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映画「藁の楯/わらのたて」感想

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映画「藁の楯/わらのたて」観に行ってきました。
木内一裕の同名小説を原作とする、大沢たかお・松嶋菜々子主演のサスペンス・アクション作品。
少女殺しの凶悪犯を、「DEATH NOTE」2部作および「カイジ」シリーズの藤原竜也が演じており、こちらの「人間のクズ」っぷりな迫真の演技にも要注目です。
今作は流血を伴う殺しのシーンが複数回登場しているのですが、しかしその割にはR-15どころかPG-12にすらも全く指定されていなかったりします。
同じような流血シーンがあるという理由でR-15指定された映画も、これまで観賞した過去作品には複数存在しているのですが……。
この手の規制というのは一体何のために存在するのかと、つくづく考えずにはいられない話ですね。

物語は、7歳の少女が用水路で無残な惨殺体となって捨てられているのが発見されるところから始まります。
殺された少女は、日本の政財界を牛耳る大物・蜷川隆興の孫娘。
殺害した容疑者として、かつて8年前に西野めぐみという少女を殺害した罪で逮捕・収監され、その後仮出所していた清丸国秀という男が浮上、全国に指名手配されることになります。

それから数ヶ月後。
一向に見つからない清丸国秀について、日本の新聞や週刊誌などの全面広告に、驚くべき記事が掲載されました。
それは、清丸国秀を殺害した者に、報酬として10億円を支払うというもの。
またWebサイト上にも、蜷川隆興本人が全く同じことを述べている動画を流しているサイトがアップされ、このことは瞬く間に日本全土に知れ渡ることになりました。
蜷川隆興は、カネと権力にモノを言わせ、本来ならば全く不可能であるはずの殺人教唆宣伝を行うことに成功したわけです。
これによって、それまで潜伏していた清丸国秀も、当然のごとく炙り出されることになりました。
それまで清丸国秀を匿っていた男が、10億円もの懸賞金欲しさに清丸国秀を裏切り、清丸国秀の殺害を図ったのです。
清丸国秀はかろうじて男を返り討ちにしたものの、身近な味方にすら裏切られるという状況に危機感を抱いた彼は、それまで潜伏していた福岡県の警察署へ出頭。
事態を重く見た警察は、清丸国秀を福岡から東京へ護送すべく、以下の5人を選出し清丸国秀の警護に当たらせることになります。

警視庁警備部警護課SPから、今作の主人公となる警部補の銘苅一基と巡査部長の白岩篤子。
警視庁捜査一課から、警部補の奥村武と巡査部長の神箸正貴。
そして、護送元である福岡県警から、巡査部長の関谷賢示。

しかし、彼らが任務に当たる前から、既に事態は大きく動き出していました。
福岡県警の留置所?で収監されていた清丸国秀が、地元の警察官によって殺害されかけるという事件が、任務開始前の時点で早くも発生していたのです。
また、負傷した清丸国秀の治療に当たっていた病院では、女性看護師が致死性の薬を注入して清丸国秀を殺害すべく図り、その場で清丸国秀と対面していた銘苅一基によって阻止される事件が発生。
その上、福岡空港から羽田空港まで飛行機を使って護送するという当初の方針は、福岡空港の整備士が飛行機を墜落させるべく画策していたことが露見して逮捕されるという事件の発生で、いともあっさり中止を余儀なくされることになってしまいます。
さらには、そうやって清丸国秀の殺人未遂を行い逮捕された人間に対しても、蜷川隆興側はWebサイト上で1億円の契約を行うと表明し、「殺害に失敗しても1億円!」と日本国民をさらに煽りたてる始末。
警察、そして5人の警護者達は、日本国民全てが敵、身内ですら全く信用できないという異常な状況の中、48時間以内に清丸国秀を東京へ護送すべく、四苦八苦・七転八倒の苦しい任務を続けていくこととなるのですが……。

映画「藁の楯/わらのたて」で大々的に行われている殺人教唆は、非常によく考えられたユニークな内容ですね。
この殺人教唆および10億円の懸賞金のかけ方なのですが、これがまた何とも微妙な条件なんですよね。
懸賞金が与えられる条件は以下の2通りなのですが↓

1.清丸国秀に対する殺人罪、もしくは傷害致死で有罪判決を受けた者(複数可)。
2.国家の許可をもって清丸国秀を殺害した者。

これは、一般の国民を清丸国秀殺害に走らせるには確かに充分過ぎるほどに魅力的な条件なのですが、同時に「その道のプロ」達を遠ざけてしまう内容にもなっているのです。
たとえば、テレビドラマ&映画の「SP」シリーズで猛威を振るっていたリバプール・クリーニングのような「自殺や事故死を装ってターゲットを殺害する暗殺者」のごときタイプや、ゴルゴ13のような「暗殺のプロ」などは、この条件では清丸国秀の殺害に全く動くことができません。
彼らは立場的に、暗殺者としての自分達の正体が露見するような事態は何が何でも避けなければならないため、警察に出頭し裁判を受けることが前提のこの条件では、如何に報酬が高くても全く割に合わないのです。
それどころか、清丸国秀殺害で逮捕されたことを発端として、様々な余罪が追及されるリスクも多々あり、またそうなれば当然死刑判決は免れ得ないでしょう。
いや死刑判決どころか、場合によっては自分達の秘密が露見されることを恐れる個人や組織によって雇われた同業の暗殺者達によって生命を狙われる、などという事態にすらも至りかねません。
また暗殺者に限らず、警察のガサ入れによって余罪が追及されると、場合によっては破滅の危機に直面しかねない立場の個人や組織、たとえば指定暴力団やアルカーイダ等のテロ団体の類も同様ですね。
この手の組織では、末端の構成員達が独自に動く、あるいは独自に動いているように見せかけるということはあっても、組織としての関与については、すくなくとも表面的には全面的に否定する方向へ走ることになるでしょうね。
作中でも、明らかにヤクザの構成員とおぼしき人間達が、新幹線内で5人の警護者達と派手な銃撃戦を展開していましたが、彼らが所属する大元の組織としては、自分達にまで捜査の手が及んでは当然困ったことになるわけですから「奴らは独自の判断で勝手に暴走しただけであり、自分達は全く何の指示も命令も与えておらず関係もない」と知らぬ存ぜぬな反応を繰り返すしかないわけです。
コストパフォーマンスの観点から言えば、プロの殺し屋を高額で雇って人知れず清丸国秀を探索・殺害させた方が、口止め料を含めてさえもはるかに安上がりであるはずなのですが、蜷川隆興の殺人教唆は、皮肉にも彼らを遠ざけてしまう結果をもたらしてしまっているのです。
あくまでも一般人を使って清丸国秀を殺害させることに、蜷川隆興自身がこだわってでもいたのかもしれませんが、「目的の達成」という観点から考えれば何とも非効率極まりないことをやっているよなぁ、と。

一方で、10億円の懸賞金に突き動かされ、次々と清丸国秀殺害に動く人間と、彼を死守する人間達の極限状態な心理と葛藤を、今作は非常に上手く表現していますね。
前述のように、蜷川隆興の殺人教唆は「プロの殺し屋や闇の世界の人間達」を最初から排除しているが故に、清丸国秀を殺害せんとする人達も、元々は善良な性格の人間だったケースが多かったりするんですよね。
彼らはあくまでも「金に困って&追い詰められて」犯行に走ったというエピソードが作中でも語られており、カネが人を狂わせるという実例をまざまざと見せつけてくれます。
5人の警護者達も「実は誰かが裏切っているのではないか?」と互いに疑心暗鬼の目を向ける始末ですし、実際、5人の中に裏切り者は立派に存在していたのでした。
「誰も信用などできない」ということの怖さを、これほどまでに前面に出している作品というのも、そうそうあるものではないですね。
そして、それでも清丸国秀を護送するという任務の意義を致命的なレベルで揺るがしてくれるのが、当の清丸国秀本人だったりするのが何とも言えないところです。
彼は、初犯?で殺害した西野めぐみの父親を嘲弄する発言をやらかした上、銘苅一基と白岩篤子がちょっと目を離した隙を突いて逃亡し、たまたま目撃した少女を相手にまたしても惨殺行為に及ぼうとしています。
挙句の果てには、白岩篤子の不意を突いて(二度も不意を突かれる白岩篤子も正直どうかとは思いましたが)後方から襲撃し、拳銃を奪って射殺までしてしまう始末。
その理由がまた振るっていて、何と「彼女がオバサン臭いから」などというしょうもないシロモノでしかないんですよね。
物語のラストで死刑判決を受けた際も、「どうせ死刑になるのならば、もっと殺しておけば良かった」などとほざく始末ですし、清丸国秀の「人間のクズ」っぷりはなかなかに堂に入ったものがありましたね。
確かに、作中のごとき死にもの狂いな警護をしてまで守る価値が清丸国秀にはあるのか、という問いには大きな重みがあります。
その問いに何の疑問も抱くことなく正面切って「YES」と答えられる人間は、相当に人間が出来ているのでなければ、よほどのバカか詐欺師の類くらいなものでしょうし。
しかし、国家的な公務に従事する人間は、それでも建前上は「YES」と答えなければならない。
そこが、今作が問う命題の重さと社会的矛盾でもあるのですが。

映画「藁の楯/わらのたて」はその構成上、先の展開もなかなか読めず、最初から最後まで緊迫した状況が続きます。
アクションシーンもあり人間ドラマもあり、万人にオススメできる作品です。


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