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反銀英伝・設定検証編
4−A

ヤン・ウェンリーの希望的観測(1)


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No. 1215
脳天気なヤン・ウェンリー
投稿者:不沈戦艦 1999/5/11 00:41:33
 しばらく見ているだけで、書いてはいなかったんですが、何だか殺伐とした雰囲気が無きにしもあらず、といったところですね。たまには銀英伝の話でも出しましょうか?喧嘩ネタではないですし。

 ヤンが一巻で「要するに私の希望は、この先何十年かの平和なんだ」とイゼルローン攻略作戦についてもっとも重要な役割をシェーンコップに頼む場面があります。はて、これはヤンらしくもない、希望的観測もいいところじゃないですかね?
というのは、このイゼルローン攻略作戦が成功して、同盟軍がイゼルローン回廊を制圧したとして、その後に銀河帝国政府が同盟との和平など望むか?といった点に関しての考察がきれいさっぱり欠けているからです。

 ここで色々な方と意見の交換をした結果、少なく見積もっても銀河帝国の国力は同盟の2倍はあります。また、政治体制は皇帝と宮廷貴族による専制君主制で、民衆の意見が反映されるものではありません。そんな中で、一時的でも戦争を止める決断ができるのでしょうか?皇帝や貴族にとっては、「反乱軍どもを懲罰する為の戦争」であって、そもそも同盟が対等な敵手である、という意識すらないでしょう。仮に相手を対等と思っていたとしても、建前を崩して「反乱軍ではなく対等な敵」扱いすることはできますまい。そんなことを言った途端、権力闘争のいい標的になること間違いありませんから。また、彼らにとっての経済的負担は問題にもならない程度でしょうし(問題になるのであれば、貴族が戦争反対を叫んで、戦争なんぞとっくの昔に終わっている筈)、近親者が戦死する可能性にしても、職業軍人の家系なら「武門の誉れ」と諦めるだろうし、そうでないのなら危険な前線に出ることはないでしょう。そうです。皇帝や貴族にとっては、戦争を止めるメリットなど全くないのですよ。その程度の事を、あれほどの智者であるヤンがなぜ解らないんでしょうか?

 同盟は民主主義です。反戦派が選挙で勝って政権を握る、という可能性はない訳ではありません。そうなれば、和平を銀河帝国に持ちかけることも充分可能でしょう。しかし、相手が受け入れる可能性がほとんどないのでは、無意味ではないですかね。また、それがあるからこそ、同盟の国民も戦争を支持せざるを得ないのではないでしょうか。「帝国に負けたら民主主義は消滅する」のですから。どうも、この辺のヤンの考え方には、「こちらが和平を望めば、相手も受け入れる筈だ」という思いこみがあるような気がして仕方ありません。いわゆる、日本の「平和主義者」にありがちな考え方ですが。「自分たちがこれほど平和を願っているのだから、誠心誠意訴えればきっと通じる筈」というものです。実際は、誠意だけでは通じないのが国家間の交渉であったり、戦争であったりするのですがね。

 結局、同盟が平和を得る為には、帝国を滅ぼすしかない訳です。相手には交戦を止める理由はないんですから。しかし実際には同盟の国力では不可能に近い。まあ、前に出した私案の「同盟軍、フェザーン侵攻」という反銀英伝ネタをやったらどうなるか解りませんけど。結局泥沼なれど、同盟は戦争を続けざるを得ないんですわ。しかも、後になってラインハルト・フォン・ローエングラムが権力闘争に勝って、更に事態は悪化しますし。ラインハルトの望みは「宇宙を我が手に」ですから、和平の働きかけなど無効です。この手の危険な権力者が出てきた場合の事を、ヤンは考えなかったんでしょうか?歴史家志望のなり損ないにしては、杜撰な思考だと思います。

 えー、これは銀英伝の悪口のつもりはありませんので、異論・反論(ニュース23じゃないですが)いくらでも大歓迎です。言いたいことのある方は、存分にどうぞ。


No. 1217
>脳天気なヤン・ウェンリー
投稿者:石井由助 1999/5/11 01:18:34
> ヤンが一巻で「要するに私の希望は、この先何十年かの平和なんだ」とイゼルローン攻略作戦についてもっとも重要な役割をシェーンコップに頼む場面があります。はて、これはヤンらしくもない、希望的観測もいいところじゃないですかね?
>というのは、このイゼルローン攻略作戦が成功して、同盟軍がイゼルローン回廊を制圧したとして、その後に銀河帝国政府が同盟との和平など望むか?といった点に関しての考察がきれいさっぱり欠けているからです。


 細かいニュアンスまで覚えていないので間違っているかも知れませんが、ヤンが望んだのは正式な和平ではなく、パワーバランスによる実質的な和平だったのではないでしょうか。
 同盟がイゼルローンを手に入れることは、抑止力になりますから、帝国の大規模侵攻を防げる意味で暫定的な平和は希望できるのではないでしょうか。
 核抑止論の平和が偽りの平和であっても現実に小競り合い以上のことを起こさなかったように。
 まあ、結局ヤンの希望的観測というのは歴史的事実になってしまうわけですが。


No. 1233
あれれ、銀英伝ネタなんだけどなぁ
投稿者:不沈戦艦 1999/5/12 00:41:23
>細かいニュアンスまで覚えていないので間違っているかも知れませんが、ヤンが望んだのは正式な和平ではなく、パワーバランスによる実質的な和平だったのではないでしょうか。
 同盟がイゼルローンを手に入れることは、抑止力になりますから、帝国の大規模侵攻を防げる意味で暫定的な平和は希望できるのではないでしょうか。
 核抑止論の平和が偽りの平和であっても現実に小競り合い以上のことを起こさなかったように。



 久々の書き込みで、せっかく銀英伝ネタを出したのに、管理人さんにしか相手にされないとは悲しひ(ぎゃははは)。論争はいいと思いますが、喧嘩は程々にね。私が言ってもあんまり説得力ないかも知れないけど。

 さて、ヤンが望んだ「それほど長期でない平和」に関しては、確かにその通りでしょうね。冷戦状態でもいいから、ユリアンらが戦場に駆り出されない平和な時が欲しい、と言うことでしょう。ところが、仮にアムリッツァの愚行が行われず、皇帝が急死しなかったとした場合どうでしょうか?そこで同盟政府が和平提案をした場合は。私は先ず間違いなく、銀河帝国は和平案を受け入れないと思うんですよ。結局、今まで回廊の同盟側で行われていた戦いが、今度は帝国側で延々と繰り返されるだけじゃないかと思って。帝国軍は懲りずに何回もイゼルローン奪還作戦を実行し、同盟もそれにつき合っわざるを得ず、しかも強硬派を完全に押さえることもできないだろうから、ある程度帝国領への侵攻作戦を行わざるを得ない状況です。結局、攻守ところを換えるだけで、同じ事の繰り返しではないですかね?それでは、国力が劣る同盟のじり貧は必至でしょう。「銀河帝国が和平を受け入れる可能性はない」ということに、ヤンなら気づいてもいいと思うんですけど。「イゼルローンを獲れば、和平がなるかも知れない」という考えが、希望的観測でしかないということに。

 しかも実際の銀英伝の歴史では、ラインハルトが独裁権を握る、という同盟にとっては最低最悪の展開になってしまいました。能力と野望を両方持っている恐るべき若者の危険性に、ヤンは気づかなかったんでしょうか?


No. 1234
RE:ヤン和平論
投稿者:ゲオルグ 1999/5/12 01:04:27
お久しぶりです。イデオロギー要素がない話題が久しぶりに出てますので(笑)、レスさせて下さい。

でヤンの和平論なのですが、ヤンは近い将来帝国内部で内戦が勃発する可能性が高いと看破していたようです。少なくとも門閥貴族派と実務官僚・軍人派の対立により帝国の安定が損なわれることは予想していたようで、イゼルローンの確保により帝国の組織的な侵攻が未然に防げるということを想定していたのではないかと。古典的なパワーゲームですね。
 この場合、欧州大陸で争闘する列強をあしらい続けた英国のように同盟が帝国の内部対立に容喙し続ければ、同盟国内は平和となるでしょう。外交がよほど上手ければ、それこそ軍事介入すら行わずに帝国の混乱を持続・拡大することすら可能です。
 おそらくヤンの構想していた和平案はそのような『汚い』ものだったのではないか? と思われます。特に2巻でヤンがユリアンに語った戦略構想から考えれば。
 ただ、ヤンはラインハルトの行動を多少美化して考えていた節がありましたので、同盟との恒久的な並存など望んでいないラインハルトにその戦略を挫折させられていた可能性がありますが。(実際、『汚い』手段も躊躇なく行うラインハルトのために同盟はクーデターが発生しましたし)

# しかし銀英伝で最大級の疑問の一つは『ヴェスターラントの悲劇』の真相をヤンは看破していたのだろうか? ということですね。ヤンの戦略センスからしてある程度推察はついていそうなものなのですが、それにしては全く屈託がないし。皆さん、どう思われますか?


No. 1235
「矛盾の人」オチ
投稿者:俺様ランチ 1999/5/12 01:53:04
>しかし銀英伝で最大級の疑問の一つは『ヴェスターラントの悲劇』の真相をヤンは看破していたのだろうか? ということですね。ヤンの戦略センスからしてある程度推察はついていそうなものなのですが、それにしては全く屈託がないし。

 たぶん田中芳樹が「ヤンがヴェスターラントを知っていたかどうか」設定するのを忘れた、てのが身も蓋もない真相じゃないでしょうか?
 ・・・ってんじゃ話が面白くならないので、ちゃんと考えてみます。私の結論としては、例えヴェスターラントの真相に気づいたとしても、ヤンはラインハルトを許してしまうと思います。

 まず前提として、「ヤンがヴェスターラントの虐殺映像を見ている、或いは映像の存在を知っている」事が必要です。で、見ていたとして話を進めると、ゲオルグさんの言うとおり、ヤンはやはりヴェスターラントの虐殺へのラインハルトの傍観に気づいていたと考えるのが自然だと思います。ヴェスターラントの虐殺の映像をヤンが見て「門閥貴族ってのはやっぱり悪い奴だなあ」なんて感想を持つのは不自然ですから、キルヒアイスと同じように映像の存在から真相に気づくでしょう。

 ところで、ヤンの言行不一致の最たるものはヴァーミリオンでの行動です。同盟が負けるのはイヤだし、その為に何をすればいいかわかってるのに、でもラインハルトの個性に惹かれて殺すのをやめてしまうし、その割には帝国の覇権を完全に認めるのもイヤなのでメルカッツを使って私兵集団を作らせたり。
 その後のヤンの行動は「そんな苦労するんだったら初めからラインハルト殺しとけ!」ってツッコミを入れずにはいられない類のものです。しかも始末に負えないのは、ラインハルトを生かす事がその後の苦労に繋がる事を考慮に入れてやがる事です。結局、ヤンは個人的な好き嫌いでその後の死者を100万人単位で増やしていると言えるので「矛盾の人」で済ますには勝手すぎると言えば勝手です。多くの人が触れていますが、ヤンはやっぱり勝手な口ばっか野郎と言えましょう。

 つまり私が言いたいのは「ヤンはなんだかんだ言いつつ結局ラインハルトのやる事は許してしまうんじゃないだろうか」って事です。民間人が戦争の犠牲になる事を最も嫌っていたヤンなので、もし田中芳樹が忘れてなければ、かなりの内面での葛藤ぶりが書かれたと思われますが、それでも「ローエングラム公の一代に冠絶する個性は・・・」ってな感じで許してしまうんじゃないでしょうか。やっぱりオチは「矛盾の人」になってしまいますが。

 イヤな深読みをすると、「ヤンがヴェスターラントの真相を知ってもラインハルトを許すに至るまでの、説得力ある心理描写」が思いつかなくて田中芳樹が書かなかった、というのもアリだと思います。ヤンにはさんざん「民間人を守るのが軍隊」と言わせすぎたので。


No. 1237
あの時点でそこまで予想していたか疑問
投稿者:Merkatz 1999/5/12 06:46:27
>でヤンの和平論なのですが、ヤンは近い将来帝国内部で内戦が勃発する可能性が高いと看破していたようです。少なくとも門閥貴族派と
>実務官僚・軍人派の対立により帝国の安定が損なわれることは予想していたようで、イゼルローンの確保により帝国の組織的な侵攻が
>未然に防げるということを想定していたのではないかと。古典的なパワーゲームですね。
>この場合、欧州大陸で争闘する列強をあしらい続けた英国のように同盟が帝国の内部対立に容喙し続ければ、同盟国内は平和となる
>でしょう。外交がよほど上手ければ、それこそ軍事介入すら行わずに帝国の混乱を持続・拡大することすら可能です。
>おそらくヤンの構想していた和平案はそのような『汚い』ものだったのではないか? と思われます。特に2巻でヤンがユリアンに
>語った戦略構想から考えれば。
>ただ、ヤンはラインハルトの行動を多少美化して考えていた節がありましたので、同盟との恒久的な並存など望んでいないラインハ
>ルトにその戦略を挫折させられていた可能性がありますが。(実際、『汚い』手段も躊躇なく行うラインハルトのために同盟は
>クーデターが発生しましたし)

ヤンが帝国の内乱を予期したのは、ラインハルトが実権を握ってからではないでしょうか。
後継者が定まっておらず、一方で門閥貴族とリヒテンラーデ派の確執がある。そういう状況になったとき、はじめて内乱の予見ができたのでは?
イゼルローン攻略当時は、まだ皇帝も健在でしたし、内乱の種となるものがありませんから。
そうするとやはりヤンの考えていた「平和」とは、現体制が続くことを前提とするものであり、ラインハルトが権力を握ることは計算外だったのでしょう。
だいたいあの時点までのヤンとラインハルトの面識は「前線の戦闘におけるもの」です。
つまり互いの戦術的手腕を見せ合って、こいつはすごいぞと思っていたわけで、戦略眼がどの程度かなんて知りようがなかったわけです。
イゼルローン攻略当時のヤンのラインハルトに対する評価は「優秀な前線指揮官」の域を出ることはなかったのではないでしょうか。

勢力均衡によって平和を得るという着想は良いと思いますが、自国の政府の行動は計算に入ってなかったのでしょうか。
アムリッツァのような事態は、政府の腐敗ぶりから十分予想できたのではと思いますが。

>さて、ヤンが望んだ「それほど長期でない平和」に関しては、確かにその通りでしょうね。冷戦状態でもいいから、ユリアンらが戦場に駆り出
>されない平和な時が欲しい、と言うことでしょう。ところが、仮にアムリッツァの愚行が行われず、皇帝が急死しなかったとした場合どう
>でしょうか?そこで同盟政府が和平提案をした場合は。私は先ず間違いなく、銀河帝国は和平案を受け入れないと思うんですよ。
>結局、今まで回廊の同盟側で行われていた戦いが、今度は帝国側で延々と繰り返されるだけじゃないかと思って。帝国軍は
>懲りずに何回もイゼルローン奪還作戦を実行し、同盟もそれにつき合っわざるを得ず、しかも強硬派を完全に押さえること
>もできないだろうから、ある程度帝国領への侵攻作戦を行わざるを得ない状況です。結局、攻守ところを換えるだけで、
>同じ事の繰り返しではないですかね?それでは、国力が劣る同盟のじり貧は必至でしょう。「銀河帝国が和平を受け入れる
>可能性はない」ということに、ヤンなら気づいてもいいと思うんですけど。「イゼルローンを獲れば、和平がなるかも
>知れない」という考えが、希望的観測でしかないということに。

ヤンとしてはイゼルローンさえあれば、穴熊のようにこもって戦えば、少数の戦力でも帝国軍を退けることができると考えていたのではないでしょうか。
ただしその場合、こちらからは絶対に手を出さないというのが絶対条件ですけど。
政府強硬派から侵攻作戦が提案されたりしたら、この作戦は成り立たなくなってしまいますね。
帝国が和平案を飲む飲まないはどちらでも構わないのでは?
イゼルローンさえあれば国防は出来ますから。それこそヤン自身がやったように。
どちらにしても同盟政府が帝国領侵攻をしないというのが、ヤンの平和構想の要だと思われますので、その点でヤンの自国政府に対する洞察は甘いといえるでしょうね。


No. 1238
ヤン構想
投稿者:ゲオルグ 1999/5/12 09:00:13

>ヤンが帝国の内乱を予期したのは、ラインハルトが実権を握ってからではないでしょうか。
>後継者が定まっておらず、一方で門閥貴族とリヒテンラーデ派の確執がある。そういう状況になったとき、はじめて内乱の予見ができたのでは?

 内乱の具体的内容が予測できたのは皇帝崩御後の官僚枢軸派の台頭後でしょう。しかし、歴史的な観点からすれば、この時点ですでに、銀河帝国の統治の箍が緩み、その内部での政治闘争が武力行使も辞さない過激なものになっていくこと自体は十分予測していたはずです。(ヤン自身がラインハルトという要素がなければ、帝国は有力貴族の群雄割拠状態に陥って崩壊していただろうと予測しています)


> そうするとやはりヤンの考えていた「平和」とは、現体制が続くことを前提とするものであり、ラインハルトが権力を握ることは計算外だったのでしょう。

 そうでしょうね。ただラインハルトの権力掌握はリップシュタット戦役後ですので、この時点ではそれほど重視すべきものじゃないでしょう。


>アムリッツァのような事態は、政府の腐敗ぶりから十分予想できたのではと思いますが。

 まさかあそこまでの規模で愚行を行うとは思わなかったんでしょうね。いくらなんでも軍を総動員して軍事的冒険に踏み切るとは思わなかったんでしょう。するとしてもせいぜいが三個艦隊程度の動員が常識的な限界でしょうから。


>どちらにしても同盟政府が帝国領侵攻をしないというのが、ヤンの平和構想の要だと思われますので、その点でヤンの自国政府に対する洞察は甘いといえるでしょうね。

 帝国領侵攻そのものはヤンも否定していません。ただタイミングが悪すぎるということでしょう。適時適度の介入(同盟の体力を過度に消耗しない程度の)により帝国の混乱を助長し、出来れば同盟の影響力を帝国内部で増大させることにより、戦略的優位を確立するという戦略を構想しているくらいですし。


No. 1239
ヴェスターラント事件
投稿者:ゲオルグ 1999/5/12 09:18:57
 俺様ランチさんの観測どおり、作者が失念していたか、あえて無視したというのが真相なのでしょうが、非常に惜しいテーマであったと思うのです。
 例えば『ヴェスターラントを忘れるな』という趣旨で反ラインハルト宣伝が行えます。これを強調することによりラインハルト政権の政治的正当性にキズを与えることが可能ですし、物語上もいくつかの場面で重大な影響を与えそうです。
 例えばヴァーミリオン会戦の終局においても、シェーンコップなどの強硬派は『無辜の民衆を政治的エゴのために犠牲にするような独裁者に同盟市民の命運を委ねて良いのか』といった趣旨でヤンの急所をつけただろうし、ロイエンタールの反逆も(ヤン一党への討伐による無益な戦没者などとも結び付けて)よりローエングラム体制の矛盾をつく形になったかもしれません。


No. 1245
ついでに前から疑問に思っていたこと
投稿者:Merkatz 1999/5/13 06:58:24
>帝国領侵攻そのものはヤンも否定していません。ただタイミングが悪すぎるということでしょう。適時適度の介入(同盟の体力を過度
>に消耗しない程度の)により帝国の混乱を助長し、出来れば同盟の影響力を帝国内部で増大させることにより、戦略的優位を確立すると
>いう戦略を構想しているくらいですし。

ヤンは戦略家として一級でしたから、どのようなケースでも想定していたんでしょうね(ただし同盟政府の愚挙は除く)。

で、ついでといっては何ですが私が前から疑問に思っていることがあるんですよね。
それは親友のラップが死んだときのヤンの態度です。
ロイエンタールとミッターマイヤー、イワン・コーネフとポプランの例を見てもわかるとおり、ふつう親友が死ねば大変嘆き悲しむものです。
ですがヤンのラップに対する態度はあまりにさばさばしすぎてます。
戦闘中はまあ仕方ないにしても、ハイネセンに戻って墓参りをするときにもほとんど他人事のような態度です。
ジェシカにだけは気遣いをしていましたが、あくまでジェシカに対するものであって、ラップに対する情が感じられません。
ヤンはそういう感情が希薄かというとそうではなく、ビュコックが死んだときは取り乱してます。
そこで私は考えたのですが、実はヤンはラップが死んだことを喜んでいたのではないでしょうか。
周知のようにヤンとラップは共にジェシカに好意を抱き、ヤンは友情のために譲っています。しかし実はヤンはラップに嫉妬していて、その感情が拭い切れなかったのではないでしょうか。
ですが表面は変わらぬ友情を維持していますので、ヤン自身もラップに対し嫉妬を抱いていることを自覚していなかったのでは。
それがラップが戦死したときに、あのような冷たい反応を引き起こしたのではないでしょうか。
本人は自分がラップに嫉妬していて、死んだことを喜んでいるなんて自覚はありません。
しかし親友が死んだというのにあの冷たい態度は、その死を歓迎する気持ちがなければありえないものです。
そのことに対する無自覚さが、却ってヤンの嫉妬心が根深いものだと想像させるのですが、いかがでしょうか。


No. 1250
ヤン薄情説
投稿者:謎の転校生 1999/5/14 04:38:51
Merkatzさんはじめまして
稚拙で素っ気無いレスで恐縮なのですがヤンがラップの死に薄情に見えるのは作者が銀英伝1巻に詰め込みすぎたことが原因ではないでしょうか。ヤンやラインハルトの紹介、アスターテ、イゼルローン、アムッツリア会戦と舞台がめまぐるしく変わり、3巻以降のキャラクター描写に比べるとどうも1、2巻は世界観を見せることに重点がおかれキャラクターの心情までいちいち描き切ることができなかったのではないでしょうか。
親友のはずのラップ同様ひそかに思いを寄せていたジェシカの死に対してもこれといった悲痛も描かれてませんからこれは作者の省略だと思います。

またヤンの嫉妬に関しても作品中ヤンとフレデリカの話に当然出るべきジェシカの影が全くといっても出てこないところからみても、作者が話の中で男女間のどろどろした愛憎劇を意図的に削っているように思えるんです。ヤン、ミッターマイヤー、ユリアンなどは綺麗な女の子とめでたしめでたしという単純なパターンですしロイエンタールの性に対する屈折もいまいち説得力に欠けるエピソードです。以前に誰かがおっしゃっていたように田中芳樹は女性描写に関しては上手ではありませんし、この手の話はほとんど皆無です。
ですからヤンにはラップを嫉妬する感情は無い、作者によって与えらていない、
というのが僕の見解なのですがいかがでしょうか?


No. 4122
ヴェスターラントを忘れるな
とっしー 2003/05/26 09:34
非常にお久しぶりです。
以前触れたこともあるお題ですが
1. ヤンはヴェスターラントの真相を知っていたのでしょうか。
2. 知っていたのなら、なぜ権力闘争の為には大衆の犠牲も省みない独裁者の打倒をバーミリオンでためらったのでしょう。

また
3. ヴェスターラント事件の真相はどの程度一般に漏洩していたのでしょう。言論統制などがあったとしても噂程度は上がるはずですが。それすら無いとすれば新帝国建国とはつまり軍人と秘密警察の闊歩するエリート支配による専制国家というルドルフ的な帝国再生に過ぎなかったのかも。


No. 4141
Re:ヴェスターラントを忘れるな
八木あつし 2003/05/28 21:18
> 以前触れたこともあるお題ですが
> 1. ヤンはヴェスターラントの真相を知っていたのでしょうか。

知らないと思います。


> 2. 知っていたのなら、なぜ権力闘争の為には大衆の犠牲も省みない独裁者の打倒をバーミリオンでためらったのでしょう。

仮に知っていたとしても、帝国を正しく導けるのはラインハルトしかいないと思ったのでは。


> また
> 3. ヴェスターラント事件の真相はどの程度一般に漏洩していたのでしょう。

帝国軍高官の間では、暗黙の了解だったと思います。ただ、2巻でヴェスターラントの核攻撃部隊から脱出した一兵士が、
「何度でも言いますよ。惑星ヴェスターラントで貴族連合軍が200万人の住民を虐殺するという情報は、ローエングラム侯の耳にとどいていた。侯はそれを無視し、住民を見殺しにしたのです。政治的な宣伝のためにね」新書版2巻 171P
とこれだけ言えるのですから、リップシュタット戦役終結後にヴェスターラント虐殺の真相が怪しいという噂はある程度流れると思います。もっとも信じる、信じないは、どうでもいい気がしますね。皇帝ラインハルトにより生活環境が改善された帝都の市民にとっては、所詮は辺境一惑星の事件と思っているかも。

むしろ私としては新書版2巻168Pに登場した、ラインハルトへ核攻撃を止めるように求めてきたヴェスターラント出身の脱出兵士がどうなったのかが気になります。ある意味、その脱出兵士は、虐殺を政治宣伝に利用したことを証明する生き証人です。オーベルシュタインが、そのような生き証人の兵士の存在を許すはずがないと思います。
それとも新書版9巻42Pで、ラインハルト暗殺を狙ったヴェスターラント出身者が、この脱出兵士だったのかも。まぁ名前すら出てこないキャラクターは、ほとんどが意味もなく死んでいったのが銀英伝でした。


No. 4146
Re:ヴェスターラントを忘れるな
TAC 2003/05/29 00:50
ヴェスターラント事件に関して言えば、たかだか二百万です。
犠牲の数としては大規模会戦一回分程度でしかありません。
だから内戦の早期終結のために見殺しにするのは戦争指揮官として正しいです。
戦争の早期終結によって犠牲を減らすという大義もありますし。
いわゆる「正義を為すための犠牲」という奴です。

ラインハルトの戦争責任を追及するのであれば、
政治的戦略的には無意味に等しい、イゼルローン要塞への攻撃でしょう。
回廊の両側を封鎖してしまえば済む話なのに、何故要塞へ攻撃したか。
結果、戦争指揮官の個人的な感情によって幾多の将兵が犬死にしました。
これこそ正に、戦争責任というもの。

まあ戦争に勝った側の戦争責任なんて、誰も追求しませんけれど。


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