私の創竜伝考察23

軍事関連特集 後編

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board1 - No.2108

私の創竜伝考察23 軍事認識編

投稿者:冒険風ライダー
1999年09月30日(木) 02時39分

 これまでの「軍事描写編」及び「兵器描写編」で、田中芳樹の「現代の軍事に対する無知」が明らかになりました。この無知に基づく創竜伝の軍事関連の社会評論がどれほど迷走しているか、そしてそれらを支える田中芳樹の軍事認識とはいかなるものなのか。創竜伝の軍事関連特集・最後の三回目「田中芳樹の、非常識レベルの軍事認識」では、それらを中心に論じてみたいと思います。
 なお、特に断りがない限り、旧ソ連の国名はロシアに統一します。

 それではまず、田中芳樹の現代兵器に対しての認識から始めてみましょうか。

創竜伝9 P198上段〜下段
<旧ユーゴスラビアでは、異なる民族同士の恋愛や結婚など珍しくもなかった。セルビア人とムスリム人の夫婦などいくらでもあった。それがセルビア、クロアチア、ボスニアなどに分離独立すると、苛烈な内戦がおこり、各民族が殺しあいをつづけるに至った。民族間の憎悪は恐ろしいが、それを扇動し利用するものがかならずいる。旧ユーゴスラビアの内戦は、各民族が手持ちの武器弾薬を費いはたせば終熄するはずだった。だが、中南米諸国を中継点として大量の武器弾薬が旧ユーゴスラビアに輸出され、延々と内戦はつづき、人が殺されていったのである。>

 作品設定上、これは「四人姉妹の陰謀」という事になっていますが、こんな井沢元彦氏曰く「言霊思想」に頭からかぶれているようなことを書いているのでは、現代兵器に対する考え方も簡単に分かろうというものです。
 どうやら田中芳樹は、旧ユーゴスラビア(セルビア)の内戦の原因が「武器弾薬」にあり、四人姉妹が武器を輸出しているから内戦がつづくのだという認識のようですが、これは全く逆で、内戦が続くから武器弾薬が輸出されているというのが真実でしょう。いくら何でも「武器弾薬」が存在するだけで内戦が続くわけがありません。これはあの地方の民族問題こそが最大の原因なのであって、だからこそ「武器弾薬」の需要ができたということがわからないのでしょうか。
 そもそもあの「旧ユーゴ」一帯は、第一次大戦が勃発したきっかけがこの地方の民族問題であるという事からも明らかなように、昔から多くの民族と複数の宗教とが複雑に混在している地帯です。だから昔から様々な紛争や領土争いが発生していましたし、この地を治めるには相対的に大きな力を持った政府が必要だったわけです。オスマン・トルコ、オーストリア帝国、そして旧ユーゴスラビアなど、いずれも「相対的に強大な力を背景にこの地を統治した」わけです。したがって、その「抑え」である旧ユーゴスラビア自体が崩壊し、クロアチアやスロベニアなどが独立してしまえば「俺達も独立してやろう」「他の国に帰属しよう」という考えがあちこちから出てくるのは当たり前です。
 そしてそのような主張をされると困る国もあるわけで、今年の3月〜6月にNATOの空爆を受けたセルビア共和国などその典型でしょう。人口の90%がアルバニア住民が占めるコソボ自治州の帰属問題では、セルビアのミロシェビッチ大統領が、コソボ自治州のアルバニア系住民を徹底的に追放・殺害する民族浄化政策まで始め、それが「人権問題」や「周辺諸国への難民流出問題」にまで発展してNATO空爆に至ったわけですが、この事情からしても「武器弾薬」が内戦を継続させているわけではない事は明らかです。
 だいたいセルビアの民族浄化政策で弾圧されているアルバニア系住民や少数民族にしてみれば、日本と違って警察力なんて期待できないし、そもそも自国の政府に弾圧されているのですから、「自分の身は自分で守る」しかないのです。そうなると必然的に自己武装する必要があり、そこから兵器の需要が発生して武器が売れるわけです。民族問題が何らかの形で解決しない限り、武器の有無にかかわらずこの状況はずっとつづくわけで、それを「武器があるから戦争が起こる」などと的外れな事を主張するのでは、典型的な「言霊思想」の持ち主としかいいようがありません。軍事を論じるならば、せめて「武器は人を殺す道具であると同時に自分を守るための道具でもある」という認識ぐらいきちんと持っていてほしいものです。現代兵器の重要性を「絶対悪」としかみなしていないのでは、まともに軍事を語る事は絶対に不可能なのですから。

 このような田中芳樹の現代兵器に対する奇怪な認識は、創竜伝の間違いだらけの兵器描写や、四人姉妹に見られる「軍需産業の繁栄」などにもはっきり表れています。兵器描写の間違いについてはすでに述べたので、四人姉妹の方を検証してみましょう。

創竜伝6 P107下段〜P108上段
<デュパン家では、南北戦争で「死の商人」として名をはせ、競争企業をたたきつぶしては吸収し、第一次世界大戦では連合軍の使用した弾薬の四〇パーセントを供給した。原子爆弾の開発にもかかわった。戦死者の遺体を保存する薬品の販売も独占した。戦争を喰物にして一〇〇〇億ドルもの資産をきずき、その間に血族間の結婚をかさねてきたのだ……。>

 創竜伝の四人姉妹に関する記述を見ていくとやたら目に付くのが、上記のような「兵器産業で財をなした」という記述です。確かに現在アメリカの兵器輸出量は現在でも世界一ですし、日本と比べれば兵器産業が充実している事も事実ではあるでしょうが、何かこれだけを見ると、まるでアメリカだけが兵器輸出大国であり、しかも世界の兵器生産を独占した上で、戦争を誘発するために兵器を世界各国に輸出しているかのようですね。言うまでもありませんが「兵器産業が充実し、兵器を大量輸出している国」はアメリカだけではありません。国連常任理事国の5ヶ国は、実はそれと同時に兵器輸出大国でもあるのです。特にロシアと中国は兵器輸出の世界第2位と3位であり、しかも「外貨獲得のために兵器を輸出する」と公言している国です。田中芳樹の「兵器産業は莫大に儲かる」という理論が正しいのならば、兵器輸出大国のひとつであるこれらの国にも、四人姉妹に匹敵する財閥がひとつぐらいあってもおかしくないんですけど。
 そして四人姉妹の設定によると、経済的に直接支配しているのはアメリカだけであり、ロシアと中国は支配下に入っていませんし、EU(ヨーロッパ連合)の場合は創竜伝の記述があちこちで矛盾しており、所々で支配下にあったりアメリカと対立していたりと支離滅裂な描写を展開しているために訳がわかりません(笑)。アメリカとヨーロッパ諸国とでは兵器の生産規格が違うのですから「両者は違う陣営じゃないの」と私は言いたいのですけど。いずれにしても、このことから言えることは「アメリカだけが兵器輸出を独占しているのではない」という事実です。アメリカだけが兵器産業を独占しているわけではなく、当然兵器産業にも市場原理が働くため、そこから「アメリカだけが莫大な利益を得る」という体制を築く事は不可能です。
 それなのに田中芳樹は、まるでアメリカの兵器産業が兵器生産を独占して潤っているかのような記述をし、しかもそれに基づいて社会評論を展開するというありさまです。こんな低レベルな勧善懲悪的ストーリーの中でしか通用しない認識で、現実世界のアメリカを「戦争を誘発させて兵器を輸出している」などと勝手に決めつけないでほしいものですね。まあ湾岸戦争で使用された兵器がどこの国の兵器であるかも分からないようでは仕方がないかもしれませんが(--;;)。
 第一、「戦争を誘発させて兵器を輸出している」のは、アメリカよりもむしろ「兵器輸出による外貨獲得」に奔走しているロシアと中国の方ではないかと思うのですけどね。この2国は兵器開発の技術提供まで行っているようですし(^-^)。

 さて、アメリカ・ロシア・中国などの兵器輸出大国が兵器輸出を積極的に行う理由は何か? それは「軍事に無知」な田中芳樹でさえも認めているように「外貨の獲得」です。しかし外貨を得て何をするのかについての田中芳樹の認識がまた「兵器産業の繁栄」などという単眼なものですからね。当然利潤を得るのが目的なのですからそれもありますが、それよりも軍備増強や兵器開発、兵器生産のインフラ整備、兵器単価の軽減など、軍事関連の強化という目的の方が主です。高くなりがちな兵器を安く抑えるために兵器の大量生産のインフラを整え、兵器を輸出して外貨を得、その資金で兵器開発や更なるインフラ整備を行い、兵器生産費の軽減を目指す。このサイクルを繰り返す事によって、兵器の運用性を高めているという実状が、どうも田中芳樹には理解できていないとしか思えませんね。
 一方、兵器を輸入する方にも次のような利点があります。

1.兵器生産のインフラを整える必要がない
2.必要な数だけの兵器を購入することができ、効率が良い
3.各国の兵器や兵装を比較し、安価で高性能な兵器を選択できる
4.自国で兵器を生産するよりもコストが安い。

 ただし、国家同士のトラブルで兵器輸入対象国と対立し、兵器が輸入できなくなるという事態を未然に防ぐために、兵器輸入対象国を2カ国以上に設定し、いざという時のために備えるという事も必要になります。また、兵器はアメリカ製、兵装はロシア製といったように、兵器と兵装がそれぞれ別の国の製品という例も多いのです。
 兵器生産と、それにともなうインフラ整備というものは非常にコストがかかりますし、独自の兵器を開発するにも莫大な費用と高度な技術を必要とするため、他国の兵器を輸入した方が経済的であるという理由こそ、アメリカ・ロシア・中国などをはじめとする兵器輸出大国が兵器生産で儲かる最大の理由なのであって、創竜伝の社会評論のように、アメリカが戦争を勝手に引き起こして兵器を押しつけている訳ではないのですけどね〜(-_-;;)。兵器を購入する側の事情を全く考慮していないのが見え見えです。
 兵器産業と兵器輸出もまた、「需要と供給」と「競争」による市場経済の原理で動いているという事ぐらい、社会評論で軍事を論じるのならば知っていてほしいものなのですけど。

 上記のようなアメリカ・ロシア・中国などの兵器産業の実状と、兵器を全く輸出していない日本の兵器産業の実状は当然ながら全く異なります。上記のような兵器効率生産サイクルが実行できず、しかも需要がほとんどない日本国産兵器の兵器単価は、当然ながら高くならざるをえません。しかも日本は、アメリカの兵器のライセンス生産を行っていますが(F15Jイーグル戦闘機やパトリオットなど)、これがさらに兵器単価を押し上げる原因のひとつにもなっています。もともとアメリカ製の高額な最新鋭兵器を自国で生産し、しかも兵器生産元のアメリカに対してライセンス契約料を支払うという、一番兵器コストが高くなる方法を採用しているのですから。もっとも、これは日米安保で米軍と共同行動をとるためと、アメリカの最新鋭兵器が自国で生産・修理できるという利点が求められたからで、やむをえない一面もあるのですけどね。
 また、これらの兵器生産のために、アメリカから高価で特殊な電子機器を輸入している事も、兵器単価の高騰に拍車をかけています。
 それらの事情を完全に無視して兵器の高さを嘆くのですから、その社会評論の支離滅裂ぶりは明らかでしょう。兵器を安くするなら、外国製の安価な兵器の輸入か、大量生産による兵器輸出をすれば良いのですが、まさか田中芳樹も、兵器単価を安くするための兵器の大量生産と輸出を奨励しようとは言いますまい。何しろ田中芳樹は「日本が軍事大国化している」などと「批判」しているのですから。日本の兵器が高いという事実に何の見境もなく喰いつくから、こんな醜態をさらす事になるのです↓

創竜伝3 P140下段
<そして一方では、際限のない軍事大国化がある。一九八八年、アメリ力の下院において、国務省高官が「日本の軍事予算は、フランス、イギリス、西ドイツを一挙に抜きさって世界第三位となった」と証言した。同年七月のワシントン・ポスト紙は、「戦争放棄をうたった憲法を無視して、日本は世界最大級の軍事大国のひとつとなった」と論評した。インドネシアの大統領は、日本の防衛庁長官に、「軍事力で勝つような時代ではない」と忠告した。かつてアメリ力国務長官をつとめたキッシンジャーは「米ソ両国はおたがいだけを見ているが、日本というあらたな軍事大国が出現しつつあることを忘れぬほうがよい」と述べた。世界じゅうの国々が警戒を強めつつある。知らないのは当の日本人だけてある。>

 兵器産業の実状とコストパフォーマンスを見ただけでも、「日本の軍事大国化」などというタワゴトが嘘っぱちである事は一目瞭然ですが、今度は日本の自衛隊の軍事力規模の観点から検証してみましょう。
 1998年度の自衛隊の部隊編成を見てみると、

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
自衛隊の軍事力構成
・ 自衛官…………………………………………約23万6千人
・ 自衛隊費………………………………………約429億ドル
・ 格弾道数………………………………………0
・ ICBM(大陸間弾道ミサイル)…………0
・ SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)……0
・ IRBM(中距離弾道ミサイル)…………0
・ 短距離弾道ミサイル…………………………0
・ 戦略爆撃機……………………………………0
・ 潜水艦数………………………………………16隻
・ 揚陸艦艇数……………………………………28隻
・ 戦車数…………………………………………1110両
・ 艦艇数…………………………………………249隻
・ 作戦機(海軍機含む)………………………478機
・ 武器輸出………………………………………0
・ 武器輸入………………………………………7.9億ドル
・ 武力行使回数…………………………………0
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 これは、実は規模だけを言えばそれほど大規模な軍隊ではありません。特に陸上自衛隊の定員数(定員16万人)はかなり少数で、台湾(陸上戦力約29万人)よりも少ないと言うのが実状です。むろん、兵器の質や自衛官の練度・士気となればまた話は別ですが。
 しかも1995年11月に策定された「防衛計画の大綱」(防衛政策の基本指針)では自衛隊の軍縮を提唱しており、今でもこれに基づいて軍縮が行われています。軍事力規模や組織構成のどこを見ても、とても「軍事大国」と言えるものではありません。
 ではなぜ自衛隊の軍事費が世界第三位などと言われるのか? 上で挙げた兵器単価の高騰もありますが、それ以外にも自衛隊の人員が志願制で成り立っているという事情があります。実は世界のほとんどの国は選抜徴兵制を採用しており、軍事費における人件費の割合が少ないのですが、日本は志願制であるために人件費を高くしなければならず(安いと隊員がやめていくため)、そのために軍事費における人件費の割合が半分近くも占めているためです。
 それに加えて、日本の物価は田中芳樹が社会評論で明言する通り高いのですから、当然人件費もそれに合わせて高騰します。だから年々「日本の軍事費」が上昇していくのは軍拡をしているからではなく、単に人件費が上がっているだけであるというのが実状で、この観点から見ても「どこが軍事大国化しているんだ」とツッコミをいれたくなってしまいますな(^^)。
 他国との軍事費の比較検証をする時、軍事費の額だけでなく兵器の購買力平価と人件費とを同時比較し、さらに物価高の違いも考慮しなければ、かなり偏ったデータが出てくるという事実も知らないで、

日本の軍事費は世界第三位―→日本の軍事力は世界第三位―→日本は軍事大国化している

 などという単純な3段論法を展開できる田中芳樹の低レベルな軍事知識には哀れみさえ覚えてきます。第一、日本が本当に「世界第三位の軍事大国」ならば、それだけの実力を持っている国を「属国」(By創竜伝の社会評論)にできるアメリカは、軍事的に相当すごい国という事になるのですけどね。日本よりも軍事力がないイギリスや中国などがなぜアメリカに屈しないのでしょうか(笑)。

 ところで「軍拡」と言えば、本当に「軍事大国化しつつある」国が日本の目の前にありますね。そう、田中芳樹の大好きな中国です(笑)。まさにこの国こそ、旧時代の植民地主義を実行するために「超軍事大国化」を目指しています。田中芳樹は何でこっちの方を取り上げないのでしょうね。日本よりもはるかに大規模な「軍拡」を、それも周辺諸国の非難も顧みずに堂々と展開しているのに。
 中国の軍事費は、公開されている金額だけでも1986〜1995年の間に約320パーセントも増大している上、今なお毎年2桁のパーセンテージで増大しています。しかもソ連から安価な兵器を大量に輸入し、Su−27フランカー戦闘機やT80主力戦車のライセンス生産なども取得しています。もちろん日本と違って選抜徴兵制を採用していますから、物価安とも相成って人件費は安いものです。おまけに日本の高額な兵器単価と違い、中国の兵器における購買力は日本の10倍以上ですから、兵器運用も効率的なものです。「世界第三位」の兵器輸出大国でもあるし(笑)。
 軍事力の規模も日本とは比べ物になりません。1998年度の中国の軍事力の概要を紹介しましょう。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
中国人民解放軍
・ 正規軍…………………………………………約293万5千人
・ 国防費…………………………………………約317億ドル(公式数字97億ドル)
・ 格弾道数………………………………………450(2350との情報もある)
・ ICBM(大陸間弾道ミサイル)…………20基(射程8000キロ以上)
・ SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)……12基(射程4000キロ)
・ IRBM(中距離弾道ミサイル)…………多数 (射程5000キロ)
・ 短距離弾道ミサイル…………………………数百発(射程600〜900キロ)
・ 戦略爆撃機……………………………………180機(航続距離6000キロ)
・ 潜水艦数………………………………………63隻(他に原子力潜水艦1隻)
・ 揚陸艦艇数……………………………………430隻
・ 戦車数…………………………………………8500両
・ 艦艇数…………………………………………894隻
・ 作戦機(海軍機含む)………………………4175機(ただし爆撃機は含まず)
・ 武器輸出………………………………………8.7億ドル
・ 武器輸入………………………………………17億ドル
・ 武力行使回数…………………………………15
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 上記の日本の自衛隊のデータと比較してみてください。中国の軍事力がいかに桁外れであるかがお分かりいただけるかと思います。これでも日本の軍事力の方が脅威であるというのならば、よほど自衛隊も過大評価されたものです(笑)。
 しかも公開されている中国の軍事費(上記データでは97億ドル)では、上記の軍隊を支えるのは到底不可能である上、公式予算以上の金額に相当する兵器をソ連から購入していたりするため、中国の実際の軍事費は、公開されている軍事費の最低2〜3倍以上(上記データでは317億ドル)、最大で16倍にも達すると推定されています。軍事力の規模や「武力行使の実績」を見れば、日本と中国、どちらが「軍事大国」であるか、答えは歴然としていますな(^^)。
 そしてこの中国の「軍拡」に対する脅威に対抗するために、兵器スペックの更新と自国の発言権強化という目的も兼ねて、東南アジア諸国でも、経済力を背景にして軒並み「軍事予算2桁のパーセンテージの伸びの軍拡」が行われています。また、インドとパキスタンが核実験を成功させ、核を保有したのは周知の事実です。周辺諸国が軒並み「軍拡」を展開している中でただひとり「軍縮」を行っている日本を指して、よくまあ「軍事大国化」だの「軍国主義の道を歩んでいる」などと言えたものです。

 そして何よりも日本の自衛隊には、「軍事描写編」で指摘したような法律問題が存在します。「90式戦車が橋を渡れない」というのは道路交通法の束縛を受けているからですし、そもそも自衛官は「正当防衛や緊急避難」の時(しかもこれ自体も定義があいまい)以外は発砲もままならない状態なのですから、これで「侵略戦争を展開できる」などと考える方がおかしいのです。
 そういえば、スクランブル発進についても次のような事件がありました。
 1976年、当時のソ連のミグ25フォックスバット戦闘機が、北海道の函館空港に強行着陸し、それに搭乗していたベレンコ中尉が日本に亡命してきたという事件があったのですが、そのベレンコ中尉が次のような証言をしています。
「自衛隊の要撃機はすぐには発砲してこない、と聞かされていたから安心して領空を侵犯してきた」
いかにスクランブル発進といえども、すぐには発砲できないと「他国から信用されている」という情けない実状で、しかも今に至るもこの状況は変わっていません。
 また1978年には、当時の栗栖弘臣統合幕僚会議議長が「防衛出動命令が出される前に奇襲攻撃をされたら自衛隊は超法規的行動をとらざるをえない」と発言して罷免されましたが、これが何を指しているかは「軍事描写編」を見た人には分かるはずです。
 最近では、3月の北朝鮮の領海侵犯事件で、海上保安庁の巡視艇が威嚇射撃しかできなかったために不審船を逃してしまったという事がありましたが、これも法制度の不備及び「ROE」(交戦規定)が整備されていないことが最大の原因です。「ROE」とは「有事の際の対処マニュアル」であり、これがないために自衛隊は、敵を発見した時などの緊急時に独自の対応が全くできないというのが実状です。航空自衛隊のスクランブル出動では若干規定されていますが(それでも不充分なレベル)、その他については全くありません。はっきり言って、このような法律的不備による野放し状態の方が「軍国主義」などという誇大妄想よりもはるかに危険なのですけど。
 しかしここで注意しなければならないのは、私が「軍事描写編」で「有事の弊害」として挙げたような法律は、まさに「平時」では重要な法律であるという事です。しかし「有事」の際にバカ正直に「平時」の法律を守る事は「軍事描写編」のような弊害を発生させるので、まさに「百害あって一利なし」でしかありません。しかしシビリアンコントロールの観点から言えば、たとえどんなに非合理的・非現実的な法律であっても自衛隊は従わなければなりません。どこぞの四兄弟のように「悪法も法なりはガラじゃない」などと言っていてはシビリアン・コントロールは成り立たないのですから。
 まさにそうであるからこそ「有事」のための「有事法制」を整えなければならないというのが私の考えなのですが…………多分こんな考えも「軍事予算の表面を見ただけで軍国主義と直結させてしまう人」には理解できないことでしょうね(-_-;;)。「有事法制」が整っていない国って日本ぐらいしかないのですけど。

 3回にわたって展開した今回の創竜伝・軍事関連特集、いかがだったでしょうか? 田中芳樹が創竜伝で展開していた軍事関連の社会評論やストーリー描写が、いかに事実とかけ離れたものであるか、またいかに社会評論を論じる際に必要な実証的検証を怠っているか、そして全くこの程度の軍事認識しかないくせに、お得意の中国関連では、創竜伝の悪役の「無知」をこき下ろしている田中芳樹の態度がいかに醜悪かつダブルスタンダード的であるかもお分かりいただけたかと思います。
 ところで、一連の軍事関連特集で私が思った事は、
「すくなくとも銀英伝やアルスラーン戦記など、架空世界の物語の中ではまともに軍事を論じられる田中芳樹が、なぜ創竜伝になるとここまで無知ぶりをさらけ出すのか」
という疑問ですね。まあ銀英伝やアルスラーン戦記の軍事知識も「基礎レベル」でしかないでしょうが、それでもあれだけ語れるだけでも「空想的平和主義者」や「朝日新聞」よりはまともな軍事認識を持っていると思ったのですけどね〜(-_-;;)。軍事に関する知的水準がここまで堕ちた理由が知りたいところです。

 さて、いよいよ次から創竜伝8に突入しますが、このあたりからいよいよストーリー破綻が本格的になってきます。これまでにも「社会評論により敵対関係が不明になる」「社会評論が現実とかみ合わないことによるストーリー破綻」というのがありましたが、創竜伝8以降のストーリー破綻は、それに加えて「ストーリーの流れ自体の破綻」が加わるため、いよいよ末期症状を呈してきます。
 創竜伝8では、このストーリー破綻を中心に論じていこうと思います。

「軍事描写編」及び「軍事認識編」参考文献
・「極東有事」…………………………………(志方俊之著 クレスト社)
・「平時の指揮官 有事の指揮官」…………(佐々淳行著 クレスト社)
・「宣戦布告」(上・下巻)…………………(麻生 幾著 講談社)
・ 有事戦略研究会HP
 http://www.iris.dti.ne.jp/~rgsem/Default.html
・Foreign Affairs ホームページ
 http://www.mmjp.or.jp/foreignaffairs/index.html

日本と中国の軍事比較データ 参考資料
・「侵略と戦慄 中国4000年の真実」…(杉山徹宗著 祥伝社)

収録投稿2件目
board2 - No.99

Re: 私の創竜伝考察23 軍事認識編

投稿者:heinkel
1999年10月11日(月) 01時19分

冒険風ライダーさんの「私の創竜伝考察23 軍事認識編」に関連して、次のような新聞記事を紹介します。

 産経新聞 10月9日付朝刊

 “信奉者”を困惑させた光景 中国の大軍事パレード

< 帝国主義の時代や東西冷戦の時期をほうふつさせるような中国人民解放軍の大パレードは、日本の一部の人たちにとってはなはだ具合の悪いものであったようだ。
 たとえば、毎日新聞は社説で次のように書いている。「国民が選んだ指導者ではない。国民を指導する独裁政党の指導者が、軍事パレードを閲兵して、外には軍事力を、内には党の威光を誇示する。いかにも社会主義国らしい光景である」
 軍事力を誇示して外国にすごみを利かせ、国民をおとなしくさせることが「いかにも社会主義国らしい」というなら、ひとつ聞いておかねばならないことがある。毎日は冷戦時代から引き続いて親中国、親社会主義国の姿勢をとってきたが、それは「社会主義国らしい」体制とはいかなるものであるかを、はっきり認識した上でのことだったのかという点だ。
 朝日新聞も社説で「中国の軍事力の増大や愛国主義の高まりは、周辺諸国の警戒心を呼び起こす。核兵器や弾道ミサイルを持つ中国の軍事大国化は、日中関係にとっても、アジアの安定にとってもマイナスである」と主張している。
 いかにも朝日らしく、その後すぐに「だからといって、いたずらに『中国脅威論』を振りまくことは、この地域の緊張をあおりかねない」などと例によって付け加えてはいるが、すくなくとも中国が軍事大国化している点だけは認めざるを得ない羽目に陥っているのだ。
 中国の軍事費が十一年連続で二ケタの伸び率を示したという事実があるにもかかわらず、「伸び率はインフレ率に見合うだけのものであり、中国は軍拡どころか軍縮をやっている」というこれまでの解説はいったいどうなったのか。まさか軍縮をやった結果、軍事大国になったというのではあるまい。
 人間の“哀れさ”を感じさせるような発言もあった。本紙の古森義久記者によると、北京で日本人記者団から反軍事、反軍隊の日ごろの言動と、今回の軍事大行進とのかかわりを聞かれた社民党の土井たか子党首が「行進なら別になにも問題ないでしょう」と答えたというのだ。軍事力の誇示と「軍事力の行使とか威嚇」(土井氏)とは無関係となんとしても言いつくろわなければ、立場がなかったのだろう。
 惚(ほ)れて惚れて惚れぬいた相手の実体を、旅路の果てで見なければならなくなったおんなのつぶやき。これはもう、山本周五郎や藤沢周平の世界だ。
 「多極化を推進する」と江沢民国家主席が式典で演説したように、中国がこの地域で米国に張り合えるような軍事大国になることを国家目標の一つにしていることは、とうに分かっていた。
 そこが見えていなかった人たちが、今回の中国流意思表示に困惑するのも無理はないが、これをきっかけに「実情をありのままに見つめ、冷静に向き合うことが大切だ」(朝日新聞)という空気が“文字通りの意味で”出てくるなら、これは悪い話ではない。中国の意志と能力をあるがままに見れば、日本のしなければならないことが、おのずから分かってくるはずだからだ。
 それをしても「軍事大国化への道だ」と非難する向きがあるなら、黙って大パレードのビデオを見せてやればいい。(牛場昭彦)>

 ・・・とくに論評せずとも、そのまま「軍事認識編」への補強となります(^^;

 以下、軍事的な余談。産経の10日付朝刊より

 コソボ平和維持部隊 新司令官に独大将

<【ベルリン9日=関厚夫】国連の実質管理下にあるユーゴスラビア連邦コソボ自治州に展開しているコソボ平和維持部隊(KFOR)の新司令官にドイツのラインハルト大将が就任した。ドイツの軍人が北大西洋条約機構(NATO)の展開軍の最高司令官になるのは初めて。
 〜 中略 〜 「今世紀になって初めてドイツ人が占領軍ではなく、地域住民を保護するための軍隊を指揮することになった。これはドイツ国民にとって非常に重要なことだ」ラインハルト司令官は就任初日の八日、州都プリシュティナでドイツ通信(DPA)のインタビューにこう答えた。>

 ・・・ニュースの内容もですけど、とりあえず名前に反応(笑)

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