ロイエンタールの叛乱

その動機と勝算
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収録投稿1件目
board2 - No.1245

どうにもこうにも変?ロイエンタール元帥の叛乱

投稿者:不沈戦艦
2000年08月10日(木) 00時21分

 自分の掲示板でちょいっと言ったんですが、こっちに持ってきても面白い話題だと思いますので、やってみます。

1.ロイエンタールが叛乱を起こす動機

 私としては、な~んにもないと思います。動機は支離滅裂ですよ。「オーベルシュタインに頭を下げることになる」って、ロイエンタールの上司はラインハルトだけでしょう。何でオーベルシュタインに取り調べられるようなことになる、とロイエンタールが思い込んだのかまるで解らない。ラングに至っては、格下もいいところですので、ロイエンタールがフェザーンに出頭して申し開きをした場合、ラングの出る場面があるとも思えません。ラインハルトの性格からしても、ロイエンタールが申し開きをする相手はラインハルトだけの筈でしょう。それが解らないロイエンタールとも思えませんね。「皇帝の健康状態が・・・・」と、私の掲示板の方で冒険風ライダー氏の意見を貰いましたけど、そうなら何でそんな半病人が、ブリュンヒルトに乗ってウルヴァシーまでやって来られたのか、さっぱり解りません。少なくとも健康状態に問題があるのに、火急の用でもない皇帝の新領土巡幸が必要な訳ないでしょう。どう考えても無茶苦茶じゃないかと思いますわ。また、他人の筋書きで勝手に叛乱の主役にさせられてしまって、その自分勝手な演出家どもの思惑通りに踊ってやろう、という趣味がロイエンタールにあるというのも、いかにも解せません。そんな正直素直なキャラクターでしたっけ?ロイエンタールは。

2.叛乱が成功する可能性

 これは、ほとんどゼロです。兵力が少ない、というのが致命的ですね。どっちにしてもランテマリオで迎え撃って、消耗戦になればおしまい、ですから。距離と補給の問題がある、と冒険風ライダー氏の意見でしたけど、帝国軍は一度は10万隻以上の戦力で、少なくともハイネセンに近いガンダルヴァ星系までは来ましたよね。それだけの兵力運用能力と補給能力がある相手を、一体どうしろと言うのでしょうか。仮にイゼルローンが帝国軍の通過を許さなくても、ロイエンタールに勝ち目などないと思いますわ。また、帝国軍がロイエンタールを叩いている間に、イゼルローン軍が暴れた場合ですけど、放っておきゃいいんじゃないですかね。どうせ小兵力ですから、こそ泥程度の話です。ロイエンタールが片づいてから切り返せば、尻尾を巻いてイゼルローンに退散するしかなくなります。結局どうやっても勝ち目はないでしょう。

 どう考えたって不可能な条件ばかりなのに、それでも「叛乱」に酔ってそちらに邁進してしまうロイエンタール元帥ってのは、一体何なのでしょうか。これは、到底「名将」の成す業ではないと思いますわ。これでは、単なる阿呆にしか思えません。結局、田中芳樹が「ロイエンタールには叛乱させる」と最初から決めていて、合理的な理由を思いつかず、無理がある筋書きにしてしまった、というだけではないでしょうか。

収録投稿2件目
board2 - No.1246

Re: どうにもこうにも変?ロイエンタール元帥の叛乱

投稿者:モトラ
2000年08月10日(木) 11時28分

謀反の嫌疑をかけられたこと自体を恥じる武人の気分と、生来の破滅志向が頭の中で化学反応を起こして、あのような行動に出た…初めて読んだ時はそのように解釈しておりました。
しかし付き合わされる部下はいい迷惑ですな。ロイエンタールへの信頼は厚いものがあるにせよ、それは皇帝ラインハルトの下、帝国の双璧としてのものであろうし。なによりカリスマ性では、遠く及ぶべくもない。己の心情と部下の将来秤にかけて、自害する程度の理性?はあるのでは…などと、浮沈戦艦さんの書き込みからそんなことを思ったり。

…ただ、「帝都物語11 戦争編」で、それまでの展開で直接利害関係の生じていない加藤とトマーゾを戦わせるため、大谷光瑞のルーズベルト呪殺作戦を妨害しようとするトマーゾを「日本は敗戦間近なので、アメリカに対してパワーバランス的に不利だから、トマーゾに邪魔をさせては面白くない。だから俺が奴を倒す」などと、むちゃくちゃな理由をでっち上げた荒俣宏よりはましだと思います…って例えが悪すぎるか。

収録投稿3件目
board2 - No.1250

Re1245:論争に至るあらすじ(不沈戦艦さんの掲示板より転載)

投稿者:冒険風ライダー
2000年08月11日(金) 00時09分

 不沈戦艦さんの掲示板のURLは
http://www66.tcup.com/6605/battleship01.html
ですが、Tcup掲示板って流れが速い上にログが残らないんですよね。
 そんなわけで、記録用として一連の投稿をこちらに全て転載したいと思います

―――――――――――――以下転載――――――――――――――――

元帥級を連発 投稿者:水城  投稿日: 8月 8日(火)00時10分29秒

どんな犯罪でも免責されるような地位にいて
唯一極刑な内乱罪とかを犯した元帥ってどうなんでしょう双璧の片割れ。

ん? 投稿者:不沈戦艦(管理人)  投稿日: 8月 8日(火)01時25分57秒

>双璧の片割れ。

 銀英伝の話ですか?どうも「ロイエンタール元帥の反乱」事件に関しては、訳が解らんので。大体、何もやっていないロイエンタールが、策謀を起こした連中の思惑通り、反乱路線そのままに突っ走らなければならんのか、意味不明ですよ。いくらグリルパルツァーが野心を持ったとしても、ロイエンタールは実際何もしていない訳です。ウルヴァシーの皇帝襲撃事件については。別にオーベルシュタインに頭を下げる訳じゃなし、陰謀家どもの作曲と振り付けに合わせてダンスを踊るより、皇帝の前に出て自らの無実を訴えるのが普通でしょう。何でロイエンタールが反逆に向かって突っ走るのか、どうもよく解りません。それに、普通に考えれば、いくら新領土総督麾下の兵力が大きくても、フェザーンの本国の戦力にはかなう訳もないですしね。その程度の客観的判断力がないロイエンタールの訳もないし。どうも、彼が反乱に邁進して、結局死んでしまうのは、あまりに無理がある筋ではないか、と思ってますけど。

ロイエンタールの叛乱について 投稿者:冒険風ライダー  投稿日: 8月 8日(火)13時39分34秒

 どうも、こちらでははじめまして。
 ここは今までずっとROMしていたのですが、銀英伝ネタが出てきたので、今回投稿してみる事にしました。

<どうも「ロイエンタール元帥の反乱」事件に関しては、訳が解らんので。
 大体、何もやっていないロイエンタールが、策謀を起こした連中の思惑通り、反乱路線そのままに突っ走らなければならんのか、意味不明ですよ。いくらグリルパルツァーが野心を持ったとしても、ロイエンタールは実際何もしていない訳です。ウルヴァシーの皇帝襲撃事件については。別にオーベルシュタインに頭を下げる訳じゃなし、陰謀家どもの作曲と振り付けに合わせてダンスを踊るより、皇帝の前に出て自らの無実を訴えるのが普通でしょう。何でロイエンタールが反逆に向かって突っ走るのか、どうもよく解りません。>

 これについては銀英伝の記述の中に一応の背景事情は書かれています。
 まず、ラングがロイエンタールに対して「カイザーが原因不明の発熱を繰り返し、それに乗じてオーベルシュタインとラングが専横をほしいままにしている」という流言を自ら流し、それをオーベルシュタインにたいする偏見と反感からロイエンタールが信じ込んでしまい、この思いこみのために「不始末を起こしたらオーベルシュタインに頭を下げなければならない」とロイエンタールが考えるようになってしまったことがまずひとつ。
 さらにこれを補強したものとして「オーベルシュタインがロイエンタールを危険視し、始末したがっている」とロイエンタールが思いこんでいたという事情もあるでしょう。つまり、ロイエンタールがオーベルシュタインを過度に意識し、危険視していたことが、ロイエンタールの叛逆の最大の原因なのです。
 あと結果的にとは言え、ルッツが地球教徒によるラインハルト襲撃の際に死んでしまい、その責任をラインハルトにではなくオーベルシュタインに問われる事を嫌った事、そしてグリルパルツァーがウルヴァシー襲撃における重要な情報をロイエンタールに渡さなかった事なども、叛乱を勃発させた原因のひとつに数えられます。
 まああの地球教徒の陰謀はあまりにもお粗末なものですから、ウルヴァシーを調査していたグリルパルツァーが背反行為を起こしていなかったら確実に失敗していたとは思うのですけどね。

<普通に考えれば、いくら新領土総督麾下の兵力が大きくても、フェザーンの本国の戦力にはかなう訳もないですしね。その程度の客観的判断力がないロイエンタールの訳もないし。どうも、彼が反乱に邁進して、結局死んでしまうのは、あまりに無理がある筋ではないか、と思ってますけど。>

 やりようによってはある程度の勝算があると考えていたのではないですか? 具体的には、
1. 二正面作戦を避ける
2. 長期戦に持ちこみ、相手側の補給の限界を待つ
ということを実行していけば、すくなくともある程度の勢力を確立する事ができると考えていたのではないでしょうか?
 それとロイエンタールの叛乱というのは、ロイエンタール個人の矜持や誇り、それに乱世志向などといった「性格的な要素」もかなり含まれていますから、理論では説明しにくい部分も大きいのではないでしょうか?

reロイエンタールの叛乱について  投稿者:キラーカーン  投稿日: 8月 9日(水)22時55分29秒

ロイエンタールの叛乱
は、作者の都合ではないでしょうか。と言っては元も子もないですが

はい 投稿者:不沈戦艦(管理人)  投稿日: 8月 9日(水)23時58分23秒

>ロイエンタールの叛乱
>は、作者の都合ではないでしょうか。と言っては元も子もないですが

 私もそう思いました。

>まず、ラングがロイエンタールに対して「カイザーが原因不明の発熱を繰り返し、それに乗じてオーベルシュタインとラングが専横をほしいままにしている」という流言を自ら流し、それをオーベルシュタインにたいする偏見と反感からロイエンタールが信じ込んでしまい、この思いこみのために「不始末を起こしたらオーベルシュタインに頭を下げなければならない」とロイエンタールが考えるようになってしまったことがまずひとつ。

 それほど病弱な皇帝に、新領土への来訪を要請するロイエンタールもロイエンタールだし、受けてやってくる皇帝も皇帝なのでは?ブリュンヒルトに乗って旧同盟領奥深くまでやって来る事が出来た、という事自体が、皇帝の健康には差し当たって問題がないことを現してはいませんか?それでロイエンタールが皇帝は病弱で、ラングとオーベルシュタインが専横を欲しいままにしていると思い込んだ、というのは無理があると思いますけど。しかも、皇帝の側には、ロイエンタールとしては信用できる、ミッターマイヤーもいるのに。

> あと結果的にとは言え、ルッツが地球教徒によるラインハルト襲撃の際に死んでしまい、その責任をラインハルトにではなくオーベルシュタインに問われる事を嫌った事、そしてグリルパルツァーがウルヴァシー襲撃における重要な情報をロイエンタールに渡さなかった事なども、叛乱を勃発させた原因のひとつに数えられます。
> まああの地球教徒の陰謀はあまりにもお粗末なものですから、ウルヴァシーを調査していたグリルパルツァーが背反行為を起こしていなかったら確実に失敗していたとは思うのですけどね。

 その責任、オーベルシュタインが問うようなことになりますかね。卑しくも帝国元帥にて新領土総督たるロイエンタールに、同格のオーベルシュタインが好きなように処置する、ってことに。ラインハルトの性格を考えても、皇帝自らロイエンタールに問い質す、ってことになるのでは。それくらいの事が解っていないロイエンタールとも思えませんし。

> やりようによってはある程度の勝算があると考えていたのではないですか? 具体的には、
>1. 二正面作戦を避ける
>2. 長期戦に持ちこみ、相手側の補給の限界を待つ
>ということを実行していけば、すくなくともある程度の勢力を確立する事ができると考えていたのではないでしょうか?

 一度は同盟領奥深くまで、大軍を率いてやってきた帝国軍ですから、 同盟側に位置して少ない兵力で迎え撃つのは、どう考えても無理筋では。二正面作戦でなくても、勝てはしませんよ。それと、一体どうやって長期戦に持ち込むのか、です。方法がないのでは。相手が大兵力を押し立てて、素直に正面から攻めてきたら、どうやっても長期戦に持ち込めないと思いますが。決戦に応じざるを得ないので。ヤンみたいに、正規軍を使用した不正規戦(バーミリオン会戦前)を、ロイエンタールが実行する事が可能でしょうか。補給を絶つには、長期戦に持ち込んだ上、遊撃戦を展開する必要がありますけど、それを任せられる信頼すべき人材もいないでしょうし。

 また、今は従っているにしても、本来ロイエンタールの麾下にいる戦力は、「皇帝の軍」であって、ロイエンタールの私設軍ではありません。忠誠心も疑問です。100に一つも勝てる可能性などないと思いますね。その程度の事が解らず、単に「反乱をやってみたかった」で反乱した、としたらロイエンタールは名将との評判はトンデモで、実は単なる阿呆ではないかとは思いませんか?名将だとすると、こんな馬鹿な反乱に乗る訳もないでしょうし。どうも、ロイエンタール元帥の反乱事件は、単に田中芳樹が「コイツには反乱させる」と最初から決めていて、動機が支離滅裂になってでも無理矢理に反乱するという方向に持っていっただけ、としか思えないんですけど。

新領土戦役は 投稿者:水城  投稿日: 8月10日(木)00時27分50秒

ストーリー的にロイエンタールの性格とかなんとか延々と
伏線張られまくりで、くるぞくるぞくるぞくるぞほらきたぁ!!
・・・って感じでした。エピソードとしては好きなんですよねぇ。
戦う相手が皇帝じゃなく、ミッターマイヤーだったって所まで
ある種お約束な展開ですが、・・・双璧ファンでしたから私

>冒険風ライダーさん
はじめまして。私もロイエンタールの反乱は彼の性格的な要素を
重視した結果だと思います。純軍事的な勝算に関しても、
たとえば長期戦がロイエンタールに似合うか!(笑)というどこまでも
キャラの性格重視な展開だったんじゃないかと。

新領土戦役 投稿者:不沈戦艦(管理人)  投稿日: 8月10日(木)00時58分08秒

 いや、ロイエンタールが叛乱起こす、って田中芳樹が決めていて書いたのでも別にいいんですよ。問題は、ストーリーが無茶苦茶だ、っつーだけです。もうちょっと、勝てそうな条件で、読者として納得できそうな話にして貰いたい、ってことで。誰かに謀られて、行き当たりばったりでそのまま乗っただけ、では「これ、ホントにロイエンタールのやったことか?」と思いたくもなりますわ。もうちょっと主体的に叛乱を起こした方が、ロイエンタールらしいのではないかと思うもので。

収録投稿4件目
board2 - No.1251

Re1245/1250:叛乱の動機と勝算について

投稿者:冒険風ライダー
2000年08月11日(金) 00時14分

<それほど病弱な皇帝に、新領土への来訪を要請するロイエンタールもロイエンタールだし、受けてやってくる皇帝も皇帝なのでは?ブリュンヒルトに乗って旧同盟領奥深くまでやって来る事が出来た、という事自体が、皇帝の健康には差し当たって問題がないことを現してはいませんか?それでロイエンタールが皇帝は病弱で、ラングとオーベルシュタインが専横を欲しいままにしていると思い込んだ、というのは無理があると思いますけど。しかも、皇帝の側には、ロイエンタールとしては信用できる、ミッターマイヤーもいるのに。>

 一応ロイエンタールがラインハルトに対して新領土への来訪を要請する招請状を送った理由については、銀英伝において次のように記述されています。

銀英伝9巻 P106上段~下段
<いずれにしても、ロイエンタールは、オーベルシュタインやラングの風下に立つ意思は皆無であったし、そうであれば当然、自分の未来に対して楽観的ではいられなかった。
 フェザーンに流れる不愉快な噂を知りながら、あえて皇帝に招請状を送ったのも、ひとつには皇帝の反応が知りたかったからである。皇帝がフェザーンを動かぬ、となれば、皇帝は噂を信じ、ロイエンタールを疑っている、ということになる。ロイエンタール自身に言わせれば、「皇帝はオーベルシュタインやラングの木偶になりさがった」というわけだ。不愉快ではあるが、事態は明確になる。ところで、皇帝が招請に応じて新領土へ行幸すれば、それはロイエンタールに対する信頼を証明する事になるのだろうか。残念ながらそうではない。ロイエンタールを油断させておいて、にわかに彼を捕縛し、処断するつもりかもしれぬではないか。これは皇帝ラインハルトらしからぬ詭計ではあるが、オーベルシュタイン、ラングあたりなら弄しかねない。>

 というわけで、ロイエンタールはラインハルトの反応を見てみたかったがためにあえて招請状を送ったという事が書かれています。したがって、ロイエンタールが招請状を送ったのは「流言が正しいかどうかを確認する」という意味合いが強かったのではないでしょうか。
 また、これに応じたラインハルトにはまた別の事情があります。ロイエンタールに流言(ちなみにこの「流言」というのはラングが流したウソです)が流れていたのと同じ時期に、フェザーンでもまた「ロイエンタールが皇帝に対して叛意を抱いている」という逆の流言が流れており、そんな時にロイエンタールの招請状が来てしまったため、ラインハルトの性格からいっても立場からしても、ラインハルトはそれに応じざるをえなくなってしまったのです。ロイエンタールに対する噂が流れている状況下でラインハルトが招請状を拒絶したら臆病者呼ばわりされますし、噂の信憑性を証明する事になってしまいますから。
 それにロイエンタールには、以前にリヒテンラーデ公の一族を身辺においていたために叛逆の疑いをかけられた前科があります。その疑いを再現させないためにも、あえてラインハルトは新領土へ行幸する必要性を感じていたのでしょう。
 そういうわけで、ロイエンタールがラインハルトを誘い出させるというところまでは、地球教徒の陰謀はそれなりに筋が通っていたのではないでしょうか。もっとも、ウルヴァシー襲撃あたりの構想は私も相当に支離滅裂だと思うのですけど。

<その責任、オーベルシュタインが問うようなことになりますかね。卑しくも帝国元帥にて新領土総督たるロイエンタールに、同格のオーベルシュタインが好きなように処置する、ってことに。ラインハルトの性格を考えても、皇帝自らロイエンタールに問い質す、ってことになるのでは。それくらいの事が解っていないロイエンタールとも思えませんし。>

 おそらくロイエンタールは「流言が完全に事実である」という「ロイエンタールにとって最悪の場合の想定」に基づいて行動してしまったのではないでしょうか。結局のところ、ロイエンタールはラインハルトがオーベルシュタインとラングの傀儡になっているかどうかを確認する事ができなかったのですから、最悪の事態に備えてオーベルシュタインを警戒しなければならなかったわけです。
 そしてその傾向を助長したのが、ロイエンタールのオーベルシュタインに対する偏見と反感、それにロイエンタールの乱世志向の性格ですね。したがって、ロイエンタールの性格がかなり判断力を狂わせてしまった可能性も高いのではないかと思います。

 それとロイエンタールがラングの流言に簡単に引っかかってしまった件についても、一応銀英伝の中にそれなりの理由が明記されています。

銀英伝9巻 P103上段~下段
<ロイエンタールは、かなり辛辣な政略的観察のできる男ではあったが、ラングがロイエンタールに「知らせる」ため、誇張と捏造をおこなっているとは気づかなかった。彼は本来、武人であって、叛乱が支配者にとってはマイナス要因であるという観念があった。最初から鎮定を条件とした叛乱の誘発――という発想はなじみにくいのである。そもそも、ロイエンタールは用兵には自信があったし、皇帝と自分との信頼関係を損ねようとする動きに平静でいられようもない。さらには、ラングという人物に対する先入観もある。ラングは皇帝を内心で尊敬してもおらず、ロイエンタールに対して害意をいだいている、という先入観である。しかも、その先入観は正しかった。ラングの策に、結果としてロイエンタールが乗せられたゆえんであった。>

 このように、ロイエンタールの発想的に陰謀を見抜く事ができなかったという要素も大きく、まさに「結果として」ロイエンタールは叛乱を起こすに至ったのではないでしょうか。

<一度は同盟領奥深くまで、大軍を率いてやってきた帝国軍ですから、同盟側に位置して少ない兵力で迎え撃つのは、どう考えても無理筋では。二正面作戦でなくても、勝てはしませんよ。それと、一体どうやって長期戦に持ち込むのか、です。方法がないのでは。相手が大兵力を押し立てて、素直に正面から攻めてきたら、どうやっても長期戦に持ち込めないと思いますが。決戦に応じざるを得ないので。ヤンみたいに、正規軍を使用した不正規戦(バーミリオン会戦前)を、ロイエンタールが実行する事が可能でしょうか。補給を絶つには、長期戦に持ち込んだ上、遊撃戦を展開する必要がありますけど、それを任せられる信頼すべき人材もいないでしょうし。>

 これについては、一応ロイエンタールもそれなりの対処法を考えてはいたようです。

銀英伝9巻 P171上段~下段
<ロイエンタールが最初、立案し実行しようとした作戦の大略は、つぎのようなものであった。
 一、ミッターマイヤー軍の進行にあたっては、新領土各所に配置した兵力を持って、幾重にも防御線をつくり最大限の損害を強要し、その前進速度を鈍化させる。
 二、敵主力を深く惑星ハイネセンまで引きずりこみ、その後方を遮断する、もしくはそれをよそおって敵の後退をさそう。
 三、敵の後退に際しては、各所に配置した兵力を再結集して要路をさえぎり、ハイネセンよりの主力と呼応しつつこれを前後より挟撃して敗北にみちびく。
 右のような基本的計画であった。
 ロイエンタールの戦略的構想と戦術的技量の双方を後世に知らしめる、壮大で緻密な作戦であったといえる。ただし、この作戦が完全な成功をおさめるには、ふたつの条件が必要であった。ひとつは、この作戦が完了するまで、イゼルローン方面からの敵兵力の侵入がなく、二正面作戦を強いられないこと。いまひとつは、新領土各地に配置された兵力を運用し、再結集する指揮官に人材をえること、である。>

 これって不沈戦艦さんが主張している作戦とほぼ同じものなのではないでしょうか。そして2つの難題のうち、前者はムライをイゼルローンに派遣する事によって解決を図り、後者はロイエンタールがもっとも信頼を寄せていたベルゲングリューン大将をその任に当てています。
 また、叛乱を長期化させてしまえば、新領土において民主共和主義者による暴動が発生し、それがロイエンタールの味方につくという計算もあったかもしれません。
 もっとも、この作戦はミッターマイヤー軍が神速のスピードで進行してきたために実行に移す事ができず、ロイエンタールとしては時間的余裕が与えられることなく短期決戦を行わざるをえなくなってしまったのですが、これは泥縄式に叛乱に追いやられてしまい、入念な準備ができなかったという要素も大きかったでしょう。

<また、今は従っているにしても、本来ロイエンタールの麾下にいる戦力は、「皇帝の軍」であって、ロイエンタールの私設軍ではありません。忠誠心も疑問です。100に一つも勝てる可能性などないと思いますね。その程度の事が解らず、単に「反乱をやってみたかった」で反乱した、としたらロイエンタールは名将との評判はトンデモで、実は単なる阿呆ではないかとは思いませんか?名将だとすると、こんな馬鹿な反乱に乗る訳もないでしょうし。>

 これはロイエンタールもその危険性は考えていて、とりあえず「君側の奸を討つ」という論法で一応将兵達を繋ぎ止めていたようです。そして一度でも敗北したら将兵が離反していく事もまたロイエンタールは知っていたように見えます。
 しかしロイエンタールの叛乱はそもそも「自発的に起こした」ものではなく「他者に乗せられた」ものですから、すくなくとも「ロイエンタールの主観的には」他に選択肢がなかったといえるものなのではないでしょうか。

<また、帝国軍がロイエンタールを叩いている間に、イゼルローン軍が暴れた場合ですけど、放っておきゃいいんじゃないですかね。どうせ小兵力ですから、こそ泥程度の話です。ロイエンタールが片づいてから切り返せば、尻尾を巻いてイゼルローンに退散するしかなくなります。結局どうやっても勝ち目はないでしょう。>

 まさにそう思ったからこそ、イゼルローン勢力はロイエンタールの叛乱に加担しなかったのでしょう。そしてロイエンタールにしても、とりあえず時間稼ぎさえしてくれれば良いという程度にしか考えていなかったようで、だからこそ「協力してくれたら旧同盟領全部とトリューニヒトの身柄をくれてやる」という、非常に気前の良い条件を提示していたように思うのですけど。

収録投稿5件目
board2 - No.1253

Re: どうにもこうにも変?ロイエンタール元帥の叛乱

投稿者:小村損三郎
2000年08月12日(土) 08時31分

不沈戦艦さんは書きました
> 1.ロイエンタールが叛乱を起こす動機

そもそもロイエンタールの野心の根元にあるものが
「俺より強い奴と戦いたい」
という、まるでジャンプ漫画か格闘ゲームのキャラクターのような幼稚で漠然としたものだった為、その後の行動や描写にイマイチ説得力と陰影を持たせられなかったことが物語としての大きな弱点になった感じです。
ラインハルトの場合は姉を奪われるという具体的な体験が根っこにある上「ゴールデンバウム王朝の腐敗と社会の不公正」という背景を強調することで説得力を持たせていましたが。

でも、個人的にはこっちよりも4巻のエルウィン・ヨーゼフⅡ世の亡命を受け入れた同盟市民がこぞって騎士症候群に駆られ、世論が皇帝保護・ラインハルト打倒一色になってしまう、という展開の方が強引だと思いました。

「人道だと?ゴールデンバウム家の奴らが、人道なんぞ主張する権利を持っているとでも言うのか。ルドルフとその子孫どもが、何百億人の民衆を殺したか、歴史の教科書を読み返してみるんだな。」

というポプランの反応の方が普通だろ、どう考えても(^^;;)。

収録投稿6件目
board2 - No.1255

名将とは?及びその他

投稿者:平松重之
2000年08月12日(土) 11時49分

 不沈戦艦さん

>  どう考えたって不可能な条件ばかりなのに、それでも「叛乱」に酔ってそちらに邁進してしまうロイエンタール元帥ってのは、一体何なのでしょうか。これは、到底「名将」の成す業ではないと思いますわ。これでは、単なる阿呆にしか思えません。結局、田中芳樹が「ロイエンタールには叛乱させる」と最初から決めていて、合理的な理由を思いつかず、無理がある筋書きにしてしまった、というだけではないでしょうか。

 まあ必ずしも「名将」=「最終的な成功者」「常に理知的」という訳ではないですからね(ナポレオン・ボナパルトがいい例です)。

 話は変わりますが、「大逆転!リップシュタット戦役」の中でミッターマイヤーの階級が「中将」と書かれていますが、レンテンベルク要塞でロイエンタールと一緒にオフレッサーを罠に落とす際の台詞(第二巻P109)に、

「おれたちふたりは大将だ。オフレッサーの化物は上級大将。つりあいがとれていていいだろうが」

とありますので、あの時点ではすでに「大将」になっていたのではないですか?(細かいツッコミですいません)
 何はともあれ、毎回楽しく拝見させてもらっています。これからも頑張って下さい。

収録投稿7件目
board2 - No.1256

どうでしょ?

投稿者:不沈戦艦
2000年08月13日(日) 02時06分

冒険風ライダーさんは書きました

>  一応ロイエンタールがラインハルトに対して新領土への来訪を要請する招請状を送った理由については、銀英伝において次のように記述されています。
>
> 銀英伝9巻 P106上段~下段
> <いずれにしても、ロイエンタールは、オーベルシュタインやラングの風下に立つ意思は皆無であったし、そうであれば当然、自分の未来に対して楽観的ではいられなかった。
>  フェザーンに流れる不愉快な噂を知りながら、あえて皇帝に招請状を送ったのも、ひとつには皇帝の反応が知りたかったからである。皇帝がフェザーンを動かぬ、となれば、皇帝は噂を信じ、ロイエンタールを疑っている、ということになる。ロイエンタール自身に言わせれば、「皇帝はオーベルシュタインやラングの木偶になりさがった」というわけだ。不愉快ではあるが、事態は明確になる。ところで、皇帝が招請に応じて新領土へ行幸すれば、それはロイエンタールに対する信頼を証明する事になるのだろうか。残念ながらそうではない。ロイエンタールを油断させておいて、にわかに彼を捕縛し、処断するつもりかもしれぬではないか。これは皇帝ラインハルトらしからぬ詭計ではあるが、オーベルシュタイン、ラングあたりなら弄しかねない。>

>
>  というわけで、ロイエンタールはラインハルトの反応を見てみたかったがためにあえて招請状を送ったという事が書かれています。したがって、ロイエンタールが招請状を送ったのは「流言が正しいかどうかを確認する」という意味合いが強かったのではないでしょうか。
>  また、これに応じたラインハルトにはまた別の事情があります。ロイエンタールに流言(ちなみにこの「流言」というのはラングが流したウソです)が流れていたのと同じ時期に、フェザーンでもまた「ロイエンタールが皇帝に対して叛意を抱いている」という逆の流言が流れており、そんな時にロイエンタールの招請状が来てしまったため、ラインハルトの性格からいっても立場からしても、ラインハルトはそれに応じざるをえなくなってしまったのです。ロイエンタールに対する噂が流れている状況下でラインハルトが招請状を拒絶したら臆病者呼ばわりされますし、噂の信憑性を証明する事になってしまいますから。
>  それにロイエンタールには、以前にリヒテンラーデ公の一族を身辺においていたために叛逆の疑いをかけられた前科があります。その疑いを再現させないためにも、あえてラインハルトは新領土へ行幸する必要性を感じていたのでしょう。
>  そういうわけで、ロイエンタールがラインハルトを誘い出させるというところまでは、地球教徒の陰謀はそれなりに筋が通っていたのではないでしょうか。もっとも、ウルヴァシー襲撃あたりの構想は私も相当に支離滅裂だと思うのですけど。
>

 そりゃそうなんでしょうけど、「皇帝が招待を受けてやってきた」という事実自体が、「皇帝は病弱ではない」という事を証明していませんかね。病弱でもない皇帝が、何でオーベルシュタインやラングの専横を許さねばならないのか。ラインハルト・フォン・ローエングラムとは、そんなに甘い人物ですかな。それなのに後で「皇帝は病弱だから、オーベルシュタインやラングの専横を許している」となってしまう。矛盾していると思うんですけど。

>
>  おそらくロイエンタールは「流言が完全に事実である」という「ロイエンタールにとって最悪の場合の想定」に基づいて行動してしまったのではないでしょうか。結局のところ、ロイエンタールはラインハルトがオーベルシュタインとラングの傀儡になっているかどうかを確認する事ができなかったのですから、最悪の事態に備えてオーベルシュタインを警戒しなければならなかったわけです。
>  そしてその傾向を助長したのが、ロイエンタールのオーベルシュタインに対する偏見と反感、それにロイエンタールの乱世志向の性格ですね。したがって、ロイエンタールの性格がかなり判断力を狂わせてしまった可能性も高いのではないかと思います。
>
>
>  それとロイエンタールがラングの流言に簡単に引っかかってしまった件についても、一応銀英伝の中にそれなりの理由が明記されています。
>
> 銀英伝9巻 P103上段~下段
> <ロイエンタールは、かなり辛辣な政略的観察のできる男ではあったが、ラングがロイエンタールに「知らせる」ため、誇張と捏造をおこなっているとは気づかなかった。彼は本来、武人であって、叛乱が支配者にとってはマイナス要因であるという観念があった。最初から鎮定を条件とした叛乱の誘発――という発想はなじみにくいのである。そもそも、ロイエンタールは用兵には自信があったし、皇帝と自分との信頼関係を損ねようとする動きに平静でいられようもない。さらには、ラングという人物に対する先入観もある。ラングは皇帝を内心で尊敬してもおらず、ロイエンタールに対して害意をいだいている、という先入観である。しかも、その先入観は正しかった。ラングの策に、結果としてロイエンタールが乗せられたゆえんであった。>
>
>  このように、ロイエンタールの発想的に陰謀を見抜く事ができなかったという要素も大きく、まさに「結果として」ロイエンタールは叛乱を起こすに至ったのではないでしょうか。
>

 その「流言が完全に事実である」とロイエンタールが受け取ってしまった、という事が奇妙だと思うのですが。

「結局のところ、ロイエンタールはラインハルトがオーベルシュタインとラングの傀儡になっているかどうかを確認する事ができなかったのですから、最悪の事態に備えてオーベルシュタインを警戒しなければならなかったわけです。」

 との冒険風ライダーさんの意見ですが、「皇帝が自分でロイエンタールを信じようとして新領土にやってきた」という事実自体が、そんな判断をする根拠を否定していませんか。新領土に自らやって来られる以上、皇帝が病弱である筈もないし、病弱でないのならオーベルシュタインやラングの専横を許す筈もない。客観的情勢に対する判断力をロイエンタールが持っていない、というのはさすがにどうかと思いますが。

>
>  これについては、一応ロイエンタールもそれなりの対処法を考えてはいたようです。
>
> 銀英伝9巻 P171上段~下段
> <ロイエンタールが最初、立案し実行しようとした作戦の大略は、つぎのようなものであった。
>  一、ミッターマイヤー軍の進行にあたっては、新領土各所に配置した兵力を持って、幾重にも防御線をつくり最大限の損害を強要し、その前進速度を鈍化させる。
>  二、敵主力を深く惑星ハイネセンまで引きずりこみ、その後方を遮断する、もしくはそれをよそおって敵の後退をさそう。
>  三、敵の後退に際しては、各所に配置した兵力を再結集して要路をさえぎり、ハイネセンよりの主力と呼応しつつこれを前後より挟撃して敗北にみちびく。
>  右のような基本的計画であった。
>  ロイエンタールの戦略的構想と戦術的技量の双方を後世に知らしめる、壮大で緻密な作戦であったといえる。ただし、この作戦が完全な成功をおさめるには、ふたつの条件が必要であった。ひとつは、この作戦が完了するまで、イゼルローン方面からの敵兵力の侵入がなく、二正面作戦を強いられないこと。いまひとつは、新領土各地に配置された兵力を運用し、再結集する指揮官に人材をえること、である。>

>
>  これって不沈戦艦さんが主張している作戦とほぼ同じものなのではないでしょうか。そして2つの難題のうち、前者はムライをイゼルローンに派遣する事によって解決を図り、後者はロイエンタールがもっとも信頼を寄せていたベルゲングリューン大将をその任に当てています。
>  また、叛乱を長期化させてしまえば、新領土において民主共和主義者による暴動が発生し、それがロイエンタールの味方につくという計算もあったかもしれません。
>  もっとも、この作戦はミッターマイヤー軍が神速のスピードで進行してきたために実行に移す事ができず、ロイエンタールとしては時間的余裕が与えられることなく短期決戦を行わざるをえなくなってしまったのですが、これは泥縄式に叛乱に追いやられてしまい、入念な準備ができなかったという要素も大きかったでしょう。
>
>

 先ずは一.ですけど、「新領土各所に配置した兵力を持って、幾重にも防御線をつくり最大限の損害を強要し、その前進速度を鈍化させる。」って、タダでさえ相手より兵力が少ないのに、何でわざわざ分散配置をやろうとするのでしょうか?各個撃破されるのは目に見えていませんか。負けようとしてやっているとしか思えませんね、この案は。次には二.「敵主力を深く惑星ハイネセンまで引きずりこみ、その後方を遮断する、もしくはそれをよそおって敵の後退をさそう。」ですけど、後方を遮断する予備兵力がありますかね?ロイエンタールの手元に。それと、そういう戦術機動を行うのなら、相手以上の迅速なる行動力が必要ですが、「疾風ウォルフ」、ミッターマイヤー相手にそれが可能だと判断するほど、ロイエンタールが自惚れ屋とも思えません。そして三.「敵の後退に際しては、各所に配置した兵力を再結集して要路をさえぎり、ハイネセンよりの主力と呼応しつつこれを前後より挟撃して敗北にみちびく。」ですが、一.二.で敵の後退があり得ない以上、三.の結論にはならないと思いますわ。

 結局、どうあろうと長期戦には持ち込めないのでは、と思う訳です。何しろ、同盟領は帝国みたいに、奥深いようには見えないので。いかにフェザーンで入手した航路図があるとは言え、ラインハルト軍には簡単にガンダルヴァ星系まで来られてしまっていますからね。ハイネセンまでもそう難しくはないでしょう。領土の奥深さは、同盟がナチス・ドイツで、帝国がソ連という感じがしますけど。

>
>  これはロイエンタールもその危険性は考えていて、とりあえず「君側の奸を討つ」という論法で一応将兵達を繋ぎ止めていたようです。そして一度でも敗北したら将兵が離反していく事もまたロイエンタールは知っていたように見えます。
>  しかしロイエンタールの叛乱はそもそも「自発的に起こした」ものではなく「他者に乗せられた」ものですから、すくなくとも「ロイエンタールの主観的には」他に選択肢がなかったといえるものなのではないでしょうか。
>

 いや、ですから「他者に乗せられての叛乱」にロイエンタールが乗ってしまうのが奇妙なんですよ。ちゃんと状況を判断する材料はあったと思える(皇帝が病弱でない以上)ので。「他者に乗せられての叛乱」など拒否すると思うんですよね、ロイエンタールの性格なら。

>
>  まさにそう思ったからこそ、イゼルローン勢力はロイエンタールの叛乱に加担しなかったのでしょう。そしてロイエンタールにしても、とりあえず時間稼ぎさえしてくれれば良いという程度にしか考えていなかったようで、だからこそ「協力してくれたら旧同盟領全部とトリューニヒトの身柄をくれてやる」という、非常に気前の良い条件を提示していたように思うのですけど。

 結局イゼルローンの勢力は、回廊を押さえているという以外には、はっきり言って「ゴミ」レベルなので、決定的な役割は果たせません。こっちはあんまり気にする必要はないでしょう。イゼルローンの兵力が5個艦隊くらいあって、という話ならロイエンタールがそれを味方に付けられれば勝てるかも、と思っても不思議はないと思うのですが。

収録投稿8件目
board2 - No.1257

Re: ありゃりゃ

投稿者:不沈戦艦
2000年08月13日(日) 02時18分

平松重之さんは書きました
>
>
> >  どう考えたって不可能な条件ばかりなのに、それでも「叛乱」に酔ってそちらに邁進してしまうロイエンタール元帥ってのは、一体何なのでしょうか。これは、到底「名将」の成す業ではないと思いますわ。これでは、単なる阿呆にしか思えません。結局、田中芳樹が「ロイエンタールには叛乱させる」と最初から決めていて、合理的な理由を思いつかず、無理がある筋書きにしてしまった、というだけではないでしょうか。
>
>  まあ必ずしも「名将」=「最終的な成功者」「常に理知的」という訳ではないですからね(ナポレオン・ボナパルトがいい例です)。
>
>  話は変わりますが、「大逆転!リップシュタット戦役」の中でミッターマイヤーの階級が「中将」と書かれていますが、レンテンベルク要塞でロイエンタールと一緒にオフレッサーを罠に落とす際の台詞(第二巻P109)に、
>
> 「おれたちふたりは大将だ。オフレッサーの化物は上級大将。つりあいがとれていていいだろうが」
>
> とありますので、あの時点ではすでに「大将」になっていたのではないですか?(細かいツッコミですいません)
>  何はともあれ、毎回楽しく拝見させてもらっています。これからも頑張って下さい。

 こりゃ勘違いですね。確かに言われてみればそうでした。ミッターマイヤーとロイエンタールだけは大将でしたっけ。キルヒアイスが上級大将で、他は全部中将だったと思い込んでいたもので。

>まあ必ずしも「名将」=「最終的な成功者」「常に理知的」という訳
>ではないですからね(ナポレオン・ボナパルトがいい例です)。

 ナポレオンも、一旦権力を失う前に、連合国(ロシア、プロイセン、オーストリアなど)との停戦交渉で「イタリアは絶対に譲らない」と強弁して、結局全てを失う羽目になってしまったそうですから、確かにそうは言えますね。フランス本土だけでそれ以上欲張らなければ、停戦条約が締結されてフランスだけの皇帝の地位にはいられたそうなので。

 しかし、ナポレオン最後の戦場、ワーテルローはどうでしょう。客観的に全く勝算がなく始めた訳ではないと思いますけど。リニーの前哨戦ではプロイセン軍を叩いて、相手は逃げ出していますし。どう見ても勝ち目のない戦いを始めたという訳ではないと思いますが。ウエリントン卿の馬防壕の罠に騎兵隊がはまらず、どうやら命令が間違って伝わったというネイ元帥の騎兵だけの突撃(歩兵や砲兵と連携するのが当然)がなく、プロイセン軍を追撃したグルーシー元帥の3万5千の兵力が、相手を深追いし過ぎて最後の戦場に到達できなかったのに、リニーから逃げたプロイセン軍の方は決定的瞬間にワーテルローの戦場に到着した、というミスがなければ(ほとんど柘植久慶氏が言っていることですが)、ナポレオンが勝った可能性もあったのでは?、ということですので。ちょっとロイエンタールの話とは違うような気がします。

収録投稿9件目
board2 - No.1258

Re: わはははは

投稿者:不沈戦艦
2000年08月13日(日) 02時31分

小村損三郎さんは書きました

> そもそもロイエンタールの野心の根元にあるものが
> 「俺より強い奴と戦いたい」
> という、まるでジャンプ漫画か格闘ゲームのキャラクターのような幼稚で漠然としたものだった為、その後の行動や描写にイマイチ説得力と陰影を持たせられなかったことが物語としての大きな弱点になった感じです。
> ラインハルトの場合は姉を奪われるという具体的な体験が根っこにある上「ゴールデンバウム王朝の腐敗と社会の不公正」という背景を強調することで説得力を持たせていましたが。
>

 その「強い奴と戦いたい」って願望があるにしても、もうちょっと主体的にやってもらいたかった、と思ったもので。陰謀家たちの筋書きにズルズルと流されてしまい反逆者になりおおせる、だなんて全然ロイエンタールらしくないと思うので。

>
> でも、個人的にはこっちよりも4巻のエルウィン・ヨーゼフⅡ世の亡命を受け入れた同盟市民がこぞって騎士症候群に駆られ、世論が皇帝保護・ラインハルト打倒一色になってしまう、という展開の方が強引だと思いました。
>
> 「人道だと?ゴールデンバウム家の奴らが、人道なんぞ主張する権利を持っているとでも言うのか。ルドルフとその子孫どもが、何百億人の民衆を殺したか、歴史の教科書を読み返してみるんだな。」
>
> というポプランの反応の方が普通だろ、どう考えても(^^;;)。
>

 これは確かに。同盟市民もそうですけど、トリューニヒト政権もおかしなものですよね。何でフェザーンの危険な提案にホイホイ乗ってしまうのか。一応、「危機を見抜いて近寄らない」って程度の知恵は、トリューニヒトにはあった筈なんですけど。アムリッツァの失敗をちゃんと予想しているくらいなのですから。トリューニヒトが断固として「皇帝の亡命」を受け入れなかったら、フェザーンはどうするつもりだったんだろ。あるいは「人道的見地から亡命は受け入れ同盟への居住は許可するが、亡命政権の樹立は認めない」とやらかしたら。そこまでフェザーンが同盟政府を意のままに動かせた、というのもおかしなものなのでは。

収録投稿10件目
board2 - No.1268

ロシア遠征とロイエンタールの叛乱の共通点

投稿者:平松重之
2000年08月14日(月) 12時04分

 不沈戦艦さん

>  しかし、ナポレオン最後の戦場、ワーテルローはどうでしょう。客観的に全く勝算がなく始めた訳ではないと思いますけど。リニーの前哨戦ではプロイセン軍を叩いて、相手は逃げ出していますし。どう見ても勝ち目のない戦いを始めたという訳ではないと思いますが。ウエリントン卿の馬防壕の罠に騎兵隊がはまらず、どうやら命令が間違って伝わったというネイ元帥の騎兵だけの突撃(歩兵や砲兵と連携するのが当然)がなく、プロイセン軍を追撃したグルーシー元帥の3万5千の兵力が、相手を深追いし過ぎて最後の戦場に到達できなかったのに、リニーから逃げたプロイセン軍の方は決定的瞬間にワーテルローの戦場に到着した、というミスがなければ(ほとんど柘植久慶氏が言っていることですが)、ナポレオンが勝った可能性もあったのでは?、ということですので。ちょっとロイエンタールの話とは違うような気がします。

 ワーテルローにおいてナポレオンが勝つ可能性があったのは確かに不沈戦艦さんのおっしゃる通りだと思います。しかし自分としてはどちらかと言うとナポレオンの凋落の きっかけとなったロシア遠征にロイエンタールの叛乱との共通点が見えると思っていますので自分なりに感じた点を述べてみます。

①特定の対象(イギリスとロシア、オーベルシュタインとラング)への憎悪や反感によって判断を狂わせ、信頼しているはずの部下の諌止を押し切ってまで出兵した。

②統率する軍の中に不安定な要素があった(ナポレオンの場合は遠征軍の大半はフランス支配下のヨーロッパ各国から集められた兵士で構成されていたので戦意に乏しかったし、ロイエンタールの場合は兵士達の忠誠は基本的にラインハルトに向けられており、しかもグリルパルツァーやクナップシュタインなどの叛乱分子を内部に抱えていた)。

③相手側に粘り強く戦われ持久戦に持ち込まれ、それが敗北の一因となり、最終的に兵力の大半を失い、わずかな兵力を伴って辛うじて本拠地に逃げ帰った。

 こんなところですが、どんなものでしょう。まあ自分がナポレオンを引き合いに出したのはあくまで「名将」=「最終的な成功者」「常に理知的」ではないという一般論的な事を言いたかっただけで、ロイエンタールと比較する為ではなかったのですが。

収録投稿11件目
board2 - No.1270

Re: とりあえず擁護論

投稿者:Merkatz
2000年08月16日(水) 20時44分

ロイエンタールは私の好きなキャラの一人なので、私も擁護論を一つ試みましょう。

まず、元帥を同格の元帥が取り調べることができるのか、ですが、
これはロイエンタールの嫌疑が2回目であったことが問題ではないかと。
1回目の謀叛疑惑の時は、ミュラーを使者にラインハルト自らが取調べをしました。
ここから確かに元帥に対するのは皇帝のみと言えそうです。
しかし、2度目以降もそうであると言い切れないのではないでしょうか。
つまり、同じ人物が2度も疑われるというのは重大なことですので、
その場合は軍務尚書が捜査チームを編成して精密な調査を行ない、その結果を皇帝に報告した後で、皇帝自身が取調べるという規定があったのでは?
そのような規定があったから、ロイエンタールはオーベルシュタインに頭を下げねばならない・ラングに取調べられる、と考えたのでは?

次に何故みすみす策略家の陰謀に踊らされたかですが、
この場合、どっちに進んでもロイエンタールにとって不愉快な状況にしかならないからではないでしょうか。
仮に無実を証明しようとしても、ロイエンタールを貶めようとする輩(ラング等)が黙って証明させるはずがありません。
ボルテックを冤罪で投獄し、毒殺したような手法を当然取ってくるでしょう。
つまり、どのみちロイエンタールは無実でありながら罠に嵌められたわけで、同じ戦うなら獄中で無実を叫ぶ闘争より、戦場での戦いを選んだということではないでしょうか。
また、ウルヴァシーの事件が地球教によるものであることが分からなかったため、
彼の頭には策謀家=オーベルシュタイン・ラングという図式があったと思います。
だから策謀家の陰謀とは、法廷で冤罪により自分を葬ることだと思い込んでいたのではないでしょうか。
自分に着せられた「謀叛者」というレッテルは、あくまで彼を失脚させるための方便で、実際に決起されることなど想定外である。だから連中の思惑には乗らない。連中が罠を張り巡らせている法廷に、むざむざ出向くようなことはしない。本当に謀叛を起こしてやる。あくまで自分の意思で、ということなのではないでしょうか。

収録投稿12件目
board2 - No.1272

Re1256:ロイエンタールの思惑と戦略構想

投稿者:冒険風ライダー
2000年08月17日(木) 03時00分

<「皇帝が招待を受けてやってきた」という事実自体が、「皇帝は病弱ではない」という事を証明していませんかね。病弱でもない皇帝が、何でオーベルシュタインやラングの専横を許さねばならないのか。ラインハルト・フォン・ローエングラムとは、そんなに甘い人物ですかな。それなのに後で「皇帝は病弱だから、オーベルシュタインやラングの専横を許している」となってしまう。矛盾していると思うんですけど。>
<「皇帝が自分でロイエンタールを信じようとして新領土にやってきた」という事実自体が、そんな判断をする根拠を否定していませんか。新領土に自らやって来られる以上、皇帝が病弱である筈もないし、病弱でないのならオーベルシュタインやラングの専横を許す筈もない。客観的情勢に対する判断力をロイエンタールが持っていない、というのはさすがにどうかと思いますが。>

 一応ロイエンタールの方には、
「皇帝が自分が出した新領土への招請に応じてもまだ油断はできない。オーベルシュタインやラングが自分を油断させるためにラインハルトを無理矢理新領土へと行幸させ、惑星ハイネセンにおいて自分を捕縛し、処断するつもりかもしれない」
という不安がありましたから、実際にラインハルトに会わなければ噂の真相は分からない、と考えていたのではないでしょうか。何しろオーベルシュタインという人物は「ローエングラム王朝存続のためならば、ラインハルトをすらも犠牲にすることにためらいを覚えない冷血漢」と評価されていましたし、実際その通りに行動していましたからね。「オーベルシュタインならばどんな事だってやりかねない」とロイエンタールが考えていたとしても十分に理解できるものです。
 また常にラインハルトの身近にいたロイエンタールは、ラインハルトがしばしば病に侵されていたという事実を知っていましたし、イゼルローン遠征の際にも最も重要な局面において病に倒れた挙句、多くの犠牲を出してようやく成功しかかっていた物量作戦を突然何の理由もなしに放棄して和平政策に転向した事例や、ヤンが地球教徒に暗殺された事によってラインハルトが気落ちしていたことも知っていました。そのような例をラインハルトの一番近くで多く見てきたロイエンタールにとって、
「ラインハルトが病弱になって判断力が衰えているのに乗じて、オーベルシュタインとラングが宮廷内において専横を振るっている」
という流言は、オーベルシュタインに対する偏見と反感、そしてラングに対する蔑視などと合わせて「比較的信憑性の高い情報である」と判断できるものだったのではないでしょうか。ラインハルトの間近で仕事をする環境において、常に冷静な評価眼でラインハルトの本当の姿を観察していた事が、却ってロイエンタールの思考法に災いしてしまったというわけです。
 そしてウルヴァシー襲撃事件の発生によってこの流言の是非の確認ができなくなってしまったため、ロイエンタールとしては「最悪の場合」すなわち「(ロイエンタールにとって信憑性の高いように判断される)流言が正解であった場合」を前提に行動しなければならず、そのためにあのような行動に出ざるをえなかったと考えるのですが、いかがでしょうか。

<先ずは一.ですけど、「新領土各所に配置した兵力を持って、幾重にも防御線をつくり最大限の損害を強要し、その前進速度を鈍化させる。」って、タダでさえ相手より兵力が少ないのに、何でわざわざ分散配置をやろうとするのでしょうか?各個撃破されるのは目に見えていませんか。負けようとしてやっているとしか思えませんね、この案は。次には二.「敵主力を深く惑星ハイネセンまで引きずりこみ、その後方を遮断する、もしくはそれをよそおって敵の後退をさそう。」ですけど、後方を遮断する予備兵力がありますかね?ロイエンタールの手元に。それと、そういう戦術機動を行うのなら、相手以上の迅速なる行動力が必要ですが、「疾風ウォルフ」、ミッターマイヤー相手にそれが可能だと判断するほど、ロイエンタールが自惚れ屋とも思えません。そして三.「敵の後退に際しては、各所に配置した兵力を再結集して要路をさえぎり、ハイネセンよりの主力と呼応しつつこれを前後より挟撃して敗北にみちびく。」ですが、一.二.で敵の後退があり得ない以上、三.の結論にはならないと思いますわ。>

 まず「一」ですが、ロイエンタールにとってミッターマイヤー軍は「最後の敵」ではなく、あくまでも「途中経過に立ちふさがる敵」であるという認識があります。そうである以上、ミッターマイヤー軍と正面から激突して消耗戦に陥る事だけは何としても避けなければなりません。この戦略的不利を打開するためにあえて「兵力分散による持久戦法」を考えていたのではないかと思います。
 次にその分散させた戦力をいかにして活用するかについてですが、これはゲリラ的な攻撃を組織的かつ連鎖的に何度も繰り返す事によってミッターマイヤー軍を徹底的に消耗させ、行軍速度を鈍らせる事を狙ったものでしょう。「何重もの防御線」といっても何も敵に対して正面から攻撃を仕掛ける必要はなく、「側面攻撃」「後方攪乱」「一撃離脱」を複数の小艦隊が複数の方向から組織的かつ連鎖的に何度にもわたって行えば良いのです。これならばミッターマイヤー軍を少ない損害でもって消耗させる事も不可能ではありません。
 具体的な運用方法としては、高速艦を中心とした1000隻規模の小艦隊を10~15個ほど編成し、これを敵軍に悟られないように要所要所に隠して配置し、ミッターマイヤー軍の進撃に合わせて攻撃を行わせます。ミッターマイヤー軍が少しでも自分の方向に兵を差し向けてくればさっさと逃走を開始し、別の部隊に攻撃させる。ミッターマイヤー軍が別の部隊に矛先を向けたら、その側面ないしは後方を攻撃する。これを何度も繰り返してミッターマイヤー軍を疲れさせるわけです。ちょうど不沈戦艦さんが連載している「反銀英伝」のシュナイダー少将がキルヒアイス艦隊を翻弄している戦法を複数の部隊で連携して展開すると言えば分かりやすいでしょうか。

 次に「二」ですが、この「後方を遮断する」というのは「敵の補給線と退路を断つ」という意味にとれますから、これは戦術レベルではなく戦略レベルの問題でしょう。「後方遮断」については「一」でミッターマイヤー軍を翻弄した諸部隊に引き続きやらせれば良いのです。
 しかしただ後方遮断を行うだけでは芸がなさすぎますし、ミッターマイヤー軍にその意図を悟られてしまう可能性が高いですから、一旦ハイネセン方面に撤退してロイエンタールの本軍に合流しようとしていると見せかけつつ、点在する同盟領の補給基地で補給を受け、大きく迂回してミッターマイヤー軍の後方に移動するという戦略を行う必要があるでしょう。この後方遮断によって敵領土に孤立し、さらに「一」のゲリラ戦法によって消耗を強いられたミッターマイヤー軍は後退せざるをえなくなります。

 あとは「三」に基づいて後方を遮断させた諸部隊を集結させ、ロイエンタール本軍と挟撃してミッターマイヤー軍を殲滅するだけです。
 ロイエンタールが考えていた戦略構想というのはだいたいこんなものだったではないでしょうか。ロイエンタールが最初から周到に準備を行ってこの戦略を発動させていたならば、すくなくとも叛乱を長期戦に持ちこみ、ロイエンタールの勢力基盤を確立する時間を稼ぐ事ぐらいはできたのではないかと思うのですが。

<何しろ、同盟領は帝国みたいに、奥深いようには見えないので。いかにフェザーンで入手した航路図があるとは言え、ラインハルト軍には簡単にガンダルヴァ星系まで来られてしまっていますからね。ハイネセンまでもそう難しくはないでしょう。領土の奥深さは、同盟がナチス・ドイツで、帝国がソ連という感じがしますけど。>

 アニメやゲーム、それに銀英伝の設定資料集とも言える「エンサイクロペティア銀河英雄伝説」などに載っている銀英伝世界のMAPを見てみると、だいたい同盟領は帝国領の5分の4ぐらいの領土は持っているように見えますし、惑星ハイネセンは同盟領のかなり奥深くに位置するように設定されています。そしてガンダルヴァ星系はファザーンとハイネセンのちょうど中間地点に存在している星系となっています。これから考えると、銀英伝における同盟領というのはかなり広い領域を持っていると見ても良いのではないでしょうか。
 ラインハルトがなぜそれほどまでに大きい同盟領土を制圧し得たかと言えば、やはりフェザーンで入手した航路図が果たした役割が大きかったでしょうし、またフェザーン侵攻によって同盟側の意表をついた事や、同盟による帝国領侵攻作戦が行われた時のような徹底した焦土作戦が展開されなかった事、それにラインハルトの侵攻時に同盟側にマトモに敵の侵攻に対抗できるだけの戦力がなく、ランテマリオ星系において敵を迎撃する戦略を取らざるをえなかった事なども大きな要因でしょう。
 「同盟による帝国領侵攻作戦」と「ラインハルトによる同盟領侵攻」とでは戦略的条件も政治的条件も全く異なりますから、両者の侵攻速度を単純に比較する事はできないのではないでしょうか。

収録投稿13件目
board2 - No.1287

Re: ロシア遠征

投稿者:不沈戦艦
2000年08月19日(土) 20時16分

平松重之さんは書きました

>  ワーテルローにおいてナポレオンが勝つ可能性があったのは確かに不沈戦艦さんのおっしゃる通りだと思います。しかし自分としてはどちらかと言うとナポレオンの凋落の きっかけとなったロシア遠征にロイエンタールの叛乱との共通点が見えると思っていますので自分なりに感じた点を述べてみます。
>
> ①特定の対象(イギリスとロシア、オーベルシュタインとラング)への憎悪や反感によって判断を狂わせ、信頼しているはずの部下の諌止を押し切ってまで出兵した。
>
> ②統率する軍の中に不安定な要素があった(ナポレオンの場合は遠征軍の大半はフランス支配下のヨーロッパ各国から集められた兵士で構成されていたので戦意に乏しかったし、ロイエンタールの場合は兵士達の忠誠は基本的にラインハルトに向けられており、しかもグリルパルツァーやクナップシュタインなどの叛乱分子を内部に抱えていた)。
>
> ③相手側に粘り強く戦われ持久戦に持ち込まれ、それが敗北の一因となり、最終的に兵力の大半を失い、わずかな兵力を伴って辛うじて本拠地に逃げ帰った。
>
>  こんなところですが、どんなものでしょう。まあ自分がナポレオンを引き合いに出したのはあくまで「名将」=「最終的な成功者」「常に理知的」ではないという一般論的な事を言いたかっただけで、ロイエンタールと比較する為ではなかったのですが。

 ま、これは拘るような話ではないとは思いますが、一応レスを。

 ナポレオンのロシア遠征には、結構な不運がついてはいないでしょうかね?中でも最大のものは、こともあろうに6月にまさかとしか思えない雪が降った事でしょう。その寒さの為、馬匹が大量に死んでしまい、以後騎兵の戦力や輸送用の馬が激減したとか。その後スモレンスク会戦やボロディノ会戦でロシア軍を叩きのめしても、相手は逃げてしまった上に、ようやく入城したモスクワはロシア皇帝の命令で焼かれる始末。このように焦土戦術で相手を困らせ、最後は冬将軍に委ねるなんて戦法、いくら何でも常識外ですから、ナポレオンの想像の範囲を超えていたのでは。勝算全くなし、って程ではないでしょう。相手のやることや気象条件が常識外の結果になった、というだけで。

収録投稿14件目
board2 - No.1296

Re: 戦略的判断

投稿者:平松重之
2000年08月21日(月) 12時51分

 不沈戦艦さん

>  ナポレオンのロシア遠征には、結構な不運がついてはいないでしょうかね?中でも最大のものは、こともあろうに6月にまさかとしか思えない雪が降った事でしょう。その寒さの為、馬匹が大量に死んでしまい、以後騎兵の戦力や輸送用の馬が激減したとか。その後スモレンスク会戦やボロディノ会戦でロシア軍を叩きのめしても、相手は逃げてしまった上に、ようやく入城したモスクワはロシア皇帝の命令で焼かれる始末。このように焦土戦術で相手を困らせ、最後は冬将軍に委ねるなんて戦法、いくら何でも常識外ですから、ナポレオンの想像の範囲を超えていたのでは。勝算全くなし、って程ではないでしょう。相手のやることや気象条件が常識外の結果になった、というだけで。

 うーん、大軍を擁していたナポレオンは補給を断たれ、地の利があるロシアに持久戦に持ち込まれた時点で速やかに撤退すべきだったと思います。いかに常識外であったとはいえ、戦略的な判断によって被害を食い止める事は可能だったのでは?プライドに固執して戦略的な過ちを最小限に抑えられなかったという点ではロイエンタールと似ていると思うのですが。…と、何だか「ロイエンタールの叛乱」についての議論からズレてしまいましたね(って、自分のせいか(^^;))。いい加減ここまでにしておきましょう。

収録投稿15件目
board2 - No.1304

Re: さほどずれている訳でもないでしょう

投稿者:不沈戦艦
2000年08月24日(木) 00時17分

平松重之さんは書きました

>  うーん、大軍を擁していたナポレオンは補給を断たれ、地の利があるロシアに持久戦に持ち込まれた時点で速やかに撤退すべきだったと思います。いかに常識外であったとはいえ、戦略的な判断によって被害を食い止める事は可能だったのでは?プライドに固執して戦略的な過ちを最小限に抑えられなかったという点ではロイエンタールと似ていると思うのですが。…と、何だか「ロイエンタールの叛乱」についての議論からズレてしまいましたね(って、自分のせいか(^^;))。いい加減ここまでにしておきましょう。

 結局ここで私が言いたい事は、以下の通りです。

ナポレオン

1.諸国の軍隊をかき集めたとはいえ、相手を遙かに上回る大軍を擁していた。

2.ナポレオン自身、ロシア相手ならと絶対的な自信を持っていた。現にアウステルリッツ会戦で、相手を誘いだして中央突破を掛ける、という戦術で、ロシア軍を完膚無きまでに撃破している実績があった。但し、自信を持ちすぎていた感は否めない。

3.常識外の不運(6月の雪)と、常識外の戦法(モスクワまで平然と焼くような焦土戦術)に遭ってしまった。

ロイエンタール

1.最初から戦力は少数。どうあがいても、帝国本国軍には数の上では歯が立たない。もしイゼルローン軍を味方に付けられたとしても、それでも戦力比は論外。

2.ロイエンタール自身、「皇帝と戦いたい」という欲望はあっただろうが、皇帝やミッターマイヤーに「絶対に勝てる」をいう確信までは無かった筈。ただでさえ戦力的には少数なのに、ロイエンタールに匹敵する戦術指揮能力を持つ者が、少なくとも二人はいる状況である。ロイエンタールは、これで戦いの行方を楽観視するような性格ではない。

3.ミッターマイヤーが急進してきたのが予想外だったとは言うものの、「常識外」という程の話ではない。ミッターマイヤーの快速ぶりは、ロイエンタールは味方としてはよく知っていた筈。思ったより若干速かった、というだけ。

 だいぶ条件が違うと思われますので、同一視はできないでしょう、ということですね。ナポレオンがロシア遠征に突っ走っていった狂気はまだ理解できるけど、ロイエンタールが陰謀家たちの下手な演出に乗って、そのまま叛乱路線を突っ走っていってしまった狂気は、さすがに理解できかねる、ということです。

収録投稿16件目
board2 - No.1312

Re: 名将の迷走

投稿者:平松重之
2000年08月25日(金) 14時51分

不沈戦艦さん

>  だいぶ条件が違うと思われますので、同一視はできないでしょう、ということですね。ナポレオンがロシア遠征に突っ走っていった狂気はまだ理解できるけど、ロイエンタールが陰謀家たちの下手な演出に乗って、そのまま叛乱路線を突っ走っていってしまった狂気は、さすがに理解できかねる、ということです。

自分はそもそも「名将=最終的な成功者・常に理知的」とは限らないと言いたかっただけなのです。特定の対象に対する憎悪や反感及び自身のプライドにより戦略的判断を誤らせた名将という一点こそがロイエンタールとナポレオンの最大の共通点であり、そこが自分の主張したかった所なのですが。

収録投稿17件目
board2 - No.1321

ロイエンタールは名将か

投稿者:celetaro
2000年08月27日(日) 07時03分

 私が読んだ時の印象として残っているのは、『ロイエンタールって本当に強いの?』というものでした。
 ロイエンタールって、旧貴族との戦いでメルカッツがでてくると、すごすごと逃げ帰ったり、反乱のときもそれまでまったく格下に見ていたビッテンフェルトにあっさりと陣形をくずされたりと、実際の戦績だけで判断すると、どうも強敵相手にはかんばしい結果を残していない。
 剣術とかなら、一度も実戦で剣を抜かなかった名人とかはありですが、普段どんなすばらしいうんちくを述べていても、実戦で実績をあげなかった名将というのはまずありえないかと。これだったら、ヤンのような強敵相手に、勝てはしないまでも立派な戦いをしたミュラーあたりのほうがよっぽどすぐれた指揮官ではないでしょうか。
 本文中では、ミッターマイヤーと並べられて、くどいくらいに双璧だとか、帝国の他の指揮官たちよりも能力が上なんだという表現がありますが、この部分がどうも浮いているとおもった記憶が残っています。
 小説として読むのなら、作品中において全知全能の神に匹敵する作者の評価というのは絶対ですが、銀英伝を戦記物として読むとまた違った側面が見えてくるかと。
 反乱のときに私が受けた印象も、『えらくあっさりと負けたな』というもので、ロイエンタールが無能の指揮官とは決して思いませんが、まわりの評価ほどには実力がともなってないと思ったものです。

収録投稿18件目
board2 - No.1323

Re: 「名将の迷走」について

投稿者:不沈戦艦
2000年08月27日(日) 23時32分

平松重之さんは書きました
>
> 自分はそもそも「名将=最終的な成功者・常に理知的」とは限らないと言いたかっただけなのです。特定の対象に対する憎悪や反感及び自身のプライドにより戦略的判断を誤らせた名将という一点こそがロイエンタールとナポレオンの最大の共通点であり、そこが自分の主張したかった所なのですが。

 私の言いたいのは、「『名将ナポレオンが、特定の対象に対する憎悪や反感及び自身のプライドにより戦略的判断を誤らせた』のは、各条件を並べてみれば充分あり得た話だし、その失敗をやらかしても納得できる」が、「『名将ロイエンタールが、特定の対象に対する憎悪や反感及び自身のプライドにより戦略的判断を誤らせた』のは、銀英伝の記述通りだとすると、ロイエンタールというのは単なる阿呆であって、思考能力が無いのではないか。これのどこが名将だ。本当に名将なら、こんな馬鹿はやらかさない」ということですね。名将の筈のキャラクターがいきなり単なる阿呆になった、というのはストーリーとしては無理があると思いますわ。

収録投稿19件目
board2 - No.1324

Re: それほどひどくもないのでは

投稿者:不沈戦艦
2000年08月27日(日) 23時40分

celetaroさんは書きました
>  私が読んだ時の印象として残っているのは、『ロイエンタールって本当に強いの?』というものでした。
>  ロイエンタールって、旧貴族との戦いでメルカッツがでてくると、すごすごと逃げ帰ったり、反乱のときもそれまでまったく格下に見ていたビッテンフェルトにあっさりと陣形をくずされたりと、実際の戦績だけで判断すると、どうも強敵相手にはかんばしい結果を残していない。
>  剣術とかなら、一度も実戦で剣を抜かなかった名人とかはありですが、普段どんなすばらしいうんちくを述べていても、実戦で実績をあげなかった名将というのはまずありえないかと。これだったら、ヤンのような強敵相手に、勝てはしないまでも立派な戦いをしたミュラーあたりのほうがよっぽどすぐれた指揮官ではないでしょうか。
>  本文中では、ミッターマイヤーと並べられて、くどいくらいに双璧だとか、帝国の他の指揮官たちよりも能力が上なんだという表現がありますが、この部分がどうも浮いているとおもった記憶が残っています。
>  小説として読むのなら、作品中において全知全能の神に匹敵する作者の評価というのは絶対ですが、銀英伝を戦記物として読むとまた違った側面が見えてくるかと。
>  反乱のときに私が受けた印象も、『えらくあっさりと負けたな』というもので、ロイエンタールが無能の指揮官とは決して思いませんが、まわりの評価ほどには実力がともなってないと思ったものです。

 ケンプとミュラーがガイエスブルグを駆ってイゼルローンを攻めて失敗し、ケンプは戦死、ミュラーが敗走した後、ミッターマイヤーと組んでグエン・バン・ヒューとアラルコンの追撃艦隊を手玉に取って全滅させた、というのがありますし、ラグナロック作戦に伴って、イゼルローンに「嫌がらせの攻撃」を掛け続けた(ヒューベリオンを餌に使われて、シェーンコップの揚陸艦の接舷を許してしまいましたが)時の手腕も、それなりにマトモではなかったでしょうか。どうしようもないとは思えませんけど。まあ、それほど「名将」と言えるほど実績があるのか、と言われたらそれはそうかも知れませんけどね。それと、「メルカッツに攻められてすごすご逃げ帰った」のは、「死守する意味はない」と判断しての話ですから、責めるに値しないと思いますけど。無意味な地点を確保する為に、兵力を損耗する方が、阿呆のやることだと思いますし。celetaroさんは、「拠点を無理に確保するよりは、敵兵力を包囲殲滅する方が重要」とお考えだったと思いましたけど、その観点からはこのロイエンタールの行動は、誉めるべき話なのではないか?と思いますが。

ロイエンタールの叛乱の関連リンク一覧

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