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私の創竜伝考察7
創竜伝3  逆襲の四兄弟


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No. 963
私の創竜伝考察7
投稿者:冒険風ライダー 1999/3/26 14:32:16
 今日からまた、「私の創竜伝考察シリーズ」を再開します。今回の批評対象である創竜伝3は社会評論以上にストーリー展開に問題があります。創竜伝3は創竜伝シリーズ中、もっともストーリー破綻がひどく、しかもその破綻したフィクションをもとに現実の社会評論をしているという、フィクション小説としての最低限必要なボーダーラインにさえ達していないシロモノです。創竜伝3の批評は、これを中心に取り上げようと思います。
 それでは始めましょう。

創竜伝3「逆襲の4兄弟」
1988年11月5日 初版発行

P67上段〜下段
<「きたない、外見が他のものとちがっている、というだけで、相手の生命を奪って平然としていられる、そういう人間、ヴラドの子孫のような人間が、日本人の若い世代には、どんどん増えているわ」
 声もなく、蜂谷は聞き入った。冷徹なはずの彼も、レディLの話に圧倒されていた。
「そして、彼らの特徴として、かならず複数でひとりを、多数で少数を襲うこと。一対一の闘いなど絶対にしない。相手を一方的に傷つけ、決して自分は傷つかず、自分ひとりで責任をとることはない。笑うべきことに、匿名でいやがらせの手紙を送るていどのことでさえ、自分ひとりだけではできず、仲間とつるむのよ」
「…………」
「若い世代が、これほど精神を荒廃させ、腐食させつつある国は、日本の他にないわ。二一世紀がほんとうに楽しみだこと」
「そ、それがヴラド計画だと……」
「最初はべつの名が考えられたそうだけど、芸がないということで、ヴラド計画と命名されたの」
 最初に考えられた名は、「ヒットラーの孫」という。>

 創竜伝3におけるストーリー破綻の2大要素のひとつ、「ヴラド計画」についての説明です。このヴラド計画の内容って、なんか朝日新聞や田中芳樹の特性を非常によく説明していると感じるのは私だけでしょうか。
 それとレディLさん、「若い世代が、これほど精神を荒廃させ、腐食させつつある国は、日本の他にない」ってウソを言ってはいけませんよ。アメリカの青少年の精神的荒廃や家庭崩壊は、日本など比べ物にならないほど物凄いレベルではないのですか? まったく21世紀が楽しみな事ですな。
 しかもさらに笑止なことに、なんとこのフィクションの設定をもとに、この先のページで現実世界の社会評論を展開しているではありませんか。

P68上段〜下段
<いまや日本の青少年たちは、ヒットラーの孫たちが、おおぜいいるではないか。群をなして行動し、ひとりでの行動を排除する。政治にも社会にも関心がなく、権力者が不正をはたらいていても、したり顔で「誰もがやってることだ」という。自分たちとちがう意見を持つ者を排斥し、匿名でいやがらせの手紙やカミソリを送りつけ、脅迫電話をかけ、机にナイフで「死ね」と彫りつける。ヘアスタイルがちがうというだけで、同級生を階段から突き落とし、言葉になまりがあることを理由に、給食のミルクを頭からひっかけ、嘲笑し、はやしたてる。多数=権力=正義という図式を単純に信じこみ、少数=悪とみなして、どんなことをやっても個人の責任をとらずにすむと思っている。
「冗談のつもりだった。みんながやっていたから自分もやった。だから責任をとる必要はない――それが彼らの主張よ。ひたすら自分だけがかわいいのだわ」>

 まず、これらの主張は何ひとつ現実と合致していません。上に書いてある事件は確かに実際にあったのでしょうが、マスコミで報道されたごく少数例をあげつらって日本がファシズムへの道を歩んでいるというのは話が飛躍しすぎていますよ。
 「いまや日本の青少年たちは、ヒットラーの孫たちが、おおぜいいるではないか」……自分が作ったフィクションからこんな断定ができるとは、田中芳樹の感性は素晴らしいものがありますな。ひょっとして、田中芳樹は現実と虚構の区別がつかないのではありませんかね?
 「政治にも社会にも関心がなく、権力者が不正をはたらいていても、したり顔で「誰もがやってることだ」という」こんな人がいたら、ぜひお目にかかりたいものです。少なくとも私は知りませんが。現実には、政治批判や社会批判は日常茶飯事に行なわれていますし、政治や社会に関心を持つ人は結構多いものです。
 「多数=権力=正義という図式を単純に信じこみ、少数=悪とみなして、どんなことをやっても個人の責任をとらずにすむと思っている」これはそっくりそのまま田中芳樹に返してやりたいセリフですね。多数派の朝日新聞や左翼団体の論調のまねをし、そして自分の主張を支持する多くの読者がいるのに、少数派ヅラしてほしくありませんね。自分の主張が間違っていたと指摘された時に、間違っても「冗談のつもりだった。みんながやっていたから自分もやった。だから責任をとる必要はない」などと主張しないでくださいね。
 日本の青少年の精神的荒廃とやらが仮に事実であったとしても、それをもたらしたのは4人姉妹などではなく、竜堂始のような教師を率いる日教組と、それを支援する朝日新聞と田中芳樹のような左翼的論調がその元凶であると私は考えています。大嫌いであるはずの「陰謀史観」を持ち出してフィクションである4人姉妹に責任を押し付けないように。

P89下段
<人命再優先というのが、日本の警察の基本精神である。すくなくとも、建前はそうなっている。>

 建前だけでなく実態もそうです。これだけ見ていると日本の警察が建前だけを振りかざして派手に人殺しを展開しているみたいではないですか。まあいつもの読者に対する悪のイメージの植えつけでしょうけど。

P95下段〜P96上段
<第2次世界大戦後、私立大学出身で首相となった人に、石橋湛山がいる。早稲田大学を卒業してジャーナリストとなり、剛直で識見に富んだ自由主義者として名声をえた。軍国主義の嵐が吹き荒れる時代に、「朝鮮や台湾のような植民地を放棄し、中国大陸から撤兵せよ」と主張した、知性と勇気の人だった。戦後、政界に転じ、大蔵大臣、通商産業大臣をへて、1956年末に首相となった。病気のため、わずか2ヶ月で辞任したが、やめぎわもじつにいさぎよく、人々に惜しまれた。もし石橋内閣が3年つづいていれば、戦後日本の政治は、貼るかに清潔で開明的なコースを歩んでいたであろうといわれている。>

 田中さん、肝心の記述が抜けていますよ。これだけではなぜ石橋湛山が「朝鮮や台湾のような植民地を放棄し、中国大陸から撤兵せよ」と主張したのかが分かりません。その部分を私が補足説明致しましょう。
 石橋湛山がこのように述べたのは、植民地支配が悪いと考えたからではありません。石橋湛山が経済的な計算をしたら、日本の植民地支配は大きな赤字経営になっていました。朝鮮半島や台湾のインフラ整備や教育政策などで多くの費用を費やし、軍隊も駐留させなければならず、しかもイギリスなどのような苛烈な搾取をしていなかったため、日本から資金が出ていくだけで、日本にとって何の利益もありませんでした。この考えからいくと、日本は植民地を放棄したほうが利益がある上に、植民地を持つ国に対して道徳的にも有利になるという観点からこのような主張をしたのです。これについては、自由主義史観研究会のHPに詳しく載っています。
 そのあたりの事情を何も説明せずにあのような主張を載せると、「植民地支配が悪い事だと思ったからあんな主張をしたのだな」と読者が誤解してしまいます。実際私もこの事実を知るまでそう誤解していましたし。田中芳樹のねらいはそれだったのでしょうが。

P96下段
<首相の金権ぶりは外国にまで知られている。イギリスの有力な週刊誌に名ざしで「日本における金権腐敗政治の最悪の申し子」と書かれたほどだ。
 そのように腐敗した政治家が、なぜ失脚もせず首相の座についていられるかというと、よくしたもので、腐敗した政治家には、ちゃんとそれにふさわしい支持者がついているものだ。
「政治家が賄賂をとって何が悪いの! いじめるなんてかわいそうじゃないのっ」
と叫ぶ、花井夫人のような人たちが。>

 日本を批判する時に外国の力を借りるという手段は左翼連中の常套手段ですし、創竜伝でもあちこちで使用していますね。いつもあれだけアメリカをののしっているくせに、日本を罵倒する時はちゃっかりその記事などを引用する。連中が信用ならない理由の一つです。
 それはさておき、「腐敗した政治家には、ちゃんとそれにふさわしい支持者がついているものだ」というのはこれまた有権者を侮辱した言葉ですね。首相を支持する有権者全てが「花井夫人のような人たち」だとでも思っているのでしょうか。野党を支持してもろくな政治をしないのですから消極的支持というのもありますし、日本をここまで牽引してきた自民党(創竜伝では保守党ですけど)の首相だから支持しているというのもあるでしょう。政治家の支持する人には様々な事情があるのに、それを全てひとつにくくって「花井夫人のような人」だと斬り捨てるような人間こそ「ヒットラーの孫」であると私は言いたいですね。

P97上段〜下段
<アメリカ合衆国では、大統領が株の売買をおこなうことを、法によって禁止している。実質的に四人姉妹の政界代理人にすぎないとはいえ、公権力をつかさどるからには、私人としての利益を追求してはならない。法制度がそうなっている。それが近代民主国家というもので、権力者が公私混同をほしいままにして私腹を肥やすような国、たとえばソ連や日本などは、近代民主国家とは、とてもいえないであろう。一方は軍事力が、一方は経済力が、異常に肥大し、イギリスやフランスから、「この両国さえ消えれば世界は平和だ」と痛烈に皮肉られている現実である。日本人は、自分の国は平和な文化国家だと信じているだろうが。
 日本国政府の年間予算で、軍事予算は全体の六・五パーセントを占める。 一方、文化・芸術関係の予算は、○・○七パーセントでしかない。西ドイツの一・○四パーセント、フランスの○・四二パーセントにくらべ、目をおおわんばかりの惨状である。予算額から見れば、日本が文化大国であるか軍事大国であるか、答は歴然としている。保守派の論客でさえ、あまりのひどさにたまりかねて、「もっと文化・芸術関係の予算をふやせ」と意見したほどだ。だがその意見を首相が受けいれることはないだろう。古い寺院を修復したり、人形劇やオぺラを振興したって、一円の見返りがあるわけでもないのだから。>

 ここは管理人さんも指摘していましたが、この記述から、アメリカを近代民主国家とみなす事は不可能ですね。4人姉妹の設定と現実のアメリカの設定が矛盾しています。
 さて、「権力者が公私混同をほしいままにして私腹を肥やすような国、たとえばソ連や日本」って、日本で「公私混同をほしいままにして私腹を肥や」している人がいますかね? まあまるっきりいないわけではないでしょうけど、いくらなんでもソ連と並べられるほど多くないとは思いますよ。それに日本では、そういった人がいたら批判されますしね。ソ連とは大違いですよ。「一方は軍事力が、一方は経済力が、異常に肥大」しているというのならば、軍事力と経済力が共に「異常に」肥大しているアメリカの立場はどうなるのでしょうか。まさか「アメリカがいなくなれば世界は平和だ」とは言いませんよね。
 それと後半のパーセンテージはずいぶん都合のよいものばかり取り上げていますね。当時の西ドイツとフランスの軍事費の割合を教えてくださいよ。それと各国の実際の軍事費と文化・芸術関係の予算の金額も提示してほしいものです。そしてなぜそうなっているのかという理由も教えてほしいものですね。そこまでしないと、この文章は社会評論として成立しませんので。

 今回はここまでにしましょう。次は創竜伝3のもうひとつのストーリー破綻の要素について検証したいと思います。


No. 965
3500万人ねえ…
投稿者:M野 1999/3/27 00:18:52
冒険風ライダー様、お返事ありがとうございます。

3巻の批評を拝見しましたが、いやはや、反日が暴走していますね。私にはとても読み返すことなどできません。胃薬が大量に必要です。

印象から言えば、朝日より、むしろゲンダイに近いと思います。政府のやることは全て悪と決めてかかる所、痰でも吐き捨てるかのような文体など、そっくりです。

ところで、スラブ人の人口って、どれくらいだったのでしょうか。
以前、始氏の発言で、ヒトラーがスラブ人を3500万人虐殺したというものがあったという書きこみを拝見したのですが。
3500万人というと、一国の総人口に匹敵します。ひょっとすると、南京大虐殺犠牲者30万人説のように、総人口より多くの人を虐殺したと言っているかもしれません。


No. 992
原発と少し
投稿者:ドロ改 1999/3/30 18:39:17
>スラブ人3400万虐殺

恐らくその数字は、一般的な戦争犠牲者(空襲等)を含んだものだと思います。そう考えれば、ソ連だけで軽く1千万単位の死者が出てるので、驚くにはあたらないでしょう。実際、ナチスの占領政策から考えて、どこまでが「虐殺」の犠牲者かは曖昧にならざるを得ませんし。不用意に作品中で使った事は、反論を受けて当然でしょうが。(議論になれば、ですが)
ちなみに、ソ連は確かに怪しいですね。あの国は、ポーランド占領時にソポ戦争(これ自体は西側にバックアップされたポーランドの、露骨な領土拡張戦争)の復讐に所謂「カチンの森事件」でポーランドの将校捕虜を大量虐殺した挙句、ばれた後でドイツに責任を押し付け様として論破されたりしてますから。ただ、2次大戦中ソ連よりドイツの方がより長く東欧を占拠していたので、確率的にはドイツ犯人の可能性が上でしょう。


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