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初代管理人の本論3
作品理論をぶち壊す創竜伝の時間構成


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初代管理人の本論3
作品理論をぶち壊す創竜伝の時間構成



 まず、結論から言おう。創竜伝は、小説と社会評論を混同しているために、小説の世界観が完全に破綻してしまっている。

 創竜伝の初期の段階では、ソ連が物語に影響してくる。「二〇世紀の終わりを数年後にひかえた」年であるはずだ。現実世界ではこのようなことはありえないが、しかし、執筆された時代背景を考えれば、当然だ。おかしな事ではない。逆に言えば、現実世界ならぬ創竜伝世界では、九一年八月二四日にソビエトは解体せず、存続しているのだと定義することが出来る。
 現に、6巻には、次のようなセリフがある。


「しかし、何ですなあ。ソ連軍が本当に攻めてきたら、道路を走れない戦車では防ぎようがありませんからな。その意味では、ありがたい時代になりましたな」
(創竜伝6巻 P130)



 ところが、何故だろう? 物語も7巻になると、ソ連の存在が突然怪しくなり始める。8巻に至っては、何故かソ連がまったく突然消えて無くなってしまっているのだ。例えば、7巻に次のようなセリフがある。


「ソビエト連邦はいまや統一国家としての体裁をなしておりません。哀れなるかな、レーニンの夢も、スターリンの野望も、滅びを待つのみです」
(創竜伝7巻 P10)



 また、9巻には以下のような文章もある。


『つい先日まで、ソビエト連邦はアメリカ合衆国と並ぶ超大国であり、世界最強の軍事大国であると思われてきた。それがごく短期間に解体し分裂して、残ったのは世界最大最強の貧乏国ロシアである。』
(創竜伝9巻 P42)



 善意に考えれば、創竜伝の世界では、現実世界で起こったことが、現実世界の数倍の凄まじさで、あたかもビデオの早送りのように起きたのだと解釈することが出来る。この場合、現実世界と創竜伝世界では社会の変革を構成する下部構造が全く異なってくるから、創竜伝に出てくる評論・解説は何の意味もないことになるのだが、それはとりあえずここでは置いておく。
 さて、以上のような「善意」の解釈よりも、もっと簡単で、もっと納得のいく解釈がある。
 6巻の発刊日が一九九〇年六月一五日。7巻が一九九一年九月五日、8巻が一九九二年四月一〇日である。
 6巻の執筆時点では、「現実世界の」ソ連は存在している。7巻執筆時点だと、ちょうど政変の真っ直中だろう。8巻執筆時点では、完全にソビエトという国家は消滅した。
 8巻に、次のような決定的な一文がある。


『一九九一年末にソビエト連邦が法的にも完全消滅してしまった。人々のおどろきは大きかったが、一面、納得もしたのである。
「なるほど、国家というものは消えてなくなるものなんだなあ。べつに永遠でも不滅でもないんだ」』
(創竜伝8巻 P110)



 …「二〇世紀の終わりを数年後にひかえた年」という設定は何のために作ったのだろう? 今までの話はどういうつもりで展開していたのだろう? 彼は、こんな取るに足らない、くだらない社会評論をするために、自分自身が作り上げた作品世界の因果律を、整合性を、自らぶっ壊したのである。




※ 年齢および年数表記は「JavaScript」を使用した計算結果を出力表示。
 年数計算は以下の通り。
 創竜伝発売からの年数 = 現在の年月日 − 1987年8月 5日
 竜堂始の年齢     = 現在の年月日 − 1964年1月17日
 竜堂続の年齢     = 現在の年月日 − 1968年1月17日
 竜堂終の年齢     = 現在の年月日 − 1972年1月17日
 竜堂余の年齢     = 現在の年月日 − 1974年1月17日

※ ブラウザの未対応や無効設定、その他何らかの理由で「JavaScript」プログラムが正常に動作しない場合、この文章執筆当時(1998年)からの年齢・年数計算を表示。




田中芳樹を撃つ!初代管理人 石井由助







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