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ネット規制を伴うコンピュータ監視法案を閣議決定した民主党

民主党がネット上の言論規制を強化する強硬手段に打って出ています。
菅直人ことカンガンス内閣は、捜査当局が裁判所の捜査令状なしでインターネットのプロバイダに特定利用者の通信記録保全を要請できるコンピュータ監視法案(正式名は「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」)を閣議決定しています↓

http://megalodon.jp/2011-0326-1139-25/www.pjnews.net/news/909/20110317_5
http://megalodon.jp/2011-0411-2217-23/zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20110411-00000017-pseven-pol

ただ、上2つのソース元情報では「震災後に」閣議決定されたかのようなニュアンスですが、実際には「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されたのは2011年3月11日の午前中なのだそうで↓

http://www.kantei.go.jp/jp/kakugi/2011/kakugi-2011031101.html

【震災前に】閣議決定されたコンピュータ監視法案は今後国会に提出され、審議される流れになります。

ただいずれにせよ、コンピュータ監視法案が問題だらけの法案である事実に変わりはないですね。
これは東京都青少年健全育成条例にも当てはまることなのですが、この手の規制は運用者の恣意的な判断ひとつで、本来規制されるべきではないはずのものまでもが規制対象になりかねないという問題があります。
しかも、これを閣議決定したのは「あの」民主党です。
もし万が一法案が国会を通過してしまおうものならば、自身に対する批判的な言動を封殺することを目的に、なりふり構わぬネット規制に打って出る可能性も否定できません。
組織犯罪に使用用途が限定される等様々な制約がある上に国会報告まで義務づけられている通信傍受法と比較しても、運用範囲が広すぎ&制約が少ないために濫用される恐れがあり、その点でも極めて危険な法案であると言えます。
民主党が法案の問題点を何も知らないで閣議決定したのであれば無能のそしりは免れませんし、知った上での所業だったのであればこの上ない悪党です。
原発問題も被災者救援もグダグダな対応に終始している民主党を叩き潰すと共に、震災のドサクサでこの問題法案が国会を通過しないよう、注視していく必要があるのではないでしょうか。

それにしても、東京都青少年健全育成条例といい、今回のコンピュータ監視法案といい、最近思想の左右を問わず言論統制に走ろうとする動きが多すぎて、何とも嘆かわしい限りですね。
言論の自由は責任と表裏一体であるべきで「言い逃げ」の類は確かに糾弾されなければならないでしょうが、それはあくまでも「言論」によって行われるべきものなのであって、その発言責任を完遂させるためにも「発言・表現の自由」自体は万人に保証されなければならないのです。
もちろん、そこにはデマやいかがわしい表現が流されるといったリスクも当然伴いますが、だからと言ってその大元である「発言・表現の自由」自体を規制してしまったら元も子もありません。
「発言・表現の自由」というのは【リスクと発言責任をも含めての自由】なのであって、リスクだけを事前に取り除くことなど不可能なのです。
リスクを犯して発言する自由、それこそが何物にも替え難い宝であるという基本中の基本に、誰もが一度立ち返ってみる必要があるのではないかと思えてならないのですけどね。


コメント一覧

多摩武蔵守 (04/12 21:55) 編集・削除

 法務省ホームページに改正案の全文が載っています。
 http://www.moj.go.jp/content/000072565.htm

 今回の件に該当するのはこの部分でしょうか?
「(刑事訴訟法)第百九十七条に次の三項を加える。
   検察官、検察事務官又は司法警察員は、差押え又は記録命令付差押えをするため必要があるときは、電気通信を行うための設備を他人の通信の用に供する事業を営む者又は自己の業務のために不特定若しくは多数の者の通信を媒介することのできる電気通信を行うための設備を設置している者に対し、その業務上記録している電気通信の送信元、送信先、通信日時その他の通信履歴の電磁的記録のうち必要なものを特定し、三十日を超えない期間を定めて、これを消去しないよう、書面で求めることができる。この場合において、当該電磁的記録について差押え又は記録命令付差押えをする必要がないと認めるに至つたときは、当該求めを取り消さなければならない。
 前項の規定により消去しないよう求める期間については、特に必要があるときは、三十日を超えない範囲内で延長することができる。ただし、消去しないよう求める期間は、通じて六十日を超えることができない。
 第二項又は第三項の規定による求めを行う場合において、必要があるときは、みだりにこれらに関する事項を漏らさないよう求めることができる。」

 これは別に、言論統制とは言えないと考えます。
 まず現行の刑事訴訟法197条は、
「第百九十七条  捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる。但し、強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない。
2  捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。」
 と定められています。また改正案に出てくる「差押」という言葉ですが、刑事訴訟法上の「差押」とは、
「裁判所は、必要があるときは、証拠物又は没収すべき物と思料するものを差し押えることができる。但し、特別の定のある場合は、この限りでない。
2  裁判所は、差し押えるべき物を指定し、所有者、所持者又は保管者にその物の提出を命ずることができる。」(刑事訴訟法第99条)と定められていますから、結局裁判所が動くことには変わりありません。
 やろうと思えば現行の刑法・刑事訴訟法でも微罪や別件逮捕を駆使して「言論弾圧」はできます。しかしいくら民主党でもそんなことはしていません。
 またそんなことをしたら野党やマスコミ、誰より一般国民が黙っていないでしょう。それに自衛隊に対する「監視」すらバレバレになっていたほどお粗末な民主党に、そんな能力があるかというと、リアリティを持って受け入れられる話ではないと思います。
 私も民主党は大嫌いですが、法律の危険性は客観的に評価されなければならないと考えます。

多摩武蔵守 (04/12 22:59) 編集・削除

 上記のコメントに少し補足します。
 刑事訴訟法で証拠を集めるのは刑法に定める犯罪が行われたことを立証するためですが、ネットに関連する犯罪はどのようなものが考えられるでしょうか。
 まず考えられるのは名誉毀損罪・侮辱罪(刑法232条、230条・231条)ですが、これは親告罪なので、被害者からの申し立てがなければ告訴されることはありません。
 また脅迫罪(第222条)は、対象となる人物が被害者本人(同条第1項)か、「親族」(第2項)に限られます。
 しかも刑法では挙証責任は警察・検察の側に課せられるので、誰が誰を脅迫したのかを具体的に警察が立証しなければなりません。それができるかどうか怪しいネット上のあやふやな書き込みに裁判所が差押命令をどこまで出すかは疑問です。
 また刑法や刑罰法規は額面通り受け取ると、私達の生活全てが対象となってしまいます。たとえばファミレスのコンセントを勝手に使って携帯電話を充電したら、文字の上だけで言えば窃盗罪になります。
 しかし実際にはその程度で逮捕されたり、刑事告訴されることはありません。刑法は一般市民を片っ端から捕まえるための法律ではないからです。

冒険風ライダー(管理人) (04/13 02:05) 編集・削除

> また改正案に出てくる「差押」という言葉ですが、刑事訴訟法上の「差押」とは、
> 「裁判所は、必要があるときは、証拠物又は没収すべき物と思料するものを差し押えることができる。但し、特別の定のある場合は、この限りでない。
> 2  裁判所は、差し押えるべき物を指定し、所有者、所持者又は保管者にその物の提出を命ずることができる。」(刑事訴訟法第99条)と定められていますから、結局裁判所が動くことには変わりありません。

「差押」のための命令が【事前に】できる、という点がまさに問題なのではありませんか?
この法案が定める保全措置というのは、プロバイダ側やサイトを管理する企業などにとっては事実上の強制捜査が行われるも同然のことなのです。
保全措置から最大60日間は、個人のプライバシーも含めた情報が警察に丸裸で全て晒されることになりますし、そこから個人の弱みを捜査当局に握られた挙句、非合法的な脅迫や取引などが行われるといった形で悪用されないとも限りません。
それが「捜査の最終段階」ではなく「捜査の初期・中期の段階」で、しかも「特定対象」ではなく「無差別」に、さらには裁判所のチェックなしで好き勝手に行えるというのは大いに問題でしょう。
民主党ならやりかねない、というのも充分な懸念事項なのですが、こういったことが法的に行うことが可能になる、ということ自体が実は一番問題なのです。

> 刑事訴訟法で証拠を集めるのは刑法に定める犯罪が行われたことを立証するためですが、ネットに関連する犯罪はどのようなものが考えられるでしょうか。

例のコンピュータ監視法案では、ウィルスを作成・所持を罰する「ウィルス作成罪(不正指令電磁的記録に関する罪)」という規定が、刑法の一部として新規に創設されます。

第十九章の二 不正指令電磁的記録に関する罪
(不正指令電磁的記録作成等)
第百六十八条の二 正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録
二 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録

(不正指令電磁的記録取得等)
第百六十八条の三 正当な理由がないのに、前条第一項の目的で、同項各号に掲げる電磁的記録その他の記録を取得し、又は保管した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

第百七十五条中「図画」の下に「、電磁的記録に係る記録媒体」を加え、「、販売し」を削り、「又は二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処する」を「若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する」に改め、同条後段を次のように改める。
電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
第百七十五条に次の一項を加える。
2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

しかし、コンピュータウィルスの感染に関しては、パソコン所有者が全く知らないうちに取得され、かつ他のパソコンに感染を拡大している、というケースも充分にありますよね。
この法律では、それも「罪」として裁かれる危険性があります。
これまで「ウィルス作成罪」が制定されなかったのもそのためなのです。
さらに「わいせつな電磁的記録」を「取得し、又は保管した」場合であっても罪に問われるとなれば、これはもう冤罪や表現規制を生みかねないシロモノとしか評しようがないでしょう。
そもそも、ここで挙げられている様々な「電磁的記録」「有償」の定義そのものも非常に曖昧で、いくらでも恣意的運用が可能ですし(エラープログラムやエロ画像・動画の類なども「所持した」だけで処罰の対象になりかねません)。
気に入らない言動をする人間に対し、コンピュータウィルスやわいせつメール等を送信し、「あいつは怪しいぞ」と称してコンピュータ監視法案を発動させ、「犯罪証拠」を握って逮捕に踏み切る。
個人のプライバシー暴露と併せ、こういう自作自演の類も構造的に可能になるわけですから、充分に問題であると言えるのではないでしょうか?

http://www.tanautsu.net/

多摩武蔵守 (04/14 01:00) 編集・削除

> 「差押」のための命令が【事前に】できる、という点がまさに問題なのではありませんか?
 それは「差押え又は記録命令付差押えをするため必要があるとき」が条件で、かつ「必要がないと認めるに至つたときは、当該求めを取り消さなければならない」ので、【「特定対象」ではなく「無差別」に】ということはないと考えられます。。
 また事件と無関係の情報まで警察の目にさらされるリスクは確かにありますし、差押えの際も広く対象を規定しがちです。しかしそれは「証拠物件については、警察官が捜索・差押の現場に行かないと、厳密な特定ができないことが多い」ためで、一定時間が経過すると古いものから順に消えてしまうタイプの電磁的記録ならなおさらでしょう。
 また裁判所が「被疑事実との関連性がないので差押の必要はない」と判断して顧客データの差押処分を取り消した裁判例がありますので、警察の調べにも一定の歯止めが掛けられていますし、調べを受ける側も弁護士を呼んで交渉したり、裁判所に準抗告をするなど、自らの権利を守る道は開かれています。

(参考)
 http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20090708/333463/

> そこから個人の弱みを捜査当局に握られた挙句~限りません。
 法的には起こりえないことは上記で説明しましたが、実際に適用される際のリスクが大いにあるとするためには、警察が他のことでも微罪や別件逮捕を駆使するなど、権力を用いて市民を弾圧するという事例がなければなりません。
 たとえば、実際の住所と住民票の記載が異なる→電磁的公正証書原本不実記録罪の疑いで逮捕する、ホテルに宿泊する際に偽名を用いた→有印私文書偽造罪の疑いで逮捕する、子供の入浴写真を撮影した→児童ポルノ法製造罪の疑いで逮捕する、などです。
 しかし、このようなことがあちこちで行われているでしょうか。また「盗聴法」と非難された通信傍受法も違法な通信傍受は確認されていません。それとも警察は国会には虚偽の報告をし、こっそり盗聴しているとでも?

> コンピュータウィルスの感染に関しては、~それも「罪」として裁かれる危険性があります。
 いいえ。刑法では故意でない行為は罰しません。したがって「パソコン所有者が全く知らないうちに取得し、感染を拡大」は処罰の対象にはなりません。それに疑うに足る理由がなければ、裁判所は捜査や差押えの令状を出しません。

> 「電磁的記録」「有償」の定義そのものも非常に曖昧
「電磁的記録」は、「電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるもの」(刑法第7条の2)を言います。
 また明治時代の立法とはいえ、刑法175条は「わいせつな」しか定義がありませんし、他にも名誉毀損罪・侮辱罪は曖昧です。それに比べると今回のウィルス作成罪は、かなり厳密な定義をしていると評価していいと思います。
「有償」は「有料」と解釈していいと思います。ですので意図しない所持はここでも排除されます。目的があるかどうかは警察・検察が立証しなければなりません。
 ちなみに内閣提出法案は内閣法制局の審査を通らないと国会に出せませんので、立法技術や合憲性などの面で最低限の審査はされています。
 何より刑法175条にせよ、名誉毀損罪・侮辱罪にせよ、他にも定義が曖昧とよく批判される児童ポルノにせよ、概ね違法なものとそうでないものを見分けることはできてきたことも考えるべきと思います。 

> コンピュータウィルスやわいせつメール等を送信し、~「犯罪証拠」を握って逮捕に踏み切る。
 これも故意の行為ではないので、処罰の対象にはなりません。
 そんなことをしたら野党やマスコミ、何より国民が黙っていないでしょう。

冒険風ライダー(管理人) (04/14 19:36) 編集・削除

> それは「差押え又は記録命令付差押えをするため必要があるとき」が条件で、かつ「必要がないと認めるに至つたときは、当該求めを取り消さなければならない」ので、【「特定対象」ではなく「無差別」に】ということはないと考えられます。

それは明らかに裁判所のチェックが入っていませんよね。
前の投稿でも述べたように「最初に差押を前提とした保全要請を行い、情報の閲覧を行った後、差押の必要なしとして要請取り消しを行う」というケースの場合、最大60日間、不特定多数の個人のプライバシーも含めた情報が丸裸で、しかも裁判所のチェックを経ることなく警察に晒されることになるのですが。
令状を取った上でそういう捜査が行われる場合であれば裁判所のチェックが入りますからそういう事態を事前に防止することもできるのですが、令状が不要となるコンピュータ監視法案では、行政単独で事実上の無差別強制捜査が行えるようになるのです。
そして、そういったところから得られた個人情報を警察が悪用することなど全くない、という保証なんてどこにもないでしょう。
そもそも、令状が不要でそういうことが行えること自体、「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない」と規定されている日本国憲法35条に違反している疑いすらあります。
警察が暴走した場合のことを考えれば、相当に問題のある法案だと思いますけどね。

> 法的には起こりえないことは上記で説明しましたが、実際に適用される際のリスクが大いにあるとするためには、警察が他のことでも微罪や別件逮捕を駆使するなど、権力を用いて市民を弾圧するという事例がなければなりません。

警察が捜査過程で微罪や別件逮捕を使い、本命の事件の捜査に利用した事例は結構あるのですが。
オウム真理教の地下鉄サリン事件の際には、それこそどうでも良いレベルの微罪や別件逮捕が頻発していましたし、最近でも、覚醒剤取締法違反を摘発するために「求人情報誌を持っていたのに、職業に就く意思がないままうろついた軽犯罪法違反(浮浪)」で別件逮捕が行われ、しかも一審では有罪判決まで下った(二審で逆転無罪)という事例もありますし。

http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009030301000794.html

そもそも、警察の冤罪事件というのは今話題の原発問題と同じで「起こったら終わり」という要素も色濃く存在します。
そのような警察の暴走を防ぐためにも、別件逮捕が合法的に行われかねないと判断される法律は、可能な限り事前に取り除く必要が十二分にあるのではないでしょうか。

> いいえ。刑法では故意でない行為は罰しません。
> これも故意の行為ではないので、処罰の対象にはなりません。

刑法は、誤りや失敗による「過失」についても処罰する規定が存在します。
交通死亡事故などはほとんどが過失で起こるものですが、故意性がなくても自動車運転過失致死傷罪で処罰されますし。
「不正指令電磁的記録に関する罪」についても、自分が知らないうちにウィルスをバラ撒いて甚大な被害を相手に与えた、という事態は容易に想定できますし、そういうケースは現行でも過失責任が問われるだけでなく、民事裁判で賠償が請求されることもあります。
これが刑法にも適用される、という事態は充分に考えられることですし、実際、「不正指令電磁的記録に関する罪」の条文には故意と過失を区分する文言が存在しません。
ウィルスを故意性なく所持していたとしても過失で処罰される危険性がある以上、私が挙げた事例は「実際に起こりえる問題」なのです。

また、裁判の際に故意か過失かを立証すること自体、実はかなり難易度の高い問題だったりします。
人間の意思というのは極めて主観的なものであって、それを客観的に立証するというのは相当なまでに困難なのですから。
裁判の場でも、原告と被告が故意性を巡って争うという事例はいくらでもありますし、その結果、検察側の主張が全面的に認められて有罪とされた冤罪事件もあったりしますよね。
よく話題になる痴漢冤罪の問題や、前の段で引用していた「求人情報誌を持っていたのに、職業に就く意思がないままうろついた軽犯罪法違反(浮浪)」なんてその典型例ですし。
故意か過失かの証明が極めて難しく裁判毎に判断も分かれる現実を鑑みれば、主観的に「故意ではないから」と安心できるものではないでしょう。
検察と裁判所がそう考えてくれるとは限らないのですから。

> また明治時代の立法とはいえ、刑法175条は「わいせつな」しか定義がありませんし、他にも名誉毀損罪・侮辱罪は曖昧です。それに比べると今回のウィルス作成罪は、かなり厳密な定義をしていると評価していいと思います。

「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」というのは、コンピュータウィルスだけでなくプログラムエラーやバグなども含まれかねないシロモノなのですが、これのどこが厳密な定義なのですか?
もちろん、プログラムエラーやバグで多大な被害が出る場合もありますし、やはり現行でも過失責任で賠償請求が行われることもありますから、刑事事件としても故意性など関わりなく罪に問われる事態も当然ありえます。
プログラムエラーやバグで摘発されるなんてことがあったら、IT業界は壊滅しますよ。
そればかりか、バグがあることが確実なフリーソフトやシェアウェア、さらには旧バージョンのWindowsやLinuxのパソコンを持っているというだけでも罪に問われる事態も起こりえるかもしれません。
セキュリティや安定動作の観点から外部からの通信を遮断している社内ネットワークサーバなどでは、旧バージョンのOSソフトがあえてそのまま使われていたりしますし。
法が定める定義が厳密とはとても言えない以上、別件逮捕や微罪による逮捕などの警察権の濫用が行われる懸念は否定できないのです。

http://www.tanautsu.net/

多摩武蔵守 (04/14 21:27) 編集・削除

> 不特定多数の個人のプライバシーも含めた~警察に晒されることになる それなら、差押え命令に基づく 証拠収集でもそのリスクはあるでしょう。裁判所から「返せ」と言われても、メモやコピーを隠れて取れば誰にもわかりませんし、それで脅迫することは可能です。しかしそのような事態が起きているでしょうか。
 ばれたらマスコミが、それこそ鬼の首でも取ったように警察を叩くでしょう。割に合わない話です。
 それに改めて考えてみたら、後述するように、その可能性は法的にも低いと考えられます。

> 警察が暴走した場合のことを考えれば
 警察が暴走したら、わざわざ法律を改正しなくても何でもやらかします。私があげたような事例や、微罪とか別件逮捕とか。そのような議論では、刑法・刑事訴訟法そのものが成り立たなくなります。

> 日本国憲法35条に違反している疑いすらあります。
 この改正案での保全は「消さないで取っておいてくれ」と要求するだけのもので、命令ではありません。
 また「内容を確かめてから保全を求める」との前提を置いているようですが、見ようと思ったら捜査・差押え令状が必要で、「内容を確かめてから保全を求める」ことはできません。したがってこの改正案は、「証拠があるかも知れないから、消さずに取っ手おいてくれ」ぐらいの意味だと考えられます。
 また保全は書面で求めるので、「不意打ち」されることはありません。
 なお前回も述べたように内閣提出法案は内閣法制局の審査を通らないと国会に出せないので、憲法上の問題はクリアした上で出されていると考えられます。

> 警察が捜査過程で微罪や別件逮捕を使い、本命の事件の捜査に利用した事例は結構ある
 挙げられた事例のどこが一般市民に対する弾圧なのでしょうか? 冒険風ライダーさんは「個人の弱みを捜査当局に握られ」るとか、「気に入らない言動をする人間に対し、~逮捕に踏み切る」とか、一般市民に対する弾圧を問題にしていたと認識しています。
 地下鉄サリン事件後に用いられた手法ということは、その関係者を逮捕するために用いていたのですし、覚醒剤取締法違反を摘発するためならば、一般市民の弾圧を目的としているとはとても言えません。

> 刑法は、誤りや失敗による「過失」についても処罰する規定が存在します。
 過失罪の場合はその旨が明記されますが、今回のウィルス作成罪には過失罪の規定はありません。したがって、意図しないのにウィルスを拡散させてしまった人が罪に問われることはありません。

> 裁判の際に故意か過失かを立証すること自体、実はかなり難易度の高い問題だったりします。
> 人間の意思というのは極めて主観的~客観的に立証するというのは相当なまでに困難
 故意の立証が難しい事件は確かに存在します。
 しかし今回の場合で言えば、ウイルスが入り込み、プログラムに従った活動をするのなら、故意と過失の判別は簡単でしょう。通信ログを分析すれば感染経路はわかるでしょうし(だから保全要求の追加が改正案でセットになっているのでしょう)、ウィルスの分析やデータの蓄積は、アンチウィルスソフトの会社が日々行っているのですから、なおさらです。

> よく話題になる痴漢冤罪の問題~冤罪事件もあったりしますよね。
 
「冤罪が生じるのは手続法‐すなわちどのように制度を運用するかについての法‐の問題であり、実体法‐すなわちこの文脈でいえば何を罪とするかについての法‐の問題ではありません。

そもそもここで例に挙げられている痴漢冤罪問題にしても、では世の中に強制わいせつ罪を廃止しろとか、強制わいせつ罪の対象から痴漢を除けとか、そのような主張をされている人がいるのでしょうか? 世の中広いですからゼロではないかもしれませんが、ほとんどは冤罪をできるだけ少なくするよう運用をきちんとしろという主張でしょう。冤罪のリスクがあるから罪とすべきでないというのは、痴漢冤罪でいえばこの「強制わいせつ罪を廃止しろとか、強制わいせつ罪の対象から痴漢を除けとか、そのような主張」に他なりません。痴漢冤罪問題でそうした主張が主流ではない以上、痴漢冤罪問題を引き合いに出すのは牽強付会でしょう。」

(上記は以下のブログより引用)
 http://d.hatena.ne.jp/bewaad/20080317/p1

> プログラムエラーやバグなども含まれかねないシロモノ~どこが厳密な定義なのですか?
 プログラムエラーやバグは立法趣旨から言えば含まれませんから、それが摘発される可能性は低いでしょう。
 法文は言葉の上での解釈だけでなく、論理的な操作を元にした解釈が要求されます。そこに立法趣旨を織り込んで解釈することは危険でも何でもなく、法文の普通の解釈です。
 児童ポルノ法で、規制反対派が「家族写真や水着の写真も摘発される」と非難していましたが、そうしたことにはならなかったのと同じです。
 加えて被告人に不利な類推解釈は禁止されていますから、ますますプログラムエラーやバグなどは含まれないことになります。
 またプログラムエラーやバグをウィルスと見分けることは可能でしょうし、故意に作ったわけではないので「故意犯でない」として処罰の対象にはならないでしょう。

冒険風ライダー(管理人) (04/16 00:10) 編集・削除

>  ばれたらマスコミが、それこそ鬼の首でも取ったように警察を叩くでしょう。割に合わない話です。

大阪地検特捜部の元主任検事が、厚生労働省の文書を改竄したとして問題になったことが以前ありましたよね。
この時だって「ばれたらマスコミが、それこそ鬼の首でも取ったように警察を叩く」ことなんて最初から分かりきっていたはずですが、それでも改竄事件は立派に起こりました。
しかもマスコミは行政の言い分を鵜呑みにして支持する傾向がありますし、件の改竄事件当初もマスコミはむしろ検察側が正しく被告が悪いことを前提とする報道に終始していました。
こういうことが実際にある以上、「割に合わない話」だからありえないと可能性ひとつ検討しないで良いわけがないでしょう。
それに一度不当な判決が下されたら、それを覆すのに被害者は最低数年、場合によっては何十年もの戦いを強いられることになりますし、すくなくとも最初の頃は大多数のマスコミからして敵に回ることもしばしばです。
そういう行政の暴走を止めることにこそ、法の存在意義があるのではありませんか?

>  警察が暴走したら、わざわざ法律を改正しなくても何でもやらかします。私があげたような事例や、微罪とか別件逮捕とか。そのような議論では、刑法・刑事訴訟法そのものが成り立たなくなります。

同じ警察の暴走でも、「非合法的な暴走」と「合法のお墨付きが与えられた暴走」では脅威の度合いが桁違いです。
前者はまだ自分にかけられた汚名を返上するチャンスがありますが、後者はそれすら不可能なのですから。
暴走したらどうしようもないからといって、鬼(警察)に金棒(合法のお墨付き)を与えても良いと思っているのですか?

>  この改正案での保全は「消さないで取っておいてくれ」と要求するだけのもので、命令ではありません。
>  また「内容を確かめてから保全を求める」との前提を置いているようですが、見ようと思ったら捜査・差押え令状が必要で、「内容を確かめてから保全を求める」ことはできません。したがってこの改正案は、「証拠があるかも知れないから、消さずに取っ手おいてくれ」ぐらいの意味だと考えられます。

法律を根拠に「これはいずれ差し押さえる目的で要請しているものだから任意で提出して」と警察側がデータ保存している企業に求める危険性もありますよね。
そして企業側も、「どうせ差し押さえられるなら…」とその求めに応じてしまう事態も考えられます。
その後で「差し押さえる必要がないから要請を取り下げます」となった時、残るのは「企業側が任意で情報を警察に提供してしまった」という事実のみです。
「差し押さえ措置をちらつかせた要請」という、ある意味詐欺か虚構の類を警察が仕掛けてきた時、この法律は悪い意味での凄まじい威力を発揮する懸念があるのではないでしょうか。
刑事捜査で警察に協力しなければ、その後企業側が警察に目をつけられ何らかの不利益を被る事態も考えられますし、現行でさえ、警察の「任意要請」は事実上「強制」の隠語でしかないと言われているくらいですから、一種の「無言の圧力」の道具として使われる懸念もあります。
しかも差押の令状が発動されなければ警察内部だけで事は全て完結してしまう上に全て合法の範疇で行われるのですから、任意で情報を提供させられた被害者が警察を訴えるのは至難の業になります。
そういう「法の間隙」を駆使した悪用が行われる可能性など100%ない、そんなことをしたらマスコミに叩かれるのだからと、警察がこれまでに犯し続けてきた誤認捜査や捏造・冤罪事件の数々を見てもなおそう思えますか?
法というのは、悪意に満ちた運用が決してされないような文章と定義でとにかくガチガチに固める必要があるはずなのですが。

>  挙げられた事例のどこが一般市民に対する弾圧なのでしょうか? 冒険風ライダーさんは「個人の弱みを捜査当局に握られ」るとか、「気に入らない言動をする人間に対し、~逮捕に踏み切る」とか、一般市民に対する弾圧を問題にしていたと認識しています。
>  地下鉄サリン事件後に用いられた手法ということは、その関係者を逮捕するために用いていたのですし、覚醒剤取締法違反を摘発するためならば、一般市民の弾圧を目的としているとはとても言えません。

地下鉄サリン事件の件にせよ、私が挙げた覚醒剤取締法違反の事例にせよ、共に「微罪や別件逮捕で【一般市民】を摘発している」という事実に変わりはありません。
法的に言えば、裁判で有罪が確定するまでは誰もが「犯罪者」ではなく、逮捕されても「(推定無罪の)容疑者」、裁判中でも「(推定無罪の)被告」でしかないわけです。
そして、彼ら「一般市民」に対して行われた微罪や別件逮捕などは、それが裁判で勝訴し判例として有効であると保証されれば、そのまま別の「一般市民」に対しても同じように行われる事例となりえるのです。
オウム真理教に対する別件逮捕も、そういう観点から「一般市民にも同じことをやってくるのではないか」と懸念する声は当時から上がっていましたし、警察のそんな行為が正当化されたのは国民の支持があったからであって、もし自分達が非難されない&支持されるという確信があれば、警察がまた同じことを「一般市民に」行わないとは限らないのです。
覚醒剤取締法違反事件における別件逮捕の問題も、もしこれが判例として確立してしまっていたならば、別の「一般市民」に対しても全く同じことが行われるようになったでしょうし、その中から冤罪が発生する危険も起こりえたでしょう。
同じことをすれば判例によって裁判で必ず勝てることが保証されるのですから、最悪、自分の手柄と出世目的、あるいは自己満足な正義感のために「(主観的に決め付けている)犯罪者」の摘発手段として利用する輩も出てくるでしょうね。
警察の暴走というのはこういうところから始まるものなのですし、こういう恐ろしいことが現出しかねないからこそ、法の運用はいくら慎重になってもし過ぎることはないのです。

>  故意の立証が難しい事件は確かに存在します。
>  しかし今回の場合で言えば、ウイルスが入り込み、プログラムに従った活動をするのなら、故意と過失の判別は簡単でしょう。通信ログを分析すれば感染経路はわかるでしょうし(だから保全要求の追加が改正案でセットになっているのでしょう)、ウィルスの分析やデータの蓄積は、アンチウィルスソフトの会社が日々行っているのですから、なおさらです。

「通信ログを分析すれば」って、それでは通信情報の公開・閲覧が前提となってしまうではありませんか。
自身にかけられた嫌疑を晴らすために通信情報やパソコンの中身を公開しなければならない、というのであれば、結局プライバシーや通信の秘密が公権力によって侵される事態が招来してしまうのですが。
警察側にしてみれば、そういう容疑をかけるだけで他者の通信情報やパソコンの中身を、しかも「任意に」提供される形で合法的に閲覧できるわけですから、これほど美味しい話もないでしょうね。
さらに言うと、この法案における「保管」の定義というのは、物の「所持」とほぼ同じ扱いとされています(平成15年の法制審議会刑事法(ハイテク犯罪関係)部会の第3回議事録)。
つまり「保管」の禁止は、麻薬などと同じく「所持」そのものを事実上禁止しているも同然である言って良く、そうなると故意か過失かに関係なく「不正指令電磁的記録」を「保管(所持)」しているだけで摘発が可能ということになってしまいます。
法がそう定義しているのに、警察や検察がそれを利用しないわけがないと思うのですが。

>  プログラムエラーやバグは立法趣旨から言えば含まれませんから、それが摘発される可能性は低いでしょう。
>  法文は言葉の上での解釈だけでなく、論理的な操作を元にした解釈が要求されます。そこに立法趣旨を織り込んで解釈することは危険でも何でもなく、法文の普通の解釈です。

バグだらけのフリーソフトやシェアウェアをアップデートした際、ダウンロードして意図せざる被害を被った使用者から「その意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」を公開しているとして訴えられるケースは十二分に想定されますよ。
特に被害者にWeb系の知識がない場合は、バグソフトもウィルスも同じものだとして訴えに出ることも考えられますし、その場合、警察もそれに同調するのは火を見るよりも明らかです。
すると、こういう事件が起こる可能性があるのではないかと↓

http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20110123.html

ちなみに上の話の解説↓

http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20110209.html
http://staff.aist.go.jp/takagi.hiromitsu/paper/jnsa-jijiworkshop-201101-takagi.pdf

法文が言葉の上だけで解釈され、本来の立法主旨を逸脱した使われ方をする事例は決して少なくありません。
歴史が古い法律であれば判例の積み重ねである程度是正することもできるかもしれませんが、出来立ての法律にそんな便利なものは存在しないですからね。
その間隙を突かれ、法を悪用されないためにも、誰も間違いようも曲解のしようもないガチガチの条文で法は構成されなければならないのです。
政治は結果が全てですが、法律は過程が全てなのですから。

http://www.tanautsu.net/

多摩武蔵守 (04/17 00:49) 編集・削除

 長々と議論につきあって下さり、ありがとうございます。この問題については今回をもって私の最後のコメントとし、あとは読者の判断に委ねたいと思います。

 長くなったので、ものすごくざっくりとしたまとめですが、最初に行っておこうと思います。

1「冒険風ライダーさん(以下冒):これは民主党が言論封殺をするための法律だ」
2「多摩武蔵守(以下多):民主党にそんな気があるとは考えられないし、言論統制のための法律でもない」
3「冒:事実上の強制捜査が行われるも同然だし、非合法的な脅迫や取引などが行われる恐れがある」
4「多:証拠保全を求めるだけ。警察が一般市民の弾圧を目的として悪用するというなら、他の法律もそうであるという事実がなくてはならない」
5「冒:警察が捜査過程で微罪や別件逮捕を使った例はある」
6「多:それのどこが一般市民の弾圧を目的としているのか」
7「冒:一般市民を摘発していることに変わりはない」

 私が一貫して求めているのは、今回の改正法が
(1)一般市民の弾圧を目的として作られて・または警察がそれに用いることの立証
(2)他の法律より悪用されるリスクが突出していることの立証
(3)他の法律より突出して立法技術に問題があることの立証
 です。

 それに対して冒険風ライダーさんが出してきた例である、
> 大阪地検特捜部の元主任検事が、厚生労働省の文書を改竄したとして問題になった
> 「微罪や別件逮捕で【一般市民】を摘発している」という事実に変わりはない
> 「提出して」と警察側がデータ保存している企業に求める危険性
> 警察がこれまでに犯し続けてきた誤認捜査や捏造・冤罪事件の数々
 はどれも「こういう可能性もある」「過去にこういう例もある」「別件逮捕で一般市民を摘発した例がある」「それでも悪用される可能性はある」「悪用されない保証はどこにもない」ということを述べているに過ぎないと考えます。
 ウィルス作成罪や冤罪リスクの話につきあったのは、せっかくの議論だからということであって、立証していないことに目こぼしをするわけではありません。

 上記を念頭に、以下、個別の論点に対して回答します。

> 合法のお墨付きが与えられた暴走
 捜査の過程で収集した情報を用いて脅迫や強要を行うのはれっきとした犯罪ですし、公開するのも民事上の責任を問われる恐れがありますから、合法とは言えません。

> 警察の「任意要請」は事実上「強制」の隠語でしかないと言われている
 ではどうして任意捜査を廃止しろという議論が出ないのでしょう? 国民が任意捜査を治安維持の上のリスクとして許容しているから、そして任意捜査が国民が許容できる範囲に収まっているからではないでしょうか?

> そういう「法の間隙」を駆使した悪用が行われる可能性など100%ない
 私はそのような主張はしていません。その可能性は低いと言っただけです。少なくとも、他の法律より突出しているという議論は斥けられていると考えます。
 さらにそのリスクがあるとしても、どのくらいなのか、それは治安維持とのバランスで許容されるべき範囲内か、という議論もなされるべきと考えます。

> 警察側にしてみれば、そういう容疑をかけるだけで他者の通信情報やパソコンの中身を、しかも「任意に」提供される形で合法的に閲覧できるわけですから、これほど美味しい話もない
 以下のとおり、条文ではそんなことができるようには書かれていません。「「差押え又は記録命令付差押えをするため必要があるとき」が条件で、かつ「必要がないと認めるに至つたときは、当該求めを取り消さなければならない」。法文というのは厳密に書かねばならず、書いていないことが何の脈絡もなくできるようにはなりません。
 よしんば私の「取っておくことを要請できるだけで、事前に見られない」という解釈が間違いだったとしても、上記の結論は維持されます。
 それにやっぱり警察が悪逆非道で国民を弾圧することを前提にした話をしていますね。そんな証拠はないんでしょう?

> 最悪、~利用する輩も出てくるでしょうね。
 警察が悪逆非道で国民を弾圧することを前提にした話をしていたのに、いつの間に警察官個人の行きすぎに問題がすり替わるのでしょうか? それとて、他の法律に比べてそういうリスクが突出していることを立証するものではありません。
 捜査手法を巡る問題は、個別法の問題ではなく、警察のあり方全般にわたって論じられるべきもので、レベルの違うものを混ぜて議論すべきではありません。

> 悪意に満ちた運用が決してされないような文章と定義でとにかくガチガチに固める必要
> 法の運用はいくら慎重になってもし過ぎることはない
> 誰も間違いようも曲解のしようもないガチガチの条文で法は構成されなければならない
 他の法律より突出して立法技術上の問題と、悪用されるリスクが突出しているという立証ができていない以上、理想論に過ぎません。
 既存の法と同程度のリスクならば、許容するという選択もあろうと考えます。
 さらに以下の問題もあります。

「善悪問わず「弾力的な運用」が絶対にできないような条文は書けないし、人民の大多数が条文の通常の理解や立法趣旨を逸脱して法を運用することを国家権力に求めることもある。」
「人民の大多数の要求に条文は抵抗できないので、絶対の保障をそこに求めることはむなしい。」

「仮に国家権力が悪辣非道であってとにかく我々の表現を弾圧しようと意思を固めているのであれば、何故彼らが条文だけは守ろうとするのかがよくわからない。条文はあるが、誰も守らないという状態は多くの発展途上国において見られるし、国家の保有する集中された実力があればとりあえずあらゆる法規制を無視して意思を実現することは難しくない。あらゆる「悪用の危険」から原理的に逃れるためには国家権力のない場所に逃げるしかなく、おそらくそこに法規制の役割はないし、条文の表現を云々する意味もない。悪用の危険を指摘するなら、したがって、原理的な危険ではなく現実的な危険を示す必要がある。」
「実際の運用を問題にするなら、それを規制する政令・規則や人事・予算面でのコントロールについて具体的に検討すべきで、それをサボって抽象的な危険性だけを言い立てても問題解決にはつながらないし、説得力もない。」

(上記は以下のブログより引用)
 http://www.axis-cafe.net/weblog/t-ohya/archives/000515.html

> 「不正指令電磁的記録」を「保管(所持)」しているだけで摘発が可能
「前条第一項の目的で」と条件が付いています。だから、感染してしまった場合や、研究目的の場合は処罰の対象になりません。そして当然、そのことも検察側が立証しなければなりません。

> バグだらけのフリーソフトやシェアウェアをアップデートした際、~十二分に想定されますよ。
 高木氏のブログは私も読みましたが、「こういう危険がある」ということを述べているだけで、「警察が悪意を持って市民を弾圧する」とか、「だからウィルス作成罪を作るな」とは一言も書いていません。
 また、「行為者の主観として「不正指令電磁的記録としての実行」の意図の有無が、犯罪の構成要件となる。 そして、この「供用」の目的で作成する行為が「作成罪」となる。」
「法案起草者の趣旨(立法者意思)が、刑法学者に言わせると上記であることが明白」
 とも述べています。ただし故意犯だから犯罪にならない、という解釈を取るなら問題がある、とも述べています。それとても「運用面のコントロールについて具体的に検討すべき」という話でしょう。

> 被害者にWeb系の知識がない場合は、バグソフトもウィルスも同じものだとして訴えに出ることも考えられますし、警察もそれに同調するのは火を見るよりも明らか
 岡崎図書館事件の例をもってそう断定していいかどうかは、慎重な検討を要すると考えます。これについては以下のブログより引用します。

 http://www.axis-cafe.net/weblog/t-ohya/archives/000735.html
(引用はしていないが、参考)
 http://www.axis-cafe.net/weblog/t-ohya/archives/000738.html

「逮捕されてしまった開発者の行動にも「問題」(ベストプラクティスではないという意味でのね)はなかったかという点と、警察・図書館の行動にも「問題」はあったがその背景にある事情というものがある。」
「刑法上の因果関係というのは被害側に未知・予測不能の欠陥があったことが結果発生に寄与した場合でも切断されないという話があり、つまり誰にも問題のない・完全な状態でいる義務などというものはないので図書館のソフトウェアに問題がないことを軽信したことは「問題」」
「そのことを前提とすれば被害と因果関係という客観的な構成要件は揃っており、もちろんあとからわかったさまざまな事情を斟酌するとどうもまあ故意はなかったということでいいと思うのだが、捜査時点では~故意の妨害であることを疑わせる事情というのもあったわけで、最終的に逮捕から起訴猶予という結論になっても仕方がない。」

 またこの事件は警察の悪意に帰せられる問題ではなく、以下のような問題点が指摘できると思います(以下上記ブログより引用)。

「被害が発生する以前の・早期の段階で積極的に介入せよというのはストーカーなどの事例で国民自身が警察に対して要求し続けてきたこと」
「ベストプラクティスを実現できるだけの資源というのを与えていない状況で~完璧なふるまいを求めても無理です、自分たちの選択の結果を国民自身が引き受けてくださいとしか言いようがないところはある」
「再発を防止するというならどこかに十分なリソースを割り当てるという選択を社会全体としてする必要がある」

 岡崎事件が一般化するならIT業界にあまりに過酷で、社会全体にもたらすデメリットが大きいでしょう。しかし国民にデメリットが大きいと認識されていれば、一般化する可能性は低いでしょう(そのデメリットを許容してでもウィルスの問題解決を望むほど、事態が深刻化しない限り)。
 上記の例で見てきたように、警察・検察も民意を織り込んだ上で行動しているからです。

冒険風ライダー(管理人) (04/17 15:09) 編集・削除

>  それに対して冒険風ライダーさんが出してきた例である、
> > 大阪地検特捜部の元主任検事が、厚生労働省の文書を改竄したとして問題になった
> > 「微罪や別件逮捕で【一般市民】を摘発している」という事実に変わりはない
> > 「提出して」と警察側がデータ保存している企業に求める危険性
> > 警察がこれまでに犯し続けてきた誤認捜査や捏造・冤罪事件の数々
>  はどれも「こういう可能性もある」「過去にこういう例もある」「別件逮捕で一般市民を摘発した例がある」「それでも悪用される可能性はある」「悪用されない保証はどこにもない」ということを述べているに過ぎないと考えます。
>  ウィルス作成罪や冤罪リスクの話につきあったのは、せっかくの議論だからということであって、立証していないことに目こぼしをするわけではありません。

>  私はそのような主張はしていません。その可能性は低いと言っただけです。少なくとも、他の法律より突出しているという議論は斥けられていると考えます。
>  さらにそのリスクがあるとしても、どのくらいなのか、それは治安維持とのバランスで許容されるべき範囲内か、という議論もなされるべきと考えます。

前にも述べましたが、法の問題というのは原発問題と同じで「問題が起こったらその時点で終わり」という一面があります。
法が誤っていたり、条文に問題がある法が誤って運用されたりすることによって発生する社会的影響は計り知れません。
ですので、まだ制定されていない法の危険性を論じる際には、その法に起こりえる問題を想定した上で、それが実現する可能性が【あるかないか(ゼロより上かゼロか)】が問われることになるわけです。
多摩武蔵守さんが論じていたのは「可能性の高低」あるいは「100%かそれ未満か」で、低ければ問題ないという論理のようですが、私の視点からは「高い」も「低い」も「(可能性は)ある(ゼロより上)」と言っているのと何も変わりません。
児童ポルノ法や東京都青少年健全育成条例改正案なども、そういう「可能性が【ある(ゼロより上)】」からこそ問題になったのであり、「低い」であっても「ある(ゼロより上)」ことに変わりがないから反対の声が上がるわけです。
だから私は「可能性がある(ゼロより上)」ことを証明できれば危険性の立証は充分にできていると考えていますし、「低い」と言われても「それはある(ゼロより上)ってことじゃないか」としか言いようがないわけです。
この辺りが、両者の議論がすれ違った要因でしょうね。

>  以下のとおり、条文ではそんなことができるようには書かれていません。「「差押え又は記録命令付差押えをするため必要があるとき」が条件で、かつ「必要がないと認めるに至つたときは、当該求めを取り消さなければならない」。法文というのは厳密に書かねばならず、書いていないことが何の脈絡もなくできるようにはなりません。

「差押を前提とした保全要請」が行われることによる「保全要請された側」の影響や反応というものがあるでしょう。
「ああ、これは差し押さえられるんだな」と考えれば、強制措置が行われる前に情報を任意という形で提供することも考えられますし、警察もそれを見越して保全要請を仕掛けてくる可能性もあります。
しかもこれは当然「合法の範囲内」ということになりますから、それが捜査で有効かつ裁判でも勝てるということになれば、「任意提供」目的の保全要請が乱発されることもありえるでしょう。
今まで出来なかったことが出来るようになるのですし、実際に問題が起こってからでは遅いのですから、どういうことが起こりえるのかという問題はいくら考えても考えすぎということにはならないと思うのですが。

>  警察が悪逆非道で国民を弾圧することを前提にした話をしていたのに、いつの間に警察官個人の行きすぎに問題がすり替わるのでしょうか? それとて、他の法律に比べてそういうリスクが突出していることを立証するものではありません。
>  捜査手法を巡る問題は、個別法の問題ではなく、警察のあり方全般にわたって論じられるべきもので、レベルの違うものを混ぜて議論すべきではありません。

個人がやろうが組織がやろうが「警察の名の下に」行っていることには変わりありますまい。
判例が確立さえすれば、組織だろうが個人だろうが同じことが大手を振って行えるようになるのですからなおのことです。
警察に限らず、組織というのは個人に過重な責任を負わせないために全体としての責任を負うものなのですし、そもそも国民からして「組織に所属している個人の暴走=組織全体の問題」と見做すものでしょう。
個人の暴走を組織ぐるみで庇い立てしたり、個人の暴走に組織そのものが引き摺られたりする事例もあるのですし。
その個人の地位や実力が上であればあるほど、その傾向はどんどん強くなっていきます。
そしてもちろん、警察官個人であれ警察組織そのものであれ、暴走する可能性が「ある(ゼロより上)」のであれば、それは危険視しないわけには行きません。
というか、私は最初から「警察の暴走」に個人だの組織だのといった区別などつけてはいませんでしたし、「どっちが暴走しても被害者にとって結果は同じ」とも考えていましたけど。

>  「前条第一項の目的で」と条件が付いています。だから、感染してしまった場合や、研究目的の場合は処罰の対象になりません。そして当然、そのことも検察側が立証しなければなりません。

感染したパソコンが見つかったり、そこからウィルスが流布されて被害が拡大したりした場合、所有者が「保管している」という容疑で強制捜査を受けたり逮捕されたりすることは充分にありえますよね。
別に意図していなくても、外部からは「人の電子計算機における実行の用に供する目的」を有しているようには見えるのですし、「人」というのは「使用者」を指すと同時に「使用者である自分自身」をも含むのですから。
「保管している」時点でとりあえずの容疑は構成しえますから、その意図を聞くにしてもまずは強制捜査を受けたり捕まったりすることになってしまうわけですし、その人はその時点で充分すぎるほどの社会的被害を被ることになるのですが。
第一、「前条第一項の目的」である「人の電子計算機における実行の用に供する目的」からして、字面だけを見れば「研究目的の場合」にも適用されかねない曖昧な条文ですし、「正当な理由がないのに」という文言に至っては警察独自の判断でいくらでも内容を左右できるという危うさと恣意性があります。
恣意性が働かせられる余地のある法律ほど、不公正で存在自体が許されないものはないのですが。

というか、一連の議論ですっと疑問に思っていたのですけど、多摩武蔵守さんは強制捜査・逮捕・起訴・判決に至るまでの「過程」における社会的被害というのを過小評価し過ぎているのではありませんか?
「強制捜査を受けた」「逮捕された」「起訴された」というだけでも、そのこと自体による社会的被害は相当なものがありますし、実のところそれは「判決で無罪になった」としても取り戻せないほどのダメージになることもしばしばです。
それどころか、時には当事者のみならず、社会そのものが「萎縮」して大きな負の影響を受けることもあります。
岡崎図書館事件でもその手の「萎縮」があったようですし、他にも福島県立大野病院事件のように、判決では無罪になったにもかかわらず、逮捕から訴訟までの過程「だけ」で医療崩壊レベルの危機まで誘発した事例すらあるのです。
法の問題は原発問題と同じで「起こったら終わり」というのはそういうことです。

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