反銀英伝・人物評論編
6−B

銀英伝世界における歴史教科書の人物評価(2)

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コンテンツの総収録投稿数27件の内、19〜27件目の投稿を掲載

収録投稿19件目
board4 - No.4449

銀英伝・元ネタ

投稿者:イッチー
2003年08月06日(水) 22時37分

 最近、読んだ本にこんな一節がありました。

 だがこの戦争は負けだった。負けいくさに武勇伝はつきものである。負けた時には「栄光のエピソード」を発明して、同時代人と後世の目をごまかす必要がある。勝ちいくさにはその必要がない。
(I・モンタネッリ著 藤沢道郎訳『ローマの歴史』 中公文庫・初版は1979年、69頁)

 これはアスターテ会戦後のキャゼルヌのセリフの元ネタではないでしょうか。

 「そう、同盟軍は敗れた。よって英雄をぜひとも必要とするん だ。大勝利ならあえてそれを必要とせんがね。敗れたときは民 衆の視線を大局からそらさなくてはならんからな。エル・ファ シルのときもそうだったろうが」(徳間文庫版1巻・138頁)

 それとも、負け戦のときには民衆の目をそらために英雄が必要という話は昔から言われているのでしょうか?

収録投稿20件目
board4 - No.4455

Re:銀英伝・元ネタ

投稿者:Ken
2003年08月10日(日) 22時49分

>それとも、負け戦のときには民衆の目をそらために英雄が必要という話は昔から言われているのでしょうか?

昔から言われているかどうかは存じませんが、古くは木口ラッパ手、最近ではジェシカ・リンチの例がありますので、勝ち負けに関係なく英雄は作られるのではないでしょうか?

銀英伝を読んでいて、以前に見たことがある表現を見つけるのは楽しい作業ですね。

ロイエンタールの「野に獣がいなくなれば猟犬は無用になる」(風雲篇第二章−5)はあまりにも有名ですが、その他にも、ヒルダがマリンドルフ伯に、門閥貴族よりラインハルトに加担すべく挙げた4つの理由(野望篇第二章−3)を見たとき、「あ、そっくりなのを三国志で見たことがある」と思いましたよ。

それは、魏の曹操(ラインハルトのモデルの一人ですね)が大敵の袁紹と戦って勝てるか迷っているとき、部下の郭嘉が「勝てます」と言い、10の理由を挙げる場面です。曹操が漢の天子を擁していること、門閥貴族の袁紹は家柄で人を登用するが曹操は能力主義であること、袁紹の陣営にはまとまりがないことなどを挙げてゆきます。

収録投稿21件目
board4 - No.4458

Re:銀英伝・元ネタ

投稿者:イッチー
2003年08月12日(火) 23時23分

レス、ありがとうございます。

> 昔から言われているかどうかは存じませんが、古くは木口ラッパ手、最近ではジェシカ・リンチの例がありますので、勝ち負けに関係なく英雄は作られるのではないでしょうか?

ジェシカ・リンチの件は、アメリカの戦況不利が伝えられていたころなので、ヤンのように負け戦をごまかす要素が強かったような・・・。日本の軍国美談にも実質的に負け戦に近かった日露戦争後の民衆の不満をそらし、慢性的な兵役忌避を回避する目的があったと思います。逆に、勝ち戦の場合は政治指導者が手柄を独り占めしてしまうのではないでしょうか。ダゴン星域会戦の功労者であるリン・パオもユースフ・トパロウルも晩年は恵まれなかったようですし・・・。

 ところで、自由惑星同盟の道徳の教科書には「ヤン・ウェンリー中尉は一人、踏みとどまり、悪逆非道な帝国軍から無事に民間人を救出しました」とか書かれているのでしょうか。(笑)

収録投稿22件目
board4 - No.4460

自由惑星同盟 道徳教科書 小学校6年用(人的資源委員会検定済)

投稿者:イッチー
2003年08月13日(水) 02時34分

第7課 信念の力

 宇宙暦788年、エル・ファシル星系に悪逆非道なる帝国軍が攻めてきました。このとき、エル・ファシル星系には十分な守備兵力がおらず、帝国軍が攻めてきた場合、星系全体が帝国軍の手に落ちるのは必至と思われていました。守備司令官リンチ少将をはじめ、多くの将兵たちは浮き足立ち、アーレ・ハイネセンの教えも民主主義の理念も忘れて、我先にと逃げ出そうとしました。
 このとき、星系警備の任にあったヤン・ウェンリー中尉は一人反対しました。「私達、同盟軍の第一の任務は民間人を守ることにあります。もし、帝国軍がこの地を占領すれば、悪逆非道なる帝国軍は老人・子どもを虐殺し、成年男子を奴隷として連れ去るでしょう。たとえ、味方の数が少なくても、民間人を救出する手段はあるはずです。国父アーレ・ハイネセンをはじめとする人々は少ない人数で帝国軍の追跡を離れ、わが国を建国することに成功したではありませんか!」ヤン中尉がそう言うと、兵士達は「ヤン中尉の言うとおりだ!私達は卑怯な真似など出来ない」と口々に叫びました。
 卑怯者のリンチ少将は「ならば、勝手にするがいい。私達は先に戦線を離脱する」と叫んで、星系から逃亡をはかりましたが、彼に従う者はほとんどいませんでした。案の定、リンチ少将が逃亡をはかると、帝国軍は司令官を捕まえる好機とばかりにリンチ少将一行に襲い掛かり、彼らを捕虜にしてしまいました。
 そのころ、ヤン中尉は冷静に民間人を説得し、脱出の好機を待っていました。兵士達は黙々と任務に励み、民間人たちもヤン中尉の指示に従いました。彼らは怖くはありませんでした。みんなで一丸となって、民主主義に対する信頼を持ち続けていれば、アーレ・ハイネセンのように悪逆非道な帝国軍の手から逃れることが出来ると信じていたからです。ヤン中尉は帝国軍がリンチ少将らを捕まえるのに躍起になっているのを見て取ると、整然と兵士および民間人をエル・ファシルから脱出させました。愚かな帝国軍は、整然と脱出する同盟人を小惑星の一群かなにかと勘違いし、エル・ファシルの住民は悪逆非道な帝国軍の魔の手から逃げ出すことに成功したのです。
 リンチ少将はいまだ、帝国軍の捕虜であり、一方、ヤン中尉はいまや同盟軍の若き指導者として、常に帝国軍を打ち破る活躍をしています。このような違いが生じたのはひとえに、民主主義に対する強固な信頼を持ち、国父アーレ・ハイネセンの思想を自分のものにしているかどうかによって生じた違いなのです。悪逆非道な帝国軍を打ち破るためにも私達、同盟国民は常に民主主義に対する信頼を忘れてはいけないのです。

このとき、現場にいあわせたフレデリカ・グリーンヒルさんの作文(自由惑星同盟中学生作文コンクール1位入選)の抜粋
 そのとき、ヤン・ウェンリー中尉は常に沈着冷静で、不安に怯える老人や子ども達一人一人に励ましの言葉をかけておいででした。私が「何か、私に出来ることはありませんか」と尋ねると、「すまないが、紅茶を一杯いれてくれないか」とおっしゃいました。私が紅茶をおいれすると、ヤン中尉はおいしそうにそれをお飲みになり、「ありがとう。おいしかったよ。これで僕は再び仕事に取り掛かれる。これから、君はエル・ファシルでヤン中尉をお助けしたのは私だと言いなさい」と優しい笑顔でおっしゃいました。そのとき、私は将来、自分も軍人になって、ヤン中尉のようにかよわき人々を助けようと決意しました。

収録投稿23件目
board4 - No.4462

Re:銀英伝・元ネタ

投稿者:カッツ
2003年08月13日(水) 11時18分

カッツです。お久しぶりです。

>  「そう、同盟軍は敗れた。よって英雄をぜひとも必要とするんだ。大勝利ならあえてそれを必要とせんがね。敗れたときは民衆の視線を大局からそらさなくてはならんからな。エル・ファシルのときもそうだったろうが」(徳間文庫版1巻・138頁)
>
>  それとも、負け戦のときには民衆の目をそらために英雄が必要という話は昔から言われているのでしょうか?

…「英雄」と同じニュアンスで、旧大日本帝国陸海軍は、「軍神」を量産しましたよね。しかもそれは、勝利に終わった日清戦争、日露戦争の際よりも、苦戦を続けた日中戦争、敗戦に終わった太平洋戦争時の方がはるかに多く生み出されました。
 ただ、これは敗戦する前の話ですから、厳密には、国民の視線を逸らすためというより、「劣勢というケースも含め、国民の戦意を高揚する必要に差し迫られている時に、軍神(英雄)は必要とされる」と解釈するのが正解かもしれません。
田中氏は博識ですから、旧日本軍のケースを知っていたのでしょう。

収録投稿24件目
board4 - No.4463

Re:銀英伝・元ネタ

投稿者:倉本
2003年08月13日(水) 12時01分

> ロイエンタールの「野に獣がいなくなれば猟犬は無用になる」(風雲篇第二章−5)はあまりにも有名ですが、その他にも、ヒルダがマリンドルフ伯に、門閥貴族よりラインハルトに加担すべく挙げた4つの理由(野望篇第二章−3)を見たとき、「あ、そっくりなのを三国志で見たことがある」と思いましたよ。
>
> それは、魏の曹操(ラインハルトのモデルの一人ですね)が大敵の袁紹と戦って勝てるか迷っているとき、部下の郭嘉が「勝てます」と言い、10の理由を挙げる場面です。曹操が漢の天子を擁していること、門閥貴族の袁紹は家柄で人を登用するが曹操は能力主義であること、袁紹の陣営にはまとまりがないことなどを挙げてゆきます。

このシーンの元ネタは三国志でもそこじゃないと思います。
話の流れからいって張繍が袁紹と曹操のどちらに味方するか迷ったときに夏くが曹操の利点を三つ挙げて曹操に味方する方をすすめるシーンでしょう。
また四つという数を重視するなら郭嘉の後で曹操に相談を受けたじゅんいくが曹操が袁紹に勝る点を四つ挙げています。
どちらにしろ元ネタはそのシーンではないと思います。

収録投稿25件目
board4 - No.4466

Re:自由惑星同盟 道徳教科書 小学校6年用(人的資源委員会検定済)

投稿者:Ken
2003年08月13日(水) 22時51分

イッチーさん、

なんだか、人的資源委員会よりは国防委員会の検定を通りそうな教科書ですが、3方面から抗議を受けるのではありませんか?

1.勝手に登場させないでくれ、というヤンの抗議
2.自分も登場させろ、というトリューニヒトの抗議

それと、

3.事実を曲げないでくれ、というフレデリカの抗議

ところで、現実世界の倫理の教科書もこういう筆致で書かれているのでしょうか?つまり、非常に単純な善と悪の対比、という意味ですが。

収録投稿26件目
board4 - No.4469

Re:銀英伝・元ネタ

投稿者:イッチー
2003年08月14日(木) 02時09分

お久しぶりです。

Kenさんも勝ち戦でも負け戦でも英雄は必要とされるとおっしゃっておられましたが、カッツさんの書き込みと合わせて考えると、軍神や英雄は総力戦体制がとられるような近代の産物なのかもしれません。古代ローマでも市民による義勇兵中心の戦いだった時期だったからこそ、英雄が必要になったわけで、傭兵中心の戦いになれば、英雄は必要ありませんものね。そうすると、キャゼルヌのセリフは少し的外れとなりますね。

ヤンの「エル・ファシルの美談」を聞いて、私は戦前の軍神のほかに、ジョン・F・ケネディが第二次大戦に海軍士官として参加したときに、部下の兵士を抱えながら漂流したという美談を思い出しました。

収録投稿27件目
board4 - No.4470

Re:自由惑星同盟 道徳教科書 小学校6年用(人的資源委員会検定済)

投稿者:イッチー
2003年08月14日(木) 02時19分

 自由惑星同盟の道徳教科書は、戦前の日本の修身の教科書を真似てふざけて作ったもので、わざと単純な話にしてあります。木口小平や広瀬中佐の話にしても、教科書作成者は政府に都合の良いように実話をねじまげており、木口ラッパ手に関しては別の人物が本当のモデルだという論争が起きました。実話をねじまげているというヤンやフレデリカの抗議は「戦時下である」の一言で却下されるでしょうし、政府の教科書作成者は戦意高揚のために平気でお話を創作するでしょう。トリューニヒトはちゃっかり別のところで自分専門の美談をでっちあげて登場しているような気がします。

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