して公転速度を停止ないし遅滞させれば、質量兵器には肩透かしを食わせる事が出来るのではないでしょうか(これでは近距離からのビームやミサイルをかわすのはさすがに無理でしょうが)。>

 これだと、銀英伝2巻でヤンが「アルテミスの首飾り」に10億トンの氷塊を亜光速航行でもってぶつけた「作中事実」にもミソがついてしまうのではないでしょうか?
 あれにしたところで、相手は「太陽の周りを周回している惑星」の、それも「軌道上を自由に動く一二個の衛星」(銀英伝2巻 P186)なわけですし、こちらの場合は、まかり間違って惑星に氷塊が突っ込んでしまった場合は惑星ハイネセン上に存在する億単位の人間が死滅する危険性すらあったものです。その厳しい条件でさえ、例の氷塊質量弾攻撃は百発百中の命中率でもって完璧な成功を収めたというのに、それよりもはるかに自由度が落ちる静止要塞(公転要塞?)が「姿勢制御システムを駆使して公転速度を停止ないし遅滞させ」る程度で「肩透かしを食わせる事が出来る」ことなどできるのでしょうか?
 作中の「アルテミスの首飾り」破壊でさえ完璧な成功が収められるのに、それよりもはるかに条件が緩い小惑星特攻が、それも作戦自体が事前予測で「成功の余地なし」と見做され却下されてしまうほどの高確率で失敗するとは、私にはとても思えないのですけどね。


<また、「イゼルローン要塞の近距離まで近付き、そこから発射し、ある程度加速がついた所でエンジンを停止させ、そのまま慣性航行によってイゼルローン要塞に衝突させる」という案ですが、先にも書いた通り、回廊内深部へのワープは事実上不可能と思われますので、ワープで要塞近辺に接近する事は出来ません。通常航行で回廊内を航行し、それほどの近距離まで近付こうとした場合、当然要塞より遥かに遠くでイゼルローン要塞の哨戒網(哨戒艦隊や偵察衛星など)に捕捉されます。そうなれば、「エンジンを取り付けた大質量の天体」の存在はいち早くイゼルローン要塞首脳の知る所となり、当然ヤンは質量兵器としての用途を見抜き、駐留艦隊を派遣して阻止しようとするでしょう。質量兵器に護衛艦隊がついていたとしても、小惑星に取り付けられたエンジンを守りつつ応戦するのは困難でしょうし、ヤン艦隊は回廊での戦闘に慣れています(乱離篇第四章U、ノベルズ版八巻P84下段)。かくしてエンジンは要塞より遥かに遠い宙域で破壊され、質量兵器としての使用は出来なくなるのではないでしょうか。>

 これも無理でしょう。このような前提が銀英伝世界でまかり通るのであれば、そもそも銀英伝3巻の「要塞VS要塞」の戦いが「無事行えたこと自体」に疑問符がついてしまいます。
 そもそも、平松さんの推論のすくなくとも前半部分「それほどの近距離まで近付こうとした場合、当然要塞より遥かに遠くでイゼルローン要塞の哨戒網(哨戒艦隊や偵察衛星など)に捕捉されます」の部分は、銀英伝本編の「要塞VS要塞」で「作中事実として」行われている事なんですよね。

銀英伝3巻 P138下段〜P139上段
<戦艦ヒスパニオラ、巡航艦コルドバなど一六隻から成るグループが「それ」を発見したのは四月一〇日のことである。J・ギブソン大佐の指揮するこのグループは、イゼルローン回廊を出て回廊内を哨戒中だった。
(中略)
「前方の空間にひずみが発生」
 オペレーターが報告した。
「何かがワープアウトしてきます。距離は三〇〇光秒、質量は……」
 オペレーターは質量計に投げかけた視線を凍結させ、声を飲みこんだ。声帯を再活動させるまで数秒間を必要とした。>

 で、平松さんの主張だと、「そうなれば、「エンジンを取り付けた大質量の天体」の存在はいち早くイゼルローン要塞首脳の知る所となり、当然ヤンは質量兵器としての用途を見抜き、駐留艦隊を派遣して阻止しようと」し、「かくしてエンジンは要塞より遥かに遠い宙域で破壊され」ることになるのですよね? そうなると、そもそも「要塞をして要塞に当たらせる」というコンセプトで作られたはずの「要塞VS要塞」の戦いそのものが成立しえないものになってしまうのではありませんかね?
 そもそも、移動要塞を考案したシャフトは、イゼルローン要塞に匹敵する火力と装甲を持つ移動要塞をイゼルローン前面に展開することでイゼルローン要塞を陥落させるべしとしてラインハルトに直言したわけですし、その構想では当然、「要塞砲の射程圏内まで移動要塞がイゼルローン要塞に肉迫できること」が前提となっていなければなりません。そして、直言されたラインハルト自身、作戦の成功はともかく、すくなくともそのシャフトの構想を支える前提が実現されるであろう事に関しては何ら疑いを抱いてはいなかったわけです(もし少しでも疑いを抱き、机上の空論と断じていたのであれば、ラインハルトはまさに平松さんの仰る理由で、シャフトが提言する移動要塞開発および運用計画「自体」にNOを突きつけていたことでしょう)。
 そして、実際にこの「回廊内を哨戒中」の索敵部隊が「三〇〇光秒先」で発見した移動要塞は、その後何の抵抗を受けることなく「イゼルローン要塞から60万kmの距離」に布陣しています。

銀英伝3巻 P174下段
<ガイエスブルク要塞の中央指令室では、60万キロをへだてたイゼルローン要塞の姿をスクリーンにながめながら、総司令官カール・グスタフ・ケンプと副司令官ナイトハルト・ミュラーが会話をかわしている。>

 移動要塞を質量弾攻撃として使おうが、「要塞をして要塞に当たらせる」というコンセプトで運用しようが、事前に来襲を察知した迎撃側にしてみれば「エンジンを破壊すれば相手の意図を頓挫させられる」と考えるに決まっているわけですから、当然同じことをしてこなければならないはずですよね? そして、仮にも「要塞VS要塞」の発想に立脚した移動要塞計画を推進するのであれば、シャフトもラインハルトも、当然この手の手段に対する対策というのを事前に講じていなければならないはずですよね?
 平松さんの理論だと、何故この懸念材料を無視してシャフトとラインハルトが移動要塞計画を推進したのか、という「銀英伝という作品の土台そのものを揺るがしかねない根本的な疑問」が発生してしまうことになるわけです。


No. 6343
Re:大質量兵器と移動要塞の運用について
平松重之 2005/03/10 01:11
<これだと、銀英伝2巻でヤンが「アルテミスの首飾り」に10億トンの氷塊を亜光速航行でもってぶつけた「作中事実」にもミソがついてしまうのではないでしょうか?
 あれにしたところで、相手は「太陽の周りを周回している惑星」の、それも「軌道上を自由に動く一二個の衛星」(銀英伝2巻 P186)なわけですし、こちらの場合は、まかり間違って惑星に氷塊が突っ込んでしまった場合は惑星ハイネセン上に存在する億単位の人間が死滅する危険性すらあったものです。その厳しい条件でさえ、例の氷塊質量弾攻撃は百発百中の命中率でもって完璧な成功を収めたというのに、それよりもはるかに自由度が落ちる静止要塞(公転要塞?)が「姿勢制御システムを駆使して公転速度を停止ないし遅滞させ」る程度で「肩透かしを食わせる事が出来る」ことなどできるのでしょうか?>

「アルテミスの首飾り」(自由惑星同盟の首都星系バーラトにある首都星ハイネセンを守る軍事衛星群)破壊についてですが、「首飾り」はレーダーやセンサーなどの索敵システムで飛来してくる氷塊を捕捉し、その質量とスピードを危険因子とみなしてレーザーやミサイルで「攻撃」を仕掛けていますが、記述を見た限りではどうした事か「軌道上を自由に動」けるはずの「首飾り」は「停止、減速、加速して回避」という選択肢を取った形跡がありません(野望篇第七章W(ノベルズ版二巻P189〜P190上段)。考えられる理由としては、

1、破壊不可能な大質量兵器による攻撃を想定していなかった

2、回避しても間に合わないと判断し、次善の策として攻撃を行った

 のいずれかが考えられます。1の場合、「首飾り」は宇宙防衛管制司令部によって制御されているので(黎明篇第四章T、ノベルズ版一巻P89下段)、いざとなれば地上にあると思われる司令部から回避するよう指示を出す事も出来たと思われるのですが、それも行われなかったみたいです。考えられる理由としては、

A、「『アルテミスの首飾り』というハードウェアに対する信仰」(野望篇第七章V、ノベルズ版二巻P180下段)が強烈過ぎて、「氷塊などで破壊出来るはずがない」という迷いが回避の指示を遅らせてしまった。

B、近距離から打ち出された氷塊の探知から衝突までの時間が速過ぎで、回避する指示を与える暇がなかった。

 と言った所でしょうか。
 まあ、「2」や「B」については「氷塊がハイネセンからどのくらいの距離の宙域から発射されたのか?」「発射された氷塊が亜光速に達するまでどの位の時間がかかるのか?」などといった事がもう少し詳しく分からないと何とも言えませんが。
 いずれにせよ、「『比較的安定した宙域と思われるバーラト星系で』『比較的近距離から』『回避という選択肢を与えられ(る暇が)ない無人の衛星に』質量兵器を衝突させる」のと「『大質量・高重力の天体が周囲に密集した宙域で、多少なりとも曲がりくねった通路と思われるイゼルローン回廊で』『遠距離から』『回避という選択肢を持つ有人の要塞に』質量兵器を衝突させる」のとでは、前提条件がかなり異なるのではないでしょうか。


<で、平松さんの主張だと、「そうなれば、「エンジンを取り付けた大質量の天体」の存在はいち早くイゼルローン要塞首脳の知る所となり、当然ヤンは質量兵器としての用途を見抜き、駐留艦隊を派遣して阻止しようと」し、「かくしてエンジンは要塞より遥かに遠い宙域で破壊され」ることになるのですよね? そうなると、そもそも「要塞をして要塞に当たらせる」というコンセプトで作られたはずの「要塞VS要塞」の戦いそのものが成立しえないものになってしまうのではありませんかね?
 そもそも、移動要塞を考案したシャフトは、イゼルローン要塞に匹敵する火力と装甲を持つ移動要塞をイゼルローン前面に展開することでイゼルローン要塞を陥落させるべしとしてラインハルトに直言したわけですし、その構想では当然、「要塞砲の射程圏内まで移動要塞がイゼルローン要塞に肉迫できること」が前提となっていなければなりません。そして、直言されたラインハルト自身、作戦の成功はともかく、すくなくともそのシャフトの構想を支える前提が実現されるであろう事に関しては何ら疑いを抱いてはいなかったわけです(もし少しでも疑いを抱き、机上の空論と断じていたのであれば、ラインハルトはまさに平松さんの仰る理由で、シャフトが提言する移動要塞開発および運用計画「自体」にNOを突きつけていたことでしょう)。
そして、実際にこの「回廊内を哨戒中」の索敵部隊が「三〇〇光秒先」で発見した移動要塞は、その後何の抵抗を受けることなく「イゼルローン要塞から60万kmの距離」に布陣しています。>
<移動要塞を質量弾攻撃として使おうが、「要塞をして要塞に当たらせる」というコンセプトで運用しようが、事前に来襲を察知した迎撃側にしてみれば「エンジンを破壊すれば相手の意図を頓挫させられる」と考えるに決まっているわけですから、当然同じことをしてこなければならないはずですよね?>

「要塞VS要塞」の件は、イゼルローン要塞司令官であるヤン・ウェンリー大将が国防委員会の査問会に呼び出され、首都星ハイネセンに赴いて不在だったと言うのが原因でしょう。ガイエスブルク移動要塞襲来の方を受けた司令官代理キャゼルヌ少将以下、イゼルローン要塞の幕僚達は「ヤン司令官が戻ってくるまで防御に徹し、イゼルローン要塞を維持する」という方針を取っています。いわば名司令官の不在ゆえに能動的な行動を取る事を控えてしまったわけです。
 また、ガイエスブルク移動要塞がイゼルローンの要塞主砲「雷神の鎚(トゥールハンマー)」の射程内まで航行して来たにも関わらず、司令官代理キャゼルヌ少将や要塞防御指揮官シェーンコップ少将らは手をこまねいてそのまま接近を許しています。航行中の移動要塞のエンジンに狙いを絞ってトゥールハンマーを浴びせれば、ヤンの帰還を待たずして決着をつける事が出来たとも思えるのですが、彼らには「航行中の敵移動要塞のエンジンを破壊する」という発想が出来なかったという事なのでしょう。

<そして、仮にも「要塞VS要塞」の発想に立脚した移動要塞計画を推進するのであれば、シャフトもラインハルトも、当然この手の手段に対する対策というのを事前に講じていなければならないはずですよね?
 平松さんの理論だと、何故この懸念材料を無視してシャフトとラインハルトが移動要塞計画を推進したのか、という「銀英伝という作品の土台そのものを揺るがしかねない根本的な疑問」が発生してしまうことになるわけです。>

 しかし、作中では現にガイエスブルク移動要塞のエンジンの一基はヤンの一点集中砲火によって破壊され、移動要塞は航行不能に陥っています(雌伏篇第八章X、ノベルズ版三巻P214)。ラインハルトは事前に移動要塞を見ているにも関わらず、移動要塞のエンジン部の脆弱性を見抜く事が出来なかったわけです。
 これはつまり戦術家としての観察力・発想力はヤンの方がラインハルトより上である事を示しており、後のバーミリオン星域会戦でのヤンとラインハルトの直接対決において、ラインハルトが戦術的敗退を喫する事の伏線……だったのかも知れません(^^;)。
 移動要塞の発案者である科学技術総監シャフト技術大将についてですが、敗戦後ラインハルトに呼び出された彼は次のように語っています。

 雌伏篇第九章V(ノベルズ版三巻P231下段〜P232上段)
<ミュラーに対しては寛容を示したラインハルトであったが、科学技術総監シャフト技術大将に対しては、まったく別であった。彼はシャフトを呼びつけると、
「弁解があれば聞こうか」
 と、最初から糾弾の姿勢を見せた。シャフトは自信満々でそれに応じた。
「お言葉ながら、閣下、私の提案にミスはございませんでした。作戦の失敗は、統率および指揮の任にあたった者の責任でございましょう」>

 つまり、シャフトは「移動要塞の剥き出しになっているエンジン部の脆弱性」は自分の「ミス」ではないと考えていたみたいです(^^;;)。つまりシャフトは予想以上に低能であったと(^^;;;)。


No. 6346
Re:補足
平松重之 2005/03/10 22:35
 重要な事を書き忘れましたので補足します。

<しかし、作中では現にガイエスブルク移動要塞のエンジンの一基はヤンの一点集中砲火によって破壊され、移動要塞は航行不能に陥っています(雌伏篇第八章X、ノベルズ版三巻P214)。ラインハルトは事前に移動要塞を見ているにも関わらず、移動要塞のエンジン部の脆弱性を見抜く事が出来なかったわけです。>

「ではラインハルトが移動要塞のエンジンの脆弱性を事前に見抜けなかったならば、大質量兵器のエンジンの脆弱性もまた見抜けなかったのではないか?そうなればなおの事、ガイエスブルク移動要塞改造以前に、イゼルローン要塞に対し大質量兵器による攻撃をラインハルトが行わなかった理由が分からなくなる」

 といった疑問もあると思いますが、これは「エンジンを付けた『移動要塞』」と「エンジンを付けた『小惑星』」に対する先入観の差というものが考えられるからです。
「移動要塞」に関しては「正統な用兵家」ならば、その「火力と装甲」に価値を見出す(雌伏篇第八章X、ノベルズ版三巻P213下段)のが普通であり、ラインハルトもまたその呪縛から完全に逃れ得てはいなかったのではないかと思われます。その証拠としては、移動要塞を用いたイゼルローン攻略の責任者に任命したケンプ大将とミュラー大将に与えた命令の内容が挙げられます。

 雌伏篇第二章V(ノベルズ版三巻P45下段)
<「ケンプを司令官、ミュラーを副司令官に任命する。科学技術総監の計画にもとづいて、イゼルローンを攻略せよ」>

 この文章を見る限り、「イゼルローンを攻略せよ」とは命令していますが、「いざとなれば要塞に要塞をぶつけて破壊しても構わん」とはラインハルトは言っていません。つまり、この当時のラインハルトは移動要塞の用途として「強大な火力と装甲をもってイゼルローンを攻略する」事を前提としており、「質量兵器」としての価値を見出していなかったと推定されるのです。
 で、ラインハルトは後にケンプから戦況報告を受けた際、次のような事を言っています。

 雌伏篇八章U(ノベルズ版三巻P201上段)
<「ケンプがもうすこしやると思っていたが、どうやら敵を苦しめたというあたりが、彼の限界のようだな。目的はイゼルローンを無力化することにあるのだ。必ずしも攻略、占拠する必要はない。極端なことを言えば、要塞に要塞をぶつけて破壊してしまってもよかったのだ」>

 何と言うか、自分が与えた最初の命令を忘れているとしか思えないような物言いですが(^^;)、つまりラインハルトも後になってようやく移動要塞を「質量兵器」として用いる事に気付いたと言う事なのでしょう(ケンプに対してそう指示をしなかったのは、その通信が敵に傍受される可能性があったからかもしれません)。
 以上の点から考えて、ラインハルトもまた「正統派の用兵家が移動要塞に対して抱く先入観」から完全に逃れ得ていなかったのが、移動要塞のエンジンの脆弱性に気付き損ねた原因だったと思われます。そして前にも書いた通り、これは戦術的構想力においてラインハルトがヤンに及び得ない証左の一つであった……のかも(^^;;)。
 一方、「質量兵器として用いるためのエンジンを取り付けた小惑星」の場合は「天才」であるラインハルトなら、「そういった「強大な火力と装甲を持った移動要塞」に対するような先入観を抱く事もなく、小惑星に取り付けられたエンジン」の脆弱性に気付く事が出来たのではないでしょうか。そして「ヤンならばエンジンの脆弱性を見抜くだろう」と結論付ける事も出来たのではないでしょうか。


No. 6349
Re:大質量兵器と移動要塞の運用について
パンツァー 2005/03/11 23:46
<1>イゼルローン要塞における質量弾回避の可能性について

>  いずれにせよ、「『比較的安定した宙域と思われるバーラト星系で』『比較的近距離から』『回避という選択肢を与えられ(る暇が)ない無人の衛星に』質量兵器を衝突させる」のと「『大質量・高重力の天体が周囲に密集した宙域で、多少なりとも曲がりくねった通路と思われるイゼルローン回廊で』『遠距離から』『回避という選択肢を持つ有人の要塞に』質量兵器を衝突させる」のとでは、前提条件がかなり異なるのではないでしょうか。

〇『大質量・高重力の天体が周囲に密集した宙域で、多少なりとも曲がりくねった通路と思われるイゼルローン回廊で』『遠距離から』

これについては、要塞対要塞の対決において、ガイエスブルグ要塞が、イゼルローン要塞の300光秒の距離にまで、なんの問題もなく、ワープしてきていることから、問題とならないでしょう。また、300光秒の距離に移動した時点から、要塞対要塞の戦いが始まるわけですから、「遠距離」などという表現は不適切のはずです。むしろ、『アルテミスの首飾り』の場合よりも短い距離ではないでしょうか。
(地球と太陽との距離が8分程度、500光秒程度ですね。)

300光秒:銀英伝3雌伏篇第六章Tノベルズ版P139

〇『回避という選択肢を持つ有人の要塞に』

イゼルローン要塞に、回避能力があるかどうかは、作品中に記載が無いようにおもいますが、ある程度の周回能力があると考える方が、回廊の防御手段として機能させる上で、妥当でしょうね。

銀英伝3雌伏篇第八章Xノベルズ版P213〜214
<ガイエスブルグ要塞のなかにいるのは、ケンプと数人の幕僚、(中略)要塞内では脱出用のシャトルが発進寸前の状態で待機している>

とあり、ガイエスブルグ要塞という質量弾攻撃は、有人操作によるものであって、目標への追尾能力を確実に有しています。
作品には記載がありませんが、当然、無人の質量弾攻撃において、質量弾となる岩塊等にエンジンだけでなくセンサーも設けて、自動追尾で攻撃させることも、当然可能でしょう。

そうすると、イゼルローン要塞に、どのような回避能力があろうとも、決して質量弾攻撃から逃れることはできないでしょう。

<2>質量弾に搭載するエンジンの脆弱性について

>  しかし、作中では現にガイエスブルク移動要塞のエンジンの一基はヤンの一点集中砲火によって破壊され、移動要塞は航行不能に陥っています(雌伏篇第八章X、ノベルズ版三巻P214)。ラインハルトは事前に移動要塞を見ているにも関わらず、移動要塞のエンジン部の脆弱性を見抜く事が出来なかったわけです。

まず、ガイエスブルグ要塞においては、質量の大きさのため、12基のエンジンが必要である、ということになっていました。
別に、イゼルローン要塞の攻撃に用いる質量体としては、要塞級の質量体である必要は全然無く、ガイエスブルグ要塞の1/10、1/100、あるいは1/1000の質量の質量体であっても、目的を果たせるものでしょう。

というのも、要塞自体を木っ端微塵にすることが目的なのではなく、イゼルローン要塞を無力化することが目的のはずです。もっと具体的に言えば、要塞主砲の機能さえ、停止させてしまえばよいわけです。要塞主砲自体を破壊する必要すらなく、要塞主砲の駆動に関わる制御機構や、動力源、等、の一部の破壊に成功して、要塞主砲の機能が停止すれば、目的は達成されることになります。

したがって、第一に、12基のエンジンなどと言う脆弱な質量弾を用いる必要は全然無く、1基のエンジンにより駆動される質量弾を用いればよいのです。第二に、質量弾攻撃に用いる質量弾の数は、1発に限られるものではなく、100個でも200個でも、必要な限り用意すればよいだけの話です。20000隻よりなる一個艦隊に要する資材を投入して質量弾を製造したとしても、攻撃による人命の損失がほぼゼロになることを考えれば、全然安い投資であることには変わりありません。

<3>質量弾のエンジンへの攻撃における必要条件について

>  また、ガイエスブルク移動要塞がイゼルローンの要塞主砲「雷神の鎚(トゥールハンマー)」の射程内まで航行して来たにも関わらず、司令官代理キャゼルヌ少将や要塞防御指揮官シェーンコップ少将らは手をこまねいてそのまま接近を許しています。航行中の移動要塞のエンジンに狙いを絞ってトゥールハンマーを浴びせれば、ヤンの帰還を待たずして決着をつける事が出来たとも思えるのですが、彼らには「航行中の敵移動要塞のエンジンを破壊する」という発想が出来なかったという事なのでしょう。

>  しかし、作中では現にガイエスブルク移動要塞のエンジンの一基はヤンの一点集中砲火によって破壊され、移動要塞は航行不能に陥っています(雌伏篇第八章X、ノベルズ版三巻P214)。ラインハルトは事前に移動要塞を見ているにも関わらず、移動要塞のエンジン部の脆弱性を見抜く事が出来なかったわけです。

上の二つの作品中の記載は、
エンジンは、ガイエスブルク要塞の後部に設けられているので、イゼルローン要塞からの正面攻撃では、ガイエスブルク要塞のエンジンに打撃を与えることができず、ガイエスブルク要塞の側面に回りこめた艦隊によってのみ、攻撃を加えることができた、ことを意味しているものでしょう。

つまり、艦隊によって、質量弾のエンジンを攻撃するには、質量弾の移動経路の側面に回りこむ必要がある、ということです。
そうすると、イゼルローン要塞側が、質量弾攻撃の随伴艦隊(帝国艦隊)よりも優勢な艦隊を持っていない場合は、質量弾のエンジンを狙うなどと言う攻撃自体を行うことができず、黙って、質量弾がイゼルローン要塞に命中するのを、指を加えて見守るしかない、ということになるでしょう。

銀英伝3雌伏篇第八章Xノベルズ版P213〜214
<ガイエスブルグ要塞は、帝国軍の残存部隊をしたがえ、12個の通常航行用エンジンをフル・パワーにしてイゼルローン要塞へと接近しつつある。>

ヤン率いる艦隊によって、ガイエスブルグ要塞のエンジンが攻撃される羽目になったのも、ミュラー艦隊が壊滅して「残存部隊」に成り下がっていたことが、主要な要因だと考えられます。

<4>まとめ

1:質量弾に有人もしくは無人により目標追尾能力を持たせることは全然可能である。
2:質量弾は100個でも200個でも、必要な限り用意すればよい。
3:要塞主砲の機能が停止すれば目的は達成される。
4:12基のエンジンなどと言う脆弱な質量弾を用いる必要は全然なく、1基でよい。
5:質量弾のエンジンへの攻撃には、戦場の制宙権の確保が必須である。


No. 6351
Re:大質量兵器と移動要塞の運用について
平松重之 2005/03/12 01:45
<これについては、要塞対要塞の対決において、ガイエスブルグ要塞が、イゼルローン要塞の300光秒の距離にまで、なんの問題もなく、ワープしてきていることから、問題とならないでしょう。また、300光秒の距離に移動した時点から、要塞対要塞の戦いが始まるわけですから、「遠距離」などという表現は不適切のはずです。むしろ、『アルテミスの首飾り』の場合よりも短い距離ではないでしょうか。
(地球と太陽との距離が8分程度、500光秒程度ですね。)>

 この辺りは冒険風ライダーさんも引用なさっておられますので、コピペさせてもらいます。

 雌伏篇第六章T(ノベルズ版三巻P138下段〜P139上段)
<戦艦ヒスパニオラ、巡航艦コルドバなど一六隻から成るグループが「それ」を発見したのは四月一〇日のことである。J・ギブソン大佐の指揮するこのグループは、イゼルローン要塞を出て回廊内を哨戒中だった。
(中略)
「前方の空間にひずみが発生」
 オペレーターが報告した。
「何かがワープアウトしてきます。距離は三〇〇光秒、質量は……」
 オペレーターは質量計に投げかけた視線を凍結させ、声を飲みこんだ。声帯を再活動させるまで数秒間を必要とした。>

 これを見た限りでは、「三〇〇光秒」というのは「イゼルローン要塞からの距離」ではなく、イゼルローン回廊内を哨戒中の「J・ギブソン大佐の指揮するこのグループからの距離」としか解釈出来ないと思うのですが、どうでしょうか。よって、前にも書いた通り、イゼルローン回廊内ではワープ出来ないという理論は変わらないので、近距離からの質量兵器攻撃を実行するにはかなりの困難が伴うのでは?


<作品には記載がありませんが、当然、無人の質量弾攻撃において、質量弾となる岩塊等にエンジンだけでなくセンサーも設けて、自動追尾で攻撃させることも、当然可能でしょう。>

 この辺りに関しては、冒険風ライダーさんは現在の掲示板の過去ログ1726-1727(銀英伝考察3過去ログAに収録)で下記のように述べられています。

<具体的には、イゼルローン要塞クラスの適当な小惑星にガイエスブルク要塞と同じ仕様でエンジンを設置し、同盟軍の火力が届かない遥か彼方からイゼルローン要塞を直撃するコースを取るように小惑星をスタートさせ、ある程度加速がついてきたところで全エンジンを停止し、宇宙空間をひたすら飛行している隕石と同じように慣性で航行させてしまえば良いのです。>

 途中で「全エンジンを停止」したのならば、そこから「慣性で航行」する事になる訳ですから、当然「自動追尾」も出来なくなるのではないでしょうか?また、そのような追尾システムがあるのなら、なぜヤンは「アルテミスの首飾り」破壊時に氷塊に搭載しなかったのでしょうか?
(野望篇第七章W、ノベルズ版二巻P188上段では、「その氷塊が、ハイネセン本星に突入したりしないよう、発進角度は慎重にさだめなければならない」と書かれています。追尾システムがあるのなら、こんな懸念は無用でしょう)


<というのも、要塞自体を木っ端微塵にすることが目的なのではなく、イゼルローン要塞を無力化することが目的のはずです。もっと具体的に言えば、要塞主砲の機能さえ、停止させてしまえばよいわけです。要塞主砲自体を破壊する必要すらなく、要塞主砲の駆動に関わる制御機構や、動力源、等、の一部の破壊に成功して、要塞主砲の機能が停止すれば、目的は達成されることになります。>
<したがって、第一に、12基のエンジンなどと言う脆弱な質量弾を用いる必要は全然無く、1基のエンジンにより駆動される質量弾を用いればよいのです。第二に、質量弾攻撃に用いる質量弾の数は、1発に限られるものではなく、100個でも200個でも、必要な限り用意すればよいだけの話です。20000隻よりなる一個艦隊に要する資材を投入して質量弾を製造したとしても、攻撃による人命の損失がほぼゼロになることを考えれば、全然安い投資であることには変わりありません。>


 問題なのは、その「100個」「200個」の質量弾群をどの距離から発射出来るかですね。
 遠距離からだと(冒険風ライダーさんの立案に従えば)途中から慣性航行しか出来なくなる質量弾群は、曲がりくねった回廊内で直進的な航行しか出来なくなるわけですから、当然、要塞に衝突する前に周囲の「変光星、赤色巨星、異常な重力場」が密集した宙域に突っ込んでしまうのでは?また、仮に奇跡的に回廊内を潜り抜けれたとしても、遠距離からですから、当然イゼルローン要塞は質量弾の接近を察知しているでしょうから、姿勢制御システムで回避されてしまうのではないか?と申し上げているわけです。
 近距離からだと、その距離まで近付こうとした場合、当然イゼルローン要塞の哨戒網に捕捉され、質量弾群の存在も知れてイゼルローンから駐留艦隊が出撃してくるでしょう。そして要塞から遥か離れた宙域で戦端が開かれ、近距離からのイゼルローンへの質量弾群の攻撃は、挫折を余儀なくされるのではないかと。


<上の二つの作品中の記載は、
エンジンは、ガイエスブルク要塞の後部に設けられているので、イゼルローン要塞からの正面攻撃では、ガイエスブルク要塞のエンジンに打撃を与えることができず、ガイエスブルク要塞の側面に回りこめた艦隊によってのみ、攻撃を加えることができた、ことを意味しているものでしょう。>

 雌伏篇第四章U(ノベルズ版三巻P97下段〜P98上段)

<ガイエスブルク要塞の移動計画は、ケンプ提督の精力的な指揮のもとで、急速に進行しつつあった.要塞自体の修復、周囲に十二個のワープ・エンジンと同じく十二個の通常航行用エンジンを輪状にとりつける作業が同時におこなわれ、三月半ばには第一回のワープ・テストが実施される予定となっている。>

 この記述を見た限りでは、エンジンは「要塞の後部」ではなく「要塞の周囲」、つまり要塞の大円(球を球の中心を通る平面で切った時にその切り口に出来る円)沿いに取り付けられているとしか解釈出来ないと思うのですが、どうでしょうか(アニメ版の移動要塞でもそのように描かれています)。それならば、前面からでもエンジンを狙う事は出来ると思います。また、

 雌伏篇第八章X(ノベルズ版三巻P213下段〜P214上段)

<ガイエスブルクのなかにいるのは、ケンプと数人の幕僚、航行要員、護衛兵ら五万人ほどで、他の将兵はミュラーの指揮下に、各艦に分乗していた。要塞内では、脱出用のシャトルが発進寸前の状態で待機している。一秒ごとに接近し、姿を大きくするイゼルローン要塞を、ケンプは、逆転勝利への確信に満ちて見守っていた。そのとき、同盟軍艦隊では、ヤン・ウェンリーが指令をくだしていた。――要塞そのものに、艦砲は通用しない。稼動中の通常航行用エンジンをねらえ。それもただ一個。進行方向左端の一個だけに砲火を集中せよ!
 各艦の砲術士官たちは、操作卓にとびつき、狙点をさだめた。一斉に命令が飛んだ。
「撃て!」「撃て!」「撃て!」>

 この辺りの記述を見た限りでは、ヤン艦隊がガイエスブルクの側面に回り込んだという記述は見当たりません。回り込んだのなら、この場合記述がないと不自然なように思えるのですが、いかがでしょうか。


No. 6353
Re6343:質量弾攻撃を「行ってくる側」の事情
冒険風ライダー 2005/03/12 01:55
<考えられる理由としては、
1、破壊不可能な大質量兵器による攻撃を想定していなかった
2、回避しても間に合わないと判断し、次善の策として攻撃を行った
 のいずれかが考えられます。1の場合、「首飾り」は宇宙防衛管制司令部によって制御されているので(黎明篇第四章T、ノベルズ版一巻P89下段)、いざとなれば地上にあると思われる司令部から回避するよう指示を出す事も出来たと思われるのですが、それも行われなかったみたいです。考えられる理由としては、
A、「『アルテミスの首飾り』というハードウェアに対する信仰」(野望篇第七章V、ノベルズ版二巻P180下段)が強烈過ぎて、「氷塊などで破壊出来るはずがない」という迷いが回避の指示を遅らせてしまった。
B、近距離から打ち出された氷塊の探知から衝突までの時間が速過ぎで、回避する指示を与える暇がなかった。
 と言った所でしょうか。>

 もうひとつ重大なことを忘れていませんか? ヤンが例の「アルテミスの首飾り」を破壊する際、12個の衛星と同じ数「しか」氷塊を切り出していなかったという作中事実を↓

銀英伝2巻 P187上段
<バーラト星系第六惑星シリューナガルは、寒冷な氷の惑星である。ここから、一ダースの氷塊を切り出す。一個の氷塊は、一立方キロメートル、質量にして一〇億トンとする。>

 また、この作成を実行する際、ヤンはフレデリカに対してこんな自信満々な発言を行っています↓

銀英伝2巻 P183上段〜下段
<「『処女神の首飾り』を攻撃する方法について、技術上の問題をつめたい。みんなを会議室に集めてくれ」
「はい」
 フレデリカは全身に緊張の色をたたえた。強力無比とうたわれる一二個の軍事衛星を破壊する困難さが、彼女をそうさせた。どれだけの犠牲が出るのか、想像もつかない。だが、ヤンはそれを察したように言った。
「心配ない、グリーンヒル大尉。『処女神の首飾り』を破壊するのに、一隻の戦艦もひとりの人命も犠牲にしないことを約束するよ」>

 ここから言えるのは、あの百発百中の氷塊攻撃による「アルテミスの首飾り」完全破壊は、「【かわせるはずの攻撃】が迎撃側の不手際によってかわせなかった」のではなく、攻撃する側からして「相手は絶対に回避できないし、百発百中で命中させられる」という計算があったからこそ行われたものである、ということです。つまり、攻撃側にしてみれば、この亜光速航行による質量弾攻撃は、迎撃側の対応など考慮するにも値しないくらいの成功率が「(どういう理由があるにせよ)最初から」約束されたものだったわけです。そうでなければ、ヤンも「攻撃が衛星に回避されてしまう可能性」を少しは検討して、予備用にもう少し多めに氷塊を切り出して攻撃させていたはずでしょう。
 例の氷塊攻撃であれほどまでに自信満々な態度を誇示したばかりか、「そんなものよりも惑星ハイネセンの10億の民を人質に敵が脅迫を行ってきたら……」などと「攻撃失敗の可能性」など眼中にもないようなことを考えているようなヤンが、「【軌道上を自由に動く】アルテミスの首飾り」の特性を知らないはずがありません。知った上でヤンがあのような作戦をあのような形で実施したのは、「それでもなおかつ衛星が攻撃を回避できない」ことを把握していたか、さもなければ「実はあの作戦の成功は類稀なる僥倖の産物によるもので、失敗の危険性を全く察知しえなかったヤンは、愚将と呼ぶのもはばかられるほどに頭の悪いバカである」かのどちらかでしかありえないでしょう。
 そして、身も蓋もない結論である後者の考えに立つのであればともかく、前者を支持するのであれば、質量弾攻撃は防御も回避も無効にする最強の戦術と見做すべきものとならざるをえなくなるのです。


<まあ、「2」や「B」については「氷塊がハイネセンからどのくらいの距離の宙域から発射されたのか?」「発射された氷塊が亜光速に達するまでどの位の時間がかかるのか?」などといった事がもう少し詳しく分からないと何とも言えませんが。
 いずれにせよ、「『比較的安定した宙域と思われるバーラト星系で』『比較的近距離から』『回避という選択肢を与えられ(る暇が)ない無人の衛星に』質量兵器を衝突させる」のと「『大質量・高重力の天体が周囲に密集した宙域で、多少なりとも曲がりくねった通路と思われるイゼルローン回廊で』『遠距離から』『回避という選択肢を持つ有人の要塞に』質量兵器を衝突させる」のとでは、前提条件がかなり異なるのではないでしょうか。>

 で、上でも言いましたけど、「【軌道上を自由に動く】アルテミスの首飾り」でさえ、攻撃側は失敗の可能性を全く検討することすらなく他のことを考えられるくらいの余裕と成功の確信があったというのに、何故本来「自力で推進する手段を持たない」はずの静止要塞に質量弾攻撃をかわせる可能性があったなどと言えるのでしょうか? まず、この時点で平松さんが主張する「前提条件」が大いにおかしくなってしまうのではないでしょうか。
 また、平松さんは「比較的安定した宙域と思われるバーラト星系で」という前提条件を掲げていますが、それを言うならイゼルローン要塞が存在するアルテナ星系だって「惑星を持たない孤独な太陽」しか存在しない恒星系であるわけですから「大質量・高重力の天体が周囲に密集した宙域」の中では「比較的安定した宙域と思われ」ますし、さらに「比較的近距離から」から例の質量弾攻撃が成功したというのであれば、その「比較的近距離」で「質量弾攻撃として必要となるスピード」が得られるということになるわけです。それで言えば「比較的近距離」で「比較的安定した宙域と思われる」アルテナ星系の内部もしくは外縁部から小惑星特攻を開始しても良いことになるでしょう。しかも、ここで私が言う「遠距離」というのは「相手の火力の射程圏外」でありさえすれば良いわけですから、アルテナ星系外縁部辺りでもその条件は充分に満たすことができます。
 それでもなおかつ、アルテナ星系内における質量弾攻撃に「大質量・高重力の天体が周囲に密集した宙域」等の障害があると仮定しても、銀英伝本編でも行われたように「途中まで有人制御航行を行い、ギリギリの段階で脱出する」という方法もありますし、また銀英伝の作中でしばしば登場している「無人艦の遠隔コントロール」のような手法を使えば、さらに安全かつ効果的に質量弾攻撃の軌道修正を行うことができます。すくなくとも「姿勢制御システムを駆使して公転速度を停止ないし遅滞」程度の回避力では、これを避けるのは絶望的なまでに不可能としか言いようがないのではありませんか?
 たとえ相手がイゼルローン回廊のイゼルローン要塞であっても、質量弾攻撃を妨げる要素などほとんど発生のしようがないと思いますけどね。


<「要塞VS要塞」の件は、イゼルローン要塞司令官であるヤン・ウェンリー大将が国防委員会の査問会に呼び出され、首都星ハイネセンに赴いて不在だったと言うのが原因でしょう。ガイエスブルク移動要塞襲来の方を受けた司令官代理キャゼルヌ少将以下、イゼルローン要塞の幕僚達は「ヤン司令官が戻ってくるまで防御に徹し、イゼルローン要塞を維持する」という方針を取っています。いわば名司令官の不在ゆえに能動的な行動を取る事を控えてしまったわけです。
 また、ガイエスブルク移動要塞がイゼルローンの要塞主砲「雷神の鎚(トゥールハンマー)」の射程内まで航行して来たにも関わらず、司令官代理キャゼルヌ少将や要塞防御指揮官シェーンコップ少将らは手をこまねいてそのまま接近を許しています。航行中の移動要塞のエンジンに狙いを絞ってトゥールハンマーを浴びせれば、ヤンの帰還を待たずして決着をつける事が出来たとも思えるのですが、彼らには「航行中の敵移動要塞のエンジンを破壊する」という発想が出来なかったという事なのでしょう。>

 これは例の質量弾攻撃時におけるヤンの対応とも重なるのですが、あの第8次イゼルローン要塞攻防戦当時、帝国における移動要塞構想の最高責任者であったはずのラインハルトやシャフト、いやそれどころか帝国関係者の全ては、ヤンがイゼルローン要塞に不在であったことを知らなかったはずですよね? 当然、上記のようなことを「事前に」彼らが予測できるはずもないわけです。
 帝国側にそのような事情が存在する以上、ラインハルトやシャフトが移動要塞を使って「要塞VS要塞」の局面を現出させようとするのであれば、実際の敵側の状況がどうであれ、当然「ヤンがイゼルローン要塞に存在する」ことを前提とした上で、敵が「能動的な行動を取る事」を想定し、かつそれに対する対処法も考えなければならないはずでしょう。「にもかかわらず」、彼らは移動要塞のエンジン同期の技術問題について述べるだけで、それ以外の理由で「要塞VS要塞」が実現されない可能性を何も考えていないのです。
 そして、ここで「そんなことも考えられなかったラインハルトやシャフトは頭の悪いバカであった」という身も蓋もない結論を導きたくないのであれば、「何故彼らはそういう考えが持てなかったのが?」という問題に対する合理的な解答を与えなければなりません。質量弾攻撃の件は攻撃側が主導権を握っているわけですから、迎撃側のことばかり論じていてはダメなのですよ。

 まあ、これについてはあえて私から合理的な理由を出してあげましょうか。これは簡単な話で、たとえ自軍が発見されても、敵にすぐさま「能動的な行動を取る事」ができるわけではなく、ある程度のタイムラグが発生せざるをえないからです。
 たとえば銀英伝3巻の冒頭では、イゼルローン回廊帝国側出口方面で偶発的な接近遭遇戦が発生していますが、同盟側は、現地部隊が敵と遭遇したことをイゼルローン要塞に打電してから実際に救援が訪れるまで、実に9時間もの間「孤立無援で」戦っていました(銀英伝3巻 P32)。これはもちろん、

現地部隊の打電 → イゼルローン司令部の作戦方針の協議・決定 → 出撃準備 → 全軍出撃完了 → 陣形を編成・維持しつつ現地急行

といった諸々の手順を踏んでいかなければならないためで、このタイムラグこそが、移動要塞がイゼルローン要塞に肉迫する隙を作り出すわけです。
 また、作中事実から言っても、あの移動要塞は4月10日に「【回廊内を】哨戒中の索敵部隊の三〇〇光秒先」でワープアウトしていますし、それから遅くとも24時間以内には「イゼルローン要塞から60万kmの距離」に布陣しているわけです。イゼルローン要塞まで通常航行を行うにせよ、この程度の移動時間であれば、相手側も迎撃の準備をするのに手一杯になるため、特に問題なく「要塞VS要塞」に持ち込むことができるのではないか、とラインハルトもシャフトも考えていたのではないでしょうか。
 そして、これならばすくなくとも平松さんが出されている理由よりは「攻撃側の事情」を説明できていると思うのですが、いかがでしょうか。


No. 6354
Re:大質量兵器と移動要塞の運用について
パンツァー 2005/03/12 12:30
>  これを見た限りでは、「三〇〇光秒」というのは「イゼルローン要塞からの距離」ではなく、イゼルローン回廊内を哨戒中の「J・ギブソン大佐の指揮するこのグループからの距離」としか解釈出来ないと思うのですが、どうでしょうか。よって、前にも書いた通り、イゼルローン回廊内ではワープ出来ないという理論は変わらないので、近距離からの質量兵器攻撃を実行するにはかなりの困難が伴うのでは?

たしかに、「イゼルローン要塞からの距離」ではないようですね。
そうすると、300光秒よりも距離が離れた状態から、要塞対要塞の対決が開始された、ということになりますね。

「イゼルローン回廊内ではワープ出来ないという理論」などというものが、存在するでしょうか?
「イゼルローン回廊」を経由しないで、「変光星、赤色巨星、異常な重力場」が密集した「防壁」を横切るような経路でワープができない、だけではないでしょうか?

銀英伝1黎明篇:序章 銀河系史概略 ノベルズ版P15〜16
<銀河帝国軍の執拗な追撃と捜索をかわし
(中略)
銀河系の深奥部に歩を踏み入れた。そこは、巨星、矮星、変光星などの危険が満ちた巨大な空間であった。造物主の悪意が脱出者たちの頭上に次々と降りかかった。
苦難の道程のさなか、彼らは指導者ハイネセンを事故で失った。親友であったグエン・キム・ホアが後を継いだ。その彼も老いて失明するにいたたっとき、彼らは危険地帯を脱し、安定した壮年期の恒星群を前途に見出した。>

ワープしないとすると、「防壁」を横切るだけの距離を進むだけで、数十年くらい、掛かってしまうわけです。これは、経路に障害物があるから、というよりもむしろ、ワープしないから、時間が掛かると言うことでしょう。
イゼルローン回廊内でのワープが不可能であるとしたら、「イゼルローン回廊」に沿って、帝国領から同盟領へ移動するだけで、数年、数十年といった時間を要するでしょう。

「J・ギブソン大佐の指揮するこのグループ」は、「イゼルローン回廊内を哨戒中」なので、あくまで、ガイエスブルグ要塞は、イゼルローン回廊内にワープアウトしてきたものでしょう。

また、要塞対要塞の対決の場合、ガイエスブルグ要塞は、イゼルローン要塞に、「300光秒よりも離れた距離(哨戒部隊までの距離)」から、2光秒(60万km)の距離にまで接近されるわけですが、これと同様のことを、質量弾攻撃一般で行うことが可能でしょう。つまり、質量弾を、一旦、イゼルローン要塞の近距離(アルテミスの首飾りのように星系の直径相当)にワープさせたのち、その近距離から突入攻撃を行わせればよいわけです。そうすれば、質量弾の製造場所から目標地点までの距離の長短などは、なんの問題もないことになります。

>  途中で「全エンジンを停止」したのならば、そこから「慣性で航行」する事になる訳ですから、当然「自動追尾」も出来なくなるのではないでしょうか?また、そのような追尾システムがあるのなら、なぜヤンは「アルテミスの首飾り」破壊時に氷塊に搭載しなかったのでしょうか?
> (野望篇第七章W、ノベルズ版二巻P188上段では、「その氷塊が、ハイネセン本星に突入したりしないよう、発進角度は慎重にさだめなければならない」と書かれています。追尾システムがあるのなら、こんな懸念は無用でしょう)

いや、ケンプによるガイエスブルグ要塞のイゼルローン要塞への突入自体が、質量弾攻撃の一形態なのですから、当然、「自動追尾」方式の攻撃も、可能であることになります。「アルテミスの首飾り」破壊時に「自動追尾」を利用しないのは、No.6353で冒険風ライダーさんが指摘するように、目標の回避運動が問題とならないため、「自動追尾」など利用する必要がない、というだけの話です。
私は、万一、イゼルローン要塞の回避能力が、想像を絶するほど大きなものであったとしても、ケンプによるガイエスブルグ要塞の突入のように、「自動追尾」可能な方式を取れば解決する、と述べているだけです。

ちなみに、「アルテミスの首飾り」破壊時には、氷塊の大きさが相対論効果によって、223倍(2野望篇:第七章:誰がための勝利Wノベルズ版P187〜188)になる記載があります。
衛星の回避能力は、氷塊の発射地点からハイネセンまでの距離では、この大きさの氷塊の衝突を防ぐことができない程度の能力しかなかった、ということではないのでしょうか。
したがって、イゼルローン要塞に関しても、想像を絶するような回避能力が備わっているとは考えがたいですね。

>  遠距離からだと(冒険風ライダーさんの立案に従えば)途中から慣性航行しか出来なくなる質量弾群は、曲がりくねった回廊内で直進的な航行しか出来なくなるわけですから、当然、要塞に衝突する前に周囲の「変光星、赤色巨星、異常な重力場」が密集した宙域に突っ込んでしまうのでは?また、仮に奇跡的に回廊内を潜り抜けれたとしても、遠距離からですから、当然イゼルローン要塞は質量弾の接近を察知しているでしょうから、姿勢制御システムで回避されてしまうのではないか?と申し上げているわけです。

これについては、質量弾を、イゼルローン回廊内の適宜位置にワープさせた後、質量弾攻撃に適当な距離まで、通常航行させればよいだけの話なので、問題はないと思います。つまり、「近距離」まで接近した状態で、突入攻撃を行わせれば良いでしょう。
また、「イゼルローン回廊が曲がりくねっている」という記載は、作品中に存在するでしょうか?

>  近距離からだと、その距離まで近付こうとした場合、当然イゼルローン要塞の哨戒網に捕捉され、質量弾群の存在も知れてイゼルローンから駐留艦隊が出撃してくるでしょう。そして要塞から遥か離れた宙域で戦端が開かれ、近距離からのイゼルローンへの質量弾群の攻撃は、挫折を余儀なくされるのではないかと。

これは、はっきり言って、望むところでしょう。
戦闘におけるイゼルローン要塞の脅威は、その要塞主砲の威力にあるわけですから、要塞主砲の射程外で、同盟艦隊に対する戦闘を帝国艦隊が行うことができるのであれば、帝国艦隊は数的優位を十二分に生かすことが可能となります。同盟の駐留艦隊は、要塞主砲の支援を受けることなく、「要塞から遥か離れた宙域」での戦闘で消耗させられることになるわけです。そして、駐留艦隊が消耗してしまえば、「近距離からのイゼルローンへの質量弾群の攻撃」を防ぐ手立ては存在しなくなります。

さらに言えば、「近距離」への質量弾のワープがイゼルローン要塞側に確認されたとしても、「近距離」の発射地点に到達後、直ちに、質量弾攻撃が開始されたならば、イゼルローン要塞から艦隊を出撃させて迎撃させても、間に合わないことになるでしょう。たまたま、十分な兵力を哨戒させているような状況でもない限りは。

>  この記述を見た限りでは、エンジンは「要塞の後部」ではなく「要塞の周囲」、つまり要塞の大円(球を球の中心を通る平面で切った時にその切り口に出来る円)沿いに取り付けられているとしか解釈出来ないと思うのですが、どうでしょうか(アニメ版の移動要塞でもそのように描かれています)。それならば、前面からでもエンジンを狙う事は出来>ると思います。また、
>
>  雌伏篇第八章X(ノベルズ版三巻P213下段〜P214上段)
>
> <ガイエスブルクのなかにいるのは、ケンプと数人の幕僚、航行要員、護衛兵ら五万人ほどで、
(中略)
>  この辺りの記述を見た限りでは、ヤン艦隊がガイエスブルクの側面に回り込んだという記述は見当たりません。回り込んだのなら、この場合記述がないと不自然なように思えるのですが、いかがでしょうか。

イゼルローン要塞を攻撃するガイエスブルグ要塞は、当然、イゼルローン要塞に対して正対しているのでしょうから、球状のガイエスブルグ要塞の後半球は、イゼルローン要塞に対して隠れた状況にあるでしょう。環状に取り付けられているエンジン群は、当然、後半球の周縁部であったとしても、後半球であることには変わりないので、真正面からの攻撃では、打撃を与えることができないと考えるのが妥当ではないでしょうか。
(アニメ版の移動要塞でも、真正面からエンジンが見えるようには描かれていなかったように思います)

したがって、真正面からガイエスブルグ要塞のエンジンに攻撃を加えることは不可能で、側面90度に回り込む必要は無くても、ガイエスブルグ要塞の斜め位置には、回り込む必要があるのではないでしょうか。
少なくとも艦隊は、ガイエスブルグ要塞の要塞主砲の軸線上(つまり真正面)にはいないでしょうから、必然的に、ガイエスブルグ要塞に対して斜め位置に位置することになるでしょう。

しかも、この問題は、12基の通常航行用エンジンを環状に取り付けたガイエスブルグ要塞に限っての問題です。したがって、もし仮に、ガイエスブルグ要塞の場合には、実は正面からエンジンに攻撃を加えることができたとしても、例えば、中心に1基のエンジンを取り付けた質量弾の場合には、まったく関わりがない問題です。


No. 6361
Re:イゼルローン回廊における質量兵器攻撃の是非
平松重之 2005/03/14 23:48
>冒険風ライダーさん
<で、上でも言いましたけど、「【軌道上を自由に動く】アルテミスの首飾り」でさえ、攻撃側は失敗の可能性を全く検討することすらなく他のことを考えられるくらいの余裕と成功の確信があったというのに、何故本来「自力で推進する手段を持たない」はずの静止要塞に質量弾攻撃をかわせる可能性があったなどと言えるのでしょうか? まず、この時点で平松さんが主張する「前提条件」が大いにおかしくなってしまうのではないでしょうか。
 また、平松さんは「比較的安定した宙域と思われるバーラト星系で」という前提条件を掲げていますが、それを言うならイゼルローン要塞が存在するアルテナ星系だって「惑星を持たない孤独な太陽」しか存在しない恒星系であるわけですから「大質量・高重力の天体が周囲に密集した宙域」の中では「比較的安定した宙域と思われ」ますし、さらに「比較的近距離から」から例の質量弾攻撃が成功したというのであれば、その「比較的近距離」で「質量弾攻撃として必要となるスピード」が得られるということになるわけです。それで言えば「比較的近距離」で「比較的安定した宙域と思われる」アルテナ星系の内部もしくは外縁部から小惑星特攻を開始しても良いことになるでしょう。しかも、ここで私が言う「遠距離」というのは「相手の火力の射程圏外」でありさえすれば良いわけですから、アルテナ星系外縁部辺りでもその条件は充分に満たすことができます。
 それでもなおかつ、アルテナ星系内における質量弾攻撃に「大質量・高重力の天体が周囲に密集した宙域」等の障害があると仮定しても、銀英伝本編でも行われたように「途中まで有人制御航行を行い、ギリギリの段階で脱出する」という方法もありますし、また銀英伝の作中でしばしば登場している「無人艦の遠隔コントロール」のような手法を使えば、さらに安全かつ効果的に質量弾攻撃の軌道修正を行うことができます。すくなくとも「姿勢制御システムを駆使して公転速度を停止ないし遅滞」程度の回避力では、これを避けるのは絶望的なまでに不可能としか言いようがないのではありませんか?
 たとえ相手がイゼルローン回廊のイゼルローン要塞であっても、質量弾攻撃を妨げる要素などほとんど発生のしようがないと思いますけどね。>

 自分としては、イゼルローン回廊の帝国側出入口から回廊の帝国側通路の途中くらいまでを「遠距離」と仮定していたので、いささか冒険風ライダーさんとの認識にズレがあったみたいですね。自分が仮定していた上記の「遠距離」からなら、途中でエンジンが停止され、慣性航行しか出来なくなる質量兵器では、多少なりとも曲がりくねった回廊内を抜けるのは不可能であり、万一奇跡的に抜けれても、事前に質量兵器の飛来を探知した上での要塞の姿勢制御システムで公転速度を加速・減速・停止などの回避運動や、トゥールハンマーによる迎撃などを織り交ぜて質量兵器による攻撃を無効化できる出来るのではないか?と考えていたわけです。
 さて、アルテナ星系外縁部内という「近距離」からの攻撃についてですが、「アルテミスの首飾り」破壊の場合は、救国軍事会議はドーリア星域会戦で唯一の宇宙戦力である第十一艦隊を失っており、バーラト星系での制宙権をも失っていたため、ヤン艦隊は質量兵器攻撃が有効な距離にまで簡単に到達する事が出来たわけですが、それに対し帝国によるイゼルローン要塞への質量兵器攻撃の場合は、要塞には一個艦隊もの戦力が存在しており、アルテナ星系内での制宙権を握っているため、敵が質量兵器攻撃の有効な距離にまで到達する事を許すかどうかは疑問ですね。まあ、それについては後に言及する事にします。
 また、「途中まで有人制御航行を行い、ギリギリの段階で脱出する」「無人艦の遠隔コントロール」についてですが、かつて冒険風ライダーさんはこうおっしゃっておられましたよね↓

現在の掲示板ログ1727の冒険風ライダーさんの書き込みより
<しかも、銀英伝3巻でケンプがヤンに追い詰められた挙句に行った「要塞特攻」が失敗したとはいえ、それは決して「要塞クラスの質量を保有する小惑星や衛星を要塞にぶつけて破壊する」という戦法自体が戦術上無効であることを立証したわけではないのです。あの要塞特攻が失敗したのは、加速距離が短い中で要塞を無理矢理加速させるために通常航行用エンジンを稼動させ続けてしまったことが原因なのであって、欠点を是正した上でもう一度同じ事を行えば、間違いなくイゼルローン要塞を破壊することができたはずではありませんか。
 具体的には、イゼルローン要塞クラスの適当な小惑星にガイエスブルク要塞と同じ仕様でエンジンを設置し、同盟軍の火力が届かない遥か彼方からイゼルローン要塞を直撃するコースを取るように小惑星をスタートさせ、ある程度加速がついてきたところで全エンジンを停止し、宇宙空間をひたすら飛行している隕石と同じように慣性で航行させてしまえば良いのです。これだとエンジンがひとつ破壊されたところで移動する小惑星には何の影響もありません。>

 途中で「全エンジンを停止」してしまったのなら、「慣性で航行」する事しか出来なくなるわけですから、当然「途中まで有人制御航行を行い、ギリギリの段階で脱出する」も「無人艦の遠隔コントロール」も不可能になるのではないでしょうか?


<これは例の質量弾攻撃時におけるヤンの対応とも重なるのですが、あの第8次イゼルローン要塞攻防戦当時、帝国における移動要塞構想の最高責任者であったはずのラインハルトやシャフト、いやそれどころか帝国関係者の全ては、ヤンがイゼルローン要塞に不在であったことを知らなかったはずですよね? 当然、上記のようなことを「事前に」彼らが予測できるはずもないわけです。
 帝国側にそのような事情が存在する以上、ラインハルトやシャフトが移動要塞を使って「要塞VS要塞」の局面を現出させようとするのであれば、実際の敵側の状況がどうであれ、当然「ヤンがイゼルローン要塞に存在する」ことを前提とした上で、敵が「能動的な行動を取る事」を想定し、かつそれに対する対処法も考えなければならないはずでしょう。「にもかかわらず」、彼らは移動要塞のエンジン同期の技術問題について述べるだけで、それ以外の理由で「要塞VS要塞」が実現されない可能性を何も考えていないのです。
 そして、ここで「そんなことも考えられなかったラインハルトやシャフトは頭の悪いバカであった」という身も蓋もない結論を導きたくないのであれば、「何故彼らはそういう考えが持てなかったのが?」という問題に対する合理的な解答を与えなければなりません。質量弾攻撃の件は攻撃側が主導権を握っているわけですから、迎撃側のことばかり論じていてはダメなのですよ。>
<まあ、これについてはあえて私から合理的な理由を出してあげましょうか。これは簡単な話で、たとえ自軍が発見されても、敵にすぐさま「能動的な行動を取る事」ができるわけではなく、ある程度のタイムラグが発生せざるをえないからです。
 たとえば銀英伝3巻の冒頭では、イゼルローン回廊帝国側出口方面で偶発的な接近遭遇戦が発生していますが、同盟側は、現地部隊が敵と遭遇したことをイゼルローン要塞に打電してから実際に救援が訪れるまで、実に9時間もの間「孤立無援で」戦っていました(銀英伝3巻 P32)。これはもちろん、
現地部隊の打電 → イゼルローン司令部の作戦方針の協議・決定 → 出撃準備 → 全軍出撃完了 → 陣形を編成・維持しつつ現地急行
といった諸々の手順を踏んでいかなければならないためで、このタイムラグこそが、移動要塞がイゼルローン要塞に肉迫する隙を作り出すわけです。
 また、作中事実から言っても、あの移動要塞は4月10日に「【回廊内を】哨戒中の索敵部隊の三〇〇光秒先」でワープアウトしていますし、それから遅くとも24時間以内には「イゼルローン要塞から60万kmの距離」に布陣しているわけです。イゼルローン要塞まで通常航行を行うにせよ、この程度の移動時間であれば、相手側も迎撃の準備をするのに手一杯になるため、特に問題なく「要塞VS要塞」に持ち込むことができるのではないか、とラインハルトもシャフトも考えていたのではないでしょうか。
 そして、これならばすくなくとも平松さんが出されている理由よりは「攻撃側の事情」を説明できていると思うのですが、いかがでしょうか。>

 ラインハルトやシャフトが「『要塞VS要塞』が実現されない可能性を何も考えていな」かったのは、「エンジンを付けた『移動要塞』」に対する先入観というものが大きかったのではないでしょうか?
 自分は6346でも書きましたが、事前に移動要塞のエンジンの脆弱性に気付かず、ケンプやミュラーに対して最初から「いざとなれば要塞に要塞をぶつけて破壊しても構わん」と命令を与えずに単純に攻略を命じたラインハルトもまた、当初は「移動要塞の利点は火力と装甲」という先入観から完全には逃れ得ていなかったのではないかと思われます。それゆえ、単純に「移動要塞の火力と装甲」を持ってすれば、要塞には簡単に接近出来るだろうとラインハルトは思い込んでしまったのではないか?と言う事です。シャフトについては、「精神の昂揚が、自信ではなく過信に直結するタイプ」(雌伏篇第二章V、ノベルズ版三巻P43上段)とありますので、これまた単純に自分のプランの成功を疑わなかっただけなのではないでしょうか?現に敗戦後にすら彼は次のような事を言っていますし↓

 雌伏篇第九章V(ノベルズ版三巻P231下段〜P232上段)
<ミュラーに対しては寛容を示したラインハルトであったが、科学技術総監シャフト技術大将に対しては、まったく別であった。彼はシャフトを呼びつけると、
「弁解があれば聞こうか」
 と、最初から糾弾の姿勢を見せた。シャフトは自信満々でそれに応じた。
「お言葉ながら、閣下、私の提案にミスはございませんでした。作戦の失敗は、統率および指揮の任にあたった者の責任でございましょう」>

 つまり、ラインハルトが「正統派の用兵家」が抱く移動要塞への先入観から完全に脱却し得なかった事と、シャフトの過信が、二人が「『要塞VS要塞』が実現されない可能性を何も考えていな」かった原因ではないかと考えられるのです。
 さて、ガイエスブルク移動要塞は4月10日に回廊内に侵入しており、14日には移動要塞を囮にしたミュラー艦隊によるイゼルローン攻撃が実施されています(雌伏篇第七章X、ノベルズ版三巻P186上段)。この間の時間経過が今ひとつ定かではありませんので、ちょっと検証してみます。
 14日の攻撃開始は、移動要塞からの歩兵部隊による破壊工作が失敗し、撤収した八〇時間後(雌伏篇第七章V、ノベルズ版三巻P175上段)ですので、これから計算すると、

(1)、4月14日の午前0時からミュラー艦隊による攻撃が開始された場合は、破壊工作は4月10日の午後2時半頃から始まり、午後4時頃に終了。

(2)、4月14日の午後11時59分からミュラー艦隊による攻撃が開始された場合は、破壊工作は4月11日の午後2時半頃から始まり、午後4時頃に終了。

 という事になります(破壊工作の開始から終了までの時間は「一時間半」と雌伏篇第七章U、ノベルズ版三巻P173上段に明記されています)。これに先立つイゼルローン前面への布陣、要塞砲の撃ち合いは、シェーンコップが後の破壊工作部隊襲来の報を受けた際、「敵もどうして、打つ策が早い!」(雌伏篇第七章U、ノベルズ版三巻P171上段)と言っていますので、行われた時間は破壊工作とさほど差がないと考えられます。そして、

(A)、4月10日の午前0時にガイエスブルク移動要塞が回廊内に侵入してきた場合

(B)、4月10日の午後11時以降にガイエスブルク移動要塞が回廊内に侵入してきた場合

 から考えると、「侵入した回廊内の宙点」から、「イゼルローン要塞から60万kmの距離」まで要した時間は、最短で1時間以下、最長で約36時間程度と推定されます。ですので「遅くとも24時間以内」とは断定出来ないのではないかと。最長の場合を考えれば、哨戒艦隊の連絡から一日半近い時間が与えられるわけですし、「現地部隊の打電 → イゼルローン司令部の作戦方針の協議・決定 → 出撃準備 → 全軍出撃完了 → 陣形を編成・維持しつつ現地急行」というプロセスを経ても、十分にアルテナ星系より遠くの宙域で移動要塞を迎撃出来ると思えるのですが(高速戦艦・巡航艦・駆逐艦などの足の速い艦を先行させるという手もありますし)、このプロセスにどれほどの時間がかかるのかが鍵ですね。
 更に言うと、問題なのは「移動要塞がイゼルローン要塞に肉迫可能な事が立証出来た」=「小惑星にエンジンを取り付けた大質量兵器がイゼルローン要塞に肉迫可能な事が立証出来た」とは言えない事です。
 と言うのは、移動要塞の場合は駐留艦隊を内部に収容して航行する事が出来ますが、小惑星にエンジンを取り付けた大質量兵器は、護衛艦隊を周囲にに引き連れて航行しないといけません。現在の掲示板ログ3649(銀英伝考察3過去ログMに収録)で、冒険風ライダーさんも「移動要塞の航行速度は、実は通常艦船よりもかなり速いといっても過言ではない」と書かれておられますので、これに従えば、当然大質量兵器は護衛艦隊に合わせて速度や回廊外からのワープ距離を落とさねばならず、移動要塞に比べてイゼルローン要塞に到達する時間がかなり遅くなってしまい、迎撃側にかなりの時間を与えてしまうのではないでしょうか。かといって、護衛艦隊を引き連れずに行けば、万一要塞から高速戦艦・巡航艦・駆逐艦などの足の速い艦で構成された艦隊が先行して来た場合、イゼルローンの近距離に到達する前に捕捉され、移動要塞のような強力な武装を持たない大質量兵器は、為すすべもなくエンジンを破壊されてしまうのではないかと思われるのですが。




>パンツァーさん
<「イゼルローン回廊内ではワープ出来ないという理論」などというものが、存在するでしょうか?
「イゼルローン回廊」を経由しないで、「変光星、赤色巨星、異常な重力場」が密集した「防壁」を横切るような経路でワープができない、だけではないでしょうか?>

 これについては6333で説明しています。

・大質量近くでのワープインが危険である事は作中に記されている。

・イゼルローン回廊が存在するサルガッソ・スペースは「変光星、赤色巨星、異常な重力場」といった大質量・高重力の天体が密集した宙域である。

・よって、回廊内でのワープには大きな危険が伴い、事実上不可能であると考えられる。

 という事ですね。回廊内の出入口近くの宙域ならば、それらの天体の密度も薄いでしょうから、ワープも出来るかも知れませんが、天体の密度の濃い回廊内深部でのワープインは事実上不可能ではないか?と言うのが自分の推論です。回廊内へのワープアウトについては、ガイエスブルク移動要塞がワープアウトしている事実がありますが、「回廊内でのワープイン」と「普通の宙域からの回廊内へのワープアウト」は別物であるという事を理解しておく必要があると思います。

<銀英伝1黎明篇:序章 銀河系史概略 ノベルズ版P15〜16
<銀河帝国軍の執拗な追撃と捜索をかわし
(中略)
銀河系の深奥部に歩を踏み入れた。そこは、巨星、矮星、変光星などの危険が満ちた巨大な空間であった。造物主の悪意が脱出者たちの頭上に次々と降りかかった。
苦難の道程のさなか、彼らは指導者ハイネセンを事故で失った。親友であったグエン・キム・ホアが後を継いだ。その彼も老いて失明するにいたったとき、彼らは危険地帯を脱し、安定した壮年期の恒星群を前途に見出した。>
 ワープしないとすると、「防壁」を横切るだけの距離を進むだけで、数十年くらい、掛かってしまうわけです。これは、経路に障害物があるから、というよりもむしろ、ワープしないから、時間が掛かると言うことでしょう。
イゼルローン回廊内でのワープが不可能であるとしたら、「イゼルローン回廊」に沿って、帝国領から同盟領へ移動するだけで、数年、数十年といった時間を要するでしょう。>

 長征一万光年時は、システム未知の宙域であるイゼルローン回廊を手探りで、したくもない無駄な寄り道もしながら進まねばならなかったわけですが、それより数百年後の銀英伝本編の時代では、すでにイゼルローン回廊内の航路は確立していて、最短の距離で航行出来るでしょうし、宇宙船の航行速度も向上しているでしょうから、これまた前提条件が異なるのではないかと。
 それに、小説の終盤ではユリアン率いるイゼルローン軍6600隻は、ヴァーゲンザイル艦隊と戦いつつ帝国側出入口からトゥールハンマーの射程内に後退するまで、二日を要しています(落日篇第二章W、ノベルズ版十巻P52下段、P54下段)。当然戦闘中にワープは出来ないでしょう。つまり、ワープを行わずに戦いながらの後退でも6600隻の艦隊が二日で回廊の半分(イゼルローン要塞は回廊の中央に存在します(黎明篇第五章T、ノベルズ版一巻P114上段))を踏破出来るのであり、イゼルローン回廊はその程度の長さでしかないのです。

<また、要塞対要塞の対決の場合、ガイエスブルグ要塞は、イゼルローン要塞に、「300光秒よりも離れた距離(哨戒部隊までの距離)」から、2光秒(60万km)の距離にまで接近されるわけですが、これと同様のことを、質量弾攻撃一般で行うことが可能でしょう。つまり、質量弾を、一旦、イゼルローン要塞の近距離(アルテミスの首飾りのように星系の直径相当)にワープさせたのち、その近距離から突入攻撃を行わせればよいわけです。そうすれば、質量弾の製造場所から目標地点までの距離の長短などは、なんの問題もないことになります。>
<これについては、質量弾を、イゼルローン回廊内の適宜位置にワープさせた後、質量弾攻撃に適当な距離まで、通常航行させればよいだけの話なので、問題はないと思います。つまり、「近距離」まで接近した状態で、突入攻撃を行わせれば良いでしょう。
また、「イゼルローン回廊が曲がりくねっている」という記載は、作品中に存在するでしょうか?>
<さらに言えば、「近距離」への質量弾のワープがイゼルローン要塞側に確認されたとしても、「近距離」の発射地点に到達後、直ちに、質量弾攻撃が開始されたならば、イゼルローン要塞から艦隊を出撃させて迎撃させても、間に合わないことになるでしょう。たまたま、十分な兵力を哨戒させているような状況でもない限りは。>

 冒険風ライダーさんへのお返事にも書きましたが、駐留艦隊を内部に収容した移動要塞と違い、質量兵器の場合は護衛艦隊を周囲に引き連れていかねばなりません。艦隊は移動要塞よりもワープの距離、航行速度が劣っている事は冒険風ライダーさんが現在の掲示板ログ3649で立証されておられます。となれば、艦隊を引き連れた質量兵器の近距離への到達日時は、当然移動要塞よりはるかに遅れます。その間に要塞側は充分な余裕を持って駐留艦隊を出撃させ、要塞よりはるか遠距離の宙域で加速前の大質量兵器とその護衛艦隊を捕捉できるのではないでしょうか。また、護衛艦隊をつけねば、要塞から高速艦隊が先行して出撃して来た場合、近距離にまで近付く前に、なすすべもなく質量兵器のエンジンは破壊されてしまうのではないでしょうか。
「イゼルローン回廊が曲がりくねっている」というのは、

・イゼルローン回廊も自然に形成された宙域である以上、多少なりとも曲がりくねっていると考えたほうが自然である。

・イゼルローン回廊内には、数千隻単位の艦隊が隠れうる索敵システムの死角となる宙域が多数存在する(策謀篇第八章U、ノベルズ版四巻P197下段および落日篇第二章W、ノベルズ版十巻P56上段)事が記されており、回廊内の地形の複雑さを示している。

 と言うのが根拠となっています。


<いや、ケンプによるガイエスブルグ要塞のイゼルローン要塞への突入自体が、質量弾攻撃の一形態なのですから、当然、「自動追尾」方式の攻撃も、可能であることになります。「アルテミスの首飾り」破壊時に「自動追尾」を利用しないのは、No.6353で冒険風ライダーさんが指摘するように、目標の回避運動が問題とならないため、「自動追尾」など利用する必要がない、というだけの話です。
私は、万一、イゼルローン要塞の回避能力が、想像を絶するほど大きなものであったとしても、ケンプによるガイエスブルグ要塞の突入のように、「自動追尾」可能な方式を取れば解決する、と述べているだけです。>

 でも結局「ガイエスブルグ要塞のイゼルローン要塞への突入」は航行中にエンジンを破壊されて無残な失敗に終わっているわけですよね?だからこそ、冒険風ライダーさんはかつて下のように述べられているわけです。

 現在の掲示板ログ1727の冒険風ライダーさんの書き込みより
<しかも、銀英伝3巻でケンプがヤンに追い詰められた挙句に行った「要塞特攻」が失敗したとはいえ、それは決して「要塞クラスの質量を保有する小惑星や衛星を要塞にぶつけて破壊する」という戦法自体が戦術上無効であることを立証したわけではないのです。あの要塞特攻が失敗したのは、加速距離が短い中で要塞を無理矢理加速させるために通常航行用エンジンを稼動させ続けてしまったことが原因なのであって、欠点を是正した上でもう一度同じ事を行えば、間違いなくイゼルローン要塞を破壊することができたはずではありませんか。
 具体的には、イゼルローン要塞クラスの適当な小惑星にガイエスブルク要塞と同じ仕様でエンジンを設置し、同盟軍の火力が届かない遥か彼方からイゼルローン要塞を直撃するコースを取るように小惑星をスタートさせ、ある程度加速がついてきたところで全エンジンを停止し、宇宙空間をひたすら飛行している隕石と同じように慣性で航行させてしまえば良いのです。これだとエンジンがひとつ破壊されたところで移動する小惑星には何の影響もありません。>

 冒険風ライダーさんの上記のご主張に従えば、冒険風ライダーさんの想定なさっている質量兵器は「同盟軍の火力が届かない遥か彼方から」「全エンジンを停止し」「慣性で航行させ」る訳ですから、自動追尾も出来なくなるのではないか、と申し上げているのですが(慣性航行ですから当然方向転換などは出来なくなります)。


<これは、はっきり言って、望むところでしょう。
戦闘におけるイゼルローン要塞の脅威は、その要塞主砲の威力にあるわけですから、要塞主砲の射程外で、同盟艦隊に対する戦闘を帝国艦隊が行うことができるのであれば、帝国艦隊は数的優位を十二分に生かすことが可能となります。同盟の駐留艦隊は、要塞主砲の支援を受けることなく、「要塞から遥か離れた宙域」での戦闘で消耗させられることになるわけです。そして、駐留艦隊が消耗してしまえば、「近距離からのイゼルローンへの質量弾群の攻撃」を防ぐ手立ては存在しなくなります。>

 作中の「回廊の戦い」では、回廊の狭隘さゆえに帝国軍は「数的優位を十二分に生かすことが」出来なかったのではないですか?(乱離篇、ノベルズ版八巻)そうなれば、作中記述通り、当然ヤン艦隊も損耗するでしょうが、帝国軍は更に消耗するでしょう。質量兵器攻撃は、もともと味方の被害を少なくするための戦術なのでしょう?それでは結局、質量兵器攻撃をしようがしまいが、味方の損害も甚大な「愚劣な消耗戦」になってしまう事に変わりはないのでは?


<イゼルローン要塞を攻撃するガイエスブルグ要塞は、当然、イゼルローン要塞に対して正対しているのでしょうから、球状のガイエスブルグ要塞の後半球は、イゼルローン要塞に対して隠れた状況にあるでしょう。環状に取り付けられているエンジン群は、当然、後半球の周縁部であったとしても、後半球であることには変わりないので、真正面からの攻撃では、打撃を与えることができないと考えるのが妥当ではないでしょうか。
(アニメ版の移動要塞でも、真正面からエンジンが見えるようには描かれていなかったように思います)
したがって、真正面からガイエスブルグ要塞のエンジンに攻撃を加えることは不可能で、側面90度に回り込む必要は無くても、ガイエスブルグ要塞の斜め位置には、回り込む必要があるのではないでしょうか。
少なくとも艦隊は、ガイエスブルグ要塞の要塞主砲の軸線上(つまり真正面)にはいないでしょうから、必然的に、ガイエスブルグ要塞に対して斜め位置に位置することになるでしょう。>

球体の「周囲」と言えば自分には円の中心を通る大円沿いとしか思えないのですが……。後部に取り付けるのならはっきりと「後部周囲」とと記載されるのではないでしょうか?
それに、ヤン艦隊がガイエスブルクの側面に回り込んだという記述がないのは不自然なように思えるのですが、まあ、この辺りの判断は第三者にお任せします。
(ちなみにノベルズ版三巻のP182〜P183の挿絵では、ガイエスブルクのエンジンは、なんと赤道(?)沿いに取り付けられています。また、アニメ版のエンジンも、見た限りでは要塞の中心の大円沿いに設置されているとしか見えないのですが、この辺りもアニメを見た人のご判断にお任せします。アニメや挿絵は目安に過ぎませんし)


No. 6366
Re6361:100%の成功率を保証しない「ソフトウェア」の問題
冒険風ライダー 2005/03/20 22:37
<自分が仮定していた上記の「遠距離」からなら、途中でエンジンが停止され、慣性航行しか出来なくなる質量兵器では、多少なりとも曲がりくねった回廊内を抜けるのは不可能であり、万一奇跡的に抜けれても、事前に質量兵器の飛来を探知した上での要塞の姿勢制御システムで公転速度を加速・減速・停止などの回避運動や、トゥールハンマーによる迎撃などを織り交ぜて質量兵器による攻撃を無効化できる出来るのではないか?と考えていたわけです。
 さて、アルテナ星系外縁部内という「近距離」からの攻撃についてですが、「アルテミスの首飾り」破壊の場合は、救国軍事会議はドーリア星域会戦で唯一の宇宙戦力である第十一艦隊を失っており、バーラト星系での制宙権をも失っていたため、ヤン艦隊は質量兵器攻撃が有効な距離にまで簡単に到達する事が出来たわけですが、それに対し帝国によるイゼルローン要塞への質量兵器攻撃の場合は、要塞には一個艦隊もの戦力が存在しており、アルテナ星系内での制宙権を握っているため、敵が質量兵器攻撃の有効な距離にまで到達する事を許すかどうかは疑問ですね。>

 前にも言いましたけど、「【軌道上を自由に動く】アルテミスの首飾り」でさえ避けることができず、しかも攻撃が回避される可能性を攻撃側が考慮どころか眼中にもないかのような態度を取る質量弾攻撃を、本来そんな機能がなく、それも作中で移動要塞に60万qの距離まで肉薄された前科のある静止要塞がかわせるとはとても思えないのですけどね〜。第一、星系の制宙権を握っていようがいまいが、それだけで直ちに「【軌道上を自由に動く】アルテミスの首飾り」の回避能力が自動的に鈍化ないしは無力化するわけではないでしょうに。
 たとえば、「アルテミスの首飾り」が全く動くことのできないように、複数の小艦隊群が軍事衛星のひとつひとつを牽制するなり攻撃をかけるなりして動きを封じていた、とでもいうのならばまだ理解できるのですけど、実際には12個の軍事衛星が相手にしたのは12個の氷塊「だけ」でしかないのですからね〜。当然、「アルテミスの首飾り」が回避行動を取るのに【ハードウェア的には】何ら不都合が発生することなどないわけです。
 で、それを擁護するために平松さんはNo.6343で「迎撃側の【ソフトウェア的な】対処の遅れ」というものを挙げたわけですが、こんなものはヤンが「100%の確信どころか失敗の可能性を全く考慮してすらいない」理由になどなりえないのですよ。そもそも、ヤンは作中でも「ソフトウェア的発想」に対してこんな認識を抱いているくらいなのですし↓

銀英伝2巻 P116下段〜P117上段
<最初、ヤンは、シャンプール星域の動乱など無視して首都ハイネセンに急行し、軍事革命派の本隊を電撃的にたたきのめすつもりだった。根を絶てば枝葉は枯れてしまうものだからだ。
 それが作戦を変更し、シャンプール星域の敵を撃つことにしたのは、彼らがゲリラ戦法によってイゼルローン要塞とヤン艦隊との連絡・補給ルートを攪乱する危険性に思いあたったからである。彼がシャンプール星域における軍事革命派の指揮官であれば、討伐部隊がくれば逃げ、去れば追尾してその後背や補給ルートをたたき、それを可能なかぎり繰り返して敵を消耗させるであろう。そんなことをされてはたまったものではない。
「でも、敵の指揮官はヤン・ウェンリーではありませんよ」
 とりこし苦労ではないか、と、ユリアンが意見を述べると、黒髪の司令官はにやりと笑ってみせた。
「未来のヤン・ウェンリーがいるかもしれないさ」
 誰でも最初は無名の存在なのだ。エル・ファシルの前に、誰がヤン・ウェンリーの名を知っていた?――ヤンはそういった。>

 こういう考え方を持つヤンが、平松さんの主張する「迎撃側の【ソフトウェア的な】対処の遅れ」などといった「希望的観測」程度のことで、「100%の確信どころか失敗の可能性を全く考慮してすらいない」的スタンスでもって例の質量弾攻撃を実行するなどありえないのですよ。ヤンの考えに従うのであれば、迎撃側にも「未来のヤン・ウェンリーがいるかもしれない」ということになって、当然「失敗の可能性」を考えなければならないはずなのですから。
 そして、前にも言ったように、この問題に対して「実はヤンは質量弾攻撃における失敗の可能性が現実に存在したのに、それを考慮すらもしなかったバカである」という身も蓋もないどころか銀英伝の世界観にすら反しかねない結論を出したくないのであれば、ヤンを貶めない形での合理的な理由を、しかもイゼルローン要塞に対する質量弾攻撃云々と全く矛盾しない形で出すべきなのではありませんか? これまでの平松さんの回答では、この命題を達成できているようには見えないのですがね。


<途中で「全エンジンを停止」してしまったのなら、「慣性で航行」する事しか出来なくなるわけですから、当然「途中まで有人制御航行を行い、ギリギリの段階で脱出する」も「無人艦の遠隔コントロール」も不可能になるのではないでしょうか?>

 「途中まで有人制御航行を行い、軌道修正を行いつつ、ギリギリの段階で【全エンジンを停止し、宇宙空間をひたすら飛行している隕石と同じように慣性で航行させ】た上で脱出する」
 「無人艦の遠隔コントロールによる航行で、軌道修正を行いつつ、【ある程度加速がついてきたところで全エンジンを停止し、宇宙空間をひたすら飛行している隕石と同じように慣性で航行させ】る」
 今までの私の主張を掛け合わせても別に何も矛盾は生じませんが、これのどこが問題なのですか?


<ラインハルトやシャフトが「『要塞VS要塞』が実現されない可能性を何も考えていな」かったのは、「エンジンを付けた『移動要塞』」に対する先入観というものが大きかったのではないでしょうか?
 自分は6346でも書きましたが、事前に移動要塞のエンジンの脆弱性に気付かず、ケンプやミュラーに対して最初から「いざとなれば要塞に要塞をぶつけて破壊しても構わん」と命令を与えずに単純に攻略を命じたラインハルトもまた、当初は「移動要塞の利点は火力と装甲」という先入観から完全には逃れ得ていなかったのではないかと思われます。それゆえ、単純に「移動要塞の火力と装甲」を持ってすれば、要塞には簡単に接近出来るだろうとラインハルトは思い込んでしまったのではないか?と言う事です。シャフトについては、「精神の昂揚が、自信ではなく過信に直結するタイプ」(雌伏篇第二章V、ノベルズ版三巻P43上段)とありますので、これまた単純に自分のプランの成功を疑わなかっただけなのではないでしょうか?>

 あのですね、ラインハルトとシャフトは「要塞をもって要塞に当たらせる」ということを「前提に」移動要塞計画を発動しているわけですよね? そのプランが敵側の事前迎撃によって妨げられる、などという事態がもし想定されるのであれば、それは移動要塞実用化の際に何度も言及されていた「エンジン同期の問題」と同じかそれ以上に「事前に対処法が検討【されていなければならない】」事項であるはずではありませんか。固定観念だろうが何だろうが、それすらも全く検討しなかった時点で、ラインハルトはこの移動要塞論で私が想定している以上のバカ決定なのですが、それで良いというわけなのですか?
 第一、「あの」ラインハルトが(当時イゼルローンに不在であることを知らなかった)ヤンを相手に「単純に「移動要塞の火力と装甲」を持ってすれば、要塞には簡単に接近出来るだろう」と考えていた、などという想定は、銀英伝の世界観からも、ラインハルト自身のキャラクター設定から見ても大きく逸脱しているではありませんか。ラインハルトはヤンを「誰よりも高く」評価していたのですし、ラインハルトが仮にも「戦争の天才」などと呼ばれていたのは、そのような固定観念とは無縁に、柔軟かつ的確な政治的・軍事的判断ができる存在だからだと「作中では」言われていたのではないのですかね? 作品やキャラクターを擁護するつもりで、より致命的かつ痛恨の大ダメージを与えてしまっては意味がありますまい。
 そもそも、他ならぬ私自身がこの一連の議論の最初から一貫して主張しているのは、「要塞および移動要塞の最強の武器は無限の自給自足能力にあり、特にそれを移動可能とする移動要塞の潜在的脅威は計り知れない。にもかかわらず、【アレだけ補給の問題に言及しながら】、そのことに全く気づきもしなかったヤンおよびラインハルトは救いようのない愚か者である」というものなのであって、平松さんの想定は私の主張を全面的に受け入れた上での「開き直り」の類にしかなっていないのですよ。銀英伝の擁護どころか、私の主張に対する反論としてすらもマトモに機能してはいないわけで、二重の意味で問題があると思いますけどね。
 本当に移動要塞や質量弾攻撃に対するラインハルト側の認識や行動を擁護したいのであれば、これに関してもまた「ラインハルトはバカだった」的な結論に到達する可能性がない上での合理的な理由をもってくるべきです。


<更に言うと、問題なのは「移動要塞がイゼルローン要塞に肉迫可能な事が立証出来た」=「小惑星にエンジンを取り付けた大質量兵器がイゼルローン要塞に肉迫可能な事が立証出来た」とは言えない事です。
 と言うのは、移動要塞の場合は駐留艦隊を内部に収容して航行する事が出来ますが、小惑星にエンジンを取り付けた大質量兵器は、護衛艦隊を周囲にに引き連れて航行しないといけません。現在の掲示板ログ3649(銀英伝考察3過去ログMに収録)で、冒険風ライダーさんも「移動要塞の航行速度は、実は通常艦船よりもかなり速いといっても過言ではない」と書かれておられますので、これに従えば、当然大質量兵器は護衛艦隊に合わせて速度や回廊外からのワープ距離を落とさねばならず、移動要塞に比べてイゼルローン要塞に到達する時間がかなり遅くなってしまい、迎撃側にかなりの時間を与えてしまうのではないでしょうか。かといって、護衛艦隊を引き連れずに行けば、万一要塞から高速戦艦・巡航艦・駆逐艦などの足の速い艦で構成された艦隊が先行して来た場合、イゼルローンの近距離に到達する前に捕捉され、移動要塞のような強力な武装を持たない大質量兵器は、為すすべもなくエンジンを破壊されてしまうのではないかと思われるのですが。>
<冒険風ライダーさんへのお返事にも書きましたが、駐留艦隊を内部に収容した移動要塞と違い、質量兵器の場合は護衛艦隊を周囲に引き連れていかねばなりません。艦隊は移動要塞よりもワープの距離、航行速度が劣っている事は冒険風ライダーさんが現在の掲示板ログ3649で立証されておられます。となれば、艦隊を引き連れた質量兵器の近距離への到達日時は、当然移動要塞よりはるかに遅れます。その間に要塞側は充分な余裕を持って駐留艦隊を出撃させ、要塞よりはるか遠距離の宙域で加速前の大質量兵器とその護衛艦隊を捕捉できるのではないでしょうか。また、護衛艦隊をつけねば、要塞から高速艦隊が先行して出撃して来た場合、近距離にまで近付く前に、なすすべもなく質量兵器のエンジンは破壊されてしまうのではないでしょうか。>

 事前に小惑星の表層部に艦艇群を貼り付けておいて要塞ごとワープ&通常航行を行い、敵艦隊が近づいてきたら要塞から離れて迎撃に移る、で特に問題はないのではありませんか? これならば速度も維持できますし、迎撃側が移動要塞ないしは小惑星爆弾を事前に発見する時点で、攻撃側もまた敵艦隊の出現を事前に察知しえるわけですから、条件はどちらも全く一緒です。
 しかもこれは平松さんが想定している前提にあえて乗った上での作戦であって、イゼルローン回廊内で哨戒中の小艦隊の300光秒先に移動要塞がワープアウトしたという作中事実から考えれば、「回廊外から回廊内へのワープ」でさらにイゼルローン要塞から近い宙域に移動要塞がワープアウトできる可能性もありえるわけです。それができるのであれば、攻撃側は最初のスタートダッシュで静止要塞の距離を詰めることができ、より短時間で質量弾特攻攻撃に移行できるのに対し、迎撃側はより対処時間が減って余裕がなくなるわけですから、ますますもって迎撃側が不利になることでしょうね。
 平松さんが挙げている懸念材料は、このレベルの対処法で簡単にカタがつけられる程度の問題でしかないのですが。


No. 6367
質量弾攻撃のメリットについて
パンツァー 2005/03/21 01:14
冒険風ライダーさんの指摘する質量弾攻撃のメリットは、なんといっても、艦隊のみによる直接攻撃と比べて、艦船および人命の損失が著しく軽減される点にあります。
この冒険風ライダーさんの趣旨を説明すれば、
(A)「艦隊のみによる直接攻撃」よりも、
(B)「質量弾攻撃のみ」(アルテミスの首飾りの破壊時)
あるいは、
(C)「質量弾攻撃を併用した艦隊による攻撃」(ケンプによる要塞特攻時)
の方が効果的である、ということです。

したがって、これに対する反論を行う平松重之さんの立場としては、
(A)が、(B)や(C)よりも優越している点を上げる必要があるのではないでしょうか。

以下では、平松重之さんの推測される点を最大限有利に考慮して、質量弾攻撃に際しての障害を最大化した場合について、考えてみます。
これは、「質量弾攻撃に際しての障害を最大化した場合」なので、この場合ですら質量弾攻撃が有効なのであれば、質量弾攻撃が一般に有効である、という結論が導かれることになります。

引用が長くなると読みにくいかと思いますので、対応する引用部分を(注1)等で表記します。

あまり、根本的な反論を受けているようには思えず、揚げ足取り的、枝葉末節的、な反論を受けているかのような印象を受けてしまっています。
できれば、決定的な根拠を挙げてほしいところですね。
特に、上に指摘しているように、(A)が、(B)や(C)よりも優越している点を上げることができれば、それで片がつくでしょうし、優越している点を上げることができないのであれば、反論自体がなりたたないことになるでしょう。

(1)要塞攻撃の距離(「遠距離」)の問題

平松さんの推測において「遠距離」では、
「慣性航行しか出来なくなる質量兵器」の場合、
「回廊内を抜けるのは不可能」かつ、「要塞の姿勢制御システム」および「トゥールハンマーによる迎撃などを織り交ぜて質量兵器による攻撃を無効化できる」
ということですね。

しかし、「慣性航行しか出来なくなる質量兵器」ではなく、「有人もしくは無人の誘導による質量兵器」であれば、「回廊内を抜けるのは不可能」や「要塞の姿勢制御システム」という問題は解決しますよね。
また、「トゥールハンマーによる迎撃などを織り交ぜて質量兵器による攻撃を無効化できる」という問題についても、質量兵器の数量で全然対応できるのではありませんか。
No.6349において既に述べているように、100でも200でも質量弾を用意すればよいだけの話です。

銀英伝5風雲篇第二章等で、ロイエンタール率いる帝国艦隊がイゼルローン要塞を攻略しますが、このときも無理をすればイゼルローン要塞が直接攻撃により陥落したかもしれないような状況でした。
銀英伝8乱離篇第四章等で、ヤンが、回廊の内部に機雷原を敷設して、イゼルローン要塞の手前で帝国艦隊を迎撃したのも、数的劣勢の状況下で、艦隊による直接攻撃を要塞に受けることを恐れたためでしょう。
つまり、イゼルローン要塞の要塞主砲等に頼るだけでは、当然、一定限度の敵(艦船もしくは質量弾)にしか、対応できないことは明らかです。要塞の駐留艦隊ももちろん戦力ですが、これにしたところで、敵の艦隊戦力によって相殺されてしまうことも明らかでしょう。戦闘機群に護衛された爆撃機を迎撃しようとしても、迎撃戦闘機の数が敵の護衛戦闘機の数よりも数的に不利であれば、迎撃が不可能となる道理です。

平松さんの推測において「近距離」では、
「「アルテミスの首飾り」破壊の場合」とは異なり、
「要塞には一個艦隊もの戦力が存在しており」
質量弾攻撃が迎撃されて成立しない、ということですね。
これも、当然上で述べているように、迎撃側の艦船の数量よりも、攻撃側の艦船の数量の方が多いならば、当然、迎撃艦隊が攻撃側の艦隊に拘束されて、有効な迎撃ができなくなるだけの話です。
全然、質量弾攻撃の障害にはなりえないでしょう。

(2)誘導式の質量弾攻撃について

>  途中で「全エンジンを停止」してしまったのなら、「慣性で航行」する事しか出来なくなるわけですから、当然「途中まで有人制御航行を行い、ギリギリの段階で脱出する」も「無人艦の遠隔コントロール」も不可能になるのではないでしょうか?

これは、別になんの問題もないでしょう。
脱出した後は、有人誘導式の場合は、それ以上の誘導ができないことになりますが、
その時点では、要塞の回避不能距離にまで接近されているわけですから、もはや誘導する必要などないわけですよ。
また、作品に登場した無人艦と同様に考えれば、無人の誘導式で、質量弾を衝突させても良いですね。

(4)(6)質量弾と艦隊の移動速度の違いについて

これは、普通の艦隊においても、高速艦や低速艦があれば、これらの全体としての艦隊の速度が低速艦の速度に合わせられるだけの話です。
こんなのは、別に、艦隊の速度に要塞を合わせればよいだけなのですから、なんの問題もないのではありませんか。
大体、事前に艦隊を、質量弾の移動ポイントに先立って移動させるようにすれば済むだけの話でしょう。

(8)質量弾の内容について

>  冒険風ライダーさんの上記のご主張に従えば、冒険風ライダーさんの想定なさっている質量兵器は「同盟軍の火力が届かない遥か彼方から」「全エンジンを停止し」「慣性で航行させ」る訳ですから、自動追尾も出来なくなるのではないか、と申し上げているのですが(慣性航行ですから当然方向転換などは出来なくなります)。

「自動追尾」が必要となるのは、あくまでイゼルローン要塞に「質量弾の回避能力」がある場合に限りますよね。
明らかに、イゼルローン要塞に「質量弾の回避能力」がある、と指摘できる根拠を平松さんが示すことができないのであれば、「質量弾の回避能力」については、論拠に用いてはならないのではありますまいか。

また、冒険風ライダーさんの上げた具体例は一例に過ぎないものであって、この例でもって、質量弾攻撃の性質を限定してしまうのは、あまりにも狭い解釈ではありませんか。ケンプの行った要塞特攻自体が、質量弾攻撃の範疇から外されてしまうことにもなりますよ。

(9)「回廊の戦い」について

「回廊の戦い」で、帝国軍が「「数的優位を十二分に生かすことが」出来なかった」のは、機雷原のせいですね。機雷原の突破に際して、「五本のトンネル状の通路がうがたれる」(銀英伝8乱離篇第四章Uノベルズ版P84)とあって、「我々は穴から出てくる瞬間を狙撃されて、反撃の法もなくなぎたおされることになる」(同P80)になったわけです。

これは、まず、5本のトンネルを10本、20本にすれば、改善される問題であって、攻略の時間的制限があるわけでもないのですから、十分時間をかければ対処できた問題なのです。

また、これについても、質量弾攻撃により、機雷原の破壊を狙っても良いわけです。
100発でも200発でも機雷原に質量弾を突入させて、大穴を空けてしまえばよいでしょう。あるいは、別の移動化要塞を持ってきて、その要塞主砲で機雷原を掃討させてもよいでしょうね。

いくらでも、手がありそうですけどね。

(9)ガイエスブルグ要塞のワープエンジンの配置

「球体の「周囲」と言えば自分には円の中心を通る大円沿いとしか思えないのですが…」と平松さんは述べておられますが、「球体の周囲」というような用語が作品にもちいられているでしょうか?

「一ダースのエンジンを輪状にとりつけ」(銀英伝3雌伏篇第二章VP45)という表現はありますが、これは、ガイエスブルグ要塞の中心軸に対して、各エンジンを等間隔・等距離に配置している、の意味に過ぎません。エンジンが1個の場合は、中心軸と一致、3個の場合は三角形状、12個の場合は12角形状にエンジンが配置されると言うことです。



(注1)
> >冒険風ライダーさん
> <で、上でも言いましたけど、「【軌道上を自由に動く】アルテミスの首飾り」でさえ、攻撃側は失敗の可能性を全く検討することすらなく他のことを考えられるくらいの余裕と成功の確信があったというのに、何故本来「自力で推進する手段を持たない」はずの静止要塞に質量弾攻撃をかわせる可能性があったなどと言えるのでしょうか? まず、この時点で平松さんが主張する「前提条件」が大いにおかしくなってしまうのではないでしょうか。
>  また、平松さんは「比較的安定した宙域と思われるバーラト星系で」という前提条件を掲げていますが、それを言うならイゼルローン要塞が存在するアルテナ星系だって「惑星を持たない孤独な太陽」しか存在しない恒星系であるわけですから「大質量・高重力の天体が周囲に密集した宙域」の中では「比較的安定した宙域と思われ」ますし、さらに「比較的近距離から」から例の質量弾攻撃が成功したというのであれば、その「比較的近距離」で「質量弾攻撃として必要となるスピード」が得られるということになるわけです。それで言えば「比較的近距離」で「比較的安定した宙域と思われる」アルテナ星系の内部もしくは外縁部から小惑星特攻を開始しても良いことになるでしょう。しかも、ここで私が言う「遠距離」というのは「相手の火力の射程圏外」でありさえすれば良いわけですから、アルテナ星系外縁部辺りでもその条件は充分に満たすことができます。
>  それでもなおかつ、アルテナ星系内における質量弾攻撃に「大質量・高重力の天体が周囲に密集した宙域」等の障害があると仮定しても、銀英伝本編でも行われたように「途中まで有人制御航行を行い、ギリギリの段階で脱出する」という方法もありますし、また銀英伝の作中でしばしば登場している「無人艦の遠隔コントロール」のような手法を使えば、さらに安全かつ効果的に質量弾攻撃の軌道修正を行うことができます。すくなくとも「姿勢制御システムを駆使して公転速度を停止ないし遅滞」程度の回避力では、これを避けるのは絶望的なまでに不可能としか言いようがないのではありませんか?
>  たとえ相手がイゼルローン回廊のイゼルローン要塞であっても、質量弾攻撃を妨げる要素などほとんど発生のしようがないと思いますけどね。>
>

>  自分としては、イゼルローン回廊の帝国側出入口から回廊の帝国側通路の途中くらいまでを「遠距離」と仮定していたので、いささか冒険風ライダーさんとの認識にズレがあったみたいですね。自分が仮定していた上記の「遠距離」からなら、途中でエンジンが停止され、慣性航行しか出来なくなる質量兵器では、多少なりとも曲がりくねった回廊内を抜けるのは不可能であり、万一奇跡的に抜けれても、事前に質量兵器の飛来を探知した上での要塞の姿勢制御システムで公転速度を加速・減速・停止などの回避運動や、トゥールハンマーによる迎撃などを織り交ぜて質量兵器による攻撃を無効化できる出来るのではないか?と考えていたわけです。
>  さて、アルテナ星系外縁部内という「近距離」からの攻撃についてですが、「アルテミスの首飾り」破壊の場合は、救国軍事会議はドーリア星域会戦で唯一の宇宙戦力である第十一艦隊を失っており、バーラト星系での制宙権をも失っていたため、ヤン艦隊は質量兵器攻撃が有効な距離にまで簡単に到達する事が出来たわけですが、それに対し帝国によるイゼルローン要塞への質量兵器攻撃の場合は、要塞には一個艦隊もの戦力が存在しており、アルテナ星系内での制宙権を握っているため、敵が質量兵器攻撃の有効な距離にまで到達する事を許すかどうかは疑問ですね。まあ、それについては後に言及する事にします。

(注2)
>  また、「途中まで有人制御航行を行い、ギリギリの段階で脱出する」「無人艦の遠隔コントロール」についてですが、かつて冒険風ライダーさんはこうおっしゃっておられましたよね↓
>
> 現在の掲示板ログ1727の冒険風ライダーさんの書き込みより
> <しかも、銀英伝3巻でケンプがヤンに追い詰められた挙句に行った「要塞特攻」が失敗したとはいえ、それは決して「要塞クラスの質量を保有する小惑星や衛星を要塞にぶつけて破壊する」という戦法自体が戦術上無効であることを立証したわけではないのです。あの要塞特攻が失敗したのは、加速距離が短い中で要塞を無理矢理加速させるために通常航行用エンジンを稼動させ続けてしまったことが原因なのであって、欠点を是正した上でもう一度同じ事を行えば、間違いなくイゼルローン要塞を破壊することができたはずではありませんか。
>  具体的には、イゼルローン要塞クラスの適当な小惑星にガイエスブルク要塞と同じ仕様でエンジンを設置し、同盟軍の火力が届かない遥か彼方からイゼルローン要塞を直撃するコースを取るように小惑星をスタートさせ、ある程度加速がついてきたところで全エンジンを停止し、宇宙空間をひたすら飛行している隕石と同じように慣性で航行させてしまえば良いのです。これだとエンジンがひとつ破壊されたところで移動する小惑星には何の影響もありません。>
>

>  途中で「全エンジンを停止」してしまったのなら、「慣性で航行」する事しか出来なくなるわけですから、当然「途中まで有人制御航行を行い、ギリギリの段階で脱出する」も「無人艦の遠隔コントロール」も不可能になるのではないでしょうか?



(注3)
> <これは例の質量弾攻撃時におけるヤンの対応とも重なるのですが、あの第8次イゼルローン要塞攻防戦当時、帝国における移動要塞構想の最高責任者であったはずのラインハルトやシャフト、いやそれどころか帝国関係者の全ては、ヤンがイゼルローン要塞に不在であったことを知らなかったはずですよね? 当然、上記のようなことを「事前に」彼らが予測できるはずもないわけです。
>  帝国側にそのような事情が存在する以上、ラインハルトやシャフトが移動要塞を使って「要塞VS要塞」の局面を現出させようとするのであれば、実際の敵側の状況がどうであれ、当然「ヤンがイゼルローン要塞に存在する」ことを前提とした上で、敵が「能動的な行動を取る事」を想定し、かつそれに対する対処法も考えなければならないはずでしょう。「にもかかわらず」、彼らは移動要塞のエンジン同期の技術問題について述べるだけで、それ以外の理由で「要塞VS要塞」が実現されない可能性を何も考えていないのです。
>  そして、ここで「そんなことも考えられなかったラインハルトやシャフトは頭の悪いバカであった」という身も蓋もない結論を導きたくないのであれば、「何故彼らはそういう考えが持てなかったのが?」という問題に対する合理的な解答を与えなければなりません。質量弾攻撃の件は攻撃側が主導権を握っているわけですから、迎撃側のことばかり論じていてはダメなのですよ。>
> <まあ、これについてはあえて私から合理的な理由を出してあげましょうか。これは簡単な話で、たとえ自軍が発見されても、敵にすぐさま「能動的な行動を取る事」ができるわけではなく、ある程度のタイムラグが発生せざるをえないからです。
>  たとえば銀英伝3巻の冒頭では、イゼルローン回廊帝国側出口方面で偶発的な接近遭遇戦が発生していますが、同盟側は、現地部隊が敵と遭遇したことをイゼルローン要塞に打電してから実際に救援が訪れるまで、実に9時間もの間「孤立無援で」戦っていました(銀英伝3巻 P32)。これはもちろん、
> 現地部隊の打電 → イゼルローン司令部の作戦方針の協議・決定 → 出撃準備 → 全軍出撃完了 → 陣形を編成・維持しつつ現地急行
> といった諸々の手順を踏んでいかなければならないためで、このタイムラグこそが、移動要塞がイゼルローン要塞に肉迫する隙を作り出すわけです。
>  また、作中事実から言っても、あの移動要塞は4月10日に「【回廊内を】哨戒中の索敵部隊の三〇〇光秒先」でワープアウトしていますし、それから遅くとも24時間以内には「イゼルローン要塞から60万kmの距離」に布陣しているわけです。イゼルローン要塞まで通常航行を行うにせよ、この程度の移動時間であれば、相手側も迎撃の準備をするのに手一杯になるため、特に問題なく「要塞VS要塞」に持ち込むことができるのではないか、とラインハルトもシャフトも考えていたのではないでしょうか。
>  そして、これならばすくなくとも平松さんが出されている理由よりは「攻撃側の事情」を説明できていると思うのですが、いかがでしょうか。>
>

>  ラインハルトやシャフトが「『要塞VS要塞』が実現されない可能性を何も考えていな」かったのは、「エンジンを付けた『移動要塞』」に対する先入観というものが大きかったのではないでしょうか?
>  自分は6346でも書きましたが、事前に移動要塞のエンジンの脆弱性に気付かず、ケンプやミュラーに対して最初から「いざとなれば要塞に要塞をぶつけて破壊しても構わん」と命令を与えずに単純に攻略を命じたラインハルトもまた、当初は「移動要塞の利点は火力と装甲」という先入観から完全には逃れ得ていなかったのではないかと思われます。それゆえ、単純に「移動要塞の火力と装甲」を持ってすれば、要塞には簡単に接近出来るだろうとラインハルトは思い込んでしまったのではないか?と言う事です。シャフトについては、「精神の昂揚が、自信ではなく過信に直結するタイプ」(雌伏篇第二章V、ノベルズ版三巻P43上段)とありますので、これまた単純に自分のプランの成功を疑わなかっただけなのではないでしょうか?現に敗戦後にすら彼は次のような事を言っていますし↓
>
>  雌伏篇第九章V(ノベルズ版三巻P231下段〜P232上段)
> <ミュラーに対しては寛容を示したラインハルトであったが、科学技術総監シャフト技術大将に対しては、まったく別であった。彼はシャフトを呼びつけると、
> 「弁解があれば聞こうか」
>  と、最初から糾弾の姿勢を見せた。シャフトは自信満々でそれに応じた。
> 「お言葉ながら、閣下、私の提案にミスはございませんでした。作戦の失敗は、統率および指揮の任にあたった者の責任でございましょう」>
>
>  つまり、ラインハルトが「正統派の用兵家」が抱く移動要塞への先入観から完全に脱却し得なかった事と、シャフトの過信が、二人が「『要塞VS要塞』が実現されない可能性を何も考えていな」かった原因ではないかと考えられるのです。


(注4)
>  さて、ガイエスブルク移動要塞は4月10日に回廊内に侵入しており、14日には移動要塞を囮にしたミュラー艦隊によるイゼルローン攻撃が実施されています(雌伏篇第七章X、ノベルズ版三巻P186上段)。この間の時間経過が今ひとつ定かではありませんので、ちょっと検証してみます。
>  14日の攻撃開始は、移動要塞からの歩兵部隊による破壊工作が失敗し、撤収した八〇時間後(雌伏篇第七章V、ノベルズ版三巻P175上段)ですので、これから計算すると、
>
> (1)、4月14日の午前0時からミュラー艦隊による攻撃が開始された場合は、破壊工作は4月10日の午後2時半頃から始まり、午後4時頃に終了。
>
> (2)、4月14日の午後11時59分からミュラー艦隊による攻撃が開始された場合は、破壊工作は4月11日の午後2時半頃から始まり、午後4時頃に終了。
>
>  という事になります(破壊工作の開始から終了までの時間は「一時間半」と雌伏篇第七章U、ノベルズ版三巻P173上段に明記されています)。これに先立つイゼルローン前面への布陣、要塞砲の撃ち合いは、シェーンコップが後の破壊工作部隊襲来の報を受けた際、「敵もどうして、打つ策が早い!」(雌伏篇第七章U、ノベルズ版三巻P171上段)と言っていますので、行われた時間は破壊工作とさほど差がないと考えられます。そして、
>
> (A)、4月10日の午前0時にガイエスブルク移動要塞が回廊内に侵入してきた場合
>
> (B)、4月10日の午後11時以降にガイエスブルク移動要塞が回廊内に侵入してきた場合
>
>  から考えると、「侵入した回廊内の宙点」から、「イゼルローン要塞から60万kmの距離」まで要した時間は、最短で1時間以下、最長で約36時間程度と推定されます。ですので「遅くとも24時間以内」とは断定出来ないのではないかと。最長の場合を考えれば、哨戒艦隊の連絡から一日半近い時間が与えられるわけですし、「現地部隊の打電 → イゼルローン司令部の作戦方針の協議・決定 → 出撃準備 → 全軍出撃完了 → 陣形を編成・維持しつつ現地急行」というプロセスを経ても、十分にアルテナ星系より遠くの宙域で移動要塞を迎撃出来ると思えるのですが(高速戦艦・巡航艦・駆逐艦などの足の速い艦を先行させるという手もありますし)、このプロセスにどれほどの時間がかかるのかが鍵ですね。
>  更に言うと、問題なのは「移動要塞がイゼルローン要塞に肉迫可能な事が立証出来た」=「小惑星にエンジンを取り付けた大質量兵器がイゼルローン要塞に肉迫可能な事が立証出来た」とは言えない事です。
>  と言うのは、移動要塞の場合は駐留艦隊を内部に収容して航行する事が出来ますが、小惑星にエンジンを取り付けた大質量兵器は、護衛艦隊を周囲にに引き連れて航行しないといけません。現在の掲示板ログ3649(銀英伝考察3過去ログMに収録)で、冒険風ライダーさんも「移動要塞の航行速度は、実は通常艦船よりもかなり速いといっても過言ではない」と書かれておられますので、これに従えば、当然大質量兵器は護衛艦隊に合わせて速度や回廊外からのワープ距離を落とさねばならず、移動要塞に比べてイゼルローン要塞に到達する時間がかなり遅くなってしまい、迎撃側にかなりの時間を与えてしまうのではないでしょうか。かといって、護衛艦隊を引き連れずに行けば、万一要塞から高速戦艦・巡航艦・駆逐艦などの足の速い艦で構成された艦隊が先行して来た場合、イゼルローンの近距離に到達する前に捕捉され、移動要塞のような強力な武装を持たない大質量兵器は、為すすべもなくエンジンを破壊されてしまうのではないかと思われるのですが。
>
>
>
>

(注5)
> >パンツァーさん
> <「イゼルローン回廊内ではワープ出来ないという理論」などというものが、存在するでしょうか?
> 「イゼルローン回廊」を経由しないで、「変光星、赤色巨星、異常な重力場」が密集した「防壁」を横切るような経路でワープができない、だけではないでしょうか?>
>
>  これについては6333で説明しています。
>
> ・大質量近くでのワープインが危険である事は作中に記されている。
>
> ・イゼルローン回廊が存在するサルガッソ・スペースは「変光星、赤色巨星、異常な重力場」といった大質量・高重力の天体が密集した宙域である。
>
> ・よって、回廊内でのワープには大きな危険が伴い、事実上不可能であると考えられる。
>

>  という事ですね。回廊内の出入口近くの宙域ならば、それらの天体の密度も薄いでしょうから、ワープも出来るかも知れませんが、天体の密度の濃い回廊内深部でのワープインは事実上不可能ではないか?と言うのが自分の推論です。回廊内へのワープアウトについては、ガイエスブルク移動要塞がワープアウトしている事実がありますが、「回廊内でのワープイン」と「普通の宙域からの回廊内へのワープアウト」は別物であるという事を理解しておく必要があると思います。
>

(注5)
> <銀英伝1黎明篇:序章 銀河系史概略 ノベルズ版P15〜16
> <銀河帝国軍の執拗な追撃と捜索をかわし
> (中略)
> 銀河系の深奥部に歩を踏み入れた。そこは、巨星、矮星、変光星などの危険が満ちた巨大な空間であった。造物主の悪意が脱出者たちの頭上に次々と降りかかった。
> 苦難の道程のさなか、彼らは指導者ハイネセンを事故で失った。親友であったグエン・キム・ホアが後を継いだ。その彼も老いて失明するにいたったとき、彼らは危険地帯を脱し、安定した壮年期の恒星群を前途に見出した。>
>  ワープしないとすると、「防壁」を横切るだけの距離を進むだけで、数十年くらい、掛かってしまうわけです。これは、経路に障害物があるから、というよりもむしろ、ワープしないから、時間が掛かると言うことでしょう。
> イゼルローン回廊内でのワープが不可能であるとしたら、「イゼルローン回廊」に沿って、帝国領から同盟領へ移動するだけで、数年、数十年といった時間を要するでしょう。>
>

>  長征一万光年時は、システム未知の宙域であるイゼルローン回廊を手探りで、したくもない無駄な寄り道もしながら進まねばならなかったわけですが、それより数百年後の銀英伝本編の時代では、すでにイゼルローン回廊内の航路は確立していて、最短の距離で航行出来るでしょうし、宇宙船の航行速度も向上しているでしょうから、これまた前提条件が異なるのではないかと。
>  それに、小説の終盤ではユリアン率いるイゼルローン軍6600隻は、ヴァーゲンザイル艦隊と戦いつつ帝国側出入口からトゥールハンマーの射程内に後退するまで、二日を要しています(落日篇第二章W、ノベルズ版十巻P52下段、P54下段)。当然戦闘中にワープは出来ないでしょう。つまり、ワープを行わずに戦いながらの後退でも6600隻の艦隊が二日で回廊の半分(イゼルローン要塞は回廊の中央に存在します(黎明篇第五章T、ノベルズ版一巻P114上段))を踏破出来るのであり、イゼルローン回廊はその程度の長さでしかないのです。
>

(注6)
> <また、要塞対要塞の対決の場合、ガイエスブルグ要塞は、イゼルローン要塞に、「300光秒よりも離れた距離(哨戒部隊までの距離)」から、2光秒(60万km)の距離にまで接近されるわけですが、これと同様のことを、質量弾攻撃一般で行うことが可能でしょう。つまり、質量弾を、一旦、イゼルローン要塞の近距離(アルテミスの首飾りのように星系の直径相当)にワープさせたのち、その近距離から突入攻撃を行わせればよいわけです。そうすれば、質量弾の製造場所から目標地点までの距離の長短などは、なんの問題もないことになります。>
> <これについては、質量弾を、イゼルローン回廊内の適宜位置にワープさせた後、質量弾攻撃に適当な距離まで、通常航行させればよいだけの話なので、問題はないと思います。つまり、「近距離」まで接近した状態で、突入攻撃を行わせれば良いでしょう。
> また、「イゼルローン回廊が曲がりくねっている」という記載は、作品中に存在するでしょうか?>
> <さらに言えば、「近距離」への質量弾のワープがイゼルローン要塞側に確認されたとしても、「近距離」の発射地点に到達後、直ちに、質量弾攻撃が開始されたならば、イゼルローン要塞から艦隊を出撃させて迎撃させても、間に合わないことになるでしょう。たまたま、十分な兵力を哨戒させているような状況でもない限りは。>
>

>  冒険風ライダーさんへのお返事にも書きましたが、駐留艦隊を内部に収容した移動要塞と違い、質量兵器の場合は護衛艦隊を周囲に引き連れていかねばなりません。艦隊は移動要塞よりもワープの距離、航行速度が劣っている事は冒険風ライダーさんが現在の掲示板ログ3649で立証されておられます。となれば、艦隊を引き連れた質量兵器の近距離への到達日時は、当然移動要塞よりはるかに遅れます。その間に要塞側は充分な余裕を持って駐留艦隊を出撃させ、要塞よりはるか遠距離の宙域で加速前の大質量兵器とその護衛艦隊を捕捉できるのではないでしょうか。また、護衛艦隊をつけねば、要塞から高速艦隊が先行して出撃して来た場合、近距離にまで近付く前に、なすすべもなく質量兵器のエンジンは破壊されてしまうのではないでしょうか。

(注7)
> 「イゼルローン回廊が曲がりくねっている」というのは、
>
> ・イゼルローン回廊も自然に形成された宙域である以上、多少なりとも曲がりくねっていると考えたほうが自然である。
>
> ・イゼルローン回廊内には、数千隻単位の艦隊が隠れうる索敵システムの死角となる宙域が多数存在する(策謀篇第八章U、ノベルズ版四巻P197下段および落日篇第二章W、ノベルズ版十巻P56上段)事が記されており、回廊内の地形の複雑さを示している。
>
>  と言うのが根拠となっています。
>
>

(注8)
> <いや、ケンプによるガイエスブルグ要塞のイゼルローン要塞への突入自体が、質量弾攻撃の一形態なのですから、当然、「自動追尾」方式の攻撃も、可能であることになります。「アルテミスの首飾り」破壊時に「自動追尾」を利用しないのは、No.6353で冒険風ライダーさんが指摘するように、目標の回避運動が問題とならないため、「自動追尾」など利用する必要がない、というだけの話です。
> 私は、万一、イゼルローン要塞の回避能力が、想像を絶するほど大きなものであったとしても、ケンプによるガイエスブルグ要塞の突入のように、「自動追尾」可能な方式を取れば解決する、と述べているだけです。>
>

>  でも結局「ガイエスブルグ要塞のイゼルローン要塞への突入」は航行中にエンジンを破壊されて無残な失敗に終わっているわけですよね?だからこそ、冒険風ライダーさんはかつて下のように述べられているわけです。
>
>  現在の掲示板ログ1727の冒険風ライダーさんの書き込みより
> <しかも、銀英伝3巻でケンプがヤンに追い詰められた挙句に行った「要塞特攻」が失敗したとはいえ、それは決して「要塞クラスの質量を保有する小惑星や衛星を要塞にぶつけて破壊する」という戦法自体が戦術上無効であることを立証したわけではないのです。あの要塞特攻が失敗したのは、加速距離が短い中で要塞を無理矢理加速させるために通常航行用エンジンを稼動させ続けてしまったことが原因なのであって、欠点を是正した上でもう一度同じ事を行えば、間違いなくイゼルローン要塞を破壊することができたはずではありませんか。
>  具体的には、イゼルローン要塞クラスの適当な小惑星にガイエスブルク要塞と同じ仕様でエンジンを設置し、同盟軍の火力が届かない遥か彼方からイゼルローン要塞を直撃するコースを取るように小惑星をスタートさせ、ある程度加速がついてきたところで全エンジンを停止し、宇宙空間をひたすら飛行している隕石と同じように慣性で航行させてしまえば良いのです。これだとエンジンがひとつ破壊されたところで移動する小惑星には何の影響もありません。>
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>  冒険風ライダーさんの上記のご主張に従えば、冒険風ライダーさんの想定なさっている質量兵器は「同盟軍の火力が届かない遥か彼方から」「全エンジンを停止し」「慣性で航行させ」る訳ですから、自動追尾も出来なくなるのではないか、と申し上げているのですが(慣性航行ですから当然方向転換などは出来なくなります)。
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>

(注9)
> <これは、はっきり言って、望むところでしょう。
> 戦闘におけるイゼルローン要塞の脅威は、その要塞主砲の威力にあるわけですから、要塞主砲の射程外で、同盟艦隊に対する戦闘を帝国艦隊が行うことができるのであれば、帝国艦隊は数的優位を十二分に生かすことが可能となります。同盟の駐留艦隊は、要塞主砲の支援を受けることなく、「要塞から遥か離れた宙域」での戦闘で消耗させられることになるわけです。そして、駐留艦隊が消耗してしまえば、「近距離からのイゼルローンへの質量弾群の攻撃」を防ぐ手立ては存在しなくなります。>
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>  作中の「回廊の戦い」では、回廊の狭隘さゆえに帝国軍は「数的優位を十二分に生かすことが」出来なかったのではないですか?(乱離篇、ノベルズ版八巻)そうなれば、作中記述通り、当然ヤン艦隊も損耗するでしょうが、帝国軍は更に消耗するでしょう。質量兵器攻撃は、もともと味方の被害を少なくするための戦術なのでしょう?それでは結局、質量兵器攻撃をしようがしまいが、味方の損害も甚大な「愚劣な消耗戦」になってしまう事に変わりはないのでは?
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>

(注9)
> <イゼルローン要塞を攻撃するガイエスブルグ要塞は、当然、イゼルローン要塞に対して正対しているのでしょうから、球状のガイエスブルグ要塞の後半球は、イゼルローン要塞に対して隠れた状況にあるでしょう。環状に取り付けられているエンジン群は、当然、後半球の周縁部であったとしても、後半球であることには変わりないので、真正面からの攻撃では、打撃を与えることができないと考えるのが妥当ではないでしょうか。
> (アニメ版の移動要塞でも、真正面からエンジンが見えるようには描かれていなかったように思います)
> したがって、真正面からガイエスブルグ要塞のエンジンに攻撃を加えることは不可能で、側面90度に回り込む必要は無くても、ガイエスブルグ要塞の斜め位置には、回り込む必要があるのではないでしょうか。
> 少なくとも艦隊は、ガイエスブルグ要塞の要塞主砲の軸線上(つまり真正面)にはいないでしょうから、必然的に、ガイエスブルグ要塞に対して斜め位置に位置することになるでしょう。>
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> 球体の「周囲」と言えば自分には円の中心を通る大円沿いとしか思えないのですが……。後部に取り付けるのならはっきりと「後部周囲」とと記載されるのではないでしょうか?
> それに、ヤン艦隊がガイエスブルクの側面に回り込んだという記述がないのは不自然なように思えるのですが、まあ、この辺りの判断は第三者にお任せします。
> (ちなみにノベルズ版三巻のP182〜P183の挿絵では、ガイエスブルクのエンジンは、なんと赤道(?)沿いに取り付けられています。また、アニメ版のエンジンも、見た限りでは要塞の中心の大円沿いに設置されているとしか見えないのですが、この辺りもアニメを見た人のご判断にお任せします。アニメや挿絵は目安に過ぎませんし)


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