今さらながら冬コミの話。 
 普通に語っても面白くないので、『みづき・ふりーだむ!』の番外編として書くことにしました。一部、脚色や創作が混じっていることをご了承ください。 
 
【冬休みの予定】 
 
 クラブの部室にて。 
先輩A「ねえ、みんな冬休みはどうするの?」 
 
先輩B「俺は大学受験で忙しいなあ」 
先輩C「私はスキーに行くよ」 
先輩A「みづきちゃんは?」 
 
みづき「パパといっしょに冬コミに行く予定です」 
 全員の顔色が、さっと変わる。 
 
先輩A「お願い! ヘタリアの本買ってきて!」 
先輩B「俺は東方!」 
先輩C「あたしはうみねこ!」 
みづき「ええーっ!?」 
 
【干草の山から】 
 
 家で。 
ひろし「何~っ!? ヘタリアとうみねこと東方の同人誌を買ってくるって約束した~!?」 
みづき「あかんかった?」 
 
 ひろし、コミケカタログを広げる。 
ひろし「見ろ! 東方だけで何百ブースあると思てんねん!」 
みづき「わっ、すごい!」 
 
ひろし「数が多いだけやない。もっと大きな問題がある」 
みづき「というと?」 
 
ひろし「この中から、どうやって18禁やない本を探し出すかや……」 
みづき「ああ……」 
 
【目のつけどころ】 
 
 家でカタログチェックをするひろしとみづき。みづきが読み上げるチェック箇所を、ひろしがカタログと見比べながらマップに記入してゆく。 
みづき「みの21b」 
ひろし「ええっと、みの21b……」 
 
ひろし「って、『ニャル子さん』?」 
みづき「うん。あれ面白かったし」 
 
みづき「次はみの31a」 
ひろし「31aっと……」 
 
ひろし「『俺の妹』!?」 
みづき「うん、面白かったし」 
 
【羨ましい】 
 
みづき「パパもママも、『同人誌なんかにお金使って』って、言わへんよね?」 
まなみ「そらもう」 
 
まなみ「あんたはぜいたくなこと何も言わへんやん。『服が欲しい』とか『旅行に行きたい』とか。 
 お年玉だって毎年、そっくり残ってるやろ?」 
 
まなみ「お金は好きなことに使うのが一番や。ええ使い道ができたやないの」 
みづき「そうかー」 
 
パパ「(しみじみと)……おまえはほんまにええ家に生まれたよな」 
みづき「そう?」 
 
【読書感想文】 
 
ナレーション「冬休みの宿題のひとつは、海外作家の本を読んで感想文を書くことです」 
 ゼナ・ヘンダースンの『ページをめくれば』を読むみづき。 
 
みづき「ようやく終わったー。でも、もう1本書かなあかんねん」 
ひろし「えっ、読書感想文、2本も書くの?」 
 
みづき「1本は課題やけど、もう1冊、日本の作家が書いた本で、どうしてもみんなに紹介したいやつがあるから、感想文書くねん」 
ひろし「へえ? 偉いなあ。どんな本」 
 
みづき「『バカテス』」 
ひろし「……どうしてもそれで感想文書きたいんやな?」 
 
【なじみの駅】 
 
ナレーション「12月29日、東京に到着。ビッグサイトに向かいます」 
 ゆりかもめの新橋駅に来たひろしとみづき。みづきは「汐留」という表示に興奮している。 
みづき「汐留やー、汐留さんやー♪」 
 
 ゆりかもめ車内。 
アナウンス「次は汐留~」 
みづき「うわー、汐留さーん」 
ひろし「あのー」 
 
ひろし「実は今日、泊まるホテルも汐留なんやけど……」 
みづき「ほんま!?」 
 
みづき「(目を輝かせて)パパ、ありがとー!」 
ひろし「いや、汐留でそんなに感謝されても……」 
 
【他人の目】 
 
 ビッグサイト入り口。 
 人ごみの中を歩くみづきとひろし。みづきは荷物の入った4輪のバッグを押している。 
ひろし「重くないか?」 
みづき「(楽しそうに)へーき。押すの好きやから」 
 
ひろし「無理すんなよ。しんどくなったらいつでも代わるぞ」 
みづき「へーき」 
 
ひろし「本当にパパが代わろうか?」 
みづき「へーき」 
 
ひろし「いや、お前にバッグを押させてると、パパが子供を虐待してるように見えるんやけど……」 
みづき「へーき」 
 
【軍資金】 
 
テロップ「コミケ会場。『ヘタリア』スペースにて」 
みづき「これとこれください」 
 
 別のブース。 
みづき「これとこれとこれください」 
 
みづき「これとこれと……」 
ひろし「おい」 
 
ひろし「まだサークル3つめやのに、そのペースで金は足りるんか?」 
みづき「はっ! もっとたくさん持って来るんやった!」 
 
【セーブポイント】 
 
 コミケ会場を歩く二人。 
みづき「はあ~、さすがに足が疲れてきた~」 
ひろし「ちょっと休憩しよう」 
 
 喫茶店でジュースを飲みながら、買った同人誌を読む2人。 
 
 同人誌を読む2人。 
 
 店を出て歩き出す2人。 
ひろし「どうや?」 
みづき「うん、萌えでかなり回復した!」 
 
【顰蹙】 
 
 ホテルに帰るタクシーの車内。 
運転手「お客さん、今日はコミケ?」 
ひろし「はい」 
みづき「はい」 
 
運転手「よく前の晩からビッグサイトのまわりにたむろしてる連中がいるよね」 
ひろし「(苦笑して)ああ、徹夜組はいくら言ってもなくなりませんね」 
 
運転手「今朝も駐車場のところにゴキブリみたいにうじゃうじゃうごめいててさ」 
ひろし「はあ」 
 
運転手「石投げてやろうかと思ったけどね」 
ひろし「ははは」 
 
【世間の印象】 
 
運転手「晴海でやってた頃は、近くの公園にああいう連中が泊まりこんでてさ」 
ひろし「ああ、らしいですね」 
 
運転手「夜中にあのへんを通りかかったら……」 
 
運転手「茂みの中から、むさ苦しい格好した男がぬうっと出てきて」 
 
運転手「車ではね飛ばしてやろうかと思ったけどね」 
ひろし「はははは(と、ひきつった笑い)」 
 
【一家言】 
 
みづき「でも、そういうルールを破る人たちって、自分たちの行動がコミケの存続を危うくしてるって気がついてないんですかねえ」 
 
みづき「真夜中に大勢で騒いだら、周辺の住民が不安に思うに決まってますよ。何かトラブルが起きたら、コミケが中止になるかもしれないんですよ」 
 
みづき「本が欲しいのは分かるけど、コミケがなくなったら困るのは自分らやのに……それがどうして分からないんですかねえ」 
 
みづき「コミケはお祭りである以前に表現の場であって……」 
ひろし(こいつ、いつの間にこんな立派なことを言うように!?) 
 
【想像を上回る】 
 
テロップ「コミケ2日目」 
 ぎっしりの群衆の中のみづきとひろし。 
スタッフ「ここからは東6ホールに入れませーん。東5にお回りくださーい」 
 
 東5ホール内。やはり大変な人。 
スタッフ「東5から東6には抜けられませーん。いったん外にお回りくださーい」 
 
 疲労の色を見せているひろし。 
ひろし「いやー、覚悟はしてたつもりやったけど……」 
 
ひろし「東方を甘く見てたな」 
みづき「ほんまや」 
 
【空耳アワー】 
 
アナウンス「準備会からのお知らせです」 
 
アナウンス「会場内の通路では立ち止まらないように……」 
みづき「あ、あれ、『準備会からのお知らせ』って言うてたんやな」 
 
ひろし「何やと思てたんや?」 
みづき「『12階からのお知らせ』やと……」 
 
みづき「てっきり12階に本部があるんやと思ってた」 
ひろし「……『言いまつがい』に投稿していい?」 
 
【トラップ】 
 
 通路の自販機の前で立ち止まる2人。 
みづき「へえ、自販機でストロベリーフローズンなんか売ってる」 
ひろし「パパはラムネのフローズンがいいな」 
 
 通路にしゃがみこんでいるひろし。それを女性スタッフが注意する。 
スタッフ「ここは通路です。座りこまないでくださーい」 
 
スタッフ「立って移動してください」 
ひろし「(蒼い顔で)ご……ごめんなさい……」 
 
ひろし「かき氷食べたら頭痛がして……」 
みづき「ほんまなんです」 
スタッフ「それは……」 
 
【提案】 
 
ナレーション「2日目の夜、汐留のホテルで」 
 ホテルの部屋で、買ってきた同人誌に読みふけるひろしとみづき。 
 
 読みふけるひろしとみづき。 
 
ひろし「……なあ」 
 
ひろし「大江戸線、乗りに行かへんか?」 
みづき「行く!!」 
 
【あこがれのツーショット】 
 
 汐留駅の改札前で、ひろしに記念写真を撮ってもらうみづき。 
 
みづき「うわー、汐留さーん! あこがれの汐留さんやー」 
 地下鉄の改札の前ではしゃぎ回るみづき。 
 
みづき「汐留さーん! 汐留さーん!」 
 地下道をスキップしまくるみづき。 
 
 ぜいぜいと息をしているみづき。 
みづき「あ、あかん……コミケよりも体力使うわ、これ」 
ひろし「エキサイトしすぎや、お前」 
 
【大江戸線めぐり】 
 
 都庁前駅のホーム。御影石に刻まれたように見える「都庁前」のプレートの前に立つひろしとみづき。 
ひろし「へー、駅によって個性があるなあ」 
みづき「都庁前さんの文字、えらい豪華や」 
 
 六本木駅のホーム。黒い柱に金のプレートで「六本木」という表示。 
みづき「六本木さんもリッチな雰囲気やね」 
 
ひろし「でも、この黒地に金のライン、何かに似てるような……あっ」 
 
ひろし「霊柩車か仏壇?」 
みづき「それ言うたら、都庁前さんなんか墓石やで」 
 
【計算問題】 
 
ナレーション「3日目はパパのブースで売り子をしました」 
 ブースに並んで座っているみづきとひろし。 
 
客「これとこれとこれ、お願いします」 
みづき「はい、600円と600円と700円ですね」 
 
みづき「(あせって)ええっと、600×2で1200で、それに700円足して……えーと、えーと……」 
 
みづき「1900円だと思います!」 
ひろし「思いますって何やねん」 
 
【発展問題】 
 
ひろし「こういう場合は、600+700×2のセットで2000円やと覚えておけばいい」 
みづき「おお、なるほど!」 
 
客「この4冊、お願いします」 
みづき「はい。600円が2冊と700円が2冊で、セット+600円だから……」 
 
みづき「(さわやかな笑顔で)2600円になります!」 
 
客「1万円でお釣りを」 
 と、万札を差し出す。 
みづき「(パニックに陥って)ええーっ!? 1万ひく2600って、8000、いや7000……」 
ひろし「はい、7400円のお返しになります」 
 
【スマイル0円】 
 
みづき「はい、800円のお返しになります」 
 
みづき「午後もがんばって回ってくださいね♪」 
 と、笑顔で客を送り出す。 
 
 ………… 
 
ひろし「あんな言い方、どこで覚えたん?」 
みづき「ん? まんレポ」 
 
【ごひいき】 
 
テロップ「大晦日の午後8時半に帰宅。ママが録画しておいてくれた紅白歌合戦の前半部を3人で見ました」 
 ミカンを食べながらテレビを見ている3人。 
 
 テレビを見ている3人。 
 
まなみ「へえ……」 
 
まなみ「この人、上手いなあ」 
みづき「うん、上手い」 
ひろし「(力をこめて)やろ!? 水樹奈々サイコーやろ!?」 
 
【バックダンサー】 
 
 電話に出ているまなみ。 
まなみ「えっ、ほんま!?」 
 
まなみ「同じダンス教室やった××ちゃん、EXILEのバックで踊ってるって!」 
みづき「えーっ!」 
 
 テレビをかぶりつくようにして見るまなみとみづき。 
みづき「どれ!? どの子!?」 
まなみ「この子とちゃう!?」 
みづき「よく見えへん! もっとアップにして!」 
まなみ「バックダンサーも写せ、NHK!」 
 
みづき「邪魔ー! EXILE邪魔ー!」 
まなみ「どけー、EXILE!」 
ひろし「邪魔って……」 
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