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映画「夢売るふたり」感想

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映画「夢売るふたり」観に行ってきました。
結婚詐欺をテーマに男女間の複雑な心情や葛藤などを描いた、阿部サダヲと松たか子の2人が夫婦として主演を担う人間ドラマ作品。
作中では「本番」さながらのセックスシーンが3回ほど出てくることもあり、今作は当然のことながらR-15指定されています。
作中で披露される本番さながらのセックスシーンは、同じR-15指定でかなり印象に残った映画「ドラゴン・タトゥーの女」にも匹敵するものがありますね。

東京の片隅で小さな飲み屋兼料理屋を営む一組の夫婦がいました。
板前としての確かな腕を持ち、仕事についてそれなりのこだわりを持つ夫の貫也と、店の従業員として夫を支える妻の里子。
2人は5年にわたって店を営んでおり、常連客も獲得してそれなりの繁盛を見せていました。
ところがある日の店の営業中、多忙な店内を回すために貫也がわずかに目を離した隙に、厨房にある焼き鳥を焼くための機器が突如火を噴き、店は客の阿鼻叫喚の地獄絵図と共に炎に包まれてしまいます。
突如、しかも一夜にして店を失ってしまい、やる気をなくしてしまった貫也は、「もう一度店を出せば良いじゃない」という里子の前向きな励ましにも耳を貸さず、毎日酒浸りの日々を送ることに。
里子はそれでも夫を支えるため、近所のラーメン屋で働きに出て生計の足しにしようと奮闘します。

ここまでは「ダメ夫を健気に支える良妻」という、美しくもある意味単純な構図だったのですが、そんな日々が続いたある日、貫也が店の常連客のひとりだった玲子と道端で偶然出会ったことから、全ての運命が狂い出します。
玲子はとある金持ちの資産家・俊作と不倫の関係にあったのですが、その資産家が突然の事故で危篤状態に陥り、俊作の弟で兄の不倫事情を知る明浩から見舞いを拒否された上で「手切れ金」として百万円の包みを受け取らされていました。
2人は意気投合して酒を飲み合い、互いの境遇を話し合うことになります。
その境遇があまりにもみじめだと嘆く玲子と、彼女を励ます貫也は、しかし酒の勢いもあってか、そのまま抱き合い、風呂場でセックス行為に興じてしまいます。
ことが終わった後、玲子は自分が受け取らされた手切れ金百万円の包みをそのまま貫也にわたし、店の開店資金に使ってほしいと申し出てきます。
最初は受け取りを拒否する貫也でしたが、玲子のゴリ押しと自身の金銭事情の問題もあり、「必ず返すから」との条件付きでカネを受け取ることになります。
しかし、とにもかくにも突然大金が転がり込んできたことは事実で、貫也はすぐさま妻の里子にその事実を報告すべく走り出すのでした。
家に帰って早々に妻を抱きしめ、浮気の事実は隠しつつ「知り合いが金を貸してくれた」と報告する貫也。
ところが里子はしばらく戸惑っていたものの、抱きしめられた夫の服に染みついていた「洗濯された匂い」から、貫也が他の女と寝ていたことをあっさりと見破ってしまいます。
さらに、件の百万円の包みの中には玲子宛ての手紙も同梱されており、浮気相手の正体や受け取り過程までもが露見してしまうことに。
動かぬ証拠を突きつけられ逆ギレした貫也は風呂場へ逃亡。
一方、百万円と共に放置された形の里子は、夫が受け取った百万円を火が付いたコンロに突っ込み燃やそうとします。
しかし、なかなか燃えない札束をしばらく見つめていた里子は、突然夫がいる風呂場へと向かい、夫へ向かって札束を投げつけ癇癪を爆発させるのでした。
しかし、自身の変貌に震える夫を見た里子は、夫に女性をたらし込む才覚があることを見抜き、これを利用することを思いつきます。
これがきっかけとなり、貫也と里子の2人は、女性相手に結婚をちらつかせカネを騙し取る結婚詐欺の道を歩み始めることになるのですが……。

映画「夢売るふたり」では、夫の浮気が発覚した後の妻の変貌ぶりが凄まじかったですね。それまでは「ダメ夫を支える良き妻」的な描写だった里子が、夫の浮気が発覚するや、札束は燃やそうとするわ、夫を足蹴にするわ、挙句の果てには結婚詐欺まで実行させるわ……。
それまでの良妻ぶりとは打って変わって冷酷な態度で夫に接する里子の姿は、「今までの善良キャラは一体何だったのか?」とすら考えてしまうほどに強烈なインパクトを残すものではありました(苦笑)。
それまでは里子に対して横柄に振る舞っていた貫也が、里子に怯えるようになってすらいましたし。
物語中盤では、女子ウェイトリフティングの女性選手のひとみを貫也が結婚詐欺のターゲットに選ぼうとした際に、相手を詐欺にかけることよりも「あの身体で【セックスの】相手をするのは、貫也には身体的な負担が重いのでは?」などという、ある意味「機械的」な心配をして貫也を呆れさせていたりもします。
人当たりが良かった序盤やパート関係の描写とは対極とすら言って良い態度で、正直「人はこんなにも変わってしまうものなのか」と思わずにはいられなかったですね。
ただ、その里子の「本性」は、当の里子自身も実はそれまで全く意識していないもので、夫の浮気をきっかけに一挙に表に出てきた、というのが実情だったのでしょうけど。
里子にとって「夫が浮気をした」という事実はそれほどまでに重いものだった、ということなのでしょう。

ただ、「夫の浮気」によって妻が夫に愛想を尽かした、という単純な構図にもならないのが今作の魅力のひとつですね。
確かに夫の浮気発覚直後は怒りを爆発させた里子ではありましたが、その後自身の発案で他の女性達を結婚詐欺にかける際には、2人揃って仲良く笑い合っていたりする描写も存在します。
前述のウェイトリフティング選手絡みにおける里子の「心配」も、夫である貫也を気遣ったものではあったわけですし。
浮気の事実が発覚した後もなお、彼女が夫を愛し、心から献身的に支えようとしていたのは疑いの余地がないでしょう。
ただ結婚詐欺絡みでは、その里子の「夫に対する愛」こそが、結果的に夫を破滅に追い込んでしまっていた感も多々あります。
彼女は夫に結婚詐欺を行うことを自分から命じてすらいるのに、その夫が結婚詐欺の一環として他の女性と親しくなったりセックスをしたりする関係になることを嫌悪していたりするんですよね。
物語終盤付近になると、彼女は夫が結婚詐欺で積極的にカネを得ようとする行為に賛同しなくなっていき、ついには包丁を持ち出して夫だか相手の女性だかを刺し殺そうと発作的に行動を起こしてすらいます。
それが結果的には、夫を全く別の形で破滅に追い込むこととなってしまうのですが……。
ただ、一番最初の「自分の関知しないところで夫が浮気していた」という事実に怒り狂うのは当然であるにしても、それ以降の夫の(里子以外との)女性関係は全て「自分が夫に結婚詐欺を命じた結果」によるものなのに、被害者はともかく、当の里子がそれに癇癪を起こすというのは、どうにも理屈的には理解し難いものがありますね。
夫の貫也だって、自分の夢と妻の里子のために結婚詐欺という危険な道を突き進んでいたわけで、それで命令権者の妻から怒りを買わなければならないというのも、何とも理不尽な話ではあります。
女性は理屈やカネだけを欲しているのでなければ、それだけで動いているわけでもない、という概念を表現する描写としてはなかなかに秀逸なものではありましたが。

里子は貫也に自分を見て欲しかった、自分を愛して欲しかっただけだったのかもしれませんね。
貫也は貫也で、妻に対しては反発もあったにせよ、愛情や思いやりもあったであろうことは疑いようもなかったのに、特に物語後半では結婚詐欺に慣れたこともあってか、妻に対してやたらとビジネスライク的な接し方に終始していたりしますし。
貫也の妻に対する観察眼もそれなりに鋭いものがあったものの、もう少し妻の心情や葛藤について敏感に察し配慮さえしていれば、あの破滅は免れ得たかもしれないのですけどねぇ(T_T)。

結婚詐欺の主犯である貫也と里子のやり取り以外にも、結婚詐欺の被害者達の心情や葛藤なども良く描かれており、メロドラマ系ストーリーとしてはそれなりの見応えがある映画と言えますね。
その手の作品が好きな方にはオススメの一品です。


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