記事一覧

映画「推理作家ポー 最期の5日間」感想

ファイル 776-1.jpg

映画「推理作家ポー 最期の5日間」観に行ってきました。
19世紀前半のアメリカで推理小説を執筆し有名になったエドガー・アラン・ポーの、その死に至るまでの最後の5日間に何が起こったのかについて描いたサスペンス・スリラー作品。
今作は猟奇的な殺人および死体の描写が満載のため、R-15指定されています。

1849年10月のアメリカ・メリーランド州ボルティモア。
闇夜の中で、女性のけたたましい悲鳴が響き渡る中、複数の警官達が悲鳴の発生源と見られるアパートへとなだれ込みます。
しかし、警官達が階段を駆け上がっていく途中、女性の悲鳴は途絶え、また現場と思しきアパートの一室からは、ドアの鍵がかけられる音が部屋の内側から鳴り響きました。
警官達がドアを破って強行突破すると、そこにあったのは母娘とおぼしき女性2人の遺体。
母親は絞殺された後に首を掻き切られ、娘は暖炉の煙突の中に逆さ吊りされた状態で発見されました。
警官達は部屋の中をくまなく調べ始めましたが、部屋の中には誰もおらず、またドア以外で唯一外へ出られる窓には釘が打ち込まれていて全く開けられない状態。
何ら成果なく一旦引き揚げた警官達によって報告された、この不可解な事件を担当することになったエメット・フィールズ刑事は、釘が打ち込まれている窓がバネ仕掛けで動くというトリックがあることを見つけ出します。
そしてフィールズ刑事は、殺人の手口とトリックが、当代の推理小説家エドガー・アラン・ポーの小説に出てくる内容と酷似していることに気づくのでした。

一方、同時期にたまたまボルティモアへやってきていた当のエドガー・アラン・ポー。
しかし彼は事件が発生した同時刻、酒場でマスターと口論になった上、他の客と揉め事を引き起こして店から叩き出されていたのでした。
彼はまた、ボルティモアの名士?であるチャールズ・ハミルトン大尉の娘で恋人のエミリー・ハミルトンと接触を図りますが、チャールズはエドガー・アラン・ポーを毛嫌いしており、彼に銃を突き付けて追い返してしまいます。
さらには、カネを無心するために自分が文芸評論を寄稿している新聞社パトリオットでは、「売れない文芸評論よりも売れる小説を書け!」と言ってきたマドックス編集長と口論になってしまう始末。
当時でもそれなりには売れている作家だったはずなのに、やたらと困窮している上にかくのごとく周囲から鼻つまみ者的な扱いを受けているエドガー・アラン・ポー。
彼がアメリカ社会で「アメリカを代表する作家」として認められるようになるのは、エドガー・アラン・ポーの死後から実に1世紀近くも経過して以降のことであり、当時は作風がアメリカ社会と馴染まなかったことや、作家の地位そのものが低かったことも手伝って、貧困な生活を余儀なくされていたわけです。
そんな中でも、エミリー・ハミルトンは彼のことを真剣に想っていたらしく、来るべき仮面舞踏会で自分にプロポーズしてほしいとエドガー・アラン・ポーに懇願するのでした。
その想いに気を良くしたエドガー・アラン・ポーは、翌日、富裕者層の中高年女性達を相手に詩を朗読する仕事をこなしていました。
しかしその現場へ、突如警官達が多数押しかけ、エドガー・アラン・ポーは冒頭の事件絡みで重要参考人として連行されることになってしまいます。
彼はエメット・フィールズ刑事との尋問の中で、自分の小説を利用した殺人が行われていることを知ることになるのですが……。

映画「推理作家ポー 最期の5日間」で勃発する連続殺人事件は、エドガー・アラン・ポーの小説で開陳されているトリックや固有名詞等を流用して行われています。
最初の殺人事件が「モルグ街の殺人」、次の殺人が「落とし穴と振り子」、その次の仮面舞踏会では「赤き死の仮面」、それぞれの作中で描かれているトリックや殺人が用いられています。
その忠実度は、当のエドガー・アラン・ポーですら驚くほど(苦笑)。
しかし、具体的にどの著書のどの内容が現実のトリックや殺人の手法と合致しているのかについては、実際にポーの小説を読んだ人でないと理解できるものではなく、何も知らない人間から見たらあまり楽しめるものではないのではないか、とは思わなくもなかったですね。
そもそも、最初の事件でエドガー・アラン・ポーの小説との関連性を見破ったエメット・フィールズ刑事でさえ、それ以降はエドガー・アラン・ポーの知識に頼りきりになっていた感が否めなかったくらいですし。
この辺りは、映画製作者も承知の上で、エドガー・アラン・ポーの作品を知らない人向けに演出したものではあるのでしょうけどね。
知っている人から見たら小説との関連性が完全に理解できて面白さもまた違ってくるのだろうなぁ、とエドガー・アラン・ポーの作品は一部の小説タイトル名くらいしか知らない私などはついつい考えてしまうのですが(^^;;)。

ただ、ラストで明らかになった真犯人は、最初からエドガー・アラン・ポーを主要ターゲットにするつもりで犯行をやらかしたとは正直思えないところが少なくないですね。
そもそも、警察が殺人内容とエドガー・アラン・ポーの小説との関連性に全く気付くことなく捜査を行っていたりしたら、当然エドガー・アラン・ポーに捜査要請などすることすらなく、またエドガー・アラン・ポー側も事件の存在すら認知することもなく、その時点でいともあっさりと計画が頓挫してしまいます。
実際、警察もエメット・フィールズ刑事がたまたま気づいたからエドガー・アラン・ポーに目星をつけられたようなものだったのですし。
また、警察が小説との関連性【だけ】でもってエドガー・アラン・ポーを犯人と決め付け、そのまま不当逮捕して裁判にかけてしまう、という事態も全くなかったわけではないでしょう。
それまでのエドガー・アラン・ポーは素行不良が目立っていてあちこちでゴタゴタを巻き起こしていたのですし、警察が思い込みだけで彼を犯人扱いして逮捕を決断するというシナリオも全くありえないわけではなかったのですが。
真犯人の目的はあくまでもエドガー・アラン・ポーにこそあったのですから、ここで警察が無能ぶりを発揮した捜査を行うと、彼の目的は全く達成できなくなる可能性が濃厚だったのではないかと。
その点で真犯人は、見事にエドガー・アラン・ポーと事件の関連性に気付いて彼に捜査の協力をさせたエメット・フィールズ刑事に感謝しなくてはならないかもしれませんね。
……もっとも、ラストで彼に不意を突かれ撃ち殺される羽目になった真犯人にしてみれば、「何故俺が奴に感謝などしなければならないんだ!」とあの世で恨み言のひとつも言いたいところではあるのかもしれませんが(笑)。

個人的には、物語終盤でエドガー・アラン・ポーが真犯人と対峙した際、いくらエミリー・ハミルトンが人質に取られているからとはいえ、真犯人が強要するままに毒を飲んだのが少々疑問ではありましたね。
あの場面で彼は、丸腰の真犯人に対して銃を所持していたのですし、一度は真犯人の直近で発砲して脅しをかけてもいたわけでしょう。
ならばそれをさらに延長させて、真犯人の手なり足なりでも撃って拷問同然にエミリーの居場所を聞き出す、といった行動に出れば、あるいは彼女ばかりか自分自身さえも無傷で助かったのではないのかと。
自分が相手の要求を文字通り飲んだからと言って、真犯人が素直に口を割るとは限らないことくらい、仮にも周囲の人間関係に悩まされ続けてきたエドガー・アラン・ポーの立場であれば理解できないはずもなかったでしょうに。
結局彼は、真犯人の口ではなく自身の推理によってエミリー・ハミルトンを助けていたりするのですし。
彼が毒を飲んだのは全く無意味な行為かつ無駄死にとしか言いようがなかったのですが、この辺り、エドガー・アラン・ポーは相当なまでに「人を疑うことを知らない【いいひと】的な人間」として描かれていますね。
40年も、それも困窮な生活を強いられ風当たりの強い世の中を生きていてそれはどうなのよ、としか評しようがないところなのですけど。

作中にはやたらと猟奇的な殺人描写や、血を流して苦悶の表情を浮かべている死体が映し出されたりするので、その手の描写が嫌いな方にはあまりオススメできるものではないですね。
ミステリー好きか、エドガー・アラン・ポーの作品が好きという方向けの映画、といったところになるでしょうか。


トラックバック一覧

この記事のトラックバックURL
http://www.tanautsu.net/blog/diary-tb.cgi/776
推理作家ポー 最期の5日間 from とりあえず、コメントです
推理小説と詩で有名な作家エドガー・アラン・ポーの死の謎を描いたミステリーです。 ダークな雰囲気が立ち込めている予告編を観た時から、凄そうだなあと気になっていました。 猟奇的な連続殺人事件とポーの恋が織り...
2012年10月15日(月)00時28分 受信
Nevermore from MESCALINE DRIVE
有楽町はよみうりホールにて「推理作家ポー 最期の5日間」の試写会があり、これに足を運んだ。 本作の主人公はエドガー・アラン・ポー。怪奇幻想文学の歴史を繙くと、特にミステリ史においてその名は燦然と輝く。 謎...
2012年10月15日(月)00時37分 受信
推理作家ポー 最期の5日間 from 映画情報良いとこ撮り!
推理作家ポー 最期の5日間1849年のボルチモアにて殺人事件が起きた。この事件は、推理作家エドガー・アラン・ポーの作品と類似するところがあると気づいたひとりの若手刑事エメット・フィールズ。それにより、ポーに疑...
2012年10月15日(月)03時54分 受信
推理作家ポー 最期の5日間 from あーうぃ だにぇっと
推理作家ポー 最期の5日間@よみうりホール
2012年10月15日(月)05時34分 受信
『推理作家ポー -最期の5日間-』 2012年10月4日 よみうりホール from 気ままな映画生活(適当なコメントですが、よければどうぞ!)
『推理作家ポー -最期の5日間-』 を試写会で鑑賞しました。3Dじゃないけど、弾が飛んで避けたり、いきなり殴るから避けたりとビックリすること...【ストーリー】 1849年のボルチモア。ある殺人事件を担当すること...
2012年10月15日(月)07時46分 受信
推理作家ポー 最期の5日間/THE RAVEN from いい加減社長の映画日記
最初は、あんまり観る気はなかったんだけど、なんとなくそのミステリーの香りに誘われて・・・「オフィシャルサイト」【ストーリー】米国ボルチモア、1849年の秋。密室で惨殺された母娘の遺体が発見され、現場に駆け...
2012年10月15日(月)08時08分 受信
推理作家ポー 最期の5日間 from 風に吹かれて
不幸な有名作家公式サイト http://www.movies.co.jp/poe5days監督: ジェームズ・マクティーク  「Vフォー・ヴェンデッタ」1849年、アメリカのボルチモアで、密室で惨殺さ
2012年10月15日(月)08時38分 受信
推理作家ポー 最期の5日間 from 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
Raven [Blu-ray] [Import]クチコミを見る推理作家エドガー・アラン・ポーと模倣犯による壮絶な戦いを描いたミステリー「推理作家ポー 最期の5日間」。東欧ロケが独特のダークな雰囲気を醸 ...
2012年10月15日(月)10時46分 受信
推理作家ポー 最期の5日間 from 佐藤秀の徒然幻視録
犯人は鏡の中のポー?公式サイト。原題:The Raven。ジェームズ・マクティーグ監督、ジョン・キューザック、ルーク・エヴァンス、アリス・イヴ、ブレンダン・グリーソン、ケヴィン・ ...
2012年10月15日(月)10時52分 受信
「推理作家ポー 最期の5日間」みた。 from たいむのひとりごと
世界初の推理作家:エドガー・アラン・ポーの、謎に包まれた最期の日々を描いたミステリー・サスペンス。江戸川乱歩はいくつか読んだが、本家本元のポーの作品は実は全く読んだことが無い。オリジナルを知らないので
2012年10月15日(月)17時19分 受信
映画「推理作家ポー 最期の5日間」 from 放浪の狼のたわごと
2012年アメリカで製作された ジェームズ・マクティーグ監督作品。40歳の若さで
2012年10月15日(月)19時10分 受信
[映画『推理作家ポー 最期の5日間』を観た(寸評)] from 『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭
☆予告を見た限りでは、何でこの映画が企画されたのか不明で、あまり期待しないで映画館に足を運んだ。 21:30からのレイトショーで、眠気が予想されていたのだが、意外にも、非常に面白く夢中になった。 ・・...
2012年10月15日(月)19時34分 受信
推理作家ポー 最期の5日間 : 天才に対する賞賛と謎を求めて from こんな映画観たよ!-あらすじと感想-
 民主党の田中法相、真偽のほどは分かりませんが…。まあ、報道と本人の質疑を見る限り、限りなくクロに近い感じですが、ここはあえて”謎”としておきましょう。ちなみに、本日
2012年10月15日(月)20時19分 受信
推理作家ポー 最期の5日間 from 映画1ヵ月フリーパスポートもらうぞ〜
評価:★★★☆【3,5点】(F)本編の最大の謎、ポーの死因って、、、
2012年10月15日(月)23時11分 受信
推理作家ポー 最期の5日間 from 象のロケット
1849年、アメリカ・ボルティモアで殺人事件が発生。 現場に駆け付けた若き刑事エメット・フィールズは、事件が作家エドガー・アラン・ポーの推理小説「モルグ街の殺人」に酷似していることに気づく。 その後もポー...
2012年10月16日(火)01時58分 受信
推理作家ポー 最期の5日間 from 悠雅的生活
告げ口心臓。赤死病の仮面。大鴉。
2012年10月16日(火)15時39分 受信
推理作家ポー 最期の5日間 from 映画 K'z films 2
Data 原題 THE RAVEN 監督 ジェームズ・マクティーグ 出演 ジョン・キューザック ルーク・エヴァンス アリス・イヴ ブレンダン・グリーソン ケヴィン・マクナリー 公開 2012年 10月
2012年10月17日(水)01時17分 受信
『推理作家ポー 最後の5日間」翻訳を推理 from ノルウェー暮らし・イン・原宿
懐かしいあのかんじ。まだ小学生や中学生の頃よく読んでいた、直訳的な文章の古典文学や推理小説。歴史的な名作であっても、翻訳が直訳的だと話しに入り込めないよね?推理を解く前に、翻訳した文章が言わんとすると...
2012年10月17日(水)23時17分 受信
推理作家ポー 最期の5日間☆偉大なる作家エドガー・アラン・ポーは、なぜ死んだのか…? from ☆お気楽♪電影生活☆
THE ONLY ONE WHO CAN STOP A SERIAL KILLER      IS THE MAN WHO INSPIRED HIM.
2012年10月18日(木)10時13分 受信
推理作家ポー 最期の5日間 from ハリウッド映画 LOVE
原題:The Raven監督:ジェームズ・マクティーグ出演:ジョン・キューザック、ルーク・エバンス、アリスイブ、ブレンダン・グリーソン、ケビン・マクナリー俺は、“プー”じゃなくて“ポー”だ!
2012年10月20日(土)20時28分 受信
推理作家ポー 最期の5日間/ジョン・キューザック from カノンな日々
日本のミステリー大作家・江戸川乱歩さんのペンネームの由来としても有名な世界初の推理作家エドガー・アラン・ポーの最期のの日々を描くサスペンス・スリラー作品です。エドガー ...
2012年10月20日(土)23時16分 受信
映画「推理作家ポー 最期の5日間」こんなに有名な作家の死にまつわるお話 from soramove
「推理作家ポー 最期の5日間」★★★ジョン・キューザック、ルーク・エヴァンス、アリス・イヴ、ブレンダン・グリーソン出演ジェームズ・マクティーグ監督、110分、2012年10月12日(公開)2012,アメリカ,ウォルト・ディズ...
2012年10月22日(月)07時32分 受信
推理作家ポー 最期の五日間 from 迷宮映画館
虚虚実実の取り混ぜ方がうまい!
2012年10月22日(月)17時38分 受信
推理作家ポー 最期の5日間 from だらだら無気力ブログ!
ルーク・エヴァンスの存在が良かった。
2012年10月30日(火)00時26分 受信
推理作家ポー 最期の5日間★★★★ from パピとママ映画のblog
「モルグ街の殺人」「黒猫」など数々の推理小説で著名な作家エドガー・アラン・ポーの最期の日々を大胆な発想で描いたサスペンス・スリラー。ポーの著作を模倣した連続殺人事件が起きたことで、事件解明のために彼自...
2012年11月07日(水)17時21分 受信
映画「推理作家ポー 最期の5日間」 from FREE TIME
映画「推理作家ポー 最期の5日間」を鑑賞しました。
2012年11月10日(土)23時27分 受信
映画『推理作家ポー 最期の5日間』を観て from kintyre's Diary 新館
12-86.推理作家ポー最期の5日間■原題:The Raven■製作年、国:2012年、アメリカ■上映時間:110分■字幕:石田泰子■観賞日:11月10日、新宿ミラノ1(歌舞伎町)■料金:1,800円□監督:ジェームズ・...
2013年01月14日(月)21時15分 受信
映画:推理作家ポー 最期の5日間 from よしなしごと
 あれ?公式サイトがなくなってる!いくら何でも早くない?と言うわけで推理作家ポー 最期の5日間を見てきました。
2013年01月20日(日)21時44分 受信
推理作家ポー 最期の5日間 from いやいやえん
アパートの一室から響き渡る女性の悲鳴に警官隊がかけつけるも時すでに遅く、母親と思われる女性は首がほとんど切り離された状態で横たわり、娘は首を絞められ煙突に逆さまに突っ込まれていた。ドアは内側から鍵がか...
2013年06月02日(日)09時20分 受信

コメント一覧

投稿者:AB 2012年10月15日(月)00時14分 編集・削除

「僕の妹は漢字が読める」を見当違いの理屈でクズ小説呼ばわりした山本センセが、「不当に低く見られているラノベの魅力を訴えるイベント」をやるんだとさ。

ご丁寧にそのクズ小説呼ばわり記事にリンク張って、アマゾンのレビュー者だけがおかしいかのように宣伝してらっしゃいますよ。

コメント投稿

投稿フォーム
名前
Eメール
URL
コメント
投稿キー
投稿キーには「0205」と入力してください。(スパム対策。)
削除キー