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反創竜伝・思考実験編
6−A

異種作品キャラクター対戦(1)


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No. 4179
仮想対戦 柏木家VS竜堂家
桂兎 2003/06/03 23:10
このお話は、何とかして竜堂兄弟を倒そう、というコンセプトの元に考えたものです。
話中では竜堂始が酷い目に遭います(死んでしまいます)。
それを読むのが嫌な方は「2.対戦編」は読まないようにして下さい。
ちなみに倒す側は、Leaf社の18禁ゲーム「痕」から柏木四姉妹+耕一です。
知らない人のために説明いたしますが、旧痕と痕Rがごっちゃになっているかもしれません。ご容赦ください。

柏木家は鬼の血を引く一族である。
柏木の女性が鬼化した時、圧倒的な身体能力(成人男性の10倍以上)と人間をたやすく引き裂く爪を得る。
男性の場合は女性を凌駕する力を得るが、その上で真の鬼を解放すると、体躯は2倍に膨れ上がり身体能力は更に倍加、昔話で語られる「鬼」そのものとなる。
以下、キャラ説明
柏木千鶴:23歳。温泉旅館鶴来屋の会長。鬼の力を使いこなすことができる。
柏木梓:18歳。短気で単純なところがある。鬼の力に目覚めているが使いこなせてはいない。
柏木楓:16歳。無口な少女。シナリオによっては鬼の力に目覚めていることが語られる。
柏木初音:15歳。純真で無垢な少女。鬼の力は殆ど目覚めていない。
柏木耕一:20歳。姉妹の従兄弟である。シナリオによっては鬼の力に目覚める。


No. 4180
1.作戦編
桂兎 2003/06/03 23:11
「ツー訳で俺たち柏木一族は竜堂兄弟と対決することになった」
半ば投げやり気味に耕一は言った。
「訳って、何も説明されていませんけど?」
楓がさらりと返す。耕一は困った顔になって
「だって仮想対戦じゃん。訳なんて考えつくわけないよ。文句は作者に言ってくれ」
「そう言われると何も返せませんけど…」
楓が黙る。元々無口な質なのだ。
「で、どういうシチュエーションなんです?」
これは千鶴。
「うむ、まず彼らの情報は四姉妹が積極的にバックアップしてくれるそうだ。後は対戦場所の確保だな」
「情報ねえ…。その竜堂兄弟ってどんな奴らなの?」
「梓、良い質問だ。答えは創竜伝12巻分を読んでくれ。実は作者自身、5年ほど読みもしていないのだ」
梓がずっこける。
「そんなんでまともな仮想対戦が設定できるの?」
「それに関しては大丈夫だ。この批評サイトに情報は十分あるからな。とにかく彼らは、1.桁外れな身体能力、2.銃弾、刃物も効かない防御力(ただし対物徹甲弾に関しては不明)、3.高い回復再生能力、4.生体の危機に陥ったときに竜に変身、といった能力を持つ」
耕一がどこから出したのか、ホワイトボードに書いていく。
「1と3なら私達と同じだね。でも何なの?竜に変身って」
「これに関してはどうにもならない。体長何十メートルの竜になって火を噴いたり風を起こしたりするからな。ひとまず考えない方針でいこう」
そういうもんですかね、と梓が頷く。
「みんなの意見をききたいんだ。まず俺たちが勝つためにはと…」
「はい、耕一さん」
「なんだい?楓ちゃん」
「戦術の基本は戦力の分散と各個撃破です。兄弟は分散させるべきだと思います」
「フム、それに関しては四姉妹に頼んでみよう。場を作るのは彼らの仕事だからな。他には?」
「…竜堂兄弟の能力を考えると、無力化では竜に変わってしまうでしょう。勝つためには、彼らを『殺さねば』なりません」
「きついね、千鶴さんは。でもそれは俺も考えていた。
四姉妹から聞いた情報によると、人状態であれば身体能力は俺たち鬼の一族の方が上だと思う。さらに彼らは戦い方を知らない。卓越した能力を生かす技能を持たないんだ。武道や格闘技を馬鹿にして、学んだことがないんだそうだよ。それに対して俺たち鬼は、生来の狩猟者だ」
「そうですね。認めたくない事実ですけど」
「まあ、俺たち一族の運命を呪うのは後にしよう。この場は、勝つための戦術を考える場だ」
「確認しますけど、彼らが竜にならないようにするには、生命を危険にあわせてはならないということですね」
「そうだね。自らの意思で竜になることもあるようだけど、これには保険をかければいい。住宅密集地で闘えばいいだろう。一般人に被害を与える戦い方はできないみたいだ。良識派、なのかな?」
「分かりました。ではまず私の作戦といいますと…」


No. 4181
2.対戦編
桂兎 2003/06/03 23:13
十日後、郊外の新興住宅地に、柏木耕一、柏木千鶴、柏木楓が現れた。
梓は力こそ強いものの、搦め手には向いていないし手加減も苦手だ。初音は鬼の力に目覚めていない。
千鶴と楓は鬼の力を使いこなすことができるし、耕一は人の姿でもそれ以上、いざとなれば真の鬼と化すことも出来る。
呼び出されたのは竜堂始だった。他の兄弟は皆別の場所にいる。四姉妹がそのように手を回したのだ。
まず、正面から戦うのは千鶴と楓だ。二人には極力、力を隠すように打ち合わせてある。いきなり全力を出して圧倒する手もあるが、下手に傷つけて竜に変わられると厄介だ。この作戦はこちらの力を見せないことが必要だ。
「あなたに恨みはありませんが、これも四姉妹の指示です。あなたを、殺します」
ケレン味たっぷりの台詞だが、これも相手を油断させるため。そう宣言すれば、始は少なくとも全力を出そうとするだろう。こちらはそれに合わせ、多少及ばないように調整する。力が及ばないから2対1に持ち込んだと思い込ませるのだ。
千鶴は手にナイフを持って切り込む。本来、鉄をも切り裂く鬼の爪の前には刃物など何の意味もない。だがナイフではなく爪で戦えば相手は警戒するだろう。力を誤認させるため、ナイフをさも得意のように使ってみせる。
ジャッ
始の耳のすぐそばを千鶴の短刀が薙ぐ。これにはさすがに肝を冷やしただろう。まとわりつくように攻撃を加える千鶴を、たまらず体当たりで突き飛ばす。手加減などしていないに違いない。ボールの様に10メートルもわざととばされてみせる。地面につっぷし苦しそうなそぶりを見せる。
鬼の身体能力からすれば、ヒットアンドアウェイが最良の攻撃手段だ。だが鬼の爪ですら竜のウロコを切り裂けるとは思えないし、もし竜になられたら困る。
わざと人間らしい戦い方をすることが重要だ。
千鶴と楓は、始を少しずつ予定の場所へ誘導する。
一人が攻撃し、一人が逃げ道をふさぐ。始は二人の意図など考えずに開けた方の道をたどろうとする。反撃を考えるとしても、動きやすい側に移動するはずだ。
彼女らは少しずつ能力を発揮し、始が動きに慣れないよう調整する。
動きに慣れてしまえば反撃を受ける可能性がある。
反撃ができるほど余裕はなく、かつ逃げられるように手加減するのは骨だ。
だが話があってから10日間、梓を相手にこればかり練習してきた。
予定の場所、そこはマンションの建設現場だ。障害物が多く、耕一が姿を隠している。これが罠だ。
来た。
始が躍り込んでくる。
伏兵がいるなど考えもしていないに違いない。ほとんど全力に近い彼女らの攻撃を避けるため、意識が完全に彼女らの方を向いている。
耕一は鬼気を解放し、一気に全力を発揮した。
気が付いたか?もう遅い。狩猟者たる鬼は、その気になれば気配を絶つことができるからだ。
そして、必殺の一撃には1秒もあれば十分だ。
耕一は巨大な右腕を始の後頭部に叩き込んだ。
西洋の甲冑は剣を防げても、鈍器による殴打には耐えられない。
銃弾や刃、果ては高速中性子すら弾くという竜のウロコ、だが叩き潰してしまえばお終いだ。
鬼の一撃は人間の頭蓋骨を卵のように砕く。
竜の頭蓋骨は人のそれとは比べ物にならないほど硬いだろうが、硬いということは同時に砕けやすいということでもある。
いや、砕けずともよい。衝撃はそのまま脳まで伝わるし、頭部に数十Gの加速度を一気にかけてやれば、外見は耐えられても中身がシェイクされてしまう。
始は頭部にその直撃を食らう羽目になった。
空中に鮮血の華が咲いた。
瞬間、始は自分がまさに死の顎に捕らわれていることに気付いただろうか?
頭部が醜く砕けた始の身体が宙を泳ぐ。千鶴が足を、楓が手を絡め持ち、それぞれ逆の方向にテンションを掛ける。
仕上げは耕一だ。
腹部めがけ鬼の爪を叩き込む。
強靱な竜の筋組織とはいえ、極限まで引っ張られた上に切り込みを入れられ、破局はあっさりと訪れた。
始は二つに分けられた。
上半身と下半身に千切られた、ただの肉塊。
耕一たちが必勝の策として考えたのは、相手が回復する隙も、竜に変身する間も与えず殺す、という方法だった。
そのために脳を叩き潰す。意識を失う暇など与えない。必殺の一撃で意識の中枢を叩き、更に肉体を完全に破壊する。
そして彼らはそれに成功した。


No. 4182
3.ネタ?
桂兎 2003/06/03 23:14
「…なんてことを考えてみたわけだが」
耕一が得意そうに言う。
ホワイトボードには「打倒!竜堂兄弟」と書かれており、さらに「どうしたら竜にさせずに相手を倒すか」と大書きされている。
十日後に控えた「作品対抗、強い者選手権」の作戦を相談していたのだ(ウソです。んなものありません)。
楓が口をあけた。
「…竜堂兄弟が私たちより弱くないと、私たちが先にのされてしまいますよ」
「ううむ、確かにそうなんだ。ただ、作中では竜堂兄弟は素人の喧嘩以下の戦い方しかしていない。千鶴さんが鬼になった柳川と戦ったときのように、紙一重で殺されるような緊張した戦いはやっていないんだ。そして戦闘描写を見る限り、我々の方が強いように感じる。詳しくはゲームをやってみて欲しいのだが…」
「でも中性子爆弾に耐えましたね」
「確かにね。だけどおそらく『おとーちゃん』は中性子爆弾が核融合爆弾の一種だと理解できていないに違いないよ。普通より高速中性子の放出量を増やしただけの核爆弾なんだ。核反応付近は瞬間的にプラズマ化するほどの高温だし、物質であれば『絶対に』蒸発する。何より爆心地にはクレーターが開くよ」
「つまりあの描写は間違いだと」
「当然だね。それ以前に持ち歩けるサイズの中性子爆弾なんて存在しないし。
一言で言ってしまえばね、竜堂兄弟を追い回すナツコちゃん。あれに困らされる程度の実力では大したことないと思うんだ。柳川おじさんにナツコ狩りをお願いしてみるかなあ。竜堂兄弟に見せればきっと喜ぶと思うよ。
…実はね、竜堂兄弟を確実に殺す方法があるんだ」
「何です?」
「TYPE-MOONさんのところの遠野志貴くんに、『死線』を切ってもらえばいいのさ。確実に殺せるよ」

とっぴんぱらりのぷう


No. 4183
結論として
桂兎 2003/06/04 06:55
竜堂兄弟を殺してしまうには、彼らが竜になる前に殺せばいい、ということです。
そのためには不慮の事故、例えばいきなり頭上から数トンの鉄骨が降ってくるとか、彼らが予測もしないような事故に遭う、というのが最良と思われます。
仮想対戦では耕一に「事故」を演出してもらいました。
つまり、確実に竜堂兄弟の体を破壊できる攻撃力を隠しておき、彼らが気付かないままいきなり頭をふっ飛ばしてしまう。
これなら、彼らは何が起こったのか認識する間もなく殺せるでしょう。


No. 4184
Re:結論として
ドミニオン 2003/06/04 09:39
素晴らしいです。そっちの世界にどっぷりつかっている私としては感動すら覚えました。
竜堂兄弟VS柏木姉妹。いいですねえ。目にした途端、一気に全部読んでしまいましたよ。
考えてみたら、両者の戦力は全然違いますね。こんなこといいたくはありませんが、エルクゥ、てまだまだ可愛いモンじゃにですか。
もし、万が一竜に変身されたらLF97の設定を使って巨大生物ヨークにお願いしましょう。世界の危機かもしれませんが。
遠野志貴の直死の魔眼か。あのあまりに反則過ぎる性能ゆえに、いくつもの同人サークルが月姫系RPGをつくれていないやつですね。
でも、彼の前に埋葬機関や吸血鬼が動きそうです。
アルトルージュの僕、プライミッツマーダーなら、霊長の殺戮者として確実に変身前に殺してくれそうです。ただ、あの兄弟はどう考えても人間じゃないような気がする。
なんか、書く人が書けば物凄く面白そうな怪奇小説になりそうです。
あくまで、同人でしょうけど。


No. 4186
Re:3.ネタ?
蜃気楼 2003/06/04 23:57
> 「TYPE-MOONさんのところの遠野志貴くんに、『死線』を切ってもらえばいいのさ。確実に殺せるよ」

 夜だと体調が万全なアルクェイドに『死線』は無かったので、 竜堂兄弟にも死線は無いかも。


No. 4188
Re:結論として
八木あつし 2003/06/05 03:31
シミュレーション大変に面白かったです。
そういえば田中芳樹の小説の中で、同格・同レベル同士の戦いは、ほとんどないですね。
銀英伝のバーミリオン会戦ではラインハルトとヤンが1個艦隊同士で戦ったものの、帝国軍は際限なく増援が来るというのに、同盟軍は増援なし。アルスラーンでも、敵味方の兵数が同じことはほとんどなく、大体少ないほうが勝つのかな?(いや数の大小よりもアルスラーンが勝つな)

実は田中芳樹は、圧倒的勝利か圧倒的敗北のどちらかしか書けなかったりして(笑)。


No. 4189
Re:結論として
桂兎 2003/06/05 07:05
> シミュレーション大変に面白かったです。

竜堂兄弟ならきっとこんな反撃をするだろう、という反論をお願いします(^_^)
仮想対戦をもっと面白くしたいので。


> 実は田中芳樹は、圧倒的勝利か圧倒的敗北のどちらかしか書けなかったりして(笑)。

一番分かりやすいんですよ。書く側にとっても読む側にとっても。
特に創竜伝は「竜になれば全てチャラ」という反則技があるせいで、最後は竜堂兄弟が勝つというド安牌ですから。
こんな相手に勝つには「相手に悟られない一撃で完全な勝利を得る」という最も有効な、かつ最も困難な戦術を選ばなければいけません。
なにしろ彼らを仕留められるだけの攻撃力って相当ですからね、それこそ岩を砕き鉄を引き裂くほどのパワーを持ってこないと。

普通のライトノベルなら、牛種と手を組んだ竜堂兄弟と匹敵する力を持つライバルキャラを出すことでバランスを取るんですが…。


No. 4201
Re4183:竜堂兄弟の身体防衛能力について
冒険風ライダー 2003/06/08 20:40
<竜堂兄弟を殺してしまうには、彼らが竜になる前に殺せばいい、ということです。
そのためには不慮の事故、例えばいきなり頭上から数トンの鉄骨が降ってくるとか、彼らが予測もしないような事故に遭う、というのが最良と思われます。
仮想対戦では耕一に「事故」を演出してもらいました。
つまり、確実に竜堂兄弟の体を破壊できる攻撃力を隠しておき、彼らが気付かないままいきなり頭をふっ飛ばしてしまう。
これなら、彼らは何が起こったのか認識する間もなく殺せるでしょう。>

 創竜伝の作中記述を読む限り、そんな理論で構築された作戦など、あの連中相手には到底通用しないように思いますけどね。
 まず、「例えばいきなり頭上から数トンの鉄骨が降ってくるとか、彼らが予測もしないような事故に遭う」についてですが、これに関しては創竜伝8巻に以下のような記述が存在します↓

創竜伝8巻 P199上段〜P200下段
<二頭の蜚は、あわせてふたつの目から黄色く濁った眼光を放ち、四つの鼻孔から青い薄い煙を噴きだした。大きく開いた口から、毒のある唾を飛ばし、風が猛るような咆哮をあげた。石や土をはねとばし、まっすぐ突っこんでくる。
 地上に落ちた戟を、始の手がすくいあげた。その軽さと刃の質感が、始にとって意外だった。
「これは青銅じゃない。鉄でもない。セラミックみたいなものだろうか。この時代にこんなものがあったのか」
 歴史と技術の関係について、学問的に考えこんでいる暇はなかった。湿った風を裂いて、戟がたたきこまれてくる。受けとめると同時に、大きく横にはらった。強烈な手ごたえ。火花と金属音が高くあがり、戟の刃が激しくかみあう。
 つぎの瞬間、敵兵は戦車上から吹っとんでいた。始が手首と上半身を鋭くひねり、戟を真横に振ったからだ。武芸のたしなみ、などというものではなく、これは野球の打撃の要領だった。あとは力と速度の問題である。
 敵兵は弧をえがいて地面にたたきつけられた。だが始も腹に衝撃をくらった。すさまじい速さと勢いで、蜚が巨体をぶつけてきたのである。
 かわしそこねた。
 鞠のように空中に放りあげられるのを始は感じた。視界が大きく揺れ、急速に重力に引っぱられる。かるく姿勢をたてなおして着地するつもりだったが、またしても衝撃をくらった。投石器から飛んだ人頭大の石が、うなりを生じて始の側頭部にあたったのだ。さすがに目がくらみ、始はまっさかさまに地上に落ちた。戦車や怪獣がそこへ殺到していく。
「始兄さん!」
 叫んだ余が地を蹴って跳躍した。狂奔する怪獣の蹄をかわし、戦車の上を飛びこえて長兄に近づく。だが包囲は厚く、渦を巻いて余をさえぎった。矢が袍の袖を縫い、石が肩にぶつかり、にわかに余の身体は宙に浮いて地面にたたきつけられてしまった。なぎこまれてきた戟の柄に脚を払われたのである。倒れた余の咽喉をめがけて戟の刃が突きこまれた。
 地上の混戦の渦を割って、二柱の白い閃光が立ちのぼった。>

 このシーンで竜堂始は、「蜚という巨大怪物の突進ダメージを腹にまともに食らって宙に舞い」「空中で、投石器から発射された人頭大の石の直撃を側頭部に受け」「まっさかさまに地上に落ちた後、戦車と怪獣が竜堂始の落下ポイントに殺到する」という、どれもこれも間違いなく突発的かつ致命的な「アクシデント」の発生を、しかも3回も引き起こされることによって、初めて竜に変身しています。
 しかも、「空中で、投石器から発射された人頭大の石の直撃を側頭部に受け」に至っては、「彼らが気付かないままいきなり頭をふっ飛ばしてしまう」という条件に充分すぎるほど該当するはずですが、それでさえ、肝心の竜堂始が受けたダメージはと言えば「さすがに目がくらみ」といった程度のレベルでしかないのです。頭部に対する突発的かつ直接的な打撃によるダメージがこの程度では、

<銃弾や刃、果ては高速中性子すら弾くという竜のウロコ、だが叩き潰してしまえばお終いだ。
鬼の一撃は人間の頭蓋骨を卵のように砕く。
竜の頭蓋骨は人のそれとは比べ物にならないほど硬いだろうが、硬いということは同時に砕けやすいということでもある。
いや、砕けずともよい。衝撃はそのまま脳まで伝わるし、頭部に数十Gの加速度を一気にかけてやれば、外見は耐えられても中身がシェイクされてしまう。>

 という「現実世界の科学考証に基づいた前提条件」に立脚した描写自体が、竜堂兄弟相手にはそもそも全く成立しえないのではありませんか? もしこの描写が「作品設定的にも」正しいというのであれば、私が引用した創竜伝8巻における「投石器から発射された人頭大の石が側頭部に直撃」の作中シーンの時点で、竜堂始は「衝撃はそのまま脳まで伝わるし、頭部に数十Gの加速度を一気にかけてやれば、外見は耐えられても中身がシェイクされてしまう」という論法に沿って即死していなければならないはずなのに、実際には「さすがに目がくらみ」という程度のダメージしか「創竜伝世界の竜堂始は」受けていないのですから。
 また、竜堂兄弟の体組織が、強靭な身体能力を駆使した技や打撃に対してどれくらいの耐性を持っているのかについても、以下のような記述が存在します↓

創竜伝8巻 P202下段〜P203上段
<それを見て、続が両手の埃を払ったとき、背後から衝撃がきた。疾駆してきた別の戦車から、牛人が続の背に重い戦斧をたたきつけてきたのである。
 戦斧の重さも、牛人の腕力も、人間が耐えうる限界を、はるかにこえていた。常人どころか、熊や牛であっても、背骨がくだけ、胴は両断されていたであろう。続の場合、そうはならなかった。だが、まったく平然というわけにもいかなかった。戦斧は強靭をきわめる体組織にはじきかえされ、宙に舞った。一瞬、続は息がつまり、地に片ひざをついてしまった。そこへ、さらに大きな衝撃がかぶさってきた。牛人は戦車を駆り、続にぶつけてきたのである。
 続は転倒した。戦車全体が彼にのしかかり、容赦なく轢き殺そうとする。車の下に異音を聴いたとき、牛人は、相手の身体が轢きつぶされたと確信したにちがいない。
 閃光が炸裂した。
 牛人を乗せたまま、戦車は宙天高くはね飛ばされていた。閃光は球体を形成したかと思うと、天にむけて柱となり、たちまち拡散した。目を閉じた人間や怪物たちは、それをひらいたときに、雲へむかって駆け上る真紅の竜を見たのである。>

 ここで出てくる「竜堂続に背後から重い戦斧をたたきつけてきた牛人」というのは、その作中描写から、

<柏木の女性が鬼化した時、圧倒的な身体能力(成人男性の10倍以上)と人間をたやすく引き裂く爪を得る。
男性の場合は女性を凌駕する力を得るが、その上で真の鬼を解放すると、体躯は2倍に膨れ上がり身体能力は更に倍加、昔話で語られる「鬼」そのものとなる。>

 という「柏木四姉妹+耕一」の膂力に匹敵するか、もしくは近似値の力を保持していると見て間違いないのではないでしょうか? すくなくとも「柏木四姉妹+耕一」の「圧倒的な身体能力」とやらが「成人男性の10〜20倍以上」「人間をたやすく引き裂く爪」程度のシロモノでしかないのでは、「常人どころか、熊や牛であっても、背骨がくだけ、胴は両断」することができるだけの力を持つ「創竜伝世界ではザコ扱いされている牛人」とせいぜい同レベルでしかないように見えるのですが。
 さらに、この牛人は竜堂兄弟ではないのですから、当然のことながら相応の戦闘訓練を受け、かつ武器の扱いにもそれなりには長けていたはずです。にもかかわらず竜堂続は、その牛人が繰り出した、これまた重い戦斧の攻撃を、それも背後から不意打ちの形で背中にまともに食らいながら、それでも「一瞬、続は息がつまり、地に片ひざをついてしまった」という程度の「極めて軽微な」ダメージしか受けていないのです。しかもその牛人が繰り出した戦斧に至っては「強靭をきわめる体組織にはじきかえされ、宙に舞った」というありさまなのですから、「人間をたやすく引き裂く爪」などはそもそも全くの無用の長物に成り下がる可能性すらありえます。
 人型形態における竜堂兄弟の体組織でさえ、これほどまでの強靭な防御力を兼ね備えているのでは、

<仕上げは耕一だ。
腹部めがけ鬼の爪を叩き込む。
強靱な竜の筋組織とはいえ、極限まで引っ張られた上に切り込みを入れられ、破局はあっさりと訪れた。
始は二つに分けられた。
上半身と下半身に千切られた、ただの肉塊。
耕一たちが必勝の策として考えたのは、相手が回復する隙も、竜に変身する間も与えず殺す、という方法だった。
そのために脳を叩き潰す。意識を失う暇など与えない。必殺の一撃で意識の中枢を叩き、更に肉体を完全に破壊する。>

 という描写すらも竜堂兄弟相手には全く成立しえないのでは? 竜堂兄弟に対してこんなことをやったところで、竜堂兄弟の体組織に傷ひとつ入らないどころか、むしろ「鬼の爪」の方がへし折られてしまう、というのがオチではないでしょうか。もちろん、これでは竜堂兄弟を殺すことはできませんし、下手をすれば竜に変身されてしまう隙を自ら相手に与えてしまうことにもなりかねません。
 結局のところ、あくまで創竜伝の作品設定に沿った竜堂兄弟を打倒しようとするのであれば、竜堂兄弟が竜型形態に変身した場合を想定し、それでも圧倒できるだけの強大な力を用意するか、あるいは物理的な力に全く依存しない特殊能力や特殊兵器を駆使した戦い方でも行わなければ無理というものでしょう。そして創竜伝の作中記述を読む限りでは、前者にしても後者にしても、相当なまでに絶望的な戦いを強いられることになるのはまず間違いないと思いますけどね。



 あと、これは余談なのですが、

<「でも中性子爆弾に耐えましたね」
「確かにね。だけどおそらく『おとーちゃん』は中性子爆弾が核融合爆弾の一種だと理解できていないに違いないよ。普通より高速中性子の放出量を増やしただけの核爆弾なんだ。核反応付近は瞬間的にプラズマ化するほどの高温だし、物質であれば『絶対に』蒸発する。何より爆心地にはクレーターが開くよ」
「つまりあの描写は間違いだと」
「当然だね。それ以前に持ち歩けるサイズの中性子爆弾なんて存在しないし。>

 この中性子爆弾関連の描写についても、創竜伝の作中に以下の記述が存在します↓

創竜伝4巻 P100下段〜P101上段
<サクソンバーグ大佐は、皮膚の表面に不快感をにじませていた。そのことを承知の上で、レディLは艦長を無視した。彼女のほうも、たいそう不快であったからだ。サクソンバーグ大佐の部下であるドクター・クランショーのミスで、あやうく中性子爆弾の爆発に巻きこまれるところだったのである。
 ドクター・クランショーは、レディLの前に呼び出されて詰問されたが、ミスを指摘されたことがはなはだ心外だったようで、それはちがいます、といって眼鏡を白く光らせた。
「ミスではないというの?」
「これまで実地で試したことはありませんでしたので……」
 ドクター・クランショーののっぺりした顔に、罪悪感の雲はかかっていなかった。兵器の機能自体を目的化し、それを追求することが、彼の生存意義になってしまったようだ。
「私の計算は完璧でしたよ。中性子のシャワーは半径三〇〇メートルの球状空間を、一センチもはみ出さなかった。これでますます中性子爆弾の実用性は高まった。つぎの目標は一〇〇メートルです」
 クランショーは真剣で誠実だった。真剣で誠実であればすべてが赦されると思っている、というより、そんなことを考えたこともないようだった。
「最終的には五〇センチを目指します。そうすれば、目標の人物ひとりを殺し、周囲にいる人間は巻きぞえにせずにすむ。うふふふ、人道的な兵器をつくるのがぼくの子供のころからの夢でしてね。中性子爆弾は血も出ないし、ほんとに、理想的です。ぼくは中性子爆弾を愛してる。中性子爆弾の悪口をいうやつは許さない……」>

 このように、創竜伝4巻に登場している中性子爆弾は、ドクター・クランショーという一科学者の手によって作成された、半径300メートル内の球状空間に対してのみ中性子を放出する「特注製」であることが作中で説明されています。
 そして、科学考証的にはともかく、作品設定としての視点からこのような中性子爆弾を見れば、爆心地の半径はすくなくとも300メートルよりもはるかに小さくなければならないことになるはずですし、しかも桂兎さんの論では、むしろ人型形態時における竜堂兄弟の身体能力が、小規模とはいえ核反応爆発にすら耐えられるほどの防御能力をも兼ね備えているという、自分の意図とは全く逆の証明にもなってしまうのではありませんか?
 もちろん、「このような中性子爆弾の存在自体が、現代の科学水準および厳密な科学考証の観点から言えば絶対にありえない間違ったシロモノである」といった類の論を展開したいのであれば、それはそれで一向に構わないのですが、それはすくなくとも「あくまで創竜伝の作品設定に沿った竜堂兄弟を打倒しよう」というコンセプトの議論には全くといって良いほどに合致しないでしょう。
 このような科学考証に立脚した論は、竜堂兄弟打倒のような議論とは全く別個に論じていくのが筋だと思うのですが、いかがでしょうか。


No. 4202
これは難しい
桂兎 2003/06/09 06:52
>  まず、「例えばいきなり頭上から数トンの鉄骨が降ってくるとか、彼らが予測もしないような事故に遭う」についてですが、これに関しては創竜伝8巻に以下のような記述が存在します↓

そうですねえ。4巻までの兄弟なら結構弱点があったので、やれると思ったんですが。
その頃までは、麻酔が効いたり眼球をメスで抉られたりともろい部分があったんですよ。
相手を油断させることで竜としての能力を使わせないようにし、油断させたまま殺してしまえばよいと考えたんですが、甘かったですかねえ。

それにしてもおとーちゃんも厄介なキャラを出したものです。ここまでタフだと傷なんて付けられないじゃないか。
生物としての身体能力では極端でも無いのですが。
ちなみに、柏木四姉妹は抜き手で成人男性の胴体を貫通させますし、跳躍力は数十メートル(20メートルくらい?)を誇ります。
声が届かないところまで逃げた男を、軽々と飛び越えよろけもせずに着地する、という風に描写されています。
描写を総合的に考えると、竜堂兄弟は竜の肉体を人間の小脳でコントロールし、柏木一族は鬼の肉体を鬼の小脳でコントロールしているように感じますね。
つまり、戦闘技術としては柏木>>竜堂ですが、肉体のタフさでは竜堂>∞>柏木となるわけです。

では、次はウィツアルネミテア(うたわれるもの)あたりと戦わせて見ましょうか?
他にも竜の末裔ダード・ライ・ラグン(マップス)や、アーカード(ヘルシング)、柾木天地(天地無用!魎皇鬼)あたりがカードとしてあります。


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