反銀英伝・設定検証編
13−A

銀英伝の貴族階級(1)

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board4 - No.4500

ゴールデンバウム王朝暗黒史観

投稿者:イッチー
2003年08月23日(土) 17時57分

 ごく最近まで、歴史学会においては、ゴールデンバウム王朝時代を「人類の暗黒時代」ととらえ、その存在を全否定する考えが強かった。
 それは、ゴールデンバウム王朝を倒して成立したローエングラム王朝が自らを正当化するため、あえてゴールデンバウム王朝時代を否定的に描写するよう勧めたからにほかならない。さらに、ローエングラム王朝史観べったりのヨシキ・タナカなる人物によって書かれた『銀河英雄伝説』なる通俗小説が一般に流布したことによって、民衆の間でラインハルト1世を過度に美化し、ゴールデンバウム王朝時代を過度に悪い時代と見る考えが広まったことも原因である。
 しかし、最近の研究で、ゴールデンバウム王朝時代は人類の進歩を数百年も遅らせた停滞の時代ではなく、民衆にとっては平和で安定した時代であったという側面も否定できないことが明らかとなっている。
 たとえば、ルドルフ大帝の治世について見てみよう。ヨシキ・タナカはルドルフ大帝の治世を攻撃し、議会の永久解散・劣悪遺伝子排除法・社会保障制度の全廃・共和主義者の徹底弾圧・個人崇拝の強制をその悪政の見本として取り上げている。
 しかし、これらはルドルフの個人的虚栄心がもたらしたものとは言えない。(たしかに、彼は人一倍虚栄心の強い人物であったが)議会の永久解散について考えるとき、当時の議会が全く腐敗しており、国会議員が特定の利益集団とのみ結びつき、広範な一般大衆からまったく遊離した存在になっていたことを念頭に置くべきである。当時、民衆は皇帝を圧倒的に支持しており、議会はまったく国民の支持を失っていた。そのうえ、ルドルフは徹底した地方分権をすすめ、一般国民にも皇帝への直接誓願権を保証していたので、国会の存在は無用な存在となっていた。国会は廃止されたが、地方議会はその後も存続し、市民生活に必要な事柄はすべて地方議会で決定されていた。そもそも、全宇宙の事柄をすべて、皇帝1人が決定出来るわけないではないか。皇帝の直接統治は首都周辺に限られ、ほかは各地方自治体の意思決定に委ねられていた。むしろ、地方から権力を剥奪し、徹底した中央集権を進めたローエングラム王朝初期のほうが皇帝独裁の側面が強かったといえる。
 議会の永久解散の原因となった、劣悪遺伝子排除法についても、当時、ほとんどの病気や障害は医学的に克服されており、劣悪遺伝子排除法は医学的に克服出来ていない新たな奇病のウイルス保持者の強制隔離を命じたものに他ならなかった。ラインハルト1世の少年時代のエピソードとして、色盲を隠す幼年学校生徒の話が出てくるが、色盲がその数百年前に回復可能な障害となっていたことは医学史を少しかじれば誰にでもわかることである。実際、劣悪遺伝子排除法は新たな開拓惑星で原因不明のウイルスによる奇病が発生した場合にのみ適用され、マクシミリアン・ヨーゼフ2世の時代にさらに適用が厳格化された。劣悪遺伝子排除法の存在がクローズアップされるのは、これを廃したラインハルト1世の温情を国民に理解させようというローエングラム王朝の意図があるからである。さらに旧自由惑星同盟でも銀河帝国の不法性を主張するために、劣悪遺伝子排除法の意図が誤って教育されていた。
 社会保障制度について言えば、銀河連邦時代末期には社会保障制度は完全に破綻しており、国民が支払った年金の掛け金は厚生省官僚の食い物にされており、生活保護は実際に支払いが必要な人々には支給されず、腕力の強いものが担当官を脅して支給させるというありさまになっていた。ルドルフは社会保障がよりそれを必要としている人々に支給されるよう、厚生省を廃止し、その業務を各地方自治体に移管し、また民間企業の福祉事業の参入を認めて、福祉の多様化をはかったに過ぎない。年金や生活保護に支給の監視に警察官を動員し、不正支給を監視させたりもしたが、これは後にローエングラム王朝によって民衆弾圧のように喧伝された。
 共和主義者の徹底弾圧という側面も、当時の共和主義者の実態が暴力革命を是とする過激派の集団であり、一般国民からはテロリストとして嫌われた存在であったということがわかれば、ゴールデンバウム王朝初期によってなぜ、かくも徹底弾圧されたがよくわかるであろう。そもそも、アーレ・ハイネセンをはじめとする旧自由惑星同盟の建国者たちは、アルタイル工業大学学生闘争委員会を名乗る学生運動家たちで、闘争資金確保と称して、銀行襲撃を繰り返し、さらに警察署・軍隊駐屯所を攻撃し、数百名の警察官・軍人を殉職せしめたテロリストであった。彼らは死刑になるところが皇帝恩赦によって強制労働の刑に減刑され、流刑地に送られたところ、脱獄して、後の旧自由惑星同盟を建国したのである。その旅程中に、疑心暗鬼にかられ同志を次々に粛清したハイネセンは、腹心のグエン・キム・ホアによって殺害されたのである。さらに今日のハイネセン星にたどり着いたものの、彼らの民主主義思想はかなり地球時代の民主主義思想とは異なった独特の民主主義思想であり、その政治制度は実際には出身成分の良い核心階層(長征1万年光年をおこなったものの子孫たち)の独裁を保証するものに変貌していった。
 ヨシキ・タナカはルドルフの個人崇拝の例として、ルドルフの像を全国に建てさせ、その中の監視カメラによって人々を監視させたと書いている。しかし、実際には監視カメラは犯罪防止のために設置されたものである。銀河連邦末期には、治安はかなり悪化しており、商店街の中には自腹を切ってカメラを設置するところが少なくなかった。ルドルフはこれを公費で全国に設置させただけなのである。
 また、ルドルフが創設した貴族層にしても、彼らは爵位の代わりに辺境星域の開拓業務を命じられ、そんなに優遇された存在ではなかった。また、平民に対して無意味に暴力を振るうことは、マナー違反として貴族社会において排斥され、過度な領民の虐待は家名断絶の理由とさえなった。中には不心得者の貴族はいたろうが、どんな社会にも不心得者はいるものである。むしろ、ローエングラム陣営には末端の兵士に至るまで不心得者がほとんどいないほうが異常ではないか。なぜ、何百万の兵士が移動して、強姦や略奪が数件しか起きなかったと描写されているのか、誰か疑問に思うものはこれまでいなかったのだろうか。
 我々人類はこれまで歴史を善悪の基準で判断していたが、どんな体制にもその存在理由があったのであり、長期に存続した体制のもとでは人々はそれなりの利益を得ていたのである。ゴールデンバウム王朝下においても、一般の国民は銀河連邦時代の治安の悪化や風紀の乱れ、政治腐敗から解放されていたのである。
 歴史が一面からしか判断出来ないことは、ゴールデンバウム王朝下最大の犠牲者と言われるグリューネヴァルト大公妃の次の言葉が物語るであろう。
 「フリードリヒ4世陛下は大変お優しい方で、あの方のもとで、私は初めて安らぎを得ることが出来ました。しかし、年齢差のある男女の間に恋愛感情が生じるということを弟は死ぬまで理解出来ませんでした」

          新帝国暦135年『新銀河帝国史』序文

 銀英伝の描写に矛盾しないようふざけて書いてみましたが、明治政府によって江戸時代の歴史が悪し様に書かれたようにゴールデンバウム王朝もローエングラム王朝によって意図的に悪く書かれた可能性があるのではないかと思いまして。それにしても、銀英伝で気になるのは、体制というのを極端な善と極端な悪に分類している点です。良い専制政治はあるという視点は面白いのですが、ローエングラム王朝はどうも潔癖すぎて、かえってうさんくさい印象を私は持ちます。

収録投稿2件目
board4 - No.4502

Re:ゴールデンバウム王朝暗黒史観

投稿者:ドミニオン
2003年08月24日(日) 10時11分

>           新帝国暦135年『新銀河帝国史』序文
>
>  銀英伝の描写に矛盾しないようふざけて書いてみましたが、明治政府によって江戸時代の歴史が悪し様に書かれたようにゴールデンバウム王朝もローエングラム王朝によって意図的に悪く書かれた可能性があるのではないかと思いまして。それにしても、銀英伝で気になるのは、体制というのを極端な善と極端な悪に分類している点です。良い専制政治はあるという視点は面白いのですが、ローエングラム王朝はどうも潔癖すぎて、かえってうさんくさい印象を私は持ちます。

本当にものは言いようですね。ルドルフが何となく好きな私には楽しく読めました。
個人的には体制は善悪ではなく、現状にあっているかどうかで評価されるべきだと考えています。成果さえあげていれば、他はどうだていいです。
ローエングラム王朝の潔癖さには、うさんくささというよりはむしろ作者の意図を感じます。そうすることによって、ヤンが思い悩み、道を模索する姿を描こうと考えているのでしょう。

この歴史観への反論意見の一例。恐らくは最も過激な。

近年、旧帝国史を見直すという試みが行われている。現在の銀河帝国において彼らが悪し様に描かれ過ぎているというのが、その理由である。つまり、現政権のために歴史を歪曲しているというのだ。
だが、私は彼らの意見こそが歴史を歪曲し、人民を騙す犯罪行為であると考えている。
旧帝国末期における彼らの体たらくを鑑みれば、それは自ずと明らかになります。
だいたい、旧帝国成立時の人口二千億が王朝末期にはその十分の一に減っていることからして、彼らの無能と失政、残虐性は明らかである。そこからリップシュタット戦役における、ブラウンシュヴァイクによるヴェスターラントへの核攻撃へと繋がっていくのです。
このような無能で無思慮な彼をを盟主と仰ぐ、当時の貴族たちの精神構造の土壌を築いたのは、紛れもなくルドルフの悪政にあるのです。従って、ルドルフは、旧帝国は人類社会史上最も多くの人々を殺戮し、社会を停滞させた、まぎれもない人類史上の汚点である、と結論付けます。

と、ノリは『我が国における自由主義史観』のつもりで書きました。可能な限り、旧帝国という単語を用いているのが、唯一の工夫です。
ふと思ったんですが、実際の貴族はどんな感じなんでしょうね?
私のイメージは決して強情ではなく、どちらかというと近衛文麿みたいに強く反論されると受け入れてしまう性格なんだと思っています。

収録投稿3件目
board4 - No.4506

Re:ゴールデンバウム王朝暗黒史観

投稿者:イッチー
2003年08月24日(日) 19時47分

> 本当にものは言いようですね。ルドルフが何となく好きな私には楽しく読めました。
> 個人的には体制は善悪ではなく、現状にあっているかどうかで評価されるべきだと考えています。成果さえあげていれば、他はどうだていいです。
> ローエングラム王朝の潔癖さには、うさんくささというよりはむしろ作者の意図を感じます。そうすることによって、ヤンが思い悩み、道を模索する姿を描こうと考えているのでしょう。

ドミニオンさま、感想ありがとうございます。昔は、私は「ルドルフは悪い奴だ」と単純に思っておりましたが、だんだんルドルフはその時代の人類にとっては必要悪の存在で、むしろ、その出現を許し、民衆の支持をつなぎとめられなかった民主共和主義者なる者達のほうが大きな責任があるように思うようになりました。理想的な専制政治という概念は、民主主義者に反省を促す意味でのものと私は思いましたが、実際には存在しえないですね。

> 近年、旧帝国史を見直すという試みが行われている。現在の銀河帝国において彼らが悪し様に描かれ過ぎているというのが、その理由である。つまり、現政権のために歴史を歪曲しているというのだ。
> だが、私は彼らの意見こそが歴史を歪曲し、人民を騙す犯罪行為であると考えている。
> 旧帝国末期における彼らの体たらくを鑑みれば、それは自ずと明らかになります。
> だいたい、旧帝国成立時の人口二千億が王朝末期にはその十分の一に減っていることからして、彼らの無能と失政、残虐性は明らかである。そこからリップシュタット戦役における、ブラウンシュヴァイクによるヴェスターラントへの核攻撃へと繋がっていくのです。
> このような無能で無思慮な彼をを盟主と仰ぐ、当時の貴族たちの精神構造の土壌を築いたのは、紛れもなくルドルフの悪政にあるのです。従って、ルドルフは、旧帝国は人類社会史上最も多くの人々を殺戮し、社会を停滞させた、まぎれもない人類史上の汚点である、と結論付けます。

 最近、上記のような反論が私の『新銀河帝国史』に対して出されているという。ゴールデンバウム王朝の悪政を象徴するものとして、急激な人口減があげられるが、少し統計資料を見れば、ゴールデンバウム王朝成立後、泰平の世が続いたことによって急激に出生率が低下し、少子高齢社会が500年続いたことに原因が求められることが容易にわかりそうなものである。
 ブラウンシュヴァイク公が無能な政治家であったことは確かである。しかし、彼の悪逆非道は小説のなかで過度に描かれすぎている。平時にあっては、彼は領民のために善政を敷いており、旧ブランシュヴァイク公領において、彼の人気が未だ高いところからもそのことは伺える。
 確かに、ブラウンシュヴァイク公がヴェスターラントを熱核攻撃したのは事実である。しかし、それは彼の特権意識の故というよりも、ローエングラム候の策謀によって、領民暴動が相次いでいたため、領民の動揺を抑えるために断固たる措置を取らざるを得なかったという側面があった。さらに強硬派のフレーゲル男爵など一部の若手貴族が独断専行で核攻撃を指示していたという事実も明らかとなっている。
 そもそも、内乱を早期に終結させるために、ヴェスターラントを見殺しにするというローエングラム陣営の判断は、最近では歴史家の間からも異論が出されている。もしも、門閥貴族連合の悪逆非道さを明らかにしたいのなら、攻撃直前にそれを阻止し、計画を明らかにするだけで十分ではないか。なぜ、200万もの人々が焼き殺される様子を映像に記録している必要があったのだろう?

> ふと思ったんですが、実際の貴族はどんな感じなんでしょうね?
> 私のイメージは決して強情ではなく、どちらかというと近衛文麿みたいに強く反論されると受け入れてしまう性格なんだと思っています。

 貴族=悪人というのは非常に短絡した見方だと思います。(何となく、銀英伝とベルばらの見方が似ていると思うのは、気のせいか)実際には、高貴なる義務を意識して、戦場に向かっていって、戦死する人が多くなるような気がします。あの状況では。さらに戦争の遂行のためには民衆の協力も必要ですから、百数十年も戦争をしている間に、民衆の発言権も高まって、貴族たちもあまり無体なことを民衆に対して出来なくなるような気がするのですが・・・。

収録投稿4件目
board4 - No.8075

ゴールデンバウム朝について

投稿者:富士
2008年06月21日(土) 14時07分

はじめまして,四か月前ほど前から銀河英雄伝説の考察シリーズなどを見せていただいておりました。その中で反銀英伝・設定検証編13−A銀英伝の貴族階級(1)でのイッチーさんの考察についてかなりおもしろいなと思いましたので参考にさせていただき暇な時間を使いながら私なりの考察をしてみました。
―――――――――――
ゴールデンバウム朝が暗黒時代であったという認識に対して近年否定的な見方をする学者が増えつつある。

彼等の主張によれば政府御用達の学者はプロパガンダに乗っているだけだというのだ。

政府御用達の学者などはルドルフへの権力集中に関して否定的である。しかし改革において権力を集中するのは仕方ない事であり,それをやらないといけないほど民主共和政が腐っていたのだ。事実「皇帝」を名乗るまでルドルフは憲法の範囲内(首相、国家元首の兼任)での権力集中を行なって改革に望んだものの,利権まみれの政治家集団の激しい抵抗や,硬直し「公」の意識を無くした官僚集団のストライキやサボタージュなどの抵抗等々により改革は進まず,やむ終えずに帝政に移行したのだ。これらを裏づけるようにルドルフの秘書をしていたバールド・フォン・ガン(名前が変ですが私が作ったキャラです)の日記が近年発見され「政治家や官僚の激しい抵抗へのルドルフの怒りと呆れ」や「帝政移行期のルドルフの葛藤」などの事が秘書目線からではあるが書かれており注目を集めている。

議会の永久解散の原因ともなった劣悪遺伝子排除法や社会保障制度の全廃・共和主義者の徹底弾圧・個人崇拝の強制などにしても再検証がなされはじめている。

劣悪遺伝子排除法については当時,遺伝子研究が進んだ事により遺伝子で容姿などを変える事が可能になり自らの遺伝子をいじり容姿を変える事が一種のブームなっていた。しかし研究者も予想していなかった事態つまり遺伝子をいじった者の子孫の世代に前例にないほどの苦痛を伴う先天性の病を持つ者が異常に多い事が判明したのだ。ルドルフはそういう者を出さないように事実上去勢を強制する法律を制定した。内容は現在伝えられているほどのものではなく去勢のみに限定したものでありローエングラム朝の誇張ではないかと言われている。むろん現代においては去勢も強制するべきではないとは思うが,バールド・フォン・ガンの日記によればルドルフが病院を視察した際に見た先天性の病の患者が苦しむ姿を見て,「悲劇を繰り返してはならない」と呟いたという記述がある事からルドルフは善意的に提出したようである。余談になるが厚生省の官僚はこの事実を長年に渡り隠しており,ルドルフの怒りを買い民主共和制への不信の一要因にもなったようだ。

社会保障制度の全廃に関しては制度としては完全に崩壊しており,今までの政治家がそれを言い出せなかっただけであった。ルドルフはそれを正直に言い,社会保障を民間の保険会社などに移す民営化を行なっただけであったようだ。

共和主義者の徹底弾圧については(イッチーさんのがあまりにも素晴らしいので丸写しさせていただきます)当時の共和主義者の実態が暴力革命を是とする過激派の集団であり、一般国民からはテロリストとして嫌われた存在であったということがわかれば、ゴールデンバウム王朝初期によってなぜ、かくも徹底弾圧されたがよくわかるであろう。そもそも、アーレ・ハイネセンをはじめとする旧自由惑星同盟の建国者たちは、アルタイル工業大学学生闘争委員会を名乗る学生運動家たちで、闘争資金確保と称して、銀行襲撃を繰り返し、さらに警察署・軍隊駐屯所を攻撃し、数百名の警察官・軍人を殉職せしめたテロリストであった。彼らは死刑になるところが皇帝恩赦によって強制労働の刑に減刑され、流刑地に送られたところ、脱獄して、後の旧自由惑星同盟を建国したのである。その旅程中に、疑心暗鬼にかられ同志を次々に粛清したハイネセンは、腹心のグエン・キム・ホアによって殺害されたのである。さらに今日のハイネセン星にたどり着いたものの、彼らの民主主義思想はかなり地球時代の民主主義思想とは異なった独特の民主主義思想であり、その政治制度は実際には出身成分の良い核心階層(長征1万年光年をおこなったものの子孫たち)の独裁を保証するものに変貌していった。

個人崇拝の強制にしてもルドルフが望んだものではなく,帝政移行後にあまりにも改革が進んだ為,民間の方から進んで行われていたのが実情であったようだ。ルドルフ自身も満更でもなく,それを援助するような行動をした事が後々に勘違いされる原因になったとする歴史家もいる。

またルドルフが創設した貴族についても非難が多いが,ルドルフとしては地方行政においても権力集中による改革の必要を痛感していた。実際,先に上げた暴力的革命を目指している共和主義勢力に共感している労働組合も地方行政に根付いており,地方においても中央で行なったような改革をする必要上創設されたものであった。実際当時貴族に任ぜられた者が残した日記を見てみると「左遷だ」「あんな称号でテロリストの巣窟に行くのは嫌だ」などと書かれており貴族がけして恵まれた存在でなかったのが見えてくる。

皇帝や貴族が世襲を取った事に関しても非難は多い。しかし共和主義者や利権政治家が民主的な手続きの元また国民に害を及ぼす事に比べたらマシであるとルドルフが考えた結果であり,一概に非難するのはいかがなものなのかと思える。貴族にしてもゴールデンバウム朝崩壊まで領内においてそれなりの善政を敷いており,タナカヨシキ氏などがいうような状況であったならば経済は破綻しているという経済学者の指摘もあり見直されはじめている。実際の所は経済においては商人に任せており,民衆も寺子屋と呼ばれる施設で教育が行われていた。貴族もあまり口出しを行わず,当時の大商人の日記によると「証人するだけの飾り者」との記述があり,お飾りであったようである。民主共和制末期よりも学力が高かったとする歴史家もおり,これに関しては今後研究が進む事に期待したいと思う。

ゴールデンバウム朝末期においては長引く戦争により税金の値上げが行われた事により民衆の不満が高まっていたのは事実であり,国費捻出のために寄付をした者への爵位の贈呈も行われていた。これにより貴族や皇帝への尊敬心が薄れはじめた事によってラインハルトの台頭を招く要因となった。しかし薄れたとはいえ民衆の支持をそれなりに集めていた貴族の力は大きく,ラインハルト陣営はバーランドでの民衆蜂起を誘発して門閥貴族により弾圧される様子を撮影しようと画策した資料が発見されており,原爆使用という予想以上の結果を出している。そんな工作をしないとならないほど民衆の支持はあったのだ。

ゴールデンバウム朝に対して暗黒時代だと一方的に非難するのは歴史家は果たして歴史家と言えるだろうか?歴史家は歴史を公平に見る事を忘れてはならないだろう。(歴史評論家:ガイア・ブーン)
(これは『歴史読々』に記載されたものです)
―――――――――――
初めての書き込みなのに長々と書いてすいません。

文書が変ですが,皆さんの考察を見ていて書きたい衝動を押さえれませんでした。

たぶんツッコミどころだらけなのでツッコミよろしくお願いします。

収録投稿5件目
board4 - No.8078

Re:ゴールデンバウム朝について

投稿者:スタスク
2008年06月27日(金) 04時54分

 近年、学者の間でゴールデンバウム王朝時代の歴史見直しが盛んになってきている。それ自体は大いに結構なことであり、これがさらに広範なものになることは非常に望ましいことである。
 ローエングラム朝時代に獅子帝とその近臣の権力奪取正当化のため、ゴールデンバウム王朝の皇帝たちが過度に悪し様に描かれているのは確かにその通りであろう。

 御用史家の筆の曲げ具合は凄まじく、新帝国に対する危険分子は徹底的なまでに貶められている。ブラウンシュヴァイク公爵オットーやヨブ・トリューニヒトに関する記述は呆れるとしか言いようがない。
 これは獅子帝覇権確立のために働いたロイエンタール提督にも及んでいる。さすがに獅子帝のもとで働いていた時期のことは同時に獅子帝のことさえ貶めかねないため、大して変なことは書いていないが、新領土総督に就任してからは無茶苦茶である。

 ロイエンタールが反乱をおこした理由は今もってはっきりしない。新帝国の史書を鑑みるに個人的プライドを守るため、反乱を起こしたとしか読めない。確かにその周囲には地球教の影やラングの策動などが見え隠れするが、数百万将兵の命を無為に散らせるには説得力がなさ過ぎる。
 そのため、今日に至るまでロイエンタールは個人的なプライドのために将兵を無為に死に追いやったと悪評がたっている。彼が弁明のためにさっさと出頭すれば最悪の事態は避けられたことは疑いない。
 仮に立志伝などにあるように最初から野心を燃やしていたとしても、情勢があまりにも悪すぎる。一体何が、彼に挙兵を促したのだろうか?

 今日では最初から反乱を起こすつもりで軍備を整えていたことが判明している。そこで地球教が余計なことをしたせいで、準備不足のまま開戦せざるえなくなってしまったのである。
 なにしろ、監察官が送られて万一計画がばれればどうなるか分かったものではない。ばれなくても、事態がどう転んでも新領土総督の地位を辞任せざる得なくなる。
 ロイエンタールには準備不足の反乱しか残されていなかったのだ。これがグリムパルツァーやクナップシュタインといった提督を取り込めなかった原因であると考えられる。
 肝心の反乱を起こした理由だが、どうもイゼルローンにおける獅子帝の稚拙な指揮と、個人的なプライドで数百万将兵を死なせたことが決意を促した様子である。
 とりわけ、「喪中の軍は討てん」という言葉は帝国軍の上から下まで不評だった。
 この事実が公表されないのも当然で、獅子帝建国の功臣が自発的に裏切ったなど、書くわけにはいかないからである。加えて、帝国と敵対していた地球教、政府内部で嫌われていたラングを排除する必要もあって意図的に無視された。

 さらに酷いのが、トリューニヒト高等参事官殺害の件である。
 いくら敗戦で心身ともに疲れていたとはいえ、丸腰の文官を殺すなど誇り高いロイエンタールのやることと思えない(ある意味軍人としての誇りで数百万将兵を無為に死なせたことは十分非難されることであるが)。
 これについてはすっかりネタが割れている。ローエングラム朝崩壊後、軍務省の機密文書に獅子帝とオーベルシュタイン軍務尚書によるトリューニヒトを排除するための密談が交わされていたことが明確に記されていたのである。
 この時の謁見で交わされた内容によると、トリューニヒト抹殺計画が発動直前まで進められていたのである。
 これに身の危険を感じたトリューニヒトが先手を打って、高等参事官の職を彼の持ちうるありとあらゆるコネを使って得て、新領土に逃げ込まれたため、この計画は中断を余儀なくされた。
 しかし、ロイエンタールの反乱で帝国軍によってハイネセンが制圧されると、これ幸いにと、軍務尚書直轄の特殊部隊がトリューニヒトを抹殺。
 これを弁明も出来ないかつての功臣に擦り付けたのである。
 このことが原因で、ミッターマイヤーは地球教最後の襲撃のドサクサに紛れてオーベルシュタインを暗殺したのである。どうもロイエンタールの長年の親友であったことに加え、獅子帝の過度のロマンチシズムへの反発に対するシンパシーがあったようである。
 しかし、獅子帝死後でさえ、彼はロイエンタールが個人的なプライドを守るために反乱を起こしたことを改めることが出来なかった。
 それもそのはずで、ミッターマイヤーとしてもことを公にして、獅子帝の権威を傷つけては自身の地位が危ういのである。

 と、あれだけ喧伝されていた獅子帝の周辺でさえ、実態はあまりよろしくない。
 そのくせ、ローエングラム朝の創始者である獅子帝の記述は後世の手が加えられているため、胡散臭いまでの名君として描かれている。
 なかにはその反動で、ルドルフ1世とゴールデンバウム朝の極端な神聖視が新興している事実がある。

 初代皇帝であるルドルフはこれまで20世紀後半におけるアドルフ・ヒトラーやヨシフ・スターリンのような悪鬼として描かれており、まさに悪の帝王と見なされてきた。
 近年はこれまで参照されてこなかったルドルフ1世と当時の銀河連邦時代の文献が公開されたことと、地球教本部の発掘が進んだことから、全否定の対象とまでされることは少なくなった。

 確かにルドルフに長年仕え、その傍で働いてきた人々の手記は確かに重要な資料であり、それを参照することでルドルフの実像に近づくことは望ましいことである。だが、同時にそれはルドルフを過度に高く評価している些か偏った記述を鵜呑みにしていいということにはならない。
 何故なら、ルドルフとて普通の人間であり、彼のなすこと全てに善意のみが介在していたと見なすほうが危険である。
 事実として彼は猛烈な使命感を持つ一方、虚栄心が強く、強い権力志向をもっていた。そうでなければ、わざわざ世襲の帝政など始めはしないだろう。
 同時代人には皇帝への即位を利権漁りに奔走する政治家や官僚たちと同じように、自分の地位を固めたかっただけではないのかと、指摘する向きもある。
 ルドルフが一連の改革によって社会層の固定化、あるいは自分たちが非難している政治家や官僚と同じ轍を踏みつつあることに、気づかなかったとするならば、人間というものに対し驚くほど無知であったとするしかない。

 ルドルフの遺伝子に対する考えは軍人時代、首相時代、皇帝時代と時を経るごとに変遷している。
 これは不思議なことでもなんでもなく、長い人生のうち考えが全く変化しないほうがよほどおかしい。
 ルドルフの遺伝子に対する考えがどのように変遷してきたかについては非常に興味をそそられるが、具体的な研究は今のところなく、今後の研究が待たれるところである。だが、大体において前半生では連邦各地で蔓延していた遺伝子問題解決のため、後半生では改革を維持するための特権階級創設に利用していたのではないかと思われる。
 また、人種的偏見が強いことは間違いなく事実であった。実際、特権階級に有色人種が存在しないことはこれまで広く指摘されており、これが前述の遺伝子に対する考えと深く繋がっていると考えられる。

 このように、一部の歴史家はルドルフを獅子帝のように飾り立てようとしている。確かに再評価は面白いが、過度に行っては過去の愚を冒すことになる。
 ルドルフを獅子帝に対抗するための神輿にしてはならない。
 いずれにしても、我々は歴史を利用して現在の政権の正当化をしなくてもいいこの時代に感謝しなければならないのだろう。

(これは月刊『銀河の歴史』に記載されたものです)

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