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反銀英伝・思考実験編
1−A

同盟軍、フェザーン侵攻作戦(1)


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No. 216
田中芳樹は軍事は暗いのではないか?
投稿者:不沈戦艦 1998/11/24 12:54:23
 私が銀英伝の設定で一番納得のいかないところはフェザーンの存在自体です。はっきり言って、あんなもの成立する訳はありません。ホット・ウォーを行っている2大軍事大国の狭間で、しかも2つしかない両国を結ぶ航路の1つを押さえておきながら、軍事的には無力な経済的国家?そんな馬鹿な。あり得ませんよ。現に、作中でラインハルトの「神々の黄昏」作戦によって脆くも踏みにじられていますわな。

「フェザーン回廊が平和の海だなど誰が決めた」というのは確かにそうです。問題は、赤子でも解る程度の事を、ラインハルトが打破するまでに、何で誰も気付かなかったのだ?という事でしょう。コロンブスの卵の話どころではありません。よほど、軍事に疎くない限り、フェザーンなど成立しない事に気付く筈です。本来、帝国領の一部、ということで帝国軍が駐留している、とでもいうのなら話は別ですが。銀英伝の作品世界の登場人物はラインハルトとヤン以外はアホだらけなのでしょうか?

 仮に私が同盟の指揮を取るとしたら、ヤンのイゼルローン奪取直後にフェザーンへの侵攻を行います。それによって同盟はイゼルローン・フェザーン両回廊を押さえた上、フェザーンからの借款を棒引きにでき、フェザーンの経済力も同盟の国力に取り込めます。当然アムリッツァ会戦もありません。その後、皇帝が死んで帝国では内戦が発生する訳ですから、適宜に介入すれば、簡単に同盟による銀河の統一がなったでしょう。

 もちろん、これは作品の筋を知った上での後知恵に過ぎませんが。だとしても、フェザーンの存在は、「神々の黄昏」作戦を持ち出すまでもなく、最初から不可解です。同じように、10巻の最後で成立するバーラト星系の自治政府もそうです。これも、軍事力は皆無に近い上、新銀河帝国初代皇帝ラインハルトの好意によって成り立っているだけですから、簡単に取り潰されても仕方のないものです。「なぜ旧同盟のなれの果てどもに自治権を与えねばならないのだ」と後の皇帝が気付いたらどうなるのでしょうか?

 どうも田中芳樹には現実的な力(軍事的な暴力)を抜きに物事をなし得る場合もあるのではないか、という幻想があるような気がしますがどうでしょうかねえ。


No. 219
続き
投稿者:黒猫が好き 1998/11/24 15:56:27
では、田中芳樹ファンとして擁護させていただきます。まず銀英伝についてですが、やっぱりこの作品の完成度は高いと思います。なんと言ってもおもしろい!これは私見ですが・・・。
 それからすぐ上のフェザーン成立の可能性云々について・・・。文中で述べられている通りやはりそれは全体を俯瞰した人間の台詞やと思います。「現在」の持つ束縛力というのは大変なものです。現在の常識からあり得ないこと、とするより、その成立への背景をいろいろかんがえてみたらどうですか。その過程が作品中で詳しくかかれなかった理由は、それをするとフェザーン建国史になってしまうからではないでしょうか。作品の不備について攻撃するのもいいですが、読者の想像力でそれぐらい補ってやるべきではないでしょうか。少なくとも僕は銀英伝でいろんなことを想像しましたし楽しみました。
 小説におもしろさがあれば多少の引用ミスなどどうでもええとおもいます。正確さを第一にするんやったら大学の教授の本をよめばええとおもいます。少なくとも田中芳樹は事実の捏造はしてないし、充分読むに堪える本やと思います。


No. 332
小ネタ(2)ゼッフル粒子、「反・銀英伝」
投稿者:新Q太郎 1998/12/05 04:53:00
>仮に私が同盟の指揮を取るとしたら、ヤンのイゼルローン奪取直後に
>フェザーンへの侵攻を行います。それによって同盟はイゼルローン・
>フェザーン両回廊を押さえた上フェザーンからの借款を棒引きにでき、
>フェザーンの経済力も同盟の国力に取り込めます。当然アムリッツァ
>会戦もありません。その後、皇帝が死んで帝国では内戦が発生する訳
>ですから、適宜に介入すれば、簡単に同盟による銀河の統一がなった
>でしょう。

*誰かに是非やってほしいと思っているのは「反銀英伝」です。これも別に、田中思想への批判という意味ではなく「オリジナルと同じ設定、同じ登場人物のみを使って、同盟の勝利(または和平・停戦)を自然に書けるか」というゲームです。例の「反三国志」みたいなもんですが、あれは言うほど自然な筋書じゃ無かったから・・・。
あんなに同人作家がいるんだから、もうあるかな?私は文才もストーリーテリングの才もないから無理だけど。(ただ、昔考えた所、どうしてもその場合ヤンは何らかの形で同盟の『権力』に近づかねばならなかった。ここに於てヤンの『与党精神』の欠如という、大きな思想問題に関わってくるのだがこれは後日)

*そのほか誰かにやってほしいのは、司馬遼太郎の文体で書く「銀英伝」(「街道をゆく・イゼルローン紀行」でも可)や「アルスラーン戦記」、
横山光輝の絵で書かれた「銀英伝」(横山風の宇宙船にのるラインハルトや、あの書き分けによる将軍達の光景を想像せよ!)

下らん話失礼しましたっと♪。


No. 343
色々レス
投稿者:不沈戦艦 1998/12/07 12:58:21
 新Q太郎さんへ
 「反銀英伝」構想なかなか面白いですね。銀英伝の同人は結構あったと思いましたが、話の流れを変えてしまう作品にはお目にかかった事はありません。その意味で、「同盟軍、フェザーンへ侵攻作戦発動」って銀英伝世界の歴史改変は、筋としては面白そうでしょう?作者の不備をついているだけに。誰か書きませんかね。


No. 352
情報提供
投稿者:浅識/たうら 1998/12/08 19:55:05
 不沈戦艦さん+新Q太郎さんへ


 『反銀英伝』の話。

>仮に私が同盟の指揮を取るとしたら、ヤンのイゼルローン奪取直後にフェザーンへの侵攻を行います。それによって同盟はイゼルローン・フェザーン両回廊を押さえた上フェザーンからの借款を棒引きにでき、フェザーンの経済力も同盟の国力に取り込めます。当然アムリッツァ会戦もありません。その後、皇帝が死んで帝国では内戦が発生する訳ですから、適宜に介入すれば、簡単に同盟による銀河の統一がなったでしょう。

 これは思わず、うなずいてしまいました。
 これなら、ラインハルトが同盟に干渉してクーデターをおこさせようとしても、リンチ−グリーンヒルらだけでクーデターが起こせたかあやしいですしね。
 仮に、クーデターが発生(→当然鎮圧)し、幼帝ヨーゼフ2世の亡命が成功したとしても、帝国は遠慮なくフェザーンに攻め込めるわけですが、この場合、同盟の方でも、それは読めるわけですから、ラインハルトとしてもどうにもならないでしょう。
 この同盟によるフェザーン占領という案にミソをつけるとしたら、ルビンスキーらフェザーン側がどう出るか、という点くらいのものでしょう。

 「SFの小部屋」さんの「私説・銀英伝」(http://user.tokachi.ne.jp/abasan/sf/sf.html)の検証の受け売りですけど、ラインハルトの「戦略」というのはとりたてて奇抜なものではなく、常に正道をいく類のものです。逆にいうと、『銀英伝』中の「帝国の戦略的優位」とはラインハルトによって築かれたものではなく、単に同盟がフォークの煽動による愚行「帝国領侵攻作戦」に乗ってくれたおかげでできたものなわけで、「もしアムリッツア会戦がなかったら」というifは考えてみると面白いと思います。

 制作者御本人の承諾なく、勝手にページを紹介してしまったけど、よかったかな^^;; こちらのページ以外の田中作品検証ページとしては、他にも、SF的視点から銀英世界を検証している「ちんさんのほーむぺーじ」の「銀英伝世界の実現」(http://www2.justnet.ne.jp/~chin.mitsui-waseda/CHINPAGE.HTM)などが非常に興味深いです。


 蛇足。『反銀英伝』ってことは、同盟の女提督が登場するに違いない(^^


No. 353
反銀英伝
投稿者:小村損三郎 1998/12/08 20:24:05
と言う訳で私もさわりの部分だけ考えてみました。

>その意味で、「同盟軍、フェザーンへ侵攻作戦発動」って銀英伝世界の歴史改変は、筋としては面白そうでしょう?作者の不備をついているだけに。誰か書きませんかね。

たしか、昔プレイした銀英伝のPCゲームではフェザーン侵攻を行うとフェザーンの経済力が敵側に流出してしまい、敵の国力が著しく増強されてしまう、というような設定になっていたと思います。(ちょっと記憶があやふやなんですけど。)
何でそうなるのかは不明(^^;)。

さて、同盟がフェザーン侵攻を行った場合、一時的に占領はできても帝国軍もむざむざ指をくわえて見てはいないでしょうから、迎撃を試みて(ラグナロック作戦時の同盟にはその力は無かった)、回廊の帝国側出口、又は惑星フェザーン近辺での艦隊決戦となる可能性が考えられます。その場合の勝敗は時の運、ということになるでしょうが、仮に同盟が勝利してもその痛手は決して小さいものではなく、場合によっては惑星フェザーンそのものが帝国軍の核攻撃か何かで破壊されてしまう、てなことも有り得るかも・・・。(そんなことをしたら銀河中のフェザーン商人を敵に回すことになるでしょうけど。)
 帝国軍のフェザーン回廊への出動の隙を突いてイゼルローンから侵攻、というのも、そこへ戦力を割いては肝心のフェザーン回廊での決戦に敗北する可能性が高くなり、やっぱり無理かもしれません。

で、イゼルローン占領後の方針として私が考えたのが、
@ フォーク准将の作戦のような大規模侵攻ではなく、回廊出口近辺の星系(アニメに登場したクラインゲルト子爵家領あたり)を荒らしまわったり、若しくは“解放”したりして挑発行動を繰り返し、
A 帝国軍の要塞奪還作戦を誘発する。
簡単には乗って来ないだろうけど、“解放”のプロパガンダの仕方とかによっては帝国の体制に動揺を与えることも可能かも。
B かなりの兵力を投入して来ると思われるのでいっそこちらもアムリッツア戦役レベルの動員をかけ、イゼルローン回廊で艦隊決戦を挑む。
C 艦隊戦力が拮抗している以上、「トールハンマー」があれば何とかなる(爆)。
これも簡単には近づいて来ないでしょうけど「要塞奪還」が目的である以上最終的には取り付いて来ざるを得ない。
 あるいは同盟側の主戦力は回廊の同盟側出口の近くに隠れていて、敵が要塞に接近してきた所を一気に突く、とか。(でも回廊内の空間は結構狭いみたいなので大艦隊同士の決戦は無理かなー)
D めでたく帝国艦隊を撃滅して万々歳。
E 以後の展開はどなたか考えて下さい(^^)。あるいはその時点でフェザーン侵攻とか。

さて、以前に不沈戦艦さんが指摘しておられたフェザーンの存続自体に対する疑問ですが、たしかフェザーンの建国には地球教が大きく関与していたはです。
ラインハルト以前に誰もフェザーン侵攻を思い付かなかったはずはありませんが、両国の体制内部にも隠然たる勢力を持っている地球教が要所要所に圧力や策謀をめぐらし、構想の具体化を妨害していた、てなことは考えられないでしょうか。
で、しがらみの少ないラインハルトの独裁体制が確立して初めて実現できた、と。
まあ、現実にはそんなこと不可能かもしれませんが、この程度だったら「小説だから許される」と思います。


No. 356
結構仮想戦記って難しい
投稿者:本ページ管理人 1998/12/09 01:20:44
>さて、以前に不沈戦艦さんが指摘しておられたフェザーンの存続自体に対する疑問ですが、たしかフェザーンの建国には地球教が大きく関与していたはです。
>ラインハルト以前に誰もフェザーン侵攻を思い付かなかったはずはありませんが、両国の体制内部にも隠然たる勢力を持っている地球教が要所要所に圧力や策謀をめぐらし、構想の具体化を妨害していた、てなことは考えられないでしょうか。
>で、しがらみの少ないラインハルトの独裁体制が確立して初めて実現できた、と。
>まあ、現実にはそんなこと不可能かもしれませんが、この程度だったら「小説だから許される」と思います。
>

スマートですねぇ。なるほど。


 ところで、ifと言えば、もしヤンにオーベルシュタインのような政治的能力のある汚れ役がいたとしたら、これまたそれだけで戦略状況が違ってくるような気もします。
 どちらかと言えば、専制君主制のラインハルト陣営に比べて、民主的なはずのヤンファミリーのほうが考え方というか、思想が均一ですよね。やはり、オーベルシュタインのような「異分子」の存在は重要であり、強みであると思います。
 その点で、もしトリューニヒトが上司でなくヤンファミリーだったら面白いかもσ(^_^;)


No. 362
反銀英伝構想
投稿者:不沈戦艦 1998/12/09 13:10:58
 浅識さんお久しぶりです。また、小村さんにも論評していただけたようで恐縮です。

 さて、前は簡単に「同盟軍、フェザーン侵攻」とだけ書きましたが、実際やるとなるともう少し精密に行わなければなりません。拙案を披露することにいたしましょう。

@実施時期はヤンのイゼルローン奪取直後
 この時期しかありません。アムリッツア後では同盟の国力、軍事力ともに衰えすぎで、何かを出来る能力を有していませんから。同盟市民も「帝国を倒せ!」と戦争熱に浮かれていましたから、世論の支持も大きいものです。反戦派にひっくり返されることもありますまい。

A侵攻目標の完全な秘匿
 「同盟軍、フェザーン奇襲」でなければなりません。実際の方法はラインハルトのラグナロック作戦の真似です。つまりイゼルローン回廊を通って帝国討伐の軍を起こす、と大々的に触れ回って、フェザーン回廊に関しては無関心、無防備にさせるのです。電撃的な奇襲がいかに効果を発揮するかは、通過不能な筈のアルデンヌの森を抜けてダンケルクにまで至ったドイツ国防軍。真珠湾を奇襲した帝国海軍。いや、銀英伝自体の作中にも前述のラグナロック作戦で示されています。ほとんど無防備なフェザーンを電撃占領できれば、帝国に与える衝撃は小さなものではありませんし、同盟内の戦争熱に浮かれた連中も、巨大な軍事的成果に満足するでしょう。形ばかりとはいえ、フェザーンは「帝国領」ですから。オーバーロード作戦(ノルマンディー上陸作戦)を徹底的に秘匿した連合軍を見習わなければなりません。謀略も駆使して。この時、英国首相チャーチルは、偽の作戦計画書を持たせた海軍将校の死体を、フランスの海岸に漂着させる、という事まで行っています。これにすっかりドイツは騙されました。

Bフェザーン占領後の兵力配置
 イゼルローンに一個艦隊、フェザーンに残りの全艦隊を配備します。どちらも任務は防衛だけ。なぜなら、フェザーンを占領した直後ではまだ同盟の国力は回復していません。経済力の半分は帝国側との通商ですから、その余剰人員を同盟のマンパワーとして取り込む作業を優先させます。無理に強制連行しなくても、余った人材を高給で釣れば、同盟の仕事の希望者は殺到することでしょう。例えば余った商船をフェザーン駐留の同盟軍に対する補給任務に駆り出したりする訳です。そして、両回廊ともに防戦に徹し、決して回廊から出戦しません。フェザーン奪取という大戦果を挙げた訳ですから、同盟の市民も満足するでしょうし、「政治業者」たちも、フェザーンの富の収奪に血道を上げるばかりで、他の事に目が行かなくなること請け合いです。大量の餌を与えられた獣、ってとこですから、当分喰うことだけで手一杯でしょう。

C帝国軍、ラインハルトの反撃はフェザーンに行わざるを得ない。しかも失敗する。
 形の上とはいえ帝国領、しかもかなりの人口を抱えている経済的先進地域を奪取されたのですから、皇帝から「フェザーン奪還」の厳命が下ることでしょう。いくらラインハルトが戦争の天才でも、かなりきつい任務です。この条件では、同盟軍はフェザーン回廊から出てこないんですから。まだ「防御攻勢」の段階ですからね。「攻勢防御」に移るのは、時間が経って、同盟の国力がある程度回復してからです。穴ぐらに籠もった穴熊相手の戦いでは、アムリッツアの圧勝はありません。消耗戦に引きずり込まれ、そのうち撤退するのが関の山でしょう。

D皇帝死去
 当然ラインハルトは何の成果も上げられないまま、フェザーン回廊から退却です。

E帝国内に内戦勃発。しかし、同盟には何も起こらない。
 ラインハルトがリンチ元少将を使う謀略を仕掛けても、誰も乗ってきません。救国軍事会議のクーデターは、アムリッツアの敗戦後に同盟の先行きに深刻な危機感を持った軍人たちが起こしたものです。仮にリンチがグリーンヒル大将に会いに行っても、相手にもされないでしょう。しかし、皇帝の死によるリップシュタット戦役は確実に発生します。リヒテンラーデ公がラインハルトを取り込んでブラウンシュバイク公に対抗する、という構図はそのままですから。

Fリップシュタット戦役に同盟軍介入
 戦っている相手の後ろから撃つんですから、楽なもんです。もちろん主目標はラインハルト軍。先ずは辺境平定に乗り出したキルヒアイス軍を討てばよろしい。同盟軍が使用できる戦力の方が大きいですから、仮にキルヒアイスを戦死させれば(キルヒアイスの性格なら、最後まで戦場に止まりそうだからその可能性は大きい)ラインハルトは大打撃です。友の戦死に我を忘れて攻め掛かってきたらしめたもの。後ろから貴族連合軍がやって来てラインハルト軍は袋の鼠。戦争の天才の一巻の終わり、という訳です。その後は一時フェザーンに撤退ですね。ラインハルトの死で、攻勢防御段階終了。

G回復後に全面侵攻
 残るは軍事に無知に近い、内戦でガタガタになった貴族連合軍だけです。同盟軍が回復した後なら楽勝でしょう。艦隊決戦で圧勝した後、あっさりオーディンが陥落。帝国は同盟に降伏せざるを得ません。

 以上、反銀英伝「同盟軍フェザーン侵攻」編でしたが、いかがですかな?これを実行する場合、最大の問題は同盟の意思統一だけですね。まあ、リップシュタット戦役の時のシュターデン提督の「一軍を持って敵を迎え撃ち、別働隊でオーディンを陥とす」に近いものがあるとは思いますが。銀英伝に書かれている同盟政府の能力では無理でしょう。でも、「反銀英伝」としては面白いでしょ?


No. 364
オーベルシュタインは「本多親子」
投稿者:小村損三郎 1998/12/09 22:17:23
>ところで、ifと言えば、もしヤンにオーベルシュタインのような政治的能力のある汚れ役がいたとしたら、これまたそれだけで戦略状況が違ってくるような気もします。
>どちらかと言えば、専制君主制のラインハルト陣営に比べて、民主的なはずのヤンファミリーのほうが考え方というか、思想が均一ですよね。やはり、オーベルシュタインのような「異分子」の存在は重要であり、強みであると思います。
>その点で、もしトリューニヒトが上司でなくヤンファミリーだったら面白いかもσ(^_^;)

この点は私も気になりました。
「自由」と「民主」を標榜してるヤン艦隊の面々が、どうしてああも路線も価値観も思考パターンも画一的なんだろう、という感じで、何か胡散臭く見えてしまう。(勢力が弱小なうちはいやでも団結してる、ということかもしれませんが。)

帝国側のミッターマイヤー、ビッテンフェルトらとオーベルシュタインの関係の方が遥かに陰影とリアリティがあります。
オーベルシュタインって、要するに「石田三成」か「本多親子」なんですよね。ビッテンフェルトが大久保彦左衛門だから(^^;)。武断派連中との対立は宿命です。

グエン・バン・ヒューやアラルコン少将あたりが生き残っていればオーベルシュタインとは違った意味で面白い役回りになったかもしれませんが、サックリ戦死してしまったし。
あとはバグダッシュ中佐とかを膨らませたら・・・、でもこうやっていくと10巻じゃ終わらないか。

こういう想像や解釈が無限に広がる所が、逆に銀英伝という作品の本当に凄い所なんですがね。
以後の作品にはこういう所が全く感じられませんね。

>逆にいうと、『銀英伝』中の「帝国の戦略的優位」とはラインハルトによって築かれたものではなく、単に同盟がフォークの煽動による愚行「帝国領侵攻作戦」に乗ってくれたおかげでできたものなわけで、「もしアムリッツア会戦がなかったら」というifは考えてみると面白いと思います。

さすがにアムリッツア後から逆転させるのは志茂田景樹か谷恒生でないと無理でしょうね(笑)。
結局銀英伝全編の展開は1巻で決まっていたのか・・・。

>以上、反銀英伝「同盟軍フェザーン侵攻」編でしたが、いかがですかな?

なるほど、なるほど。
強力な要塞が無くても充分な兵力を揃えた上で回廊と言う穴蔵に立て篭もっていれば防御側が圧倒的に有利、という訳ですね。
根拠地となる惑星も足元に有る訳ですし。
実際、両回廊の中で最大限どの程度の兵力が展開・交戦できるものなのか、是非田中氏に聞いてみたいです。


No. 372
回廊の戦い
投稿者:不沈戦艦 1998/12/10 16:49:47
 田中芳樹がフェザーン回廊とイゼルローン回廊の広さをどのくらいとしているか知りませんが、銀英伝自体が参考になりそうです。

 先ずはラグナロック作戦実行時。先鋒のミッターマイヤー艦隊がフェザーン回廊航行に難儀した、という記述はありませんので、少なくとも1万〜2万隻くらいの艦隊が通行するには支障がなさそうです。通行できるからといって戦闘可能かどうかはまた別かもしれませんが。また、同盟消滅後にイゼルローンに籠もったヤン艦隊と全帝国軍との戦闘もありましたが、ヤンの戦術の冴えもあって、1個艦隊強程度の戦力で(要塞砲に頼っていない)も、帝国軍をキリキリ舞いさせています。これらから回廊に籠もった穴熊戦術なら、防御側の方が断然有利と考えます。俗に「攻撃は防御側の3倍の兵力がいる」と言われていますから、同盟軍がフェザーン回廊に籠もって、前面に立つ艦隊を交代させながら戦えば、同盟軍の7割程度の戦力しか与えられなかったラインハルト軍の勝利はあり得ません。しかも、補給地はフェザーンを使える同盟の方が、辺境域になるであろう帝国より有利。よって、同盟の勝ちと見ました。

 そうですね、日米戦のガダルカナルの戦いのようなものです。もちろん同盟がアメリカで、帝国が日本ですよ。面子から攻勢を繰り返さざるを得ないところも帝国は当時の日本そのものです。動員できる戦力が相手より少ないのも。米軍にとってのガダルカナルもまさに「防御攻勢」であり、後の段階のリップシュタット戦役に介入してラインハルトを戦死させるあたりがマリアナ沖海戦ってとこですか。


No. 378
みなさんのご意見ありがとうございます
投稿者:本ページ管理人 1998/12/11 04:01:23
>回廊の戦い

 帝国をWWUの日本軍と比較する説を拝見したのはこれが初めてです。なるほど。冴えてますね。
 で、ちゃちゃになりますが、攻略戦ともなれば、>同盟軍の7割程度の戦力しか与えられなかった あたりは変わってくる可能性があるのではないですか? もともと、総合国力では帝国の方が上ですし(ただ占領されたフェザーンの国力がどう移るか次第ではある)
 それと、他の提督ならともかく、ラインハルトが玉砕や消耗戦になりかねない攻撃を行うでしょうか? ましてや、ヤンがイゼルローンにいる状態で、同盟がラインハルトに抗せるでしょうか?(でも、ビュコッククラスの提督が当たれば大丈夫か?)


No. 380
回廊の戦い・続
投稿者:不沈戦艦 1998/12/11 12:58:50
 おおっと!管理人さんに突っ込まれるとは思いませんでしたな。まあ、そう言った疑問を持つのも当然ですか。一応お答えしましょう。あ、それからHNとタイトルの間違いの修正、ありがとうございます。

@ラインハルトに与えられる戦力
 これは、先ず増えませんね。と、言うのは、ラインハルトが大貴族たちには信用されていない事と、彼らが軍事的に無知であることからです。一時的とはいえ、ラインハルトに帝国軍の半分以上の指揮権を与えて、心穏やかでいられる貴族がいるでしょうか?先ずいませんね。「奴が身の程知らずにも我らに刃向かって来たら・・・あるいは突然野心を起こして、叛乱軍どもに同調したりしないか・・・」って不安を必ず持っていると思いますよ。それが、実際のアムリッツアでのラインハルトの兵力の実数となったのだと思います。貴族たちの猛反対で、ラインハルトの兵力が上積みされる事はないでしょう。「金髪の孺子の得意の戦争なのだから、それぐらいあれば充分だ」とでも言って。おそらく、負けたっていいと思っている筈です。「やはり孺子は運だけだった」と言えますからね。極めて冷ややかにラインハルトに与える兵力が決められたと思いますよ。また、彼らが軍事音痴であることは、これからも簡単に解ります。兵力比が7割ということは、ランチェスターの二次法則(自乗均等の法則)から言って、10×10:7×7、100:49ですから、実戦力は半分。侵攻を断念させることが可能かどうか解らない程度ではありませんか。こんな程度で叛乱軍を撃退しろ、ってのもそもそも無茶な話です。それも、大規模侵攻の危機にあるのに、国内の勢力争いでこんな寝惚けた対処をやらせているんですから、大貴族たちも「軍事音痴」は明らかです。以上をもって、例えフェザーン奪還の為でも、ラインハルトの兵力が上積みされる事はないと思います。

Aラインハルトが消耗戦や玉砕戦をするか?
 これは、もちろんラインハルトとしてはそんな戦いは愚劣だと解っている事は間違いありません。フェザーンに赴いたラインハルトは、何とかして同盟軍を穴蔵から引きずり出して決戦を強いるよう戦術を巡らすでしょう。でも、同盟軍はそれに乗らない。あくまで有利な回廊内に籠もり続ける事となります。「防御攻勢」であって、決戦を求めている訳じゃないんですから。味方の消耗を押さえるように堅実に戦う訳です。別に同盟軍の将帥たちが、ラインハルト旗下の将帥たちに比べて、戦術的に問題にならない程劣っている訳じゃありませんから、回廊の中と出口付近で、小競り合いが続く事になるでしょう。その場合、「何だ、あの孺子は。でかい口ばかり叩きおるくせに叛乱軍如きに手も足も出ないとは。もっと勇敢に戦えないのか!」と帝都で大貴族の不満が高まること間違いありません。おそらく、皇帝に働きかけてでも、決戦を行えと要求するようになるでしょう。ある日、ラインハルトは愕然とする筈です「勅命である。ローエングラム元帥は、直ちに全兵力を率いてフェザーン回廊に突入、叛乱軍からフェザーンを解放せよ!」という皇帝からの勅命が来ることになるからです。「愚か者どもめ!我が軍を全滅させたいのか!無知蒙昧なる大貴族どもめ!」と激しく怒りにかられるラインハルトですが、勅命ではどうしようもありません。逆らって撤退などしたら、敵前逃亡で銃殺です。愚行であることを承知で、フェザーン回廊内へ突入し、全力攻撃に移るしかなくなるでしょう。元々一個艦隊同士が戦うのがやっとな程度のフェザーン回廊ですから、派手な戦闘は起こらないでしょうが、回廊内に突入して消耗戦を始めるしかありますまい。この状況なら、圧倒的に同盟軍有利ですね。いくらラインハルトが戦争の天才でも、狭い回廊内で、しかも一度に一個艦隊しか戦えない条件で、圧勝できる筈もないですから。それも、実際は部下たちが艦隊を率いて戦うのですから、ラインハルトの優れた部分、「戦争のデザイン」能力をふるうことが出来ません。前にも言った通り、同盟軍の方が補給地は近く、兵力も多いのですから、この条件ではラインハルトの勝利はあり得ないと思います。そう、ラインハルトは玉砕や消耗戦をやりたくなくても、後方の無知な貴族たちに強要される、という形です。こんなところでどうですかな。

 それにしても、こういった思考実験が可能さということは、銀英伝は容量の大きい作品だと思いますよ。創竜伝ではこうはいかないもの。


No. 382
なるほど
投稿者:本ページ管理人 1998/12/11 14:43:08
>回廊の戦い・続

 いま、ちょっとばかり感動しています。
 これぞ「反銀英伝」という感じですね。
 私の解釈ですが、この論の珠玉は、「ラインハルトvs門閥貴族」という政治的力学を焦点に入れているところだと思います。
 政治が戦略や戦術の上位に位置する次元にあるとつくづく感じます。ヤンは、「ヤンvsトリューニヒト(同盟政府)」という政治での戦いの敗北によって、帝国軍(ラインハルト)と戦う前から、既に負けが決まっていたことになりますから。ヤンが、ラインハルト並の上昇志向というか与党精神というか、そういうものを持っていたなら、または、前にも述べたようにいわゆる「オーベルシュタイン」が居たなら、同盟の政治に入り込んで(既にエル・ファシルの英雄だから、充分可能性はある)不沈戦艦さんの論のようになっていた可能性は充分にあります。
 逆に、ラインハルトがこうならなかったのは、戦略戦術の才は当然として、政権奪取を前提とした現実主義的な上昇志向と、オーベルシュタインの権謀術数の成果が大きいと思います。
 前に、小村損三郎さんが、「銀英伝全編の展開は1巻で決まっていた」とおっしゃられていましたが、確かにその通りだと思います。というより、1巻以前で決まっていたと言えるかも知れません。


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