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コミック版「大奥」検証考察2 【徳川分家の存在を黙殺する春日局の専横】

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コミック版「大奥」検証考察シリーズ2回目。
今回の検証テーマは【徳川分家の存在を黙殺する春日局の専横】です。
なお、過去の「大奥」に関する記事はこちら↓

映画「大奥」感想&疑問
実写映画版とコミック版1巻の「大奥」比較検証&感想
コミック版「大奥」検証考察1 【史実に反する「赤面疱瘡」の人口激減】

コミック版「大奥」2巻では、男女逆転の発端となる徳川3代将軍家光(男性)の死、およびそれに伴う春日局の策動が描かれています。
慶長9年7月17日(1604年8月12日)生まれで史実では慶安4年4月20日(1651年6月8日)・数え年換算で48歳まで生きるはずだった徳川家光(男性)は、「大奥」の世界では「赤面疱瘡」を患ったため、寛永9年(1632年)に31歳で病没します。
当時の家光には世継ぎがおらず、そのことに「徳川家の終焉」「戦国乱世の再来」と危機感を抱いた春日局は、家光の死の事実を隠蔽し、家光が20歳の時に江戸の町娘・お彩をレイプして産ませた娘・千恵を、4代将軍となる男児を産むまでの替え玉とすることを思いつきます。
作中ではこの春日局の決断を「さすが戦国の世を生きた女傑よ」と言わんばかりの高い評価を下しているのですが……。

しかし、大して考える必要もなく、これには大きな疑問が出てきます。
それは「家光の死が直ちに徳川家のお家断絶に繋がるわけではない」という点です。
徳川家には、江戸幕府の開祖である徳川家康の9男・10男・11男によってそれぞれ興された、後に「御三家」と呼ばれることになる徳川分家が存在します。
そして後年、徳川7代将軍家継が死去し、家光直系の血筋が途絶えた際には、御三家のひとつである紀州藩の紀州徳川家の当主だった徳川吉宗が8代将軍として迎えられています。
1632年の時点ではまだ水戸徳川家が興されていませんでしたが(水戸徳川家の勃興は1636年)、それでも家光の後釜に据えられる徳川一族の男子は立派に存在することになるわけです。
しかも、その中で最年少たる11男の徳川頼房でさえ家光より1歳年長なわけですから、若年層の男子を主な対象とする「赤面疱瘡」の脅威にもかなりの高確率で無縁でいることができます。
男子相続にこだわるのであれば、出自も怪しい家光の隠し子、それも女児などを替え玉にするよりも、分家筋の成人男性に将軍位を継がせる方が、当時の社会常識や慣習から言ってもはるかに現実的な選択というものではありませんか。
それを無視してわざわざ千恵姫を家光の替え玉とした春日局の決定は、あまりにも非常識かつ愚劣極まりないシロモノであったと言わざるをえないところです。

もちろん、史実から考えれば、8代将軍吉宗の代まで徳川分家の人間が江戸幕府の将軍になった例はないわけですから、春日局は「神の采配」に無理矢理操られる形で件の決断をさせられるに至ったのでしょう。
当の春日局は、徳川家というよりも、自身が可愛がっていた家光個人の血筋を維持するということに固執していたようですが、たかだか将軍個人の乳母風情がよくもまあここまで桁外れな越権行為をやらかしたものです。

春日局の横暴はとどまるところを知らず、家光死後から6年後の寛永15年(1638年)には、継目御礼のために江戸城に登城した公家出身の慶光院院主を城内に拉致監禁した挙句、脅迫同然のやり方で強引に大奥入りさせていたりします。
慶光院院主が容姿端麗&出自の高い身分であることを考慮したとはいえ、わざわざ寺社&公家勢力に公然とケンカを売る多大な政治的リスクを犯してまでやるべきことだったのでしょうか?
しかも、そこまでして手に入れた慶光院院主改め「お万の方」と家光(女性)の間に子供ができないと知るや、今度は一転して身を引くよう「お万の方」に命じる始末ですし。
徳川5代将軍綱吉の代に、同じ公家出身の右衛門佐(えもんのすけ)が自発的に大奥入りしていることを鑑みると、春日局のやり方は「平地に乱を起こす」極めて危険な手法と言わざるをえないですね。
後に春日局は、自身の行動について「戦の無い平和な世を守るため」などと自己弁護していますが、よくもまああんなことをして戦争が起こらなかったものだと私は逆に感心すらしてしまったくらいです。
「大奥」世界における春日局は、江戸幕府における「奸臣」「傾国の悪女」の第一号として歴史に記録されるべき人物と言えるのではないでしょうか?

次回は、「大奥」世界における「鎖国」体制について検証したいと思います。


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2013年04月30日(火)11時32分 受信

コメント一覧

投稿者:お万 2012年04月23日(月)17時07分 編集・削除

そんな怒らなくても・・・。しょせん少女漫画なんですから。何かで「史実ではなくてSFである」なんて書かれてたの見ました。(でもそんな事言ったら今度はコアなSFファンが怒るのかな?)要するに最初から荒唐無稽なお話、ファンタジーって事ですよ。

史実でもお万の方は元はといえば公家出身の尼さんだったそうです。そこら辺を脚色したって事でしょう。でも個人的には好きなんです。有功さんでしたっけ?ハンサムで、頭良くて、浮気しない。女の子の理想なんですよね~!絶対そんな男いないのに、いやいないからこそ、惹かれるんですよ。

投稿者:冒険風ライダー(管理人) 2012年04月23日(月)22時29分 編集・削除

>お万さん
「少女漫画だから」とか「SFだから」とかいった理由で無条件に作品の穴を無視・免罪する行為は、むしろ作品を貶めるものとなりえるのでは?
それは結果的に「どうせこの作品は大したことのないゴミなんだから」と言い捨てているも同然なのですから。
作品の構成に問題があればツッコミを入れる、作者とは違う視点で作品を検証して他の読者に別の視点を提供する、というのも立派な作品の楽しみ方のひとつです。
精緻な作品批判というのは非常に難しく、それを覆すだけの作品擁護はさらに至難を極めるものなのです。
そういった形で作品を論じ合う、これは大変面白い知的ゲームであると言えるのではありませんか?

ちなみに「大奥」世界における「お万の方」については、「大奥」世界における大奥本来の「将軍最後の護衛」的な主旨をメチャクチャに捻じ曲げ、大奥を「男共が派手に着飾るだけの金喰い虫」に変容させた最大の元凶、というのが私の「公人として見た評価」だったりします。
個人としての評価と、公人としての評価は全く別という話ですね。

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