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銀英伝考察3
銀英伝の戦争概念を覆す「要塞」の脅威
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No. 6377
Re:「遠距離」と「近距離」からの大質量兵器攻撃の相違と疑問点
平松重之 2005/03/25 02:23
>冒険風ライダーさん
<前にも言いましたけど、「【軌道上を自由に動く】アルテミスの首飾り」でさえ避けることができず、しかも攻撃が回避される可能性を攻撃側が考慮どころか眼中にもないかのような態度を取る質量弾攻撃を、本来そんな機能がなく、それも作中で移動要塞に60万qの距離まで肉薄された前科のある静止要塞がかわせるとはとても思えないのですけどね〜。第一、星系の制宙権を握っていようがいまいが、それだけで直ちに「【軌道上を自由に動く】アルテミスの首飾り」の回避能力が自動的に鈍化ないしは無力化するわけではないでしょうに。>

 自分は「行動範囲や回避能力に制限がある『首飾り』の欠点を補う存在であった第十一艦隊が失われた事により、クーデター派はバーラト星系における制宙権を失い、ヤン艦隊の接近を容易に許してしまった」という事を言いたかったのであり、制宙権を握れば「『アルテミスの首飾り』の回避能力が自動的に鈍化ないしは無力化する」などと思っているわけではありません。
 それに、どうも上の文章を読んだ限りでは、自分の意見である「近距離からの攻撃への疑問」と「遠距離からの攻撃への疑問」に対してのご意見がごっちゃになっているように見えるのですが(これについては「アルテミスの首飾り」関連の話題に少し深入りしてしまった自分にも責任がありますが)。

 遠距離からの大質量兵器攻撃への疑問
・「アルテナ星系から程遠い遠距離からの質量兵器攻撃の場合は、曲がりくねった回廊内を抜けるのは不可能に近いし、万一奇跡的に抜けれても質量兵器の存在は要塞に察知されているだろうから、要塞の回避能力、や艦隊及びトゥールハンマーなどでの迎撃を織り交ぜて迎え撃つ余裕が充分にある」

 近距離からの大質量兵器攻撃への疑問
 ・「アルテナ星系内という近距離まで近付かれて質量兵器攻撃を行われれば、確かに回避するのは困難だと思われるが、それ以前に戦争における情報を重要視するヤンならば衛星や哨戒艦隊による索敵なども念入りに行わせるだろうし、一個艦隊を擁し、アルテナ星系内における制宙権を確保出来る立場にあるヤン一党がそれほどの近距離まで敵の接近を許すとは思えない」

 と言うのが自分の意見です。
 救国軍事会議の「アルテミスの首飾り」の場合は、その行動限界を補うべき艦隊戦力はドーリア星域で失われ、制宙権を確保出来なかったのは明白なので、容易に「首飾り」の近距離まで近付く事の出来る状況であった事は納得が出来るのです。
 一方、ヤン一党のイゼルローン要塞の場合は、要塞は一個艦隊を擁していますし、ヤン艦隊はこの宙域での戦闘に慣れており、司令官であるヤン自身も情報を何より重要視していましたし、作中で「回廊の特殊な地勢を利用し」た戦法をいくつか考案し、実施もしています(雌伏篇第八章W、ノベルズ版三巻P209)ので、アルテナ星系における制宙権をイゼルローンは確保しており、大質量兵器による攻撃を察知した場合、そのような近距離まで近付けるかどうかは疑問であるという事ですね(「要塞対要塞」の場合についての意見は、以前の議論及び下の記述で申し上げている通りです)。
 つまり、「近距離からの大質量兵器攻撃」については、近距離まで接近して発射した後の結果を疑っているのではなく、それを実施に持ち込むまでが困難なのではないか?と申し上げているわけです。


<たとえば、「アルテミスの首飾り」が全く動くことのできないように、複数の小艦隊群が軍事衛星のひとつひとつを牽制するなり攻撃をかけるなりして動きを封じていた、とでもいうのならばまだ理解できるのですけど>

 余談になりますが、道原かつみ氏のコミックス版銀英伝(第十巻、徳間書店)での「アルテミスの首飾り」は原作とは異なり、まさに上記のような作戦で破壊されています。同盟中から集めてきた軍事衛星に「首飾り」を攻撃させ、「首飾り」がそれらの軍事衛星を破壊している隙に別方向から氷塊を発射して破壊するという内容でした。


<あのですね、ラインハルトとシャフトは「要塞をもって要塞に当たらせる」ということを「前提に」移動要塞計画を発動しているわけですよね? そのプランが敵側の事前迎撃によって妨げられる、などという事態がもし想定されるのであれば、それは移動要塞実用化の際に何度も言及されていた「エンジン同期の問題」と同じかそれ以上に「事前に対処法が検討【されていなければならない】」事項であるはずではありませんか。固定観念だろうが何だろうが、それすらも全く検討しなかった時点で、ラインハルトはこの移動要塞論で私が想定している以上のバカ決定なのですが、それで良いというわけなのですか?
 第一、「あの」ラインハルトが(当時イゼルローンに不在であることを知らなかった)ヤンを相手に「単純に「移動要塞の火力と装甲」を持ってすれば、要塞には簡単に接近出来るだろう」と考えていた、などという想定は、銀英伝の世界観からも、ラインハルト自身のキャラクター設定から見ても大きく逸脱しているではありませんか。ラインハルトはヤンを「誰よりも高く」評価していたのですし、ラインハルトが仮にも「戦争の天才」などと呼ばれていたのは、そのような固定観念とは無縁に、柔軟かつ的確な政治的・軍事的判断ができる存在だからだと「作中では」言われていたのではないのですかね? 作品やキャラクターを擁護するつもりで、より致命的かつ痛恨の大ダメージを与えてしまっては意味がありますまい。
 そもそも、他ならぬ私自身がこの一連の議論の最初から一貫して主張しているのは、「要塞および移動要塞の最強の武器は無限の自給自足能力にあり、特にそれを移動可能とする移動要塞の潜在的脅威は計り知れない。にもかかわらず、【アレだけ補給の問題に言及しながら】、そのことに全く気づきもしなかったヤンおよびラインハルトは救いようのない愚か者である」というものなのであって、平松さんの想定は私の主張を全面的に受け入れた上での「開き直り」の類にしかなっていないのですよ。銀英伝の擁護どころか、私の主張に対する反論としてすらもマトモに機能してはいないわけで、二重の意味で問題があると思いますけどね。
 本当に移動要塞や質量弾攻撃に対するラインハルト側の認識や行動を擁護したいのであれば、これに関してもまた「ラインハルトはバカだった」的な結論に到達する可能性がない上での合理的な理由をもってくるべきです。>

 別に開き直ったつもりはありません。冒険風ライダーさんの上記のようなご主張は、以前の議論の時にも拝見した覚えがあり、それを承知の上で書き込みました。自分の見解は冒険風ライダーさんとはまた異なります。
 ラインハルトが「戦争の天才」と呼ばれ、それに相応しい能力と業績を示したのは紛れもない作中事実ですが、
「ラインハルトは事前に移動要塞のエンジンの脆弱性を見抜けなかった。あるいは見抜いていたとしても、その点をシャフトやケンプ、ミュラーらに対し指摘しなかった」
「ラインハルトはケンプやミュラーに対し、移動要塞を質量兵器として用いる事を当初から指示しなかった」
という移動要塞作戦時におけるラインハルトの不手際もまた、歴然たる作中事実です。
 この二つの作中事実を矛盾なく並存させるため、
「ラインハルトという天才もまた、正統派の用兵家が移動要塞に対して抱く先入観から完全には逃れ得ていなかったが、それはラインハルトの天才性を全否定するものではないと、銀英伝世界では認識されている」と自分は結論付けたわけです。現実世界でも、歴史上「名将」「名政治家」「天才」と呼ばれる人間たちが、とんでもない失敗、誤断、見落としをしでかした事例など、探せばいくらでもありますしね。
 それゆえ、「正統派の用兵家が移動要塞に対して抱く先入観」から完全には逃れられなかったラインハルトが「移動要塞の火力と装甲」を持ってすれば、要塞には簡単に接近出来るだろう」と考えてしまったとしても、それはラインハルトに対する批判材料にはなり得ても、彼の作中における天才性やキャラクター(および作品)設定を否定する要素にはなり得ない、というのが自分の見解です。
「だとしたらラインハルトやヤンが移動要塞戦略やイゼルローン質量兵器攻撃について検討しなかった事はどうか。これらも、実施出来るのに気付かなかったとしてもラインハルトやヤンの天才性を否定する要素にはなり得ないと思うか」
というご意見もあるかもしれませんが、これらについては「補給の重要性は作中でしばしば語られている」「ヤン自身も質量兵器攻撃を行った実績がある」といった作中事実から考えれば、気付かなければ作中記述に確実に矛盾すると思いますので、自分としては「移動要塞戦略やイゼルローン質量兵器攻撃には実施出来ない理由があったのでは?」という前提の元、懐疑的なスタンスに立ってみたわけです。


<「途中まで有人制御航行を行い、軌道修正を行いつつ、ギリギリの段階で【全エンジンを停止し、宇宙空間をひたすら飛行している隕石と同じように慣性で航行させ】た上で脱出する」
 「無人艦の遠隔コントロールによる航行で、軌道修正を行いつつ、【ある程度加速がついてきたところで全エンジンを停止し、宇宙空間をひたすら飛行している隕石と同じように慣性で航行させ】る」
 今までの私の主張を掛け合わせても別に何も矛盾は生じませんが、これのどこが問題なのですか?>

 上でも申し上げた通り、アルテナ星系内という「近距離」であれば、自分としても上記のようなご意見には異論はありません。
 ただ、アルテナ星系から遠い、回廊内からなどの「遠距離」の場合は、「有人制御航行」や「無人艦の遠隔コントロール」などで回廊を抜けようとしても、イゼルローン要塞へ慣性航行のみで辿り着ける衝突コースのはるか手前で、接近を察知して要塞から出撃してきた艦隊にエンジンを破壊されてしまうのではないか?という事なのです。あるいは姿勢制御システムで公転速度を調節して恒星アルテナの反対側に隠れ、衝突コースの選択肢をを著しく狭めた上で迎撃するといった手も考えられます。


<事前に小惑星の表層部に艦艇群を貼り付けておいて要塞ごとワープ&通常航行を行い、敵艦隊が近づいてきたら要塞から離れて迎撃に移る、で特に問題はないのではありませんか? これならば速度も維持できますし、迎撃側が移動要塞ないしは小惑星爆弾を事前に発見する時点で、攻撃側もまた敵艦隊の出現を事前に察知しえるわけですから、条件はどちらも全く一緒です。>

 上記のような案は自分も考えたのですが、その場合、移動要塞のワープ時に発生する「時空震」が問題になるのではないでしょうか?イゼルローン回廊にガイエスブルク移動要塞がワープしてきた際、三〇〇光秒先にいた同盟軍哨戒部隊は、慌てて後退していますが、それでもなお時空震の余波を受けています(雌伏篇第六章T、ノベルズ版三巻P139下段)。三〇〇光秒以上先(九〇〇〇万キロ以上)ですら余波を感じるほどですから、「震源」であるガイエスブルク移動要塞の近辺は、想像を絶する振動が走っている事は想像に難くありません。移動要塞の要塞外壁は耐えられても、「小惑星の表層部に」脱着が比較的容易なアンカー(錨)などを使って「貼り付」いているだけの「艦艇群」の対衝撃システム程度で、移動要塞の強烈な振動に耐えられるのでしょうか?
 こういう場合、SF的にはワープ時に時空震などから艦体を守るためにバリアのようなものを展開するものなのですが、小説を読み返してみた限りではそれらしい記述が見当たらないんですよね。もしそういうバリアがあったとしても、大質量兵器を守るバリアは、貼り付いている艦隊をフォローするだけの圏内を持っているのか?もしなかったとしたら、艦レベルでのバリアで大質量兵器の起こす時空震に耐えられるのか?など、疑問は尽きません。
 まあ、実の所、銀英伝のパルス・ワープシステムの詳細についても不分明な部分が多く、これ以上論じても水掛け論にしかならないとは思います。




>パンツァーさん
<したがって、これに対する反論を行う平松重之さんの立場としては、
(A)が、(B)や(C)よりも優越している点を上げる必要があるのではないでしょうか。>
<あまり、根本的な反論を受けているようには思えず、揚げ足取り的、枝葉末節的、な反論を受けているかのような印象を受けてしまっています。
できれば、決定的な根拠を挙げてほしいところですね。
特に、上に指摘しているように、(A)が、(B)や(C)よりも優越している点を上げることができれば、それで片がつくでしょうし、優越している点を上げることができないのであれば、反論自体がなりたたないことになるでしょう。>

 何か誤解があるみたいですね。
 自分は移動要塞論については懐疑論者である事は、前にも3563などで述べました。つまり移動要塞戦略については、「理論的には可能かもしれないが、実行・運用し、成功をおさめるには、様々な障害があるのではないか?」という懐疑的なスタンスの元、意見や疑問を提示させてもらっているのあり、移動要塞戦略の根本を疑問視ないし全否定しているわけではありません。大質量兵器攻撃についても同様です。
 大質量兵器攻撃の根本自体を疑問視・全否定しているわけではない自分に対して「根本的な反論」を求められても、自分としては「そういう事は大質量兵器攻撃に対し根本的に疑問や否定をぶつけている人に言って下さい。自分に言うのはお門違いです」としか申し上げようがありません。
 また、どんなにもっともらしい仮説を立てたとしても、細部において様々な矛盾や疑問点が満ちていては普遍的な説得力など到底持ち得ないでしょう。細部について検討する事もまた重要な行為です。自分としては、「揚げ足取り的、枝葉末節的、な反論」に陥らないよう、「これが解決出来なければ、仮説の信憑性が薄れてしまう」というような「堅固な堤防を決壊させる蟻の一穴」となり得るような疑問や意見を提示するように努めているつもりです。


<しかし、「慣性航行しか出来なくなる質量兵器」ではなく、「有人もしくは無人の誘導による質量兵器」であれば、「回廊内を抜けるのは不可能」や「要塞の姿勢制御システム」という問題は解決しますよね。
また、「トゥールハンマーによる迎撃などを織り交ぜて質量兵器による攻撃を無効化できる」という問題についても、質量兵器の数量で全然対応できるのではありませんか。
No.6349において既に述べているように、100でも200でも質量弾を用意すればよいだけの話です。>
<これは、別になんの問題もないでしょう。
脱出した後は、有人誘導式の場合は、それ以上の誘導ができないことになりますが、
その時点では、要塞の回避不能距離にまで接近されているわけですから、もはや誘導する必要などないわけですよ。
また、作品に登場した無人艦と同様に考えれば、無人の誘導式で、質量弾を衝突させても良いですね。>


「有人もしくは無人の誘導による質量兵器」については、上で冒険風ライダーさんに申し上げた通りです。
 質量兵器の数量についてですが、近距離からの発射が実施出来れば有効でしょう(近距離まで近付けるかどうかは、また別問題です)。ですが、遠距離からの場合、100や200の質量兵器を、狭隘な回廊内で一斉に発射は出来ないでしょう。狭い回廊内で質量兵器がひしめき合っては、いかに誘導システムがあっても、質量兵器同士が邪魔しあってコースを制限してしまうか、下手をすれば質量兵器同士が衝突する可能性も生じますしね。その場合、いち早く先行してきた高速艦隊で質量兵器群を迎撃して停止する前のエンジンを各個撃破する余裕もあるでしょう。
 また、無線誘導の場合、遠距離からの精密な誘導が可能なのかも疑問ですね。無人艦の突入作戦は、第五次イゼルローン攻防戦時に同盟軍のシドニー・シトレ中将や、第八次イゼルローン攻防戦時に帝国軍のナイトハルト・ミュラー大将が実施(ミュラーの場合は未遂ですが)していますが、いずれもトゥールハンマーの射程内という近距離から行われています(外伝「黄金の翼」、徳間ノベルズ「夜への旅立ちP211〜P212および雌伏篇第七章W、ノベルズ版三巻P183〜P184)。


<平松さんの推測において「近距離」では、
「「アルテミスの首飾り」破壊の場合」とは異なり、
「要塞には一個艦隊もの戦力が存在しており」
質量弾攻撃が迎撃されて成立しない、ということですね。
これも、当然上で述べているように、迎撃側の艦船の数量よりも、攻撃側の艦船の数量の方が多いならば、当然、迎撃艦隊が攻撃側の艦隊に拘束されて、有効な迎撃ができなくなるだけの話です。
全然、質量弾攻撃の障害にはなりえないでしょう。>

 ですから、近距離まで近付く事が出来、そこから発射した上での質量兵器攻撃の有効性までは、自分は否定ないし疑問視してはいません。問題なのは、その近距離まで近付く事が出来るかどうかという事を問うているのです。


<これは、普通の艦隊においても、高速艦や低速艦があれば、これらの全体としての艦隊の速度が低速艦の速度に合わせられるだけの話です。
こんなのは、別に、艦隊の速度に要塞を合わせればよいだけなのですから、なんの問題もないのではありませんか。
大体、事前に艦隊を、質量弾の移動ポイントに先立って移動させるようにすれば済むだけの話でしょう。>

 あのですね、自分は「移動要塞の場合は内部に艦隊を収容して航行出来るので、艦隊よりも速い移動要塞の航行速度でイゼルローン要塞に接近出来るわけですが、大質量兵器の場合は護衛艦隊の速度に合わせて航行しながらイゼルローンに近付かなければならないから、結果として移動要塞の場合よりもはるかに航行速度が遅くなり、防御側に時間的余裕を与えてしまう」と申し上げているのですよ?上記の案では、結局は大質量兵器よりも遅い艦隊の速度に合わせて作戦を実行する事には変わりがないのですから、全く反論になっていないように思われます。


<自動追尾」が必要となるのは、あくまでイゼルローン要塞に「質量弾の回避能力」がある場合に限りますよね。
明らかに、イゼルローン要塞に「質量弾の回避能力」がある、と指摘できる根拠を平松さんが示すことができないのであれば、「質量弾の回避能力」については、論拠に用いてはならないのではありますまいか。
また、冒険風ライダーさんの上げた具体例は一例に過ぎないものであって、この例でもって、質量弾攻撃の性質を限定してしまうのは、あまりにも狭い解釈ではありませんか。ケンプの行った要塞特攻自体が、質量弾攻撃の範疇から外されてしまうことにもなりますよ。>


 イゼルローンの回避能力については、6333で申し上げた通り、あくまで(それなりに合理的な理由で立てたつもりの)仮説です。この仮説については、パンツァーさんも6349で「ある程度の周回能力があると考える方が、回廊の防御手段として機能させる上で、妥当でしょうね」とおっしゃっておられませんでしたか?
「遠距離」からならば、万一追尾システムを持たない質量兵器が回廊内を抜けれたとしても、イゼルローンの公転速度を調節する事によって、肩透かしを食わせる事が出来るのではないか?と申し上げているのです。
「質量弾攻撃の性質を限定」などと言われても、具体例が一例しか存在していない以上、その一例に対してしか疑問ないし反論を提示しようがないというだけの事です。それでしたら、冒険風ライダーさんに対し他の例を幾つか挙げるように申し上げるのが筋でしょう。


<「回廊の戦い」で、帝国軍が「「数的優位を十二分に生かすことが」出来なかった」のは、機雷原のせいですね。機雷原の突破に際して、「五本のトンネル状の通路がうがたれる」(銀英伝8乱離篇第四章Uノベルズ版P84)とあって、「我々は穴から出てくる瞬間を狙撃されて、反撃の法もなくなぎたおされることになる」(同P80)になったわけです。>

 乱離篇第三章V(ノベルズ版第八巻P64上段)のヤンの台詞
<「帝国軍は不世出の皇帝と多くの名将を擁している。彼ら全員にとって、イゼルローン回廊はせますぎる。吾々の活路は、そのせまさにある。せいぜい利用させてもらうとしよう」>

 乱離篇第四章T(ノベルズ版第八巻P79下段)
<大兵力が大兵力として機能するためには、第一に補給を完全にし、第二に情報を正確に伝達し、第三に遊兵をつくらぬことが必要であった。そしてロイエンタールとミッターマイヤーは、イゼルローン回廊という特殊な地形を前に、第三点に留意せざるをえなかったのだ。>

 上記の文章はいずれもヤン艦隊が機雷源を回廊入口に敷設した(乱離篇第四章T、ノベルズ版第八巻P80上段)という情報が入る以前のものです。これらの文章を読む限り、機雷源が敷設されてようといまいと、狭隘な回廊内で一定数の大兵力の展開が不可能である事は明白でしょう。
 現にビッテンフェルトとファーレンハイトがヤンの策により回廊内に引きずり込まれた回廊の戦いの序盤戦で、ビッテンフェルトとファーレンハイトの率いていた艦隊は合わせて三万隻で、ヤン艦隊の総数二万隻を上回っていましたが(乱離篇第三章V、ノベルズ版第八巻P69下段)、「むりに並行して布陣するから、せまい回廊のなかで行動が制約さ」れてしまい(P66上段)、ヤン艦隊に大敗北を喫してしまったのです。無論この時点では機雷源は回廊入口には敷設されておりません。


<「球体の「周囲」と言えば自分には円の中心を通る大円沿いとしか思えないのですが…」と平松さんは述べておられますが、「球体の周囲」というような用語が作品にもちいられているでしょうか?>

 6351で引用しているのですが、読んでいただけてないのでしょうか?↓

雌伏篇第四章U(ノベルズ版三巻P97下段〜P98上段)
<ガイエスブルク要塞の移動計画は、ケンプ提督の精力的な指揮のもとで、急速に進行しつつあった.要塞自体の修復、周囲に十二個のワープ・エンジンと同じく十二個の通常航行用エンジンを輪状にとりつける作業が同時におこなわれ、三月半ばには第一回のワープ・テストが実施される予定となっている。>

 まあ、これに関しては前にも「この辺りの判断は第三者にお任せします」と申し上げておりますので、これ以上論じるつもりはありません。




>冒険風ライダーさん、パンツァーさん

 さて、議論もいささか煮詰まり始めておりますし、年度末及び年度始めを迎えるにあたって、各々何かと忙しいと思いますので、この辺りでひとまず議論を終わらせたいと思うのですが、いかがでしょうか。


No. 6382
Re:ちゃんと銀英伝本編を読むべきでは?
よこやり 2005/03/26 18:37
確かに双方の陣営で構想はできることには、同意するけど、
運用できるかというと天文学的な距離があるんだけどねぇ。
わかんないかなぁ・・・・。
原爆は原理は日本でも知っていたけど、
とてもとてもww2当時にできるととは普通は思えないけど。
もっと単純にB29のような爆撃機を作れなかったんだよ日本は。
当時はB29の存在も性能も知っていたのに。
それからヤンは、歴史家志望の文系人間という描写だから
技術論には詳しくないかもしれない


No. 6383
全く分かっとらんな
不沈戦艦 2005/03/27 00:31
 第二次大戦の時、日米間で技術格差があったという史実と、この場合の「銀英伝を執筆するにおいて田中芳樹が考えた設定」との間に、一体何の関係があると言うのですか?

 作者が考えていないことを、「史実」から勝手に持ち出して、銀英伝に適用してどうするんでしょうか。そういうことを言いたいのなら、銀英伝作中から「第二次大戦の時、日米間には明確な技術格差があった。同じように帝国と同盟の間にも、どうしようもないほど埋められない技術格差があったのだ」とでも書いてある内容を、「銀英伝作中」から見つけてきて下さい。

 話はそれからですね。


No. 6384
Re:もうひとつの移動要塞論争 相互殺戮になった場合
不沈戦艦 2005/03/27 00:38
>  これに関しては、私が以前にタナウツで議論した際の投稿が回答となるでしょう↓
>
> 銀英伝考察3 過去ログE 投稿No. 1840
> <この辺りに関してはそれこそ「徹底的に無視する」というのが一番懸命な判断ですね。極端なことを言えば、移動要塞内で民主主義を実現させてしまえば、ヤンが理想としているであろう民主主義の理念は維持できるわけですから、外の世界がどうなろうと知ったことではないのですし。
>  外の世界にとっては非常に迷惑な話でしかないでしょうが、そうでもしなければヤンは勝てませんし、ましてや民主主義を死守することなどできないのです。はっきり言って、勝利のためには少々の犠牲(!?)はやむをえない、と開き直るしかないのですよ。
>  まああの面々がそんなことに耐えられる強靭な神経を持っているとは確かに思えないのですけどね。自分でもシミュレートしてみてあまりにも非現実的な想定だとは思いましたよ。しかしこんな想定でも「イゼルローン回廊内に閉じこもって回避不能の敗北を喫する」よりははるかにマシだとは思いますけど。>
>
> 銀英伝考察3 過去ログO 投稿No. 3683
> <すっかり忘れ去られているようですが、同盟崩壊後は旧同盟領といえども法的にも道義的にも立派な「帝国領」であり、旧同盟市民にもまた「帝国民」としての権利と義務が認められます。そして帝国政府には、旧同盟領と旧同盟市民を統治する権利と共に、領土と国民を守る義務もまた新たに課せられるのです。そんなところでわざわざ「自国民」を人質策の同等報復として虐殺するなどという選択は、今後の旧同盟領統治や旧同盟市民の人心掌握の観点から見て明らかに自殺行為でしょう。追い詰められた旧同盟市民側が各地で叛乱と武力闘争を頻発させることによって、今後の統治に重大な支障をきたすことにもなりかねません。帝国が旧同盟領を統治するのではなく、何もかも全て破壊するつもりなのであれば話は別でしょうが。
>  それに、実は移動要塞側にとっては、帝国領はもとより旧同盟領でさえも、最悪の場合は切り捨てても一向にかまわない対象でしかありえないのですよ。「民主主義を擁護する」という観点から言えば、極端なところ移動要塞内に居住する人間を除く全ての人類を滅ぼし、誰もいなくなった荒野に改めて民主主義を再建しても、それで充分に目的は達成されるのですから。旧同盟領に対してはひたすら帝国に対する憎悪を煽る宣伝を行い続け、帝国と旧同盟市民を対立させ続ければ、帝国側もそうそう簡単に同等報復に出ることはできないでしょうし、やれば自殺行為となります。仮に帝国側が移動要塞を滅ぼしたところで、前述のように旧同盟領の今後の統治に重大な支障が生じるのは確実ですからね。
>  また、仮に万が一そのような事情を黙殺してまで帝国側が「自国民」に対して同等報復を仕掛けてくるというのであれば、予め「旧同盟領の惑星に対して同等報復が行われたことが認められた場合、交渉を行う意志はないものと見なし、我々はすぐさま惑星攻撃を遂行するものとする」といった類の条件を、脅迫する際に一緒に提示しておけば済むことです。そうすれば、移動要塞側が惑星攻撃を行うことになる責任の全てを帝国側に押しつけることも可能となりますし、場合によっては帝国政府内や帝国の国民などから和平を求める声が出てくる可能性すらも出てきます。
>  最終的には移動要塞のみを国家として機能させていけば良いだけの「身軽な」移動要塞側と、旧同盟領をも含めた広大な領域を全て「統治」していかなければならない帝国との差がここで出てくるわけです。この差は、彼我の戦力差や戦略的格差などを全て覆すだけの巨大かつ圧倒的な政治的格差たりえるのではないでしょうか。>
>
>  さらに付け加えれば、そもそも他ならぬヤン自身がわざわざ「全宇宙に皇帝ラインハルトとローエングラム王朝の宗主権を認め」た上で「内政自治権を有する民主共和政の一惑星の存在を認めさせよう」などという「同盟の(それも大部分の)一般市民を見捨てて、自分たちだけ逃避する」戦略方針を策定しているのであり、しかもその戦略の中では、将来的には「その惑星を除いた全宇宙を専制の冬が支配する」ことが前提どころか当然視されてすらいるわけです。そうであれば、その「他ならぬ自分自身が見捨てた」はずの人間がどうなろうが知ったことではない、と考えることこそが「ヤンの戦略方針の一貫性」から見ても至極当然のことであるはずでしょう。
>  しかも政治的に見ると、その手の帝国による報復戦略が発動された場合、「宇宙的規模の大量虐殺」の発生によって、結果的にはヤンが欲するであろう「その惑星を除いた全宇宙を専制の冬が支配する」状況が出現することにも繋がるわけで、むしろヤンにとっては「己の戦略方針および政治予測にも合致する」願ったり叶ったりな話でさえあるはずでしょう。もちろん、帝国側は「ヤン側の戦略爆撃に対する報復措置であり、全ての責任はヤン側にある」と主張はするでしょうが、この場合、事実や真相はさほど問題ではなく、「帝国が俺達を虐殺しようとしている」という認識と解釈こそが最も重要となるのですし、すくなくとも同盟側に直接手を下すのは事実からしても「帝国」となるわけですから、「虐殺」される旧同盟領の人間の大半が憎悪の目を向けるのは、征服者に対する反発も手伝って、ほぼ確実に帝国とならざるをえないでしょうね。
>  かくのごとく自分が望む方向に事態が進展していくのに、そして何よりもヤンは自分から率先して「同盟の(それも大部分の)一般市民を見捨てて、自分たちだけ逃避する」という戦略方針を打ち立てているというのに、何故そこで躊躇しなければならないのでしょうか? もしヤンがその性格故に、他ならぬ自分が見捨てた旧同盟市民に振り下ろされる「圧制と虐殺」に耐えることができずに帝国に屈するというのであれば、それはヤンを信じ、ヤンに付き従ってきた人達、そして何よりもヤン自身とヤンが考案した戦略方針そのものに対する重大な裏切り行為であり、「民主主義を擁護する」以前の問題です。
>  本当にヤンが「民主主義の芽を後世に残す」と考えるのであれば、(ヤンの性格とは全く合致しないものであっても)これくらいのことは当然考慮し、また覚悟しておくべきなのですよ。そもそも「オーベルシュタインの草刈り」や、バーミリオン会戦時における「ミッターマイヤー・ロイエンタールによるハイネセン無差別爆撃降伏勧告」の事例を見れば分かるように、その手の「脅迫」の類は別に「移動要塞ゲリラ戦略」の有無に関わりなく出てくる可能性が高いものなのですし。そういうことに耐えられないというのであれば、最初から「民主主義を擁護する」などという「(ヤン自身の言によれば)願望の強力なものにすぎず、なんら客観的な根拠を持つものではない」信念など投げ捨て、とっととラインハルトに降伏なり帰順なりするべきだったのです。それこそが、あの時点では「ヤンの【性格】にも【人命尊重という信念】にも完全に合致する【最も賢明かつ戦争・流血が回避できる方策】であったことは間違いなかったのですから。
>  ヤンは自分が立てた戦略方針がどういうことを意味していたのか、自分で全く分かっていなかったとしか思えないのですがね、私は。


「イゼルローン移動要塞の帝国領攻撃に対する反撃として、帝国軍が旧同盟領住民を殺戮した場合でも、そんなものは無視すれば良い」とのことですが、ヤン一党は偽悪ぶっている竜堂四兄弟ではないですからねぇ。そういう手段に出られた場合は、精神的に耐えられないのではないかと。まあ、そういう「感情論」は捨象することにしましょう。それで、「限りなき報復合戦になってもやむなし」ということですが、「住民殺戮」は戦力的に充実している帝国軍の方が、規模が大きくかつ素早くやれるのではないですか?イゼルローンしか戦力がないヤン一党とは違うんですから。戦力が違うのですから、帝国軍側から先制して「これ以上暴れるのなら、旧同盟領住民を全員抹殺する」との脅迫をヤン一党に突きつけることは可能です。そして、イゼルローン移動要塞がそれに従わないのなら、例えばですが「十分ごと」にでも、一つ一つ「皆殺し星系」を増やして行けばいいんですよ。この場合、「ラインハルトにはそんな命令を出せない」はなしですよ。「ヤンにはそんな命令は出せない」を最初から排除した上での「イゼルローン移動要塞による帝国領攻撃」論なんですから。当然、同条件を帝国側にも適用すべきです。今回は「人倫無視の大量虐殺合戦」は互いに「是」としなければ「論」が成り立ちませんので。

 いくら「旧同盟領住民」はもう「新帝国領住民」であって、帝国からすれば自領土だしヤン一党にとっては責任を負うべき相手ではないとは言っても、ヤン一党が求めていることは「帝国と取引して、旧同盟領の一部でいいから民主主義体制を保存すること」なんですから、その為には「旧同盟領の一部星系とその住民たち」が絶対に必要になる訳です。その旧同盟領全てを「人質」にされた場合は、屈伏せざるを得ないでしょうよ。旧同盟領の全住民を抹殺されてしまった場合は、武力抵抗を続ける意味がないんですから。「そんなものはどうでもいい。旧同盟領の住民の安全についての責任まで負えない」と彼らが考えているのなら、暴れる意味が全くありません。だったらそんなものは放っておいて、さっさと逃げ出して「第二次長征一万光年」に入ればいいだけですからね。「旧同盟領の一部領有を目指している」のに「旧同盟領の住民の安全について、責任は一切負う必要はない」と主張するのには、論理的に無理がないですかね?繰り返しになりますが、「旧同盟領の住民の安全などどうでもよく、イゼルローンさえ健在ならOK」だというのなら、何でさっさと逃げ出さないのか、全く意味不明で訳が分からない行動でしかないと思いますがどうですか。イゼルローンが健在ならOKであるのに、時間と労力と人命を無意味に費やして、帝国領攻撃をせにゃならんというのでは、帝国に対する嫌がらせか八つ当たりにしかならんでしょうよ。「もし帝国に旧同盟領住民を全員抹殺されてしまったとしても、イゼルローン移動要塞も時間をかければ同じことが可能だから報復できるので、それが抑止力になる」ってのは、なんぼなんでも無理でしょう。「住民抹殺に要する時間の桁が全然違う」ことは、この「チキン・ラン」における帝国軍の絶対的優位を保障するものです。旧同盟領住民が全て抹殺されてしまった後、イゼルローン移動要塞が「報復」だけを目的として、帝国領攻撃を繰り返したところで、そんな行動に意味はないですよ。もう、「目的」は果たせないことが、分かり切っているんですから。また、仮に旧同盟領住民を全て抹殺したところで、帝国軍にとっては「征服の労力が無駄だった」だけで、「目的」が消滅する訳じゃないです。「人類社会の統一」は適いますからね。「逆らうものは皆殺し」になったというだけで。帝国側はヤン一党の「目的」を圧殺できるのに、ヤンには帝国の「目的」を潰すことはできない。これでは、やる前から勝負はついています。いくら何でも、「ヤン一党が手に入れて民主主義を保存する惑星は、帝国領でもかまわない」と言うのは無理がありますし。


No. 6387
残る問題:回廊の狭さについて
パンツァー 2005/03/30 20:46
返答の足りない点があればご指摘願いたいですが、
現在のところ、平松さんが指摘している質量弾攻撃の否定点は、「狭隘な(イゼルローン)回廊内で一定数の大兵力の展開が不可能である事」、だけのようですね。

No.6377の平松さんの記載
>  上記の文章はいずれもヤン艦隊が機雷源を回廊入口に敷設した(乱離篇第四章T、ノベルズ版第八巻P80上段)という情報が入る以前のものです。これらの文章を読む限り、機雷源が敷設されてようといまいと、狭隘な回廊内で一定数の大兵力の展開が不可能である事は明白でしょう。
>  現にビッテンフェルトとファーレンハイトがヤンの策により回廊内に引きずり込まれた回廊の戦いの序盤戦で、ビッテンフェルトとファーレンハイトの率いていた艦隊は合わせて三万隻で、ヤン艦隊の総数二万隻を上回っていましたが(乱離篇第三章V、ノベルズ版第八巻P69下段)、「むりに並行して布陣するから、せまい回廊のなかで行動が制約さ」れてしまい(P66上段)、ヤン艦隊に大敗北を喫してしまったのです。無論この時点では機雷源は回廊入口には敷設されておりません。

No.6367「質量弾攻撃のメリットについて」で、私(パンツァー)が指摘しているように、質量弾が有人誘導で、しかも多量(100でも200でも)に用いる場合には、なんら問題が無いことについては、No.6377「Re:「遠距離」と「近距離」からの大質量兵器攻撃の相違と疑問点 」でも、平松さんは否定の根拠を挙げてないので、これに対する反論はできなかったものとみなします。

しかも、有人誘導式や質量弾の個数を多数にするのは、平松さんが指摘する「イゼルローン要塞の回避能力」等を最大限過大に考慮した場合の話であって、このような配慮(有人誘導等)をすることなく、アルテミスの首飾りなどと同様に簡単に撃破できる、ものかもしれないのです。むしろ、作品の展開からすれば、こちらの方が妥当でしょう。


>  さて、議論もいささか煮詰まり始めておりますし、年度末及び年度始めを迎えるにあたって、各々何かと忙しいと思いますので、この辺りでひとまず議論を終わらせたいと思うのですが、いかがでしょうか。

したがって、簡単にまとめますと、
平松さんが指摘している質量弾攻撃の問題点は、現在のところ、
「狭隘な(イゼルローン)回廊内で一定数の大兵力の展開が不可能である事」に極言されてしまっているわけで、
No.6333「イゼルローンへの質量兵器攻撃についての一考察」などで当初、平松さんが指摘されていた点などは、ことごとく問題のないものとされたわけです。
つまり、議論には大きく伸展があった、と結論できるのではないでしょうか。



「狭隘な(イゼルローン)回廊内で一定数の大兵力の展開が不可能である事」について
ビッテンフェルトとファーレンハイトの敗退は、ヤンの艦隊によって、両翼より側面攻撃を受け続けたことによるものです。

「ほとんど一瞬に、ヤン艦隊の陣形はひきのばしたV字形に変形し、縦深陣となった」(乱離篇第三章Vノベルズ版P68)
「ビッテンフェルトとファーレンハイトは合流をはたし、(中略)帝国軍の両将は、直後に殺到すべき火線の輪の中心に兵力を集中させてしまったのである」(乱離篇第三章Vノベルズ版P70)

「それと予測していたところで、他の選択の途は無かった。味方の孤立を無視することができようはずもなかった。」(乱離篇第三章Vノベルズ版P70)

上の状況を解説してみましょう。
ビッテンフェルトの艦隊は、ヤンの策に乗せられて、回廊内に引きずり込まれたため、回廊の中央部にいたわけです。回廊の中央部に引き込まれるように誘導された、と言い換えてもよいでしょう。このため、回廊の縁部分に展開しているヤン艦隊より上下左右より砲撃を受けて、不利な戦闘を強いられます。ビッテンフェルトを支援すべくファーレンハイトの艦隊も回廊内に進入しますが、「味方の孤立を無視することができようはずもなかった。」(乱離篇第三章Vノベルズ版P70)ので、同じく回廊内の中央部に突入するわけです。回廊の同じ中央部で、ビッテンフェルトとファーレンハイトとの艦隊が、「むりに並行して布陣するから、せまい回廊のなかで行動が制約さ」れてしまう(P66上段)ことになったわけです。

例えば、ファーレンハイトが当初から、ヤンの意図を察していて、ビッテンフェルトの支援に関わり無く、回廊の縁部から艦隊を進入させていれば、回廊の縁部に展開しているヤン艦隊によって、「V字形に変形し、縦深陣となった」(乱離篇第三章Vノベルズ版P68)状態で、攻撃されることも無かったでしょう。

------------------- -------------------
    ヤヤヤ フ ヤヤヤ
ヤ          フ    ヤ
  フフビビ  ヤ           ビビ  ヤ
       ヤ           フ    ヤ
    ヤヤヤ            フ ヤヤヤ
------------------- -------------------
(作品での展開)       (兵力配置が適切の場合)


上で言いたいのは、ビッテンフェルトとファーレンハイトの艦隊が、ヤン艦隊に敗れることは無かったであろう、という作品の批判ではありません。
「せまい回廊のなかで行動が制約さ」れてしまう(P66上段)というのは、あくまで、包囲攻撃を掛けるには「狭い」ということに過ぎません。回廊の断面を面で押していく分には、つまり大兵力で「右翼」「中央」「左翼」の全領域に十分な兵力を配置して攻撃することは可能であるのです。このような攻撃方法を取れば、数的に劣勢なヤン艦隊では、当然、防御することはできないでしょう。
それゆえに、こういう奇策が成功しない限りは、ヤンは、回廊に機雷原を敷設して、ラインハルトの大艦隊に対抗する必要があったわけです。

ですから、質量弾攻撃を防ぐべく、ヤンが回廊内に艦隊を配置して、相手を引き込んで迎撃する(回廊の中央部に引き込んで上下左右より側面攻撃を加える)奇策を実行するにせよ、限界があるわけです。
帝国側と同盟側の両方の回廊に、艦隊兵力を常に張り付けておくこともできないでしょうし。

回廊に機雷原がないのであれば、ラインハルトの大艦隊は、ヤン艦隊の迎撃を受けていくらかは消耗するにしても、作品の展開のような大損害を受けることはないでしょうし、機雷原があるとしても、質量弾攻撃を用いることで、その機雷原の突破を図ることも可能なわけです。

また、移動化要塞の要塞主砲を、機雷原破壊の一手段にする点についても、ガイエスブルグ要塞より質量の小さな要塞であって、同じ帝国軍が改造するものであれば、まったく問題にならないでしょう。
イゼルローン要塞の移動化に関しても、帝国軍ではなく「同盟軍」が、
ガイエスブルグ要塞より質量の大きなイゼルローン要塞を移動化する点、が問題になっていたわけですし。

作品の展開に沿うならば、一旦、回廊外へと逃れたメックリンガーの艦隊を、ラインハルトの突入時には、再び回廊内へと突入させれば、それだけで事はすんでいたようにも思えますね。如何に通信に時間が掛かると言っても、ビッテンフェルトとファーレンハイトの艦隊の敗退から、ラインハルトの突入時までには、十分な時間がありますし。特に、このとき、メックリンガーの艦隊にも、質量弾をもたせておけば、艦隊の守備のないイゼルローン要塞を、何の妨害もなく質量弾で攻撃できたでしょう。

反論ポイントがないことを認めていただけますと、私としても楽なのですが。。。。


No. 6389
Re:この辺りで終わりにしておきます
平松重之 2005/04/05 02:20
<返答の足りない点があればご指摘願いたいですが、
現在のところ、平松さんが指摘している質量弾攻撃の否定点は、「狭隘な(イゼルローン)回廊内で一定数の大兵力の展開が不可能である事」、だけのようですね。>
<したがって、簡単にまとめますと、
平松さんが指摘している質量弾攻撃の問題点は、現在のところ、
「狭隘な(イゼルローン)回廊内で一定数の大兵力の展開が不可能である事」に極言されてしまっているわけで、
No.6333「イゼルローンへの質量兵器攻撃についての一考察」などで当初、平松さんが指摘されていた点などは、ことごとく問題のないものとされたわけです。

 本来は冒険風ライダーさんのお返事を待って投稿しようと思ったのですが、10日近く経ってもお返事がないので、投稿させて頂きます。
 試しに冒険風ライダーさんと自分の議論の流れを要約してみましょう。




・回廊内という(イゼルローン要塞からの)遠距離からの攻撃の場合、慣性航行しかできない質量兵器は回廊を抜ける事はできないのではないか?また、奇跡的に抜けれたとしても、恒星アルテナの周りを公転しているイゼルローンには姿勢制御システムがあると考えられ、それを駆使すれば慣性航行しか出来ない質量兵器に肩透かしを食わせられるのではないか?
・近距離からの攻撃の場合、回廊内でのワープは作中記述を見た限り不可能と考えられるので、通常航行で近付かねばならないが、その場合イゼルローンの哨戒網に引っかかり、近距離に近付く前にヤン艦隊に迎撃されてしまうのではないか?

・作中の「アルテミスの首飾り」破壊は、質量兵器で完璧な成功をおさめられた。それよりも条件が緩いイゼルローンへの質量兵器攻撃が事前予測で却下されてしまうほど成功率が低いとは思えない。
・近距離からの攻撃は、作中で「要塞VS要塞」が実現している。ラインハルトやシャフトはガイエスブルク移動要塞がイゼルローンに肉薄できる事は疑っていなかった。要塞からの迎撃が可能なら、なぜ肉薄できる事に懸念を持っていなかったのか?

・「アルテミスの首飾り」破壊は、「質量兵器による攻撃を想定していなかった」「回避しても間に合わないと判断し攻撃を行った」「アルテミスの首飾りに対する信仰が地上からの回避命令を遅らせた」「氷塊の速度が速すぎて回避を指示する暇がなかった」という理由が考えられるが、氷塊が撃ち出された距離や亜光速に達するまでに要した時間などの詳細が分からないので何とも言えない。いずれにせよ、バーラト星系での近距離からの攻撃と、イゼルローン回廊内での遠距離からの攻撃は前提条件が異なるのではないか?
・作中で「要塞VS要塞」が実現したのは、イゼルローン司令官のヤンが不在だったからであり、それゆえ部下たちはヤンが戻ってくるまで能動的な行動を取る事を控え、移動要塞の接近を許してしまったのである。また、作中ではラインハルトもシャフトも、移動要塞のエンジンの脆弱性に事前に気付かなかった。これは「移動要塞の利点は火力と装甲」という「正統派の用兵家が移動要塞に対して抱く先入観」に囚われていたためであり、それゆえ肉薄できる事に懸念を持たなかったのではないか?

・「アルテミスの首飾り」破壊の際、ヤンは自由に衛星軌道を移動できる「首飾り」と同じ数の氷塊しか用意していなかったし、作中のヤンの台詞からみても自信満々であった。これは100%命中させる事ができるという確信があったからに他ならない。これから考えれば、自力で推進できない要塞が質量兵器を回避できるというのはおかしな話である。また、イゼルローンが存在するアルテナ星系も回廊内では安定した宙域であるだろうし、こちらの定義する「遠距離」は相手の火力が届かない位置でありさえすればよいので、充分に質量兵器の加速が得られる星域の内部や外縁部まで近付ければよい。また、それでも問題があるのなら、質量兵器を有人ないし無人での制御航行でイゼルローンに衝突させればよい。イゼルローンの姿勢制御システム程度では回避は不可能である。
・「要塞VS要塞」当時、イゼルローンにヤンが不在である事は帝国側は知らなかった。状況がどうあれ、「要塞VS要塞」を実現させるには、イゼルローン側の行動を予測し、対処法を考えねばならないはずだが、ラインハルトやシャフトは技術問題以外に「要塞VS要塞」が実現されない可能性を考慮していない。
 移動要塞が発見されても、イゼルローン側は、発見・報告→司令部の協議・決定→出撃準備→全軍出撃完了→陣形を編成・維持しつつ急行という手順を踏まねばならないのでタイムラグが生じる。このタイムラグこそが、移動要塞が遅くとも24時間以内にイゼルローンに肉薄できる隙を作ると考えられる。それゆえ、ラインハルトやシャフトは「要塞VS要塞」の実現を疑わなかったのではないか?

・こちらの「遠距離」は、もっと遠い距離からの攻撃を想定していたので、認識にズレがあった。
 アルテナ星系外縁内という(こちらの定義する)「近距離」にまで接近する場合、機動兵力及び制宙権を失った救国軍事会議の「アルテミスの首飾り」と異なり、一個艦隊を要し、制宙権を握っているヤン一党のイゼルローンの「近距離」にまで近付けるのか?また、そちらの主張通り「途中で全エンジンを停止」してしまうのなら、その時点で有人ないし無人での誘導は不可能になるのではないか?
・ラインハルトは当初は移動要塞のエンジンの脆弱性や、移動要塞の質量兵器としての可能性に気付かなかったのであり、「正統派の用兵家」が抱く移動要塞への先入観から完全に逃れ得ていなかったと思われる。それゆえ、「要塞VS要塞」の実現を疑わなかったのではないか?シャフトは自信過剰な人物である事は作中にも記載があり、単純に自分のプランの成功を疑わなかっただけではないか?
 また、作中記述から推測すると、移動要塞がイゼルローンに肉薄するまでの時間が24時間以内とは断定できない。最長の場合を考えれば、タイムラグを考慮してもイゼルローンから遠距離で迎撃する事もできるのではないか?更に言えば、そちらの定義に従えば、大質量兵器のワープ距離や航行速度は艦隊のそれよりも速いので、護衛艦隊に合わせてスピードを落とさねばならず、それによって移動要塞の場合に比べて防御側に時間的余裕を与えてしまうのではないか?かといって護衛艦隊を連れずに行けば、要塞から高速艦隊が急行してきた場合、為す術もなくエンジンを破壊されてしまうのではないか?

・「【軌道上を自由に動く】アルテミスの首飾り」が避けれず、攻撃側が回避される事を考慮していなかった質量兵器攻撃を、本来回避機能を持たず、移動要塞に肉薄されたイゼルローンが回避できるとは思えない。星系の制宙権がどうあれ、それで「首飾り」の回避能力に問題が生じるとも思えない。艦隊が「首飾り」を牽制したのならともかく、実際に「首飾り」を相手にしたのは氷塊のみであり、「首飾り」が回避行動を取るのにハードウェア的には問題はない。そちらの主張する「ソフトウェア的な対処の遅れ」は希望的観測であり、その場合、失敗の可能性をヤンが考慮していないのはおかしいのではないか?
・移動要塞の制御航行については、「途中まで有人制御航行を行い、軌道修正を行いつつ、ギリギリの段階で【全エンジンを停止し、宇宙空間をひたすら飛行している隕石と同じように慣性で航行させ】た上で脱出する」
 「無人艦の遠隔コントロールによる航行で、軌道修正を行いつつ、【ある程度加速がついてきたところで全エンジンを停止し、宇宙空間をひたすら飛行している隕石と同じように慣性で航行させ】る」
 で問題はないのではないか?
・移動要塞がイゼルローンに肉薄する前に迎撃されてしまう事が予測されるのなら、その対処法も事前にラインハルトは検討しなければならないはずである。全く検討しなかったラインハルトは、こちらが想定していた以上のバカという事になる。
 第一、ラインハルトが高く評価しているヤンを相手に「移動要塞の火力と装甲でで簡単に接近できる」などと考えるのは、政治的・軍事的天才であるラインハルトのキャラクター設定を逸脱するものであり、擁護するつもりでそのキャラクターに、より致命的なダメージを与えてしまっている。
 そもそも、「無限の自給自足能力こそが要塞及び移動要塞の最強の武器であり、その潜在的脅威に気付かなかったヤンとラインハルトは愚劣である」というのが、こちらが一貫して主張する所であり、そちらの想定はこちらの主張を受け入れた開き直りにしかなっておらず、銀英伝の擁護にも、こちらへの反論にもなっていない。移動要塞や質量兵器攻撃について擁護したいのなら、「ラインハルトはバカだった」という結論以外の理由を示すべきである。
・質量兵器と護衛艦隊の航行速度の差については、質量兵器の表面に護衛艦隊を貼り付けてワープ及び通常航行させ、敵艦隊が迎撃してくれば護衛艦隊が質量兵器から離脱して応戦すればよい。更に回廊内で移動要塞がワープアウトした作中事実から考えれば、イゼルローンから更に近い宙域にワープできる可能性があり、そうなればイゼルローンへの距離を詰めてより短時間で質量兵器攻撃に移行でき、迎撃側には時間的余裕がなくなり、ますます不利になる。

・こちらは「行動に制限がある『首飾り』の欠点を補う第十一艦隊が失われた事により、クーデター派はバーラト星系の制宙権を失い、ヤン艦隊の接近を容易に許してしまった」と言いたかったのであり、制宙権を握れば「『首飾り』の回避能力に問題が生じる」と思っているわけではない。
 一連の議論を見ていると、こちらの主張している「近距離」と「遠距離」の質量兵器攻撃についての意見がごっちゃになっているように見える。
「アルテナ星系から遠い遠距離からの攻撃は、入り組んだ回廊内を(慣性航行している)質量兵器が抜けるは不可能だろうし、万一抜けれても艦隊やトゥールハンマーの迎撃、イゼルローンの回避能力を織り交ぜて駆使すればよい」
「アルテナ星系内という近距離まで近付ければ質量兵器攻撃は成功するだろうが、戦争における情報を重視しているヤンなら索敵も充分に行っているだろうし、一個艦隊を擁しているヤン艦隊がそれほどの近距離まで(質量兵器を持った)敵の接近を許すとも思えない」
 というのが自分の意見である。
「首飾り」の場合はクーデター派が艦隊を失っているので、ヤン艦隊が容易に近距離まで到達し得たのは納得がいくが、イゼルローンの場合はヤン艦隊の回廊内での戦闘の熟練度、情報の重視、回廊内での戦法の考案など、アルテナ星系内での制宙権を確保できる立場にある。その彼らが、質量兵器を持った敵の接近を許すだろうか?
 つまり、「(アルテナ星系内という)近距離からの質量兵器攻撃」は、実施された後の結果ではなく実施に持ち込むまでの過程の困難さを疑っているのである。
・(「要塞VS要塞」の実現性を「天才」のラインハルトが疑わなかった事について)ラインハルトが戦争の天才と呼ばれるだけの才能と業績を示したのは事実だが、移動要塞のエンジンの脆弱性や質量兵器としての価値に最初から気付かなかったのも事実である。この二つの事実を並存させるため、「ラインハルトも移動要塞への先入観から完全には逃れ得なかったが、それは彼の天才性を否定するものではないと作中では思われている」と結論付けた。それゆえ、「移動要塞の利点である火力と装甲」をもってすればイゼルローンに容易に接近できるとラインハルトが考えても、それは彼への批判材料にはなるが、彼の天才性やキャラ設定の否定にはならないというのがこちらの見解である。
 移動要塞戦略や質量兵器攻撃については、作中事実から考えれば、ラインハルトやヤンが気付かなかったと考えると矛盾が生じるので、それらが実施できない理由があると考え、懐疑的なスタンスに立っている。
・質量兵器の誘導システムについては、アルテナ星系内という近距離からならともかく、イゼルローン回廊内という遠距離からだと、慣性航行に移行する前に、出撃してきた敵艦隊に捕捉されてエンジンを破壊されてしまうのではないか?また、姿勢制御システムを駆使して恒星アルテナの反対側に隠れ、衝突コースを限定するという案も考えられる。
・質量兵器の表面に艦隊を貼り付けて航行するという案は自分も考えたが、その場合、質量兵器がワープ時に引き起こす時空震が艦に影響を与えないだろうか?ワープ時にバリアを展開するにしても、バリアの記述は作中には見当たらないし、展開できるにしても、質量兵器の展開するバリアは貼り付いている艦隊をフォローできるのか?できない場合、艦レベルのバリアで質量兵器の時空震に耐えられるかなど、銀英伝のワープシステムに関しては不分明な点が多い。




 一連の議論において、「No.6333『イゼルローンへの質量兵器攻撃についての一考察』などで当初」「指摘されていた点などは、ことごとく問題のないものとされたわけ」ではない事は、上記の流れを見ても明らかでしょう。パンツァーさんとの議論も同様です。
「No.6333『イゼルローンへの質量兵器攻撃についての一考察』などで当初」「指摘されていた点などは、ことごとく問題のないものとされたわけ」ではなく、当初こちらが示していた主張に対し反論があり、それに対する再反論につぐ再反論が積み重ねられて、疑問点が変化ないし新たに発生していっただけに過ぎません。これから考えて、自分としては議論が煮詰まりつつあると結論付けたわけです。


<No.6367「質量弾攻撃のメリットについて」で、私(パンツァー)が指摘しているように、質量弾が有人誘導で、しかも多量(100でも200でも)に用いる場合には、なんら問題が無いことについては、No.6377「Re:「遠距離」と「近距離」からの大質量兵器攻撃の相違と疑問点 」でも、平松さんは否定の根拠を挙げてないので、これに対する反論はできなかったものとみなします。>


 下の文章は読んで頂けていないのでしょうか?

No.6377
<上でも申し上げた通り、アルテナ星系内という「近距離」であれば、自分としても上記のようなご意見には異論はありません。
 ただ、アルテナ星系から遠い、回廊内からなどの「遠距離」の場合は、「有人制御航行」や「無人艦の遠隔コントロール」などで回廊を抜けようとしても、イゼルローン要塞へ慣性航行のみで辿り着ける衝突コースのはるか手前で、接近を察知して要塞から出撃してきた艦隊にエンジンを破壊されてしまうのではないか?という事なのです。あるいは姿勢制御システムで公転速度を調節して恒星アルテナの反対側に隠れ、衝突コースの選択肢をを著しく狭めた上で迎撃するといった手も考えられます。>
<質量兵器の数量についてですが、近距離からの発射が実施出来れば有効でしょう(近距離まで近付けるかどうかは、また別問題です)。ですが、遠距離からの場合、100や200の質量兵器を、狭隘な回廊内で一斉に発射は出来ないでしょう。狭い回廊内で質量兵器がひしめき合っては、いかに誘導システムがあっても、質量兵器同士が邪魔しあってコースを制限してしまうか、下手をすれば質量兵器同士が衝突する可能性も生じますしね。その場合、いち早く先行してきた高速艦隊で質量兵器群を迎撃して停止する前のエンジンを各個撃破する余裕もあるでしょう。>


<しかも、有人誘導式や質量弾の個数を多数にするのは、平松さんが指摘する「イゼルローン要塞の回避能力」等を最大限過大に考慮した場合の話であって、このような配慮(有人誘導等)をすることなく、アルテミスの首飾りなどと同様に簡単に撃破できる、ものかもしれないのです。むしろ、作品の展開からすれば、こちらの方が妥当でしょう。>

「バーラト星系内という近距離からから惑星ハイネセンを守る軍事衛星に対し行われた質量兵器攻撃」と「イゼルローン回廊内という遠距離からイゼルローン要塞に対し行われる質量兵器攻撃」を単純に引き比べることが出来るのか?という事は前にも申し上げたと思います。


<ビッテンフェルトとファーレンハイトの敗退は、ヤンの艦隊によって、両翼より側面攻撃を受け続けたことによるものです。>
<「せまい回廊のなかで行動が制約さ」れてしまう(P66上段)というのは、あくまで、包囲攻撃を掛けるには「狭い」ということに過ぎません。回廊の断面を面で押していく分には、つまり大兵力で「右翼」「中央」「左翼」の全領域に十分な兵力を配置して攻撃することは可能であるのです。このような攻撃方法を取れば、数的に劣勢なヤン艦隊では、当然、防御することはできないでしょう。
それゆえに、こういう奇策が成功しない限りは、ヤンは、回廊に機雷原を敷設して、ラインハルトの大艦隊に対抗する必要があったわけです。>


 乱離篇第三章V(ノベルズ版八巻P66上段)
<一方、ビッテンフェルトも不満である。第二陣として後方にひかえていればよいものを、むりに並行して布陣するから、せまい回廊のなかで行動が制約されてしまうではないか。>

 この文章では、ヤン艦隊の陣形については言及されておりません。これを見る限りでは、帝国軍の兵力展開が制約されてしまったのは回廊自体の狭さが主要因であって、ヤン艦隊の凹型陣はそれを利用した副次的な要因に過ぎないと解釈すべきではないでしょうか。また、前に引用した乱離篇第三章V(ノベルズ版第八巻P64上段)のヤンの台詞や、乱離篇第四章T(ノベルズ版第八巻P79下段)の文章について何のご回答がないのはいかがなものかと。
 それに実の所、機雷原はあくまで回廊入口に敷設されたのであり(乱離篇第四章T、ノベルズ版八巻P78下段およびP80上段)、それを突破し、激闘の末に橋頭堡ともいうべきポイントを確保しています。この時点ですでに帝国軍の大部分の部隊が回廊内に進入を果たしているのは、下の文章からも明らかでしょう。

 乱離篇第四章U(ノベルズ版八巻P84上段)
<帝国軍の主力はブラウヒッチが苦労して切りひらいた通路から、回廊内へ侵入をはたしている。>

 また、

 乱離篇第四章V(ノベルズ版八巻P87下段)
<帝国軍は敵よりはるかに兵力においてすぐれているのに、狭隘な戦場にひしめきあって行動の自由を失い、後方の兵力は戦闘に参加することもできず、遠くから、味方の壁にさえぎられつつ情勢を見守るだけである。>

 という記載を見ても、後方の兵力を遮っているのは「味方の壁」と書かれているのみで、機雷原についてはまったく言及されておりません。機雷原が兵力展開の障害になっているのなら、記載がないのはかなり不自然ではないでしょうか?また、機雷原が壁になっているのならば、当然「後方の兵力」は、「情勢を見守るだけ」の境遇に甘んじているはずはなく、機雷原の掃宙作業を行っているはずでしょう。これから考えても、帝国軍のほぼ全兵力が、回廊に栓をしていた機雷原を抜けている事は明らかではないでしょうか。
 よって、機雷原を「帝国軍の主力」が突破した以上、機雷原は帝国軍の後方に存在するわけで、前進や上下左右への兵力展開の障害になる事は有り得ず、「『数的優位を十二分に生かすことが」出来なかった』のは、機雷原のせい」というパンツァーさんのご意見には無理があるように思われます。
 唯一、乱離篇第四章X(ノベルズ版八巻P95下段)には「機雷原や集中火力によって敵を分断し」という記述がありますが、これにした所で「集中火力」と一緒に併記されている以上、戦闘中に艦から射出されるごく小規模のものでしかないでしょうしね(外伝「黄金の翼」(徳間ノベルズ「夜への旅立ち」P201下段〜P202上段)では、第五次イゼルローン攻防戦時に駆逐艦エルムラントU号の艦長であったラインハルトが、敵巡航艦を事前に射出した四個の機雷に追い込んで撃沈しています)。
 従って、
<回廊に機雷原がないのであれば、ラインハルトの大艦隊は、ヤン艦隊の迎撃を受けていくらかは消耗するにしても、作品の展開のような大損害を受けることはないでしょうし、>

 というご推測にも疑問符が付くのではないかと。


<機雷原があるとしても、質量弾攻撃を用いることで、その機雷原の突破を図ることも可能なわけです。>
<また、移動化要塞の要塞主砲を、機雷原破壊の一手段にする点についても、ガイエスブルグ要塞より質量の小さな要塞であって、同じ帝国軍が改造するものであれば、まったく問題にならないでしょう。>

 これらについても、、「『数的優位を十二分に生かすことが」出来なかった』のは、機雷原のせい」という前提に疑問符が付けば、何ら意味がないものになってしまいます。


<作品の展開に沿うならば、一旦、回廊外へと逃れたメックリンガーの艦隊を、ラインハルトの突入時には、再び回廊内へと突入させれば、それだけで事はすんでいたようにも思えますね。如何に通信に時間が掛かると言っても、ビッテンフェルトとファーレンハイトの艦隊の敗退から、ラインハルトの突入時までには、十分な時間がありますし。特に、このとき、メックリンガーの艦隊にも、質量弾をもたせておけば、艦隊の守備のないイゼルローン要塞を、何の妨害もなく質量弾で攻撃できたでしょう。>

 イゼルローン回廊の帝国側方面から進軍していたメックリンガーが回廊外へ出たのは、ヤンの虚喝に引っかかってヤン艦隊の兵力を過大評価し、ヤン艦隊の別働隊が帝国領に侵攻するのを恐れたためでしょう(乱離篇第三章U、ノベルズ版八巻P59〜P60)。無論メックリンガーは自分の見解をラインハルトに伝えているでしょうから、ラインハルトとしてもメックリンガーに回廊入口を固める事を命じる以外になかったのでのではないでしょうか?万一帝国領に乱入されれば、「あとは無人境、帝国首都オーディンまでさえぎるものは」いないわけですから(乱離篇第一章U、ノベルズ版八巻P23下段)、下手をすれば最愛の姉アンネローゼが囚われの身になってしまう可能性も否定は出来ないわけですし(冒険風ライダーさんもNo.1814 で似たようなシナリオを考案されています)。
「こと姉であるグリューネワルト伯爵夫人アンネローゼに関しては、ラインハルトの感情はつねに理性に対する勝者となるのだった」(策謀篇第一章T、ノベルズ版4巻P19下段(策謀篇第一章T)
 こういった事情に全く言及せずに「一旦、回廊外へと逃れたメックリンガーの艦隊を、ラインハルトの突入時には、再び回廊内へと突入させれば」とおっしゃられましても、説得力は持ちえないと思います。


<反論ポイントがないことを認めていただけますと、私としても楽なのですが。。。。>

 自分が議論の終了を仄めかしたのは、議論が煮詰まり始めていた事と、年度の節目で各々忙しいであろうといった点を考慮しての事です。そろそろ潮時ではないかと思います。「意見が平行線で結論が出ない」というのも議論の終わり方の一つで、これまでの議論でもよくあった事です。場をお借りして議論をさせて頂いている以上、議論の落とし所も見極めないといけないと思いますしね。
 ですので、ある程度の問題提起はできたと思いますし、これ以上議論を行っても合意は得られないと判断し、こちらからの意見や反論はここまでにさせて頂こうと思います。一連の議論が、後の議論の叩き台になれば幸いです。
 お付き合い頂き、ありがとうございました。


No. 6394
回廊の狭さの程度について、他
パンツァー 2005/04/07 23:32
>  自分が議論の終了を仄めかしたのは、議論が煮詰まり始めていた事と、年度の節目で各々忙しいであろうといった点を考慮しての事です。そろそろ潮時ではないかと思います。「意見が平行線で結論が出ない」というのも議論の終わり方の一つで、これまでの議論でもよくあった事です。場をお借りして議論をさせて頂いている以上、議論の落とし所も見極めないといけないと思いますしね。
>  ですので、ある程度の問題提起はできたと思いますし、これ以上議論を行っても合意は得られないと判断し、こちらからの意見や反論はここまでにさせて頂こうと思います。一連の議論が、後の議論の叩き台になれば幸いです。
>  お付き合い頂き、ありがとうございました。

私としては、反論したい点があるのに、反論しないでいるのは面白くありませんので、反論は行わせていただきます。これに対して反論されて、私が納得できない点があれば、それに対しても反論を行う次第です。

今回の議論に関して、少なくとも私は、「意見が平行線で結論が出ない」部分を避けるように努めているつもりです。
例えば、実は「アルテミスの首飾り」を構成する衛星群には、質量弾の回避能力があったのではないか、といった平松さんの仮説に対しては、私も明確な反証を咄嗟に挙げ得ないので、この部分についてはグレーゾーンの状態として一時保留しております。作品の展開は、質量弾攻撃なるものが予測されていなかった状態のことであり、質量弾攻撃を当初から予測している場合には、対応能力があったのではないか、とする仮設には、一応の説得力を認めているのです。
だから、「意見が平行線で結論が出ない」部分を避けるべく、平松さんの反論のない部分(「有人誘導式」や「質量弾の個数を多数にする場合」)のみを利用して、質量弾攻撃のメリットを説明してみたのです。「質量弾の個数を多数にする場合」については、「回廊の狭さ」が問題であるとの反論を受けたので、「回廊の狭さ」は問題にならない、という反論を展開しているのです。「回廊の狭さ」の程度については、それを示す根拠が作品中に多々あり、これらの記載に関する検討が終了したとは言いがたいので、「意見が平行線で結論が出ない」などという状況には到達していないでしょう。

「合意は得られない」というのは、最初から予測がついているでしょう。平松さんの方でも、質量弾攻撃の優位性を根本的に破綻させるような事柄を提示できてないのですから、これは無理ではありませんか。

「各々忙しいであろうといった点を考慮して」という点はうれしくおもいますが、これは投稿のペースが落ちると言う点であって、議論を中断すべき理由には該当しないものです。

以下、私の投稿に関連する部分について

(1)
>  下の文章は読んで頂けていないのでしょうか?
>
> No.6377
> <上でも申し上げた通り、アルテナ星系内という「近距離」であれば、自分としても上記のようなご意見には異論はありません。
>  ただ、アルテナ星系から遠い、回廊内からなどの「遠距離」の場合は、「有人制御航行」や「無人艦の遠隔コントロール」などで回廊を抜けようとしても、イゼルローン要塞へ慣性航行のみで辿り着ける衝突コースのはるか手前で、接近を察知して要塞から出撃してきた艦隊にエンジンを破壊されてしまうのではないか?という事なのです。あるいは姿勢制御システムで公転速度を調節して恒星アルテナの反対側に隠れ、衝突コースの選択肢をを著しく狭めた上で迎撃するといった手も考えられます。>
> <質量兵器の数量についてですが、近距離からの発射が実施出来れば有効でしょう(近距離まで近付けるかどうかは、また別問題です)。ですが、遠距離からの場合、100や200の質量兵器を、狭隘な回廊内で一斉に発射は出来ないでしょう。狭い回廊内で質量兵器がひしめき合っては、いかに誘導システムがあっても、質量兵器同士が邪魔しあってコースを制限してしまうか、下手をすれば質量兵器同士が衝突する可能性も生じますしね。その場合、いち早く先行してきた高速艦隊で質量兵器群を迎撃して停止する前のエンジンを各個撃破する余裕もあるでしょう。>
>
>
> <しかも、有人誘導式や質量弾の個数を多数にするのは、平松さんが指摘する「イゼルローン要塞の回避能力」等を最大限過大に考慮した場合の話であって、このような配慮(有人誘導等)をすることなく、アルテミスの首飾りなどと同様に簡単に撃破できる、ものかもしれないのです。むしろ、作品の展開からすれば、こちらの方が妥当でしょう。>
>
> 「バーラト星系内という近距離からから惑星ハイネセンを守る軍事衛星に対し行われた質量兵器攻撃」と「イゼルローン回廊内という遠距離からイゼルローン要塞に対し行われる質量兵器攻撃」を単純に引き比べることが出来るのか?という事は前にも申し上げたと思います。

***
別に、私は、イゼルローン要塞に対する攻撃において、亜光速を利用した質量弾(アルテミスの首飾り時)に限定した話など、しておりません。ガイエスブルグ要塞による要塞特攻との類似でも一向に構わないのです。その観点から、有人誘導式、などの話も出てきているわけです。

前回(No6387)以下のように書きましたが、
「しかも、有人誘導式や質量弾の個数を多数にするのは、平松さんが指摘する「イゼルローン要塞の回避能力」等を最大限過大に考慮した場合の話であって、このような配慮(有人誘導等)をすることなく、アルテミスの首飾りなどと同様に簡単に撃破できる、ものかもしれないのです。むしろ、作品の展開からすれば、こちらの方が妥当でしょう。」

結局、平松さんの方では、「回廊の狭さ」以外の反論ポイントは、ありませんよね。


(2)
> <ビッテンフェルトとファーレンハイトの敗退は、ヤンの艦隊によって、両翼より側面攻撃を受け続けたことによるものです。>
> <「せまい回廊のなかで行動が制約さ」れてしまう(P66上段)というのは、あくまで、包囲攻撃を掛けるには「狭い」ということに過ぎません。回廊の断面を面で押していく分には、つまり大兵力で「右翼」「中央」「左翼」の全領域に十分な兵力を配置して攻撃することは可能であるのです。このような攻撃方法を取れば、数的に劣勢なヤン艦隊では、当然、防御することはできないでしょう。
> それゆえに、こういう奇策が成功しない限りは、ヤンは、回廊に機雷原を敷設して、ラインハルトの大艦隊に対抗する必要があったわけです。>
>
>
>  乱離篇第三章V(ノベルズ版八巻P66上段)
> <一方、ビッテンフェルトも不満である。第二陣として後方にひかえていればよいものを、むりに並行して布陣するから、せまい回廊のなかで行動が制約されてしまうではないか。>
>
>  この文章では、ヤン艦隊の陣形については言及されておりません。これを見る限りでは、帝国軍の兵力展開が制約されてしまったのは回廊自体の狭さが主要因であって、ヤン艦隊の凹型陣はそれを利用した副次的な要因に過ぎないと解釈すべきではないでしょうか。また、前に引用した乱離篇第三章V(ノベルズ版第八巻P64上段)のヤンの台詞や、乱離篇第四章T(ノベルズ版第八巻P79下段)の文章について何のご回答がないのはいかがなものかと。
>  それに実の所、機雷原はあくまで回廊入口に敷設されたのであり(乱離篇第四章T、ノベルズ版八巻P78下段およびP80上段)、それを突破し、激闘の末に橋頭堡ともいうべきポイントを確保しています。この時点ですでに帝国軍の大部分の部隊が回廊内に進入を果たしているのは、下の文章からも明らかでしょう。
>
>  乱離篇第四章U(ノベルズ版八巻P84上段)
> <帝国軍の主力はブラウヒッチが苦労して切りひらいた通路から、回廊内へ侵入をはたしている。>
>
>  また、
>
>  乱離篇第四章V(ノベルズ版八巻P87下段)
> <帝国軍は敵よりはるかに兵力においてすぐれているのに、狭隘な戦場にひしめきあって行動の自由を失い、後方の兵力は戦闘に参加することもできず、遠くから、味方の壁にさえぎられつつ情勢を見守るだけである。>
>
>  という記載を見ても、後方の兵力を遮っているのは「味方の壁」と書かれているのみで、機雷原についてはまったく言及されておりません。機雷原が兵力展開の障害になっているのなら、記載がないのはかなり不自然ではないでしょうか?また、機雷原が壁になっているのならば、当然「後方の兵力」は、「情勢を見守るだけ」の境遇に甘んじているはずはなく、機雷原の掃宙作業を行っているはずでしょう。これから考えても、帝国軍のほぼ全兵力が、回廊に栓をしていた機雷原を抜けている事は明らかではないでしょうか。
>  よって、機雷原を「帝国軍の主力」が突破した以上、機雷原は帝国軍の後方に存在するわけで、前進や上下左右への兵力展開の障害になる事は有り得ず、「『数的優位を十二分に生かすことが」出来なかった』のは、機雷原のせい」というパンツァーさんのご意見には無理があるように思われます。
>  唯一、乱離篇第四章X(ノベルズ版八巻P95下段)には「機雷原や集中火力によって敵を分断し」という記述がありますが、これにした所で「集中火力」と一緒に併記されている以上、戦闘中に艦から射出されるごく小規模のものでしかないでしょうしね(外伝「黄金の翼」(徳間ノベルズ「夜への旅立ち」P201下段〜P202上段)では、第五次イゼルローン攻防戦時に駆逐艦エルムラントU号の艦長であったラインハルトが、敵巡航艦を事前に射出した四個の機雷に追い込んで撃沈しています)。

***
雌伏篇第8章帰還W(ノベルズ版P209上段)
「それは円筒陣の一種だが、より極端な形で、ほとんど輪状に敵を包囲するものであった。そして同盟軍は、かがやく光点の輪のなかをくぐりぬけようとする帝国軍に、上下左右から砲火を浴びせた。砲火は、おのずと、円の周囲から中心に向けて一点集中する形になり、破壊の効率をいちじるしく増大した。突進する帝国軍の艦艇は、ときとして別方から同時に襲いかかる複数のエネルギービームにつらぬかれ、輪状に切り刻まれたとみると、爆発して火球となった。このフォーメーションを広大無辺の宇宙空間で使用すれば、輪を突破した敵は、そこで隊形を拡散し、反転してさらに外側から輪を包囲することができる。しかし、この狭い回廊では、それは不可能であった。」

前回(No6387)でも書きましたが、
「せまい回廊のなかで行動が制約さ」れてしまう(P66上段)というのは、あくまで、包囲攻撃を掛けるには「狭い」ということに過ぎません。

「狭い回廊内で質量兵器がひしめき合っては、いかに誘導システムがあっても、質量兵器同士が邪魔しあってコースを制限してしまうか、下手をすれば質量兵器同士が衝突する可能性」、といった可能性が発生するとしたら、それは、既に輪形陣を形成されていて、その輪形陣に飛び込まざるを得なかった場合です。

では、既に形成されている輪形陣に飛び込まざるを得なかった場合とは、どういう場合かといえば、これが「回廊の戦い」の前哨戦(ビッテンフェルトとファーレンハイトの艦隊の回廊突入時)や、「回廊の戦い」の本番における「帝国軍は敵よりはるかに兵力においてすぐれているのに、狭隘な戦場にひしめきあって行動の自由を失い、後方の兵力は戦闘に参加することもできず」乱離篇第四章V(ノベルズ版八巻P87下段)といった状況なのです。

この場合、敵の輪形陣からの火力が強力で、味方の艦艇があまり前進できず、(例えば回廊中央に)集中した状態となり、味方の艦艇同士の衝突といった不具合も引き起こされてしまうわけです。けっして、敵の妨害が無くても、「艦艇同士の衝突といった不具合」が発生するほど、回廊が狭いわけではありません。

もし、そこまで回廊が狭いのであれば、輪形陣を形成している同盟軍の艦艇と、回廊の中央に突入している帝国軍の艦艇との間で、衝突が発生する状況がもたらされていなければ、可笑しいはずです。艦艇の衝突に関して、敵の艦艇か味方の艦艇かを問うものではないでしょう。

乱離篇第四章V(ノベルズ版八巻P83下段)
「ブラウヒッチ艦隊は、たちまち、集中する火力の前にさらされた。しかも後方には機雷源があり、後退は不可能に等しい。覚悟の上であり、これも作戦の一環である。ブラウヒッチは、麾下の艦隊6400隻を100隻単位の小集団に分けて敵火力の集中を回避する作戦を皇帝からさずけられていたが、それを実行する段階で、すくなからぬ損害をこうむった。前後を火と光の壁に挟まれ、帝国軍先鋒部隊は危地に追い込まれる」

上のような状況は、敵の砲火が「火と光の壁」という実質的な壁として機能することを説明しています。

「機雷原を「帝国軍の主力」が突破した以上、機雷原は帝国軍の後方に存在するわけで、前進や上下左右への兵力展開の障害になる事は有り得ず、「『数的優位を十二分に生かすことが」出来なかった』のは、機雷原のせい」というパンツァーさんのご意見には無理があるように思われます。」

この状況にしても、ビッテンフェルトとファーレンハイトの艦隊が敗退した場合と類似の状況なのです。機雷源を突破してみたところが、結局は輪形陣に飛び込むことになった、と言うことに過ぎません。
上に示したように、敵の砲火が「火と光の壁」という実質的な壁として機能するので、「機雷原は帝国軍の後方に存在する」が、「火と光の壁」によって、「前進や上下左右への兵力展開の障害になる事は有り得」てしまうのです。

なお、上では、同盟軍の配置を一まとめに、円筒陣の一形態である輪形陣としましたが、実際には必ずしも、回廊の周縁に沿って配置された輪形陣に限定されるものではなく、状況に応じて異なる隊形を取っているものと推察されます。
ただ、敵の進入ポイント(例えば機雷源に穿たれた穴の出口)が特定されていれば、その進入ポイントの周辺で敵を封じ込めるように、その進入ポイントの周囲に円筒陣や輪形陣、凹形陣などの有利な陣を敷くことが可能でしょう。そうすれば、進入ポイントの周辺から敵(帝国軍)は、進入ポイントに集中する火力に阻まれて、前進できないか前進速度が鈍る羽目に陥るわけです。

>  従って、
> <回廊に機雷原がないのであれば、ラインハルトの大艦隊は、ヤン艦隊の迎撃を受けていくらかは消耗するにしても、作品の展開のような大損害を受けることはないでしょうし、>
>
>  というご推測にも疑問符が付くのではないかと。

***
平松さんは、ヤンが一体なんのために機雷源を形成した、とお考えなのでしょうか。
機雷源が無くても、ラインハルト率いる帝国艦隊が「作品の展開のような大損害」を受けたのは間違いの無いことである、とでもお考えなのでしょうか?
というか、機雷源なんか、そもそも必要なかったのでしょうか?

機雷源は、ビッテンフェルトとファーレンハイトを回廊の中央に誘い込んだ場合と同様に、敵の艦隊を回廊の一部(機雷源に穿たれた穴の出口周辺)に集中させてしまう効果があるのです。もちろん、機雷源という遅滞地形を設けることで、敵の大兵力と一度に戦わなくて良い、という効果も存在します。

(3)
> <機雷原があるとしても、質量弾攻撃を用いることで、その機雷原の突破を図ることも可能なわけです。>
> <また、移動化要塞の要塞主砲を、機雷原破壊の一手段にする点についても、ガイエスブルグ要塞より質量の小さな要塞であって、同じ帝国軍が改造するものであれば、まったく問題にならないでしょう。>
>
>  これらについても、、「『数的優位を十二分に生かすことが」出来なかった』のは、機雷原のせい」という前提に疑問符が付けば、何ら意味がないものになってしまいます。

***
これについても、上で回答したとおりです。

(4)
> <作品の展開に沿うならば、一旦、回廊外へと逃れたメックリンガーの艦隊を、ラインハルトの突入時には、再び回廊内へと突入させれば、それだけで事はすんでいたようにも思えますね。如何に通信に時間が掛かると言っても、ビッテンフェルトとファーレンハイトの艦隊の敗退から、ラインハルトの突入時までには、十分な時間がありますし。特に、このとき、メックリンガーの艦隊にも、質量弾をもたせておけば、艦隊の守備のないイゼルローン要塞を、何の妨害もなく質量弾で攻撃できたでしょう。>
>
>  イゼルローン回廊の帝国側方面から進軍していたメックリンガーが回廊外へ出たのは、ヤンの虚喝に引っかかってヤン艦隊の兵力を過大評価し、ヤン艦隊の別働隊が帝国領に侵攻するのを恐れたためでしょう(乱離篇第三章U、ノベルズ版八巻P59〜P60)。無論メックリンガーは自分の見解をラインハルトに伝えているでしょうから、ラインハルトとしてもメックリンガーに回廊入口を固める事を命じる以外になかったのでのではないでしょうか?万一帝国領に乱入されれば、「あとは無人境、帝国首都オーディンまでさえぎるものは」いないわけですから(乱離篇第一章U、ノベルズ版八巻P23下段)、下手をすれば最愛の姉アンネローゼが囚われの身になってしまう可能性も否定は出来ないわけですし(冒険風ライダーさんもNo.1814 で似たようなシナリオを考案されています)。
> 「こと姉であるグリューネワルト伯爵夫人アンネローゼに関しては、ラインハルトの感情はつねに理性に対する勝者となるのだった」(策謀篇第一章T、ノベルズ版4巻P19下段(策謀篇第一章T)
>  こういった事情に全く言及せずに「一旦、回廊外へと逃れたメックリンガーの艦隊を、ラインハルトの突入時には、再び回廊内へと突入させれば」とおっしゃられましても、説得力は持ちえないと思います。

***
これに関しては、機雷源の話とは直接関係がないので、どちらでもよいのですが、一応回答しておきます。
(イゼルローン回廊の曲がりくねり等についても、いまのところ議論に直接関連がないと判断しているので放棄しているだけです。)

これは、何も壊滅を覚悟で突入せよ、ということではありません。
十分な偵察を行いながら、回廊への突入を図るべきだ、ということです。
帝国側の回廊に、ヤンが、予備兵力をもし配置しているならば、それが同盟側の回廊に支援に行くことを阻止する必要があります。同盟側の回廊での戦闘で、ただでさえ、苦戦が予想されるわけですから、予備兵力の支援を阻止するのは非常に重要です。つまり、メックリンガーの艦隊が帝国側の回廊への突入姿勢を見せるだけでも、ヤンの予備兵力は牽制されることになるのです。逆に、メックリンガーの艦隊の突入姿勢をヤンが発見したならば、実際にはこちら側には兵力を配置していないのですから、同盟側の回廊から兵力を一部割いて、帝国側の回廊に派遣する必要が発生するでしょう。もし、メックリンガーの艦隊の侵入を阻止できなかったら、ヤン艦隊は挟撃されてしまう、わけですから。そして、同盟側の回廊から兵力を引き抜くならば、同盟側の回廊での戦闘がより一層、ヤンにとって不利になるのは明らかです。機雷源を帝国軍が突破してきているのに、まさか、ビッテンフェルトを誘い込んだときのように、一旦帝国側の回廊に全兵力を派遣する、なんて荒業は、もはや使えないでしょうから。
(作品中での記載個所わすれましたが、回廊の艦隊の通過を要塞だけでは阻止できないみたいですからね。)

ラインハルトの突入時にメックリンガーの艦隊を再び回廊内へと突入させるのは、明らかに、有効なんですけどね。


No. 6395
アルテミスの首飾りについて
ぴぃ 2005/04/08 00:31
 初めまして、パンツァーさん。

 アルテミスの首飾りの破壊が成功した理由について考察してみました。

 まず、議論の前提として、原作からアルテミスの首飾りに関する事実をいくつか引用します。

// 以下原作より引用する事実
1.ハイネセンを守る一二個の軍事衛星。

2.軌道上を自由に動く一二個の衛星は、たがいを防御、支援するよう機能する。

3.氷塊が、ハイネセン本星に突入したりすることのないよう、発進角度は慎重に定めた。

4.氷塊の質量およびスピードを、衛星のコンピュータは危険因子とみなした。

5.衛星に搭載されていた兵器は氷塊に対して実効性がなかった。
// 引用終わり

 事実1と4からは、アルテミスの首飾りという防衛システムの究極の目的はハイネセンを危険因子から守ることであることがわかります。おそらく、氷塊に反応した原因は、隕石の飛来などにも対応するためであったのではと推測できます。

 次に、事実2から軍事衛星は軌道上を自由に動けることがわかります。
 ここで、氷塊の回避が可能な場合、事実3からハイネセンに危険が及ばないならば、衛星は氷塊を回避するのが合理的です。しかし、衛星は回避していません。よって、衛星は氷塊を回避できるだけの機動が不可能であるか、回避した場合ハイネセンに氷塊が突入してしまうかのいずれかだと考えられます。

 ヤンは同盟軍のNo3であり、アルテミスの首飾りシステムの機密情報に触れられたと思います。事実5は、そうした情報を知っていれば予測がつく事でしょう。システムの作動アルゴリズム及びそれらから導かれる推測や入念なシミュレーションなどから、ヤンは、衛星のコンピュータが、ハイネセンへの氷塊の突入を防ぐためには衛星が自ら氷塊に当たることで阻止する以外、ハイネセンを守るという目的を果たせないと判断する、つまり全ての衛星が氷塊を回避しない氷塊突入コースを算定して作戦を決行したとも考えられます。
 要するに、アルテミスの首飾りの軍事衛星が、質量兵器を回避できるのだとしても、衛星があえて質量兵器を回避しないことで、システムの目的である危険因子の除去(この場合は、ハイネセンへの氷塊の突入阻止)を達成したとも考えられます。

 この推測が正しいならば、ヤンの作戦が軍事衛星の自由な移動を制限したため、衛星は移動目標ではなく事実上の固定目標であったとみなせます。
 それゆえ、軍事衛星が回避不能であったと必ずしも言うことはできないので、亜光速質量弾が要塞に必ず命中して、要塞を破壊できるとは限らないと思います。

 なお、軍事衛星が回避不可能な機動力しか持たないのであるならば、軍事衛星より大質量かつ巨大な要塞に対する攻撃成功率は、軍事衛星攻撃の場合よりも確率は高いと直感的には思います。


No. 6398
Re6377/6384:移動要塞関連の遅レス
冒険風ライダー 2005/04/09 21:46
 ここ2〜3週間ほど、仕事が多忙につき、投稿が遅れてしまって申し訳ありません。
 今更ながら私からのレスです。



>平松さん
<ラインハルトが「戦争の天才」と呼ばれ、それに相応しい能力と業績を示したのは紛れもない作中事実ですが、
「ラインハルトは事前に移動要塞のエンジンの脆弱性を見抜けなかった。あるいは見抜いていたとしても、その点をシャフトやケンプ、ミュラーらに対し指摘しなかった」
「ラインハルトはケンプやミュラーに対し、移動要塞を質量兵器として用いる事を当初から指示しなかった」
という移動要塞作戦時におけるラインハルトの不手際もまた、歴然たる作中事実です。
 この二つの作中事実を矛盾なく並存させるため、
「ラインハルトという天才もまた、正統派の用兵家が移動要塞に対して抱く先入観から完全には逃れ得ていなかったが、それはラインハルトの天才性を全否定するものではないと、銀英伝世界では認識されている」と自分は結論付けたわけです。現実世界でも、歴史上「名将」「名政治家」「天才」と呼ばれる人間たちが、とんでもない失敗、誤断、見落としをしでかした事例など、探せばいくらでもありますしね。
 それゆえ、「正統派の用兵家が移動要塞に対して抱く先入観」から完全には逃れられなかったラインハルトが「移動要塞の火力と装甲」を持ってすれば、要塞には簡単に接近出来るだろう」と考えてしまったとしても、それはラインハルトに対する批判材料にはなり得ても、彼の作中における天才性やキャラクター(および作品)設定を否定する要素にはなり得ない、というのが自分の見解です。>

 だからですね、その結論では結局「(ヤンやラインハルトは愚か者であるという)私の主張を全面的に受け入れた上での『開き直り』の類にしかなっていない」というのですよ。第一、銀英伝の作中で行われたような「移動要塞の火力と装甲をもって要塞に対抗する」にせよ、小惑星特攻や質量弾攻撃を行うにせよ、どちらも「静止要塞に近づかなければならない」という命題は変わることがないのですし、何度も言うように、もしその段階で平松さんが仰るような懸念材料があるのであれば、それは「エンジン同期の問題」と同じかそれ以上に対策が検討されていなければならない問題なのです。それすらも全く行っていなかった時点で、ラインハルトは軍事的天才としてあるまじき失態を犯していると言わざるをえません。
 しかも、「エンジン同期の問題」に関しては、すくなくともラインハルトにとってはある意味専門外な問題だと言い訳することもできますが、「静止要塞に近づけるか否か」の問題はラインハルトが専門かつ得意分野とする「用兵」のカテゴリーに属するものです。これってむしろ「正統派の用兵家」とやらの方が真っ先に気づきそうなものですし、仮にも「戦争の天才」と呼ばれているラインハルトであれば【なおのこと】、「正統派の用兵家」以上に早く気づき、かつ対策を練らなければならない事項であるはずでしょう。
 そんな懸念材料について何も考えることなく、「先入観」だの「固定観念」だので「移動要塞は静止要塞に簡単に接近できるだろう」と何の根拠もなしに楽観的かつ大甘な皮算用でもって作戦を立てるような行為は、かつて救国軍事会議の面々が「アルテミスの首飾り」に対して抱いていたような「ハードウェア信仰」と似たり寄ったりなシロモノでしかないではありませんか。銀英伝という作品でほとんど全否定的に扱われているそんな発想法が「彼の作中における天才性やキャラクター(および作品)設定を否定する要素にはなり得ない」などというのは、相当なまでに作品の世界観およびキャラクター設定を侮辱かつ蹂躙する行為であるとは言えませんかね?
 第一、ラインハルトはイゼルローン要塞に対して、平松さんが仰っているような「正統派の用兵家が移動要塞に対して抱く先入観」など抱いていないことは作中でも明記されているのですけどね↓

銀英伝外伝3巻 P217下段〜P218上段
<ラインハルトは部隊をひきいて、イゼルローンへ帰投しつつあった。出撃した全帝国軍が収容をすませるまで、彼と部下たちは、四日半を要塞外で待機させられた。勇戦の、これが報酬であり、彼に対する総司令官の評価のほどがうかがえた。
「雷神のハンマーという、巨人的なハードウェアに頼っただけのことではないか。そんな安っぽい勝利の、どこが嬉しい」
 自分がイゼルローン要塞駐留艦隊司令官であったら、「雷神のハンマー」など使用することなく、同盟軍と誇称する叛乱軍を蹴散らしていたのに、と思う。>

 つまり、イゼルローン要塞の「巨人的なハードウェア」要素に関しては、ラインハルトもまたヤンと似たり拠ったりな考えを有していたわけです。この作中記述およびキャラクター設定を無視して「ラインハルトが『正統派の用兵家が移動要塞に対して抱く先入観』を抱いていた」などと規定するのは、銀英伝という作品およびラインハルトというキャラクターに対する侮辱であるとは思わないのでしょうか?
 しかもラインハルトには、かつて門閥貴族出身の軍人や同盟軍に対して、以下のごとき酷評を開陳していた前科すら存在するのです↓

銀英伝外伝1巻 P14上段〜下段
<「同盟軍、いや、叛乱軍の奴らは戦略を知らんのだ。流血を見ずしてイゼルローン要塞を無力化する方法があるものを」
 奴らに教えてやりたいくらいだ、と、ラインハルトは思う。本気で「専制王朝を打倒する」意思があるなら、とるべき手段はいくつでもある。自らの平和と安全だけが願いなら、逆の方向にも複数の選択がある。にもかかわらず、これが唯一の途だとばかり、イゼルローン回廊に攻めこんでは敗退をくりかえす同盟軍だった。ラインハルトとしては、あきれずにいられない。
「なぜ愚劣にもイゼルローンに拘泥する。要塞があれば正面から戦って陥さねばならぬと信じこんでいる。硬直のきわみだ」
「だからこそ帝国にとっては要塞を建設した意義がありましょう」
「ちがいないな」
 苦笑してラインハルトは赤毛の友の見解をうけいれた。>

銀英伝外伝1巻 P15上段〜下段
<ラインハルトは心から問いたかった。この会戦の目的は何なのか。どのような戦略上の課題を満足させるために、数万隻の艦隊を動かし、数百万の兵士を死地に立たせ、膨大な物資とエネルギーを消費するのか。その根本から目をそらし、課題を戦術レベルに限定してもっともらしく討議したところで、何の益があろう。かわされる会話のひとつとして、彼の感銘を呼ぶものはない。
 こいつらは戦争ごっこをやっているだけなのだ、と、ラインハルトは思わずにいられない。「自由惑星同盟」などと称する叛乱軍の輩と、似合いの好敵手と言うべきだ。帝国内での抗争に敗れて同盟に亡命した人々の数を思うと、同席の提督たちは、将来の亡命地を失うことがないよう配慮しているのではないか、とさえ思われる。いや、これは過大評価だろう。貧しい能力のすべてをあげて、この程度なのだ……。>

 さらには、あの移動要塞に関しても、ラインハルトは他ならぬ自分自身が命じた「移動要塞を持ってイゼルローン要塞を攻略せよ」という命令の内容も忘却し去った挙句、ケンプの移動要塞運用に見られる固定観念」を嘲笑するような発言まで行っています。
 これほどまでに「硬直しきった固定観念を抱く自分以外の人間」を酷評するラインハルトが、平松さんの仰るような「固定観念」だの「先入観」だのといったものを抱いているとしたら、それは他ならぬラインハルト自身の論法でもって「愚かである」と評されるべきですし、そうでなければならないのではありませんかね? それを「彼の作中における天才性やキャラクター(および作品)設定を否定する要素にはなり得ない」などとするのは、銀英伝という作品およびラインハルトというキャラクターに対して、むしろ大変失礼かつ無礼というものでしょう。
 銀英伝という作品およびラインハルト自身が結果的に否定している論法でもってラインハルトを擁護しようとするのは止めるべきです。それは最大限贔屓目に見ても、非常にタチの悪い「褒め殺し」以上のものにはなりえないのですから。まあ、「ラインハルトは天才などではない、とてつもない愚か者なのだ」が結論で良いのであればそれでもかまわないかもしれませんが。


<「だとしたらラインハルトやヤンが移動要塞戦略やイゼルローン質量兵器攻撃について検討しなかった事はどうか。これらも、実施出来るのに気付かなかったとしてもラインハルトやヤンの天才性を否定する要素にはなり得ないと思うか」
というご意見もあるかもしれませんが、これらについては「補給の重要性は作中でしばしば語られている」「ヤン自身も質量兵器攻撃を行った実績がある」といった作中事実から考えれば、気付かなければ作中記述に確実に矛盾すると思いますので、自分としては「移動要塞戦略やイゼルローン質量兵器攻撃には実施出来ない理由があったのでは?」という前提の元、懐疑的なスタンスに立ってみたわけです。>

 上でも説明したように、ラインハルトが「正統派の用兵家が移動要塞に対して抱く先入観」を抱いているか否かの問題も、「補給の重要性は作中でしばしば語られている」「ヤン自身も質量兵器攻撃を行った実績がある」と同じくらいに作中で明確に語られていることですので、「気付かなければ作中記述に確実に矛盾すると思います」。だからこそ、質量弾攻撃云々についても、ヤンやラインハルトを擁護したいのであれば、「ヤンやラインハルトはバカだった」的な結論に到達する可能性がない上での合理的な理由でもって説明するべきなのです。


<ただ、アルテナ星系から遠い、回廊内からなどの「遠距離」の場合は、「有人制御航行」や「無人艦の遠隔コントロール」などで回廊を抜けようとしても、イゼルローン要塞へ慣性航行のみで辿り着ける衝突コースのはるか手前で、接近を察知して要塞から出撃してきた艦隊にエンジンを破壊されてしまうのではないか?という事なのです。あるいは姿勢制御システムで公転速度を調節して恒星アルテナの反対側に隠れ、衝突コースの選択肢をを著しく狭めた上で迎撃するといった手も考えられます。>

 以前からずっと疑問に思っていたことなのですけど、平松さんは一貫して「接近を察知して要塞から出撃してきた艦隊にエンジンを破壊されてしまうのではないか」という主張を「質量弾攻撃無効」の根拠にしているわけですけど、その一方でラインハルトがその可能性に事前に気づいて対処法を練るべきだったという私の主張を「固定観念で気づけなかったから」という反論で応えておられますよね。この平松さんの主張って、結果的には「俺でも気づけるような懸念材料をラインハルトは結果的に気づけなかった」と言っているも同然なわけで、ある意味上で私が述べた以上にラインハルトをバカにしているようにも取れるのですけど、その自覚ありますか?
 それから、平松さんがしきりに出してくる「姿勢制御システムを使った要塞の回避能力」ですが、もし平松さんが述べているようなレベルの行動がこれで取れるのであれば、それが銀英伝の作中で一切使われなかったことと矛盾が生じるのではありませんか? 「姿勢制御システムで公転速度を調節して恒星アルテナの反対側に隠れ」などということができるのであれば、それは限定付きながらも立派な「自力で制御できる【宇宙航行能力】」と呼べるシロモノですし、これを応用すれば、状況に応じて敵艦隊に接近したり遠ざかったりすることだってできるはずでしょう。
 それがどんなに速度の遅いものであるにせよ「自力では全く動けない」とは雲泥の格差が存在するわけですし、そんなものがあるのならば敵を要塞主砲の射程圏内に引きずり込んだり、敵の攻撃を回避したりといった用途で大いに役立つことは明白なわけですから、作中の要塞攻防戦などで全く使われない方が不自然です。しかも、この「宇宙航行能力」には、移動要塞が抱える「エンジンの弱点」の問題すらも存在しないときているわけですから、要塞の火力と装甲を武器に敵陣に単体で突っ込むという戦法すら可能となるわけで、ある意味戦術的に無敵のシステムとすら言えます。ますますもって、作中で一切使われも言及すらもされなかったのはおかしな話であると言わざるをえないでしょう。
 しかも、イゼルローン要塞に「自力で制御できる【宇宙航行能力】」がないということは、他ならぬ銀英伝の作中描写でも示されていることなのです↓

銀英伝1巻 P128下段
<「シュトックハウゼンだ。事情を説明しろ、どういうことだ」
 大股に歩み寄りながら、要塞司令官は必要以上に高い声を出した。あらかじめ連絡があったように、叛乱軍が回廊を通過する方法を考案したとすれば、イゼルローン要塞の存在意義そのものが問われることとなろうし、現実に、叛乱軍の行動に対処する方策も必要になる。
 イゼルローンそのものは動けないのだから、このようなときにこそ駐留艦隊が必要なのだ。それをあのゼークトの猪突家が! シュトックハウゼンは平静ではいられなかった。>

 ここでシュトックハウゼンが主張している「イゼルローンそのものは動けない」というのは、恒星アルテナの周囲を「自動システム的なもので」公転させることはできても、それを「人為的に制御・調節」することはできないことをも示すものでしょう。それができるのであれば、この箇所における「イゼルローンそのものは動けない」という作中記述自体がおかしいことになります。
 以上のことから、平松さんの主張は銀英伝という世界観およびキャラクター設定とはあまり合致しないものであるように思われるのですが、どうでしょうか。



>不沈戦艦さん
<それで、「限りなき報復合戦になってもやむなし」ということですが、「住民殺戮」は戦力的に充実している帝国軍の方が、規模が大きくかつ素早くやれるのではないですか?イゼルローンしか戦力がないヤン一党とは違うんですから。戦力が違うのですから、帝国軍側から先制して「これ以上暴れるのなら、旧同盟領住民を全員抹殺する」との脅迫をヤン一党に突きつけることは可能です。そして、イゼルローン移動要塞がそれに従わないのなら、例えばですが「十分ごと」にでも、一つ一つ「皆殺し星系」を増やして行けばいいんですよ。>

 「限りなき報復合戦」という状況下で、「規模が大きくかつ素早くやれる」ということに意味があるのでしょうか? 移動要塞の場合、帝国領および250億の国民を完全に殲滅できる「能力」自体は立派に有しているのですし、その能力を駆使すれば帝国が壊滅的な大打撃を受けることも「事前に」分かりきっているわけですから、殲滅される時期が相手よりも早いか遅いかは、この際あまり問題にならないかと。
 この「限りなき報復合戦」で「規模が大きくかつ素早くやれる」ということが問題になることがあるとすれば、それは移動要塞が無差別戦略爆撃を行っている間に、帝国側が移動要塞を100%確実に捕捉および攻略し、自陣営が殲滅される前に「限りなき報復合戦」に終止符が打てるという絶対的な保証がある場合だけです。そして、それがいかに困難を極めるかは、銀英伝5巻でヤンが行った「正規軍によるゲリラ戦」の事例だけでも明白ですし、「無限の自給自足能力」を有するが故に無制限かつ無期限のゲリラ戦が可能な移動要塞が相手であれば、ほとんど不可能とすら言えるほどに絶望的な命題となりうることは誰でも容易に察することができるでしょう。
 かつての米ソ冷戦時における「核の報復戦略」でも、それが実行されれば「両陣営共に共倒れ」になることが容易に想定されたからこそ脅威となりえたのであって、その脅威の前では「規模が大きくかつ素早くやれる」というのは、それで自陣営の生存の可能性が模索できるのでない限りはあまり意味がなかったのではないかと思うのですけどね。


<いくら「旧同盟領住民」はもう「新帝国領住民」であって、帝国からすれば自領土だしヤン一党にとっては責任を負うべき相手ではないとは言っても、ヤン一党が求めていることは「帝国と取引して、旧同盟領の一部でいいから民主主義体制を保存すること」なんですから、その為には「旧同盟領の一部星系とその住民たち」が絶対に必要になる訳です。その旧同盟領全てを「人質」にされた場合は、屈伏せざるを得ないでしょうよ。旧同盟領の全住民を抹殺されてしまった場合は、武力抵抗を続ける意味がないんですから。「そんなものはどうでもいい。旧同盟領の住民の安全についての責任まで負えない」と彼らが考えているのなら、暴れる意味が全くありません。だったらそんなものは放っておいて、さっさと逃げ出して「第二次長征一万光年」に入ればいいだけですからね。「旧同盟領の一部領有を目指している」のに「旧同盟領の住民の安全について、責任は一切負う必要はない」と主張するのには、論理的に無理がないですかね?>
<「もし帝国に旧同盟領住民を全員抹殺されてしまったとしても、イゼルローン移動要塞も時間をかければ同じことが可能だから報復できるので、それが抑止力になる」ってのは、なんぼなんでも無理でしょう。「住民抹殺に要する時間の桁が全然違う」ことは、この「チキン・ラン」における帝国軍の絶対的優位を保障するものです。旧同盟領住民が全て抹殺されてしまった後、イゼルローン移動要塞が「報復」だけを目的として、帝国領攻撃を繰り返したところで、そんな行動に意味はないですよ。もう、「目的」は果たせないことが、分かり切っているんですから。また、仮に旧同盟領住民を全て抹殺したところで、帝国軍にとっては「征服の労力が無駄だった」だけで、「目的」が消滅する訳じゃないです。「人類社会の統一」は適いますからね。「逆らうものは皆殺し」になったというだけで。帝国側はヤン一党の「目的」を圧殺できるのに、ヤンには帝国の「目的」を潰すことはできない。これでは、やる前から勝負はついています。いくら何でも、「ヤン一党が手に入れて民主主義を保存する惑星は、帝国領でもかまわない」と言うのは無理がありますし。>

 いや、ヤンの構想では、そもそも「旧同盟領の一部領有を目指している」などという項目自体が全く入ってはいないのですよ。何度も引用していますが、ヤンの構想というのは元々こういうものですし↓

銀英伝7巻 P190上段
<「全宇宙に皇帝ラインハルトとローエングラム王朝の宗主権を認める。そのもとで一恒星系の内政自治権を確保し、民主共和政体を存続させ、将来の復活を準備する」
 その基本的な構想を説明したとき、エル・ファシル独立政府の首班ロムスキー医師は瞳をかがやかせたりはしなかった。
「皇帝の専制権力と妥協するのですか。民主主義の闘将たるヤン元帥のおことばとも思えませんな」
「多様な政治的価値観の共存こそが、民主主義の精髄ですよ。そうではありませんか?」>

銀英伝8巻 P36下段
<ヤンの構想は、およそ大それたものである。戦術レベルの勝利によってラインハルトを講和に引きずりこみ、内政自治権を有する民主共和政の一惑星の存在を認めさせようというのだ。それはエル・ファシルでもよい、もっと辺境の未開の惑星でもよい。その惑星を除いた全宇宙を専制の冬が支配するとき、ひ弱な民主政の芽を育てる小さな温室が必要なのだ。芽が成長し、試練にたえる力がたくわえられるまで。>

 この当時のヤンは「エル・ファシル独立政府」に身を投じていたのですから、本来ならばヤンには「エル・ファシル独立政府」が領有するエル・ファシル星系を死守する義務も存在したはずなのですけど、その首班に対して今後の戦略方針を話す時でさえ、ヤンは「エル・ファシル星系という【旧同盟領にして現行唯一の民主共和政体の領土】」にこだわっている様子が微塵もありません。また、「回廊の戦い」を行う際も、ヤン一派は戦術上の必要性があったとはいえ、本来何が何でも死守しなければならないはずのエル・ファシル星系の無防備宣言を行い、その守りを放棄しています。つまり、作中のヤンの構想でも「旧同盟領の一部領有」などよりもはるかに「民主共和政体の確立」の方が最優先事項なのであり、それが実現されるならば場所はどこでもかまわない、と考えられているわけです。
 もちろん、この構想から言えば、たとえその「内政自治権を有する民主共和政の一惑星」が帝国領内にあったとしても何ら問題にはなりません。重要なのは「民主共和政体を有する惑星の存在」それ自体にあるのであって、場所など全く問うてはいないのですから。第一、場所の問題など、移動要塞の人間をその惑星に居住させればそれで済む問題でしかありませんし、「回廊の戦い」当時であれば、エル・ファシルの人間300万人全てを一時的にイゼルローン要塞に退避させた後で他の惑星に移住させる、という手で補えないこともないでしょう。だからこそ私は、ヤンの民主主義存続構想を語るに当たっては、「限りなき報復戦争になって移動要塞に居住する以外の全人類が死に絶えてもかまわない。その後で誰もいなくなった荒野に民主主義を復興しても、それで充分に目的は達成される」と主張できるわけです。銀英伝の作中でも、それこそ「長征一万光年」を遂行した結果、人口たった16万から立ち上げて大国にまでのし上がった自由惑星同盟の事例があるわけですしね。
 せめてヤンがほんの少しでも愛国主義的、そこまでいかなくても郷土愛的な執着を旧同盟領に対して抱いており、その奪還を本気で目指している、とでも言うのならば、私もこんなことは言えなくなるのですけどね〜。


<繰り返しになりますが、「旧同盟領の住民の安全などどうでもよく、イゼルローンさえ健在ならOK」だというのなら、何でさっさと逃げ出さないのか、全く意味不明で訳が分からない行動でしかないと思いますがどうですか。イゼルローンが健在ならOKであるのに、時間と労力と人命を無意味に費やして、帝国領攻撃をせにゃならんというのでは、帝国に対する嫌がらせか八つ当たりにしかならんでしょうよ。>

 旧同盟領云々の件については上で述べたとおりですが、「旧同盟領の住民の安全などどうでもよく、イゼルローンさえ健在ならOK」という考えていてもなお、ヤン陣営が帝国を攻撃しなければならない理由は2つあります。ひとつは、帝国側が第二の長征一万光年を敢行するヤン陣営に徹底的な追撃をかけてくる可能性であり、もうひとつは将来的な脅威です。
 要塞を使って第二の長征一万光年を行う場合、帝国がそれを黙認せずに徹底的な追撃を行ってくる可能性は充分に存在します。これは銀英伝作中のアーレ・ハイネセンの長征一万光年でも同じことが発生していますし、またアーレ・ハイネセンの時代と異なり、銀英伝の作中人物達は、長征一万光年の成功によって自由惑星同盟が建国され、帝国と拮抗するだけの実力をつけた「史実」を知っているわけです。第二の長征一万光年の成功によって第二の自由惑星同盟が誕生されたのではたまったものではない。その可能性を憂慮する帝国側が、第二の長征一万光年を阻止することを目的に、移動要塞に対して徹底追撃を行ってくる可能性は決して無視しえるものではないのです。
 また、たかだかアーレ・ハイネセンと奴隷階級の集団で長征一万光年が成功するような作中事実から考えれば、ヤン陣営はむろんのこと、帝国側もまた長征一万光年を実行することは可能なわけですし、何よりも「無限の自給自足能力」を持つ移動要塞という存在もあります。これを利用して、第二の長征一万光年を敢行するヤンに対して、帝国側もまた同じことを行って「永久に」追撃をかけてくる可能性も否定できないわけです。もしこれが実行されれば、ヤン陣営はいつまで経っても新天地を見つけることができず(見つかった瞬間にそこは帝国領となってしまいます)、当然のことながら「内政自治権を有する民主共和政の一惑星の存在」を確立することもできなくなります。だからこそ、第二の長征一万光年を敢行するにしても、「もし自分達に攻撃を仕掛けてきた場合は相応の教訓を叩き込んでやる」といった類の「脅しを含めた抑止力」が最低限必要不可欠となるわけです。
 もうひとつの「将来的な脅威」というのは、作中における銀河帝国と自由惑星同盟がそうであったように、第二の長征一万光年を敢行・成功した後に発生するであろう、遠い未来に両者が邂逅する可能性です。その際、これまた銀河帝国と自由惑星同盟の関係と同じように「第二の戦争の時代」が始まることもありうるわけです。それを未然に防止するために、あえて帝国に攻撃を行って可能な限りの打撃、場合によって移動要塞に居住する人間以外の人類滅亡をも視野に入れた戦略を打ち出しておくことは、この「将来的な脅威」をも事前に消滅させることに繋がるわけで、ヤンが考えるであろう「民主共和政体の存続」という観点から言えばやっておいて損はないものです。
 ここで問題となるのは、ヤン陣営が第二の長征一万光年を敢行する際に帝国側がどのような対応を取ることになるか、これに尽きます。もし「逃げるならば好きにするが良い、未来のことは未来の人間が考えれば良いことだ。そこまでの犠牲を払ってまで追撃を行わなければならない価値はない」と帝国側が早々に折れてくれるのであれば、それこそ不沈戦艦さんが仰るように、帝国領など放っておいてとっとと第二の長征一万光年を敢行するのが懸命ですが、もし「如何なる犠牲を出そうとも、第二の自由惑星同盟を生み出しかねない第二の長征一万光年など絶対に認めない」と考えるのであれば(そして私はこちらの可能性の方が圧倒的に高いと思いますが)、たとえ最終的に第二の長征一万光年を敢行するにしても、私が考えるような戦略構想でもって帝国側に追撃を諦めさせる必要があるわけです。
 国家としての矜持から言っても、「人類社会の統一」という帝国およびラインハルトの目的から考えても、「第二の長征一万光年」などを無条件で認めるほど、帝国も「お人好し」ではないと私は考えるのですが、いかがでしょうか。


No. 6399
氷塊衝突を衛星等が回避する可能性について
パンツァー 2005/04/10 00:05
ぴぃさん、はじめまして

> 2.軌道上を自由に動く一二個の衛星は、たがいを防御、支援するよう機能する。

確かにこのように書かれているので、アルテミスの首飾りを構成する各衛星は、一応の移動能力を持っているのではないか、と推測されます。
しかし、普通に考えると、こういった衛星が、亜光速の質量弾を回避できるはずがないのです。

というのは、これらの氷塊である質量弾は、亜光速、つまりほとんど光速で飛んできているわけですから、戦艦の主砲のような光線兵器からの光線と、ほぼ同じ速度なのです。例えば、戦艦同士の光線の撃ち合いで、戦艦の移動能力を駆使して、光線の命中を避けることができる、と言っているのに等しいのですから。

ここで、氷塊を切り出した惑星からハイネセンまでの距離がどの程度はなれているのかわかりませんが、例えば太陽から地球までの距離が光速で8分程度ですから、発射時点からハイネセンへの到達までに5分や10分の時間が掛かることはありえるでしょう。
また、野望篇第7章VやW、X(ノベルズ版2巻P186、189、190)の記載からは、P186には敵の攻撃が始まった旨をクーデタ軍のオペレータがグリーンヒル大将に報告し、P190ではクーデタ軍が12個全部の衛星が破壊されたことを知っている旨の内容が記載されています。つまり、氷塊による衛星の破壊の少なくとも2、3分以上前には、その接近が探知されているように見受けられます。
つまり、ハイネセンの属する星系内の各所に、監視衛星等が配置されていて、数分あるいはそれ以上前に、氷塊の接近を探知し、その探知情報を亜空間通信(普通の電波通信だとこの情報が届くのにも数分掛かってしまう)等の通信手段で、その情報を衛星にもたらされた、と考えられます。

このように、数分間の時間的余裕があれば、あるいは、5分、10分の時間的余裕があれば、衛星に備える「相互に防御・支援するための移動能力」を駆使して、質量弾の衝突コースから、自らの衛星を外すくらいの回避運動くらいはできたのではないか、とも思えるのです。

作中の場合は、衛星に備える兵器で破壊不能な質量弾による攻撃を受けた場合、などの対処が事前に考えられてなかったため、通常の対処、つまり、自らに接近する危険物(氷塊)に単に攻撃を仕掛ける、という対処しか行わず、数分あるいはそれ以上の時間的余裕を利用して、回避運動を行う、といった対処が行われなかったのではないか。当初から、破壊不能な質量弾による攻撃を受けた場合、というものが分かっていれば、衝突を回避することもできたのではないか。
少なくとも、アルテミスの首飾りの実例やケンプの要塞特攻の実例が示された後の世界では、質量弾攻撃に対する対処というものも考慮され、同じ手(亜光速の質量弾)で遠距離「光速で5分や10分はかかる距離」からの攻撃なら、衛星や要塞なら、その姿勢制御システム等を利用して、回避することができたのではないか!
平松さんの指摘も、恐らくこういうことだと思うのですが、これ自体に関しては、平松さんの指摘を全否定する根拠は今のところ、私には上げられません。

>  要するに、アルテミスの首飾りの軍事衛星が、質量兵器を回避できるのだとしても、衛星があえて質量兵器を回避しないことで、システムの目的である危険因子の除去(この場合は、ハイネセンへの氷塊の突入阻止)を達成したとも考えられます。

これはないと思います。
氷塊がハイネセンへの衝突コースにあれば、「衛星があえて質量兵器を回避しない」行動を取ったところで、氷塊のハイネセンへの突入を阻止することはできないでしょう。第一、作品にも、>「3.氷塊が、ハイネセン本星に突入したりすることのないよう、発進角度は慎重に定めた。」という旨の記載があるのですから。


ともかく、要塞が回避するかもしれない問題は、
質量弾を無人の自動誘導式もしくは有人誘導式(操縦者が直前まで操作)としたり、回避運動を行うであろう要塞の未来位置を予測して、多数の質量弾を同時に発射する、などすれば、ぜんぜん解決する問題であろうかと思います。
無人の自動誘導式を明らかに可能とする例が作中にないという反論を考慮して、ケンプの要塞特攻に見られる有人誘導式を提示しているわけでもあります。


No. 6400
Re:氷塊衝突を衛星等が回避する可能性について
ぴぃ 2005/04/10 19:52
> > 2.軌道上を自由に動く一二個の衛星は、たがいを防御、支援するよう機能する。
>
> 確かにこのように書かれているので、アルテミスの首飾りを構成する各衛星は、一応の移動能力を持っているのではないか、と推測されます。
> しかし、普通に考えると、こういった衛星が、亜光速の質量弾を回避できるはずがないのです。
>
> というのは、これらの氷塊である質量弾は、亜光速、つまりほとんど光速で飛んできているわけですから、戦艦の主砲のような光線兵器からの光線と、ほぼ同じ速度なのです。例えば、戦艦同士の光線の撃ち合いで、戦艦の移動能力を駆使して、光線の命中を避けることができる、と言っているのに等しいのですから。

 氷塊と光線兵器は性質が異なる兵器です。
 なぜなら、氷塊が攻撃開始から亜光速に達するまでに加速するための助走距離が必要なのに対して、光線兵器は攻撃したその瞬間から光速です。つまり、氷塊が亜光速となるまでには時間的余裕があるのではないでしょうか?


> ここで、氷塊を切り出した惑星からハイネセンまでの距離がどの程度はなれているのかわかりませんが、例えば太陽から地球までの距離が光速で8分程度ですから、発射時点からハイネセンへの到達までに5分や10分の時間が掛かることはありえるでしょう。
> また、野望篇第7章VやW、X(ノベルズ版2巻P186、189、190)の記載からは、P186には敵の攻撃が始まった旨をクーデタ軍のオペレータがグリーンヒル大将に報告し、P190ではクーデタ軍が12個全部の衛星が破壊されたことを知っている旨の内容が記載されています。つまり、氷塊による衛星の破壊の少なくとも2、3分以上前には、その接近が探知されているように見受けられます。
> つまり、ハイネセンの属する星系内の各所に、監視衛星等が配置されていて、数分あるいはそれ以上前に、氷塊の接近を探知し、その探知情報を亜空間通信(普通の電波通信だとこの情報が届くのにも数分掛かってしまう)等の通信手段で、その情報を衛星にもたらされた、と考えられます。
>
> このように、数分間の時間的余裕があれば、あるいは、5分、10分の時間的余裕があれば、衛星に備える「相互に防御・支援するための移動能力」を駆使して、質量弾の衝突コースから、自らの衛星を外すくらいの回避運動くらいはできたいのではないか、とも思えるのです。
>
> 作中の場合は、衛星に備える兵器で破壊不能な質量弾による攻撃を受けた場合、などの対処が事前に考えられてなかったため、通常の対処、つまり、自らに接近する危険物(氷塊)に単に攻撃を仕掛ける、という対処しか行わず、数分あるいはそれ以上の時間的余裕を利用して、回避運動を行う、といった対処が行われなかったのではないか。当初から、破壊不能な質量弾による攻撃を受けた場合、というものが分かっていれば、衝突を回避することもできたのではないか。
> 少なくとも、アルテミスの首飾りの実例やケンプの要塞特攻の実例が示された後の世界では、質量弾攻撃に対する対処というものも考慮され、同じ手(亜光速の質量弾)で遠距離「光速で5分や10分はかかる距離」からの攻撃なら、衛星や要塞なら、その姿勢制御システム等を利用して、回避することができたのではないか!
> 平松さんの指摘も、恐らくこういうことだと思うのですが、これ自体に関しては、平松さんの指摘を全否定する根拠は今のところ、私には上げられません。
>
> >  要するに、アルテミスの首飾りの軍事衛星が、質量兵器を回避できるのだとしても、衛星があえて質量兵器を回避しないことで、システムの目的である危険因子の除去(この場合は、ハイネセンへの氷塊の突入阻止)を達成したとも考えられます。

 作中では、以下のように記述されています。

/* 原作 野望篇p186下段より引用
 スクリーンが作動し、衛星に向かって宇宙空間を突進する物体をとらえた。その正体が判明したとき、室内をざわめきがはしった。
「氷……」
 グリーンヒル大将はうめいた。
*/

 どのくらいの距離で氷塊を検知したのかや、氷塊が亜光速に達するまでの助走距離ということは解りませんが、原作からはっきりわかる事実はあります。それは、システムの哨戒有効範囲は、グリーンヒル(人間)が質量弾の正体が氷と認識できる(カメラが氷塊を追従して撮影できる)範囲内であったということです。つまり、システムが氷塊を認識して作動開始した時は亜光速ではありません。よって、偵察衛星等から情報を得て軍事衛星は回避行動をとる時間的余裕があったと判断します。


> これはないと思います。
> 氷塊がハイネセンへの衝突コースにあれば、「衛星があえて質量兵器を回避しない」行動を取ったところで、氷塊のハイネセンへの突入を阻止することはできないでしょう。第一、作品にも、>「3.氷塊が、ハイネセン本星に突入したりすることのないよう、発進角度は慎重に定めた。」という旨の記載があるのですから。

 これに関しては、以下の事実をまず補充証拠としてあげます。

/* 原作、野望篇p190上段より引用
 衝突した。
 氷塊は砕けた。衛星も。氷片が乱舞し、太陽光と惑星光を反射して、めくるめく光彩を周囲の空間に投げかけた。(中略)衛星の破片などすでに区別がつかなかった。
*/

 これは、亜光速の氷塊と衛星がぶつかった場合、氷塊と衛星はともに砕けて衛星軌道上を漂う、すなわち、ハイネセンに影響が無いことを示していると考えられます。
 この事実から、氷塊がハイネセンへの「突入コース」であることは、氷塊がハイネセンへ「突入する」ことを意味しないと考えられます。よって、衛星が氷塊を回避しない状況に追い込んで破壊したという推論はまだ成立する余地があると考えます。


> ともかく、要塞が回避するかもしれない問題は、
> 質量弾を無人の自動誘導式もしくは有人誘導式(操縦者が直前まで操作)としたり、回避運動を行うであろう要塞の未来位置を予測して、多数の質量弾を同時に発射する、などすれば、ぜんぜん解決する問題であろうかと思います。
> 無人の自動誘導式を明らかに可能とする例が作中にないという反論を考慮して、ケンプの要塞特攻に見られる有人誘導式を提示しているわけでもあります。

 私は誘導能力のある質量弾による連続的な飽和攻撃の有効性は肯定します。この点に争いはありません。また、近距離から飽和攻撃が実施されてしまえば有効な対抗策は存在しないというのも肯定します。

 しかし、アルテミスの首飾りで使用した亜光速質量弾の場合は、加速する必要があり、また、作中からは無誘導の直線運動しかしていないように思えます。
 このタイプの質量弾では回廊という特殊な地形が攻撃可能地点を限定する上、機雷によって更に限定したり、あらかじめゼッフル粒子を空間に充満させて待ち構えたり、偵察衛星等を用いた質量兵器輸送の察知が可能であること等から、「質量兵器の素」の攻撃可能地点への輸送作戦の妨害と攻撃阻止をヤンが行うと思い、簡単には成功しないだろうと考えました。
 また、私はイゼルローン要塞には公転速度の調整機能と自転速度の制御機能があると考えています(あまりよくない例えかもしれませんが、公転軌道というレールの上を走っている電車がイゼルローン要塞で、電車はある程度速度を加減することができますが、それはレールから脱線しない範囲で制御が可能ということです)。こうした機能まで無いとするとガイエスブルク要塞が自身の要塞砲をイゼルローン要塞に一方的に撃てる位置に移動しないのか疑問になります。なお、イゼルローン要塞はアニメ版の液体金属の外壁+攻撃時に表面に浮上するトゥールハンマーではなく、原作の固体金属の外壁+固定式トゥールハンマーを想定しています。
 この推測が正しいと仮定すると、要塞の予測位置と実位置との間に差が生じると思います。なぜなら、攻撃地点に帝国軍が到着したとき、攻撃に必要な初期値である要塞の位置(公転軌道上のどこにいるのかという意味です。星系内を自由に移動できるとすると明らかに「要塞は動かない」という事実に矛盾しますから)と公転速度(目標の移動速度)の観測を行い軌道計算を行うことは可能ですが、その未来予測位置は要塞側が制御できる変数に基づいて行われたものであり実際の位置とは誤差があるでしょう。
 おそらく、秒(1/3600度)単位での射角精度を求められる(1秒ずれると300万km先では15km位ずれます。光速での到達時間が5分であるとすると距離は更に長くなるので精度も落ちる)中で、これは致命的なのでは? つまり、無誘導で目標に当てるのは、事実上の固定目標でなければきわめて難しいと思います。

 だからこそ、無誘導の氷塊に軍事衛星の側が当たりに行った(=氷塊を回避しない)と考えた方が合理的だと考えたのですが……。


No. 6401
Re:氷塊衝突を衛星等が回避する可能性について
パンツァー 2005/04/10 21:44
まず、作品に書いてある設定については、これを前提に考える必要があるのです。これを無視するようなことを書かれても困ります。

>  だからこそ、無誘導の氷塊に軍事衛星の側が当たりに行った(=氷塊を回避しない)と考えた方が合理的だと考えたのですが……。
>  この事実から、氷塊がハイネセンへの「突入コース」であることは、氷塊がハイネセンへ「突入する」ことを意味しないと考えられます。よって、衛星が氷塊を回避しない状況に追い込んで破壊したという推論はまだ成立する余地があると考えます。

No6395「アルテミスの首飾りについて」のぴぃさんの記載
<3.氷塊が、ハイネセン本星に突入したりすることのないよう、発進角度は慎重に定めた。>

「衛星が氷塊を回避しない状況に追い込」まれ得るのであれば、「ハイネセン本星に突入したりすることのないよう、発進角度は慎重に定め」る必要など、ないのではありませんか。衛星にさえ氷塊が命中すれば、「ハイネセン本星への突入」が避けられるのであれば、「衛星に必ず命中するように発進角度は慎重に定めた」と書かれているのが自然でしょう。
衝突の結果による氷塊や衛星の破片に関しても、ハイネセン本星に落下するようなことがあれば、十分問題だと思いますが。
作品の設定に従うなら、衛星に衝突しようがしまいが、「氷塊がハイネセン本星に突入したりすることのないよう、発進角度は慎重に定めた」とみなすのが妥当ではないでしょうか。

だいたい、「無誘導の氷塊に軍事衛星の側が当たりに行った」などということがあったのなら、クーデタ軍のオペレータが、「衛星が自ら氷塊にぶつかっていきます!」なんて金切り声を上げているはずですが、このような裏設定を裏打ちするような作品中の記載もないですよね。

>  おそらく、秒(1/3600度)単位での射角精度を求められる(1秒ずれると300万km先では15km位ずれます。光速での到達時間が5分であるとすると距離は更に長くなるので精度も落ちる)中で、これは致命的なのでは? つまり、無誘導で目標に当てるのは、事実上の固定目標でなければきわめて難しいと思います。

現代の常識とやら、からしたら、まったくごもっともな指摘なんですが、「現代の常識」を前提にするのであれば、「ワープ」などといった超絶的な移動航法自体も、ありえるはずがないこと、という面白くもない結論になってしまうのですよ。

西暦でいえば28世紀くらいに相当する銀英伝の時代では、超高精度な弾道計算や未来位置予測が可能であって、姿勢制御エンジンや方向知覚センサなどなくても、ヤンがまったく命中に不安を覚えることなく、氷塊に命中させることができるだけの技術水準があった、としか考えよう
がないのです。作品を前提とするのであれば。

>  しかし、アルテミスの首飾りで使用した亜光速質量弾の場合は、加速する必要があり、また、作中からは無誘導の直線運動しかしていないように思えます。

「亜光速質量弾の場合は、加速する必要があり」というのは、亜光速を発生させるためには加速が必要である、という意味においてはそのとおりですが、別に質量弾攻撃において、亜光速は必須要件ではないとおもいますけど。
ケンプの要塞特攻は、亜光速などでは全然ありませんよ。また、ケンプの要塞特攻は、有人誘導式の質量弾の実例でもありますね。
なぜ、質量弾攻撃を、「アルテミスの首飾りで使用した亜光速質量弾」に限定するのか、理解に苦しみますが。

>  このタイプの質量弾では回廊という特殊な地形が攻撃可能地点を限定する上、機雷によって更に限定したり、あらかじめゼッフル粒子を空間に充満させて待ち構えたり、偵察衛星等を用いた質量兵器輸送の察知が可能であること等から、「質量兵器の素」の攻撃可能地点への輸送作戦の妨害と攻撃阻止をヤンが行うと思い、簡単には成功しないだろうと考えました。

No6367「質量弾攻撃のメリットについて」の記載
<要塞の駐留艦隊ももちろん戦力ですが、これにしたところで、敵の艦隊戦力によって相殺されてしまうことも明らかでしょう。戦闘機群に護衛された爆撃機を迎撃しようとしても、迎撃戦闘機の数が敵の護衛戦闘機の数よりも数的に不利であれば、迎撃が不可能となる道理です。>
<「要塞には一個艦隊もの戦力が存在しており」
質量弾攻撃が迎撃されて成立しない、ということですね。
これも、当然上で述べているように、迎撃側の艦船の数量よりも、攻撃側の艦船の数量の方が多いならば、当然、迎撃艦隊が攻撃側の艦隊に拘束されて、有効な迎撃ができなくなるだけの話です。>

No6367で上の引用のように書きましたが、数的に劣勢なヤン艦隊の迎撃は、別にラインハルトの艦隊にとっての障害にはならないでしょう。
また、ヤンの方で、質量弾攻撃の阻止、のために兵力を割く、もしくは主兵力を差し向ける必要性が生じるのであれば、戦場の決定権をラインハルトに譲り渡してしまうことになります。わざわざ、質量弾に随伴するラインハルトの艦隊の待ち受ける地点へ、ヤンが艦隊を率いて出向く必要があるわけですから。「待ち伏せ」するという有利点すら、ヤンは放棄させられてしまうことになります。
ゼッフル粒子の散布は、逆手に取られたら、事前に引火されて、無駄に消費されるだけの結果になると思いますね。

また、質量弾攻撃のメリットは、人命と艦船の無駄な消費を避けることができる点にあります。第一次攻撃用質量弾が敵の見事な迎撃にあって全滅することがあっても、1個艦隊が壊滅する、などの場合と比べたら、無視できるほど軽微な損害なのです。ビッテンフェルトやファーレンハイトの艦隊が大打撃を受け、人命および艦船に著しい損害を受けたようなことに比べれば、質量弾の100や200が破壊されることなど、どうという損害ではないでしょう。

帝国軍に要塞攻略の手数(攻撃方法)が増えるという点からみるだけでも、ヤンがそれに対して対処する必要を迫られる点だけでも、質量弾攻撃には大きな効果があると思いますね。「回廊の戦い」でも、質量弾を帝国軍が動員していたなら、それを撃滅するために、ヤン艦隊が一部の艦隊兵力を割いて質量弾攻撃を強いられたり、帝国艦隊の包囲網を解く結果になったりして、質量弾攻撃はとりあえず防げたが、ヤン艦隊は敵艦隊に側背を曝す結果となって、艦隊戦で壊滅してしまった、なんてことになるかもしれません。ヤン艦隊が壊滅すれば、そのまま降伏を迫るもよし、次の質量弾を用意して、それから要塞攻撃を始めるもよし、ということになるでしょう。

回廊に敷設された機雷源の撤去方法についても、他投稿で述べたので省略します。

それから、結局のところ、議論の目的は、どこにあるのでしょうか?
質量弾攻撃の否定が目的であるならば、その線に限って議論を展開してもらえると、私の方も考慮する要素が少なくてありがたいのですが。


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