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銀英伝のSF兵器理論
11−A

銀英伝世界の超光速通信技術(1)


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No. 3216
小さいけれど重要な話
佐々木公彦 2002/11/02 23:57
いかなる理由があろうとも、民主主義の国で軍部の最高司令官が軍人であることは許されません。
最高司令官は評議会議長であり、統合作戦本部長はもともと最高司令官代行を兼ねています。
いかなる理由があろうとも、ヤン最高司令官はあってはならないことです。

何度か書いたのですが、ヤンに対する戦闘停止命令は現に戦闘が行われている状況においてだされたものであり、実際に戦闘を停止するのは無茶です。
帝国軍には戦闘を停止する理由がありません。

「反撃食らったら死ね」というに等しい命令を受け入れるのは、前線司令官としての部下に対する責任を果たしていないといえるでしょう。


No. 3217
Re:小さいけれど重要な話
イッチー 2002/11/03 01:44
> いかなる理由があろうとも、民主主義の国で軍部の最高司令官が軍人であることは許されません。
> 最高司令官は評議会議長であり、統合作戦本部長はもともと最高司令官代行を兼ねています。
> いかなる理由があろうとも、ヤン最高司令官はあってはならないことです。

確かにその通りです。ところで、同盟では、制服組トップは統合作戦本部長なのでしょうか?


> 何度か書いたのですが、ヤンに対する戦闘停止命令は現に戦闘が行われている状況においてだされたものであり、実際に戦闘を停止するのは無茶です。
> 帝国軍には戦闘を停止する理由がありません。
>
> 「反撃食らったら死ね」というに等しい命令を受け入れるのは、前線司令官としての部下に対する責任を果たしていないといえるでしょう。

これもその通りで、ラインハルトはミッターマイヤーやロイエンタールの独断専行を知らないわけですから、これ幸いとばかり攻撃してくる可能性もあります。ヤンには戦闘継続→ラインハルト戦死しか選択肢はなかったわけで・・・。すると、後半の銀英伝は同盟軍制服組トップとなったヤンと帝国のトップとなったロイエンタール(またはその他の誰か)というストーリーになったのでしょうか?


No. 3219
Re:小さいけれど重要な話
Ken 2002/11/03 08:55
イッチーさん、おはようございます。

> ところで、同盟では、制服組トップは統合作戦本部長なのでしょうか?

そうだと思います。以下の記述がありますので。

遠征が失敗すれば、制服軍人の首座にあるシトレ元帥は当然、引責辞任を迫られるだろう。一方、成功すれば、遠征軍総司令官ロボス元帥の功績に酬いる新たな地位は、統合作戦本部長しかない。
(黎明篇第7章−4)


No. 3223
Re:小さいけれど重要な話
僧侶T 2002/11/03 20:43
> 確かにその通りです。ところで、同盟では、制服組トップは統合作戦本部長なのでしょうか?

 Kenさんのレスと重複しますが、文庫版銀英伝第1巻P169には、
 「統合作戦本部長は制服軍人の最高峰であり、戦時においては同盟軍最高司令官代理の称号を与えられる。最高司令官は同盟の元首たる最高評議会議長である」とあります。


> これもその通りで、ラインハルトはミッターマイヤーやロイエンタールの独断専行を知らないわけですから、これ幸いとばかり攻撃してくる可能性もあります。ヤンには戦闘継続→ラインハルト戦死しか選択肢はなかったわけで・・・。

 文庫版銀英伝P348〜349の記述からすると、同盟軍は前進をやめた上で理由説明を添えて停戦を申し込んだようです。これを帝国軍が受信して、信用するまでに、同盟軍が少なからず損害をこうむったことは容易に想像できますね。でもこの申し込み、どうやって伝えたのでしょう?同盟軍が妨害電波を出すのをやめたとしても、帝国軍もやはり妨害電波を出しているのではないかと思うのですが。


No. 3224
Re:小さいけれど重要な話
Ken 2002/11/03 23:21
僧侶Tさん、

>でもこの申し込み、どうやって伝えたのでしょう?同盟軍が妨害電波を出すのをやめたとしても、帝国軍もやはり妨害電波を出しているのではないかと思うのですが。

この書き込みを読んだとたんに、「あっ」と言いました。どうしてこの疑問に気づかなかったんだろう・・・銀英伝の中の「間違いさがし」に結構のめりこんできたのに、と。

一番ストレートな解答としては、お互いにどれだけ通信妨害をしても、ある周波数だけは(ある変調方式でも結構ですが)、いざというときのために空けておき、その帯域だけは味方同士の通信には使用しないという、「国際法」があったということでしょうか?ちょうど、現在の世界に、白旗だけは、戦闘中の敵に交渉を申し込む合図として、他の用途に使用しないという、約束があるように。

ただ、帝国も同盟も、相手を対等な文明国とは見なしていないので、こんな文明のルールを尊重するかとなると、かなり疑問ですね。

それで思い出しましたが、ヤンが最初にイゼルローンを陥としたときに、シェーンコップたちに帝国軍の服を着せ、帝国軍と偽って送り込んだのも、我々の世界の国際法に照らせば違法なのでは?

そう考えると、「国際法説」はどうも説得力に欠けるようです。もっとましな説明を探してみましょう。

おもしろい問題を提議していただき、ありがとうございました。


No. 3225
Re:小さいけれど重要な話
八木あつし 2002/11/04 01:21
>一番ストレートな解答としては、お互いにどれだけ通信妨害をしても、ある周波数だけは(ある変調方式でも結構ですが)、いざというときのために空けておき、その帯域だけは味方同士の通信には使用しないという、「国際法」があったということでしょうか?ちょうど、現在の世界に、白旗だけは、戦闘中の敵に交渉を申し込む合図として、他の用途に使用しないという、約束があるように。

第7巻のマル・アデッタ星域会戦では、最終局面でミッターマイヤーが同盟軍残存部隊に降伏勧告を行いました。これは通信波で行っていることから、私もKenさんと同じく何らかの非常回線が1チャンネル開いているのではないかと思います。

>ただ、帝国も同盟も、相手を対等な文明国とは見なしていないので、こんな文明のルールを尊重するかとなると、かなり疑問ですね。

第1巻において、同盟軍第6艦隊旗艦ペルガモンに帝国軍は発光信号で降伏を呼びかけました。このことから同盟軍と帝国軍は、発光信号を互いに解読できるだけのやりとりを行っていたと推測できます。
なぜなら発光信号はモールス信号と同じで、受信側が発信側の送ったもの(モールスなら音の長さや間隔等)を理解して初めて意味が分かります。帝国の軍艦だけにしか通用しない発光信号なら、そもそも同盟の軍艦に送る意味はありません。まさか同盟も帝国の発光信号の解読を以前から情報部が行っていたわけはないでしょう。

第2巻の捕虜交換式典は国家=政府としてではなく、軍が代表となり執り行いました。また捕虜交換じたいも、規模の大小はあっても以前から意外に多く行っています。
私はこのことから、政府レベルでの両国の交渉は一度もなかったと思いますが、軍レベルでは何度か交渉を持ち、戦時の規定を決めた協定を結んていたと思います。
もちろん宇宙歴640年の戦争開始後すぐはそのような協定はなかったと思います。帝国軍は同盟軍を只の叛乱軍、というよりも宇宙海賊の拡大版ぐらいにしか見ていませんし、同盟軍も帝国軍を悪の軍団ぐらいにしか見ていなかったと思います。
そのため降伏の取り決めは戦争初期は無いはずです。仮に相手に降伏を伝えようとオープンスペースで通信をしても、妨害電波のために遮られるでしょう。しかし降伏が出来ないばかりに、敗北側が最後の一兵まで戦い続けられると、勝者側にも無視できないだけの被害が出てしまいます。
戦線が膠着し戦争の長期化が避けられない情勢になると、損害を気にした軍部は戦時協定を考え始めたのではないでしょうか。
名前を忘れましたがある皇帝の治世では、両国間での戦争が無かったはずです。その時政府の黙認の元、軍が事務レベルで折衝をして降伏や発光信号などの取り決めを行ったのだと思います。

サイオキシン麻薬の密売取引を捕まえるために、両国の警察が協力をしたこともあります。やはり政府を通さないものの、両国の現場レベルでは何かしらの取り決めを何度か行っていたのでしょう。
フェザーンの成立が両国の現場レベルが交渉の場を持つ切っ掛けになったのではないでしょうか。
それでは今回はここらで。(^-^)/~~


No. 3227
Re:小さいけれど重要な話
Ken 2002/11/04 10:32
八木あつしさん、おはようございます。

はじめに、私が自分で言い出した、「1回線だけ空けておく」説は、まずダメかと思います。アスターテ会戦の第4艦隊のように、全滅必至の状況にあり、死に物狂いで味方の救援を求める将兵が、この回線だけは味方との通信に使わない、などという紳士協定を守るとは、とても思えません。もちろん、生きるか死ぬかの戦闘の最中でなければ、八木さんが言われるような、現場同士の取り決めが効力を発揮することもあるでしょうが。

むしろ、八木あつしさんが言われた「発光信号」の方が、正解ではないかと思います。さらにいえば、味方艦同士の通信にも光を使えば、妨害電波の影響を受けずに済むではありませんか。

電波の代わりに光を使う、というのは、もっと一般化していえば、極端に波長の短い通信波を使うということです。別にモールス信号にする必要はなく、光ケーブル内部のように、光を搬送波にしてアナログなりデジタルなりの信号を送ればよいかと思います。これの利点は、波長が短いほど直進性が強いので、銀英伝の艦隊戦のように、味方同士が固まっていて、敵が(たいていは前方ですが)「ある方向」にのみいる場合、受信機(受光機)の前に「ついたて」を立て、敵の方向からの電波(光も含む)のみ遮断すれば、通信妨害を受けずに済みます。また、アスターテの第4艦隊のように、自分たちと帝国軍が同じ宙域にいて、味方艦隊が遠隔地にいると、第2・第6艦隊にとっては、味方からの通信と帝国軍の「妨害光波」が同じ方向から来るので、味方信号のみを取り出せません。よって、遠距離通信は妨害できるが、近距離通信は妨害できない、という設定とも一致します。

ただし、光通信ですべて解決、とはいきません。直進性が強く、遮蔽物に弱いということは、味方艦同士の間に、故意に遮蔽物を置かれると、たちまち困ります。つまり、双方の艦隊とも、敵の中に「煙幕弾」を撃ち込んで、光通信の妨害を図るでしょう。これの打開策としては、「ついたて」では防げるが、煙幕では防げない周波帯域、つまり赤外線を用いるということになります。

まとめますと、艦隊内の艦船同士の通信には赤外線を用いる。これは、敵にとっては防ぎようがないので、結局煙幕も使用しない。したがって、アニメに描かれるように、「きれいな宇宙」をバックにした、絵になる戦闘シーンが現出する。また煙幕がないのだから、結局ふつうの光信号も使える。よって、戦闘中の交渉申し入れも光信号で行う、ということになるのでしょうか?

別の疑問が浮かびました。上の説明だと、近距離通信は妨害できないけど、遠距離通信は妨害できるのです。してみると、ハイネセンからの停戦命令は、どうやって届いたのでしょうか?最寄りの基地からシャトルが出たのかな?


No. 3229
Re:小さいけれど重要な話
八木あつし 2002/11/04 22:56
Kenさん、みなさん、こんばんは。

> 別の疑問が浮かびました。上の説明だと、近距離通信は妨害できないけど、遠距離通信は妨害できるのです。してみると、ハイネセンからの停戦命令は、どうやって届いたのでしょうか?最寄りの基地からシャトルが出たのかな?

バーミリオンでは、ヤン艦隊が突如としてブリュンヒルトと帝国艦隊の前面から急速後退し、首をかしげる帝国軍に発光信号を送ったのでしょう。停戦信号を送り、通信妨害を止めてこちらの回線を開いてくれ、といったところでしょうか。
そこでバーミリオンにおいて、ヤン艦隊に停戦命令がなぜ届いたのかです。単にヤン艦隊がハイネセン側に布陣していたからではさすがに理由付けとして薄いですね。

そこで銀英伝においての遠距離通信についてです。超光速通信では、遠距離になればなるほど画面の解像度が下がっています。そのくせ、ラインハルトが全宇宙に放った超光速通信の画面は、乱れがないという矛盾がありますが(笑)

しかし今回は、文章だけの遠距離通信です。実は遠距離通信は、意外に通じているのです。第5巻には、銀英伝の遠距離通信と妨害電波を考えるにあたり、2つの成功例があります。

まず新書版5巻36頁。イゼルローン要塞のヤンに首都星ハイネセンの宇宙艦隊司令部から、ロイエンタール艦隊の通信妨害をかいくぐって訓令文が届いています。
次に新書版5巻92頁。同盟軍JL77基地より首都星ハイネセンに、帝国軍の放出する妨害電波に悩まされながらも帝国軍の集結状況を報告しています。

つまりこのことから考えると、遠距離通信は妨害電波で繋がりにくい、届きにくいとは言え、文章は相手に届いているのです。

そして銀英伝世界での通信を考えるにあたりもう一つの例があります。銀英伝第7巻です。
新書版7巻135頁です。第2次ラグナロック作戦を開始し、同盟領に侵攻した帝国軍。ミッターマイヤーが全軍を停止させ、情報収集を試みたとき、すでに先行する黒色槍騎兵艦隊との連絡は、同盟軍の妨害の激化でほとんど断絶していました。

第5巻で同盟の遠距離通信は成功し、第7巻の帝国の遠距離通信は失敗したのか。むろん同盟の通信技術が優れているのではありません。
私は、基地から発進する通信波と、艦から発信する通信波では通信波としての出力の差があるからではと考えました。
艦隊戦の中で、艦隊通信や別艦隊との遠距離通信は、敵艦隊の妨害電波によって意味をなさなくなっています。そのため発光信号やシャトルを使い、司令部からの意志の疎通を行っています。
艦船から発信する通信は、敵艦の放出する妨害電波で妨害される。これは互いに艦レベルの出力が同じため、相殺されるから。
しかし基地のような大出力装置を持つ施設から発信する通信波は、通信波の力が艦から発信よりも非常に強く、艦レベルで放出する妨害電波に負けないので、苦しみながらも何とか相手まで通信が届く。

銀英伝の艦砲と要塞砲の出力の違いを通信にも当てはめてみました。
現在の通信技術だとこんな感じにはいかないと思いますが、未来の銀英伝世界に置ける通信設定の理由付けとしては、良いのではないでしょうか。


No. 3232
Re:小さいけれど重要な話
僧侶T 2002/11/05 23:02
どうも、僧侶Tです。

> そこで銀英伝においての遠距離通信についてです。超光速通信では、遠距離になればなるほど画面の解像度が下がっています。そのくせ、ラインハルトが全宇宙に放った超光速通信の画面は、乱れがないという矛盾がありますが(笑)

 なにぶん文系の人間なので理系の知識は乏しいのですが、八木さんの説を応用すればいいのではないでしょうか。通常の場合は、敵対勢力にそう簡単に傍受、解読されないよう出力を押さえ目にしてあるが、ラインハルトの呼び掛けは聞かせるためのものだから、出力を最大にしてある・・・といった風に。


> 私は、基地から発進する通信波と、艦から発信する通信波では通信波としての出力の差があるからではと考えました。
> 艦船から発信する通信は、敵艦の放出する妨害電波で妨害される。これは互いに艦レベルの出力が同じため、相殺されるから。
> しかし基地のような大出力装置を持つ施設から発信する通信波は、通信波の力が艦から発信よりも非常に強く、艦レベルで放出する妨害電波に負けないので、苦しみながらも何とか相手まで通信が届く。

 作中に超光速通信の原理についての説明がないので、こんなところでいいと思います。なぜ妨害「電波」で超光速通信が妨害されるのか、とか、結局妨害しきれないとわかるのなら、わざわざ妨害する意味ないんじゃないか、などと疑問がわきますが、妨害「電波」とは慣習上の言い方で、本当は電波を使ってはいないのだ、とか、結局妨害しきれなくとも、多少情報の到着が遅れたり、不正確なものになったりする可能性があるからだ、などといっておけばいいでしょう。


No. 3233
Re:小さいけれど重要な話
Ken 2002/11/06 00:24
八木あつしさん、
いろいろと、情報を提供していただき、ありがとうございます。よく銀英伝を読み込んでいますね。おかげで、面白い考察ができそうです。

(なお、以下に述べる説明は、多くの人には、「分かりきったことをもったいぶって」説明しているように、受け取られるかもしれませんので、その場合は勘弁してください。)

>超光速通信では、遠距離になればなるほど画面の解像度が下がっています。そのくせ、ラインハルトが全宇宙に放った超光速通信の画面は、乱れがないという矛盾がありますが(笑)

なるほど、そういうことになっていますか(笑)。銀英伝得意の「ご都合主義設定」というやつですね。
ただ、私は(皆さんに評判の悪い「創竜伝」などを読んでないせいか)「田中芳樹を撃つ」に顔を出しては、「田中芳樹を擁護する」ことに精を出して(笑)いますので、ない知恵を絞って、この設定を「合理的に」説明してみます。

実は、この「矛盾」の説明は、さして難しくないのでは、と思います。画面の解像度が下がったり、ノイズが入るのは、例えばキルヒアイスが死んだ直後に、ガイエスブルクのラインハルトとオーディンのアンネローゼが行ったような、リアルタイムの対話の場合ですね?これに対して、ラインハルトが全宇宙に放ったのは、一方通行の「放送」でしょう?銀英伝世界の通信が、私たちが利用しているインターネットなどと同じ原理で行われているなら、この現象の説明がつきます。

インターネットでは、世界のどんなに離れた場所からデータがやってきても、画像や音声やソフトウェアにいたるまで、「完全に」届きます。これは、情報の送り側(サーバ)と受け側(私たちのパソコン)が、常に交信しながら、データが完全に届くように協力をしているからです。例えば、送り側が1メガバイトのサイズの映像データを送る場合、送信データの中に、「今送っているのは、1メガのデータですよ」というメッセージを埋め込みます。受け側は、そのメッセージを読み、もしも受信したデータの総量が1メガに達しなかったら、「届いていないデータがあります」と、送り側にメッセージを返し、また送られたデータを詳細にチェックして、どの部分が欠けているのかも知らせます。送り側は、そのメッセージを受け、足りない部分のデータを再送します。これらのやり取りは、我々ユーザには見えないところで、コンピュータがやっており、そのようなやりとりをするための共通ルールを、インターネットの世界では「TCP/IPプロトコル」と呼びます。

さて、TCP/IPのおかげで、情報は完全に届きますが、難点もあります。完全な情報を送ることを優先し、本来のデータとは別のメッセージを送ったり、送るたびに正しく届いたか確認しあったり、僅かでも欠けていたら送りなおしたりするので、どうしても時間がかかり、会話のようなリアルタイムの交信には向いていません。(ウィンドウズに付いてくる「ネットミーティング」を試した人なら、分かるでしょう。)そこで、リアルタイム性を重視する応用では、このような確認・やり直し作業をわざと省略します。最近はやりの「インターネット電話」がそうで、通常の電話よりむしろ音質が劣ります。正確には、音声信号の一部が、欠落してしまっているのです。

と、ここまで書けばお分かりになるかと思いますが、ラインハルトとアンネローゼが行ったようなリアルタイム通信では、インターネット電話の音質低下と同じ現象が起こっているのです。一方、ラインハルトの放送は、一方通行ですから、リアルタイム性は不要で、メッセージはTCP/IPもしくは類似のプロトコルで、各惑星の受信サーバへ「確実に」送られてから、惑星内で通常の放送をすればよいことになります。

>基地のような大出力装置を持つ施設から発信する通信波は、通信波の力が艦から発信よりも非常に強く、艦レベルで放出する妨害電波に負けないので、苦しみながらも何とか相手まで通信が届く

賛同いたします。八木あつしさんが挙げられた例は、いずれも同盟領内で起こったことですから、同盟だけが惑星上の通信基地を使える、というのは筋が通っています。妨害できたり、できなかったりすることの説明はこれしかないようですね。

少し別の話になるのですが、通信妨害とか「ジャミング」というものは、現実の世界にもあるのでしょうか?私は軍事技術に全く疎いので、自信をもって判断できる材料を持っていないのですが。

例えば、11年前の湾岸戦争を考えてみましょう。多国籍軍は電波利用の技術をふんだんに駆使しました。TVカメラを装備し、映像を見ながら「操縦できる」ミサイルは、世界を驚かせました。今では珍しくもないGPSが本格的に実用されたのもこの時です。考えてみれば、なぜイラクは妨害電波で対抗しなかったのでしょう?GPSどころか、普通の通信が妨害されたという話すら、少なくとも私は聞いたことがありません。

そもそも「妨害電波」とは何か?

例えば、敵が100MHzの周波数で通信しているとき、同じ100MHzの周波数で「雑音」を振りまくこと、というのが私の理解です。(間違っていたら指摘してください。)「同じ周波数」というのがキーで、敵が100MHzで通信しているのに、120MHzで雑音を出しても無意味です。

してみると、妨害を受ける側の対抗策は、妨害されたら通信周波数を変更することになります。予め味方の部隊同士で打ち合わせをしておき、「まずは100MHz、そこを妨害されたら120、その次は80、その次は・・・」と決めておきます。当然、敵は通信周波数の変更に合わせて妨害電波の周波数も変えてくるでしょう。しかし、新しい周波数がどこにあるのか見つけるのに、受信機の波長を少しずつ変えながら探さなければなりません。その時間的な遅れが、通信するチャンスを与えます。

さらに言えば、通信側は、妨害を受けてから周波数を変えるのではなく、「最初の5分間は100MHz、次の2分間は120MHz、次の7分間は80、・・・」という具合に、味方どうしで打ち合わせておき、妨害の先手を打って周波数を変えてゆけば、よいではありませんか。プログラムを組んでコンピュータにやらせれば、秒単位で周波数を変えることもできます。もちろん敵もコンピュータを使って、すばやく見つけようとするでしょう。しかし、予め決められた周波数へ変えてゆくのと、どこにセットされたか分からない周波数を見つけるのでは、処理のための負荷が異なります。

こう考えてみると、「通信妨害」なんていうのは、現実だけでなく、SFの世界でも、矛盾した存在なのかもしれませんね。(しまった。田中芳樹を「撃つ」側の論点になった。)


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