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投稿ログ81 (No.1303 - No.1315)

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board2 - No.1303

Re: 初めまして&創竜伝12巻

投稿者:A.Na
2000年08月22日(火) 16時35分

モトラさんは書きました
> 座談会では、案の定「神の国」発言が。
>
> 「神の国」発言と「密室での総理選び」を強引に結びつけて「選挙で国家の首班を選ぶ西欧諸国は悪魔の国なんだろう」(始談。うろ覚え)などと相変わらずむちゃくちゃな皮肉を述べてました。

 しかし、衆議院の解散・総選挙によって、正式に総理大臣が選出された訳ですから、
いよいよ日本も悪魔の国の仲間入りですな(笑)。

 それとも著者は、最高指導者を直接選挙で選ばないのは民主主義ではない、とでも
主張するつもりなんでしょうか?(多分、そこまで深く考えてないだろうけど。)

親記事No.1245スレッドの返信投稿
board2 - No.1304

Re: さほどずれている訳でもないでしょう

投稿者:不沈戦艦
2000年08月23日(水) 15時17分

平松重之さんは書きました

>  うーん、大軍を擁していたナポレオンは補給を断たれ、地の利があるロシアに持久戦に持ち込まれた時点で速やかに撤退すべきだったと思います。いかに常識外であったとはいえ、戦略的な判断によって被害を食い止める事は可能だったのでは?プライドに固執して戦略的な過ちを最小限に抑えられなかったという点ではロイエンタールと似ていると思うのですが。…と、何だか「ロイエンタールの叛乱」についての議論からズレてしまいましたね(って、自分のせいか(^^;))。いい加減ここまでにしておきましょう。

 結局ここで私が言いたい事は、以下の通りです。

ナポレオン

1.諸国の軍隊をかき集めたとはいえ、相手を遙かに上回る大軍を擁していた。

2.ナポレオン自身、ロシア相手ならと絶対的な自信を持っていた。現にアウステルリッツ会戦で、相手を誘いだして中央突破を掛ける、という戦術で、ロシア軍を完膚無きまでに撃破している実績があった。但し、自信を持ちすぎていた感は否めない。

3.常識外の不運(6月の雪)と、常識外の戦法(モスクワまで平然と焼くような焦土戦術)に遭ってしまった。

ロイエンタール

1.最初から戦力は少数。どうあがいても、帝国本国軍には数の上では歯が立たない。もしイゼルローン軍を味方に付けられたとしても、それでも戦力比は論外。

2.ロイエンタール自身、「皇帝と戦いたい」という欲望はあっただろうが、皇帝やミッターマイヤーに「絶対に勝てる」をいう確信までは無かった筈。ただでさえ戦力的には少数なのに、ロイエンタールに匹敵する戦術指揮能力を持つ者が、少なくとも二人はいる状況である。ロイエンタールは、これで戦いの行方を楽観視するような性格ではない。

3.ミッターマイヤーが急進してきたのが予想外だったとは言うものの、「常識外」という程の話ではない。ミッターマイヤーの快速ぶりは、ロイエンタールは味方としてはよく知っていた筈。思ったより若干速かった、というだけ。

 だいぶ条件が違うと思われますので、同一視はできないでしょう、ということですね。ナポレオンがロシア遠征に突っ走っていった狂気はまだ理解できるけど、ロイエンタールが陰謀家たちの下手な演出に乗って、そのまま叛乱路線を突っ走っていってしまった狂気は、さすがに理解できかねる、ということです。

board2 - No.1305

田中芳樹って左翼か?

投稿者:孟徳
2000年08月23日(水) 15時24分

 なんだか田中芳樹氏と朝日新聞を同列に論じているような人が、
いるようです。一作品だけとりあげて、「アイツは左翼だの右翼だの」と、決め付けるのは、あんまり頭の良い人がやることではないとおもうのですが。
以前、司馬氏の作品に対する批判としてたまに挙げられる「英雄崇拝」
に関して以下のように弁護していました。
「英雄崇拝、英雄崇拝と批判するけれど、それじゃ、その英雄を
崇拝する民衆は、いったいなんなんだろう...。左翼的歴史観って
奴は絶対に民衆の指示を得られないだろうな。」

上記のようなコメントが何かの雑誌に載っていたような覚えが
あります。雑誌名は忘れましたけど(笑)
ここの掲示版では「創竜伝」に関する批判が多いようですね。しかし
作中には中国共産党を批判する個所や、日清戦争時に略奪行為を
一切やらなかった当時の日本軍を立派な軍隊だ、などど賞賛している箇所もあるわけです。ようするに田中氏は立派な軍隊が好きなのであって
民衆を害するような駄目駄目な軍隊が嫌いなんでしょうよ。この人が、
絶対的な平和主義者ではないことは周知の事実ですが。
そう言えば、創竜伝に関して田中芳樹は、「ちょっと左翼的なものでも書いて見るかなと思いまして...」という趣旨の発言をしてました。
作品として面白おかしく書いてみるかという感じでしょうか。
要するに、この人の作品を読んで作者の思想ウンヌンを真面目に論じる
のは、時間の無駄だと思います。
だって作者は、今の日本の権威をこきおろして書けばきっとおもしろいぞ。というノリで書いているんですから。
したがって、創竜伝を読んだ右翼寄りの人が反発すればするほど作者は、喜んでるのです。この人は単なる物語作家であって、文化人でも思想家でもないわけです。

脈絡の無いくだらない意見ですが、偶然この掲示板を見つけたので
書き込んでみました。(笑)

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board2 - No.1306

Re1300:だんだん難しくなってきた(T_T)

投稿者:冒険風ライダー
2000年08月23日(水) 17時59分

<いやしかし、新領土に行った皇帝がロイエンタールに拘禁されて(ロイエンタールが本気で叛乱起こす場合。ロイエンタールに野心は充分ある、とオーベルシュタインは判断していたと思いますので)、皇帝の名の下に新領土総督から命令が発せられるようになったら、どうする気なんでしょうかね?オーベルシュタインは。当然その場合、ロイエンタールは軍を率いてフェザーンに侵攻してきますが、その場合は皇帝を押さえられているので手も足も出せないでしょう。仮にオーベルシュタインが、「皇帝を攻撃する事になっても、新帝国の秩序維持の為にやむを得ない」と言ったところで、皇帝に銃を向けろというような命令を兵隊が聞く筈もないでしょう。銀河帝国軍の兵士は、基本的にラインハルトに心酔しているんですから。結局、戦わずして敗れ、オーベルシュタインとラングはロイエンタールに逮捕され、処刑される羽目に陥るのでは。その後に来るのは、ロイエンタールが好き放題に出来る独裁体制でしょう。
 そんなチャンスをオーベルシュタインともあろう者が、ロイエンタールに呉れてやる筈もないと思うんですけどね。つまり、皇帝が新領土へ巡幸する、ということは、その判断は完全に皇帝自身の意志であり、かつ健康上も差し当たっては問題なく、皇帝自身は新領土総督を信頼している場合、に限られるのではないでしょうか。それはロイエンタールも理解できる筈だ、とは思いませんか?>

 確かにその危険性は充分過ぎるほどありますし、オーベルシュタインもロイエンタールも簡単に察知する事ができるものでしょう。しかし、もしロイエンタールが人質にしたラインハルトが本物ではなく、影武者による偽者であったとしたらどうなるでしょうか?
 つまりロイエンタールの招請状を受け取ったオーベルシュタインは、この機会にロイエンタールを不意打ちによって処断するためにあえてラインハルトに招請に応じさせ、その上でラインハルトをどこか安全な場所に隠蔽し、自分がでっち上げた影武者を従えてハイネセンに向かうのです。もちろん外部にはその事を一切秘密にした上で。
 これならば万が一ロイエンタールが強行手段に訴えたとしてもオーベルシュタインにとっては痛くも痒くもありませんし、それを口実にしてロイエンタールを処断する事さえ可能になります。ロイエンタールが影武者に気づかずに黙って従えば、その時こそオーベルシュタインによって一方的に処断される運命が待っているだけです。ラインハルトをあえて囮にして油断と誘惑を誘った上で、ロイエンタールがラインハルトを操る危険性を完全に排除するために影武者を使い、邪魔者を始末する。これはむしろオーベルシュタインだからこそ却ってやりかねないような謀略でしょう。
 そしてロイエンタールもまたそのようなオーベルシュタインの手段を選ばない謀略家ぶりと、自分自身すらも犠牲にする事に躊躇しない性格志向を知り尽くしているからこそ、却って「オーベルシュタインは何をするか分からない」と考えて必要以上にオーベルシュタインの動向に注意せざるをえなくなったため、ハイネセンでラインハルトと会見することによって流言の是非を確認する必要性を感じていたのではないでしょうか。

<もう一つの問題はどうします?「そんな複雑な兵力運用が可能なのか?」ということ。複雑怪奇な作戦を立てると、失敗する可能性は高くなりますよ。ミッドウェーで南雲艦隊に二重の目的(米機動部隊の撃滅とミッドウェー島の攻略)を与えただけでも、ものの見事に失敗しましたし、マリアナのスプルーアンスだって、兵力が絶大だから勝ったものの、これも「島の攻略と敵艦隊の撃退」の二つの任務を割り当てられ、実際のところはかなり混乱した戦闘指揮になってしまっています。機動部隊グループの一つは、日本の攻撃隊が上空に来たのに、島への攻撃隊に出してしまったので、味方の戦闘機が上空に一機もいない、ってな状況もあった程です。密雲が厚くたれ込めているので助かりましたが(レーダー無しの日本機には、密雲の下の米艦隊を発見することは出来なかったので)。
 多兵力でもこんなことになるのですから、少数兵力を分散させ、遠方から精緻にコントロールしようなど、無理筋もいいところだと思いますわ。実行し始めた時から計画から狂い初めて、ついに一度も計画通り行われないまま、兵力を無駄に損ない、「やらない方がマシだった。ランテマリオで全兵力で待ち受けていた方が良かった」ってな事になるような気がしますけど。本気でやったら。>

 う~ん、私が考えた情報・通信システムを使えば、常にミッターマイヤー軍に関する情報がリアルタイムにロイエンタールにもたらされ、それに基づいて分散させた諸部隊に対して命令や合図を臨機応変に出すことも可能になるわけですし、前線の諸部隊も「一」「二」「三」でそれぞれやる事がひとつに決められているのですから、それほど複雑な兵力運用を行うわけではないと思うのですが。諸部隊によって集められた情報に基づいてロイエンタールが全体的な戦局から見た戦略目標を決定して各部隊に命令を下し、現場はそれに基づいた戦術指揮と移動をのみ行えば良いのですから。
 第二次世界大戦時における日本軍やアメリカ軍の場合は、与えられた複数の任務の優先順位を「現場で」判断せざるをえなかったわけですから、ロイエンタールの作戦とは若干ケースが違うのではないでしょうか。

<しかしいくら何でも「地の利はロイエンタールにある」は無茶では?駐留軍が馴染む程、長期間駐留していましたっけ?同盟が崩壊してから。一年や二年では「馴染んだ」とはなかなか言えませんよね。五年、十年と過ごせば、そりゃそうでしょうけど。地の利はどちらにもない以上、兵力が大きい方が有利なのは、言うまでもないでしょう。>

 別に駐留期間に関係なく、ロイエンタール側には次のような有利な条件が付加されます。

1. ミッターマイヤー軍が「攻撃側」であるのに対し、
  ロイエンタール軍は「迎撃側」の立場にある
2. ロイエンタール軍は旧同盟領に点在している補給・通信基地を使用できる
3. 「1」と「2」の条件から、ミッターマイヤー軍が行軍する進路を事前に特定する
  ことができ、要路に監視・ゲリラ戦のための兵力を配置する事ができる
4. 旧同盟領そのものを使用した情報・通信ネットワークが使用できる。
5. 「3」と「4」から、ロイエンタール軍は情報戦略においてミッターマイヤー軍
に対して圧倒的優位に立つことができ、かつ、ミッターマイヤー軍を同盟領奥深く
に誘い込む事によって後方の補給線と連絡を遮断する事が容易にできる

 それからミッターマイヤー軍と後方の連絡を絶つことは実は非常に簡単です。超光速通信が絶対に使用できないように、ミッターマイヤー軍を妨害電波の網で包囲してしまえば良いのです。最初からミッターマイヤー軍の位置は補足する事が容易なのですから、要所要所を抑えて通信を封鎖する事もまた容易なことです。長期戦に持ちこめば、この「情報封鎖」がボディーブローのように効いてきますし、ニセ情報を流してミッターマイヤー軍を混乱させる事もできです。
 それとロイエンタール軍が短期間しか旧同盟領に駐留していなかったといっても、すくなくとも「旧同盟領における航路の安全確保」と「補給・通信基地の掌握」ぐらいは、統治の観点から言っても、帝国との連絡線を確保するためにも「最優先事項」として行っていたでしょうから、航路図を掌握している事と合わせて、さしあたって上記の5条件における戦略的優位を確保する事ぐらいは充分に可能だったのではないでしょうか。政治的優位を確立する事はさすがに難しいでしょうけど。
 ちなみにロイエンタールが新領土総督に就任してから叛乱に追いやられるまでの期間はだいたい3~4ヶ月前後です。1年どころか、半年にも満たない短期間ですね。

<それに広さはあるとしても、ヤン艦隊みたいに、ロイエンタールが「同盟領そのものを利用した不正規戦」を行える訳じゃないですよね。結局帝国軍がハイネセンに来る前に、ランテマリオで迎え撃たなければならなかった訳で。同盟領の広さを利して、新領土総督軍が逃げ回ったりしましたっけ?毛沢東の共産党の「大長征」みたいに。帝国軍にしてみれば、取り敢えずハイネセンに到達するのは難行ではない。後方の連絡線を脅かせる兵力も新領土総督軍にはない、相手が延々と逃げる訳でもない、となれば「楽」とは言わないまでも、負ける可能性はほとんどあり得ませんよ。将帥の能力も、ロイエンタールに匹敵するミッターマイヤーがいますし、それ以上の皇帝自身だっているのですから。逆に考えれば、ロイエンタールだってそれが判らない訳はありませんから、正気ならばあんな叛乱起こす筈もない、ということですね。>

 このあたりはやはり「追い詰められた挙句、準備不足の状態で叛乱を起こさざるをえなかった」というのが大きかったでしょうし、ハイネセンを占領される事が政治的・戦略的にロイエンタールにとって致命的なマイナス効果(兵士の離反など)をもたらすという事情もあったでしょう。ハイネセンの弱点をクリアするには、それこそロイエンタールに時間がなさ過ぎましたし。
 また、ロイエンタールはイキナリ自分でも想定していなかった叛乱に追いやられたため、初期の戦略決定に際して、やや決断と精彩を欠いていたという事情もあったのかもしれません。

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board2 - No.1307

Re: 田中芳樹って左翼か?

投稿者:芥郎
2000年08月24日(木) 01時26分

孟徳さんは書きました

> だって作者は、今の日本の権威をこきおろして書けばきっとおもしろいぞ。というノリで書いているんですから。
> したがって、創竜伝を読んだ右翼寄りの人が反発すればするほど作者は、喜んでるのです。この人は単なる物語作家であって、文化人でも思想家でもないわけです。
>

おっしゃる通りです。作者の思想には私も関心はありません。
読んで面白い小説を提供してくれればいいんです。

ただ、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」のように、
物語作家なりの人気に応じた執筆活動を果たしていない
ため、作品の質や作中で語られる作者の考えにまで批判
が広がってしまったのではないでしょうか?

今更ですが例として

・タイタニアの再開待ち。
 未完の大作として終わってしまうのでしょうか?
 個人的には再開した時の帯のセリフが楽しみ
 「待望の再開」「怒涛の新展開」「お待たせしました!!」     etc・・・

・アルスラーンの遅筆。
 後書きの言い訳分でもいいから内容を増やして欲しい。

・七都市物語の未完?
 続きがありそうな思わせぶりな終わり方はしないで、
 あのまま完結と言い切ってしまった方が良かったのでは?

小説家として続きを待ち望んでいる読者に対する対応では
「グイン・サーガ」の栗本薫先生の方が誠意があると思い
ます。(でも100巻まで無事たどり着けるもかちょっと不安・・・)

「カルパチア協奏曲」のつまらなさに
完読せずに返却した芥郎より

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board2 - No.1308

Re: 田中芳樹って左翼か?

投稿者:モトラ
2000年08月24日(木) 03時50分

> だって作者は、今の日本の権威をこきおろして書けばきっとおもしろいぞ。というノリで書いているんですから。

作中でさんざん「品性」に言及している作者が、ただ「面白い」というだけの理由で、現実にモデルが存在することが明白な人物を劇中に登場させて、より貧相に描いた挙句罵倒の限りを尽くす…読者層の中心である、中高生への自らの筆の影響力も考えずに。
現状では、「創竜伝」を執筆している田中自身が、劇中の悪役政治家や官僚以上に醜いと言わざるをえません。

> したがって、創竜伝を読んだ右翼寄りの人が反発すればするほど作者は、喜んでるのです。この人は単なる物語作家であって、文化人でも思想家でもないわけです。

品のある大人のすることではありませんね。

board2 - No.1309

対談

投稿者:機械仕掛けの珈琲
2000年08月24日(木) 10時02分

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが
「ダヴィンチ10月号」で田中芳樹氏と荻野目悠樹氏が
新刊について対談なさるそうです。
 創竜伝12巻について、氏のスタンスが分かるかも?

荻野目悠樹氏については
 ttp://www.pluto.dti.ne.jp/~oginome/

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board2 - No.1310

Re: 反銀英伝 「大逆転! リップシュタット戦役」(33)

投稿者:不沈戦艦
2000年08月24日(木) 15時37分

更に続き。

------------------------------------------------------------------------------

 苛立ちを募らせるラインハルトに、オーベルシュタインは自分の案を告げた。

「閣下がグリューネワルト伯爵夫人を犠牲にしてでもオーディンを奪還せよ、という小官の策を採用なさらないことも見越して、次善の策も考えてございます。敵に重要人物を人質に取られた、というのなら、こちらも敵にとって代替のきかない人物を、人質に取ればいいだけのこと」

「つまり、卿の言っているのは、リッテンハイム侯の娘のことか」

「さようでございます。リッテンハイム・タンネンベルク陣営の急所は、彼らが帝位に就けようとする、リッテンハイム侯爵令嬢サビーネです。こちらはリッテンハイム侯爵令嬢を人質に取り、グリューネワルト伯爵夫人と人質交換する、という方法しかありますまい」

「しかし、リッテンハイム侯の娘は、奴の領地にいるのではないか?だとすると、ここからはあまりに遠い」

「いえ、リッテンハイム侯爵令嬢は、帝位に就くためにオーディンへと呼び寄せられるはず。領地に籠もっているところではなく、移動中に捕らえてしまえばよいのです。すでに辺境星域にいるシュタインメッツ提督に通信を送り、移動中のリッテンハイム侯爵令嬢を捕獲する罠を構築させているところです。後は、獲物が網に掛かるのを待つばかりといったところ」

 オーベルシュタインは、ラインハルトがアンネローゼを犠牲にするのを拒絶した時点で、すでにサビーネを人質にする策を考案しており、辺境領域の制圧を行っていたシュタインメッツ提督に作戦指揮を依頼していた。「女、しかも14歳の少女を人質に取るなど・・・・」と渋ったシュタインメッツだったが、「グリューネワルト伯爵夫人が囚われの身となった場合には」という条件で承諾していた。実際、グリューネワルト伯爵夫人が虜囚の身となってしまった以上、もはやシュタインメッツが躊躇することはない。すでにシュタインメッツの罠は、リッテンハイム侯の領地と帝都との間に、幾重にも張り巡らされていたのである。

「ほう、卿は用意周到だな。すでに今日の事態を見越して、対策を考えていたということか」

 皮肉混じりのラインハルトの物言いにも、オーベルシュタインは一礼しただけで動じることはない。

「まあよい。差し当たってはそれしかなさそうだな。卿の策が成功することを祈るとするか」

 ラインハルトは静かに言うと、指揮官席のシートに深く身を埋め、目を閉じた。ラインハルトとしては、このオーベルシュタインの策に賭けるしか、他にやりようがない。アンネローゼの命を無視して、オーディンを占拠したタンネンベルク伯たちを攻撃するのは、ラインハルトにとっては論外である。アンネローゼを虜囚の身にしたタンネンベルク伯に対する怒りは沸騰しているが、ラインハルト最大の弱点を相手に握られてしまったのでは、全くなんともしようがない。

----------------------------------------------------------

<以下続く?>

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board2 - No.1312

Re: 名将の迷走

投稿者:平松重之
2000年08月25日(金) 05時51分

不沈戦艦さん

>  だいぶ条件が違うと思われますので、同一視はできないでしょう、ということですね。ナポレオンがロシア遠征に突っ走っていった狂気はまだ理解できるけど、ロイエンタールが陰謀家たちの下手な演出に乗って、そのまま叛乱路線を突っ走っていってしまった狂気は、さすがに理解できかねる、ということです。

自分はそもそも「名将=最終的な成功者・常に理知的」とは限らないと言いたかっただけなのです。特定の対象に対する憎悪や反感及び自身のプライドにより戦略的判断を誤らせた名将という一点こそがロイエンタールとナポレオンの最大の共通点であり、そこが自分の主張したかった所なのですが。

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board2 - No.1313

Re: 田中芳樹って左翼か?

投稿者:ビュコック
2000年08月25日(金) 09時30分

孟徳さんは書きました
> そう言えば、創竜伝に関して田中芳樹は、「ちょっと左翼的なものでも書いて見るかなと思いまして...」という趣旨の発言をしてました。
> 作品として面白おかしく書いてみるかという感じでしょうか。
> 要するに、この人の作品を読んで作者の思想ウンヌンを真面目に論じる
> のは、時間の無駄だと思います。
「創竜伝」の場合それ以前の問題でしょう、完全にストーリーが崩壊しています。
9巻と10巻を読み比べてみてください、時系列や伏線が崩壊しているでしょう。
こんな出版物(小説ではないでしょう)をしゃあしゃあと書ける人間を
批判したくなるのは当然でしょう。
しかも作中で政治家を言行不一致だと批判しておきながら、
批判している当人が「10巻で終わらせる」「12巻で終わらせる」という公約を破って
平然としている厚顔無恥ぶり。
批判されて当然です。

> だって作者は、今の日本の権威をこきおろして書けばきっとおもしろいぞ。というノリで書いているんですから。
> したがって、創竜伝を読んだ右翼寄りの人が反発すればするほど作者は、喜んでるのです。この人は単なる物語作家であって、文化人でも思想家でもないわけです。
文庫版「創竜伝」の後書きの田中芳樹氏の対談を読んでください。
そうすれば、氏が自分の事を文化人だと錯覚しており、いっぱしの文化人気取り
で勘違い発言を連発している事が分かります。

board2 - No.1314

私の創竜伝考察33 創竜伝最大の破綻・中編

投稿者:冒険風ライダー
2000年08月26日(土) 04時37分

 特集「創竜伝最大の破綻」2回目は「四人姉妹および牛種的思想の実態と破綻」です。
 創竜伝のストーリーにおいて、ありとあらゆる「絶対悪的な価値観」を背負わされている四人姉妹と牛種ですが、その一方で、竜堂兄弟が崇拝している民主主義思想を作り、現代における世界秩序の維持にもっとも貢献しているのもまた四人姉妹と牛種であるという事実があるのですから、四人姉妹や牛種は本来ならば単純に「絶対悪」などと規定できるようなシロモノなどではないはずです。むしろ竜堂兄弟や彼らの味方についているはずの華僑や仙界・天界などの陣営の方が、四人姉妹や牛種などよりもよほど非民主的であるようにすら見えるくらいで、創竜伝におけるキャラクターや敵味方の陣営における自己主張と実際の行動との間には非常に大きな落差が存在するのです。
 しかし前回の創竜伝考察で指摘したような、創竜伝10巻における竜堂兄弟と牛種の愚劣極まる問答を見ていると、どうも創竜伝のストーリーにはこのあたりの概念が根本から欠落しているように思えてなりません。そんな状態で社会評論やストーリーを語るから様々な矛盾や破綻が発生してしまうと言いたいところなのですが。
 このような基本概念の欠落が、創竜伝のストーリー設定にどのような悪影響を与えているのか、今回はそれを検証してみる事にしましょう。

1. 四人姉妹を支えるアメリカ基盤産業の実態

 創竜伝のストーリー設定において「世界支配をもくろむ影の財閥」として規定され、竜堂兄弟に敵対する絶対悪的な存在とされているアメリカの四大財閥こと四人姉妹。彼らは卓越した経済力によってアメリカ経済、ひいては世界をも実質的に支配していると規定されている以上、当然のことながら世界を支配するに足るだけの相当な経済基盤を所持していなければなりません。
 では四人姉妹とは一体どれくらいの経済基盤を持っているのでしょうか?

創竜伝2巻 P146上段~下段
<藤木がもらした言葉の中で、「四人姉妹」という単語が始の記憶にひっかかっている。それはアメリカの政界・財界・軍部を支配する大財閥の名だ、という。アメリカを支配するということは、つまるところ、世界を支配するということだ。
(中略)
 ロックフォード。マリガン。ミューロン。デュパン。四家の頭文字をとって、RMMD連合とも呼ばれる。その支配する分野は、銀行・石油・原子力・軍需産業・食糧・コンピューター・自動車・電話・各分野の九〇パーセントにおよび、さらに鉄道・新聞・不動産・鉱山・TV・映画・医薬品・衣服・土木建築など産業のすべての範囲におよんでいる。その富はアメリカ全体の過半数を制する。>

 どうやら四人姉妹はアメリカを支える産業のほぼ全てを掌握しているという設定になっているようですね。しかし非常に残念な話なのですけど、このような設定では四人姉妹が世界を支配していくだけの経済力を持つ事など不可能です。
 まず、四人姉妹がいくらアメリカ産業の全てを掌握していると言っても、その肝心要のアメリカ産業自体が深刻な空洞化現象を起こしているという問題があります。特に製造業分野における空洞化は最悪で、アメリカ国産製品の品質は非常に劣悪な水準ですし、かつてアメリカ製造業の象徴でさえあった工作機械分野でさえ完全に壊滅状態になってしまい、精度の高い製品を造るためには日本製の工作機械を使わなければならないというのが実状なのです。
 この傾向は四人姉妹にとって最重要な産業たる軍需産業ですら例外ではありません。かつて湾岸戦争が「ニンテンドー・ウォーズ」と呼ばれ、アメリカ製の兵器に多数の日本製部品が使用されていた例があるように、アメリカは日本の製造業に頼らなければまともに兵器を生産することすらできないようになってしまっているのです。
 これは別にアメリカに限った事ではなく、今では世界中の兵器生産国が圧倒的な品質と高性能を誇る日本製部品や工作機械を元にして、兵器を生産したり製品を作ったりしているのです。日本製部品の中には、日本だけが生産を独占していたり大半のシェアを占めていたりするものが多くあります。これから考えると、こと製造業に関する限り、四人姉妹は日本の足元にも及ばない貧弱な経済基盤しか持っていない事になるのです。

 アメリカ製造業といえばかつてはアメリカの象徴であり、かつ世界経済を支えていた重要なものであったにもかかわらず、なぜこれほどまでに没落するに至ったのか? その原因は「M&A(企業の合併・買収)」と呼ばれるアメリカ式経営手法とメーカー訴訟の乱発にあります。
 アメリカでは日本と違って資本と経営とが分断されており、企業経営よりもマネーゲームの方が優先される傾向があります。そのためアメリカ企業のオーナーや株主たちは、企業の生産効率を上げる事ではなく、企業売却による利益の方を優先して考えるようになっています。その結果、短期間に利益を上げる経営手法ばかりが横行して長期的視野に立った企業経営が全くできず、また経営者の顔ぶれや経営方針自体もコロコロ変わるために現場の信頼と士気を根こそぎ奪ってしまうということが続出したため、アメリカの製造業は良質な製品を造る事ができなくなってしまったのです。
 またアメリカは世界的にも有名な訴訟乱発国家で、ことにメーカーの製造物責任(PL)訴訟と医療過誤による損害賠償請求の額と数は半端なものではなく、しかも裁判における挙証責任、すなわち犯罪を立証すべき責任が全て被告たるメーカー側にあり、訴えられたメーカー側が原告の訴えを全て否定しなければならない(簡単に言うと「訴えられた製品に『全く欠陥がない』事を『メーカー側が』立証しなければならない」)ために、かなりの確率で訴えた原告側の方が勝利してしまう弊害があり、その結果、メーカーが新製品開発にすっかり及び腰になってしまっているという問題もあります。なまじ新製品を販売して損害賠償請求でも起こされたらたまったものではありませんからね。そのためアメリカでは絶対的に安全が保障されている製品以外、まともに製品を生産・販売する事すらできないという弊害まで発生しています。こんな惨状ではアメリカの製造業が衰退していくのも当然です。
 そんなわけでアメリカは自動車やTV、パソコンなどといった製品や製造部品などのほとんど全てを日本やアジアから輸入しており、その結果、アメリカの対外貿易赤字と対外債務は世界一高い最悪のレベルにまで達しているのが実状なのです。アメリカ国民にほとんど顧みられることなく惨憺たる状態にあるアメリカ国内製造業の90パーセントのシェアを独占したところで、そんなものが四人姉妹に一体どれだけの利益を与えてくれるというのでしょうか。
 四人姉妹は誇大妄想的な世界支配などに乗り出す前に、まずは自らの経済基盤たるアメリカ製造業を建て直すことから始めるべきでしょう。自らの経済基盤が深刻な危機に直面しているというのに、竜堂兄弟だの「染血の夢」だのに関わっている時間があるとは、彼らもホントに暇な事ですね(笑)。

2. 「大が小を兼ねる経済支配」という非常識な世界設定

 さらに四人姉妹による世界支配の手口を検証してみると、下のような記述を見つけ出す事ができます。

創竜伝2巻 P146下段~P147下段
<アメリカの財界にはこの四大財閥の他に、四つの巨大なグループがある。だがこれは、四大財閥にくらべれば小さなものだ。
 ニューヨーク・グループ、中西部グループ、カリフォルニア・グループ、テキサス・グループがそれである。これらのグループには、一〇億ドル級の大富豪や一〇〇億ドル級の大企業がいくらでも存在するが、四大財閥に比べれば、その勢力は第二義的なものであり、いわば地方王国であるにすぎない。四大財閥に許可をもらって、それぞれの地方や分野で半独立状態をたもっているにすぎないのだ。
(中略)
 四大財閥=四人姉妹=RMMD連合の手は、むろんアメリカ合衆国の外にも伸びている。英国およびフランスにまたがるユダヤ系財閥ロスシールド、ドイツの軍需財閥クナップなどは、四大財閥を宗主とあおぐパートナーだ。
 南アフリカのリッペンハイマー財閥は、全世界のダイヤモンドの七〇パーセント、黄金の三五パーセント、ウランおよびコバルトの二五パーセントを産出する。この大財閥も、四人姉妹の弟分でしかない。
 日本が経済大国とか技術大国とか自称していばりかえっても、その繁栄を支えるためには、石油と希少金属とが絶対に必要である。そして、石油を産出するアラブ湾岸諸国と、希少金属の宝庫である南アフリカとは、ともに「四人姉妹」の支配下にあるのだ。
 戦前の冒険小説風にいえば、「おそるべし! 四人姉妹!」なのである。>

 それだけ「おそるべし! 四人姉妹!」な連中が、何故たかだか属国でしかない日本の経済界を支配する程度の事さえもできないのでしょうかね(笑)。これだけアメリカ国外における財閥に対してまで絶大な影響力を行使する事ができるにもかかわらず、四人姉妹は日本国内における企業をただの1社たりとも支配しておりません。政治の壁を乗り越えて他国の財閥支配ができる程の力があるのであれば、属国たる日本の財界を支配することなど簡単にできるはずなのですけど。
 それにEU諸国って、昔からアメリカの覇権に何とか対抗しようとして様々な経済的統合の試みを行い、ついには「ユーロ」による経済通貨統合まで達成し、アメリカ経済圏に対抗できるだけの経済圏を作り上げたのですけど、そんな政治情勢の中で一体どうやってアメリカ財閥にすぎない四人姉妹が、しかも四人姉妹よりも長い歴史を持つヨーロッパの財閥に、自分達を「宗主とあお」がせる事ができたというのでしょうか? 第一、そんなことが簡単にできるくらいならば、いっそのことヨーロッパの財閥を直接自分の傘下にまるごと加えてしまった方が、今よりもはるかに強大な影響力を行使する事ができるでしょうに。
 そもそも政治の世界において「自国の経済の自主性と独立性」というのは非常に重要なものです。政治の観点から言えば、自国の経済が他国の影響を受ける事は何としてでも避けなければなりませんし、そのためには当然ながら自国の企業や産業を保護しなければなりません。経済的独立を失ったら、政治的独立もまた失われる事になるのですから。たとえどれほどまでにアメリカと親密な外交関係を確立していたとしても、「自国の経済の自主性と独立性」が失われないような政治的配慮が取られなければならないのです。
 これから考えると、四人姉妹による対外的な影響力の実態が一体どの程度のものであったのか、はなはだ疑問に思えてくるところですね。

 ところでこの描写から、田中芳樹が経済や財閥・企業の力関係についてどのように考えているかが理解できます。一言で言えば「大は小を兼ねる」というもので、経済力の大きいものが小さいものを支配するという何とも単純明快な図式なのですが、もちろん現実における経済の世界は、そんな単純な図式に基づいて動いているわけではありません。経済の世界において最も重要なのは「資本力」や「生産力」ではなく「流通」にあるのです。
 たとえばある企業が利益を上げるために冷蔵庫を1万個製造したとします。この1万個の冷蔵庫はただ製造しただけでは何の意味もありません。在庫管理には莫大な費用がかかりますし、需要がなかったり不当に製品の値段が高かったりすれば買い手も現れず、企業は良くて大損、最悪の場合には倒産の憂き目に遭ってしまいます。そこで企業は、需要があるところに必要なだけ生産・輸送し、かつ一般人が購入できるだけの「適正価格」で販売しなければならないのです。この「適正価格」は「需要と供給のバランスシート」「個人の経済事情」「輸送などにかかる手数料」などの要因によって様々に変化します。
 つまり「経済」というものは「需要のあるところに購買力のある顧客がいる」という事こそ重要なのであって、「顧客」のニーズに応えられない企業は、たとえどれほど大きな資本や生産能力を持つ大企業であろうと倒産するしかないのです。特に世界的な自由貿易体制が確立してからは、自国産業の保護を目的とした保護貿易も難しくなりましたから、ますます「顧客」の意向が無視できないものとなっています。
 資源の売買もまた同様で、ただ単に石油や希少金属が大量に産出するというだけでは何の意味もなく、それを購入してくれる「顧客」がいることこそが重要なのです。そして日本が経済発展や高水準の生活を維持していくために石油や希少金属を必要不可欠としているように、それらを産出するアラブ諸国や南アフリカもまた、それらを積極的に日本に売って外貨を稼がなければ自国の経済が成り立たないのです。そういった事情を全く無視して四人姉妹が産出国の石油や希少金属を勝手に差し押さえる事などできるわけがないでしょう。そんな事をしたら自分で自分の支配基盤を破壊するようなものです。
 経済というものは一種の生き物であり、「資本」「製品」「資源」といった血液が「流通」という血管の流れに従って様々な器官を循環することによってはじめて成り立つものなのであり、四人姉妹の都合で簡単に制御できるような生易しいものなどではないのです。この事から言っても「四人姉妹の経済的世界支配」などという設定が非常に妄想的な理論の上に成り立っている事は一目瞭然ですね。

 さらにこの流通の事情に加えてさらに重要な事は、世界中の国々において生産される製品は、日本製の工作機械や部品を必要不可欠とするものが非常に多いという実状があることです。製品を造るのに絶対必要な工作機械は日本が圧倒的なシェアを占めていますし、パソコン用モニターとして使用されている液晶などのフラット・ディスプレイや、炭素繊維やアラミド繊維といった兵器生産に必要不可欠な部品は、日本が大半のシェアを独占しており、しかも品質と性能もダントツに優れているのです。さて、仮にこれらの輸出が完全に止まってしまったら一体どうなるでしょうか?
 阪神大震災の際、世界中のタイヤメーカーが泡を食って慌てた事がありました。というのも、タイヤ製造に必要不可欠なスチールワイヤという部品が、ほとんど100%「神戸製鋼」という会社が神戸でのみ生産していたからです。阪神大震災では他にも似たような事例が多く存在し、日本の製造業がいかに世界経済にとって必要不可欠であるかを立証したのです。
 製造業の「急所」を日本に握られ、しかも自らの経済基盤たるアメリカ国内製造業が見る影もなく衰退してしまい、自らの経済基盤がいつも不安定にぐらついている状態では、四人姉妹が世界を「経済的に」支配しているとはとても言えたものではないでしょう。こんな杜撰な世界設定を作るくらいならば、いっそ素直に「アメリカ政府と大統領を直接牛種が支配している」という事にして「政治力と軍事力でもって世界を支配している」とでもしてしまった方が、まだそれなりの整合性があったのではないかと思うのですけどね~。

3. 四人姉妹に象徴される「財閥」や「大企業」の社会的意義

 創竜伝に限らず、田中芳樹の現代物全てにおいて、四人姉妹のような財閥だの大企業だのといったものは一方的に目の敵にされており、たまにまともな人間が出てきても「これはあくまでも例外」ということを繰り返し強調した挙句、それを相対化させる形で「本来の薄汚れた企業家ないし資産家」なるものを登場させる始末です。しかし財閥や大企業といったものの社会的意義は、ちょっと経済史を検証してみればすぐに分かる事であって、それをさも「絶対悪」であるかのごとく規定するというのは、はっきり言って異常であるというしかないのですけどね。
 そもそも財閥というものを語りたいのであれば、まずは資本とは何か、カネとは何かということから入っていかなければ話になりません。カネというものは分散していては何ら効果をもたらす事はなく、集中してこそ意味のあるものなのです。たとえば1億円のカネを1億人に平等に分配したところで全く意味がありませんが、1億円をひとりで集中して使えば色々な事ができるのです。これと同じように、資本をひとつに集中してそれを効率良く運用し、より大きな企業利益を獲得するために財閥は生まれてきたという歴史があります。そのため財閥は、経済発展の過渡期に必ずと言って良いほど生まれてくるものなのであって、国家経済を飛躍的に発展させていくために必要不可欠なものなのです。
 世界的に見ても、飛躍的な経済発展を遂げてきた国家には多かれ少なかれ財閥が生まれていますし、財閥によって国民の生活水準やGNPが向上していったという経緯もあります。日本だって戦前には三井・三菱・住友などといった財閥が存在し、それらの財閥が日本経済を主導してきたからこそ、日本は当時の欧米列強になんとか対抗できるだけの政治的・経済的実力を備える事ができ、非白人国家の中で唯一植民地化を免れる事ができたのです。また韓国も朴正煕時代に明治期の日本の財閥育成政策を真似た「維新革命」という政策が進められ、それが今の韓国経済の基礎となっています。それまでの韓国のGNPは極貧国レベルでしかなかったのですから「維新革命」が韓国経済に相当寄与していた事は間違いないでしょう。
 さらに言えば、創竜伝の定義とは異なり、実はもともと財閥や企業ほど戦争を嫌う存在もないのです。何しろ戦争が起こって貿易が止まってしまったら、真っ先に困るのは貿易に依存している財閥ですから、財閥は何としてでも戦争を回避する方向に政治を動かすように政治家に対して働きかけるのです。
 戦前の日本においても、財閥と深い関係にあった政治家たちはむしろ外交において国際協調路線を展開していました。最も典型的なのが、三菱財閥の岩崎弥太郎の娘と縁戚関係を結んでいた幣原喜重郎で、大正から昭和初期にかけて日本は彼の外交政策によって平和路線を歩んでいたのです。
 それを破綻に追いやったのが、財閥と政治家を「癒着して腐敗している」と、竜堂兄弟と全く同じような考え方で徹底的に敵視した陸軍、そしてそのような陸軍を圧倒的に支持した世論と新聞です。その結果、財閥と政治家は軍部によって徹底的に攻撃され、挙句の果てには翼賛選挙の実施によって軍部の顔色ばかりうかがう政治家を大量に排出するに至りました。平和路線を志向する財閥を徹底的に否定した結果、軍部独裁を招いてしまったわけです。
 これから考えてみても、「財閥が積極的に戦争を志向する」などという考え方がいかに現実離れしたものであるかがお分かりいただけるのではないでしょうか。

 それに田中芳樹や竜堂兄弟は日本の企業や四人姉妹を非難する際に「企業は利益を社会に還元せずに暴利をむさぼっている」だの「企業は公共性が全くない」などといった事をのたまっていますが、こんな非難は見当ハズレもいいところです。もともと企業というものは「利益を上げる事」を第一に考えなければならないのですし、経済の世界は道徳理論とは全く無関係に動いているものなのであって、むしろ経済の世界に道徳理論を持ち出すと大抵ロクな事にならないのです。
 旧ソ連や中国といった共産圏の国営企業などはその典型例でしょう。公共性をひたすら重視し、企業利益を全ての国民に平等に配分する方針で運営された結果、国営企業の決算は毎年大赤字を記録し、企業運営にムダやロスが多く、結局国民の生活水準も全然向上しないといった惨状を呈しているありさまです。
 日本でも鉄道や電気通信分野のサービスが向上し、使用料金が安くなっていったのは、国鉄や電電公社が民営化され、企業利益重視の方針で動くようになってからです。またこれはとは逆に、日本の学校や農家は国の補助金づけによってすっかり弱体化してしまっています。これらは経済の世界に下手に公共精神などを持ちこむと却ってロクでもない結果を導く好例ではありませんか。
 これは非常に逆説的で面白いことなのですが、こと経済の世界においては「個人の悪徳は公共の福祉」なのであり、企業や個人がひたすら利益のみを求め続ける経済活動によって「国民の生活水準の向上」「企業経営の効率化」「公共的サービスの充実」がもたらされ、その結果として経済が発展するという法則に基づいて動いているのです。したがって、創竜伝において田中芳樹に非難されている日本企業や四人姉妹は、その非難されている「暴利をむさぼる体質」によってむしろ国民に大きな利益を与えているのであり、それを非難している田中芳樹や竜堂兄弟の方が実は大きな間違いを侵しているという事になります。
 まあ、あそこまで被害妄想的かつステレオタイプな「財閥・大企業=悪」みたいな考えに固執しているようでは、こんな考え方を理解する事は永遠に不可能でしょうけど(笑)。

4. 創竜伝における日本批判社会評論の元凶・四人姉妹の日本占領政策

 今更改めて言う事でもないのですが、創竜伝では日本の政治システムやマスメディアの体質などといった「日本の政治体制」に対する支離滅裂な非難・弾劾的な社会評論が、ストーリーと全く無関係に展開されています。しかし日本近現代史を検証してみて疑問に思ったのですが、創竜伝で散々非難の対象となっている様々な政治システムやマスメディアの体質というのは、創竜伝の設定に従うと「実はアレはそもそも四人姉妹が作ったものなのではないか?」という疑問が出てきます。
 たとえば田中芳樹や竜堂兄弟が「日本の軍国主義」なるシロモノを非難する際によく引き合いに出すのが「日本国憲法第9条」ですが、そもそも日本国憲法というものは第2次世界大戦後に日本の占領したGHQの指令によって1週間前後で作成され、しかも「これを採用しないと昭和天皇を戦犯訴追する」という脅迫によって無理矢理日本に押しつけたものです。そして当時のGHQの最高司令官はアメリカのダグラス・マッカーサー元帥であり、創竜伝的な解釈をすれば、彼は「四人姉妹の下僕」であり「四人姉妹の意向に忠実な人間」ということになります。つまり創竜伝的に見ると、日本国憲法というシロモノは実は四人姉妹の意向によって作られたものであるという事になるのです。
 しかも他国を占領している占領軍が非占領国の法律や憲法を改定する事は国際法(ハーグ陸戦法規)によって禁止された行為であり、日本国憲法はその制定手続きにすら問題のある憲法なのです。法律の世界は「手続き」こそが一番重要なのであって「手続き」が欠けている法律など「法律」としての意味を全くなさないのです。これは法治主義の常識でしょう。
 またマッカーサーは日本を裁くために「極東国際軍事裁判(東京裁判)」を行い、「日本の戦争犯罪」なるものを裁きまくっていましたが、この裁判にしてもアメリカの原爆投下や絨毯爆撃による民間人虐殺を相殺し、戦争の全責任を日本に押しつけるために始めたようなものですし、裁判開廷の法的根拠にしたところで、1946年1月19日にマッカーサーが発布した「極東国際軍事裁判所條例」であり、いわば事後法によって罪を裁くという、とても裁判の名に値しないシロモノでしかないのです。もちろん、この裁判もまた国際法に完全に違反しております。
 さらにGHQは日本のマスメディア全てに対して30項目にわたる言論統制指令を出し、その中で、憲法を押しつけた事を発表してはならない、連合国を一切批判してはならない、日本の文化伝統を誇ってはならないなどと強要しています。GHQの言論統制はナチスのゲッペルスも顔色を失うほどに徹底したもので、刀での斬り合いが「好戦的である」としてチャンバラまで禁止され、素手で殴り合うマヌケな「忠臣蔵」の映画が撮られていたという話まであるくらいです。
 アメリカによる日本占領中にこういったことが長期にわたって行われた結果、日本は政治的・軍事的に自立する事ができなくなり、アメリカの意向に多かれ少なかれ従わなければならないようになってしまったのです。これこそが創竜伝における破綻だらけの日本批判社会評論の元凶でしょう。
 これから考えると、創竜伝において四人姉妹を批判したいのであれば、この四人姉妹の日本占領政策に言及し、日本を創竜伝の社会評論に書かれているような劣悪な社会(苦笑)に仕立て上げた元凶として批判しなければならないはずです。ところが創竜伝の社会評論はアレほどまでに四人姉妹を非難し、かつ日本がアメリカの属国であることにケチをつけているにもかかわらず、なぜか四人姉妹の日本に対する占領政策や内政干渉などについては一言半句も言及しておりません。それどころか逆に、四人姉妹が残していった日本国憲法や東京裁判の価値観を絶対視した社会評論を語っているようにすら見えます。
 そして田中芳樹は、かつて湾岸戦争などに見られる四人姉妹の態度を次のような社会評論で弾劾した事があります。

P188上段~下段
<四人姉妹は中東での石油の権益を独占し、産油国の政治にも干渉する。独裁者に兵器を売り、その兵器を自分たちの兵器で破壊する。油田の一部が炎上すれば石油代金を値上げする。一セントの損もしない。それどころか、独裁者をやっつけた自分たちが正義の味方だということを宣伝できる。彼らの代理人であるアメリカ大統領は、戦争をやることによって支持率を四〇パーセントから九〇パーセントにまではねあげる。見えすいた計算。そして計算どおりに世界は動き、人々は「正義の味方」に感謝する。忠実な属国は、あたらしい税までつくって、正義の味方に戦争資金を提供する。
 一時ミャンマーと改称していたビルマでは、軍事独裁政権が狂気のような弾圧と虐殺をおこなった。世界は独裁者たちを非難したが、口先だけで、軍隊を送りこんで彼らを打倒しようとはしなかった。
 ビルマは石油資源もなく、四人姉妹の権益もない。だから自由と正義の守護神であるはずのアメリカ軍は、そんなところへ出かけていって悪人たちと戦おうとはしなかった。むろんアメリカの兵士たちに「ビルマでもチモール島でも、世界じゅうどこへでも出かけていって正義のために血を流せ」と強要することはできない。アメリカ軍がアメリカの国益のために戦うのは当然のことである。ただ、アメリカの利益でしかないものを、あたかも絶対の正義であるかのように宣伝するのが、傍から見るとうさんくさいわけである。むろん、すこしもうさんくさいと思わず、正義の味方のかっこいい姿に感激する幸福な人々も多く存在する。こういった人たちをひとりでも増やすことが、四人姉妹の世界支配を永続させるための重要な手段であろう。かくして情報は操作され、油で汚れた水鳥の映像が世界に流れる。>

 この田中芳樹の四人姉妹批判の論法を使うと、四人姉妹が残していった日本国憲法や東京裁判の価値観を「すこしもうさんくさいと思わず」、「アメリカの利益でしかないものを、あたかも絶対の正義であるかのように宣伝する」創竜伝における日本批判の社会評論は「傍から見るとうさんくさい」し、このような社会評論を堂々と展開している田中芳樹や竜堂兄弟の御歴々は「正義の味方のかっこいい姿に感激する幸福な人々」であり「四人姉妹の世界支配を永続させる」事に貢献している「四人姉妹の飼犬」であると規定する事ができるのではないでしょうか(笑)。四人姉妹の忠実なる下僕たるアメリカが、第二次世界大戦時にどれだけ「アメリカの利益でしかないものを、あたかも絶対の正義であるかのように宣伝」していたか、まさか知らないわけではないでしょうに、何で「アメリカ占領政策の遺産」についてはこの理論を適用しようとしないのでしょうか? 湾岸戦争はダメで日本の占領政策はOKだというのであればダブルスタンダードもいいところなのですけどね~。
 創竜伝で田中芳樹や竜堂兄弟が得意気になって語っていた日本批判の社会評論は、実はその全てが、かつて四人姉妹が自らの戦争責任を自己正当化するために日本に押しつけていった価値観をベースにして作られたものでしかなかったわけです。四人姉妹の世界支配を否定しつつ、日本批判のためならば四人姉妹が自らの自己正当化のために作り上げて日本に押しつけていった価値観を全面的に肯定・絶賛するというのですから、連中の言動が支離滅裂になるのも当然といえば当然ですね。

5. 四人姉妹・牛種の支離滅裂な政治的行動原理

 「全体主義・宗教的狂信性を信奉しているはずの四人姉妹と牛種が、現実には『民主主義およびヒューマニズム思想の創設者兼擁護者』として世界に君臨している」
 創竜伝における最大の矛盾のひとつとも言えるこのパラドックス(逆説)を、創竜伝では8巻におけるランバート・クラークと牛種との会話で説明しようとしています。

創竜伝8巻 P17上段~P18上段
<「ヒューマニズムだのデモクラシーだのという偽善をいつまでものさばらせておくほど、地球の許容量は大きくないのだ。すでにそれは限界に達しておる。低能どもはあえて事実から目をそらそうとしておるが……」
「ええ、わかっています。いえ、わかっているつもりです」
 慎重に、ランバードは言葉を選んだ。
(中略)
 ランバートは声を高めた。
「でも、それですと、いささか疑問に思う点があります。あなたはなぜアドルフ・ヒットラーを破滅させたのですか。彼に全世界を支配させてやれば、ずいぶんと後の仕事が楽になったはずですよ」
「あやつは自滅したのだ」
 熱のない返答であった。祖父の姿をした何者かは、わずかに姿勢を変えたようであった。
「冷たいことをおっしゃるのですね。ヒットラーはあなたがたの忠実な使徒ではなかったのですか」
 ランバートの問いかけは、毒々しい冷笑となって返ってきた。
「やつを選んだのは私ではない。お前より三世代ほど前の一族どもだ。使徒とは無私の信仰者でなければならぬが、ヒットラーは欲の深い小悪党だった」
「そうでしょうか。ヒットラーは何かと悪くいわれますが、金銭欲や物欲はとぼしかったのではありませんか」
「いまだにヒットラーを神格化する低能どもは、そういう類の迷信を信じこんでいるらしいな。だが、奴がドイツの総統になった直後、どういう法令をさだめたか知らんのか。総統は税金を納める義務がない、という法令だぞ。そうやって奴はせっせと私腹を肥やし、個人資産を殖やしたのだ」
「ですが……」
「あんなチョビ髯の小男のことなどどうでもよい」
 車椅子にすわった老人の映像は、冷然としてランバートの舌を封じた。>

 返答が難しくなる事を事前に察して一方的に論争を打ち切ったありさまがミエミエな問答ですが、そもそもこのランバート・クラークの対談相手たる牛種は、他でもない自分達が「ヒューマニズムだのデモクラシーだのという偽善」というものを広め、擁護してきた責任というものを一体どれくらい自覚して「ヒューマニズム・デモクラシー否定論」を展開しているというのでしょうかね。全体主義や宗教的狂信性をそこまで信奉するのであれば、なぜ必要もないどころか邪魔にすらなるであろう「ヒューマニズムだのデモクラシーだのという偽善」をわざわざ自分から積極的に広めてまわったのか、是非とも納得のいく理由を説明してもらいたいところなのですけど、もちろんそんな理由など創竜伝のどこにも全く記述されてはおりません。
 それに牛種は「使徒」だの「無私の信仰者」だのと何だか訳の分からない事を喚いた挙句、「ヒトラーは私腹を肥やしていたから自滅したのだ」などという奇妙な結論を導き出しているようなのですけど、もしそのような個人的資質の欠如がヒトラーにあるがために自分達の世界戦略が達成できないと本気で考えていたのであれば、ただヒトラーの欠陥をあげつらって見下した評価を下すのではなく、そのヒトラーの欠陥を是正して彼を世界支配に当たらせる事こそが、当時の世界情勢から考えても、また牛種の世界支配戦略から言っても最善の策だったはずではありませんか。牛種とヒトラーとの間に思想的相違が全くなく、かつヒトラーが牛種の下僕にすぎなかったというストーリー設定がある以上、牛種がそのような選択肢を選ぶ事は不可能どころが非常に容易な事であったはずです。
 そもそも牛種の世界戦略を実現するのに「無私の信仰者」という資質が本当に必要なのでしょうか? 十字軍をはじめ、おそらく牛種が主導していったであろう「西洋による世界侵略の歴史」において、宗教の名に基づいた大量略奪が行われた例は枚挙に暇がありませんし、その過程において、牛種の言う「忠実な使徒」が私腹を肥やした例だって数えきれないほどあるでしょう。第一、創竜伝において「西洋による世界侵略」の象徴として規定されているコロンブスのアメリカ発見やピサロのインカ侵略にしてからが、その動機は「ジパングやインカの黄金目当て」という、とんでもなく私利私欲に訴えたものだったではないですか(笑)。この桁外れの貪欲さに比べれば、たかだかヒトラーひとりが私腹を肥やした程度の話など別にどうという事はないものでしょう。
 にもかかわらず、第二次世界大戦当時の四人姉妹と牛種は、自分達にとって非常に都合の良い全体主義や宗教的狂信性といった思想を広めさせる事ができたはずのヒトラーを、ただ単に「個人的資質が気にいらない」などという非常に些細な理由で、しかも欠陥を是正できる可能性を全く顧みることなしに自滅に追いやった挙句、第二次世界大戦を「全体主義思想に対する民主主義の勝利である」などと規定し、自分から積極的に「ヒューマニズムだのデモクラシーだのという偽善」を、自分の支配領域たる人界に「いつまでものさばらせて」いたのです。いくら何でもこんな愚劣で自家撞着的な話はないでしょう。
 創竜伝における四人姉妹と牛種は、彼らの最終目的である「全体主義思想の流布者」と、世界支配のためのスローガンである「民主主義やヒューマニズムの擁護者」という、本来ならば全く相容れないはずの2つの側面を同時に持ち合わせている上、その矛盾を辻褄合わせる明確な説明が全くなされないままに、全く整合性のない社会評論がその場その場の気分で展開されるため、その実態が全くつかめない、何とも支離滅裂なものになってしまっているのです。実態のよく分からない敵陣営を、竜堂兄弟一派は一体どうやって「絶対悪」などと規定していたというのでしょうか?

6. 牛種の政治構想「大西洋帝国」と四人姉妹の「影の世界支配」とのズレ

 「アメリカ政府の影の支配者・四人姉妹」と「四人姉妹の影の支配者・牛種」
 創竜伝のストーリー破綻は牛種の登場以降から特にひどくなってきているように見えるのですが、その大きな原因のひとつにこの「影の支配の二重構造」という問題があるのではないでしょうか。この二重構造によって、前述の「5.四人姉妹・牛種の支離滅裂な政治的行動原理」のような問題点も発生してしまうわけです。
 さて、この二重構造による設定矛盾を一番大きく露呈させているのが、創竜伝8巻以降に出てくる、牛種による「大西洋帝国」建国構想です。

創竜伝8巻 P90上段
<「極秘情報がはいったよ。四人姉妹の中枢部が、北アメリカと西ヨーロッパを統合し、大西洋帝国をつくりあげるという」
「大西洋帝国!?」
「そう、そしてその皇帝となるのはランバート・クラーク・ミューロンだ」
「ランバート……あのランバート!?」>

 このランバート・クラーク(の体を乗っ取った牛種)による「大西洋帝国」建国構想は創竜伝8巻および9巻に出てきたものですが、人類50億人抹殺計画「染血の夢」を実行している最中である重要な時期に、しかも特に破綻が生じているわけでもない四人姉妹の統治機構をわざわざ自分から破壊してまで「大西洋帝国」なるシロモノをでっち上げようとするその意図は一体何なのでしょうか? 自分達の自己基盤を固めなければならない時期に、わざわざ無為無用な政治的混乱を自分から招き寄せているようにしか見えません。
 政治的統合がいかに難しいものであるかということについては、EUの経済通貨統合が国家間の利害対立や国内世論の分裂などによって非常に難航した事を見ても一目瞭然でしょう。経済通貨統合は政治的統合の前段階として必要不可欠なものですが、歴史的価値観を共有するEU諸国間における経済通貨統合でさえ、様々な諸問題をかろうじてクリアしてようやく成立したものであるというのに、牛種がそれ以上に難しい北アメリカと西ヨーロッパの政治的統合を何が何でも実現しようとするのであれば、まず「ドル」と「ユーロ」の経済通貨統合を行った上、各国の政府を全て解散もしくは統合して全く新しい新政府を樹立しなければなりません。そんなことが四人姉妹の経済力のみでできるわけがないでしょう。
 第一、あくまでも影から経済的な支配を行っているに過ぎない四人姉妹の統治機構には表立った政治的な力などほとんどありません。四人姉妹は表面的にはあくまでも「一営利団体」であるにすぎませんし、非公然な政治力を表立って行使すれば、四人姉妹が持つ「影の支配」という特性を自ら殺してしまう事になります。牛種が構想する「大西洋帝国」建国構想は、四人姉妹という「影の支配機構」にとって明らかに自殺行為であると言わざるをえないのです。
 その上さらに理解に苦しむのが、創竜伝9巻において、ランバート・クラークの急激な台頭に不満を抱く四人姉妹内の不平分子に対する、四人姉妹一族の最有力者のひとり・老ダニエルのランバートについての説明です。

創竜伝9巻 P172上段~下段
<「かさねて申しあげるが、煙を見ただけで火事だと騒ぎたてるような愚は犯さないがよろしかろう。ランバートさまは今世紀のうちに大西洋帝国の皇帝となられる。ご一同はみだりに不敬の大罪を求めなさるか」
「皇帝……」
 一同はあえいだ。嘲笑しようとしてできなかったのは、老ダニエルの眼光に射すくめられたからである。老ダニエルはすくなくとも本気だった。色あせた薄い唇が動いて、一同を呪縛する言葉を紡ぎ出した。
「ランバートさまの身体には、デュパン家を通じていくつかの王家の血が流れておる。ミューロン家ももともと、フランス、スペイン、オーストリアにまたがる貴族の末裔。神聖ローマ帝国騎士の称号も代々、所有しておる。一九世紀に成りあがったどこぞの王家などより血は古いのだ」>

 で、このあとヨーロッパ諸王室における混血の実態と、四人姉妹もまたそれにある程度関わっている事などが説明されるわけなのですが、そんな前近代的な血縁関係を結んでいる事がランバート・クラークの皇帝即位に一体何の役に立つというのでしょうかね。老ダニエルはその一番重要な事については一言半句たりとも述べていません。
 だいたい今時「昔のヨーロッパ王家や貴族の血を受け継いでいる」という事実が、骨董品や名誉称号としてならともかく、大帝国の皇帝として即位できるだけの政治的価値など持つはずがないでしょう。いまだヨーロッパに存在している王家も、イギリス的な「君臨すれども統治せず」の考え方によってあまり政治の場に出てくる事はありませんし、フランス・ドイツ・オーストリア、そしてアメリカなどはそもそも王家自体が全く存在しません。「神聖ローマ帝国騎士の称号」に至ってはもはや笑うしかないですね。そんな19世紀初頭にナポレオンによって名実ともに滅ぼされた国の称号など持っていても政治的には全く意味がないでしょうに。滅び去りし貴族階級のステータスシンボルとして価値ならばあるかもしれませんけど(笑)。
 まあこのあたりは田中芳樹がヨーロッパ諸国における王家の血縁関係を創竜伝で自慢したかったがために強引に引っ張ってきただけの設定でしかなかったのでしょうけど、そんな下らない事にムリヤリ付き合わされた挙句、全く説得力のない文章を意味もなく朗読しなければならないハメになってしまうとは、敵味方を問わず、創竜伝のキャラクターたちもホントに気の毒な事ですね(T_T)。

 そしてこのことからひとつ疑問に思うことなのですが、実は四人姉妹の世界支配にとって、牛種という要素は「邪魔」以外の何物でもないのではないでしょうか。すくなくとも表面的には「民主主義擁護者」として世界支配を展開している四人姉妹と、名実共に宗教的狂信者である牛種とでは最終的に価値観が共有できるはずがないですし、「大西洋帝国」の事例に見られるように、牛種の命令が四人姉妹の利益を損なってしまうという事さえ起こっています。
 「影の支配の二重構造」などというシロモノを、ロクに考えもせず御都合主義で安易に設定したりするから色々な破綻が生じるのではないかと思うのですけどね~。

 しかし「悪」の陣営たる四人姉妹や牛種の思想や行動原理がどれほどまでに破綻していても、せめて「主人公」として描かれている陣営に「確固たるアイデンティティ」「一貫した理論武装で統一された思想性」とか言ったものがあれば、創竜伝ももう少しマシな小説になったのではないかとも思うのですが、現実には連中の思想や行動原理こそが一番破綻しているときているのですからね。これこそが私が創竜伝を全面否定的にしか評価しない最大の理由なのですが。
 さて、いよいよ特集「創竜伝最大の破綻」最後を飾る後編は、創竜伝においてその「主人公」としての陣営側にある、竜堂兄弟と天界について述べてみたいと思います。

親記事No.1305スレッドの返信投稿
board2 - No.1315

なんだみなさんわかっているじゃないですか

投稿者:仮想田中芳樹
2000年08月26日(土) 12時49分

> 「創竜伝」の場合それ以前の問題でしょう、完全にストーリーが崩壊しています。
> 9巻と10巻を読み比べてみてください、時系列や伏線が崩壊しているでしょう。

でも売れてますからね。面白くなければ売れないでしょ。その辺の矛盾を勘案しても面白いんですよ。私は面白い作品を書くために努力しています。矛盾したままの放置したほうがよいか、矛盾を修正したほうが読者がついてくるのかで前者を取った。今のところのその判断は正しいと考えています。

>作中でさんざん「品性」に言及している作者が、ただ「面白い」というだけの理由で、現実にモデルが存在することが明白な人物を劇中に登場させて、より貧相に描いた挙句罵倒の限りを尽くす…読者層の中心である、中高生への自らの筆の影響力も考えずに。
現状では、「創竜伝」を執筆している田中自身が、劇中の悪役政治家や官僚以上に醜いと言わざるをえません。

> こんな出版物(小説ではないでしょう)をしゃあしゃあと書ける人間を
批判したくなるのは当然でしょう。
しかも作中で政治家を言行不一致だと批判しておきながら、
批判している当人が「10巻で終わらせる」「12巻で終わらせる」という公約を破って平然としている厚顔無恥ぶり。 批判されて当然です。

ですから、作中の言動と私の思想は一致してないんですってば。
中高生はいずれ大人になり選挙権を持つころには気付きますよ。実害はほとんどありません。教師に私の著書を盾に逆らった石井さんのような例はかなり珍しいんじゃないですか?それともそんな例、ほかに聞いたことあります?

>>したがって、創竜伝を読んだ右翼寄りの人が反発すればするほど作者は、喜んでるのです。
>品のある大人のすることではありませんね。

これはちょっと違いますね。ちょっと左翼的なものを読んで喜ぶのは読者です。

私は違う? あなたは違うかもしれません。

でも実際そのほうがより多数の読者に受けるんです。右翼的に書いたり現実をシビアに語るより。それが売りの書籍の存在を否定はしませんよ。

> この人は単なる物語作家であって、文化人でも思想家でもないわけです。

はい、そのとおりです。

> 文庫版「創竜伝」の後書きの田中芳樹氏の対談を読んでください。
> そうすれば、氏が自分の事を文化人だと錯覚しており、いっぱしの文化人気取り
> で勘違い発言を連発している事が分かります。

後書もねたですよ。受けをとるための、
第一、あとがきで

「受けるために書いているだけでぼくは思想には何の関心もありません
。」

なんて書けるわけないでしょう。

>要するに、この人の作品を読んで作者の思想ウンヌンを真面目に論じるのは、時間の無駄だと思います。

 はい、またまたそのとおり。とくに石井さんにおかれましてはこれ以上私にかかわって青春の無駄遣いをするのはどうかなぁ。

しかし、みなさんけっこうわかっていらっしゃるようですね。
 ならば、みなさん。トップページのほうの記述、私が左翼だのロリコンなど(現実の私が)思想的に矛盾しているだのは理性的ではない間違った批判だと知ってるってことですよね。
だったら石井さんに教えて上げるのが、理性的で石井さんにとって誠実な態度ってものだと思いますよ。ここよりもはるかに目立ちますから、石井さんの恥になってしまいます。

 大分遅れましたが、モトラさん。これでトップページの1から10それに「ザ・ベスト」の私への批判のほとんどが間違っているとの証明ができました。最低限あなたにとっては。いかがでしょうか?

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