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映画「相棒シリーズ X DAY」感想

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映画「相棒シリーズ X DAY」観に行ってきました。
人気テレビドラマ「相棒」シリーズのスピンオフ作品で、同シリーズの脇役である警視庁刑事部捜査一課の伊丹憲一と、警視庁サイバー犯罪対策課の岩月彬をコンビが主人公の物語となります。
今作では休暇でイギリスにいるらしい杉下右京や、杉下右京の元相棒である神戸尊もチョイ役で出演していますが、本当にちょこっとだけしか登場していないですね(苦笑)。
私の「相棒」シリーズの映画観賞歴は、2010年末に公開された「相棒-劇場版Ⅱ- 警視庁占拠!特命係の一番長い夜」に続き今作で2作目。
あの頃と同じく、TVシリーズの「相棒」は相変わらずほとんど観賞していなかったりするのですけどね(^^;;)。

東京のとあるビルの下で、燃やされた数十枚の1万円札と共に屋上から落下したと思しき男性の遺体が見つかり、警察が捜査に入るところから物語は始まります。
今作限定ながらも晴れて脇役から主役へと出世することになった警視庁刑事部捜査一課の伊丹憲一は、現場検証の最中、ひとりの来訪者を迎えることとなります。
その人物、警視庁生活安全部サイバー犯罪対策課の岩月彬は、今回の事件で遺体となった中山雄吾が、実は岩月彬が一週間かけて追跡していた不正アクセス事件の容疑者であったことを告げます。
そこまで追跡していたのだからさぞかし遺体に関心があるのかと思いきや、岩月彬は「殺人事件は自分の管轄外だから」と、これで自分の仕事は終わったとばかりにその場を立ち去ろうとします。
その態度に腹を立てた伊丹憲一と、自分の職分にのみ忠実な岩月彬は、以後、顔を合わせる度に皮肉の応酬を交わすほどの犬猿の仲となってしまいます。
中山雄吾は、死亡する直前にあるデータをネット上にばら撒いており、そのデータは何者かによって削除依頼がプロバイダ管理者等によって頻繁に出されていました。
元々中山雄吾は東京明和銀行のシステムエンジニアであったことから、削除依頼は東京明和銀行の上司が出したのではないかと伊丹憲一は睨みます。
そして伊丹憲一は、東京明和銀行の上司・朽木貞義と面談する際、あくまでも不正アクセス事件のみを追う岩月彬と偶然鉢合わせすることになります。
2人は朽木貞義から、ネット上に流出したとされるデータを入手。
ところがここでも、どちらがデータ調査の主導権を握るかを巡り、2人は対立することになります。
結局、その場は岩月彬が伊丹憲一を完全無視してデータを持ち去るという形で決着するのですが。
さらに2人にとって災難は続き、その後、警視庁の捜査本部で二人一組のチームを編成することになった際、刑事部と生活安全部でそれぞれ1人ずつ余りが生じたことから、2人は全く異なる所轄でありながら上層部の意向によってコンビを組まされる事態となってしまうのでした。
考え方も行動原理もまるで正反対な2人は、互いに苦虫を噛み潰すような表情を浮かべながらも、捜査に乗り出していくことになるのですが……。

映画「相棒シリーズ X DAY」は、昨今の金融問題が大きなテーマとなっている作品です。
日本政府は数百兆~千兆円規模の借金を抱えているとか、少子高齢化で経済が衰退していくとか、今やすっかり決まり文句と化した感すらあるプロパガンダが展開されています。
作中でも、財務省関係者や政治家達が、「日本国債は暴落する」だの「日本経済は破綻する」だのといったスローガンを堂々とのたまい、しかもそれが具現化する日を「XDay」と呼んでいる始末です。
ところが現実には、当の財務省自身が、とにかく日本の格付けを下げる方向にばかり動く外国の格付け会社に対し、こんな意見書要旨を出している過去があったりするんですよね↓

http://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/rating/p140430.htm
> 1.貴社による日本国債の格付けについては、当方としては日本経済の強固なファンダメンタルズを考えると既に低過ぎ、更なる格下げは根拠を欠くと考えている。貴社の格付け判定は、従来より定性的な説明が大宗である一方、客観的な基準を欠き、これは、格付けの信頼性にも関わる大きな問題と考えている。
>  従って、以下の諸点に関し、貴社の考え方を具体的・定量的に明らかにされたい。
>
> (1)日・米など先進国の
自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。
>
> (2)格付けは財政状態のみならず、広い経済全体の文脈、特に経済のファンダメンタルズを考慮し、総合的に判断されるべきである。
>  例えば、以下の要素をどのように評価しているのか。
> ・ マクロ的に見れば、
日本は世界最大の貯蓄超過国
> ・ その結果、
国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に消化されている
> ・ 日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も世界最高
>
> (3)各国間の格付けの整合性に疑問。次のような例はどのように説明されるのか。
> ・ 一人当たりのGDPが日本の1/3でかつ大きな経常赤字国でも、日本より格付けが高い国がある。
> ・ 1976年のポンド危機とIMF借入れの僅か2年後(1978年)に発行された英国の外債や双子の赤字の持続性が疑問視された1980年代半ばの米国債はAAA格を維持した。
> ・ 日本国債がシングルAに格下げされれば、日本より経済のファンダメンタルズではるかに格差のある新興市場国と同格付けとなる。
>
> 2.以上の疑問の提示は、日本政府が改革について真剣ではないということでは全くない。政府は実際、財政構造改革をはじめとする各般の構造改革を真摯に遂行している。同時に、格付けについて、市場はより客観性・透明性の高い方法論や基準を必要としている。

この意見書要旨は2002年に出されたものなのですが、リーマン・ショック後でさえも日本の国債は買い手がつかないどころか、逆にますます買い手超過・金利低下が続くありさま。
日本経済の実態は、とても作中で言われているような「XDay」なるものが出現するような状況からは程遠いものがあるという事実を、他ならぬ財務省自身が主張しているわけです。
にもかかわらず、作中の警察幹部や財務省関係者達が「XDay」なるものの脅威を声高に説いた挙句、それに関連して「日本人は複雑な真実よりも分かりやすいウソを信じる」などとのたまうに至っては、一種のコメディとして大いに笑えるものがありますね。
まさか、上記引用の意見書要旨が「分かりやすいウソ」なわけがないのですし、そもそもそんなウソを、財務省が、しかも日本国内ではなく外国の格付け会社相手につかなければならない理由自体が全くありません。
日本国内向けのプロパガンダと違い、外国向けの意見書要旨というのは、下手すれば外交問題にまで発展するレベルのリスクがあるのですから当然のことです。
となると、作中で大いに謳われている「XDay」というもの自体が、実は財務省が考える壮大なまでのウソであり、作中の登場人物達はまんまとそれに騙されている、という全く逆の構図も実は立派に成立しえるわけですね。
財務省が「XDay」のような日本経済の破綻を訴えるのには大きな理由があります。
それは第一に「増税がしたい」からであり、第二に「天下り先が欲しい」からです。
「このままでは日本経済は破綻する、【だから】増税をしなければならない」というのは、増税反対の声をかき消すのには充分な説得力を持ちえます。
1998年の消費税増税や、民主党政権下で決定された三党合意の消費増税などは、まさにこの論法に基づいて決められたものですし、だからこそ彼らは「日本経済の破綻【という名の葵の印籠】」を、増税反対の声を抑えるために何かと振りかざすわけです。
そして一方、増税が決定されれば、財務省はその権限を大いに駆使することで、特定の組織に対して「お前のところの税率は低めにしておいてやるから天下りさせろ」と主張することも可能となるわけです。
消費税の増税問題では、日用品や出版物などに対する軽減税率の適用が何かと話題になっていますが、これもその一環だったりするわけで。
財務省にとっての「日本経済の破綻」というスローガンは、自分達の利益を通すのに非常に都合の良い「分かりやすいウソ」である、というわけです。
そういう観点から見ると、作中における「XDay」というのは、作品の意図とは全く異なるもうひとつの意味を持ってくることになりますね。
「日本経済は安泰だ」という「分かりやすいウソ」に騙される人間を嘲笑っている政財界の大物達が、「日本経済は破綻する」という「分かりやすいウソ」に騙されていることに気づかない、などという「複雑な真実」の構図が現出することになるわけで。
まあ、映画の製作者達がそこまでの意図やメッセージを込める形で今作を製作したのかと問われると、私も大いに疑問符をつけざるをえないところではあるのですけど。
作中の登場人物達は、杉下右京や岩月彬も含め、「XDayは実際に起こりえる」という前提を当然のものと考えた上で「XDay」について語っていたりするわけですからねぇ(-_-;;)。

「XDay」関連以外の作中の展開に目を向けてみると、今作の主人公である伊丹憲一と岩月彬が、顔を合わせる度に皮肉の応酬を交わしながらも、次第に分かりあっていく過程が、王道的な展開ながらも良かったですね。
当初はやたら淡々としていた岩月彬も、物語終盤では意外にも犯罪を追う熱血漢と化していましたし。
このコンビ、映画後も続くことになるのでしょうかねぇ。

刑事物や「相棒」シリーズのファンであれば、やはり今作はオススメの一品なのではないかと。


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